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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第159話 アルゼンチン到着<後編>

<<   作成日時 : 2015/07/25 23:58   >>

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「悪性心臓腫瘍の切除、三尖弁の再建、肺の反転移植。合計で9時間22分。その後の骨の固定、傷の縫合。どれも完璧です。普通なら、肺移植だけでも9時間以上はかかる大手術なのですが…。」
「たゆまぬ研鑽の結果というべきだろう。頭から足まで、様々な症例の手術をこなし、総合診療で患者さんの病気を判明させ、日常へ復帰するきっかけを作る。新しい治療法と、医療器具も開発。その過程で様々な物を学び、さらに最新のオペビデオを見ての練習、論文のチェックをしているそうだ。東洋医学にも通じていて、脈診もかなりの物らしい。噂だが、独自の体系の脈診を持っているとも聞く。大したものだよ。」
 ベルナンデスの視線の先には、スタッフの一人一人に声をかけ握手をしている一夏がいた。

 上手くいった…。
 スポーツドリンクを飲み、ビタミンとミネラルを添加したゼリー状の食品とスティックタイプの食品を食べながら、俺は一息ついた。
 それにしても、あんな些細なことがヒントになるとはな。
 俺が、今回の術式を考え付いたヒント。
 それは、肺移植の治験集の頁をめくった時だった。
 頁をめくる。
 つまり、反対の側に動かす。
 そこから、肺動脈、肺静脈、気管支の形状を整えて左肺を右肺として移植する。
 これなら、左肺の正常な部分を活かしたまま、移植した肺を活かす事が出来る。
 もちろん、違和感はあるから、それを何度も何度もシミュレートして術式を完成させた。
 それでも、難しい手術だった事に変わりはない。
 まったく、こういう事は出来れば勘弁して欲しいな。
 リスクが高い。
 患者さんは、モルモットじゃないしな。

「メディコオリムラ。記者会見の準備が整いました。」
 そうだった。
 心臓腫瘍移植と肺の反転移植を一度に終えるなんて、まずないからな。
 脳死反転肺移植は、日本では岡山大学肺移植チームのチーフを務める大藤准教授が最初に執刀して、これを応用した母親の肺の一部を反転させて、重篤な肺疾患の幼児に移植する肺移植手術が世界で最初に行われている。
 ちなみに、海外では臓器移植は日本より機会が多いのでこんなリスキーな手術はあまりない。
 けど、日本だと少ないチャンスを生かす為に知恵と経験を総動員して術式を考えて鍛え上げた技術で確立させる必要がある。
 移植手術の勉強の為に、国内の病院に行った際にそれをつくづく感じた。
 人工肺。なんとかしたいな…。
 何とか。図面だけでも引きたい。
 まずは、記者会見か。
 マスコミ苦手なんだよな。俺。
 でも、これも仕事だからな。
 今回のオペで、俺は報酬受け取ってないけど仕事である以上やらないとな。
 後は様子を見てから、いよいよあっちの仕事だ。
 向こうもその頃には、準備が整うだろう。
 緊張をほぐすために、おれは人工肺の図面を頭の中で引き始めた。
 心臓手術用の人工心肺の一部と、人工呼吸器を融合させたような形にすればいいわけだよな。入ってきた呼気から酸素を抽出して、赤血球に届ける。
 これに関しては…。
 考えている内に、プレスルームが目の前になったので一先ず中止。

「順調ですね。ヴァイタルはいたって正常です。血管やリンパ節に僅かな悪性の腫瘍細胞が確認されましたが、それに対しては現在の治療の継続で大丈夫だと思います。」
 手術から4日、俺は経過観察と術後処置の結果をご家族に説明していた。
 刺激伝導系をきちんと確認して、腫瘍を切除したけど、最低3日間は経過を見る必要がある。
 これは、冠動脈バイパス手術なんかも同じだ。
 心臓手術は、手術をして終わりとはいかない。
 慎重に経過を見て、ICUから一般病棟に移ってさらに療養となる。
 その間、俺はある処置をしていた。

「しかし、あれは凄いですね。あれが医療機器として承認されたら、抗癌剤の使用量はいまよりぐっと少なくなりますよ。副作用で苦しむ患者さんも少なくなりますね。」
「ヒントがありましたからね。後は実際に作ってテストをして、治験をしても問題ない事を確認。医療機器としても認めてもらえるように、治験で実績を積み上げていけば、治療の質も上がるでしょう。」
 今回持ってきた、秘密兵器。
 NPSRT(ナノレベル精密定位放射線治療装置:Nano−level Precision Stereotactic Radiation Therapy device)
 通称キャンサースナイパー。
 折り畳み式のパネルに、ナノレベルの放射線照射装置と癌及び癌細胞を確認するための専用カメラをワンセットにして、大量に並べてパネル状にする。
 治療の際は、特殊なスモークガラス状のレンズを嵌めたマスクをかぶってもらい、癌細胞に反応する薬剤を注射。
 これで準備OK。
 パネル各部のカメラが、体内の臓器や脳等の癌だけでなく、血液やリンパ節からリンパ節に転移する非常に小さい癌細胞を映し出す。
 後は、体に可能な限り負担を掛けない様に放射線を照射する。
 ナノレベルなので、血液中やリンパ節間を転移する癌細胞もとらえて放射線を照射する。
 まさに、癌細胞を撃ち抜くスナイパーだ。
 ちなみにヒントになったのは、人工衛星中に太陽光発電パネルを開発している際に、ちょっと息抜きに映画を見たら、ガンアクション物でスナイパーによる狙撃シーンがあった。
 これを見て、パネルに癌細胞を捉えるカメラと放射線照射装置を可能な限り小さくして並べたらどうかと考えた。
 後は、ナノレベルのカメラと放射線照射装置を試作して使える事を確認。
 本格的な形にして、治験でも使えることを確認。
 厚労省に申請をして、最近許可が下りた。
 従来のガンマナイフやサイバーナイフは大きかったが、これはパネルとちょっとしたワークステーションクラスでハードウェアが更生されている。
 そして、町医者のレントゲン室のスペースと電源があれば、問題なく使用できる。
 つまり、癌治療の専門知識を持っていれば、放射線治療による癌の治療を専門にするクリニックも開業できる。
 特に脳腫瘍は、場所によっては完全に切除しきれないのでサイバーナイフの治療を併用する例も多い。ただ、値段が高いので予約が込むと何度も受けることは出来なくなる。
 けど、キャンサースナイパーならこれを置いているクリニックと病院が連携しての治療も出来るし、病院が放射線治療専門のクリニックを開業して連携するという選択肢もある。
 ちなみに、癌細胞に反応する薬剤は、残った場合は尿として体外に排出される。
 まあ、特殊な薬剤と言っても、タンパクや糖分の中で癌に反応する物を配合した物なので無害なんだけどね。
 手術翌日の腫瘍マーカーが若干気になったので、カンファレンスとご家族との相談で治療を開始した。
 パネルの重量は、5kg程度と非常に軽い。
 けど、使用している素材は凄く丈夫だ。
 これに、民間のワークステーションレベルのマシンに制御用システムをインストールした物に患者さんが乗るベッドとパネルを取り付けて背が高い患者さん用の伸縮式アームを備えた左右90度に動くユニット。
 これで構成される上に、既存の民生品を多く使用しているので値段も相当に抑えられる。
 フィルムに印刷する際は、レントゲン用の物を使用できるし、パソコンで見る時はPDFファイルにしてCDに焼く事が出来る。
 ことさら専門のフォーマット無しで、データを形にできる。
 性能は高く、導入はし易く、治療も受けやすく。
 これが、俺のモットーだからな。
 お蔭で、血液に乗って転移する可能性のあった癌細胞も全部対処した。
 入院時も血液検査は必要だし、定期検診も必要だけれど、再発の可能性はかなり低い筈だ。
 おまけに初期癌は、これだけで完治させる事も出来る。
 そして、治療の日々を終えて準備が整った。

「熊?このアルゼンチンで?」
 予想はしていたが、一夏は意外な表情になった。
 日本の北海道に生息する、ヒグマ。
 アメリカに生息する、グリズリーことハイイログマ。
 北極に生息する、ホッキョクグマ等。
 世界各地に熊は生息している。
 しかし南米では、メガネグマがエクアドル、コロンビア、ペルーといった国々に生息するのみで、アルゼンチンには生息は確認されていない。
「足跡の写真です。」
 一夏は写真を受け取って、大きさを測ろうとした。

 デカイぞ。これ。
 全高3mは間違いない。
 4mいっても不思議はない。
 ヒグマでも、かなりのヘビー級になる。
 グリズリーでも、そうだ。
 一般的にはそこまで成長しないが、長く生きたりあるいはえさが豊富な地域に生息する個体は平均を大きく超える程に成長する。
 ある例として都市伝説みたいなもんだが、内戦が続いたアフリカのある国では、遺体を棺桶に入れずあまり深く掘らずに土葬にした結果、野犬が死体を引きずり出して食糧にした結果、通常では考えられない大きさになって森の中に住んでいるなんてのがある。
 人間もそうだけど、豊富なエサは動物を通常の個体では考えられないサイズにする。
 昔見たマンガで、犬が主人公のやつではヒグマのかなり大型で狂暴な奴がでてきた、人間を襲っては食べた結果だろう。

「被害は?」
 まず、そっちを確かめないとな。
「今の所は、市民に被害はありません。ですが、かなり気性が荒いらしく、兵士にはご存知の通り犠牲者も出ております。他に木を爪で抉る様に引っ掻いた跡が多数。大きさによってはなぎ倒された物もあります。」
「動物園から、大型になるクマの類が逃げ出した例は?あるいは、ペットとして飼っていたケースは?最近、東南アジアの密輸業者が犬とだまして、子熊を売りつける例があるだろう?図鑑等でも熊を見た事のない人間を探しだして得るというのが。」
「そちらも当たって見ましたが、ありませんでした。引き続き捜査は継続しています。」
「そうか。」
 とりあえず、写真をと。
 うわ。強烈だな。
 ツキノワグマみたいに樹木を食べる熊は存在するが、そこまで凶暴な熊はそんなにいないぞ。
 グリズリーやヒグマでも、人を捕食するようになるのは人肉の味を覚えてからだし、よほど刺激したりしない限りは襲ってこない。
 大きさから考えると、ヒグマ、グリズリー、ホッキョクグマといったところだろうが、この国には存在しない。
 すると、やっぱり奴らか。
 遺伝子操作。
 20世紀初頭に絶滅したカムチャッカオオヒグマのDNAを仕込んで巨大にして、さらに狂暴性を増すように手を加えた。
 そんな所か。
 人間の血液って、手もある。
 死体を掘り起こすのも、一つの手だ。
 ヒグマ等のクマには、獲物をしとめた場所に埋めておいて後日食べにくる習性がある。
 死後、さほど経っていない死体は充分餌になる。
 そして、野に放って人肉を求める様にする。
 そんな所か。
 まずいな…。
 弾丸は強力なタイプでパーシャルジャケットにしているが、それで大丈夫か?

「既に犠牲者が10数名。死亡者もほぼ同数。最悪、民間人にも犠牲が出る可能性は否定できない。山に行けば遭遇するリスクもあるし、最近は熊が餌を求めて市街地に出没する例もある。パトロールは必要だが、これにはUAVを当てる。センサーが捉えた熱反応で、識別。部隊が対処する。また、聞き取り調査から熊の全高は最低でも3mはある物と考えられる。そこで、ハンヴィー等の軍用車両には、装甲を追加して攻撃に耐えられるようにする。搭載される武装は車内から操作できるようにする。相手を普通の熊と思うな。容赦なく弾を撃ちこめ。熊の急所は、配布した資料にある。兵士達に覚えさせておくように。現在、森林及びそこに住む野生動物の生態調査を行うUAV、MQ−1S シャープアイが被害が出た区域を中心に、徹底的に捜索を行っている。その間に我々は、嘗ては与太話だったが、今やそうとは言い切れないポイント。嘗てのナチス残党が暮らしていたと思われるエリアを徹底的に捜索する。何かしら、出てくるはずだ。尚、こちらが空振りだった場合に備えて、国家情報センターにもここ数年、何か妙な動きは無かったか調査を依頼している。いずれにしても、徹底的に捜索して何らかの尻尾を掴む。あとは、引きずり出して根絶やしにする。以上。各隊出動準備。」
 アメリカから派遣されたデブグルーから派遣された4個小隊の隊長たちが、立って敬礼する。
 一夏が答礼すると、分隊長たちはすぐに部下達の元に行く。

「さて、何が見つかるか。そして、何に出くわすか…。」
 発足時、過酷極まる訓練で徹底的に部隊を鍛え上げて発足したデブグルーだが、今回の相手は人間ではない。無論、人間もいるがそちらもおそらくまともではないだろう。
 いつものように、実力を発揮できるだろうか?

「閣下。この国に来るまでに、従来のグリズリーをベースにした異常な個体を想定した訓練を充分に行っております。いつもと些かかっては違いますが、その程度で苦戦するデブグルーではありません。ご安心を。」
 俺の考えていることを察したのか。
「済まない。貴官たちの実力を疑ったわけではないんだ。ただ、今回は常識では測れない、悍ましい物が出てくる可能性が大いにある。その辺りは覚悟しておいてほしい。」
「皆、承知しております。使用実包の口径を大きくした各種装備の試験、訓練も十分に行っております。」
「そうか。それならいい。さて。私も支度をするか。ファイルス中尉、コーリング中尉。貴官たちも準備をしてくれ。」
 そう言って、一夏は着替えに向かう。
 今回、一夏の直衛につくのはナタルにイーリ。
 それに、ワルキューレとドイツから来た護衛部隊からラウラ自ら1個分隊ずつ選抜した精鋭たちである。

 各部に複合材のプレートを各種防弾、防刃材質で作られた防御スーツに付けた戦闘用プロテクターのジッパーを締めてスイッチを押すと体に密着する。
 上にさらに防御用ジャケットを着て、チェストリグを身につけて予備マガジンを入れ、さらに手榴弾やグレネードの予備弾を入れたポーチを付ける。
 T−REXを収めたホルスターと、スピードローダーを入れたポーチもつけて、超高圧縮高硬度コバルトハイス鋼製ブレードを6振りに同じ素材のタクティカルナイフ。
 それと、出来れば使いたくないけど、これも持ってくるか…。
 アサルトライフルは、M8を.300ウィンチェスターマグナムを使用する様に再設計して作った物を軽く点検して正常な事を確認する。
 後は、スナイパーライフルも持っていこう。
 まさか、これ本当に使うとはな。
 白式の待機状態である腕輪を着けて、スポーツサングラスに似た眼鏡を掛ける。
 これは、ハイパーセンサーの基礎技術を応用したもので、サーマル、暗視装置等も兼ねる。
 緊急用医療セットも手にして、一夏は準備を完了する。

 デブグルーの兵士たちは、迷彩服にボディーアーマー、7.62mmパーシャルジャケットを装填しているSCAR−H、.50AEを使用するデザートイーグル、特殊合金製のタクティカルナイフを標準装備とし、防毒マスクを兼ねた目出し帽にヘルメット、AN/PVS−15暗視スコープをヘルメットに搭載。SCAR−Hには、EOTech553ホロサイト、AN/PEQ−15レーザーサイト、を装備している。
 支援火器として、ミニミのバージョンの一つ、Mk.48 Mod.0を.30−06スプリングフィールド弾を使用するタイプに再設計した物、ミラー・プレジション・アームズ社製 セミオートマチックスナイパーライフル MPA300の.338ラプアマグナムを使用するバージョンに、バレット社製アンチマテリアルライフルM82A1にリューポルド社製狙撃用スコープ Mark4 LR/T M1 8.5−25×50mmを搭載。さらに、M72LAW使い捨てロケット砲を後方支援を担当する兵が装備する。
 そして、ラウラが指揮する直援部隊、ナタルとイーリ。
 全員が準備を整える。
 行くのは、半数。
 もう半数は、UAVが例の奴を発見した際に始末しに行く。
「準備、完了しております。」
「うん。では、行こう。」
 表向きは、アルゼンチン陸軍の演習という事で、俺達は例の噂が立っていた場所に行く。
 さて、何が待っているのやら…。
 一つ言えることは、ろくな物が待っていないだろうという事だ。

後書き
手術は成功。
後の処置もきちんと行って、病院からの依頼は無事に終わりました。
いよいよ。本題です。
意外な事に、アルゼンチンは猛獣と呼べる動物がほとんど生息していません。
日本でも、本州にはツキノワグマがいますし、北海道にはヒグマがいます。
時と場合によっては、イノシシも危険です。
と、日本は結構怖い動物もいるんですけどね…。
南米にいるのはメガネグマという熊がいますが、太平洋側が生息地で、ことさら人間を襲うという事は無いようです。
なので、一夏も情報を見た時はちんぷんかんぷん。
ですが、軍からは犠牲者が出ているので対処の必要があります。
事前の打ち合わせ通りに完全武装で、武器も強力な物を持っていっての調査。
事件の真実は?






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