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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第135話 その手で出来る事<後篇>

<<   作成日時 : 2015/01/10 23:59   >>

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 昨晩の事を思い出しながら、真耶は千冬を心配そうに見ていた。
 真耶の考えとしては、千冬が自分を責める必要はないし罪があるとも思えない。
 人は万能ではない。
 誰しも出来る事には、限界がある。
 だからこそ、人は誰かと生きていく。
 いや。誰かと生きていけると思う。
 もし、人間が万能の存在であれば、社会そのものが成立しないし感情のふれあいも生じない。
 不完全な存在であるからこそ、人は社会を作り感情を通わせ互いの足りない部分を補いながら愛し合い、子を作り、社会は存続し続けていく。
 真耶はそう思っている。
 千冬にしても、一夏にしても、精一杯頑張ってきている。
 まして、一夏は今年の誕生日でようやく17歳になる学生。
 その学生が、何かあるたびに世界中を飛び回り様々な交渉・調整をして、様々な問題を解決。亡国企業の魔の手を、知略を尽くして跳ね除け続けている。
 その度に地位は高くなり権限も大きくなるが、背負う物も重くなる。
 少しは自分達でやったらどうだと、真耶は何度思ったか解らない。
 IS関係でも、幾度、一夏を道具の様にして各国はISの改修をさせただろうか。
 その度に千冬は他国のIS関係者に怒りを覚え、同時に政治の力から一夏を守れない自分に歯がゆさを覚えた。
 その後は、できうる限りの手段を講じて可能な限り一夏を道具にされないようにしている。
 2人とも、十分すぎる程やれる事をしている。
 真耶は、そう考えている。

 だが、2人ともそうは思っていない。
 その原因は、この姉弟が互いを心から大切に思っているから。
 あまりにも皮肉で、あまりにも悲しい。
 真耶は、そう思えて仕方なかった。
『織斑君。頑張って…。あなたのお姉さんの為にも…。そして、他の多くの人達の為にも…。』
 最初の峠を越えてから、ポーランド各地では一夏の回復を祈って祈りが捧げられている。
 日本では、比叡山延暦寺。高野山金剛峰寺。伊勢神宮。出雲大社といった、著名な寺や神社で、祈祷等が行われている。
 自分の力を極限まで振り絞りながら、ポーランドを守り抜いた一夏の姿に多くの人は尊敬の念を持っている。
 真耶たちでなく、多くの人々が一夏の回復を祈っていた。

「そうか…。未だに生死の境を彷徨っているか…。」
「はっ…。軍病院の医師たちも、全力で治療に当たっていますが…。」
 迎賓館で、一夏の容態を聞いたコモロフスキは沈痛な面持ちでソファに座った。
 そこに、秘書官がある知らせを持ってきた。
「やってくれるな…。陸軍のパタラング准将。ククラ大佐。ガスタル大佐を呼べ。大至急だ。最精鋭の兵士を集めておくように伝えろ。必要な装備を、好きなだけ使用することを許可する。」
「はっ!直ちにここに呼びます。」
『小国と侮り続けるなよ…。その小国の意地を、見せてやる…。』
 決意を固めていると、ホットラインに掛かってきたことを秘書官が知らせに来る。
「解りました。御助力。感謝いたします。はい。その件は了承しました。」

 多剤併用療法が開始された、翌日。
 一夏の熱は、38度5分に下がった。
 呼吸も、幾分穏やかになっている。
 それでも意識が回復する兆候は見られず、血液検査の結果も芳しくなかった。
 既に、昼になろうとしている。
 一夏の周囲には、使用されている抗生物質の注射器とそれを敗血症治療ガイドライン通りに投与する機器が3つ置かれている。
 そして、鼻から流動食を投与する経鼻胃菅を通して流動食が与えられている。
 医師や栄養士の指導を受けて、栄養バランスやカロリーを考慮しながら冬菊が作っている。
 一夏は日々の過酷な鍛錬の影響で、通常よりも代謝量がかなり高い。
 さらに今の弱った体を回復させるには、通常の流動食ではカロリーや栄養素が足りないという判断が為された。
 故に、点滴も続けられている。
 熱が下がったとはいっても汗の量は少なくないので、冬菊が傍らで拭い続けている。
 千冬は精神的に幾分か回復し、時折一緒に汗を拭っている。
「すいません。ちょっと。」
 主治医が、千冬と真耶に声を掛ける。

 2人は、使用されていないカンファレンスルームに通された。
「多剤併用療法が功を奏し始めて敗血症自体は、回復してきています。ですが…。心肺機能が相変わらず低く、血圧も危険領域です。敗血症性ショックです。」
 血液検査の結果を見せて多剤併用療法の結果を説明し始めた医師が、タブレットを操作して別の検査結果を表示する。
 多剤併用療法が功を奏し始めていると言っても、今の一夏の状態は悪い。
 既に、複数の臓器の機能が低下する多臓器不全になっている。
 今の一夏のように、敗血症が原因の多臓器不全を敗血症性ショックという。
 血圧も危険域に達しており、大量の輸液の投与や昇圧剤の投与の効果も見られない。
「検査結果は、相変わらずです。流動食に切り替えて栄養補給は輸液に比べて行えているのは確かですが、元々の代謝量が平均の倍以上高いので輸液も引き続き行っているのが現状です。それでも、この数値です。」
 表示されたのは、各種栄養素の数値である。
 敗血症の治療中。
 しかも、ショック状態ならば尚更通常通りとはいかないが、一夏の代謝を考慮して栄養輸液の点滴も併用しているにも関わらず主治医が最低ラインと考えている値より低かった。
「流動食や点滴を再検討してみますが、夜になっても上昇しなければおそらくは…。」
 部屋の空気が重くなる。
「無論、私共も全力を尽くします。ですが、念の為に心の整理はしておいていただきたい。それでは…。」
 主治医は去った。
 一夏との別れの前の心の整理をする為に、ここに連れて来た事を真耶は悟った。

「血圧が、また下がっています。尿の出も悪くなってきました。」
 カンファレンスルームから戻った主治医に、看護師が報告をする。
 看護師の報告を聞きながら、モニターのデータに目を通す。
「ブドウ糖を1アンプルと、ラシックス30mg静注。アミノフィリンを500の5プロに300mg。ノルアドレナリンを5γ。それから、クロスマッチ血液を2単位追加。緊急時に備えて、新鮮なクロスマッチ血液とオーマイナスを確保できるように、血液銀行に手配。何かあったら、知らせてくれ。心臓の様子は?よくないな。リドカインを350の5プロに300追加。全開で点滴。」
「はい。」
 看護師に指示を出して、汗を拭っては手を消毒液で丹念に消毒し新しい布で汗を拭って一夏の手をそっと包み込む冬菊を見て、主治医はICUを出る。

「健気だよな。日本の大富豪の令嬢だそうだよ。あの着物。家が一軒建つそうだぜ。そんなお嬢さんが碌に眠りもせずに、必死に看病して流動食を作って…。」
 同僚の医師が、冬菊の事を話題にする。
「ああ。そうだな。だからこそ、たまらんよ…。何とか回復してもらいたいが…。」
「難しいな。運ばれた時の異常な低血糖を考慮すると、助かっても脳に障害が起こる可能性は否定できない。それ以前に、今日中に意識を取り戻せるかどうか…。」
 医師たちも知恵を絞って一夏の治療法を考えてはいるが、容態は決していいとは言えない。
「言わないのか…?」
「何を…?」
 主治医が眼鏡を外して、目頭を揉む。
「一応、別れを済ませておけって…。」
「言えないよ…。とてもじゃないけどな…。それに、言いたいことはそういう事じゃないんだ…。」
「じゃあ、何が言いたいんだ…?」
「解らない…。」
 そう言って、顔を洗いにトイレに行く。

 一夏が、軍病院で必死に死と戦っている頃。
 コモロフスキの前には、3人の陸軍の軍人がいた。
 第1特殊コマンド連隊指揮官、ピオトル・ガスタル大佐
 GROM(Grupa Reagowania Operacyjno−Manewroweg:緊急対応グループ)指揮官、ヴィエスアフ・ククラ大佐。
 この2つの隊を含むポーランド特殊部隊の長たる、ピョートル・パタラング准将。
 ポーランドの精鋭部隊の指揮官たちがコモロフスキの前に、揃っていた。
「オリムラ中将の事は聞いているから、長々と話はしない。一言で言えば、生死の境を彷徨っている。その中将を狙う者達が、いる。今回の任務は、彼を守り抜く事。基本的には射殺。降伏する者は、武装解除して拘束。選りすぐりの兵を持って任務に当たるように。負傷させて捕えるなどという生温い考えは頭から、追い出してもらう。直ちに、部隊を配備。」
 3人は、敬礼してすぐに部隊配置に向かう。
「大統領、客人たちが到着しました。」
「うむ。」
 コモロフスキは、小さく頷いて応接室に向かう。

「織斑君が…。」
「はい…。既に、何人かを拘束し、裏付けも取りました。大統領は我が国の特殊部隊から、第1特殊コマンド連隊とグロムの精鋭を選抜。中将の警護に当たる様に、命令を下されております。どうか、ご安心を。」
「よろしくお願いします。」
「解っております。今度は、私達が中将をお守りする番です。」
 大統領の秘書官が、亡国企業に一夏が狙われていることと既に特殊部隊の精鋭を配備するよう命令を下したことを知らせて、迎賓館に戻る。

「315号室の山田です。荷物の中から一番大きいトランクを持ってきてください。大至急です。お願いします。」
 真耶は宿泊しているホテルのフロントに、連絡を入れる。
「真耶…。私の部屋からも持ってくるように言ってくれ。刀もだ。」
 千冬が、真耶に自分の荷物も持ってくるように言う。
「解りました…。」
 項垂れていた千冬の瞳には、炎が揺らめいていた。

「配備完了しました。」
「よし。そのまま待機せよ。」
「はっ!」
 第1特殊コマンド連隊は、兵の配置を完了。
 指揮官のガスタルに、通信が入った。
「ガスタル大佐。こちらも整った。」
 グロムも、既に完了していた。

「そうか。総員、聞け。今日中。おそらくは夜だろうが、敵が来る。しかし、決して通すな!ここで奴らを通せば、我々だけでなくポーランド軍は恩の一つも返せない腰抜けと子々孫々まで世界中から物笑いの種になるだろう。命を削って、祖国を守ってくれたオリムラ閣下に報いる時だ!死力を尽くせ!敵に対して一切の容赦はいらない!以上。奮闘に期待する。」
 展開している兵たちに、パタラングが檄を飛ばす。
「大統領。配備完了いたしました。」
「うむ。」
 迎賓館には臨時の司令室が設けられ、アヴァロンにUAVの哨戒を依頼し送られてくる情報に基づき状況把握に努めていた。

「役に立たない方が、いいんですけれどね…。」
 真耶は防弾・防刃に高い効果を持つ繊維で作られた迷彩服に着替えて、HK416C、ファイブセブン、P229と予備マガジンを取り出す。
 今回は、夜間戦闘が考慮されるのでそれに対応したオプションも装備する。
 HK416CにはEOTech553ホロサイトの他に、AN/PEQ−15レーザーサイト、M320 グレネードランチャー、サイレンサーを搭載。
 念の為に、ホロサイト用のブースターも所持している。
 さらに、AN/PVS−15 暗視スコープを装着。
 拳銃には、AN/PEQ−6 レーザーサイトを搭載している。
 夜間戦闘に対して、万全の体制で備えている

 一方千冬は、強化セラミック、ザイロン、BFRP、βチタン合金を使用した複合材プレートと、改良されたケブラー繊維、ザイロン繊維、ナノカーボン繊維、液晶ポリマーフィルムを使用した複合繊維の戦闘用プロテクターを装備して、超高圧縮高硬度コバルトハイス鋼製のブレードを六振り腰に装備。
 H&K G3バトルライフルを特注でカスタマイズした物に銃剣とレーザーサイト、ホロサイト、M320グレネードランチャーを装備する。
 千冬のG3は取り回しをよくする為に通常より短いが肉厚で耐久性が高く精度の高いバレルと狙撃仕様のG3SG1を上回る高精度のパーツを使用し、セミオート、フルオートに3点バースト機構を組込み、各所にピカティニーレールを装備。チークパッドの調整も可能なテレスコピックストックを使用した物で、ほとんど別の銃と言えるほどである。
 結果、通常の10倍の値段になった。
 だが、それに見合うだけの性能を持つ。
 今回は、通常軍隊で使用されるフルメタルジャケット弾ではなく、大型動物の狩猟用に用いられるパーシャルジャケット弾を用意していた。
 この弾丸はフルメタルジャケットと違い、先端部は真鍮でコーティングされていない。
 それ故、目標に命中した際はコーティングされていない部分は通常より変形し大きなダメージを与える事が出来る。
 「不要な苦痛」を与える事を禁じているハーグ陸戦条約を考慮し、軍隊では使用されていない。
 だが、亡国企業はテロリストと見なされており、この条項は適用されないので千冬は炸薬の量を限界まで増やした上で使用している。
 愛用のデザートイーグルも強装弾にした上で通常より大きなダメージを与えるホローポイント弾を選択し、防弾プレートを使用したボディーアーマー対策として特殊な処理を施している。
 サブアームとして選択した、10mmオートを使用するグロック29にしても同様である。
 威力を最も重視していることから、千冬は亡国企業の特殊部隊に情けの欠片も掛けていないことがよく理解できた。
 最後に、一振りの太刀を履く。
 長船元重。
 南北朝時代に活動した刀匠で、千冬の愛刀を打った刀鍛冶でもある。

「すまんが、後を頼む。」
「了解しました。」
 春香に後を頼んだ千冬は、返事に小さく頷く。
「一夏…。少し騒がしくなるかもしれんが、我慢してくれ…。静かにさせて、すぐに戻る…。では、行ってくる…。」
 熱に魘され苦しそうに呼吸をする一夏に優しく話しかけると、千冬の精神のチャンネルは変わる。
「行くぞ。」
「はい。」
 完全武装の千冬と真耶は、病院の外で待機している部隊と合流する為に向かった。

『亡国企業…!』
 思い出したくなくとも、一夏が誘拐された時の事が思い出される。
 何もできず、ただ回復を待つしかなかった二カ月間を。
 何物にも代えられない、ただ1人の家族を生ける屍のようにされた日々を…。
『今度も、好きに出来ると思うなよ…。貴様たちの所業…。相応の罪で贖わせてやる…!』
 千冬は、元重の柄を握りしめる。

『守ってみせる…!!今度こそ…!!』

後書き
真耶の視点からスタートです。
真耶が考える通り、人は万能ではないので出来ることは限られます。
だからこそ、人はできうる限りベストを尽くすのですが、千冬はそれを理由に自分を赦す事は出来ない。
一夏の入学以来、傍らで一夏と千冬を見てきたからこそ、2人が互いをどれだけ大切に思っているかは、身に染みて理解しています。
医師たちも、懸命に治療するも効果が出ない事で疲労感を感じ始めます。
特に、日本でも屈指の大富豪の令嬢である冬菊の献身的な看病を見ていると、別れを済ませておいてくれとはやはり言い難い。
ですが、いつかは伝えておかないといけない。
私は、11年前に父を亡くしましたが、覚悟はしておくように言われていました。
先生達は懸命に治療をしてくれましたが、もうどうにもならない状態でした。
でも、こういう時って医師の側も辛いと思うんですよね。
だからこそ、今の冬菊にどう言葉を掛ければいいのか解らない。
その最中、亡国企業が特殊部隊を動かしていることが判明。
ポーランドは、特殊部隊から精鋭を選抜して守備に当たらせます。
その知らせは、千冬と真耶にも届きます。
武器の手入れをして、戦闘用の迷彩服に着替えます。
特に千冬は、迷彩服より重防御の戦闘用プロテクターを身に纏い、極めて硬度の高い素材を加工する特殊な工具に使用するコバルトハイスという素材をさらに強化した物で作られたブレードと、自らの愛刀。
かつて、世界3大バトルライフルの1つに数えられたH&K G3の特注版を武器とし自ら戦場に赴きます。
今度こそ守って見せる。
その決意を胸に。
戦闘用プロテクターは、OVAの千冬がイメージです。










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