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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第152話 バトル・オブ・ブリテン<前篇>

<<   作成日時 : 2015/05/23 23:00   >>

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「右腎臓動脈瘤切除終了。血管縫合に入る。8−0プロリン。」
 ロンドン大学医学部付属病院で、一夏は依頼されていた手術の執刀を行っていた。
 脾臓と左右の腎臓の動脈瘤の手術。
 しかも、患者は生まれつき体が弱く、大手術に耐え得るかが疑問視され、さらに動脈瘤の位置が悪すぎ、下手に手を出せば破裂してオペ中に死亡するリスクが高い非常に難易度の高いオペだった。
 名医揃いのロンドン大学でも、このオペは無理と判断され、患者が一夏にオペを依頼できないか問い合わせて欲しいと依頼し、横須賀病院に詳しい検査報告とカルテが送られて、一夏に検討を依頼したのである。
 横須賀病院の血管外科チームの医師たちもこれに手を出すのは危険すぎると判断したが、一夏は新型の器具を使用した最新の術式ならば望みはあるかもしれないという診断結果を術式の詳細を添えて送った。
 その後、一夏が執刀する事が決定。
 使用する器具とマニュアル類に、トレーニングメニューが送られた。

「縫合終了。時間。」
「3時間47分。」
 よし。
 思ったよりスムーズに、進んでいるな。
 きっちりトレーニングしてくれていたのもあるし、さすがはロンドン大学附属病院。
 名医が揃っている。
 さ、ラストだ。
「左腎臓の処置に取り掛かる、術野確保。」
 俺の手には、オペ器具は握られていない。
 その代り、リストバンドが嵌められて、拡大鏡の代わりにスポーツサングラスタイプのHMDがかけられている。
 腹腔鏡のカメラから送られてきた画像が、オペに携わっている医師のHMDに映し出される。
 ロボット手術が発展して、以前はモニター付きの専用コントローラーを操作していたが、最近は画像がHMDに映し出される。
 今日使っているのは、それをさらに発展させた物だ。
 画像を見ながら、俺が手を動かすと神経に伝達される脳からの指令をリストバンドがキャッチして、患者さんの体に設置された器具が動く。
 さらに一部の動作。
 例えば術野の確保の為の動きは、プリセットされて音声コマンドで入力すれば患者さんの内臓を傷つけずに術野を確保してくれる。
 同調式腹腔鏡。
 俺が考案した、新しい腹腔鏡だ。
 ロボット手術の機材を、よりコンパクトにして使えるようにはできないか?
 内視鏡の様に自在に動く器具で、腹腔鏡手術が出来ないか?
 そう考えたのが、スタートだ。
 そして、完成。
 この腹腔鏡器具の利点は、器具の動きが今迄に比べて人間の手技に大幅に近づいて、教材を使ってのオペシミュレーションをしている感覚でオペができることだ。
 手術の練習用の人体模型を使ってオペの練習をするってのは、よくあるしな。
 俺も学園に入学する前は、いろんな分野の手術の練習をこれで数えきれないほどやった。
 最近の腹腔鏡の器具もかなり進歩してきたけど、まだやっぱり人間の手の動きとは程遠い。
 だから、かなり練習しないと腹腔鏡の手術はできない。
 ただ、熟練すれば、より患者さんに負担を掛けないでオペが出来る。
 傷口が小さいからな。
 同調式腹腔鏡は、患者さんの体に掛ける負担を小さくした腹腔鏡手術の利点と、実際の手技に大幅に近いオペができる利点を持ち合わせている。
 今回の手術は、かなりハードルが高いがこれならいけると判断した。
 実際、手術は順調に進んでいる。
 左の腎動脈の動脈瘤は、腎動脈とろ過装置の役目を果たす糸球体を包む輸入細動脈の分かれ目にかなり近い。
 ここが破裂すれば助かっても、急性腎不全で左腎臓の糸球体はほぼ全滅。腎臓としての機能を喪失する事になる。
 高い確率で、腎臓を摘出しなければならなくなる。
 慎重に周囲の血管を動脈瘤から離して、動脈瘤の前後の血流を遮断。
 体外に摘出して、すぐにその部分の血管の縫合に取り掛かる。

「造影剤投与。血流を確認する。」
 造影剤が投与される。
 モニターには、膵臓に左右の腎臓の動脈瘤を取り除いて縫合した血管の血流が正常に戻っていることがよくわかる。
「成功です。ドクター。」
「ああ。さあ、最後だ。器具を取り出して、傷を縫合しよう。6−0PDS。それに持針器も。」
 最後は、自分の手で縫合しないとな。
 腹腔鏡手術は傷が小さいのが利点とはいえ、きちんと縫う縫わないでは患者さんの回復に差が出るし、何より雑に縫えば縫合痕は綺麗にならない。
 丁寧に、丁寧に、縫合する。
 それが、外科医の義務だ。
 テープを張って、縫合は終了。
「オペを終了する。」

「じゃあ、私はご家族の所に行ってくる。患者さんを頼む。」
「はい。」
 ICUに運ばれる患者さんを見て、俺は面会室に向かう。

「お待たせしました。結論から申しますと手術は成功です。これが手術をする前の患部の血流状態です。こちらが術後の血流状態です。動脈瘤を切除して血管を縫合した事で血流が正常になっているのが、お分かりになると思います。今日中に、息子さんは麻酔が切れて目を覚まされるでしょう。明日には、一般病棟に移って、容態が良好なら1週間ほどで退院となります。」
「わざわざ、日本から来てくださってありがとうございます。」
「いえ。そんな。どうぞ、お大事に。一般病棟に移られても2日程は、こちらで予後を見ますので。それでは。」

 その後、術後の経過は極めて良好。
 一般病棟に移ってからも、順調に回復。
 予定通りに日本に帰ろうとしたが、委員会の水上艦隊が竣工後の訓練航海でスカパフローを訪れることになったので、護衛の任に就いているラウラと共に実戦演習の視察をすることになった。

「司令長官閣下。態々の御運び恐縮です。」
「スティール中将。元気そうだね。」
 サー・デイビット・スティール中将。
 イギリス海軍第二海軍卿を務め、その前は水上艦畑を歩み、イギリス海軍の全艦艇の3分の2が碇を下すポーツマス海軍基地の司令官に就任。
 その実績を高く評価されて、第二海軍卿に就任した。
 その後、一夏が任期を終える前に水上艦隊司令官への就任を依頼。
 これを承諾して、今はIS委員会直属艦隊の中将として艦隊の指揮を執っている。

「訓練航海は順調のようだね。」
 一夏用の執務室の応接セットで、2人は訓練航海について話をしていた。
「はっ。このような巨大な空母と5万トン級の超弩級戦艦を擁する大艦隊の指揮は初めてでしたので緊張もしましたが、事前のシミュレーション施設における訓練が大いに役立ちました。全将兵が、この艦隊にすっかりなじんでおります。こちらが訓練航海の全データになります。」
 メモリーカードを一夏の前に置く。
「解った。後で見るよ。ところで、ハックマン大佐は何か言ってきているかな?」
 核融合炉を搭載した潜水艦部隊を率いて、隠密裏に調査を行っているハックマンから何か連絡が入っていないか。
 一夏は、スティールに訊ねた。
「今の所は。訓練航海ですので、早期警戒機、対潜哨戒機での哨戒訓練という名目で常に警戒は怠っておりませんが、これといった動きを示すデータも入手できておりません。」
『随分と、慎重になっているな。いや、慎重が過ぎる…。』
 ここの所の亡国企業の動きは、一夏の予想を超えて無さすぎる。
『権力闘争でも起きて、組織の立て直しの最中か?それなら、納得も行くが…。』
 優れた潜水艦隊司令官であるハックマン率いる、潜水艦部隊の密かな調査。
 竣工後の各種試験後に実施されている、現在の訓練航海の中での厳重な哨戒。
 ここまでして、何もデータが得られない。
 今まで、碌に全容がつかめなかったので、そう簡単に掴めるとは思っていない。
 だが、様々な情報収集をする環境が整っている現状で、ここまで情報がないとなるとさすがに一夏も不気味さと同時に焦りを感じる。
『落ち着かないとな…。将兵たちが浮足立つ…。』
 一夏は不気味さといら立ちを、紅茶と共に飲み干す。
「さて、しばらくは補給の為にここに立ち寄る。兵達も久しぶりの陸地でリフレッシュできているようだな。但し、民間人への暴力。特に女性への性的暴行、並びに金品の強奪はこれを厳罰。場合によっては、即決裁判の上の銃殺刑に処す。これを徹底する様に。我が艦隊は野党の群れではないのだからな。」
「はっ!全軍に徹底させております。」
「よろしい。では、私は航海日誌に目を通させてもらうとするよ。いきなり来て、済まなかったな。中将もゆっくり休むといい。」
「そうさせていただきます。」
 執務室を出ようとする際に、通信兵が電文を印刷した用紙を持ってくる。
 内容は、艦隊の司令部と一夏を晩餐会に招待したいという海軍からの物だった。
「せっかくの申し出だ。お受けしよう。」
 一夏は高級な紫檀のデスクに座り、デスクに置かれている高級万年筆と便箋を取り返事を書き、親書用の封筒を取り出すと返事を書いた便箋を中に入れて、蝋封をしてシールリングを押す。
「イギリス海軍のマーリンが戻る時に、機長に渡してくれ。」
「はっ!」
 通信兵が、執務室を出る。
「それにしても、執務室位もう少し実用本位で良くはないかな?高級な家具で埋め尽くす必要はあるまい。そういったのは、客人をもてなす応接室で十分だろう。」
 一夏自身、贅沢を好む性格ではない。
 元々、倹約家である。
 それこそ、パイプ椅子と簡素なデスクでいいと思っていた。

「閣下の御身分を考慮いたしますと、この程度は当然でございます。わずらわしいと思われるかもしれませぬが、これも任務とお思い下さい。」
 侯爵であり、ガーター騎士団の一員である俺の社会的地位は高い。
 そうでなくても、空中艦隊と水上艦隊という2つの強力な戦力を指揮下に置く俺には相応しい執務室があると周囲が思うようだ。
 一兵卒が使うような物を使っていては、俺の権威にかかわるとも考えている。
 無論、俺はそんなことを気にはしないが、俺が思う以上に周囲は気にする。
 故に、の執務室等には最高級の家具が取り揃えられている。
 食事は海軍の伝統で同じものを食べるが、きちんと食器に盛りつけられている。
 しかも、高級陶磁器メーカーのエインズレイ。
 俺は色々とあって身の回りの物もいわゆるブランド物というか、世界的に名の知られたメーカーの物を使用している。
 食器もそうだ。
 ちなみに、俺の家はマイセン。
 普通の食器で、いいじゃないか。
 それこそ、100円ショップでもいいのいっぱいあるぞ。
 まったく、なんか面倒くさい立場になったよな。俺。
 はあ…。
 昔の方が暮らしやすかったよ。
 これじゃあ、ゲーセンにもろくに行けない…。
 最近、行ってないな。
 新作、どんなのがあるだろう…。
 と、航海日誌をチェックと。
 ん?各国の犯罪組織の残滓の、監視情報が来ている。
 こっちも、目を通さないとな。
 今度は、ウィーンからだ。
 UNODCからか。
 目を通す資料が、増えたな。
 まあ、気にはなっていたからいいけど。

 航海日誌に目を通し始めたが、航行上のトラブルは起きていないな。
 各艦の整備記録も、問題無し。
 艦載機の発着艦訓練の状況も、上々。
 哨戒機のデータとリンクしての、警戒システムも問題なく稼働している。
 今は、洋上での補給時に補修、整備・点検が出来る様に浮きドックになるドック艦ヘパイストス級で一足先に整備・点検を終えたアリアンロッドの次にパンテオンが整備・点検を受けているが、きちんと出来ているな。
 パンテオンは全幅114mになる前代未聞の大型空母。
 この艦を整備できる自力航行が可能なドック艦を作るとこれまた巨大な艦が必要になる。
 そこで俺は、浮きドックになる場合に展開して全幅160mになるヘパイストス級を設計した。
 艦の固定は、専用のマニピュレータで行う。
 後は、配備している各種機器で艦の補修等を行う。
 一応、自衛兵装として、CIWS、MWSを2基ずつ装備。
 テロ対策として12.7mmRWSを2基装備。
 この艦は、護衛艦のゾディアック級なら4隻纏めて、補修、整備・点検を行えるし、補給艦も2隻纏めて補修、整備・点検を行う事が可能。
 加えて、軽い損傷は、ファフナー級工作艦で補修ができる。
 それらの運用も、問題ないな。
 艦隊の本拠地は、メガフロートを組み合わせて完成済みだけど、世界各地で運用する事を考えると後方支援体制は充実させたかった。
 上も、そこの所をかなり心配していたからな。
 とはいえ、この規模の艦隊をきちんと整備できるだけの艦を設計するとなるとコストも高くなる。
 装甲材も含めて、可能な限りコストカットをしつつ防御力を確保。
 後は、明日のシミュレーターを用いての実戦演習か。
 と言っても、かなりリアルに作ってある。
 艦載機は、格納庫に搭載したまま演習に参加するが、本当に飛んでいるような感覚になるし空戦になったら、その感覚がリアルに伝わってくる。
 これくらいでないと、実戦代わりの演習にならないからな。
 今までのシミュレーターのデータを基に改修して、一足先に空中艦隊で使用したができは上々。
 それで、今の艦隊が戦闘時にどれだけ対応できるかある程度解る。
 最初だが、非常に大事な演習になるな…。
 俺は執務室から、明日の演習が良い結果になる事を祈りつつ、パンテオンと他の整備・点検状況を見ていた。
 さて、次は残りカスの監視状況か。
 日本のあれには、参ったからな。
 他もああだと、はっきり言って笑えない。
 うん。基本的には警察系。
 しかも、専門部署を充てて、特殊部隊に待機か。
 通常の治安維持と天秤に掛けた上で、人員導入。
 これでいい。
 なまじ集中し過ぎると、国内の治安維持に問題が生じる。
 その辺りは、きちんと解っていてくれている。
 ま。俺なんかよりずっと長くこの仕事に就いているわけだから、弁えていて当然か。
 取り越し苦労になって、ほっとしたよ…。
 で、UNODCからだけど…。
 ハードル、高いなあ…。

「閣下。失礼いたします。」
「どうした?少佐。」
 UNODCの件で考え込んでいると、虚さんが執務室に入ってくる。
「至急電です。東欧に所属不明の潜水空母が出現。発進した艦載機とEENC直属軍戦闘機隊が交戦に入りました。」
 何てことだ…。
 IS部隊が、もう少しで到着するのに…。
 ゴーレムやディースじゃないだけ、マシか。
 直属軍に配備する戦闘機は、向こうの経済水準に合わせてコストを抑えているが、性能は高い。
 他の兵器。
 特に、水上艦艇は様々な状況に対応できるように、設計している。
 無論、対潜水艦戦闘もだ。
 訓練もみっちりやっていると、聞いている。
 信じよう…。
 ただ…。

「少佐。パンテオンの整備・点検はあとどれ位で終わる。」
「10分ほどです。他の艦艇は完了しております。」
「哨戒訓練は、本番と同じで行く。哨戒機及び哨戒ヘリで発進可能な物は、すぐに発進。中将に艦隊を警戒態勢に移行する様に伝えてくれ。私は、ISスーツに着替えて待機している。ISと他の機動兵器の連携を実戦で試す事になるかもしれない。」
 事、水上艦隊の指揮はスティールに任せており、自分は口を差し挟む気はないという意思を一夏は行動で示していた。
 一夏がロッカーへ向かおうとすると、虚のインカムに端末に通信が入る。
「了解しました。閣下。スティール司令が、閣下にも幕僚会議に出席していただきたいとの仰せです。」
「解った。出ることは、その時に伝えよう。艦橋にいると、つい指揮に口を差し挟んでしまいそうだからね。」
 一夏は、虚を伴って会議室に向かった。

 一夏が至急電を受けた時、東欧では戦いが繰り広げられていた。
 一夏率いる芝崎の技術陣に、三菱等の日本のメーカーの技術援助で開発されたEAF−1 ファイティング・レイが、無人戦闘機と戦っている。
 ファイティング・レイは、直属軍の制式機であり、東欧初のステルス戦闘機である。
 パイロットは、この機体を乗りこなすべく日々厳しい訓練を積んでいる。
 旧式の軍用機ばかりを使用していた東欧の戦闘機パイロットたちには、洗練されたステルス戦闘機であるファイティング・レイはこれ以上ない程輝かしく映り、それだけにこの機体を駆ることができる事に誇りを持っている。
 そして何より、自分たちの祖国、東欧を何があっても守り抜くという強い意志があり、士気は高かった。
「よし、そのままだ。くらえ!」
 操縦桿のミサイル発射ボタンを押すと、慣性誘導とアクティブレーダーホーミング方式を併用した「スナイパー」中距離AAMが発射され、無人機を狩るべく向かっていく。
 それを感知した無人機は回避行動をとるが、ハンターAAMのシーカーは決して逃さず、命中して無人機は撃破される。
「次だ。」
 無人機を撃破したパイロットは、次の獲物を求めて自機を駆る。

「敵損耗率。5割を突破。」
「味方の損耗率は?」
「4%。撃墜された機体はありません。損傷した機体は、現在修理中。」
「侯爵を始めとする日本の技術陣の援助は、我らに祖国を守る力を与えてくれたな。海はどうか?」
「現在、母艦である潜水艦を捜索中。」

 バルト海方面艦隊旗艦「リエパヤ」は、指揮下の艦と共に姿を消した潜水艦を捜索していた。
「なかなか、捕まらんな…。各艦、対潜警戒を緩めるなよ。どてっ腹に魚雷を喰らう可能性もあるからな。」
 指揮官は焦る自分を必死に宥めながら、各艦に対潜警戒を緩めない様に命令を出す。
「これは…。」
 リエパヤのソナーマンが、微弱だが何かの音を捉えた。
「わずかながら、感有り。照合開始します。」
 潜水艦が無人機を発艦させるべく浮上した際に海中のソナーが捕捉した音紋と照合する。
「間違いありません。方位。0−4−6、0−8−5、2−4−6。全ての艦の推進音を探知。」
 直属軍に共通で装備されている統合ソナーシステム「ポセイドン」が、僅かな推進音を遂に見つける。

「見つけたか?」
「はっ、ソノブイのデータとも合致します。間違いありません。」
「よし。グラムパス VL−SUMデータ入力。海流、海水のペーハー値も忘れるなよ。尚、発射するのは、各艦とも2基ずつだ。逃す可能性も考慮する必要がある。各艦の目標を伝える。それから、敵が反撃してくる可能性も十分に考えられる。魚雷に対しては、近接信管をセットしたT−1短魚雷で対応。対艦ミサイルに対しては、ミサイル及びCIWSで迎撃。いつでも対応可能な様に準備せよ。各艦の哨戒ヘリは、絶対に奴らを逃すな。」
 旗艦からの指示に従い、各艦のオペレーターが戦闘指揮システムを操作して、攻撃の準備を進める。
 搭載されるレーダー、ソナー。
 4台のスーパーコンピューター、12台のワークステーション。
 そして、オペレーターの端末。
 それが、直属軍の水上艦艇の戦闘指揮システム、GCS(汎用戦闘指揮システム:General−purpose Combat Command system)である。
 レーダー、ソナーが得た膨大な情報を処理するスーパーコンピューターとワークステーションの性能が格段に向上したために、CICに配置されるクルーは交代要員も含めて大幅に少なくなっている。
 だが、性能は極めて高い。
 各艦が収集した情報だけでなく、哨戒ヘリからの情報も使用。
 膨大な作業を迅速に且つ正確に行い、攻撃と迎撃の準備が完了する。
「全艦、攻撃および迎撃準備完了。」
「グラムパス VL−SUM発射!」
 T−20 VLSから発射されたグラムパス VL−SUMは目標上空でパラシュートを広げ着水すると、弾頭に使用されているT−1LH対潜魚雷が、潜水艦めがけてエンジンを稼動させて水中を進む。
 T−1短魚雷をベースに3倍の高性能炸薬を搭載し、長い航続距離と推進速度を備えているT−1LHは、命中すれば十分に撃沈する事が可能である。
 潜水艦側はそれを悟った訳ではないが、甲板のVLSから対艦ミサイルを発射し、魚雷を発射する。

「敵潜水艦魚雷及び対艦ミサイル発射。」
「各艦、対魚雷用デコイ用意。ECMスタンバイ。迎撃開始!」
 指揮艦は、各艦に全速でのランダム回避を命じようとしない。
 全艦で全速のランダム回避を行えば、自分達で大音量の雑音を生み出す様な物であり、却って攻撃も防御もしづらくなる。
 故に、魚雷での迎撃、デコイでの欺瞞等で攻撃を回避する事に努める。
 各艦のTT−324 3連装魚雷発射管からT−1短魚雷が発射され、近接信管が潜水艦から発射された魚雷を感知すると爆発して攻撃を阻む。
 デコイに喰いついた魚雷は、まるで違う方向に進む。
 海面から出て艦隊に目標を定めた対艦ミサイルを迎撃すべく、電子戦士官がECMでミサイルを欺瞞しようとする。
 しかし全てを、ECMで阻むことは出来なかった。
 迎撃ミサイルとして、艦隊防空を担当するシースナイパーが発射される。
 GCSは迎撃時に、電子戦担当艦とミサイル迎撃担当艦に別れる必要がなく、両方を並行して行う事が出来る。
 シースナイパーがECMの網を潜り抜けたミサイルを撃破するが、数が多く全てを撃破することは出来ない。
 次に個艦及び僚艦防御を担当する、シーハンターが発射される。
 VLS1基に複数発搭載可能なシーハンターによる迎撃は、シースナイパーよりも濃密ではあったが、僅かながらも艦隊に迫る。
 それを全て撃破したのが、歩兵が使用する携帯型対空ミサイルとタルヌフ機械製作所製85口径30mm機関砲2門搭載した複合型のCIWSだった。
 チャフやフレアといった妨害手段も用意されていたが、使う事は無かった。

「敵潜は?」
「T−1LHに追尾されて逃げ回っていますが、確実に追い詰められています。」
 大型の戦術ディスプレイに、3隻の潜水艦とそれを追いかける大量の魚雷が確実に追尾している。
 互いの距離が近づき、命中した事がディスプレイで示されると、ソナーマンはヘッドフォンのミュートボタンを押す。
「命中。艦体圧潰音確認。」
 しばらくすると、ミュートをオフにして魚雷が命中した潜水艦の状況を確認する。
「艦体分解。着底しました。推進音なし。撃沈です。」
「そうか。初陣で勝利だな。各艦の状況を報告。後に母港に帰投する。」
 直属軍の最初の戦闘は、海空共に勝利に終わった。

後書き
ロンドンでの手術を終えた一夏は、訓練航海中の水上艦隊の視察をする事に。
編成されたばかりの艦隊で、全艦が新造艦。
さらには、新技術満載。
設計者であり、IS委員会直属艦隊司令長官として、空中艦隊と水上艦隊を麾下に置く一夏としては、訓練航海の状況に艦の運用状況と、目を通しておく必要のある事が山積み。
どんなに新技術を投入して高性能を謳っていても、きちんと使えなければ何の意味もありません。
使える艦で、艦隊が編成されているか?
どうしても、それを確認する必要があります。
そして、各国との間にできたパイプを使って招聘した艦隊の司令官や参謀長たち。
期待通りに頑張ってくれているようです。
そんな中、バルト海に再び襲撃の知らせ。
しかし、今度は一夏が開発に携わり訓練を重ねてきた、東欧諸国合同の軍が出撃し、見事に撃破。
とりあえずは、一安心です。














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