cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第134話 真実の欠片<前篇>

<<   作成日時 : 2015/01/04 00:00   >>

驚いた ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

「GCS1−1−1。血圧上が60。下が40。ヴァイタルが低く非常に危険な状態です。」
「1、2の3で行くぞ。1、2、3。」
 アヴァロンから緊急搬送されてきた一夏は、ERに移されドクターの合図で処置台に移される。
「血糖値を計れ。点滴を追加。血算。生化学。電解質。」
 ライトを当てて、瞳孔の反応を見る。
「反応が弱いな。血圧は?」
「上が50で、下が取れません。さらに低下し続けています。」
 看護師が答えた時、心臓のモニターから警告音が鳴る。
「期外性収縮か。心拍が脱落しているな。刺激伝導系が滅茶苦茶だ。心筋シンチ。大至急だ。」
 心電図で、一夏の心臓は異常なリズムを示しており、すぐに検査が行われる。
 世界でもかなりのシェアを誇る一夏が開発した処置室のベッドは、様々なオプションを搭載可能で、その中には従来より遥かに小型化された検査機器が多く含まれる。
 医師は静脈に放射線同位元素を注射して、放出される放射線をコンピューターで画像処理することにより心臓の血液の流れを検査した。
「改めてみると酷いな。心エコー検査。」
 さらなる検査が必要と診断されたので、心臓のエコー検査が行われる。
 モニターには、一夏の心臓の鼓動の状態が映し出される。
「心疾患もないのに、何だよ。これ。どれだけの負担が掛かったんだ?ヴァイタルは?」
 期外性収縮は、良性と悪性に分かれる。
 一夏の場合は、悪性と判断された。
「血圧とヴァイタル、さらに低下。脈もほぼとれません。」
「とにかく、症状を鎮めるぞ。水分の方はどうだ?」

「酷い脱水症状だわ。唇がひび割れて、表面に血が滲んでる。点滴を2本全開で追加。」
 脱水症状を改善する為に、点滴がすぐに追加される。
「物凄い汗。脱水症状の原因はこれね。何があったの?いくら戦闘で疲弊しきったとはいえ、異常すぎるわよ。あと1本全開で追加。」
「一体、何が原因だ?こんな滅茶苦茶なリズム、初めて見たぞ。」
 原因を考えている時に、血液検査の結果が出る。
「グルコース、血糖値が異常な程に低く、電解質が異常です。さらに、インシュリンとアドレナリンの値が非常に高いです。CPKも高く、このままでは腎不全を起こす可能性も。」
「まさか。血液中のブドウ糖だけじゃなくて、肝臓に貯蔵されていたブドウ糖もほとんど使い果たされたのか?その上、横紋筋融解症の危険性もか。ポータブル透析器をすぐに持ってきてくれ。」
 インシュリンはブドウ糖をエネルギーに変える働きを持つのと同時に、肝臓にブドウ糖を貯蔵する働きを持つ。
 アドレナリンは、低血糖時に肝臓に貯蔵されているブドウ糖を取り出す時に分泌される。
 さらに、筋肉が壊れた時に血中で多くなるCPKという酵素の量が、危険な量に達していた。
 透析器が届いて、すぐに繋がれる。
「グルコースと血糖値の低さは説明がついたわ。要するに、急激に飢餓状態というより餓死の半歩手前の状態になったのね。電解質異常も、それが関係していると見るべきだわ。一番太い留置針を。大至急ブドウ糖を全開で点滴。20ミリのエクイバレントを、心電図に注意しながら点滴。ドーパミンを300mlの5プロに900mg入れて、1分間に15ml点滴。後は、このCPKね。相当に無茶をしたとしか見えないわ。私達が言える立場じゃないけれど…。」
 状態を改善しようと、血液検査の結果を基に薬剤の点滴を開始する。
「セントラルライン確保。」
 高カロリー点滴や薬剤を点滴する為のラインを、確保する。

「もう一度、情報から考え直してみよう。酷い眠気。意識混濁。視界が定まらない。症状は重度の低血糖で間違いない。だが、それだけでこんな酷い症状になるのか…。CPKの値は異常な程酷使した肉体で、説明が何とかつくが…。」
「とにかく、やれる事をやりましょう。セルシン10mgを静注。」
 医師が投与されている点滴への薬物投与を、指示する。
「吐血です!」
 激しくせき込んだ一夏の口からは、大量の血が溢れていた。
 しかも大量の血液は、気管支にまで流れ込む。
「サチュレーション急速に低下!このままでは…。」
 看護師の報告を聞いて、医師は血の色から原因を推測する
「色からして、消化器系ね。内視鏡用意。それから吸引。このままだと窒息の危険性があるわ。」
「喉頭鏡と気管内チューブを。サチュレーションも低いし、どのみち必要だ。それに気管内チューブで気管支の入り口を狭くしておけば吐血した血液が流れ込むリスクも低くなる。」
 看護師が喉頭鏡とチューブを渡して、医師が手慣れた手つきで素早くチューブを気管支に入れて、胸部と腹部の音を聞いて確認する。
「入った。人工呼吸器に繋げろ。」
 気管支にチューブがきちんと入った事を確認して、従来より高性能で細い最新型で消化器用内視鏡で調べ始める。
「酷い食道静脈瘤破裂だ。この分だと胃壁も相当に酷い状態だぞ。」
「食道離断?」
 食道静脈瘤の治療法は複数の種類があるが、食道を切断後一部の血管の切除と残った食道を縫合。胃の入り口である噴門の血行遮断をして脾臓を摘出することが多い。
「いや。箇所は多いがそれぞれの出血量を考えると、投薬と結紮で行けそうだ。それにこの状態でのオペは、できれば控えたい。胃壁の出血部も多いな。それでも、内視鏡で何とかなりそうだ。」
 今の一夏の状態が回復しても体力的に手術は好ましくないと考え、破裂箇所は多いが出血量から内視鏡治療が可能と判断した。
 無論、数の多さから素早い処置が求められるので、消化器に於ける内視鏡治療の優れた手腕が求められる。
 処置をしていると、再びモニターから警告音が鳴る。
「上室性頻拍です!290。300を突破しました!物凄いスピードで心拍が増えています!」
 期外性収縮の恐ろしさは、悪性の場合他の不整脈に移行するリスクが高い事である。
 一夏の状態が、まさにそれだった。
「最悪の展開だ!このままだと、心臓が持たないぞ!アデノシン6mg大至急静注!」
 一夏の年齢なら、心拍数の正常値は安静時で50〜100。
 運動中はもちろん上昇するが限界があり、今の一夏の心拍数はその限界を大きく超えていた。
 そして、それを抑制し正常値に戻すためにアデノシンを投与したが、それでも効果は表れなかった。
「除細動器用意。200でチャージ。」
 看護師が、素早く準備をして医師に渡す。
「下がって!」
 ショックを与えるが、心拍数は上昇し続ける。
「300でチャージ。」
「チャージしました。」
「下がって!」
 再びショックを与えるが、効果は無い。
「360でチャージ!」
 最大出力でのチャージを、指示する。
「チャージしました。」
「下がって!」
 ショックを与えるが、効果は表れない。
「ペースメーカーと、透視の用意。」
 すぐに手渡され、セントラルラインを通してカテーテルが心臓に到達する。
 すぐに出力を上げて心臓のリズムを正常に戻そうとするが、戻る気配は無かった
「出力を最大にしろ。何としてでも、正常に戻す。もう時間がほとんどない。」
 医師の指示を受けて、看護師がペースメーカーの出力を最大にする。
『頼む!正常になってくれ。』
 しかし。相変わらず、好転の兆しはない。
 一夏の上室性頻拍は、1分間で240以上になる心房粗動と呼ばれるタイプで、心拍が400以上になる事もある。
 既に一夏の心拍数は、500に達しようとしていた。
 通常、心房粗動時の心拍数は最大でも450。
 一夏の心臓は、すでに心房粗動から心房細動に移行していた。
「ジギタリス0.25mg静注。」
 心房細動の治療薬に使われる薬剤の1つであるジギタリスの投与を、指示する。
『頼む。何とか、効いてくれ…。』
 祈るような気持ちでモニターを見ていると、少しずつ安定していく。
「よし。少しずつ下げていけ…。」
 看護師にペースメーカー
「よし…。ゆっくりだ…。ゆっくり下げていけ…。焦るなよ…。」
 自分にも言い聞かせるように、ペースメーカーの出力を下げるよう看護師に指示する。
 下げていくと、やがてリズムは正常に戻った。
「まだ気は抜けないぞ。胸腹部X線及びCT。ちょっと気になる。熱は?」
「電解質の事?」
「当たってない事を祈るがな。CRPが異常に高い。」
 CRPは特殊なたんぱく質の一種で、これが高い場合感染症、心疾患、肝硬変等様々な疾患が疑われる。
「40度です。」
「水分が心配だな。点滴をもう一本追加。」
 その時、最悪の事態が発生した。

「心臓停止!」
「心室細動だと!!くそ!ジゴキシンを使った矢先に…!」
 最悪の不整脈と言っていい、心室細動が発生した。
 しかも、有効な薬剤の一つであるジゴキシンは一度投与するとある程度の間隔を置かないと投与はできない。
 全身が痙攣し、呼吸も止まっている。
「除細動器、250でチャージ!人工呼吸器をフル回転させろ。」
 看護師が素早く手渡す。
「下がって!」
 ショックを与えるが、モニターの心拍数は0のままである。
「300でチャージ!」
「チャージしました!」
「下がって!」
 再びショックを与えるが、心拍は戻らない。
「360でチャージ。エピネフリンを0.8mg。アトロピン2mg。」
 薬剤が投与されたのを確認し、しばらく様子を見るが回復の兆しはない。
「下がって!」
 心拍は戻らない。
 医師が心臓マッサージを開始する。
『頼む…!戻ってきてくれ…!頼むよ…!』
 医師は必死にマッサージを続ける。
「ジゴキシン0.3mg静注!ドーパミンを点滴!500の5プロに2g入れて、全開で点滴!戻れよ!頼む!戻ってきてくれ!俺を…、俺達を恩知らずにしないでくれ!!」
 医師は処置をしながら、一夏に呼びかける。
 自分の命を削りながら、国を守ってくれたのに助けてやれないのは絶対に嫌だ。
 医師は、切実に思いながら一夏に必死に呼びかける。
「開胸セットをくれ!早く!!それから、体内除細動器!」
 すぐに、開胸の準備が整う。
「メス!」
 機械出しの看護師が、素早くメスを渡す。
 傷を最小限にすべく、医師は慎重にメスで切開する。
「レトラクター。」
 切開した部分を広げて、医師は直接一夏の心臓をマッサージする。
「戻れ!戻ってくれ!!」
 時折、モニターを見ながらマッサージを続ける。
「体内除細動器チャージ。」
「チャージしています。」
「下がって!」
 心臓を左右の機器で挟むようにしてショックを与える体内除細動器を使うが、効果はない。
「20にチャージ!」
「チャージしました。」
「下がって!」
 しかし、効果はない。
「最大出力でチャージ!」
「チャージしました!」
「下がって!」
 最大出力でも、心拍は0のままだった。
『これまでか…。』
 医師が諦めかけた時、モニターが一夏の心臓が動き始めた事を示す。
「よし…。今度こそ、安定してくれ…。」
 祈るような気持ちで、医師と看護師たちは経過を見守る。
「ペースメーカーで容態を安定させる。ATPを500の5プロに80mg入れて、1時間で落として。それとヘパリン3万単位を、1分に30滴。」
 予防するためと血栓が出来て心筋梗塞と脳梗塞ができるのを防ぐ為に抗凝固剤であるヘパリンの点滴投与を指示して、検査が再開された。
 

「副腎の出血が酷いわ。このままじゃ、壊死する可能性が高い。」
 腎臓の隣にあり、様々なホルモンを分泌する臓器である。
 X線とCTの結果から、左右の副腎に異常が認められ造影剤を入れてさらに詳しく検査をした結果、副腎に多量の出血が認められた。
 細かい血管が大量にあり、時と場合によっては大出血の結果、壊死する可能性がある。
「避けたかったが、ここまで来たらやるしかない。ヘパリンの投与一時停止。ヘパリンコーティングPCPS(経皮的心肺補助装置:Percutaneous CardioPulmonary Support)で、血栓が出来るのを防ぐ。腹腔鏡手術の用意。運んでいる間に、壊死する可能性が高い。ここでやる。開腹手術への切り替えも想定しておいてくれ。麻酔医を大至急呼べ。緊急事態だ。食道静脈瘤と胃壁の処置も同時並行で行う。」
「自己血輸血装置と、クロスマッチ血液6単位も用意。」
 急ピッチで準備が行われ、麻酔医が呼ばれてオペが始まる。

「くそ!血の海だ。吸引急いで!」
 モニターには、血の海に隠れた副腎が映る。
 吸引した血液は、速やかに自己血輸血装置で輸血される。
「よし、見えた。細かな部分はレーザーメスで処置をする。残りは結紮だ。そっちはどうだ?」
「食道は済ませた。胃の方も折り返し地点は過ぎたよ。」
「ヴァイタルは?」
「血圧がまだ低いですが、どうにか安定しています。」
「ノルアドレナリン5ガンマ。血圧を上げてくれ。」
「解りました。」
 危険な状態は続いたが、オペは2時間ほどで終了。
 一夏は、ICUに移された。
 しばらくして、千冬達が到着した。
 そして、そこには思わぬ人間がいた。

「神無月さん…。どうして…?」
「父の仕事で、こちらに来る必要があったので…。一夏さんがこちらに運ばれたと聞いていてもたってもいられなくて…。」
「仕方がない。一緒にどうぞ。」
 追い返せそうになかったので、千冬は同行する様に言う。

後書き
自らの命を削り、それを力にして亡国企業からポーランドを守り抜いた一夏。
しかし、既に瀕死の状態。
医師たちが懸命に処置を行いますが、様々な異常が発生し、体力が落ちているにも関わらず避けたかった手術も行わなければならない事に。
幸い成功して、一夏は集中治療室に移ります。
後篇は、一夏の容態。
そして、ある事が明らかになります。
それにしても、ERでの処置の風景を書くために色々調べながらつくづく思いましたが、人間の体は奇跡とも言える程の精密なバランスで成り立っているんですね。
「えっ?この程度の事で、こんな事が起きるの?」
というのが、山ほどありました。
健康を保つのは、大変ですね。
やれやれ。












ER 緊急救命室 I 〈ファースト・シーズン〉 セット1 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ
2008-06-05

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ER 緊急救命室 I 〈ファースト・シーズン〉 セット1 [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル









ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

後篇へ続く。

目次へ戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
驚いた 驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第134話 真実の欠片<前篇> cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる