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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第140話 ポーランド滞在記<後篇>

<<   作成日時 : 2015/02/14 23:59   >>

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 俺が思っていた以上に、どの国も恐怖感を覚えていたのか…。
 無理もないか。
 東欧には、強力な軍隊を持った国はない。
 戦車は旧式のを改修して使っているが、今ではそれも能力不足。
 戦闘機に至っては、骨董品。
 ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、アルバニア、ウクライナ、エストニア、クロアチア、コソボ、セルビア、ブルガリア、ベラルーシ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア、モルドバ、モンテネグロ、ラトビア、リトアニア、ルーマニア。
 ロシアを除いて、だいたいこれら19か国が東欧諸国と言っていい。
 この内、11か国がNATOに加盟している。
 EUに加盟しているのは、9か国。
 NATOとEU双方から、色々と言われる可能性は十分にある。
 とは言え、「じゃあ、何でIS部隊を派遣してくれなかったんだ?」と言われるとNATOとEUの主要加盟国は説明が難しいだろうな。
 建前は、準備が間に合わなかったになるだろうけど、それで納得はしないだろう。
 自分達にも火の粉が飛び散るリスクがあるのなら、事前に手を打っておくのがセオリーだからな。
 本音を言えば、自国に攻め込まれるのが怖かったからだろう。
 今までは、ほとんどIS学園だったのにまるで縁のないポーランドに攻め込んできたんだ。
 自国に攻め込まないとは、断定できない。
 ただ、本音を言うと「じゃあ、自分達でなんとかするしかない。」と言われる。
 政治家はともかく、国民感情としては間違いなくそうなる。
 冷戦時の共産主義国家だったらともかく、今や民主国家だ。
 それこそ、秘密警察で国民の意見を抑え込むなんてことは出来ない。
 それに、政治家や軍上層部も不安はあるだろう。

 そうなると、東欧諸国に有事が起こった際にすぐさま出動可能な軍事組織が欲しくなるのは自然な流れだ。
 そして、IS委員会にも部隊の駐留を要請する。
 この場合、外交問題を避けるには…。
 発足させたうえで、NATO及びEUに加盟していない国を加盟させたうえで、軍事的な空白を理由に発足を認めさせるしかないか。
 欧州主要国は軍縮の流れだし、アメリカにしても各方面軍の編成を見直して再編成をしている。
 軍事的弱小国としては、心許ないところだろう
 もし、認めないとなると、欧州から通常及びIS部隊の派遣が必要になるが、そう簡単に行くはずがない。
 ISの配備は国家間のパワーバランスに関わるし、東欧にそれなりの規模NNATO軍を駐留させるとなると、軍縮は無理な話になる。
 ある意味、結論は決まってるんだよな。
 ま、先は見えてるって事だ。
 後は、トラブルになった際に、どう仲裁するかを考えれば大丈夫か。
 何しろ、国家間のトラブルの仲裁は散々やって、経験値も気が付いたら豊富だしな。
 今まで培ったスキルと、蓄積された経験を基に調整は可能だという第三者の俺が結論を提示する。
 いずれにせよ、本国からも各種輸送機、汎用ヘリ、戦闘ヘリ、設計を済ませるか。
 戦車等は済ませてるし、輸送機のアイデアもある。
 ウォーミングアップ位は出来るから、やっておくか。
 それに、今度の話は利用できるしな。

「成程。それでお前にか…。」
 コモロフスキら東欧の政治家たちに言いたいことはグロス単位であるが、彼らの言う事も理解できるので千冬が激怒することはなかった。
「いずれにせよ。今の状態は、ちょっといただけないな。冷戦時はソ連という後ろ盾があったから気にする必要はなかったけど、今は状況が違う。しかも地政学的に西欧諸国にとっても、充分にメリットはある。事があった時に、すぐに駆けつけるのが無理なのは、証明されているし。今の西欧諸国の国防方針に重ね合せても即応部隊を常に一定の場所に駐留させて対応できるようにするのは、難しい。旧式化した軍備の立て直しと同時並行で進められるから、今の段階なら、十分に可能だよ。」
「また、織斑君に負担が掛かってしまいますね…。」
 真耶が目を伏せる。
 只でさえ、様々な国際問題の調整を行い、世界各国のマフィアや違法薬物売買カルテルの掃討作戦の立案及び総指揮等をこなす一夏に、さらに処理すべき案件が増えることに対して、真耶は正直に言えば反対だった。
 あくまで、東欧諸国の政治家が調整して、西欧、アメリカ、ロシアの了解を得るのが筋。
 如何に一夏の政治および外交手腕が優れているからといって、いつも頼る事に真耶は憤りを覚える。
 近く、建造が進められていた量産型空中戦闘艦カムラン級が竣工し、空中機動艦隊が編成され、観艦式と訓練航海が予定されている。
 それに、様々な政治的な案件が加われば、一夏はほとんど学園に通学できなくなる。
 これでは、何の為に学園に入学したのか解らない。
 どれほど罪悪感を持っていても、一学生の一夏にこれほど重い物を背負わせる政治家たちを思うと真耶は殴りつけたくなる。
 嘗ては、春香と日本国家代表を争った真耶なら、素手で殴りつけて顎の骨を折る程度は容易い。
 今すぐにでも、そうしたい気分を必死で抑え込んでいる。
「それで、装備の方は?」
「ほぼ終わってる。後は、各国の陸軍で数の上では主力のT−72をベースにした新型戦車をもう一台設計して終わりだな。ポーランド軍用に設計したのはあるけど、それとは別に各国から人員を集めて発足した部隊用のを1台開発。歩兵戦闘車なんて棺桶だし、その他の車両も老朽化が著しいからな。諸国で使用する車両を開発して大量生産出来れば、単価も下がる。もちろん、価格に考慮しながら設計したけどな。」
『結局は、大抵の問題は手早く片付ける一夏に頼るのが、最初に思い浮かぶか…。』
 千冬は、今回の件での政治家たちの思考をすぐに理解した。
 今回の様なケースは、組織内のパワーバランス、軍隊の駐留場所、人員及び組織維持の分担金を含めて調整に時間のかかる問題ばかりである。
 だが、一夏は時間のかかる問題を、培った経験と独自に作り上げた各国組織及び国際的な組織との太いパイプを駆使して短期間に片づけている。
 特に、ミレニアム計画とマフィア及びテロリストの掃討を兼ねた作戦立案までに費やした時間の短さは特筆ものであり、多大な成果を上げて、各国の違法薬物及び違法武器売買は激減。
 組織の力も大きくそがれて、パワーバランスでも警察や軍隊にはあらがいようもない状態となっている。
 そして、ミレニアム計画も今までの遅れを取り戻すかのようにスムーズに進み、貧困とそれが原因の犯罪もほぼ一掃されて、南米各国の経済は急速に発展している。
 それに伴い、ブラジルは自国の装備の近代化に当たって芝崎インダストリーに助力を仰ぎ、南米でも最先端の強力な兵器を装備し、軍事技術面でも経験を積んだことで、自主開発の最新兵器も登場。
 これらの兵器には、南米各国からも発注され、この機会に南米各国合同で国防を担う組織の発足が急ピッチで進められている。
 これを見れば、一夏に頼るのも十分に頷けた。
 歴史のページをめくっても、南米はアメリカの思惑に翻弄され続けた時期が長い為にアメリカに頼らないようにしたいというのが本音であり、それが可能となりつつある。
 その立役者が、一夏である。

「それにな。今回の事に関しては俺の思惑もあるんだよ。」
 俺は防諜モードをセットすると、千冬姉と山田先生に俺の思惑を話す。
「なるほど。そういう手があったか。」
「盲点でしたね…。」
「だからこそ、有効なんだよ。今回の事でNATO諸国にしても、今の国防政策の路線を外さないようにして、有効な手段を考えて備える必要が出てくる。アメリカにしても、大西洋や地中海方面の軍は警戒を厳にするだろうな。これは中々強烈だよ。」
 策にもいろいろってな。
「お前の思惑は理解した。自習範囲は予定を見て知らせる。定期テストは早めに受けてもらうことになるから、そのつもりでいてくれ。さて、見回りに行ってくるか。真耶、お前も頼む。一夏の周囲はガードが固められているから、問題ないだろう。後は、中に入り込もうとする虫がいないかを確かめておく。捕まえた連中に関しては、今夜、私が面接をする。国際法の専門家に聞くと、いろいろ聞けるらしいので助かる。」
 ああ。連中、地獄を見るな。
 やろうとしていることは、正直賛成できないどころか反対だ…。
 あらゆる記録を照合しても、無いんだよな…。
 「生きている。」という証拠が。
 尻尾を掴まれないようにしたんだろうけど、それが却って裏目に出たか…。
 さて、もうひと踏ん張りだな。
 終わったら、少し寝るか。

 軍施設の地下。
 亡国企業の特殊部隊は、そこに投獄されていた。
 全員が手錠を掛けられ、首輪を嵌められている。
 妙な事を起こそうとすれば、首輪から高圧電流が流れて気絶することになる。
「どうだ…?喋る気になったか…?」
 隅にあるパイプ椅子に座って、千冬が兵士たちを見下ろす。
 誰も、口を開こうとしない。
 千冬が、恐ろしいわけではない。
 もし、何らかの情報が得られたら自分達から漏れたと気づかれ、それによってどれほど残酷に殺されるかを考えると喋る気になれなかった。
 千冬は司法取引を持ちかけているが、獄中で殺されるリスクがないなどとは誰も思っていない。
 故にどうすればいいのかわからず、ただ沈黙を続けるしかなかった。
「なら。それなりの方法を取るしかあるまいな…。」
「拷問か…?そんな事をしたら…。」
「条約違反か…。お笑いだな。お前たちが、それの庇護を受けられると思っているのか…。無い頭でよく考えて見ろ…。」

 兵士たちが頼みの綱にしているのは、拷問等禁止条約。
 正式な条約名は、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約である。
 つまり、だれであろうと相手の品位や尊厳を傷つけるような行為を加えてはならない。
 という、条約である。
 警察で、肉体的苦痛を伴う尋問が行われない理由がこれである。
 無論、常に守られているわけでもなく、条約を締結した国でも様々な理由で拷問は行われているし、CIAでもテロリストから情報を引き出すために拷問を行った事が公になり問題になった。
 たとえ、軍だろうが国家直属の諜報機関だろうが、相手がテロリストであっても拷問で自白を引き出すことは国際レベルで許されていない。
 だが、彼等はそれには該当しない理由があったのである。

「頭が悪いというのは、不幸な事だな。よく考えて見ろ。あれは、人間を対象にした条約。お前たちには該当しない。この世のどこに。お前たちが生きているという記録がある?私のパイプを使用して徹底調査させたが、何も出なかったぞ。結論として、お前たちは無国籍どころかもはや死人と判断するしかないという事だ。」
「だが、無国籍であっても…。」
「国連機関の庇護を受けて、国籍を持つ者と同等の権利を有するか…。お笑い草だ。お前たち、この国で何をした?無制限に、庇護を受けられるとでもおもっていたのか?呆れた物だな。よくもまあ、そこまで厚顔無恥でいられるものだ。尤も、そうでもないと病人を大勢で襲撃して誘拐しようなどという、下種な真似は出来んがな…。」
 歴史的に、無国籍の人間。
 例えば、内戦や紛争で国を追われ事実上無国籍になった人間には、暴虐の限りが尽くされた。
 それを憂慮した国際社会によって、そのようなケースの場合基本的に無国籍者には国籍を持つ者と同等の権利を有することを国連が保証するというのが基本となっている。
 しかしながら、重大な犯罪。
 例えば、テロ活動等を行った者は除外される。
 つまり、亡国企業の兵士たちは国籍を持たない為に帰属する国家も無く、当然国家からの庇護を受けることは出来ない。
 かといって、無国籍者として国連から権利を擁護されるわけでもない。
 自分達を守るべき何物も無く、生きているという記録も何一つない死者としかいえない存在。
 つまり、拷問であろうがなんであろうが、何をされても自分の権利を主張することができない。
 今更ながら、それを理解していた。

「さて、どうしてくれるか…。この国で犯した犯罪だけでも、かなりの数に上るぞ?そして、弁護士を呼ぶ権利はない。国が国選弁護人を付ける義務もないし、つけてもらう権利もない。裁判になれば、検察の主張がほぼ全面的に通るだろうな。そして、今のこの国の国民はお前たちに対して、寛大な心など欠片も持ち合わせてはいない…。無論、私もな…。」
 冷たく、凍てついた“気”。
 氷のような笑み。
 心臓を貫く、絶対零度のサーベルの様な視線。
 全てが、数多の戦場を潜り抜けてきた兵士達を、恐怖のどん底に叩き落とす。

「貴様…、俺達を拷問に掛けることに対して何とも思わんのか…?良心に痛みは感じないのか…?」
 兵士の1人が、かすれた声をどうにか絞り出す。
「思わんし、感じもしない…。私はお前たちが憎くてしかたがない…。私は司法関係者でもなければ、人権擁護団体の活動家でもない。テロリストの類など、たまらなく嫌いでな…。そもそも弟が学園に入学してからというもの、溝鼠にも劣る連中の相手を年がら年中しているのでな。怒りを堪える為に、良心に麻酔を打ちこんでいる内に常に麻酔が効いているような状態になった…。つまりはそういうことだ。そもそも、私にお前たちの期待に添わなければならない理由がどこにある…。」
 ホルスターから抜いたデザートイーグルを股間から1cmと離れていない場所に撃ちこむ。
 .50AE弾の強烈な衝撃が伝わり、恐怖のあまり幾人かの男達は失禁して失神しかけるが、千冬がそれを赦すはずも無かった。
「何を勝手に退場しようとしている?まだ何も聞いていないぞ…?さて、次は誰がいい…?名乗り出ないか…。こっちで、選ばせてもらうぞ…。」
 目についた男達の股間の至近距離に、デザートイーグルの狙いを定めてトリガーを引く。
 そして、失禁して失神しかけた男達の意識を強引に引っ張り上げて、千冬はデザートイーグルのマガジンを交換する。
 少しでもずれれば股間は吹き飛ばされ、ハンドキャノンと言われるデザートイーグルの威力でショック死するのは戦闘の専門でなくとも、ガンマニアならば誰でも知っている。
 やがて、男達は知っている限りの事をしゃべり始めた。

 千冬が尋問をしている頃、赤くなっていた眼が元に戻り顔を洗った箒が一夏の病室に入る。
 真耶たちと話している時は、鍵がかけられていたが終わっていたので鍵も開けられていた。
 とにかく、一夏の顔を見たかった箒は病室のドアをノックを忘れて開ける。
『まさか…。』
 ICUの時と同様に、白いカーテンでベッドが覆われていたのでもしやと思うと、着物を肌蹴てフロントホックのブラジャーのホックを外して一夏に乳首を含ませて授乳をし始めた冬菊と、赤ん坊の様に母乳を飲んでいる一夏の姿が、箒の瞳に飛び込んできた。

後書き
東欧を代表してのポーランド側の要請を受けて、千冬達は話し合いをします。
今迄の実績と手腕、緊急性を考えていの一番に一夏に白羽の矢が立つことに対して真耶は言いたいことがあるようですが、一夏は一夏なりの思惑があるという事を聞いて、その上で承諾した事を聞きどうにかおさめます。
話が済んだあと、一夏は最後のひと仕事を済ませて再び眠ります。
一方、千冬は確保した亡国企業の兵士達との面談です。
無論、就職のではありません。
江戸時代とかならば拷問もありましたけど、今やったら大変なことになります。
といいつつも、戦後も拷問の類はあるんですけど。
亡国企業の兵士たちは、尻尾を掴まれないように国籍等個人情報を抹消していますが、それが今回はあだになりました。
内戦や紛争で増える難民が、虐殺されたり暴力を受けたりすることで国連が権利を保障するのは本当です。
とは言っても、無制限でないのは本当です。
虐殺や暴力の加害者であった場合は、その対象に含まれないのもまた事実です。
世の中、そんなに甘くはないという事ですね。
それでも、千冬は拷問一歩手前で踏みとどまります。
ところが、思わぬところで大問題が!
一般病棟に移ったとはいえ、まだ体を癒している一夏に授乳を始める冬菊と、眠っているとはいえ冬菊の母乳を吸い始めている一夏。
話に聞いただけでもショックなのに、実際に間近で見た時のショックは凄まじい物。
どうなるでしょうか…!?






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