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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第151話 LOVE POWER<前篇>

<<   作成日時 : 2015/05/16 23:45   >>

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「縫合に入る。縫合面を剥離する。メイヨー。」
「はい。」
 一夏は、手早く適切に縫合の準備を整える。
「6−0PDS。」
「はい。」
 一夏は出来る限り傷口が残らない様に、真皮縫合で細かく丁寧に縫合する。
 最後にテープを張る。
「オペ終了。みんなお疲れ様。患者さんをICUに。私は患者さんのご家族に説明に行く。」
 一夏はLEDライトと拡大鏡を付けたスポーツサングラスタイプの眼鏡を外して、帽子を脱ぐ。
 そして、手術用ガウンを洗濯用の籠に入れると、患者の家族の元に向かう。
 今日、一夏は他の病院からの依頼で、江戸時代幕府直轄の金山があった佐渡島の公立病院にいた。
 この島には、心臓血管外科の専門医は週に1回大学病院から来るだけであり、重い心臓病の手術となると不可能。
 それで、MARIAの移植手術を始めとして、難手術をいくつも成功させた一夏に白羽の矢が立ち、一夏も承諾し佐渡島で手術を執刀した。

「お待たせしました。結論を申し上げますと、心筋の弱っていた部分は全て処置を行う事が出来ました。こちらが手術前の心臓。こちらが手術後の心臓になります。大きさの違いが一目瞭然であることは、ご理解いただけると思います。動脈硬化で細くなっていた血管と不整脈に関しても処置を施しましたので、もう大丈夫かと。後は、こちらの先生によく見ていただいてもらってください。お仕事の方は、お体を大事になさりながらしていただいて、昼休みに5分でも結構ですので仮眠を取る様にして戴ければと思います。たかが5分と思われるかもしれませんが、それだけでも体は休まる物ですから。」
 俺は手術の結果と、今後の生活面での注意すべき点等をご家族にお話しする。
「お忙しい中、わざわざこんな遠いところまで来ていただいて、ありがとうございます。」
「いえいえ。それでは、お大事に。」
「先生。大島さんが、麻酔からお目覚めになられました。」
 病院の看護師が、患者さんが麻酔から覚めた事を知らせに来る。
「はい。解りました。それでは、御主人にところに行きましょう。」
 術後の様子を見る必要もあるので、一緒に行く事にした。

「血圧100−53。心拍数58。不正なし。呼吸、脳波正常です。」
 看護師から渡されたポータブル電子カルテに目を通して、聴診器で心音を確認する。
 麻酔から覚めたばかりだけど、拍動のリズムは申し分ない。
 心エコーの映像を見ても、前とは見違えるように心臓がポンプとしての機能を発揮している。
 瞳孔の反応も、OK。
「大丈夫。順調ですよ。」
 心配そうに見守る大島さんのご家族に俺は、順調に回復していることを話す。
 それを聞くと、ほっとした様子で少し話した後ICUを後にする。
「今晩は、私も念の為待機しています。何かあったらすぐに対処いたしますので、ご安心ください。」
「よろしくおねがいします。」
 奥様が深々と頭を下げて、近くにいる親戚の家に戻る。
「先生。お持ちになった手術器具の滅菌処理、終わりました。」
「ああ。どうも。」
 例の麻薬事件が片付いた後、斗真の家の工場の機械を借りて、俺は自分用に手術器具を作った。
 心臓手術、脳外科手術を含めて、外科手術はどんなイレギュラーがあるか解らないから、それに備えて思いつく限りの器具を作ることは以前から考えていた。
 そして、今回の心臓手術では新型の拡大鏡。
 しかも、倍率を調整できるタイプを新たに開発して使用した。
 これは、結構深部の脳外科手術でも使用できる。
 日本だと、脳外科手術はほぼ全てが顕微鏡下手術だけど、海外。
 特にアメリカでは、外科手術用の拡大鏡を使う場合も少なくない。
 今回作ったのは、術中に血流の観察や血管。腫瘍を見分ける機能も付けたやつだ。
 一つ一つは、術中観察モジュールで観察可能だけど多機能の製品は、多分世界で初めてだろう。
 ちなみに、ISのセンサー技術を流用して開発した。

「どうもありがとうございました。遠いところを来ていただいて、本当にありがたい。」
 院長の本間先生が、深々と頭を下げる。
「そんな、どうぞ顔をお上げください。共に、患者さんを救う医者。やれる限りはお力添えをさせていただきますよ。」
 今回の患者さんは、心筋梗塞の影響で左心室の心筋の一部が壊死。
 結果、心筋がペラペラになって拍動が弱くなっていた。
 幸い拡張型心筋症ではなかったが、早急に手術が必要だった。
 けど、心筋の壊死により衰えた心機能を回復するためには、2カ所。
 しかも、心臓の表側と裏側に一つずつで、しかも病状から、人工心肺を使用して心臓を止めた状態での手術は不可能な状態だった。
 言ってしまえば、止めたら最後。
 動く事はない。
 結果、拍動下での手術となった。
 さらに左心室のかなり下の方の冠動脈が動脈硬化を起こしていて、バイパスするスペースも無かったから、急遽ステントを挿入する必要まで生じた。
 不整脈も起こしていたから、正常な信号の通り道を作るメイズ手術も必要になった。
 踏んだり蹴ったりとは、こういうこと言うんだろうなあ…。
 そこで、オペの前に動脈硬化を起こしている部分を含めて、バイパスした先の冠動脈をステントで拡張。
 それから、オペに入った。
 まず胸の方。
 つまり心臓の表の壊死した心筋と正常な心筋の境目を巾着袋の口を作る様に縫合した後に、パッチを充てて心臓の大きさを整えるドール手術で治療。
 裏が大変だった。
 とにかく、大変だったな。
 何しろ、バチスタをやるしかなかった。
 壊死した心筋を切除して縫い合わせる、ブラジルのランダス・バチスタ医師が考案した手術法で左室部切除術とも呼ばれる。
 これは、ドール手術よりずっとハードル高いし、リスクも高い。
 それでもやるしかなかったから、やり遂げた。
 心臓の大きさ、鼓動、血流。
 理想的になった。
 それから、メイズ手術を行って心臓の信号の通り道を正常にした。
 オペの時間も3時間20分台。
 可能な限り、オペ時間は短くしたつもりだ。
 後は、今晩様子を見て順調なら戻る。

「オペを拝見させていただきましたが、バチスタを含めて3時間20分台とは驚きでした。あのオペはかなりの技術が必要になる。傷つけてはならない部位を傷つけないようにするのは、実に難しい。京都大学、葉山ハートセンター、心臓血管研究所附属病院。この辺りでしたら、成功率も高いのですが、ここではいませんからな。それに、旅費は先生もち。手術費もいいと仰られた時は驚きました。」
 事と次第によっては、保険の対象にならない術式が必要と考えていたのか、本間先生は高い治療費を俺が請求すると思っていたらしい。
「飛行機のチケットもただではありませんし、只でさえ心臓手術は、治療費が高い。その他も手術となると医療保険に入っていても患者さんの負担は小さくありません。本来なら、私は自分で行う治療では、治療費を戴かないようにしたいのですよ。自衛隊病院でヒラだった時も、お給料は戴いていませんでしたから。高度救命センター長、総合診療部長、外科部長に就任すると体面もあるからという事で、戴いてはいますがね。その後は、使い方は私の自由という事で全額福祉団体に寄付しています。」
 寄付すれば、俺に支払われた給料が誰かの役に立つ。
 そう信じて、俺は給料を受け取った後は全額寄付している。
 無論、信頼できる福祉団体にな。
「さて、私は患者さんの傍にいます。引き継ぎの資料も作りたいですからね。テレビ局はそろそろ帰りますかね?どうも、慣れないというか、何ともね。」
 渚子さん経由で、医療関係の番組が今回のオペを取材したいと申し出て来たので、変に誇張したりしない事を確認して、患者さんとご家族、病院側の同意を得てOKした。
 今晩は、患者さんの傍にいながら新しい手術器具のアイデアを練るつもりだが、それも後でお茶の間に流れるのかな?
 何だか、恥ずかしいな…。
「あ。そうだ。これ。よろしければお使いになってください。」
 俺が考案した手術器具を、スペアを合わせて持ってきた。
「すぐに、東先生を呼んできてくれ。」
 院長は消化器と内分泌系が専門なので、外科部長の東先生が呼ばれる。

「これは、凄い…。これがあれば、患者さんへの負担を減らしながら繊細な手術が可能だ…。この拡大鏡も、いろんな機能が付いていて便利ですね。」
 拡大鏡は、倍率と機能。ライトの明るさを、空中投影ディスプレイを呼び出して調整できるので、使い勝手がいい。両手がふさがっている時に、音声コマンドで操作できるのも助かる。」
 どうやら、お気に召したらしいな。
「よければ、お使いになられた感想を聞かせて下さい。それを参考に、改良したいと思いますので。」
「必ず、お伝えします。」
 その夜は、患者さんの経過も良好。
 翌日、心エコー、心筋シンチ等で検査を入念に行って、術後の経過が良好である事を改めて確認すると、引継ぎを済ませて学園に戻った。

 学園に戻っていつも通りに、仕事と学生の二足草鞋の日々を過ごしていたら、突然、お客さんが来た。

「真理亜…。」
「一夏、久しぶり。撮影の時以来ね。」
 そう。
 真理亜が、花束を持って訪ねてきた。
「ベーメル。久しぶりだな。」
「篠ノ之さんも、元気そうね。」
 真理亜は、3年まで日本にいたから箒の事は、当然知っている。
「あ、千冬さん。御無沙汰しています。」
「ベーメルさんか。息災の様で何よりだ。活躍は聞いているぞ。」
 当然、千冬姉とも知り合いだ。
「滅多に会えない客だ。特例で、寮に入ることを許可しよう。」
 そう言って、千冬姉は職員室に行った。

「ここが一夏の部屋なの…?なんか、すごい…。」
 ロココ調のイタリア製高級家具と天蓋付きのベッドがある一夏の部屋は、大富豪の子弟の部屋かと思う程の豪華さだった。
「前に、いろいろあってな。その時の戴き物だよ。」
 一夏は3人分のアイスティーを淹れて、箒と真理亜の前にコースターを置いてその上に置く。
「でも、やっぱり学者というか、お医者様なのね。難しそうな本が一杯。しかも原語のままか。日本語のもあるけど。」
 一夏は学生生活と仕事の二足草鞋で、鍛錬と学生生活以外は研究と仕事に充てているので、様々な学術書が置かれている。
 幾つかは電子版を大量のハードディスクを入れたサーバーに入れているとはいえ、書物は多い。
「家には、結構大きめのラボもあって、そっちにもあるけどどうしてもな。」
 そう言って、一夏は苦笑いする。
「何だか、一夏らしいね。いつも一生懸命な所。そう言えば、篠ノ之さんは学園で久しぶりに一夏と会ったんだよね?お互いに解った?」
「ああ。背は伸びたが、一夏だとすぐに解った。」
「俺も、髪型ですぐ箒だとすぐに解ったな。でも、部屋が一緒だとは思わなかったな。ついでに、木刀と竹刀を振り下ろされるとは思わなかった。」
 そう言いながらも、一夏は懐かしそうな表情をする。

「えっ…。2人共、同じ部屋だったの…?男女別じゃなくて…。」
 真理亜が驚いたような表情で、俺と箒を見る。
 まあ、普通は驚くよな。
「一夏の入学がイレギュラーだったからな。部屋の都合がつかずに、一カ月ほどルームメイトだったぞ…。」
 箒が頬を染めながら、どこか優越感を見せる。
 うっ、真理亜がちょっと悲しげになった。
「まっ、その後は、いろいろあったけど俺の1人部屋だ。とは言っても、最近は、夜はほとんど病院だし、仕事の都合で授業に出れない時も多いから空けている時も少なくないけどな。」
 ホント。
 ここまで忙しくなるとは、思わなかったな。
「そうだ。これ。この所、お医者さんとして大活躍だね。高性能の人工心臓の埋め込み手術を幾つも成功させて、植物状態になると思われていた人の脳外科手術を成功させて、最近では、佐渡島のかなり悪い心臓病の人の手術も成功したでしょ。アルバムの収録の時に取材を受けて、テレビ局の人が話してくれたよ。医学の素人でも、物凄い手術だって解ったって。そのお祝い。」
 真理亜が花束と一緒に、何かを渡してくれる。
「初回限定盤の業界向けの見本。一応、私のサイン入り。よかったら聞いて。」
「サンキュ。ありがたく受け取るよ。」
 ふ〜ん。ジャケット可愛いな。
 小学生の頃は、気弱そうな感じだったけどすっかり明るくなった。
 やっぱり、ほっとするな。

「それにしても、日本にいる間に何かプレゼントしたいな。けど、俺も今は忙しいし、何か申し訳ないな。」
 プレゼントを受け取った以上、やっぱり何かお返しはしたいな。
「気にしないで。私が勝手にやった事だし。それに…。」
「それに、何だ…?一夏に何かもらったのか…?」
 箒、何、不機嫌そうにしてるんだよ?
「グラビアの仕事の時、一夏の演奏いっぱい聞かせてもらったし。知ってる?一夏の演奏使ったCM。物凄い反響が来たんだって。やっぱり、皆、一夏の演奏が素敵だって認めてるのよ。演奏家として活動しないのかとか、コンサートはないのか。とか、問い合わせの対応で大変なんだって、黛さんから聞いたわよ。」
 マジかよ?
 俺の演奏が?
 ちょっと、パイプオルガンと、ハープ、ピアノを弾いただけだぜ。
「ほう…。そうなのか…。音楽の授業では、まるで演奏をしないのにな…。」
「むくれるなって。別に、何てことないだろうが…。」
 何とか箒を宥めようとするが、そっぽを向いたまま。
 まったく…。
 子供じゃあるまいに…。
「特に、革命はポーランド大使館の人が聞いて、感動して涙が止まらなかったって。作曲された当時のショパンの心の中が曲になって自分達に伝わったみたいだって。」
 オーバーだっつの。
「やる気ないけどな。コンサートの類は。忙しいし。」
 俺はアイスティーを、一口飲む。
「プレゼントも、本当はバレンタインの時が良かったけど…。ねえ、覚えてる。あの時の事…。その…、恥ずかしいけど…、小学2年生の頃の事…。」
 ん?
 小学2年生…?
 げ…。
 あれか…。
 でも…。
 小学生の時だしな…。
「何だ…?何があった…?」
 箒の眉間に、皺が寄って来る。
 これは…、ヤバイか…?
「その…、バレンタインの時…。あの…。」
「チョコレートなら、私もやったぞ。て、手作りの…。少し…、形は崩れたが…、ハート型の…。」
 そう。
 当時、俺は結構チョコレートを貰っていた。
 その中には、低学年でも手作りの女子がいた。
 箒と真理亜もその中の1人だ。
 板チョコを刻んでる時に指を切ったらしく、絆創膏を貼っていて、俺に手渡したら、その手を隠しながら全力疾走で帰って行ったのを覚えている。
 まあ、ちょっと形は崩れていたけど、ハート型だと解ったから別に問題ないだろう。
 何より、手作りは嬉しかったしな。
 真理亜は小さなハート型のチョコだったけど中にクッキーを砕いた物を入れて食感を工夫した物。
 あの年頃としては、手が込んだものだったな。
 市販のより甘みも抑え目だったから、クッキーも手作りだったんだろう。
 けど…、それだけじゃなかったんだよな…。
 真理亜の家の、真理亜の部屋で貰ったんだけど…。
 その時がな…。
「まあ…。覚えている…。ああ、そうだ、そろそろ帰らないとまずいじゃないか?送るよ。」
「話を逸らすな…!何があった…?私には言えない事か…?」
 箒が是が非でも、話を聞こうとする。
「スカートめくりされた回数、私多くて、その度に一夏に助けてもらったから…。その時、何がいいかまるで解らなくて…、とにかく一生懸命考えて…、あげたの…。私の一番のお気に入りのパンツ…。その場で脱いで…。下半身も見える様にして…。」
 言ってしまった…。
 あの時、それはまずいとは思ったけど、真理亜なりに真剣な事だけは伝わってきたので拒否できなかった事は覚えている。
 これを知ってるのは、俺と、真理亜。多分真理亜の両親。それと誰にもしゃべらないと約束してもらった千冬姉だ。
「私には、言わなかったな…。欲しいとも言わなかったな…。」
 箒は、黙って下を向いていた。
「言えるわけないだろう。そんなの。」
 普通に考えてみろよ。
 女子に向かって、「今履いてるパンツくれないか?」なんて言ってみろ。
 変態扱い決定だぞ。
「あの時、大事なところ触っても良かったんだよ…。もっとよく見える様にしても…。私、今でも別にいいよ。ううん。私の身も心も全部一夏にあげる。言ったよね?私、一夏の為だけに生きるって…。」
 それを聞くと、箒は黙って立ってドアの方に歩いて行った。
「私、負けないから。どれだけ、一夏の事を好きな人がいても、誰にも負けないから…。篠ノ之さん。あなたにも、絶対に負けない。」
 真理亜がはっきりと、箒に宣言する。
「私も、負けるつもりはない。同じ寮で暮らしている私の方がチャンスは多いぞ?何があるかな?」
 そう言って、箒は部屋に戻った。
 そして、聞き耳を立てていた女子が、コントみたいに倒れ込んできた。
 さほど、大した話はないだろうと思って高をくくって気づいても放って置いたけど完全に裏目に出た。
 その後、俺は真理亜が宿泊しているホテルに送って行ったが、寮の中は微妙な雰囲気だった。
 特に、セシリア達が。
 それと、山田先生もだ。
 何で、山田先生が…。
 ああ、もう!
 仕事、仕事!
 いろいろ、あった方がいいなと思った器具も思い浮かんだし。
 けど、次の日も微妙な雰囲気だった。
 おまけに、中には脱ぎたての下着が欲しいならその場で脱いであげるとかいう同級生や先輩、後輩まで出てくる始末だ。
 勘弁してくれよ…。

 一夏が、溜息をついていた日を含む週の金曜日。
 真耶は臨海学校に関する仕事をすべて終えて、学校を出て久方ぶりに嘗ての学友たちと集まった。
「あ。織斑君の手術の取材か…。」
「やっと、少しはテレビに出る気になったのかしら?真耶はどう思う?」
 番組は、医師としての一夏を紹介し、今回のオペの対象になる患者の病状の説明に入っていた。
「ないんじゃないかしら。そもそも織斑君。こういうのに出るのって、好きじゃないのよ。寮でも、朝と放課後の鍛錬以外は、研究したり論文とか症例集に目を通したり。家では、楽器を弾いてるって聞いてるけど。」
「それ。びっくりしたわよ。あんなに上手だとは思わなかったわ。プロとしてやっていけるって。」
 真耶が一夏が自宅では楽器の演奏をしている事を話した時に、1人が話に食いつく。
「ねえ、真耶。織斑君、コンサート開く気とかないの?あれだけの腕前なのに、音楽家として活動しないのは、文化面での重大な損失だわ。今年、ロンドンのオークションでグァルネリを手に入れたでしょう?ピアノは、スタインウェイ、ヤマハ、ベーゼンドルファーどれかはある筈だし。パイプオルガンもそれなりのコンサート会場ならある。ハープは私が運送の手配を万全に整えるわよ。それなりのコネもあるから。」
 IS関係の仕事となると、様々な方面の人間と知り合いになる。
 とりわけ、運送業者や新型ISお披露目の為のイベントのプランナー等とは特に顔が広くなるので、真耶と話している同級生はきちんとした会場を抑え、信頼できる運送業者を手配する自信があった。
「織斑君。その気になれば二段以上に昇段できるのに、剣道も、柔道も、合気道、弓道、その他諸々全部初段のままだから。茶道と華道は特例じゃないかしら?号をいただいた時に、師範としての免状まで戴いたそうだし。まあ、ないわね。そもそも、時間をキープできないわよ。今も、新しい術式の研究に、人工臓器の開発の指揮を執ったりと大忙しだもの。最近、活動を始めた残りかすレベルの麻薬組織に対する対応に関しても、関わっているし。」
 「私が言っても、無理ね。」
 そう言って、真耶はカクテルを一口飲む。

『一夏君。素敵だったわよね…。カジュアルも、フォーマルも、どっちも上手に着こなして、凄く魅力的で…。ファッションセンスもいいから、服の選び方も上手いし、タキシードとか燕尾服とかの正装を着ても、これ以上ないくらい素敵だし…。いろんな女の子からプロポーズされて、当たり前よね…。』
 ナタル達、ISの専用機持ちの母国では国がバックアップに当たる体制を整えつつあるという噂も聞く。
 一夏は超一流の技術者であり、医者。
 どちらの技術も、喉から手が出る程欲しい物である。
 軍人としての能力も非常に優れており、外交、政治的センスも優れている。
 どれだけ、国に利益をもたらすか計算不能。
 そんな一夏が、母国の専用機持ちと結ばれて自国の国籍を取得すれば、これ以上有益な事はない。
 尤も、そんな事とは関係なく、ナタル達は純粋に一夏を愛して、生涯の伴侶となるべく、あの手この手で一夏の心を物にしようとしている。
 今の所、第三者の視点から頭一つ抜けていると見られているのが、既に一夜を共にして、一夏の腕の中で“女”になったナタルである。
 この事実は、他の女性達に衝撃を与えた。
 その後の、タッグマッチでは、専用機持ち達がぶつかるベスト8以降で、学園の専用機持ちの少女たちは一夏にプロポーズをした。
 タッグマッチ前には、楯無、セシリア、シャルロットがプロポーズをしている。
 ナタルも、改めてプロポーズをした。
 そして、一夏の幼なじみの1人であり、人気のシンガーソングライターの真理亜もプロポーズ。
 一つ一つ、プロポーズの事実が重なるたびに、真耶の心は鋭い痛みを感じた。
 特に箒は、一夏の子供を身籠ってでも妻となって見せると宣言。
 時と場合によっては、在学中に箒は妊娠する可能性すらある。
「私だって…、捨てた物じゃない筈なのに…。確かに、そんなに美人とは言えないけど、それなりに女としては魅力的なはずだし…。プロポーションには自信があるし。仮にも国家代表候補だったから、体力には自信もあるし…。もう、女として体は成熟してるし…。可愛くて、健康な赤ちゃんを産む自信だってあるのになあ…。一夏君との間にできた赤ちゃんか…。絶対に、可愛いわよね…。子育ては楽じゃないけど、充実した時間の筈だし…。」
 気が付いたら、真耶は思った事を口にしながら、次々とカクテルを注文しては飲み続け、周囲はカクテルグラスだらけになっていた。

後書き
毎度忙しい一夏ですが、今回の主役は一夏を思う女性達です。
冬菊のプロポーズから始まって、ようやく自分を思う箒たちの恋心に気づいた一夏ですが、誰にするかは決めていないというか、決められないよう。
今は、そういった物を忘れる為に仕事をしているような感じです。
それが逆に、周囲を焦らせます。
同じIS学園の生徒であり、同じ寮に住む箒たちとは違い、真理亜は住む国や仕事の事もあり、会いに行く事も本当に難しいのが現状。
だからこそ、なんとか一夏と一緒にいようとしますし、自分は一夏を愛していることを箒たちに明確に宣言しておく必要を感じたようです。
箒と真理亜。
互いに、嘗ての友人であり、一夏を巡る恋のライバル。
それを互いに認識し、静かに火花を散らす2人。
そして、新たなライバルの出現は周囲に変化を与えます。
ところでどこかの誰かさん。呑み過ぎですよ…。
いいんですか?
尚、今回のタイトルは昔好きだった曲から付けました。










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