ヨルムンガンド二次創作 第50話 Neos Kosmos fasi.6

『連中。手強いな。キャンプノーから奪還目標を連れ去っただけのことは、あるか…。』
 今回の任務についているナイトナイン2個分隊を率いる隊長は、顔を知らないレーム達の技量を再評価していた。
 アメリカ海軍特殊部隊であるSEALSの中でも、夜間戦闘において並ぶ部隊はなくその存在を知る者も極僅かの自分たちナイトナインが駆り出される次の任地がキューバと聞いてさほど強くはないと考えていたが、決してそんなことはなかった。
 レーム達の狙撃は正確だし、その他の攻撃も同様だった。
 特に近くの木々にめり込んだ弾頭を見て、NATO圏共通の5.56mm×45mm弾でもはなく大きさが近しいが威力が向上した6.8mm×43mmSPC弾であった。
 強力な分反動が強い為一般兵士では扱いづらい点と従来の5.56mmNATO弾をすべて破棄しなくてはならない等複数の理由が重なり普及はしていない。
 が、レーム達は問題なく扱えている。
『だが、我々が負けるはずが…。』
 その時、それは起きた。

「バブちゃんからの報告。相手は戦術データリンクに接続。ヘッドナンバーも解析済み。それと連中ソフィの罠に嵌った。」
「こっちからも見えてる。キューバ軍を刺激しない程度にしているけど、奴らには有効。」
「この分じゃ、勝ち決定じゃん。ココ。」
 携帯からは、あきれながらも浮かれた南の声が聞こえてきた。
「まだまだだよ。ソフィが言ってたでしょ。帰ってくるまでが遠足だってね。こっちはいつでも行ける。」
「そんじゃ、次のフェーズに備えてるよ。」
 そう言って、南からの電話が切れた。
「とは言え、これは辛いよね。SEALSの諸君に眼鏡のプレイム君。」
 ココは意地の悪い笑みを浮かべた。

「おい。大丈夫か?」
「ああ。だが、戦闘は無理だ。」
「こっちもだ。クソ!ホームアローンの悪戯やグーニーズの間抜けだましでもねえだろうに!」
「やむをえん。ホスピタル1。こちらグルーム5。隊員が2名負傷。人員を派遣されたし。」「ホスピタル1了解。直ちに向かう。」
「了解。こちらは戦闘を続行する。オーバー。」
「了解。健闘を祈る。オーバー。」
 負傷者が出ることを想定して、偽装した軍用救急車両に軍医と衛生兵の部隊「ホスピタル1」に救助の要請を出す。

「負傷者だと!?しかもトラップ。いつの間に。」
 司令部では、プレイムが焦った声を出していた。
「負傷の程度は軽傷ですが、戦闘は不能。2名が戦線を離脱。」
 必勝を期して投入したナイトナインから、早くも戦線離脱者が出た。
 オペレーターの顔にも焦りの色が見えている。
「グルーム5。こちらホテル1。トラップの可能性を考慮しながら、作戦を続行。可能な限り早く目標を補足。撃破しろ。オーバー。」
「了解。オーバー。」

「なんだ。攻撃が微かに弱くなったか?」
「若だろうな。ルツ。今の内に潰せそうなのは潰すぞ。」
「了解。ソフィなら、トラップ位は作ってそうだからな。」
 端末でミロと話をしながら、ルツはマガジンを交換する。
「いずれにせよ。狙い撃つだけさ。」
「了解。」
 二人は狙撃を再開した。

『うまく嵌ったかな。』
 今回の作戦にあたり周囲の地形を入念に確かめていたソフィは、精鋭部隊の戦闘行動に支障が出る程度の地雷を周囲に埋設したトラップを仕掛けていた。
 ナイトナインのデータを入手したソフィは、相手が精鋭ゆえに行動が凡そ読めたのである。
 さらに、夜間という状況と少年兵として経験も有利に働いた。
 狙撃の名手であるルツ達にとって、僅かな明かりでも十分に的になりえる。
 それはナイトナインもよく理解している。
 だからこそ、罠を調べることは困難になる。
 加えて、ナイトナインは戦闘のプロであって地雷等のトラップを探索・解除することに関して超一流の爆弾使いのワイリや少年兵として過酷極まる戦場でトラップを張り巡らされた森林や熱帯密林を多く経験し、様々な理不尽極まる環境で完璧にトラップを仕掛けることを求められそれをクリアしてきたソフィ程に爆弾やトラップに習熟していない。
 状況・経験双方がトラップの探索解除を非常に困難にしていた。
『後続にも負傷者を作っておくか…。あとは、最後の仕上げだけ…。』
 手始めにチェイタックのスコープ越しに獲物を定めて、トリガーを引く。

「新たなスナイパーを確認。今までとは一線を画した射程。しかし、姿は確認できません。巧妙にカモフラージュを施して、対赤外線スーツを装備している模様。」
「今度は長距離スナイパーか!」
 苛立ちから、プレイムは机に拳を叩きつける。

「まだまだ、伏兵はいるよ。そう簡単にみんなに攻撃できるとは思われたくないね。にしても、手強い。正確なデータを送っても、まだまだ粘る。連携も崩れない。」
 チェイタックよりさらに射程距離が長いウェザビーも併用してさらに後方から戦力を削り始めたソフィは、うんざりしながら口にする。
 上空ではスペルウェールが、プレデターを撃墜。
 ネプチューンが電子戦を開始。
 他のUAVによる観測から得られたデータを基にした、三段構えの狙撃。
 進攻路には、ソフィが入念に仕掛けたトラップ。
 にも拘らず、ナイトナインを振り切ることができない。
『必要になったか…。』
 ソフィは、最後のカードを切ることにした。

「南。最終フェーズだ。敵が結構しつこい。眼鏡をかけた神経質そうな顔だけに、骨が折れてる。」
「といっても、状況を見るに時間の問題。もう、勝ち決定じゃん。まあ。いいか。準備できてるし。」
 最後のカードを切る準備はできていると、南はココに伝える。
「こっちのUAVは次のフェーズ。万事順調。ヨルムンガルドの片鱗を見せつけてやれ。」
「OK。」
 ココの指示を受けて、南はある操作をする。

 その頃、電子戦で敗北していたナイトナインは、さらに激しいジャミングにあって動きが停止していた。
 それでも、慌てずデータリンクに再接続する。
 少しして、再接続。
 するに見えた。

「接続確認。急ぐぞ。」
 負傷者を安全な位置に移して、ナイトナインはすぐに攻撃を開始する。

『動き出したか。いきなり激しくなったジャミングを怪しんでいる気配はないか。いかに夜間戦闘のエキスパートのSEALSの隠し玉でも、この状況では判断力が鈍ると見える。』
 ソフィは薄く笑いながら、戦闘はすでに勝利したことを確信していた。
「もう大丈夫ですよ。慌てずゆっくり帰ってきてくださいね。遠足は帰ってくるまでが遠足ですから。」
 そう通信を入れると、ソフィも狙撃銃を閉まって撤退の準備を始める。

「全隊、発砲禁止!発砲禁止!!キューバ基地至近!!」
 ナイトナインは戦術データリンクに従ってレーム達を追ったつもりが、とんでもない所に出ていた。
 キューバ正規軍基地。
 いくら米軍といえども、正規軍相手に発砲でもすればただでは済まない。
「馬鹿な!何故だ!?なぜこんな事に!?奴ら、どんな魔法を使ったんだ!?」
 司令部でプレイムは混乱していた。
 リンク16はNATO軍で使用されている重要な戦術データリンクであり、当然厳重なプロテクトによって守られている。
 そのデータリンクに従って追撃したナイトナインは、完全武装のままキューバ正規軍基地の近くに出てしまった。
 それは、これ以上の追撃は無理であることを意味していた。
「指示を。」
 オペレーターが指示を求める。
「ナイトナイン、撤退せよ…!」
 拳を握り締めながら、プレイムは絞り出すような声で指示を出してナイトナインの撤退を命じる。
 米軍の最大の武器出る軍事ネットワークに秘蔵の部隊であるナイトナインをも動員した戦いは、米軍側の完全は敗退に終わった。

「ああ。そうか。お前らの勝ちか。ま。向こうは自惚れがあったし、若様を過小評価していたからな。そうなるだろうと踏んでたよ。にしても、何でまた俺に連絡を入れてきたんだ?東条。」
 バハマの空港で電話に出た日野は、トージョから事の顛末を聞かされていた。
「お嬢にアドバイスのメール送ったんでしょう?なら、一応知らせておくのが義理だろうって。にしても、NSAで働いている日野さんが、んな事したんですかね?俺はそっちに興味があったんですよ。」
「俺が口を挟んだところで、結果には何の影響もないだろうが。ふと、思い立った程度さ。じゃあ、切るぞ。帰宅の途中なんでな。」
 そう言って、日野は電話を切る。
『そもそも、今と以前じゃ携帯の番号も違う。にも拘らず、俺にお前からの電話がかかっている。そっちのメールアドレスも定期的に変えているはずなのに、メールを出せた。この結果が導く答え…。それが、俺の介入による影響なんざない証明だ。』
 ココの情報収集能力。
 その前には、日野であろうとも手も足も出ない。
 そういう事だった。

 ココの計画。
「ヨルムンガンド」の重要な部分を担う、今回の作戦。
 そこから、事態はさらに加速する。

後書き
ナイトナインとの戦いは、ココたちの勝利です。
原作を読んでいてふと思いました。
「罠を仕掛けたら、いいんじゃね?」と。
おまけに夜間戦闘。
暗視スコープは可視光線を増幅したり、赤外線を利用したりするので視野が昼間のように明るくなるわけじゃありません。
微妙な色の判別までは無理です。
そこで、足元。
地面への罠の設置を、考えました。
相手に集中していると、足元への注意も逸らすことができますしね。
如何に特殊部隊と言えども、人間である以上注意が散漫になる部分はどこかしら出てきます。
そして、最も後方に位置しているソフィーのUAVによる観測データを基にした、長距離狙撃。
二段三段構えによって、勝利。
ココの計画も、いよいよ最終段階です。











民間人のための戦場行動マニュアル: もしも戦争に巻き込まれたらこうやって生きのびる
誠文堂新光社
(一社)危機管理リーダー教育協会 川口 拓

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト



ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

この記事へのコメント

よしお
2019年07月11日 20:58
とても面白かったです。
何度も読み返ししています。
次の更新を楽しみにしています。

この記事へのトラックバック