cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第164話 一夜の後の一夏<前篇>

<<   作成日時 : 2016/07/02 23:51   >>

面白い ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 2

「ただいま。」
「お帰りなさいませ。旦那様。朝食は、どうなさいますか?」
「いや。向こうで戴いてきたよ。千冬姉は?」
「リビングで、くつろいでおられます。」
「解った。」
 帰宅してから、執事と当たり障りのない会話をして、一夏は寝室に向かった。
 着物を脱いで、スラックスにドレスシャツ。スカーフを締める。
 着替えを済ますと、自室に行く。
 昨晩の事で、千冬姉の顔は見にくかったからである。
 また、臨海学校に備えて、やることもあった。

 さて、どうしたもんだろ…。
 瑞鶴の追加パッケージは、既に完成している。
 他国の輸送船の状況は、確認済み。
 今回の臨海学校用に作られているメガフロートも、今日中に建造が終わる。
 しかし、環境破壊を食い止める為にと考えた飛行場や港湾施設建設の技術が、こういう風に使われるとは想像もしなかった。
 いつものように行きたいところだが、何しろ去年の事があるからな。
 そうもいかない。
 で、考えられたのが、メガフロートによる演習場だ。
 各種設備だけじゃなく、各種パッケージを搭載した輸送艇用のポートに、複数のデータ解析セクション。
 いざという時の、守備部隊の基地。
 水上部隊の区画等々。設備は充実している。
 さらに各所には、砲塔、CIWS、VLS等も備えられており、迎撃準備も万全。
 これに合わせて今回は、新型輸送艦まつまえ型が投入されている。
 離島防衛・奪還能力を強化する為にAAV8 水陸両用強襲装甲車を開発したが、それを搭載して運用する為に、おおすみ型輸送艦の改修の他に、専用艦艇の開発を決定。
 実質的に強襲揚陸艦といえる、輸送艦を建造した。
 それがまつまえ型だ。
 各種ヘリの他に、シーゼロが12機搭載され、上空からの上陸支援、占領された島の敵地上施設の破壊、上空警戒等を行う。
 水陸両用車の他に、戦車や各種自走砲、兵員、軍需物資の輸送に使用する、新型揚陸艇いぬわし型エア・クッション型揚陸艇も搭載されている。
 今の所、2隻が建造されているが、予算編成においても、最低2隻分の建造費は確保されるという情報が、企業筋で俺の耳に入っている。
 さらに、佐渡島に部隊を配置。対馬の戦力増強という話も、来ている。
 対馬の部隊は、敵性国家の軍隊の上陸を想定した迎撃を任務とする、一種の特殊部隊的な性格を持っているが、最近の訓練ではその性格がより一層鮮明になってきている。
 佐渡島に配置される部隊も、それを前提として任務に就く部隊として訓練が行われてきたというから、離島防衛に相当に本腰を入れ始めたという事だろう。
 他にも、密かに上陸して敵の情報を入手し味方に知らせると共に、後方攪乱等を行うための部隊が設立されると俺は考えている。
 まつまえ型に配備されるのは、本格的な離島奪還部隊。
 自衛隊の軍事ネットワークや、携帯できる小型UAV、機動力を損なわないようにした各種銃器等を装備した部隊だろう。
 特殊作戦群を含めてそんなに多くなかったけど、どんどん特殊部隊の類が増えていくな。
 出動することの無いように、祈るだけだ。
 戦争は、御免だからな。
 さて、亡国企業に関してだが…。

 亡国企業についての調査資料を読もうとすると、ドアをノックする音が聞こえる。
「一夏。私だ。入るぞ。」
 こっちが行かなけりゃ、向こうが来るか…。
「どうぞ。」
 平常心で、仕事をしていればいい。
 そうすれば、普通にしていられる。
 そう考えて仕事をしていると、千冬姉が入ってくる。
「どうだった?」
 千冬姉にそう言われて心臓が跳ね上がったけど、どうにか押さえつけた。
「野点か?よかったよ。久方ぶりだったけど、いいな。ああいうのも偶には。家でもやるかな。」
 椅子を回して千冬姉の顔を見ながら、俺はそう答えた。
 何だ。何てことの無い話じゃないか。
「夜。一緒だったのか…?」
 静かな。
 とても静かな口調の千冬姉の問いに、今度こそ俺の心臓は飛び上がり、口から出そうになった。
「ごめん…。」
 何を言っていいか、解らなかった。
 そして出てきたのが、ごめんの一言。
 他に、何も出そうになかった。

「勘違いをするな。別に怒ってはいない。そういう事もあるだろう。恋愛沙汰というのはな。昨日、一方的にお前が泊まると連絡された時から、確信に似た予感があった。一応聞いておこうと思っただけだ。あのお嬢さん。思ったよりも、積極的に出てきたな。最後に誰を選ぶかは、お前が決めろ。それまでは、色々あるだろうがな。これは私の印象だが、自分の何もかもを犠牲にして、目に映る人々を守ろうとするお前のことを。お前自身は知らないが、あのお嬢さんには見えている、ありのままのお前を。お前の心を包み込み、抱きしめようとしているように見える。ポーランドの時と、昨夜にあったであろうことを考えるとな。それはお前にとって、悪い事ではない。その上で、神無月のお嬢さんを選ぶのも自由だ。」
「うん…。」
 まだ何を言っていいか解らないで、俺は黙ってうなずいた。
「一夏。他人の事を考え、優しくあろうとする事。守りたいと思う事。それはそれでいい。だが、その100分の1でも1000分の1でもいい。自分に優しくなってくれ。お前の周囲は、そう願っているぞ。私もな。そして、お前の幸せを掴んでくれ。私の一番の願いはそれだ。覚えておいてくれよ。」
 しゃがんで俺の顔を優しい表情で見ると、強く、でも優しく抱きしめた千冬姉はそう言って部屋を出た。
 その後、しばらく亡国企業の調査資料を読んで、今後起こり得る事と、それへの対処法を考えると、ふと和琴を引きたくなって演奏用の部屋にいった。

 昭和40年代に作曲された「讃歌」を弾き終わった時、ドアのノックが叩かれる。
「どうぞ。」
 何を弾こうか考えていたら、メイドさんが入ってきた。
「旦那様宛にお手紙が…。」
「ああ。ありがとう。」
 法務省?
 何だろう?
 念の為に備え付けてあるペーパーナイフで、封筒の中身を取り出して読む。
 これか…。

 「民法第732条第2項適用条件該当のお知らせ。」
 ある意味、一番の頭痛の種が来た。

 民法第732条。
 とどのつまりは、結婚できる年齢を男性18歳。女性16歳としている条項の事だ。
 その第2項。
 これは男性に限って、特定の条件を満たしていれば結婚できる年齢を女性と同じにする事を国が認めるという条項だ。
 条件は、きちんと社会人としての責任を果たし、自覚のある人間。
 一定の収入と、資産を持っていること。
 とどのつまりは、きちんと家庭を持てる人間であるか否かだ。
 この人間性に関しては、審査対象の本人には知られずに様々な観点から性格等を調べ上げる専門の部署まである。
 そして、該当するか否かを審査して該当する人間には、その知らせが来るというわけだ。

 何でこんな事になったかというと、女尊男卑の世の中のいわばガス抜きと、人材育成が目的だ。
 女尊男卑だからといって、男性がいらないわけじゃない。
 その男性に、卑屈にならないで奮起してもらうためだ。
 つまり、努力の結果早くして社会にとって必要な人材になった男性への、特権という名のご褒美。
 事実、この制度で日本の技術力がだいぶ優秀になり、その他の分野でも優秀な人材が輩出され、人間性も向上しているという統計結果が出ている。
 結婚した人は、仕事を一層頑張りながらも家庭を大事にして、育児や家事でもパートナーを積極的に助けようとしているのも、統計結果が出ている。
 まあ、俺の場合は色んなことに関わって、やるなら全力でやるというのがスタンスだから頑張った訳で、別にこの条項はどうでもいい。
 が…。
 正直に言って、まずい…。
 該当者が増えれば当然官報にも乗るし、地方自治団体や該当者の情報を提供しているホームページに乗る。
 その県や市町村では名誉な事と、考えられるからだ。

 とにかく。千冬姉に、知らせないわけにもいかないよなあ…。

「ふむ。こうなったか…。近日中に、小娘たちも知ることになるな。」
 千冬姉独自のルートで収集した情報に目を通していた時に見せられて、「やれやれ。」という表情になる。
 だよなあ…。
 俺が千冬姉でも、そうなる。
「まあ。だからって変わらないけどな。早く結婚をするつもりもないし。やるべき事をやるよ。」
 臨海学校当日の自衛隊の備えに、目を通しておきたいしな。
 俺は、自室にもどろうとする。
「一夏。」
「うん?」
 呼び止められたので振り返ると、千冬姉が傍に来る。
「今のお前には、やらねばならない事が多くある。だが、こういった事も、少しは考えておけ。自分の未来像の、一つの形としてな。どのみち、小娘達が黙っておらん。その時、どう向き合うかも考えねばならんのだからな。」
「そうだな…。」
 考える必要…、無いけどな…。
「それともう一つ。最も大事な事だ。」
 何だ?
「馬鹿な真似だけはするな。いいな。確かに言ったぞ。」
「何の事か解らないが、解った。」
 気づき始めたのかな…。
 ただ1人の。そして、俺が誰よりも尊敬する姉さん。
 たった1人の家族。
 こういう時には、厄介に思える。
 尤も、俺が何をするかを気付いた時には、もう遅いんだけどな…。
 とりあえず。寮に帰る支度しとくか。

 夜。
 千冬は、1人でスコッチを飲んでいた。
 呑まなければやっていられない。
 生きていて、最もそんな気持ちになった夜だった。
『何かをするつもりだ。しかも、途方もない馬鹿な事を…。だが、それが解らん。束ですら予想していない。』
 最近、一夏の事に関して、不安を覚えることが多くなった。
 束とも密かに、頻繁に連絡を取り合ってそれが何かを互いに考えている。
 だが、何も解らない。
 故に、釘をさす事で何か解るか試してみた。
『結局、ほとんど何も解らん。なら、残る方法は一つか…。』
 千冬は舞桜と暮桜の待機状態を、見た。

「「「「織斑君!!」」」」
 うわっと。来た。
 こういう時は、役所も休んでようぜ。
 まったく。
「どうした?」
「第2項!」
 相川さんが、顔を近づける。
 やっぱり、誤魔化せないか…。
「別にどうって事ないだろう。俺が変わるわけじゃない。俺は俺だよ。」
 これは本音だ。
 該当しようが、しなかろうが俺が変わるわけじゃない。

「そういう訳には、いきませんわ!」
「そうよ!」
「そうだよ、一夏!」
「その通りだ。」
「ああ。」
「そうね。」
「そういう事。」
「ええ。」
「その通りですわ。」
「状況一変…。」
「予想外だけど、ある意味当然かしら…。」
「一夏、解ってるの!?」
 IS学園が誇る、28人の専用機持ちの内、最も多く所属する2年生の専用機持ち14人の内、セシリア達一夏との結婚の意思を明確にしている12人が一夏に迫る。
 とにかく、状況が変わった。
 年齢故に結婚は出来ない一夏が、そのハードルが無くなった以上、状況は一気に変わる。
 学園外の人間であるナタルが一夏と結婚しても、問題が無くなったのである。
 まして、一夏は、社会的地位、名声、資産全てを持つ侯爵家の当主であり上流階級の一員。
 人格的にも、一夏よりしっかりしている人間を探す方が困難と言われるほどしっかりしているので、全く問題ない。
 セシリア達にしても、卒業まで子供を作ることは出来ないが、結婚は可能である。
 そして、中途退学を覚悟するなら妊娠も可能。
 一夏としては、頭痛がするなどと言う程度ではなくなった。
 それこそ、セシリア達が冬菊のような行動に出ないとも限らない。
 特に、シャルロットやラウラは要注意だ。
 何しろ、前例がある。
 それを思うと、一夏は何か策は無い物かと考えたくもなる。

「ふむ。予想はしていたが、ここまで見事にあたるとはな。授業前だというのにいい度胸だ。」
 救いの神か、地獄の審判か。
 どちらでもあるんだろうな…。
 この場合…。
「さっさと席に着かんか!!他のクラスの者は、戻れ!!」
 端末の鉄槌が下り、鈴たちはクラスに戻った。
 ちなみに俺は、今回に限り鉄槌無し。
 ほっ…。

「先程織斑が言った通り、第2項に該当する様になっても織斑は変わらんし、日常も変わらん。いいな。それと織斑。」
「はい。」
「後で、いったん応接室に。神無月家と飛鳥家の御令嬢が、何やら用事で来るそうだ。終わったらすぐに戻ってこい。」
「はい。解りました。」
 何だ?
 というか、あちこちで空気が凄えぴりつく…。
 絶対、嫌な予感しかしない。
 特に2日前の夜の事があるから、冬菊の事は尚更な…。
 そう考えていると、委員会からテキストファイルで連絡が来る。
 やれやれ…。

後書き
かなり久しぶりの、更新です。
冬菊から、野点に招待された一夏は、肌を重ね合うという予想もしない事が起きました。
さすがにきまずい一夏は、仕事をしてなるべく千冬とは顔を合わせないようにします。
「他所様のお嬢さんに、何てことを…。」
こういう事になりましたからね。
しかし、千冬は予想していたので怒りもせず。
自分に向き合い、冬菊を選ぶのもいい。
そういいます。
気立てがよくて、器量よしの冬菊となら、一夏は幸せになれるかもしれない。
そう考えての事です。
その反面、一夏が何かをしでかさないだろうかと考えて、答えが出ずに自棄酒。
どちらも、心中は複雑です。
そして、一夏は国から結婚許可のお墨付きを。
いっぱいいっぱいの一夏に、さらに頭痛の種です。


IS<インフィニット・ストラトス>10 (オーバーラップ文庫)
オーバーラップ
2015-07-23
弓弦イズル

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by IS<インフィニット・ストラトス>10 (オーバーラップ文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル









私の貞操観
ゴマブックス
2016-07-20
与謝野 晶子

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 私の貞操観 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

後篇へ続く。

目次2へ戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
作者さん、お久しぶりです。
待ちに待った、新刊来たーーーーー!!
ライク
2016/07/04 16:00
ライクさん。
コメントありがとうございます。

>待ちに待った、新刊来たーーーーー!!
 まだ、そう言って下さる方がいて、本当に
 ありがたいです。
 出来る限り調子を戻して、連載をいつもの
 ペースに戻せるようにしたいと思っていま
 す。
CIC担当
2016/07/07 23:37

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第164話 一夜の後の一夏<前篇> cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる