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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第152話 バトル・オブ・ブリテン<後篇>

<<   作成日時 : 2015/05/23 23:10   >>

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「失礼いたします。バルト海での戦いに、決着がつきました。」
 一夏を含む、水上艦隊の幕僚達が会議を開いていると通信兵が入ってくる。
「結果は?」
 参謀長のルジッツが、戦いの結果を尋ねる。
「直属軍勝利。損害は軽微との事です。」
 それを聞いて、幕僚達は胸を撫で下ろす。

 勝ったか…。
 コストを抑えつつ、必要な性能を盛り込んで戦闘機や水上艦を設計した身としてはそれを運用する直属軍の勝利は本当に嬉しい。
 役に立ってくれたか…。
「それから、オリムラ閣下当てに電文です。」
 俺?
「機密指定はされていないかな?」
「一つはされております。」
「では、されていない方を読んでくれ。」
「よろしいのですか?」
「ああ。」
 別に、変な事書かれてるとも思えないしな。
「よき剣を与えてくれたことに、心から謝意を示す。以上であります。もう一つは、機密であります。」
 機密扱いの方を俺に渡して、通信兵は会議室を出ていく。

「まずは、一安心ですな。」
 航空参謀のドゥーエ大佐が、緊張がほぐれた表情になっていう。
 嘗て、爆撃機用兵理論を執筆して後に戦略爆撃に大きな影響を与えたジュリオ・ドゥーエの遠縁の孫にあたり、ハリアー、ライトニングUとパイロット畑を歩き続け参謀教育を受けた後に航空参謀としての道を歩き始めた、航空機運用の専門家で、その経験を買って俺が招聘した。
 それだけに、空戦の行方を大分気にしていた。
 直属軍のパイロットたちが、碌にスペックも解らない敵機と戦うと聞いて、気が気でならなかったんだろう。

「後は、こちらか…。」
 艦隊司令官のスティール中将が、哨戒の定時報告に改めて目を通す。
 哨戒しつつ、かなり広範囲にソノブイを投下して、何か不審な音紋を探知したら、上空を警戒している哨戒ヘリに自動的に通信が入る。
 上空は、E−1が監視しているから何か見つけたら、すぐに通信が来る。
 にしても、哨戒ヘリの過密スケジュールがちょっと問題だな。
 航続距離の関係で、仕方ないんだが…。
 他の幕僚も、気にしているみたいだ。
 艦載型の対潜哨戒機は、S−3 ヴァイキング以降開発されていない。
 今は、艦隊の対潜哨戒の主役は哨戒ヘリだからな。
 それに、少数しか生産されない艦上対潜哨戒機に開発・導入費を計上するのは、ある意味無駄とも言える。
 まあ、それは後で考えるとして、今はここに襲撃があるかだな。
 イギリス海軍は、クィーン・エリザベス級空母2番艦プリンス・オブ・ウェールズを旗艦として、45型駆逐艦ダイヤモンド、ドラゴン、ディフェンダー。23型フリゲートランカスター、ウェストミンスター、リッチモンド、サマセット、ケント、ポートランドで編成された艦隊を急遽集結させた。
 他に、見慣れない潜水艦があるな。
 ははあ。あれが、噂の。
 そう考えていた時、緊張した表情の通信兵が入ってきた。
 敵の来襲の知らせだ。

「中将。私は、他のISと一緒に迎撃に出る。艦隊の指揮は貴官らの役目だ。それに、自分の体で、戦闘機等の機動兵器に艦隊戦での連携。確認しておかなければならない事があるからね。何かあったら通信を入れてくれ。」
「了解いたしました。しかし、くれぐれも無茶はおやめください。」
「解っているさ。ボーデヴィッヒ少佐もいるし、新型制式機のロイヤルミラージュも4機いる。これだけ戦力があれば、大丈夫だよ。」
 ポーランドの事は、まだ響くなあ…。
 俺とラウラ。
 それに、IS委員会直属の最新鋭機。
 ちなみに、コアは束さんが作って委員会に送っていた。
 あまりというか、勝手に作るのはやめてほしいんですよね…。
 只でさえ、束さんはISを開発する際にコアを作って世界全体のISコアの数を増やしている。
 まあ、そうでもしないと自分で新開発ができないからやむを得ないとも言えるが、世界の軍事バランスにかなり影響が出る大きなリスクも孕んでいる。
 幸いといっては何だが、国家ではなくIS委員会に提供している分、各国の軍事バランスは均衡を保っている。
 ISコアを最も保有しているのは、五大国と日本で、44個。
 一番少ないのは、メキシコの2個。
 21個のコアを持つドイツを除けばその他の国は、20個未満。
 ほとんどの国は1ケタ台。
 委員会は、今回束さんが提供した4個を加えて20個。
 国家に属していないで、箒たちをカウントすると5個。
 そして、武装教官の精鋭が使用する陽炎、訓練機を合わせて、IS学園が35個。
 以外にも、IS学園は訓練機とはいえほとんどの国を大きく凌ぐ数のISを保有している。
 しかも、最新技術で改修されていて、リヴァイブにしろ、打鉄にしろ、他国の機体より高性能。
 そういうわけで、各国の最新鋭機が強奪を防ぎつつデータを収集する為に代表候補やテストパイロットを学園に入学させるという構図が出来上がっている。
 その結果、亡国企業は最新鋭ISを手に入れることが、ほぼ完全に不可能と言える状況になった。
 そして、アラスカ条約違反をしていないかを調査し、事前に防止する委員会も世界で見れば有数のISとコアを保有する。
 さらに、専用の研究所を持ち、各国のISのデータを収集しながら、独自にISを開発している。
 今回は、俺が開発した最新型第三世代IS「ロイヤルミラージュ」のコアに使用されている。
 勿論、機体に合わせて俺が最適化した。
 IS関係の揉め事が起きた時、これを調停するのも委員会の仕事だが、それなりの力が伴わないとどの国も耳を貸さない。
 それなりの軍事力を持つ必要が、どうしてもある。
 今の国際社会の、限界と言っていい。
 国家同士の平等を謳いながらも、外交面では軍事力が物を言う。
 それは委員会も同じだ。
 今でも、馬鹿馬鹿しいとしか思っていない空中艦隊や水上艦隊の創設もこれに関係している。
 水上艦隊は、アメリカですら保有していない超弩級大型空母を旗艦とする艦隊。
 空中艦隊は、ほとんどSFの世界だ。
 それぞれにIS部隊が、配備されている。
 これが、委員会の発言力を大きくした。
 今後IS関係の利権で国家関係が険悪になって、委員会が調停する事になっても今までよりやりやすいだろう。
 今接近している敵部隊を撃破してみせれば、水上艦隊の戦闘力の高さも証明できる。
 さらに、委員会もやり易くなるだろう。
 後は、委員会が力の誘惑に溺れない事を願うのみだな。

「全艦第一戦闘配備、戦闘機隊、G−TMA隊。直掩機のみを残し発艦。上空にて待機。パンテオンを中央に配置。アリエス、ジェミニ、レオ、ライブラを直衛に。残りの艦は輪形陣を。アリアンロッドは、パンテオンと直衛部隊の前に。攻撃態勢を整えよ。各艦の艦載ヘリは、対潜哨戒仕様。尚、固定兵装は20mmチェーンガンを選択。敵航空戦力と遭遇した際は、牽制しつつチャフ・フレア、スモークを展開しつつ帰艦せよ。」
 スカパフローを出港した水上艦隊は、スティールの指示で陣形を整える。
 旗艦であるパルテノンの直衛にゾディアック級駆逐艦4隻を配置。
 周囲を残り8隻の輪形陣でパンテオンと直衛部隊を囲むようにし、直衛隊の前方にアリアンロッドを置いて攻撃態勢を整える。
 一夏を含むISパイロット6人もISスーツに着替えて、ハンガーで待機していた。
 各種センサーと兵装の搭載を終了したMGH−2100艦載ヘリとMV−22S オスプレイ対潜仕様が発艦して、艦隊の外側で対潜警戒に当たる。
 既に、E−1 早期警戒機が高度1万m以上の高高度から警戒している。
 水上艦艇、航空戦力、潜水艦。
 どれがこようとも、速やかに対応できるようになっていた。
 パンテオンからは、直援以外のF−3M シー・ゼロとG−TMA、GT−000 シルフィードが発艦を終え上空待機に入っている。
 各艦のCICではオペレーター達が、哨戒機の情報と艦のレーダー、ソナーの情報を処理しながら、敵襲に備えている。
「全哨戒機、警戒を続行中。」
「艦載機部隊、発艦を完了。」
「医療班及びダメージコントロール班配置につきました。」
「戦闘準備完了。」
『初めての戦いになるが、皆、日頃の訓練の成果が出ているな。』
 艦が竣工するまで、クルー達はシミュレーターでの訓練を幾度も行っており、戦闘準備はスムーズに行われている。
 後は、戦闘状態になった時に、きちんと戦えるか。
 スティールはその事のみに、集中していた。

 ん?
 艦隊及び戦闘領域の、全データリアルタイム通信?
 俺はIS戦闘に専念して、艦隊の指揮に口を出すつもりはさらさらないが…。
 一応、聞いておくか。
「中将、私だ。リアルタイム通信回線がつながったが、何か思う所でも?」
「閣下は、艦隊の総司令官であらせられます。いつでも、この艦隊の指揮を執れるようにと思いまして。」
 何で、そうなる?
 今回は、あくまで演習の視察が目的出来た訳であって、演習時の指揮も中将に任せることになっていた。
 そして、戦闘になったとしてもこの艦隊の指揮という職務は中将に委ねられている。
 空中艦隊の司令官は、俺が兼任しているけどな。
「私は艦隊の指揮に、口を出す気はさらさらないよ。ISでの戦いにしても、中将に、ルジッツ少将やドゥーエ大佐の指揮に従う。そのつもりだ。この艦体の司令官に任命した以上、よほどの事がない限り、私がいようがいまいが識見は中将たちに委ねられている。その事を、頭に入れておいてくれ。」
 この事は、よく理解してくれないと司令官や参謀長の職がお飾りになる。
 俺は、そんな気は毛頭ない。
「ご信頼いただき。ありがたく思います。ですが、司令部の指揮で戦いつつも状況を把握していれば、自ずと戦い方も変わりましょう。これはドゥーエ大佐の意見です。」
 なるほど。それは道理だな。
 パイロットとして第一線で戦い、その経験を活かして航空参謀としての職務についている大佐らしいな。
「了解した。いずれにせよ。指揮は任せた。」
「はっ!」

「ソノブイに感あり。哨戒機が捉えました。2時方向に潜水艦らしき推進音を探知。数6。距離90km。」
 パンテオンのオペレーターが、敵の接近を知らせる。
「浮上してくる気配は?」
「今の所ありません。」
「参謀長。どう思う?」
 イタリア海軍で海軍本部政策計画作戦部長を務め、士官学校で教鞭を執り未来の海軍士官を育成した経験を持ち、指揮官としての経験と優れた作戦立案能力を持ち合わせているサルヴァトーレ・ルジッツ少将に、スティールが訊ねる。
「潜水艦だけで、我が艦隊に勝つことは不可能。いざとなれば、ISは水中でも戦闘可能です。さらに大量の対潜哨戒機を配備している事ぐらいは、敵も想定している筈。ISを含む、機動兵器を投入して来るのは明白。いずれ浮上して来るでしょう。さらに先制攻撃で、ミサイルを発射する可能性も十分にあります。艦の防御力にもよりますが、浮上したままで砲雷撃戦を行う可能性も、完全にゼロとは言えないかと。」
 潜水艦の最大の武器は、隠密性である。
 東欧の直属軍も潜水艦の優れた隠密性故に、探索には手間取った。
 それを考えると、浮上しての砲雷撃戦はあり得ない。
 だが、今まで確認された様々な兵器とその性能を考慮すると、高い技術力が常識ではありえない潜水艦の建造を可能にする可能性は、いずれあるのではないかと、考えていた。

 軍艦の歴史には、技術の向上により革命的な艦を生み出した歴史が度々ある。
 各国海軍の戦艦を、建造中の物も含めて纏めて旧式にした、世界初の弩級戦艦ドレッドノート。
 戦艦の高い防御力と攻撃力に、高速性能を併せ持った高速戦艦クィーン・エリザベス級。
 既存の駆逐艦より若干増えた排水量で、5割増しの強力な兵装。良好な凌波性、高速性能、航続距離を兼ね備え、各国海軍を驚愕させて、既存の駆逐艦を旧式艦にした日本海軍初の特型駆逐艦吹雪型。
 海に面した地域なら、あらゆる場所に航行可能な航続距離と少数だが爆撃機を搭載し、戦略ミサイル原潜の祖となった潜水艦伊400型。
 世界最初の原子力潜水艦、ノーチラス。
 世界最初の原子力戦略ミサイル潜水艦ジョージワシントン。
 革新的なミサイル迎撃システムであるイージスシステムを搭載した、初のイージス艦タイコン・デロガ級等。
 少し考えるだけでも、これだけ思いつく。
 これ以外にも、変わった艦も多々あり、それらも最新技術を投入すれば別の潜水艦運用が生まれるのではないかという考えが、ルジッツにはある。
 事実、架空戦争シミュレーション小説でしばしば登場する潜水空母が、既に登場している。
 それ以外に、もし最新技術を投入すれば潜水艦運用に少なからぬ影響を与える艦にルジッツは心当たりがある。
「探知した海域外にも、可能な限り哨戒機を配置。さらに、艦隊に向けて前進した場合には、短魚雷を投下。艦隊は、敵ミサイルの迎撃及び搭載しているであろう機動兵器の発進時に対艦ミサイルを発射。我が艦隊の艦載機やG−TMAにも攻撃をさせます。これを第一波の攻撃とし、敵の反応次第で陣形を崩さず艦隊を前進させ、艦砲による攻撃も加えます。いずれにせよ。第一波攻撃で、戦術はほぼ決まると言っても過言ではありません。」
「相手の出方を見てか…。カードゲームならまだしも、命のやり取りでは堪らんな…。」
 事前の情報収集無し。
 しかも、シミュレーションによる演習を重ねているとはいえ、実戦は初めてである。
 本来ならば限りなくリアルな演習を行い、問題点を洗い出してから望むはずだったが、それを飛ばしての戦闘となると火ぶたが切られる前に少なからず精神的に疲労する。
 それは、他の参謀達にオペレーター達もそうであった。
「敵潜水艦群浮上を始めました。さらにVLSによるミサイル発射準備を完了しつつあり。」
「ECMスタンバイ。ミサイル迎撃準備。ディフェンダーCIWS自動迎撃システム作動。チャフ・フレア散布準備。」
 オペレーターからの報告を受けて、スティールはすぐに迎撃準備を終えるよう指示する。
 それを受けて、オペレーターは端末を操作して、全ての準備を終える。
「敵潜水艦群、対艦ミサイル発射!」
「迎撃開始。前衛EG−18I インターセプトグラウラーECM開始。各艦は、VL−ASROCUを発射し、防空圏に入り次第ミサイルを発射せよ。哨戒機は発射地点から敵潜水艦群の位置を割り出し、キラー・ホエール短魚雷発射。」
 スティールの指示に従って、インターセプトグラウラーが、新たに開発されたAN/ALQ−101戦術妨害ポッドとAN/APG−79(V2) AESAレーダーでミサイルに対してジャミングを開始する。
 信頼性の面で問題があったAN/ALQ−99の問題点を改善し、全体を小型化しつつも多機能・高性能化したAN/ALQ−101と、さらに全体的に性能を向上させたAN/APG−79(V2) AESAレーダーの強力なジャミングで少なからず対艦ミサイルのセンサーは異常を起こして出鱈目な方向に飛んでいく。
 さらに、レーダー基地だけでなくミサイルのアクティブレーダー誘導部を基に迎撃も可能になったHDAMが発射される。
 全弾撃墜とまではいかなかったが、4機の迎撃としては充分な戦果を挙げた。
 残りの対艦ミサイルに対して、各艦のECMシステムで電子戦が開始され、対空ミサイルが発射され、残りの対艦ミサイルも撃墜された。
 無論、水上艦隊側は迎撃ばかりしていたわけではない。
 日本、イギリスの共同開発で完成した短魚雷「キラー・ホエール」を哨戒機から投下し、搭載したVL−ASROCUを発射。
 迎撃しつつ、反撃を開始していた。

 始まったか…。
 さて、どんな物かな…。
 早速、派手に始まったな。
 向こうが対艦ミサイルを発射してきたら、艦隊は迎撃しつつ、日本とイギリスの共同開発で完成した、キラー・ホエールで攻撃か。
 浅深度から深深度まで対応可能。
 最大速度60ノット以上。
 弾頭の破壊力は、従来の4倍。
 だが、使用されている部品は民生品が多く占めていて、制御プログラムはLH−OSで組まれているので開発コストはかなり抑え込んでいる。
 特に動力源は、自家発電等の分野でだいぶ普及し始めてきた、俺が開発した燃料電池を使用しているので、従来に比べてかなり高出力なのにだいぶ安い。
 高速で推進可能かつ、可能な限り音を静かにする様に形状も工夫されているが、パーツは全て三次元プリンタで作られている。
 故に、面倒な加工も必要ない。
 後は組み立てるだけで、これもさほどの手間じゃない。
 プラモみたいな魚雷だ。
 結果、海自が使用している12式魚雷の半分程度になっている。
 イギリス海軍が使用しているスティングレイよりも、勿論安い。
 ちなみに、日本側の技術者として俺がかなり関わっている。
 というより、コストカットのアイデアは俺がほぼすべて出して、各社の技術者と検討。
 実現した。
 名前を何にしようとしたら、芝崎の技術者が鯱はどうだろうかと提案して、皆が賛成。
 キラー・ホエールとなった。
 鮫にとっても天敵である鯱が、潜水艦という獲物めがけて、この瞬間も猛スピードで迫っている。
 イギリス海軍の艦隊も、哨戒機からキラー・ホエールを発射していた。

「敵、魚雷一斉発射。数、48。我が艦隊とイギリス艦隊が発射した魚雷に向かっています。」
「おそらく、近接信管。爆発に巻き込んでその隙に浮上して機動兵器を緊急発進。再び潜航か。随分、大きな博打を打つ指揮官だな。ソナー。各自、危険だと思った際にはヘッドフォンを直ちにミュート。諸君らの耳が潜水艦との戦いでは頼りだ。ミュート時はモニターに表示された情報を基に、状況を報告せよ。」
 大量の魚雷の爆発音となれば、ソナーマンの鼓膜が破れる可能性がある。
 無論、交代要員はいるがだからといって、彼等を消耗品扱いするような悪趣味はスティールには無かった。
「接触まで、800。さらに魚雷を発射。数、先程と同数。別のポイントに発射。」
「やるな。なかなか、一筋縄ではいきそうにないか。水上戦を考慮するべきかもしれん…。」
 指揮官席のコンソールを操作して、双方の魚雷を空中投影式ディスプレイに表示する。
 このままのコースなら、少なからず敵の魚雷にセットされているであろう近接信管が作動した際の爆発に艦隊の魚雷が巻き込まれる。
『第一波攻撃後は、爆発でしばらくソナーは使い物にならん。敵も条件は同じではあるがな。となると、哨戒機の磁気探知機が頼りか…。』
 その後の状況と戦術をスティールが考えていると、ソナーマンが思いもよらぬ音を探知する。
「敵艦。発射した魚雷の後をついてきています。速度22ノット。」
「何?」
 予想もしない事態にスティールは驚き、ルジッツは考え込む。
『何が目的だ?爆発の中に突っ込めば、自ら船体にダメージを負うだけ。深度次第では、水圧に艦が耐えられまい。さらに言えば、爆発に巻き込まれないこちらの魚雷に喰いつかれて、沈められる。中に物騒な荷物でも、詰め込んでいるのか?』
 考えられるとすれば、大量の爆薬。
 もしくは、海洋汚染物質。
 最悪のケースとしては、核爆弾かダーティーボム。
 前者であれば、艦隊に被害が及ぶ可能性が高い。
 後者であれば、スカパフロー周辺は凄まじい海洋汚染にさらされる。
 水上艦隊は、国際的な非難を浴びるだろう。
『それが狙いなのか?もし、艦隊に非難を浴びせる気だとすれば、可能な限り早く魚雷を自爆させなければ…。』
 ルジッツは、自分の予想をスティールに話す。
 スティールは頷いて、イギリス海軍艦隊旗艦プリンス・オブ・ウェールズに回線を繋がせて手早く協議する。
「全ての魚雷を自爆。急げ。」
「は?自爆でありますか。」
「そうだ。急げ。」
「はっ!」
「全艦、後進。」
 念の為に艦隊を下げさせて、オペレーターに全ての魚雷を自爆させる。
 同時に、イギリス海軍も全ての魚雷を爆破させる。
 それに、潜水艦群の魚雷が巻き込まれ全ての魚雷が連鎖的に爆発していく。

 成程…。
 相手の行動は、予想外だったからな。汚染物質の可能性を視野に入れるのは至極当然。
 その点では、予防行為として中将たちの行動は正しい。
 が、おそらくは違う。
 俺はそう考えた。
 確信がある訳じゃないが、効率的じゃない気がする。
 核爆弾を爆破させたり、ダーティーボムを使ったり、海洋汚染を起こしたいなら邪魔者が少ない民間の港を選んだ方がよほどやり易い。
 民間船を装うのは、そんなに難しくないからな。
 今は、爆発の影響でソナーが使えない。
 使えるようになるまで、2、3分てところか。
 MADで、敵の磁気を捕捉するしかないな。
 この状況をもし利用するのが狙いなら、俺なら…。
 やっぱりそう来たか。
「ラウラ、出番が来そうだぜ。」
「そうか。念を押しておくが無茶はするなよ。まあ、新しいパッケージが届いた。今までの運用データを基に開発した物で、性能はいいそうだからお前のサポートもガードもできる。お前とロッテを組めば、倒せない敵はいない。」
 2機のペアか。
 ISは6機。
 自然とそうなるな。

「潜水艦群、急速浮上!」
「爆発の衝撃がダメージを与える外側で、艦を下から押し上げさせたのか。やってくれるな。哨戒機、全速退避!」
 スティールは、苦虫を噛み潰したような表情になる。
「閣下。対水上戦闘の用意をすべきかと。敵は機動兵器の発進以外に、こちらに水上戦闘を仕掛けてくる可能性があります。」
「潜水艦が?」
「はっ。」
 スティールが怪訝そうに首を傾げた時、ルジッツの意見の正しさを裏付ける報告がなされた。
「敵射撃レーダーに捕捉されました。」
「退避中の哨戒機より連絡。敵艦の一部が形状が変化して、砲塔になっています。」
「LRASM発射。回避行動しつつ、ECMで敵射撃レーダーを妨害。レーザー照準による照射を受けた場合にはスモークを発射。全艦砲戦用意。E−1からのデータもある。こちらの方が有利だ。落ち着いてやればいい。空戦部隊は、攻撃に入れ。IS部隊も発進。」

 いよいよか。
 しかし、あれを、最新技術を投入して再現するとはね。
 よほど、相手の裏をかくのに長けているのか、頭のネジが纏めて吹っ飛んでいるのか。
 さてどっちやら…。
 いずれにしても、ここで負けるわけにはいかない。
 そして、ポーランドみたいになるわけにもいかない。
 大丈夫、ラウラや他のISパイロットもいるしな。
 俺はそう言い聞かせて、白式を展開する。

後書き
バルト海の戦いは、東欧諸国の同盟軍の勝利に終わりました。
しかしながら、それだけでは終わらないのが世の常。
スカパフローに碇を下ろして、各艦の整備・点検を行いつつ情報を収集していた水上艦隊にも、襲撃が。
ラウラに、一夏が開発したIS委員会の制式第三世代IS。G−TMAにステルスマルチロール戦闘機にイギリス海軍からクィーン・エリザベス級空母の2番艦を旗艦とする強力な部隊も加わった布陣ですが、油断は禁物。
のっけから、意表を突く戦術を実行します。
艦隊と改修された、電子戦機がまずは迎撃をし、一夏達も出撃します。
戦いの行方は?
ポーランドのような苦しい戦闘になるのでしょうか?










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