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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第141話 多事多難<前篇>

<<   作成日時 : 2015/02/21 23:51   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

「見世物ではないので、外に出ていただけるとありがたいのですが…。一夏さんが起きてしまわれるかもしれませんし…。運び込まれてから、まだ1週間も経っていません。まして、3日間意識不明の重体でいらっしゃった一夏さんにとっては、ごく最近の事…。だからこそ、眠っていらっしゃる間は一夏さんには少しでも良い夢を見ていて欲しいと思います。こうすることで、少しでもそうなれば…。そうも思っていますので…。」
 箒を一瞥してそう言うと、冬菊は授乳し続けながら自分の母乳を飲んでいる一夏を愛おしそうに見る。
「そうだな…。すまなかった…。」
 表情を消した箒は、謝罪して病室の外に出る。
 それには関心を持たずに、冬菊は一夏を起こさない様にそっと頬を撫でる。
『ゆっくり休んでください…。今は、静かですから…。誰も一夏さんの平穏を乱す人は、いません…。』
 夢中になって自分の乳首を吸い続ける一夏を見て、冬菊は嬉しい反面、複雑な思いに駆られる。
 いつもは、大人びて見える一夏。
 気高く、洗練されたマナーと、真っ直ぐで優しい人柄で人を惹き付け、親しみやすさも持つ紳士。
 世界でも指折りの科学者にして、患者からの信頼厚い名医。
 国際政治の場でも、卓越した政治および外交センスに行動力を持ち合せ他国とも太いパイプを持つ重鎮。
 そして、武術の達人であり戦闘のプロフェッショナル。
 ISの実力は、世界でも5本の指に入る。
 ビジネスの世界でも、大きな存在感を持つ16歳の少年とは思えない人間。
 一夏という人間を表現すると、こう言った見方をされる事が多いが、冬菊は違う見方をする。

『この人は、とても愛情に飢えていらっしゃる…。』
 赤ん坊の様に母乳を飲む一夏を見ていると、冬菊はそう思えて仕方がない。
 親に捨てられ、姉の千冬は一家の大黒柱として身を粉にして働き、家の事は一夏が全て仕切る。
 まだ、小学校低学年の頃から、買い物に行き、食事の支度をして、掃除や洗濯もする。
 そして、千冬と食事をして、その後は片づけをする。
 孤児となった訳ではないが、家族らしい時間は多かったとは到底言えなかっただろう。
 その頃の冬菊は、神無月家の一人娘として大切に育てられ何不自由なく暮らし、親の愛情を一身に受けていた。
 両親がいて、自分を大切にしてくれる家庭。
 ごくありふれている家庭。
 一夏がそれを見て、寂しさを覚えなかったとは思っていない。
 仮に、一夏が当時大人びた面があったとしても年相応の面を持った子供であったことは紛れもない事実だ。
 一夏が授乳を受け入れたのは、無意識の中にある愛情に対する飢えが表面に出て来たから。
 冬菊はそう結論付けた。
『少しでも、一夏さんのお心が満たされれば、それでいい…。』
 授乳を終えた後げっぷをさせて、ベッドに寝かせて布団を掛ける。
『ゆっくり、お寝すみになられて下さいね…。』

 うん。美味い。
 昼は、温めた豆乳に、出汁に醤油を入れてとろみをつけたのを入れて、中国風の揚げパン油條(ヨウティアオ)。
 豆乳に、とろみをつけた出汁と醤油を合わせたのがばっちり。
 それを、油條に付けて食べるとこれまた美味い。
 出汁は、朝の鳥の出汁を使っているけど味付けを工夫して美味い。
 豆乳は栄養あるし、胃にも優しい。
 油條は、すごく風味がいい。
 油にも、凝ってるな。
 一口に油といっても、色々ある。
 この油は…。
 菜種油だな。
 しかも、じっくりと絞った特級品。
 一時期は、成分的に心臓疾患の発生率を上げると言われてきたけど、品種改良の結果、そういったデメリットは克服されている。
 日本でもその為の品種改良は行われているし、その上で品質を向上させて昔ながらの方法でじっくりと絞った質のいい菜種油は、プロの料理人がよく使用する。
 当然ながら、少量でも値が張るけどな。
 デザートは、オーギョーチ。
 愛玉子という、クワ科イチジク属のつる性植物から作ったゼリーだ。
 戦前だと浅草の劇場前で、1杯10銭で売っていたらしい。
 それを、冷やしたカモミールティーと蜂蜜を混ぜたのに入れている。
 意外な組み合わせだけど、美味い。
「オーギョーチには、クコの実を酒につけこんだのを混ぜてるのか。」
 クコの実は、古くから不老長寿の薬として中国では使われて、日本でも同様に平安時代から使われている。
 色んな効果があって、実、根皮、葉、それぞれ漢方薬として使用されている。
 杏仁豆腐の具にも良く使用されているけど、医食同源の中華料理だとデザートにも健康にいい物を選ぶから理にかなっている。
「一夏さんだと、すぐにお分かりなられますね。私が漬けた物を、送ってきてもらいました。その様子ですと、油條に使った油もお分かりですか?」
「菜種油の特級品だな。昔ながらの手法で作った。それに、豆乳に混ぜたのには、えごま油を入れてる。」
「正解です。」
 えごま油は、健康食品として注目されている。
 体内でDHAやEPAに変換される、α−リノレン酸を多く含んでいるからな。
 他の食材の邪魔をしないので、最後の仕上げにも使える。
 一見すると、何てことのない料理だけど、いろいろ工夫がされている。
 見た目の鮮やかさじゃない、実を重んじた料理だ。
 食材を吟味しながらも、健康に良い料理を作る事を第一に考えているな。
 高級食材を多く使って豪華な料理を作るより、こういう料理を作る方がずっと難しい。
 これができるあたり、冬菊がどれだけ料理上手かという事がよく解る。
 なのに、俺なんかを選ぶんだもんなあ…。
 ま、俺みたいなのには、すぐに愛想を尽かすだろうけどな…。
 早ければ、俺が退院した後だ…。
 その方が、冬菊の為だよ…。
 俺なんかを好きになっちゃ、駄目なんだよ…。

 何か、気分が今一つだな。
 仕事をするか。
 買ってきてもらった、仕事中立ち入り禁止と書いたドアプレートをドアノブにかけて鍵を閉める。
 よし。防諜モードを最大にセット。
「閣下。もうよろしいのですか?」
「昼食を済ませた後だし、休みはしっかり取っているよ。現在の状況を聞かせてくれ。」
 モニターに出たヴェッセルに、現在判明していることを聞く。

「資材面は、かなり多くのルートを構築していることは判明しました。ですが、違法性が見出せませんので、手が出せません。」
 そっちもかい。
 資金といい、資材といい、嫌になるくらい手の出しようがない方法で調達しているな。
 どれも表向き合法だから、違法性を見出さない限りは手の出しようがない。
 とするとだ…。
「糸の存在は判明している。とにかく、端を掴んでおいて切られた時を見逃さない事だ。切られた時の状況を調査すれば、もう一つの端。つまり連中の情報を掴める。今は、世界中に張り巡らされた糸を監視しておこう。仮に摘発できなくても、奴らの本拠地が解れば直接乗り込んで事を済ませる。」
「はっ。それでは、こちらは閣下のご指示通りに調査を進ませます。そちらにいらっしゃる間は、くれぐれも療養にご専念下さい。」
「解っているよ。退院した後は、各国での勲章授与式等いろいろ詰まっているからね。へばらない様にしなければならない。」
「ですな。では、お帰りになるまで我々はさらに情報収集に努めます。」
「頼む。」
「はっ!」
 通信を終えた後、改めて現在の調査状況に目を通す。
 大分、いろいろ情報は集まってきている。
 連中の組織形態も、理解できた。
 けど、資金や資材調達面で嫌になる程手の出しようのないよう、考え抜かれている。
 これが、一番嫌なんだよな。
 とにかく、糸の端は掴んでいるし監視も怠らない。
 これで行くしかないだろう。
 正直、今すぐにでも飛んで帰りたいが、式典の合間に色々とやる事も出てくるだろう。
 特に、東欧の件でいろいろ手を打つ必要がある。
 ロシアにしても、東欧の事は国防に大きく影響するだけに、出来る限り自分達よりの勢力であってほしいのが本音だろう。
 だからこそ、ヤルタ会談で散々揉めたし最終的には相当に強引な手段で共産勢力に取り込んだ。
 一方、NATO諸国にしてもロシアに対して、完全に警戒心は解いていないだろう。
 それを考慮すると、今回の東欧の動きはあまりうれしくない。
 それに関しては、東欧で協力はするけどあくまでNATOと連携するというスタンスは崩さないという事を納得してもらうしかない。
 問題は、アメリカだな。
 さて、どう出てくるか。
 アメリカでの式典で、十中八九極秘裏に会談をセットして来るだろうからそこで勝負だな。
 いずれにしても、東欧の件はうまくいってほしい。
 いかなかったら別の手を考えるけど、今後の事を考えるとうまくいった方が楽だ。

 後は、白式か…。
 今回、第六世代改修をした事で、フラグメントマップにどんな影響が出たのかきちんと確かめておく必要がある。
 これは…、これは…、また…。
 ある程度は予想していたけれど、前の戦いから教訓を得て、進化の道筋を立ててる。
 規模は相当な物だが、それは十分考慮していた。
 けど、今の俺のフィジカルデータを基にして、進化の道筋を立てるとはなあ…。
 これって、もうコアのフラグメントマップ形成超えてるぞ。
 完全に、人間が考えるシミュレートだ。
 今までは、性能を高めることに重点を置くあくまでISのフラグメントマップ内に収まってはいた。
 けど、ここまでくると、そうは言えない。
 何かが介在している様に思えて、仕方がないんだよな。
 今までの事から、考えるとするとだ…。
 まさか、あの女騎士と、女の子か?
 けど、あれって何だ?
 今まで考えていたけど、答えが出なかったんだよな。
 コアが俺とコミュニケーションを取るために作り上げた、仮想インターフェースと考えていたけど違うのか?
 そうでないとすると…。
 今までの白式の形態移行に、駁竜の構築も考慮に入れて最初から考え直してみる。
 あの女の子との会話を、ストレートに解釈すると…。
 辿り着く答えは、それしかない…。
 問題は、あの女騎士。
 白式のコアって、束さんが新しく作った物なのか?
 それとも、他のISのコアをフォーマットした物なのか。
 後者だとすると、何処から入手する。
 いくら束さんとはいえ、他国の企業や研究所のISを盗む何てことはしないだろう。
 とすると、元からストックしていたコアか?
 その場合でも、初めてISに組み込んだコアか、元々他のISのコアをフォーマットした物か。
 そして、後者だった場合、そのISは何か…。
 少し考えていると、1つだけ該当する。
 元々他のISのコアで、且つ束さんがストックできるISが。
 けど、フォーマットしたコアは完全に真っ白の状態。
 そんな事があり得るのか?
 いや、コアネットワークでの情報交換を考慮すると、可能性がないとは否定できない…。
 でも、あれしか俺には納得できる解答が得られない…。
 コアNO.001.
 世界最初にして、全てのISの原点。
 第零世代IS 白騎士。
 白騎士のコアを、白式に組み込んでいるとすれば何が起こっても不思議じゃない。
 俺は、そう解釈した。
 第零世代は、第一世代前の揺籃期の世代。
 束さんの事だ、様々な面からISの可能性を探ったとしても不思議はない。
 とすれば、白騎士の時の意識みたいなものを残す。
 つまり、意識の継承によってどのようなISになるか。
 それを考えると、白式の装備の不思議さが頷ける。
 とにかく、雪片オンリーとおかしすぎた。
 あえて、そうしたとしたら。
 そして、それによる様々な。
 そう、無限の可能性とでもいえる物を、束さんが試そうとしていたら…。
 束さんが考えていた、第四世代の真の姿が明らかになる。
 そして、それなら白式というISについて説明がつく。
 終着点のない可能性…。
 いわば、究極の自己進化能力を持ったIS。
 生物の進化の最終地点は滅亡と言われるが、それのないIS。
 もしそうだったとしたら、今までの事に全部説明がつく。
 謎めいていた、白式の正体というパズル。
 その全てのピースが、埋まる。
 どうしたもんかな…。
 はっきり言って、白式はヤバすぎる。
 時期を見て、話すか…。
 さて、どうするかね…。
 ん?委員会からの、通達か…。
 って、おいおい…。

後書き
一夏が順調に回復する中、箒と冬菊の間はほとんど冷戦状態になってしまいました。
もちろん、それぞれに思う所があり行動しているのですが、色恋沙汰となると事は複雑。
真耶が考えた事を考えた冬菊は、自分なりに出来る事をして一夏の心を満たしたい。
箒はそんな冬菊を見て、動揺し行動を起こせません。
当の一夏は、体がある程度回復したので行動再開。
現在の状況を確かめつつ、今後の事を考え続けます。
そして、白式についても真相にたどり着いた様子です。
これはこれで、頭痛の種になります。
そんな時に、委員会から通達がきました。
これも、頭痛の種になるのでしょうか?






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