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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第143話 織斑一夏の困惑<後篇>

<<   作成日時 : 2015/03/14 23:42   >>

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 夜は、歓迎の晩餐会に園遊会。
 政治家だけでなく、アメリカの各企業の重役達が揃っていた。
 皆、一夏の戦いぶりを口々に賞賛するが、同時に一夏を通じてビジネスで利益を得ようとしている人間が少なからずいた。
 出席していた、楯無や千冬は出来る限り一夏の傍にいて、視線でその空気を察して牽制をする。
 ただ、一夏も芝崎インダストリーのナンバー3という重役。
 こういった事には慣れており、対応も問題ない。
 無論、不愉快さと無縁ではなかったが、いちいち気にしていてはそれこそ世捨て人になる必要が出てくる。
 そして、一夏は意外な人間と出会った。
 菫である。

「一夏さんなのですよね?」
「ああ。俺だよ。」
 菫にも心配かけたか…。
 冬菊の事を考えれば、当然かもな…。
「よかった…。また、暗闇の中に戻ってしまうのかと思うと…、どうすればいいのか解らなくなって…。」
 菫が泣きそうになる。
「どうしたんだよ?いきなり。」
 零れ落ちそうになる涙を、俺はハンカチでそっと拭う。
「光なんです…。」
 え?
 どういうことだよ…?
「一夏さんは、私にとって光が人になった方です。親の顔も知らない…。この足で、大地の上を歩く事も出来ない…。そのまま一生を終えると思っていた私に降り注いだ、優しくて暖かい光…。それが、一夏さん…。あなた…。だから、一夏さんが亡くなられるという事は、私の光が失われてしまう事…。本当に、良かった…。」
 俺、そんなふうに思われていたのか…。
 俺は、辛い思いをしている人の為に、何かがしたかった。
 その一心で、治療と開発に打ちこんだ。
 そういう事なんだけどな…。
「でも、失われなかった…。本当に嬉しいのです…。こうして、わざわざアメリカに来た事も、価値のある事になります。」
「そうか。まあ。いろんな人と出会うのはいい事だぞ。特に海外となると。」
 目と足が治るまでの間も、菫は海外で財界の様々な人間に出会っているが、今は同じ人間と会っても違う所もある。
 色々な発見もあるだろう。
 いずれにせよ。治る迄と治ってからだと、変化がある。
 今は、色んなことを経験するのはいい事だ。

「さて。皆さん。ここである知らせが届きました。それを読みあげたいと思います。」
 ん?何だ?
 ロゼワインを飲みながら、何だろうと思って大統領を見た。
「ラスカー財団より、アルバート・ラスカー基礎医学研究賞及びラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞授与の知らせです。たった今、ラスカー財団より届いたばかりです。しかも、2つの賞を1人のある医師に贈るとのことです。多忙な日々の中、時にオペ室で死の淵にある患者を救い、ERに運ばれてきた患者に適切な治療を施し、ある時は診察室で不安に押しつぶされそうな患者の苦しみを癒し、そして、新しい治療法の研究にありったけの力を注ぎ続ける、優しく、暖かく、献身的で、優秀な医師にです。」
 そりゃ、凄いな。
 野口英世とアルベルト・シュヴァイツァーみたいだ。
 片や細菌の狩人と呼ばれ、顕微鏡だけを武器に幾多の病気と闘い続けた医師。
 片や密林の聖者と呼ばれ、碌に医療設備のないアフリカで一生を人々に捧げた医師。
 どちらも、俺が心から畏敬の念を払う偉大な先達。
 俺が見上げる遥かな頂にいる、医師たちだ。
 で、他にそんな凄い人、ここにいたか?
 というより、医師が出席しているなんて聞いてない。
 挨拶に来た全員の顔を名前、肩書は全部覚えている。
 う〜ん。やっぱりいない…。
 うん?何か、菫が嬉しそうにしている。
 千冬姉は、やれやれというか嬉しそうというかそんな感じだ。
 山田先生は驚きながらも、嬉しそうだ。
 はて?誰だ。

「ドクター・オリムラ。こちらへ。」
 そうか。そうか。
 俺か。

 ……………………………………。

 …………………………………………。

 ………………………………………………。

 ……………………………………………………。

 …………………………………………………………。

 何〜!?
 
 ちょっと!
 ちょっと!ちょっと!!ちょっと〜!!!

 ちょっと。
 ちょっと。
 ちょっと、待ってよ〜!!

 ザ・た○ちの真似とか、郷ひ○みのお○サ○バを歌ってる場合じゃねえ!!
 何でそうなる!?
 俺が何かしたのか!?

「ドクター・オリムラは、人工神経の開発で、神経系疾患の根治治療を飛躍的に進歩させ、既に医療現場で大きな成果を上げているのは、今更言うまでもないでしょう。そして、難病クリオピリン周期熱症候群の抑制治療からスタートし根治治療の治験も開始。ナノマシンを用いた様々な難病の根治治療の可能性を見出されています。現に多大な経済的負担を強いられて症状を抑制する治療を行っていた患者は、日に日に症状が軽くなり完治した例も報告されております。しかも副作用の報告は皆無。各国の関係機関も治験の環境を整えるべく動き始めております。無論。我が合衆国も例外ではありません。また、従来の概念を覆し、生体の腎臓の機能をほぼ再現したと言われる体内埋め込み式の人工透析器。そして、人間の細やかな動作を可能にする大変高性能な人工義肢も治験が行われ、従来の生活とまったく変わらない生活を送る事が可能となっているとの報告が数えきれないほど来ております。価格も、低コストに抑えられあくまで患者重視の視線で開発されております。また、現在は大容量バッテリーとコントロールユニットを内蔵。心臓病の症状に合わせた各種の新型人工心臓が開発され、治験に向けての最終チェックが石橋を渡る以上の慎重さで行われておられると聞いています。治験で良い結果が出れば、心臓の難病に苦しむ多くの患者に希望の光が降り注ぐことになります。話が長くなりましたな。ドクター。どうぞこちらに。」
 そういう事か。
 つか、そういうつもりでやったんじゃないんだけどなあ。
 とは言っても、拒否も出来ない。
 額縁に入った証書等を受け取ると、あちこちから拍手が鳴り響く。
 こういうの、苦手なんだよなあ…。
 凄え照れくさい…。

『一夏さん…。おめでとうございます。』
 一夏が受賞した2つの賞は、「アメリカのノーベル生理学・医学賞」と呼ばれ受賞者の中にはノーベル賞を授与された医者や研究者が多く存在する。
 アメリカ医学界で授与される賞の中では、最高の賞である。
 それだけに、よほど大きな業績を残さなければ受賞は不可能である。
 それを、2つの部門で一夏は受賞した。
 飛鳥家の令嬢として、菫もその事はよく知っていたので自分の事の様に喜んでいた。

「一夏君の頑張り。認められていますね。」
「そうだな。だが、面と向かって褒めるなよ。あまりな。」
 嬉しそうな、恥ずかしそうな、何とも言えない表情で千冬はシャンパンを飲み干しキャビアをたっぷり乗せたカナッペを食べる。

「順番が予定よりずれてしまいましたが、我が社よりささやかながら贈り物をさせていただきます。」
 日本でも有名な、ハーレーダビットソン社のキース・E・ワンデルCEOから、革張りの車検証らしいものを俺に渡した。
 販売しているバイクのバリエーションの一つダイナシリーズのスウィッチバックの物だった。
「アドミラルは、バイクも数台所有なされるとか。その中に、我が社の製品を加えていただければと思いました。どうぞ。お受け取りください。」
 受け取っていただきたいって、これ200万以上するぞ。
 そんな高いのほいほい、誰かにやっていいのか?
 スポーツスター。あるいはソフテイルとか、そういうのもあるだろうに。
「それでは、我が社の番ですな。公用車の他にも自分で運転なさる車をおもちと聞きますが、侯爵家の当主としてやはり相応の物を所有なさるべきだと思います。」
 ゼネラルモーターのケント・クレス会長が、車検証を俺に渡した。
 キャデラックDTSリムジン…。
 1500万を軽く越える高級車…。
 とかなんとか言いながら、俺が普段乗っているレクサスにしても1000万以上の高級ハイブリッドカー。
 内部は広々として、くつろぎながら酒も飲めたりする…。
 やはり、反対を押し切って軽自動車タイプのハイブリッドにするべきだった…。
 けど、あそこで反対を押し切れたかどうかは、疑問だからなあ…。

『先方のご好意だ。ここで拒否するのは非礼に当たる。思う所はあるだろうが、受け取っておけ。』
 だよなあ…。
 結局は、そうなるよなあ…。
「ご好意。ありがたく受け取らせていただきます。」
 表情を密かに見ていたが、純粋に謝意からのようだから、後々何かがあるというのもないようだな。
 にしても、リムジンはEM−B7クラス。
 軍用小銃、スナイパーライフル、軽機関銃、手榴弾、対人地雷、クレイモア爆弾、軍用徹甲弾といった物を撃ちこまれる事を想定したレベルだ。
 俺、リムジンで紛争地を爆走するつもりないぞ…。
 IS委員会が絡んでるんだろうか?
 ありそうだな…。

「疲れた〜。」
 入浴後、パジャマに着替えてないとガウンを羽織った一夏はベッドに寝転んだ。
 財界人、政治家との挨拶。
 大統領との、東欧関係の話し合い。
 それ自体は、想定内だったのでどうということはない。
 しかしながら、アルバート・ラスカー基礎医学研究賞、ラスカー・ドゥベーキー臨床医学研究賞の授与。
 ハーレーダビットソン社とゼネラルモーターからの、贈呈品に関しては想定外だった。
 元々、見返りを求めるような正確でない一夏はそういった物に対して慣れが無いので、感謝の気持ちは嬉しく思うが、高級品を贈られる事に対してある種の緊張と疲労感を覚える。

「一夏。疲れていないか?」
「千冬姉。まあ、少しな。ああ、そうだ。ちょっといいか?山田先生もいるし。」
 俺は、大統領との話を少ししておくことにした。

「第6艦隊を二分。それぞれに空母を派遣か…。思い切った事をするな。確かに、担当地域ではあるが…。」
 アメリカの構想に、千冬も考え込む。
「個人的には、厳しいと思うよ。地中海に展開しているのはアーレイバーク級のドナルドクック、ロス、ポーター、カーニー。この4隻に補給部隊等で艦隊を編成。必要に応じて空母が派遣される。これを二分すると2隻で空母を護衛する計算になる。イージスシステム搭載駆逐艦の最低ラインは守れているけど、金食い虫の原子力空母を守るには、戦力的に不安がある。勿論、第6艦隊には原潜も配備されているからそちらからも戦力は避けるにせよ、最低ラインはキツイな。海軍としても多少は余裕を見たいはずだ。第7艦隊がいい例だ。最低建造されているラルフ・ジョンソン級第1陣は最新鋭艦だから、今の所事が起こっていない地域には派遣するのは難しいな。」
「そうですね。それなりに口実が必要になりますけど、今回の様な地域は何処でも起こり得ますから東欧方面に派遣する事を議会に納得させる口実が不可欠。難しいですね。」
 一夏の意見に、真耶も頷く。
 日本との共同開発艦であるラルフ・ジョンソン級。
 海自でいうもちづき級は、アーレイバーク級の次世代フェーズドアレイレーダーとして開発されていた物の電力消費量から搭載できるか疑問視されていたAMDR−Sの消費電力を抑えつつ性能を強化した、PS−AMDR−Sを装備。
 搭載兵装も共同開発で、新型を装備。
 戦闘能力は大幅に引き上げつつ、アーレイバーク級より1億4千万ドルのコストカットを可能にした事で、次世代イージス艦となり建造が開始されている。
 当然、軍や議会は配備された際の戦力向上には多大な期待を持っているし、どこに配備するか様々な状況を想定しながら議論が続いている。
 今回の東欧の件がショッキングで、NATO諸国からIS委員会への水上艦隊配備養成と東欧諸国の新軍事組織の発足での、アメリカの影響力低下を抑えるとするならば、配備も可能かもしれない。
 だが、同様の事態は世界中どこでも起こり得る。
 それを考慮すると、事は簡単には進まないだろう。
 東欧側の考えを考慮する必要は、絶対条件でもある。

「お前は、大統領が東欧に覇権主義的な考えを持ちこむことはないと考えているのか?」
「今はな。今後は流石に解らない。俺は預言者じゃないよ。ただ、IS委員会にしてもいったん手にした影響力を手放すまいと考えることは、充分にあり得る。いずれにしても、いろいろと難しい話だよ。設備の整った母港を確保できるかも課題だしな。艦艇なら俺に一つアイデアはあるけどな。」
「何だ?」
 一夏のアイデアを聞こうと、千冬は先を促す。
「退役してモスボール保存されている、初期ベースラインのタイコンデロガ級。こいつを改修。配備する。あの大きさなら、問題ないよ。」
 一夏が端末を出して、改修案を表示する。
 モスボール保存は、退役した艦艇や軍用機を後に再配備する事を考慮した保存である。
 当然、改修しての再就役は可能である。
 改修案にしても、コストと改修期間を可能な限り抑える事を前提にしている。
 それに、現在就役していないので、退役した5隻を第6艦隊に配属しても問題にはならないだろう。
「問題は空母だよ。ジェラルド・R・フォードは、アメリカ海軍の虎の子だから論外。ニミッツ級にしても、余裕がある訳じゃない。大西洋方面に配備されているのは、ジョージ・H・W・ブッシュ、ハリー・S・トルーマン、セオドア・ルーズベルト、ドワイト・D・アイゼンハワー。アイゼンハワーは、何かと忙しいから却下。他の艦も配備は決まっている。定期メンテナンスしている艦もある。特に太平洋方面は、北朝鮮やテロに備えているから、常時張り付いているのが現状。定期メンテしているジョージ・ワシントンをどうにか割きたいところだろうけど、この艦も基本的には太平洋方面。中東情勢が落ち着けば、余裕も出てくるだろうけど、厳しいな…。」
 建造費、運用費が高額で定期的にメンテナンスと燃料棒の交換が必要な原子力空母は、運用スケジュールが非常にタイトである。
 一夏は、そこを指摘していた。
「ジェラルド・R・フォード級の2番艦ジョン・F・ケネディは、就役までまだ時間がかかる。竣工してもゲットできるかは、未知数。後継予定のニミッツを充てるっていう手もあるけど、コスト的にヘビーだ。エンタープライズは解体済み。通常動力艦は行動限界を考慮するとやっぱり厳しい…。FRAMをすれば行動限界は伸びるけど、議会が首を縦に振るか…。艦齢の事もあるし。運用コストは原子力空母より安く済むけど、やっぱり将来的に原子力空母に任務を引き継がせる必要がある。ハードルの高さは相当なもんだぞ…。議会が反対するのは、目に見えてるし納得させられるかっていうと、悲観的だな。」
「そうだな。決まるまでに、年単位の時間が必要になるとも考えられる。通常のやり方がいいだろう。下手をすれば、大統領の首が飛びかねない。」
「中繋ぎで、納得させられるかだな…。改修費用を抑えられれば、可能瀬は無くもないけど…。」

 やれやれ。
 ある程度は予想していた。
 大統領が、真剣に事態について考えている。
 そこに、一種の覇権主義的思想が皆無であるというのは、嬉しい誤算だ。
 けど、実行に移せるかと言えばやっぱり疑問なんだよな。
 どうやって、議会を説得するやら…。
 一つ言えることは、今この瞬間も俺は困惑している。
 別に望んだ記憶はないのに。
 けど、それが俺に必要だから。
 全ての決着をつけるためにも、打てる限りの手を打つ。

後書き
大統領との会談が終わった後も、一夏には困惑が待っています。
医学面での功績に対する評価です。
他の話でも書きましたが、一夏は見返りを求めない人間です。
故に、こういった事が起きることはまず想定しません。
おまけに純粋な善意とはいえ、ハーレーにキャデラックのリムジンのおまけつき。
東欧の事は想定内とはいえ、ハードルが高いことは事実。
政治家とも、色々あった様子。
そして、今回の受賞。
受賞はともかくとして、アメリカの動きからはしばらく目が離せないでしょう。
出方次第で、今後が変わりますからね。
さあ、一夏はどう考えどう手を打つのでしょうか?






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