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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第150話 糸くずと糸<後篇>

<<   作成日時 : 2015/05/09 23:58   >>

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「うん。大分順調ですね。」
 俺は、額の傷を確かめていた。
 万能細胞が修復の手助けを、きちんとしてくれてる。
 その後、ハーブティーを出して、話を聞き始める。
「麻衣、結構アウトドア派で、休日は友達とあちこち散策するのが好きだったんです。山とか森とか…。」
「成程。そこで何かあったのですか?」
「先月、どこかの森に行った時から、元々明るかったのが、さらに明るい性格になったんです。いえ、明るいというより、どこかおかしい感じで…。それからなんです…。一緒に森に行った友達が、死んでいったのは。」
 おいおい。
 ヤバそうな話になったな。

「最初に死んじゃったのが、沢城裕子。クラスメイトです。自殺でした…。」
「何か、悩みでも抱えていましたか?」
「人づきあいが上手で、人間関係のトラブルを起こす様な事はない子だったんです。成績もいい方でしたし、うちの学校、大学までエスカレーター方式で全員入学できますから、そういうので悩みを抱えていたなんて考えられません。仮に悩みがあっても、自殺なんて…。」
 自殺につながるようなファクターを抱え込むようではないし、精神疾患を抱え込みやすそうには思えないな。
 俺はその後、沢城に関してうつ病診断のテストをベースに質問をしてみたけど、やっぱり想像しにくい。
 1人目からして、怪しいな。
 本当に自殺か?

「2人目は春原忍。隣のクラスの子です。赤信号を無視して、横断歩道を渡ってそのまま…。」
「急いで、どこかに行こうとしていたとかは?」
「ふつうに歩いていたそうですから、無いと思います…。ただ、その時近くにいた同級生から何かを追いかけていたみたいだって、話を聞きました。」
 まさか、幻覚か幻聴?
 性格を聞きながら、1人目と同じ様に質問をしながら精神疾患の可能性を探ったが、結果として可能性はかなり低い。
 2人目も、どこかおかしいな。
 そして、俺はこの話を聞いて、名門女子高の生徒が続けて死亡した事がニュースになっていたのを思い出していた。

「何か、共通の趣味とかありませんでしたか?」
「園芸というか、植物を少し育てていましたけど。」
 植物ね…。
 その辺りに何かありそうだな。
「その事は、警察に話しましたか?」
「はい。一応。でも、特になんてことない事みたいに見られていた気がします。」
 一応、警視庁の管轄だから事件性があるとすれば、捜査一課。
 優れたベテラン刑事たちが、捜査するからどんな些細な事でも分析する筈。
 可能性があるとすれば、何かの組織が関与していて調べているのを気取られないように重要視していないふりをしているか。
 あるいは、本当に大した情報じゃないと考えているか。か…。
 前者なら、捜査一課と四課。組織犯罪対策部の五課あたりか。

「あの…。お願いします…。力になってくれませんか…?もう、友達が死んじゃうのは嫌なんです…。お礼をお望みなら、必ずお礼をします。私にできることなら何でも…。ですから…。」
 ちょっと、暴走気味か…。
 静止しておくか…。
「患者さんにも、関係していそうだ。私にできることはしますよ。とりあえず、患者さんの着替えを取りに行きましょう。お話を聞いていると、1人で行くのは危険そうだ。私も同行します。何より、学校側の許可が取れたとして、同年代の女の子の下着まで持ってくるのは、ちょっとね。待っていてくれますか?」
 少しでも雰囲気を明るくしたくて、ジョークを入れる。
 まあ、下着も持ってくることになったらちょっとどころか、かなり困るのは本音だけどな。
 千冬姉のなら、慣れてるけど。
「はい…。ありがとうございます…。」
 嬉しそうな顔で、頭を下げてくる。
「では、待っていてください。」
 俺は、院長室に向かう。
 血液検査をした時に、気になる事があった。
 もちろん、院長に知らせているし、この件を知った医者への口止めもしている。
 守秘義務があるから、喋る事はないだろうけど、結果を見た時に嫌な予感はしていたからな。

「成程。解りました。そちらは、任せましょう。」
「ありがとうございます。では、ICUで患者さんの様子を確認してすぐに戻ってまいりますので、それまでよろしくお願いいたします。」
「やはり、しばらくいるつもりですか。執務室に簡易ベッドを置くのを許可した時からもしやとは思っていましたが、程々にしてください。」
「解っております。では。失礼いたします。」
 ICUで、ヴァイタルと脳圧をチェックする。
 落ち着いているな。
 後は、明日きちんと覚醒するかだ。
 その後、障害が残っているかを丹念に調べて、今後の事をよく話し合う必要がある。
 それから、いくつか手配をして高校の寮に向かう。
 レクサスで良かったぜ。
 ランボルギーニだのポルシェだったら、目立ち過ぎたからな。

「そうですか。手術は成功ですか。当校の生徒を助けていただいてありがとうございます。木谷さんの事も、警察や病院の方からよく聞かせていただきました。傷を残さない様に丁寧に手当てをしてくださって、カウンセラーの手配もしていただいてお礼を申し上げます。」
「いえ。当然の事をしただけです。それに、藤代さんに関しては全てがこれからです。明日の午後に麻酔が切れますが、それから覚醒するか。そして、その後詳しい検査をしないと、まだなんとも…。それでは、これで。」
 付き添いをして、寮の部屋に入る。
 そして、俺はある物を見つけた。
 全貌が見えて来たな…。
「あの…。できれば、下着の類はこちらに見えない様に…。目のやり場に困るので…。」
「すいません。気を付けます。」
 木谷さんは可笑しそうに笑っていた。
 少し安心したよ。

 翌日。
 俺は、病院に詰めながら、執務室でいろいろとやることをしていた。
 無論、今回に関する事だ。
 もちろん、病院の仕事もきちんとやる。

「先生。ICUの藤代さんの意識が回復しました。」
「すぐいく。簡易検査の用意を。」
 目覚めてくれたか。
 ほっとしたよ…。
 フルスピードで執刀したけど、とにかく状態が酷かったからな。
 後は、障害の程度か…。

「血圧113−63。心拍数65。ICPも落ち着いています。」
 よし。ヴァイタルはOKだな。
 瞳孔の反応、良好。
 バビンスキー反応なし。
 神経伝達は正常か。
 視覚の検査をしてみたが、大丈夫。
 手足を少し動かせるか確認したけど、足首の先も手首の先もきちんと力が入ってる。
 その他、ある程度検査をしたけど、特にこれといった問題はなかった。
 事故当時の事も、覚えている。

「明日、診察をして良好なら明後日には一般病棟に移ります。その後、本格的に精密検査を行います。先程行いました簡易検査についてですが、これといった問題もありませんでした。このままいけば、生活に影響が出る様な障害が出る事もないでしょう。私自身、ほっとしていますよ。」
「「ありがとうございます。」」
「いえ。お嬢さんが頑張られたからですよ。後で、また回診に伺います。傍にいてさし上げて下さい。」
 説明を終えて、ICUへ行かれるご両親を見送ってから、俺は執務室で着替えながら、あちらこちらに連絡を入れる。
 パズルのピースは、揃って来たな。

「どうも。五嶋さんを通じて、連絡をしておいた甲斐はありましたよ。多忙な中ご迷惑だとは思いましたが、厄介なことになりそうでしたので…。」
 警視庁刑事部部長の井上さん。
 今は警察庁警備局長に就任し、警察庁の影の支配者と言われる五嶋さんの呑み友達でもある。
 キャリア組だが、敏腕刑事としても名を轟かせた凄腕で今もそれは衰えていない。
 この2人のラインがあるお蔭で、警視庁と警察庁が合同で動く事になってもスムーズに動く。
 で、五嶋さんの紹介で俺も呑み友達になっている。
「まずは、これを見てください。」
 俺は、藤代さんの部屋で見つけた物を取り出す。
 それは、棘のない小さなサボテンだった。
「エメラルドウバタマサボテン。学名スマラグドゥス・ロフォフォラ。別名「デス・ハニー」。最近、ボリビアで発見された、ウバタマサボテン属の新種。花の蜜とは別に分泌される液状物質には、大量のメスカリン。そして、エンドルフィンやセロトニンに酷似した成分も大量に含まれる事が判明している。ウバタマサボテン属はメスカリンを多く含む事が知られていますけど、中毒性や副作用がない。故に、古くから呪術医たちによって病気の治療や、様々な儀式に使用されています。ところがこいつは、強烈な中毒性を持つ。そこに掃除したカルテルやマフィアの残りカスたちが目を付けた。報告は受けていましたよ。こっちでも、その生態、栽培法等いろいろ調べはついています。生育が恐ろしく早く、2カ月もすれば売り物になる。しかも険しい山岳地帯に生育していたのに、素人でも簡単に育てられる。嘗ての隆盛を取り戻す為の資金源として、魅力的な事この上ありませんね。」
 見てすぐに、ウバタマサボテンの種類の一つであることはよく解った。
 結構、形状が特徴的だからな。
 サボテンを育てている人は、結構いるし、そういう人向けに色んなサボテンが園芸店やホームセンターで販売されているがどれも大抵棘がある。
「血液検査でメスカリンが検出された時から、何かしら麻薬がらみであった事はすぐに察しがつきました。ところが、注射針の痕はない。炙りとも考えましたが、鼻の粘膜を採取しての検査もシロ。もしやと思って、口腔内の粘膜を調べたら、僅かですが検出されました。それで、これだと考えたんですよ。どこまで調べはついているんですか?」
 一夏は確信に入る。
「栽培されているらしい場所は、突き止めています。ただ、犯人がまだ不明でしてね。土地の所有者も解ってはいますが、繋がりがまだ掴めていません。」
 片方の糸が出ているが、もう片方の糸は解らず。
 結果、結び目が見えないか。
 とするとだ…。
「鷹山俊二。鷹山不動産の社長でしたね。父親の跡を継いで、二代目に就任。わりとよくある事ですが、女好きで接待と称して高級クラブに入って派手に遊んでいる。ま、社長としての仕事はきちんとやっている辺り、無能ではありませんけどね。で、この2代目遊び人ですが、自分の家の不動産で金になるのを大分売りさばいているのを知っていますか?そして、同時期に奇妙な金の流れがある。スイスの銀行を経由してね。これがその資料です。」
 俺は、調査局で調べた結果解った事を纏めた資料を渡す。
「成程ね…。まるで、依頼されているみたいですな。表向きは、遊ぶ金欲しさにやっているようにも見えますけど、都内を中心に個人資産として不動産を入手している。これで、貸しビルの類をやったりして儲けているあたり商売上手ですな。だが…。売られていない不動産がある。1つは、運ばれた藤代麻衣さんが入った森。もう一つは…。」
 井上は、資料に目を通しながら全容を頭の中に描き始める。
「郊外にあるさらに大きな森です。調べたところ、どういうわけか厳しく入ることを禁止しているそうです。私有地なのでこういう事をするのは珍しくもありませんが、持っている不動産を売り飛ばしてスイスルートで金を手に入れ始めてから、新発売の麻薬が出回り始めていますね。当初は、原材料は解っていませんでしたが、後に判明。捜査の結果、栽培場所を見つけた。ですが、それ以前に藤代さんが偶然手に入れてしまい、中毒症状に。ここで栽培していたのは、おそらく、日本で栽培から商品への精製を流れ作業でやる場所を手に入れる準備段階でしょうね。立ち入りを禁止していなかった事から、こちらは囮でしょう。そちらを調べている間に時間稼ぎ。そして、売りさばくまでの流れを作る。」
 俺は、調査結果をさらに話す。
 どうもあからさますぎる気がするから、これもフェイクかもしれない。
 ま、証拠を掴み次第吐かせれば解るけどな。
「それから、潰れかけた指定暴力団陸山会に資金が流れ込み始めているのか、息を吹き返し始めている。そして、横須賀病院の周りをうろついている。そちらには、こちらからも人をやって監視させています。場合によっては、増員します。特捜部の知り合いにも協力してもらって、金の線はもうすぐ判明する筈です。」
 五嶋さんの友人らしく、井上さんもあちこちにパイプを持っており、特に汚職や脱税等の大きな経済犯罪を担当する特捜部に太いパイプを持っている。
 陸山会の影が見え始めた頃には、既に解明に動き出していたか。
 さすがだな。
「念の為、UAVで夜間の監視。昼間も部下に藤代さんが入った森を張らせています。陸山会の方は、こちらでも調べておきましょう。それと、米軍関係という事で横須賀に入った荷の行方が分からなくなりました。調べたら。真っ赤な嘘でしたよ。米軍関係という事で、税関はノーチェック。物の見事に利用されましたね。こちらの線は、まあ解りやすいですけどね。」
「ですな。そちらは、チェックメイトの段階でしょう。警備部部長は私の後輩です。話を着けておきますよ。」
「こちらも人を出す用意をしています。藤代さんの方は、密かに警護を着けています。腕は保証しますよ。では。今日の所はこれで。なるべく早く解決したいですね。もう一つの方も調べさせます。両方調べがつけば、後が楽ですからね。」
 警視庁を出る時に、俺は今後のスケジュールを井上さんに話す。
「終わったら、祝杯を上げませんか。ついでに、今後の事を色々と話し合いたい。警備部の方も連れてきますよ。」
「いいですね。では。」
 俺は、警視庁を出た。

「例の山に監視を、怪しい奴がいたら拘束しておけ。警察との連携は話が付いた。残りカスが思ったより厄介な事をしてくれているようだ。」
「承知。」
 周囲に一般人として溶け込んでいた甲州乱波に指示を出すと、一夏は病院に戻る。

 夕方。
 俺は、帰ってから2回目の回診に出ていた。
「順調ですね。このまま明日も順調なら、明後日からは一般病棟に移ることになります。」
 藤代さんの経過は、極めて良好。
 脳圧も正常だし、出る可能性が高いと見ていた何らかの障害も皆無。
 よく笑うし、よく話す。
 特に、髪を全部剃られていなかった事でほっとすると、嬉しそうに笑っていた。
 感情面は問題ないな。
 記憶、知覚、四肢の運動制御、その他の神経伝達も正常だった。
 MRIの検査でも、脳挫傷で壊死して切除場所以外に壊死している場所は極僅か。
 大きさも、高齢者によく見られる隠れ脳梗塞程度のが3つ。
 これなら、問題ない。
 脳内血腫もなし。
 明日も念の為、検査はするけど大丈夫だと思う。
「退院後は、しばらく自宅療養をしていただきますが、その後は日常生活に戻れます。体育の授業に関しては、慎重に経過観察をしながら考えたく思いますがいかがでしょうか?」
「「お願いします。」」
「では、それで。失礼いたします。」
 他にも患者さんいるからな。
 忙しいったらありはしない。

「順調ですね。体力も大分戻ってきましたから、明日からは普通の食事で大丈夫でしょう。」
 MARIAを埋め込んだ藤井さんの診察をして、食事は普通にとっても構わないと判断した。
 こういう風に少しずつ日常生活に近づけていくのも、リハビリだと俺は考えている。
 そもそもリハビリの目的は、病気になったり大怪我をした患者さんの状態を可能な限り。理想では完全に日常生活に戻す事だ。
 MARIAの稼働状況は、極めて良好。
 他の臓器の機能も、問題ない。
 食事を始めてみて、どうなるかだな。
 そっちは消化器の管轄だから、今の容態なら心配ないと思うけど念の為慎重に見ておきたい。
 拍動は実際の心臓にだいぶ近づけたとはいえ、本物の心臓じゃない。
 結局は作り物。
 だからこそ、全身の状態を日々きちんと見ておく必要がある。
「では、明日。」
 さ、他の患者さん。
 他の患者さん。
 あの後、藤井さんとは違う症状での患者さんに別のオプションを取付けてのMARIAの埋め込み手術も行っている。
 症状の違う患者さんだからこそ、それぞれの患者さん毎にケアが必要になる。
 それをデータ化して、実際の治療で使っても問題ない事を証明する。
 そうすれば、保険も適用になって今よりさらに手術費は安くなる。
 ビジネスとして軌道に乗れば、改良もさらに進んで最終的には全置換の人工心臓も実現する。
 これに関しては、東大で以前から研究していた先生と共同で今開発を進めているけどな。

「藤井さんに藤代さん。経過は順調だそうですね。」
 呼吸器外科部長の永田先生が、話しかけてくる。
「ほっとしてますよ。MARIAは初めての使用でしたし、藤代さんは脳挫傷とそれに伴う血腫によって、脳内の神経細胞の破壊状態がとにかく酷かったですから。ゴルフボール大の大きさからパチンコ玉の大きさまであちこちありましたからね。スピード勝負。それでも14時間掛かりましたから。」
 理想なら、12時間以内に終わらせたいんだけどな。
 心臓外科で使う拡大鏡並みの顕微鏡と、さらに緻密なオペができる手術器具が欲しいな。
 斗真んちの機械、使わせてもらうか。
「もしもし。あ、いつもお世話になっております。折り入ってお願いが…。はいそうなんです。もっと緻密なオペに対応できるような器具が必要になって。工場の一角に、スペアの機械がありましたよね?あれをお借りできませんか?もちろん、お借りした分のお金はお支払いいたします。え?タダでいい?でも、それでは…。そうですか…。それでは、お言葉に甘えて。はい。はい。失礼いたします。」
 電話を切ると、俺は小さくガッツポーズをする。

「おや。何かあったのですか?」
 箱崎先生が入ってきた。
「ええ。藤代さんのオペを含めて、様々なオペごとにもっと緻密で患者さんの負担を小さく出来る様な器具を作る必要を感じまして、中学時代の友人のお父さんが町工場を経営していまして、会社の仕事も良く頼んでいますから、機械を使わせてほしいと頼んだら、タダで好きなだけ使っていいというお返事をいただきました。」
「それはいい。いい手術器具ができれば、病院にもおいておきましょう。病院全体の手術のクオリティが上がりますからね。それにしても、藤井さんといい藤代さんといい、本当にご苦労でした。経過も良好で、ご家族も大変に満足していましたよ。で、お願いなんですが…。」
 凄え嫌な予感がする…。
「どこで聞いたのか、今回の脳外科手術に関して、今度の脳外科学会で発表をしてほしいと依頼が来まして。ああ、手術映像の公開についてはご家族と患者さん本人の承諾を得ています。一つよろしく。」
 そう来たのね。
 確かに、今度大阪で脳外科学会があるけどな。
 行くかどうか考えていたけど、行こう。
 スケジュールのやりくりは大変だけど、他の先生との交流は大事だからな。

 帰りの車の中で、俺は各種の情報を整理していた。
 陸山会への資金の流れのスタート地点は、ボリビアか…。
 ある程度予想はしていたけど、やっぱりといった感じだな。
 ルート開拓の為に、地下で蠢いているか…。
 後は、麻薬の販売ルートだな…。
 十中八九、陸山会で間違いないんだろうが…。
 うん?
 ははあ、成程。
 そういうからくりか…。
 有効な手だな。
 それが始まりか。
 これに関しては、裏付けをさせておこう。
 にしても、残りカスもしぶといもんだな。
 こういうのと遊んでる暇は、ないんだが…。
 指示を出していると、新しい情報だ。
 例の米軍関係を装った荷は、陸山会か。
 そういう事か。
 向こうも、馬鹿じゃないな。
 裏付けが取れ次第、決行と行くか。

 一夏がさらに各種調査を指示してから2日後の夜、東京郊外の森の近くに一台のポルシェが止まっていた。
「はあ…、はあ…。」
 荒い息を整えながら、森の中から出てきたのは若い男性だった。
 そして、車の中からケースを取り出すと中から何かの薬剤と注射器を取り出す。

「おやおや。こんな所で注射ですか?どうみても、糖尿病の患者さんが使っているインシュリンにも、アナフィラキシーショックに備えてアレルギー患者さんが持っているエピネフリンでもありませんね。」
 男性が見たのは、一夏だった。
「ヘロインですか?コカインですか?それとも、最近出回り始めたデス・ハニーですか?お初にお目にかかりますね。鷹山俊二さん。それとも、鷹山社長とお呼びすればよろしいですか?まあ、過去形になりますが。」
 一夏は、肩をすくめながら言う。
「何で、お前がこんな所に…。」
 鷹山があからさまにうろたえながら後ずさり、注射器とデス・ハニー入りの容器が地面に落ちる。
「ここの所、ずっとこの森ともう一つの森に網を張っておいたんだよ。あんたは、陸山会に女とデス・ハニーをあてがわれてすっかり虜になった。連中、風俗も経営しているからな。そして、売るつもりだった土地をボリビアのマフィアに提供して、多額の金を受け取っていた。金に関しては陸山会もだがね。あんたには、土地の賃貸料。陸山会に関しては、密売ルートの開拓の協力への見返り。既に、裏も取れている。そして、ここの秘密を知った女子高生の内、2人を殺害。もう1人も死ぬはずだった。中毒症状になった藤代麻衣さんがここで頭部を強打しての脳挫傷が元になってね。地図を調べるとこの森って結構高低差があって足を滑らせると危ないよな。中毒症状になって、必死にものを手に入れようとすれば、すってんころりんだ。3人がここに入った時から、全員を消すチャンスをうかがい、あんたたちに都合のいい展開になるはずだった。ところが、俺が手術を成功させたことで事態が一変。陸山会とあんたは藤代さんを消す必要に迫られた。下っ端たちが病院の近くをうろついていたのは、隙を見て殺すつもりだった。ところが、警察もそっちの動きに気づいていた。そして、俺も気づいているという可能性があると踏んだ。で、今、おたくらはなんとかしようと知恵を絞っている。さしあたっては、これ以上、ここの秘密を外部の人間に知られないように見回りをしている。ここはあんたの私有地。そして、囮とはいえ決定的な証拠が山とある。さぞ不安でしょうがないだろうな。ま、それも無駄だがな。陸山会の方は、今頃捜査一課が踏み込んでいる。そして、おたくも年貢の納め時だ。」
「だったら、何だっていうんだ?あんた、殺されるぜ。酷い死に方でな…。」
 冷や汗を流しながら、鷹山は虚勢を張る。
「向こうが先に潰れる可能性もあるって考えは、ないのか?こっちが一報を入れれば、軍か警察かあるいはどちらか、特殊部隊が連中を潰すぞ。」

 その時、数台の車が走ってきて止まる。
「その前に、君たちには死んでもらうよ。」
 南米系の恰幅のいい男が、部下らしい男達を10数人連れていた。
「おや。お早いお付きで。しかも、米軍経由と誤魔化して運び込んだ、違法改造の民間仕様のM16のセミオートモデル。」
 一夏が調査をさせて判明した、米軍経由と偽ったのは民間仕様のセミオートのM16を違法改造してフルオートにしたアサルトライフルだった。
「そう。それだから、君を生かしてはおけない。我々にとっても、死活問題だからね。君は頭が切れすぎる。故に危険すぎる。消えてもらおう。」
 部下達がライフルを構える。
 その時、サイレンサーで抑えた発砲音がして、部下達の手を銃弾が撃ちぬく。

 男が驚いて振り向いた先には、完全武装で最新の4眼ナイトビジョンゴーグルGPNVG−18を装着し、Trijicon TA31 ECOSとAN/PEQ−15レーザーサイトを装着したH&K G36KVを手にして、ボリビアマフィアたちの心臓に照準を定めている丹波乱波達がいた。
「俺だけでも、お前たちの相手は充分だよ。そもそも、お前たちに殺されるようじゃ俺はとっくの昔に墓の中。それ位解らないのか?それと、ボリビアの方はとっくに制圧されてるよ。ご愁傷様。」

「鷹山俊二。麻薬取締法その他の容疑で貴様を逮捕する。そこのマフィアたちも大人しくしろ。妙な真似をしたら、即座に発砲する。」
 警視庁から来た刑事たちが、完全武装のSATの隊員を連れて現場に到着。
 マフィアたちと鷹山を纏めて逮捕して、その場を去る。
「ご苦労様。」
 一夏が丹波乱波達に労いの言葉を掛けると、彼等は闇に消える。
 そして、迎えの車に乗って一夏もその場を去った。

 数日後、俺は両親に付き添われて退院する藤代さんを見送っていた。
 しばらくは、自宅療養。
 その後は、少しずつ日常に戻っていくことになる。
 その前に退院した藤井さんも、経過は良好。
 遅れを取り戻すために、体と相談しながら勉強に励んでいるそうだ。
 こうして、一連の事件は終わった。
 だが、この事件に裏があった。
 発端であるエメラルドウバタマサボテンを基にした麻薬の精製に関しては、他の組織が絡んでいる形跡が確認された。
 俺の頭に浮かんだのは、無論亡国企業。
 そろそろ、活動開始か。
 連中の目的は、各国の軍や警察の目を自分達から反らさせる事。
 再び、麻薬や覚せい剤が大量に出回り、その摘発に多大な労力を注ぎ込む前に防ごうと力を入れるだけでも、国家の隙が出来る。
 念の為、注意を促しておいたけど、ある程度は向こうの思惑通りになる可能性が高い。
 けど、向こうの狙いがはっきりしているのなら、俺達特別調査局が情報を収集。
 注意すべき国家がどこかを特定して、さらに注意を促す。
 場合によっては、俺自ら出る。
 そう簡単に、筋書き通りに行くと思うなよ。
 こっちも色々と起こりうる事態を想定して、対応策は考えているからな。
 今回の事は、いわば糸くずが落ちていたのを見つけた様なもんだ。
 だが、近くに糸があるということを、知るきっかけにもなる。
 伊達に、あっちこっちとパイプを築いちゃいない事を思い知らせてやる。

後書き
偶然は本当に偶然か?
イエスとも、ノーとも答えられます。
案の定、一夏が考えた通り只の事故ではありませんでした。
このペヨーテというサボテンの一種は実在し、シャーマニズムの儀式で実際に使用され、アルコール依存症の治療に部族の呪術医が使用した事もあるそうです。
ですが不思議な事に、中毒にはならない。
麻薬成分である、メスカリンを含んでいるのにです。
不思議な植物もある物だなと思い、ならこの変異種なら強い中毒症状になっても不思議じゃないだろうと考えて登場させました。
加えて、野生なら生育に時間のかかるペヨーテに対し栽培も手軽で生育も早いとなれば、マフィアの類が放って置くとは思えません。
実際、日本のヤクザも資金稼ぎには難儀しているらしいとも聞いていますから、飛びつくでしょうしね。
しかし、それより早く警察を含む多方面に太いパイプを持つ一夏が、調査し、合同で動く体制を整えてチェックメイト。
患者さんも回復の見込みが立ち、めでたしめでたし。
とはなりません。
今回の事を調べている内に、亡国企業の関与があったらしいことが判明。
いくら一夏の依頼があっても、国内で解決しなければならない事件が多発すれば、そちらを優先するのは当然です。
それが狙いと一夏は、考えます。
その前に、各国に注意を促す事で先手を取る。
再び見えた亡国企業の影に、一夏も気を引き締めます。






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