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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第122話 恋心の行方<後篇>

<<   作成日時 : 2014/10/05 00:05   >>

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 うん?なんだ?
 どこか、しんみりしていないか?
「あの。どうかなさいましたか…?」
「何でもないのよ。さて、夕ご飯の準備しなくちゃ。」
 お袋さんが、キッチンに向かう。
 何か、変だな。
 まあ、深刻そうではないからいいか。
「ねえ。一夏…。」
「うん?何だ?」
 由香里が何かもじもじしながら、聞いてくる。
「進路って、考えてる?」
「そうだな…。俺の場合は、難しいかな…。芝崎に深く関わり過ぎてるから、「じゃあ、辞めます。」とは、気軽には言えない。とはいえ、いつまでも、兼業を続けられはしない。医師か、民間か、外交か、軍人か。選ばなければならない…。ただ…、誰かの役に立てる仕事に着きたいという希望に、変わりはないよ…。どれでもやりようによって、人の役に立つことはできる。例えば、委員会直属の軍人でいたとしても、軍医を兼任して医学の世界にいる事も出来る。
ただ、物作りの現場でいろんな病気や重度の外傷を負った患者さんの治療に役立つ医療器具とか、国際救助活動の際に使用できる病院船の設計にも携われる。というか、もう病院船は設計済んでるんだけどな。見てみるか?」
「いいの?」
「ああ。趣味でやったやつだからな。で、どうする?」
「うん…。じゃあ、見る。」
 へえ。こういうの興味あるんだ。
 じゃ、データを呼び出してと。
「凄い…。大きい…。」
 データに表示された病院船の大きさに、由香里は目を丸くする。
「アメリカ軍が配備しているマーシー級より、2回りは大きいな。ベッド数も1300と3割増しにしている。他にも診察室、検査室、薬品その他の医療器具の倉庫、医師が治療方針を議論するカンファレンスルームに、医師、看護婦、検査技師を含む医療従事者の宿泊施設にシャワールーム。それに各病棟に医師と看護師の仮眠室も設けた。それから、プールを含むリハビリ施設。ER、オペ室にICUにNICUも、十分な数を確保している。ドクターヘリは通常30機を搭載。緊急時は、さらに搭載できる。甲板上で、簡単な整備点検に給油をして、短時間で飛びたてる。通信統制機能も充実してるから、各ドクターヘリへの指示と、受け入れ態勢を整えるのも効率的にできる。災害時には役に立つと思うぜ。」
「凄い…。大きな災害が起きた時に来てくれれば、心強いね。でも、これだけ大きいと速力はあまり出ないよね。」
 ま、常識的にはそうだな。
「こいつは、最大速力32ノット。時速59km出る。通常でも41km。例えば、フィリピンで災害が起きて救助活動に向かうとする。3113km離れていても、通常でも3日と少しで着く。勿論、もっと短縮することもできる。このケースで最大速力なら、後1日短縮できるな。旅客船やタンカーとかなら、船によるけど18日位だな。」
 この機関は、自信作だ。
 何しろ燃料があちこちにあるから、航続距離は理論上無限だ
「どんなエンジン積んでるの?やっぱり、原子炉?」
 ああ。やっぱりそう来たか。
「それじゃあ建造費は高くつくし、第一安全性やメンテナンスの問題がある。水素を燃料とする、燃料電池だよ。」
 俺は、別のデータを呼び出す。
「来週発表になる新型の燃料電池だ。これ一つで、6500馬力になる。これを機関室に40個搭載する。この大きさの船だから、それだけのスペースがキープできたんだけどな。」
 コストが高すぎるとビジネスにならないから、コストパフォーマンスを考えると、この大きさだとこれが限界だ。
 もっと掛かってもいいなら、さらに大容量に出来るけどな。
 建造費はできるだけ安くしたいから、これを使う事にした。
「あれ?確かこのタイプの電池って、水素の補充が必要だよね?どうするの?」
「それが、この機関の特徴さ。減ったなら補充すればいい。航行しながらな。」
 そう答えると、由香里は少し考え込む。
「ひょっとして海水から…?」
「正解。この機関の正式名称は「水素分離補充型PEM燃料電池機関」。海水から水素を取り出して、各燃料電池に減った分を補充するのさ。その装置を動かす燃料電池と、船内設備の電力を供給する燃料電池にもな。ちなみに、水素を分離して供給するシステムの燃料電池と艦内設備の電力をまかなう燃料電池は、正・副・予備の3系統にしてある。この電池自体容量はかなりの物だから、補充しなくても地球を半周できるけど、用心に越したことは無いけどな。それに、何処の病院も自家発電機器があるのは常識だし。そっちも念の為にな。人工呼吸器を含む医療機器がいきなり動かなくなったら患者さんの命に関わるし、助かっても障害が残るのは御免だからな。」
「凄い。これが建造されたら、災害時は凄く役に立つね。途上国の医療設備が整っていない沿岸都市の臨時病院としても、充分すぎるくらいだわ。」
 医療機器も、最新鋭の物を積んでるしな。
 後は、スタッフ次第だな。
「船体は特殊強化セラミック複合材を使用しているから、ほぼ同サイズの米軍空母に比べても、重量を相当抑え込むことが出来る。だから、船体は二重装甲にして、機関部等の重要部分は三重装甲。船底は三重底。注排水システムは、船体の浮力を確保するバルジを二重にして防御している。悪天候に見舞われても、そう簡単には沈まないぜ。テロリストの類が来て攻撃しても、この船の装甲を破るのは相当に骨だな。」
 いくらテロでも病院船は襲わないと思いたいけど、子供を攫ったり学校を襲撃したりする反政府組織もあるからな。
 それも兼ねて、船体の防御力は可能な限り高くした。
 国連活動をする際には、護衛艦もつくから大丈夫だろうけどな。
 もし俺が乗っていたら、病院船を襲うような人間の屑共は纏めて半殺しにしてベッドの上で反省させてやるけどな。
「やっぱり、一夏は凄いね。努力家で、常にいろんな事を吸収してそれを人の為に役立てるっていう、心の軸がしっかりしてるんだもの。いつも厳しい鍛錬を積んで、武術やIS戦闘の技術を磨いているのも危険に瀕した人を守る為。私も見習わないと。」
「そんなに、肩ひじ張る必要ないって。俺はさ。誰かが不幸になっているのを見るよりも、幸せになっているのを見ている方が好きなだけだよ。本当に、ただそれだけさ。」
 不幸になって落ち込んだ顔よりも、幸せになって喜んでいる顔の方が見ていると心が暖かくなるからな。
 だから、俺は自分の技術でたとえ顔を見た事のない知らない人でも、その人が幸せになれればと物作りをする。医療機器や、医療用ナノマシンの開発がそうだ。兵器も作っているとはいえ、その気持ちに嘘偽りはない。
 だからこそ、将来もそういう道を歩きたい。
 それを頭に入れて、卒業後の事を考えている。
 ま。その前に、亡国企業を潰す大仕事が残っているわけだが。
 それに、俺の先だって解らない…。

「凄いじゃない。そんなすごい病院船を設計するなんて。」
 夕食の時に由香里から一夏が設計した病院船の事を聞き、由香里の母はただただ驚いていた。
 世界最大にして、通常より早く被災地に早く駆けつけることが可能。
 多くのドクターヘリを効率的に運用し、核以外で半永久的な機関を可能とした。
 核に反対する運動家からすれば、夢の様な話である。
「じゃあ。原子力発電所に変わる発電システムとしても、使えるんですか?」
「従来の水を沸騰させてタービンを回すやり方とは違うけど、可能だぞ。とどのつまりは、自転車のライトと同じだからな。回転させることによって発電させるのは、同じだし。後は、周辺に海や湖があればいい。そこから水素を取り出せるわけだし、海水や湖の水を沸騰させてタービンを回す従来のやり方でもいいしな。沸騰した水は、冷えて水蒸気から水に戻って海や湖に戻る。別に汚染されるわけでもなし。要は、発電効率の問題だよ。そこは、検証することになるけど、問題になる事は出ないと思うね。」
 一夏は聡の質問に答えながら、発電所の設計図を頭に描く。
「水量が安定していれば、河川の近くに1つの街位ならまかなえる発電所も可能なんだよな。ただ、水量がネックか…。」
「ああ…。干上がるもんね。川って。」
「それを言うなら、湖もそうさ。とすると、ベストなのは沿岸部か。水質汚染も無いし、問題はないだろう。それにしても、この佃煮美味しいな。」
 あさりの佃煮に、一夏は舌鼓を打つ。
「中山のおばあちゃんの作る佃煮。深川一って評判なんだよ。」
「だな。」
 一夏はそう言って、再び佃煮を食べる。
「おばあちゃん。一夏に会うなり、何度もお礼を言ってたもんね。」
「それは嬉しいけど、あんなにサービスしてもらってなんか悪いな。」
 昼食を済ませた後、一夏は話に出てきた佃煮屋にいったが一夏を見たおばあさんは手を握って涙を流しながら、何度も礼を言った。
 出来立ての佃煮の味見をさせてもらった一夏は、すっかり気に入っていくつか土産に買って行く事にしたが、お礼という事で随分とサービスしてもらっていた。
「一夏に、「長生きして、これからも美味しい佃煮を作ってくださいね。」って言われた時のおばあちゃんの顔。見た事も無いくらい嬉しそうだったなあ。」
 その時の事を、由香里は思い出す。
「おばあちゃん。「また佃煮を作りたい。」って、言ってたからな。当然か。」
 聡がおかずの牛肉の味噌漬けを焼いたのを食べながら、納得したように言う。
「解った時には、酷い末期癌だったから当然でしょう。それが、嘘みたいに治っちゃったんだもの。治療を担当した、主治医の先生も驚いてたものね。」
『頑張った甲斐があったな。あんなに喜んでくれたんだから…。』
 一夏は、その時の事を思い出しながら佃煮を味わっていた。
 金額的には大したことは無いが、込められた真心に価値などつけられない。
 一夏にとっては、嬉しいお礼だった。

「どうしたの?織斑さん。」
 由香里の母が、一夏の顔を見る。
「いえ。助けられる患者さんばかりじゃ、ないですからね。こういう時は、医者としての喜びをやっぱり噛みしめるんですよ。患者さんが元気に回復してくれた、喜びを。抗がん剤の副作用もないようですし、後は定期健診を受けていれば、再発しても早期癌の内に対処が出来ます。だから、嬉しくて…。」
 穏やかに答える一夏の横顔は本当に嬉しそうで、何より綺麗だった。
 少なくとも由香里はそう思い、一夏への恋心は募る一方だった。
「私達も嬉しいわ。あそこの佃煮屋さんとは古い付き合いだし、おばあちゃんにも長生きしてほしいし。私からもお礼を言わせていただきます。」
 そう言って、由香里の母は頭を下げる。
「そんな。どうか、顔をお上げになってください。お礼を言いたいのは、本当にこちらの方なんです。元気に日々を暮らして下さっている。それが、どれだけ嬉しいか…。」
 ほんのり頬を染めて、一夏は言った。

 夕食後、一夏は聡の受験勉強を少し見ることになって再び由香里は母と2人になった。
「あなたが好きになった理由、よく解るわ。あんなに優しくて思いやりのある人、そういないもの。あんなお医者さんが近くにいてくれれば、私達も安心できるわね。横須賀の病院で織斑さんが外来の時、日本中から患者さんが来るのも納得がいくわ。「匙を投げられたら、横須賀に行け。」難病で困っている人たちの間だと、そう言われているそうよ。」
「そうなんだ。だからよね。一夏がプロポーズされたのも、当然だよね…。しかも…、相手は物凄いお嬢様…。同級生の代表候補。アメリカ海軍のテストパイロットの人で、物凄い美人でスタイルもいい人。私じゃ、勝てないかな…。こんなに…、好きなのに…。互いに寄り添って生きていきたいって、本気で思っているのに…。」
 由香里は涙をこらえて、下を向く。

「告白は?」
「えっ?」
「告白したの?告白しないと、勝負も何もないでしょう。一方通行よ。本当に好きなら。いつかは、結婚したいって思っているなら。まず告白してからが、スタートでしょう?」
 由香里の母は、黙って返事を待つ。
「そっか。そうだよね…。それからだよね…。ありがとう。お母さん。」
 そう言って、由香里は部屋に戻る。
「まだまだ、手がかかるわね。愛しの王子様は、そっち方面はかなり鈍いっていうし。」

 俺は風呂をいただいた後パジャマに着替えて、国際情勢に軽く目を通していた。
 やっぱり堅実ながらも利益を上げては、伸びている糸があちこちにあるな。
 ただ、伸びた糸の先端の部分がぼやけてよく見えないような感じなのは、気のせいか?
 欧州の何処かに亡国企業の本拠地があるのはまず間違いないとしても、こうぼやけていたんじゃ探すのは骨が折れる。
 金の流れを追うのと、連中のファクトリーもなんとか見つけ出そう。
 あんなデカブツに、ディースの生産。
 高性能原潜。
 相当に設備の整ったファクトリーに、資材の供給ルートがあるはず。
 専用の衛星を、開発するか…。
 俺は設計用のアプリを立ち上げて、衛星の設計を始めた。

「一夏?もう寝た?」
 衛星の設計が終わってラボにデータを送って製造工程に入った事を確認した一夏が寝ようとした時、由香里が一夏の部屋に来た。
「いや。これから寝る所。どうしたんだ?パジャマ持ってきて?」
『由香里は自分の部屋があるから、そっちで寝るんじゃないのか?』
 一夏が疑問に思っていると、由香里は服を脱ぎ始める。
「お、お前何やってんだよ…!」
 由香里の家族に気づかれてはいけないので、小さな声で嗜め目をそらす。
「そらさないで…。ちゃんと、見てて…。私を…。」
 一夏が由香里を見ると、由香里は服を脱ぎ白のアンティークレース風の下着姿になりパジャマを着た。

「で、その、どういうつもりだ…?」
 いきなり目の前で着替えるという、男にとってはある意味拷問とも言える事をやった以上、何か理由はあるだろう。

「好き…。」

 え…。

 今、なんて…。
 そう思っていると、由香里は俺を抱きしめてキスをする。
 動けばいいだけだけど、なぜか動けなかった。

「私。一夏の真っ直ぐな所が、ずっと好きだった…。それに、優しくて、暖かくて、誰かの幸せを願う心を一層知って、ますます好きになった…。私、一夏の優しい笑顔が大好き…。だから、悩んでいる顔を見るのは辛い…。大好きだから…。だから、私が支える…。一夏の心は、私が支える…。」
 そう言って、布団に入って寝るように促す。
 一緒に寝るのかよ…。
「私が欲しくなったら、いつでもいいから…。気づいた?今日の下着、私の勝負下着の一つなんだよ…。これからは、下着のおしゃれに気を付けて、いつ一夏の物になってもいい様に、準備しておくから…。」
 「お寝すみなさい。」と言って、由香里は俺を抱きしめる。
 頬に伝わる、柔らかい胸の感触。
 “女性”を知った俺には、刺激的すぎる。
 手を伸ばせば、由香里の体に届く。
 でも、俺は相思相愛でもないのにそういうのは、御免だ。
 目をつぶって俺は眠気が来るのを待って、しばらくして訪れた眠気を待って眠った。

後書き
遂に、由香里が一夏に告白しました。
一夏がやりたい事。
その理由。
それを聞いて、一夏を好きになった事を再認識。
何故、一夏を好きになったか?
その理由も改めて理解します。
しかし、告白はしていませんでした。
何しろ、冬月と菫という超お嬢さまに、各国の代表候補というエリート中のエリート。
大人の女性の魅力十分のナタル。
自分は劣っているのではないかと思い、告白できなかった由香里を母親が後押し。
「いつでも、一夏の物にして。」と一夏に伝えて告白。
さらに激しさを増しそうな、一夏を巡る恋する乙女達の戦い。
一夏は誰を選ぶのでしょうか。
亡国企業の事と並んで、一夏も大変です。













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