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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第160話 赦されぬ業の跡<後篇>

<<   作成日時 : 2015/08/01 23:59   >>

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 次に一夏達が足を踏み入れたのは、100m四方の巨大な空間であった。
 但し、そこには今までで最も吐き気を催す物が数多くあった。
 百戦錬磨のデブグルーの兵士達も、思わず顔をそむける。
 無論、一夏も平静ではないがそれでも、全てを見て調べる必要があった。
 ホルマリン漬けにされている、13、4の少女の瞳の片方は金色だった。

 そういう事か…。
 それが、繋がって行ったんだな。
 悍ましい程の、闇の系譜。
 地下での研究。
 いや、地下でしかできない研究成果が、地上で活かされ形となった。
 ここから、全てが始まったのか…。
 クリスが。
 クロエさんが。
 そして、ラウラ達黒ウサギ隊の、ヴォーダンオージェが。
 当時のドイツは、予算の削減もありIS開発でも遅れ気味だった。
 特に、反応速度の面は致命的で、ハイパーセンサーで得た情報の処理やFCSを含む各種ソフトウェア、制御系の完成度がまだまだといっていい状態で、それを解消する為にドイツ軍上層部が出した結論が、パイロットで補う事だった。
 その為に、擬似ハイパーセンサーとも言える、ヴォーダンオージェが開発されラウラ達に移植され、パイロットの育成の為に千冬姉が招聘された。
 その後、千冬姉のトレーニングデータ等を参考にして、ドイツは後れを取り戻す。
 ますます、ラウラに言えない事が増えたな…。
 そして、何故、束さんがクロエさんを傍に置いているかも理解した。
 学園に2人もいたら、今まで以上に攻撃対象となる。
 それを、防ぐためにクリスをIS学園に入学させて、俺にエクソルツィストを開発させた。
 一方、クロエさんには、束さんが黒鍵を開発。
 これには、クロエさんに自分を守る力を与えるため。
 そして、黒鍵の運用データを基に、新しいISや兵装を開発する為。
 そっちの方は、俺もそれなりにレベルアップをしているし、第四世代ISの雛形であるキャメロットも開発しているから、いつでも量産型ISの開発を開始できるし、第五世代ISの量産型もプロトタイプも構想は頭の中で組み上がっている。
 さすがに、作りはしないだろうし、束さんも作れなんて言わないだろう。
 第三世代の稼働データが集まって、ようやく量産型の研究に間も無く入れそうなのに、いきなり量産型第五世代の試作機なんてつくったらどうなるか想像もしたくない。
 白式にしても、今のままでは不足と感じて第七世代に進化してあまつさえ第五形態だ。
 これ以上は、冗談抜きにヤバい。
 とはいえ、ここにあるデータを見れば見る程、IS保有国の技術がやはり不足している。
 パイロットも、軍のパイロットなら問題ないだろうが、それ以外は完全に不足している。
 なにより、ISの数が圧倒的に足りない。
 向こうは、少なくとも数倍の人型機動兵器を有しているし、あのデカブツもある。
 さらに、無人戦闘機も実戦配備されている。
 幸い、無人戦闘機ではエポナが充分対応置出来るし、東欧の軍も機動兵器さえこなければ大丈夫。
 依頼されていた艦も間もなく竣工して、各種テストを行って引き渡せばいい。
 後は、機動兵器か…。
 アメリカは、G−TMAのライセンス生産権の譲渡、技術公開、それに、日本との共同開発を大使館を通じて何度も申し出ている。
 いかに、日米安保があるとはいえ、そう簡単に渡せない。
 G−TMAは通常戦力としては、日本としても切り札だ。
 ま。他にもあるんだけどな。
 いずれにせよ。ここの事を片付けた後も厄介だな。
 問題がドイツだ。
 ヴォーダンオージェの事の真実を知っているか否かで、これからの対応が全く変わる。
 頭痛がしてきた…。
 そして、このグロテスク極まる実験の失敗作というこれからの研究に活かす為のデータ。
 こんな物。公開できるかよ。
 それこそ、アルゼンチンが気付いてなかった事に内外から物凄い糾弾が浴びせられるのは目に見えている。
 議会も大騒動決定だ。
 とりあえず。データは吸い上げた後、消すと。
 それと…。
「全員。ここで見た事は、すべて忘れろ。これは命令である。」
 今回に関して、派遣されたデブグルーの兵士に対する全権は俺に委ねられている。
 それを使って、ここで見た事を口外無用にすることを命ずる。
「イエス、サー!」
 いくら祖国のためとはいえ、これを報告する訳にはいかない。
 みんなそう思ってくれたようだ。
 うん…。
 ちっ…。
『散開して、フォーメーションを組め。警戒し、敵を見たら攻撃せよ。』
 ハンドシグナルで命令してから、すぐに全員散開して攻撃態勢を整えて警戒する。
 俺も、ラウラ、ナタル、イーリと一緒に警戒する。
 俺はM8を.300ウィンチェスター仕様にして、グレネードランチャーとして、H&K GLM。アメリカ軍でいうM320を下部マウントレールに、装備している。
 ラウラも同様。
 イーリはSCAR−Hに、最近海兵隊や海軍で試験的に運用が始まっている、イタリア製でアメリカ軍にも配備されているショットガン、ベネリ M4を短くして、アサルトライフルのオプションに出来るようにしたタイプを装備。
 ナタルが、ミニミを構えている。
 俺は、スナイパーライフルも持って来ているので、いつでも銃を変える事が出来るようにしている。

 そして、敵が来た。
 って、おい…。
 ホントに、ゾンビ見たいのが来たぞ…。
 しかも、カラシニコフ持ちで…。
 顔とかあちこち溶けてるし、嫌なにおいがする。
 にしても、動きが鈍いな。
 すでに、こっちの攻撃は始まっているのに、碌に反撃もしないでいる。
 いや。必殺の距離になるまで撃つつもりはないみたいだ。
 あちこち溶けてるくせして、弾を撃ち込んでもそう簡単にくたばらない。
 さすがにグレネードや、ショットガンのスラッグショットは一発で撃破出来るが、7.62mmNATOじゃ、かなり打ちこまないと駄目だ。
 俺のは、.300ウィンチェスターだが、それでも2、3発は撃ちこまないと撃破出来ない。
 失敗作か、単純な事しかできないがそこそこ役に立つから、万人にでもしてたって事か?
 でも、そういったトラップの引き金はないのはきっちり確認したぞ。どういうことだ?
 くそ!これじゃ、埒が明かない。
 使いたくなかったけど、仕方ないな。
 俺はマガジンが空になると、他のマガジンとは別物のマガジンだと解る様にする為に油性マジックで印をつけたマガジンを装填してセミオートにして、一発撃ちこむ
 狙いは首。
 すると、首に命中した途端内部から首が破裂したようになり、頭部が落ちて活動を停止する。
 いけるな。
 気が進まないが、仕方ない。

 作戦の準備を整えている間に、H&K社から新型の弾丸が送られてきた。
 だが、それを見た俺は頭を抱えた。
 当然だ。国際法で使用を禁止されているダムダム弾の類だったからだ。

 ダムダム弾は、インドを植民地をしていた際、反乱鎮圧の為にイギリスが開発した弾丸の事だ。
 これが命中すると、弾丸が通常よりさらに大きく変形してして体内を滅茶苦茶に破壊する。
 腹に命中したら、内臓はズタズタ。まず助からない。
 あまりに残虐な弾丸なので、現在は使用が国際法で禁止されている。
 だが、それは人間に対してである。
 狩猟用として、これに類する弾丸は使用されている。
 しかも、最近はご丁寧に体内でさらに変形しやすい様に加工した弾丸まで発売されている始末だ。
 それも拳銃用。
 で、狩猟用にH&Kも独自に開発して、今回の任務に合わせて送ってきたわけだが…。
 いくら表面溶けてるとはいえ、首を内部から見事に壊すのかよ…。
 これ、猟銃用で発売しても、絶対にヤバイぞ。
 熊だろうがなんだろうが、体内をどんなふうに傷つけるか考えると気分が悪くなる。
 でも、今回ばかりはそうも言ってられない。
 謎の、巨大熊みたいなのが終点で待っているのを想定した場合、ここで弾の消費はできるだけ抑えたい。
 もちろん、充分に予備の弾は持って来ているが…。
 やがて、ゾンビもどきは全滅した…。

「疲れる戦いだったな。大丈夫か、一夏?」
「ああ。心配するな。指揮官の俺がこんな所で、へばれるかよ。」
 そう言って、センサーでゾンビもどきの残骸をチェックする。
『無理をするな。こういう時の為に、私がいるんだぞ…。』
 さっき一夏が使用したのが、ダムダム弾の一種だというのは解る。
 あんな物を使う事に対して、一夏が心理的に抵抗が無い筈がない。
 任務とはいえ、精神的に疲労していはいはずがないのだ。
 だが、一夏は上に立つ者として、決して部下に自分の弱い面を見せない。
 今回にしても、今までの生命を冒涜するような実験に対して、激しく憤ると共に、深く悲しんでいるのは明白だ。
 軍人であるが、同時に一夏は患者の為に常に全力で治療に当たる心優しき医師。
 そして、常に先人に対する敬意を忘れず、目標としている。
 そんな一夏の心は、今確実に苦しみ、悲しんでいる。
 ラウラは、それが聞こえそうだった。

 それからは、今まで以上に慎重にトラップの調査をし、敵と呼べる存在がいないかを調べながら進んでいった。
 そして、一夏は今回の件の真相に辿り着く鍵を見た。

 巨大な檻。
 成程、連中がこさえた物が元凶だったのか…。
 白衣を着ている。
 それに、IDカードらしいものが付いている。
 顔写真と、名前、専門分野か…。
 そして、爪で引き裂かれ、何かの噛み跡といって間違いない傷。
 さらに、銃創。
 45口径弾か。

「口封じをした後に、何かに喰われたといったところですかな?」
「ミッチェル、ウォーロック。人を捕食する熊とそうでない熊の違いをしっているかい?」
 一夏の質問に、2人は何らかの攻撃をしたからと、答えた。
「それもある。だが、本当の答えは、人肉の味を知っているか否かだよ。日本でも、熊による人間の捕食事件は起きているが、大体は最初は農作物とかを奪って満足していく。そして、その場を見た人間が、追い払おうとすると、たーげっとを人間にする。そして、人肉の味を覚える。そうなれば、熊は人を食料と見て襲う。他にも例はあるが、ほぼそれだ。始末した後、こいつらを喰わせて去る際に自由に出入りできるようにしておく。自分達はさっさと退散する。そして、軍がそれを発見。駆除しようとするも被害者続出。という事だ。来るぞ。迎撃する。何匹来るか解らんが、一匹残らず駆除する。野放しにしておくのは危険すぎるからな。」
 全員が、武器を構えて予備弾倉を素早く装填できるようにする。

「な、何だ?あれは。」
「デカい…。」
「ああ。」
 大きさは5mを超える。
 目は異常という言葉ですら足りない程、狂暴な光を放ち、鋭い爪で目の前の獲物を引きちぎり、食いちぎって胃袋に収めようという意図が嫌でも伝わってくる。
「撃て!」
 全員が、引き金を引き弾を撃ち込む。
 熊はそれを回避しようとするが、精鋭であるデブグルー達はそれを赦さずに弾丸を撃ち込む。
 おびただしい量の弾丸を撃ち込まれて、さすがに動きが鈍くなったところに、グレネード、スラッグショット。それに、狙撃手たちが.338ラプアマグナムを熊の急所に撃ちこむ。
 だが、数が思ったより多く、負傷しないまでも至近距離まで接近を許すケースが出始めてきた。

 ちょっと、まずいか。
 俺は、既にT−REXをベースにし、炸薬をより威力のある物にして、弾頭をより命中時に壊れやすくし、不規則に回転し、体内を高初速により凄まじい速度で進みながら徹底的に抉る弾丸で、もはや軍等の公的機関でなければ対処できない猛獣駆除時に使用する弾丸として開発された、14.9mm×76mmH&K−SJ弾を使用する、H&K AFに変えて、首を吹き飛ばして仕留めている。
 だが、狙撃銃はセミオート。
 機関銃の様に、弾をばら撒くことは出来ない。
 つまり、面制圧力がない。
 すでに、M8の弾丸は、使い果たしている。
 その内、AFの弾丸も切れる。
 仕方ない。
 俺の得意分野で打開するか。
 こいつは、生物でも間違いなく仕留める事が出来るし、その技量とパワーが今の俺にはある。

「ラウラ、ナタル、イーリ。向こうの支援に回ってくれ。俺は、1人で出来るだけひきつけながら始末する。」
 そう言って、一夏は超高圧縮高硬度コバルトハイス鋼製ブレードを、両手に持つ。
「何言っているのよ。いくらあなたでも…。」
「あの時とは違うさ。それに、この戦闘用プロテクターは、歩兵戦闘車でも持ってこない限り、傷一つつかない。じゃあ、頼むぞ。」
「あ、おい!!」
 一夏は、走り出して前面の熊に向かう。
 それを見た熊が、絶好の獲物と考えたのか一夏を爪で引き裂こうとする。
 しかし、それより早く、一夏がブレードで腕ごと熊の心臓と肺を胴体と一緒に両断した。

 なんだかんだで生き物。
 ゴーレムの固さには、及ばない。
 同じ轍は踏まない様に、やつらとやり合う事を想定した鍛錬も積んでいる。
 今の俺は、たとえ生身でも奴らを蹴散らすことが可能だ。
 そして、この熊どもはゴーレムより弱い。
 おまけに動きは、まるでスローモーション。
 かわすのは訳もない。
 さ。行ってみようか。

 兵士たちの一部は、信じられない光景を見ていた。
 全長5m以上の熊を、一夏がブレードで一撃で葬っている。
 しかも、熊の一撃はかすりもしない、
 一夏の反撃で、死体が増えるだけだった。
「さっさと片付けるぞ!!ここで、手間取ったら、シールズの名に泥を塗る!!直ちに殲滅しろ!!」
「その後は、閣下の援護だ。いいな!」
「サー、イエス・サー!!」
 巨体と凄まじい生命力を持つ、獰猛な熊にデブグルーは猛然と攻撃し次々と仕留めていく。
 そして、しばらくして、熊は全滅した。

「どうやら、解決か。戻ったら、私がすぐに報告書を作る。皆は、休んでくれ。しみついた匂いをシャワーで落としたら、酒と料理を存分にな。私の奢りだ。」
「はっ。ありがとうございます。皆も喜ぶでしょう。撤収準備!」
 すぐに、撤収の準備が始まる。
 さてと、後はここの後始末か。
 大至急報告書を作って、委員会の了承を取り付けて、アメリカ政府とアルゼンチン政府との折衝か。
 まだまだ、忙しいな。

 俺は帰還するとすぐにシャワーを浴びて、報告書を作り委員会に報告。
 施設を、IS委員会の管理下に置く提案をする。
 交渉の全権を任された後、アメリカ、アルゼンチン両政府との交渉に入った。
 アメリカはちょっと手間取ったが、事がアメリカ一国でどうこうできる事態ではない事を納得すると了承した。無論、真相が政府から語られる事も無く機密文書を含めて、公式文書に残る事も無い。アルゼンチン政府の要請で部隊を派遣したと公式記録に残るだけだ。
 アルゼンチン政府の方は、元々後始末も含めて対応が極めて難しいと考えていただけにアメリカに増援を依頼したが、できれば借りを作りたくないので、今回の件の後始末を委員会がするのなら借りにも何もならないのでそっちの方が良いと判断。了承を貰った。尚、今回の件で犠牲になった兵士の家族構成や今後の生活について尋ね、俺の方から、見舞金として、今後の生活や学校への通学の足しになればとある程度のお金を匿名で渡すことを依頼した。
 アルゼンチン側は、快く了承してくれた。
 遺族年金があるとはいえ、決して多くはない。
 今回お渡しする金額を合わせれば、大学への進学も、普段の生活も大丈夫だろう。
 元々、あのマッドドクター共があんなことをしなければ、こんな事は起きなかったんだ。ある程度、何かしたかった。
 死んだ兵士たちの魂が、安らぎを幾許かでも得て欲しかった…。
 教皇猊下から頂いた、ロザリオ。
 俺はそれに向かって、死んだ兵士たちの冥福を祈った。

「解決したぞ。だが…。」
 日本にいる千冬が事が解決したことを真耶に伝えると、真耶は何かただならぬことが解った事を理解する。
 千冬から渡された資料を見ると、クリスとクロエからラウラに繋がる前の闇の系譜について書かれていた。
「私達の誰かが、同行した方が良かったのでしょうか…。これは委員会の機密事項になることは確実ですし、一番沢山の物を胸にしまい込み背負うのは一夏君です。同様の事があれば、また…。」
「いつもそうはさせん。手は打つ。」
 向こうにすれば、仕方のない事であることは解る。
 どのような作戦にしても、犠牲者は出る。
 それを少なくし、かつ作戦を完遂させるには優れた戦闘力と指揮能力を持った人材を参加させるのが一番だ。
 各国がその際に白羽の矢を立てるのは、一夏。
 千冬は、そう簡単には動けない以上。そうなる。
 だが、いつも一夏に頼り切りでは、ますます一夏は学園生活から遠ざかるし、結局は道具も同然。
 何の為に、多額の予算で優れた指揮官を軍で育成し、部隊を鍛え上げているのか。
 一流の戦闘力を持った兵士でもある国家代表を育成するのに、大量の予算を投じているのか。
 そして、その一環としてIS学園に入学する。
 さらに言えば、学園の創立・運営資金は日本国民の血税である。
 これに加えて、生徒である一夏をやむを得ない理由があるとはいえ、こうも使われては一夏は各国に使われるために学園に入学したのと何ら変わりはない。
『いい加減に、自分達で何とかするという事を思い出してもらうぞ…。』

 ドイツはシロか。
 元々、ヴォーダンオージェの計画に携わっていた開発主任は、亡国企業の域が掛かった人間か…。
 以前、調べて解った金の流れが、こんな所で役に立つとはな。
 とすると、関連技術は亡国企業側から極秘裏に譲渡された。
 そして、ドイツで有効性が実証された後、この主任は事故死している。
 十中八九口封じだな。
 今となっては、推論の域を出ないが…。
 それにしても、LSD関係の研究が思ったより進んでた。
 確か、この手の研究は北欧の方が研究してた人間多くなかったか?
 今も研究しているNPOも、確か北欧…。
 何か、匂うな…。
 そっちは、次のラウンドでいろいろと調べられるから、その時に思う存分調べつくさせてもらうぜ。
 さて、そろそろ寝るか。
 1日休んだら、種子島だ。
 それに、気が重くて起きてるのが辛い…。
 ふと、ある事が浮かんだが、頭から追い払った。
 駄目だ…。絶対に…。
 そう思っていると、ドアを叩く音が聞こえる。
「どうぞ。」
 入ってきたのは、ナタルだった。

「眠れないのか?何か、飲むか。スコッチとブランデーならあるぞ。どっちにする。」
「心配だから、眠れないだけ…。」
 そう言って、ナタルは俺を後ろから抱きしめる。
「何が心配だって?別に俺は大丈夫だぞ。後始末は手間がかかりそうだけどな。」
 あれはまず処分だな。
 研究員は、何とか言い訳を付けて共同墓地に埋葬することになった。
 標本も、密かに埋葬だ。
 どこかでなんとか、無縁仏として供養してもらおう。
 後は、実験装置の類は片っ端から破壊。
 あの忌まわしい植物園も、焼却処分。
 それから、土を流し込む。
 これでいくか。

「嘘よ。あんなことがあって、一夏が平静でいられるわけがない…。貴方は、心の優しい人だもの…。だから、他人に辛い思いをさせない様に自分が辛い思いをする…。でも、それじゃ、いつか心が壊れるわ…。」
「そんな柔な精神はしてないよ。気持ちは受け取っておく。戻って、早く寝ろよ。明日帰国だぞ。」
 俺はいつもと変わらない口調で、ナタルに部屋に戻るよう言う。
「そう簡単に安心できれば、来ないわよ…。」
 そう言うと、俺をベッドに押し倒して唇を重ねる。

「少しくらい…。偶には、素直になりなさいよ…。私、できるだけ受け止めるから…。それとも私じゃ不足…。」
 大粒の涙が、俺の頬に落ちる。
「そんな事言ってないだろう…。」
「じゃあ…。お願い…。」
 俺の胸元に、ナタルは体を預ける。
 拒絶しても、駄目なんだろうか…。
 誰かを選ばないと駄目なんだろうか…。
 だとしたら、どうすればいいんだろうか…。
 でも、今、どうすればいいのかは、答えが出ている。
 いいだなんて、決して思えない。
 でも、それだとナタルの心が…。

「優しく。とは、行けないぞ思うぞ。」
「辛さを受け止めるって、そういうことよ…。」
 やがて、声を抑えた艶っぽい喘ぎ声と、ベッドがきしむ音が聞こえてきた。

後書き
後篇です。
人間は、科学の名のもとにどこまで悍ましい行為を行う事が出来るのか?
時折、その事について考える事があります。
時折、というか、どうも人間の心は弱くて、とんでもない事をしでかしてしまう傾向がありますね。
核兵器は中でもトップランクでしょうね。
ツァーリボンバーという、広島に落とされた原爆とは比べものにならない破壊力を持つとんでもない水爆です。
水爆だけでもとんでもないのに、何というものを作ったのやらと、知った時には目眩がしましたよ。
ラウラ達に続く闇の系譜もまたしかり。
やりたいから。できるかんきょうがあるから。やって、気が付いたらとんでもないことをしでかしていた。
これからもありそうで、何だか嫌になりますね。
人間は、禁断の果実の前では本当に心が脆い。
そう見えて仕方ないんですよ。
頼むから、核を凌ぐ大量破壊兵器なんて、作りませんよね?
さしあたって、事件は無事解決。
けれども、一夏の心は曇りどころか雨模様。
そこになんとか暖かい光を差し込ませて、一夏の心を包み込もうとしたのはナタル。
大使館では拒絶されましたが、今回はそうは問屋がおろしません。
つながりというか関わりでは、トップを走るナタル。
このまま、一夏の心を物にしてゴールインできるでしょうか?












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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
作者さん、自分も小説書こうとしたら、プロローグを如何したらいいでしょうか?
原作の誘拐の所で息詰まるのが悔しいです。
愚痴、失礼しました
ライク
2015/08/03 19:10
ライクさん。
遅くなりましたが、コメントありがとうござ
います。

誘拐の場面ですか。
これは、一夏の設定が関わると思いますね。
武術等で腕っぷしは相当に強いか。
普通の一般人か。
前者なら相当に手こずって、後者はあっさり
と。
あとは、理由づけ。
例えば、最近発売になった最新刊では、第2
回モンドグロッソの決勝の相手は、イタリア
代表であることが解りました。
マフィアが賭けの胴元をしていて、イタリア
代表に勝たせる為に、一夏をさらった。
というのもありだと思います。
あまり考え込まないで、シンプルに考えた方
が執筆が進みますよ。
私は一夏を何らかの事に利用するという設定
を決めて、誘拐とかは後に書く事にして入学
してからの場面から執筆を始めました。

いきなり誘拐のことを書かずに、まずは入学
してからの事を書いた方が進むと思います。
その上で、セシリア達と一夏の関係を原作通
りにするか、あるいは自分のオリジナルにす
るかを考えては如何でしょうか?

追伸
もし、私でアドバイス出来る事でしたら、執
筆に関しての質問は遠慮なくコメント欄にど
うぞ。
時間はかかっても、必ずお答えを書きます。
CIC担当
2015/08/10 21:46

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