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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第120話 乙女達の想いと、再びの嵐<前篇>

<<   作成日時 : 2014/09/20 23:57   >>

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「成程。話しの内容は理解した。それでいくのがいいだろう。極秘裏にやれば、いらぬ憶測を招く。」
「そうですね。訓練は、常に行わねばなりませんからね。特にアヴァロンは。それに、アメリカ海軍と空軍の戦闘機部隊にIS部隊も定期的に訓練はしていますから、うまく潜り込ませる事はできますしね。」
 一夏は、寮に戻ってから昨夜の食事の席での話し合いの結果を、千冬と真耶に話していた。
「まあ。お前が休みがちになるのは、ここまでくるとやむを得んだろう。自習範囲は、事前に知らせておく。しっかりやっておいてくれ。大変だろうがな。」
「それは承知しています。フィリピン語の方は、自分で進めて読み書き会話に、通訳、翻訳。全て大丈夫です。」
「自分で進めていましたか。流石は織斑君ですね。ひょっとして、他に何か勉強する予定はあるんですか?」
 既に、ユーラシア大陸の言語は自在に操る一夏は、世界の何処に行っても言葉で困る事はほとんどない。
 だが、それでも何か勉強するのではないかと思って真耶は興味を持っていた。

「南米の公用語であまり知られていない言語や、アフリカの言語を勉強しようと思っています。言葉は一つでも多く話せるようにした方が、世界が広がりますし。」
 これからは、治安が落ち着いた南米だけでなく、資源が大量に埋蔵されているアフリカでのビジネスが活発になると一夏は考え、出来る限り方言の様になっている言語に関しても勉強しようと考えていた。
『尤も、活かせるかは解らないけどな…。』
 そんな事を考えたが、一夏は表情には決して出さない。
「とにかく、よく話しを纏めてくれたな。例のデータ収集艦の事は、お前に面倒を掛けることになるかもしれんがその時は頼む。」
「まあ。担当するかは解りませんけどね。アメリカの軍需産業が受注しようとロビー活動を盛んに行う可能性も高いわけですから。では、失礼します。」
 そう言って、一夏は職員室を出た。

「食事会なのか、今後の相談なのか、境目がないですね。今回の様な形で織斑君の知恵を借りようとする人達が出てくるのは、あまり好ましくないように思えますが。」
 今回は、IS委員会とアメリカとの共同での亡国企業への警戒の打ち合わせという色合いが濃かったが、それ以外。
 例えば、自国の為に一夏の知恵を利用するような事が露骨になるのは、真耶としては受け入れられない。
 どうするべきか、考え始めた。
「その辺りは、一夏の判断に任せるしかあるまい。委員会直属の中将としての一夏に対しての申し入れとなるとさすがに口出しはしにくい。心配するな。あれが、そう簡単に利用されるような奴に見えるか?そのような愚行を犯せば、重い代償を支払うことになるだろうよ。イギリスの外務大臣という例も、あるしな。」
 欧州における亡国企業の本拠地の捜索は、公的機関ではイギリスのSIS等にインターポール、ユーロポールと協力関係にあるが、その中でイギリスのヘミングス外務大臣はほぼ蚊帳の外にいると言ってもいい。
 一夏のヘミングスに対する心象の悪さは、イギリスだけでなく欧州の社交界でもつとに有名である。
 故に、イギリス政府はなるべく関わらせないようにしている。
 さらに、既にシーズンに入っており舞踏会なども上流階級では盛んにおこなわれる。
 一夏も社会的地位と財産から、既に上流階級の人間である。
 もし顔を合わせて、協力関係がご破算にならないだろうかと関係者は戦々恐々としている。
 尤も、一夏は殊更ヘミングスとの関係をこれ以上悪くするつもりはない。
 普通にしていれば、現状維持でいられる。
 国家のためとはいえ、これ以上人の道を外す様な行動を取らなければいいと思っている。
 また、取ったとしてもイギリスとの関係をご破算にするつもりはない。
 それはそれ。これはこれである。
 国際社会の複雑さを骨身に染みて知ってから、その辺りの割り切りは出来るようになっていた。

「一夏も大変だね。いきなり在日米軍の司令官と食事が入るなんて。」
「ま。いろいろとな。クラス代表対抗戦の時の大攻勢は、向こうだってショックを受けているさ。そう言えば、結局アサルトライフルどうなってるんだ?」
 シャルロットの母国フランスの制式アサルトライフルFAMASは、間もなく更新される。
 が、後継となるアサルトライフルはまだ決まっていない。
 それで、相変わらずシャルロットはFAMASを使っている。
「一部の部隊では、SCAL−Lが使われていると聞いている。海軍の特殊部隊や海兵では、M4にHK416が使用されていたな。」
 ラウラが、話に加わる。
「結局、どうなるか解らないのが現状なんだよね。近代化モデルの事もあるし、AUGの近代化改修版の噂もあるし、どうなるのか解らないよ。」
 おいおい。何やってんだよ、本国。
 これじゃあ、シャルロットも困るぞ。
「いっその事、シャルロットが自由に決められるように、本国に掛け合ってみたらどうだ?どんな銃になるにせよ。決まらないままじゃ、シャルロットも大変だろ?」
「まあね。僕の印象では、値段は高いけどSCAR−Lが一番良さそうな気がするんだよね。」
 特殊部隊で使用されることを前提に開発されたのが、SCAR−Lだ。
 ピカティニーレールが各所についていて、拡張性も高いし、各国で採用されていることから性能は折り紙つきだ。
「そうだな。それがいいかもな。ブルパップじゃないから、少し戸惑うかもしれないけど1日あれば慣れるだろうし。いいんじゃないか?それで。」
「ま。いずれにせよ。本国の状況を確かめてだけどね。」
「そうだな。」
 俺は、射撃訓練を再開した。
 みんなは普通だな。
 黙っているのはどうかとも思うが、べらべらと喋るのも問題だ。
 このままが、いいだろう。
 由香里の射撃のスキルは、大分伸びているな。
 元々、準専用機持ちは1年の3学期から射撃訓練を受けているので、始めからそれなりに射撃は出来る。
 ただ、専用機持ちとなると狙われるリスクが跳ね上がるので、更に上に行ってくれないと困るので、頑張ってもらわないとな。
「OK。そろそろ上に行くか。ちょっと見ててくれ。」
 手元の端末を操作して、ターゲットを出してM8で次々と撃ちぬく。
「今の見て、どう思った?」
「狙っているようには、見えなかったわ。こう、端から端まで銃口を移動させて命中させた感じ。」
「そう。相手も動くから、そういう時には狙っていると却って当たらなくて逃げられる。最悪、こっちがやられる。そういう時には、狙わないでさっきみたいにして照準が重なった刹那の瞬間にトリガーを引くんだ。最初はゆっくりやって、少しずつスピードを上げていけばできるようになる。」
「うん。」
「じゃ、やってみるか。」
 俺は、端末を操作してターゲットを出す。

 朝の訓練が終わってから、一夏はシャワーを浴びていた。
『由香里は、ISの訓練も戦闘の訓練も順調。このままがんばれば、タッグマッチ当日までには、ISのスキルはだいぶいい線まで行くな。後は、連携を練り上げればいい。』
 そもそも、準専用機持ちと専用機持ちの期間を合せても半年にならない由香里のレベルアップに関して一夏は高いレベルを要求するつもりはなかった。
 第一、入学時から専用機を駆って亡国企業と戦ってきたセシリア達とは地力が違いすぎる。
 そして出した結論は、一夏がカバーしつつ戦術で相手を上回る。
 潰しやすい由香里への攻撃を牽制して、反撃からこちらの戦術に繋げてペースを掴む。
 それが、一夏と由香里が話し合って決めた基本的な戦い方だった。
『後は、ローレンス・ハイランドの改修案の依頼が来るかどうかか。既存の技術をうまく利用して、充分なデータを取れるように考えておくか。それなら、アイデアはあるしな。』

 シャワーを浴び終えてタオルで体を拭いていると、ふと昨夜の事を思い出す。
 頭というより、体が覚えていた。
 腕の中にいた、ナタルの感触を。
 アメリカの最重要軍事機密のテストパイロットを務めるだけあって、IS戦闘の技量は一流。
 兵士としての技量も高い、優秀な軍人。
 だが、ベッドで一夏の腕の中にいたナタルは信じられないほど華奢で、一夏がその気になれば折れてしまいそうだった。
 プライベートでは、か弱い1人の女性。
 それがナタルだという事を一夏は体で実感し、その事を思い出す。
『だからといって、俺達の関係に変化はない。』
 元々、そういう条件で一夏はナタルを受け入れた。
 故に、一夏は自分にそう言い聞かせて、思考を中止した。

『ここの所、一夏さんとほとんどお話をしてませんわね…。』
 タッグマッチの前とあって、一夏の思考はそちらに切り替わって由香里との効率的な連携。各種戦術の立案に独自の研究ばかりで、セシリア達とはあいさつとちょっとした会話ぐらいしかしていなかった。
『もし、私たちの内の誰かがパートナーだったら、違ったのでしょうか…?』
 一夏に恋をしているのは同じだが、自分達とは別のアプローチで一夏との距離が近くなっていく由香里を見ていると、セシリアはそう考えるようになっていた。
『もし、私とペアを組んでいたら、将来は…。』

 英国の首都ロンドンの中心で、金融業を始めとし様々な企業の本社が集まるシティ・オブ・ロンドン。
 多くの高層ビルの中に、世界屈指のコングロマリットであるオルコットグループの本社である高層ビルがある。
「ふう。」
 書類にサインし終わった、若く美しい女性がミルクティを飲んで一心地する。
 若くしてオルコットグループの会長を務める、嘗てのイギリス国家代表ISパイロットセシリア・オルコットである。
 今は、現役を引退しグループの経営に専念している。
「会社の業績がさらによくなっているのは喜ばしいですけれど、こう忙しいのは考え物ですわ。」
 ぼやいている時に、執務室のドアを叩く音が聞こえる。
「入って、結構ですわよ。」
 座って、ドアの向こうにいる人間にそう伝える。
「失礼します。」
 長く艶やかな黒髪を束ねた容姿端麗な青年が、書類を持って会長専用執務室に入ってきた。
「どうなさいましたの?あなた。」
 一夏・O・オルコット。
 旧名織斑一夏。
 世界でただ1人ISを動かす事が出来る男性で、嘗てはIS委員会直属の軍人としてだけでなく国連安保理の特別理事としても国際問題を幾つも解決し、世界的な製造業芝崎インダストリーの技術顧問と社外取締役を務めた才人でセシリアの最愛の夫である。
 今は専用機である白式を持ったまま、副会長としてセシリアを支えながらビジネスマンとしての才覚を大いに活かして多くの新規事業を起こし軌道に乗せ、他にもいくつものプロジェクトの指揮を執り、天才科学者と世界でも一流の医師であることを活かして、医療機器等の開発現場の第一線にも立つ。
「いくつかのプロジェクトに、新規事業の状況の説明をしておこうと思ってさ。」
 社員たちがいる前では、会長と副会長として互いに立場を弁えているが、2人きりの時は夫婦に戻る。

「文句の付けようがありませんわ。新規事業はすっかり軌道に乗りましたし、他のプロジェクトの進行状況も極めて順調。流石ですわね。」
「それが、俺の仕事だからな。会長であるセシリアを支えて、負担を減らし、愛する家族を守る。その為に、全力を尽くしているだけだよ。」
 嘗て共に学んだIS学園を卒業し、セシリアは英国に帰国。
 一夏は亡国企業壊滅での多大な貢献をした結果、大将に昇進。
 それに伴い、新たな地位に着いたためにニューヨークに行った。
 そして、芝崎インダストリー技術顧問及び社外取締役を辞任。
 それから、モンド・グロッソで激戦の末ブリュンヒルデの称号を手に入れたセシリアは、一夏にプロポーズ。
 一夏もそれを受け入れて、2人は結婚。
 セシリアは現役引退し、一夏もIS委員会と国連安保理特別理事の地位を退いた。
 そして、今はオルコットグループのナンバー1とナンバー2として、グループを盛り立てている。
 セシリアは一夏という最高のパートナーを得て、亡き母が成長させたオルコットグループを更に成長させている。
 それも一夏が時に縁の下の力持ちとなり、他の重役に根回しを行い、セシリアを会長の座から引きずりおろしグループを乗っ取ろうとする者たちの力を奪い、セシリアが余計な悩みを抱えないように一夏が環境を整えてきたからこそである。
「今日も、早く帰れますわね。」
「ああ。子供たちと、楽しい時間が過ごせる。ありがたいことだよ。」
 2人が結婚して6年。
 既に4歳になる男の子と女の子の双子を授かり、セシリアと一夏の生きがいとなっている。
 グループを守るために2人は力を尽くしているが、同時に愛する子達の為でもある。
 今の幸せな生活を守るために、2人は日々仕事をこなしている。
「さて。そろそろ会議だ。行こう。」
「ええ。」

『こんな未来が待っていたら、どんなにいいでしょうか…。』
 だが、その未来は所詮は絵に描いたご馳走で、食べることはできないのではないかとセシリアは思えてくる。
『嫌…。私、諦めるなんてできません…!私…、心から一夏さんの事を…。』
 自分の想いを確認し、セシリアは制服に着替え始める。

 昼飯を食べ終えた後、俺はローレンス・ハイランドの改修案を練っていた。
 艦橋構造物は、すっきりさせたいな。
 となると、艦橋と各種レーダーは一体化した方がいいか。
 フェーズドアレイレーダーなら、処理能力が高いから問題ないだろう。
 これを大型にして、今までのシステムを統合すればいい。
 ステルス性を考慮した統合システムを、2基搭載。
 処理能力も収集できる情報も、今以上になる。
 兵装は、ファランクスが2基に12.7mmRWSか…。
 上部構造物がコンパクトになって、スペースが出来たからESSMを8セル装備すればいいだろう。
 小型のFCS兼イルミネーターも装備は可能だ。
 他の衛星通信アンテナや航海レーダーも、ステルス性を考慮した物にするか。
 よし。これで終わり。
 ESSM搭載型は、別案だな。
 来るかどうかは解らないけど、これでいつでも作業に取り掛かれるぞ。
 俺用に攻防一体のデバイスも作ったし、委員会も安心できるだろう。
 白式は、どうするかな?
 推進システムは、アイデアは一応あるからテストを開始するか。

「一夏。ちょっといい。タッグマッチの時の戦術を話し合いたいんだけど。」
 由香里か。
「いいぞ。場所を変えようぜ。壁に耳あり障子に目ありだからな。」
「じゃ、外で。」
「OK。」

 一夏と腕を組んで外に行く様をシャルロットは、悲しげな表情で見ていた。
『僕がもっと積極的になっていれば、一夏のパートナーになれたよね…。』
 いつものように、セシリア達と張り合うような形で一夏のパートナーの座を争っている間に、由香里が一夏のパートナーになった。
『何やってたんだろう。僕…。いっきに一夏との距離を縮めて、いつかは…。』

 パリ郊外に、一軒の家がある。
 そこから、若い男性がこれから出勤しようとしていた。
「今日は、帰りは遅くなるの?あなた。」
「当直は無いし、例の設計データを基に現物を作るのはまだ先だから、緊急手術や急患がなければ、定時で上がれると思うよ。」
「よかった。ここの所忙しかったから、家族みんなで食事が出来るわね。」
 女性の名はシャルロット・デュノア。
 嘗てのフランス国家代表であり、モンド・グロッソでブリュンヒルデの称号を得たISパイロットである。
 既に現役を引退し、IS学園時代に知り合い恋愛関係になった旧名織斑一夏。現在はイチカ・O・デュノアと結婚し、4歳の女の子と1歳の男の子の2人の子供を持つ母親である。
 現役引退後は、各方面の誘いをすべて断り専業主婦として子供を育てながら家庭を守っている。
 一夏は卒業後フランス国籍を得た後、全ての役職を退きモンド・グロッソでシャルロットの専属コーチに整備士、ドクターを務めて、シャルロットを支えた。
 そして、モンド・グロッソ終了後に結婚。
 今はパリ大学附属アンリモンドール病院の医師として、多くの命を救いながら依頼を受けては医療器具の設計を行っている。
「俺も、家族皆との食事が恋しくて仕方なかったからな。今日は平穏である事を、祈るよ。」
 ERでスタッフを率いて運ばれてくる多くの急患を救い、通常の外科手術だけでなく、脳外科、眼科、耳鼻咽喉科の手術も執刀する世界でも指折りの天才ドクターである事から、一夏の1日は多忙を極め、真夜中に急遽呼び出されることもある。
 シャルロットとしては、あと1人位子供が欲しいのだが、子作りもできずに溜息をついている。
「もし、定時で上がれたら夜は夫婦の時間にするというのはどうかな?」
「そうあって欲しいわね。いつも賑やかで笑顔が絶えない家庭が、私の夢だもの。」
「そうか。じゃあ、一層仕事に励まないとな。もちろん、夜もね。」
「ちょっと…。子供が聞いてるのに…。後が大変なんだから…。」
 シャルロットが頬を赤くしながら、一夏に抗議する。
「そういう可愛らしい所は、学生時代と変わらないね。じゃあ、行ってくるよ。」
 シャルロットとキスをして、通勤用のハイブリッドカーを運転し病院に向かう。
『からかったバツとして、今夜はしっかり励んでもらうわよ。あなた。』
 心の中で、シャルロットは最愛の夫に宣告する。

『僕、どうすればいいんだろう…。とにかく、一夏に僕の気持ちをちゃんと伝えないと。』
 トレイを片付けて、教室に戻りながらシャルロットは考え続けていた。

 その姿を、偶然楯無が見かける。
『シャルロットちゃん。そろそろ勝負に出るみたいね。私もぐずぐずしていられないか。ストレートに、自分の気持ちを言った方がいいわね。』
 女の直感で、シャルロットの心境を理解した楯無は今後のスケジュールを考え始める。

「よし。だいぶ戦術は組み上がってきたな。後は、訓練で試してみようぜ。」
 机上の戦術は、所詮机上のプラン。
 実際に試してみないと、有効かどうかわからない。
 だからこそ、皆連携に関しては何度も試して試行錯誤を繰り返す。
 それは、俺達も同じだ。
「そう言えば、今週か。由香里の家に行くのは、深川は行った事がないから楽しみだな。」
「一夏は、逗子の生まれだもんね。家に行く前に色々案内してあげるわ。」
「サンキュー。」
 楽しみが増えたな。色々あったから、気分転換にはちょうどいい。
 あ、そうだ。
「明日は、アヴァロンの訓練航海で1日いない。訓練のメニューを後で渡しておくよ。」
「解った。でも、大変だね。こういう時でもお仕事だなんて。」
「シミュレーターをみっちりやり込んでいても、実際に航海に出た方が訓練になるしな。仕方ないさ。その分、明後日は連携訓練をしっかりやろうぜ。」
「うん。」

 翌日、一夏はアヴァロンの訓練航海に出ていた。
『今が、一番気持ちが落ち着くってのも考え物だよな…。』
 学園では、セシリア達の空気が刺々しさに加えて悲しさや切なさが加わり、それが自分に向かっているのを感じた。
 しかし、どうしてそうなるかが一夏には解らない。
 特に箒は、何かと絡んでくる。
 ラウラは普通で、セシリアとシャルロットは一夏と話している時には空気は穏やかな物に変わるが由香里の話題となると空気が一変する。
 毎日、精神的に疲れるので、学園から離れている今が一番気分は落ち着いていた。

「閣下。間もなく、遠州灘に差し掛かります。機関及び航行システム全て異常ありません。」
 ヴァヒテルが、一夏の元にタブレットを持って報告に来る。
「うん。」
 渡されたタブレットで、各部の状況を見る。
『機関部は正常稼働。他の航行システムにも、異常なし。』
「レーダーに反応有り!数1。質量、大きさ極めて大!」
「ライブラリに照合せよ!」
 ヴァヒテルは、オペレーターに反応のデータ照合を命じる。
「ライブラリ照合。エヌマ・エリシュです!」
『こんなところで、出くわすとはな…。ジェームズ・グレイ。この艦の能力を測るつもりか…。』
「総員、第一戦闘配備。全砲塔及びVLSデータ入力。多目的発射機。迎撃用意。ジャミング開始。敵に戦闘データをくれてやるな。」
「はっ!総員、第一戦闘配備。戦闘用意。ダメージコントロール班も配置に着け!」
 戦闘を想定した訓練も何度も行っている為に、動作は素早く無駄がない。
「砲塔及びVLSデータ入力終了。迎撃準備終了。ダメージコントロール班、配置に着きました。ジャミング開始しました。」
「主砲の射程内まで、約30秒。」
「敵、方角1時20分。高度、本艦と同じです。」
「面舵。0−4−0。」
『訓練の成果は出ているな。』
 今まで幾度も戦闘を想定した訓練を行ってきたが、所詮は訓練。
 実戦でそれが発揮されるかは、別問題だからな。
「敵。主砲射程内に入りました。」
 ヴァヒテルが一夏を見る。
 一夏が頷く。
「主砲、撃て!」
 アヴァロンの艦首方向に搭載されている、50口径46cm高出力特殊重荷電粒子砲連装砲塔から太い光の槍が発射されて、エヌマ・エリシュに命中する。
 命中した部分が爆発を起こし、エヌマ・エリシュの巨体がぐらつくがすぐに立て直しを図り、装甲は自己修復を開始する。
「レールガン、全門斉射!奴にダメージを回復させる暇を与えるな!」
 アヴァロンの艦首に装備されている、45口径36cm高初速レールガン連装砲塔2基が発射されて主砲の命中箇所にさらにダメージを与える。
 しかし、エヌマ・エリシュもやられっぱなしではなかった。

「エヌマ・エリシュ。高エネルギー反応確認!大出力荷電粒子砲の発射体制に入った模様。」
「大型VLSからのミサイル及びレールカノン、本艦に向けて発射されました!」
「回避!面舵0−3−7!バリアー出力最大!迎撃弾発射!」
 エヌマ・エリシュの側面に回り込む形で、レールカノンを回避し、追尾してきた大型ミサイルを迎撃弾で撃ち落とす。
「主砲、副砲、撃て!」
 光の槍とレールガンが発射されて、エヌマ・エリシュは左側の大型VLSとレールカノンを失い内部もダメージを受ける。
「エヌマ・エリシュ急速回頭。主砲発射体制に入りました。」
「閣下!回避、間に合いません。」
「大丈夫だ。本艦のバリアーを信じろ。総員、対ショック用意!」
 ヴァヒテルだけでなく、ブリッジのクルーを安心させるように言うと一夏は衝撃に備えさせる。
 そして、エヌマ・エリシュの胸部からアヴァロンを凌ぐ、光の槍が放たれた。
 が、それはアヴァロンを守るバリアーに阻まれて、船体には傷一つつける事は出来なかった。

後書き
二週続けての前後編です。
晩餐での在日米軍首脳との話し合いの結果に、千冬達も納得。
通常訓練という森の中に隠せば、哨戒もそう簡単には気づかれないでしょう。
一夏は、亡国企業対策と由香里との訓練が頭を占めていますが、周囲は一夏と由香里が親密さを増すのに気が気でなりません。
セシリアとシャルロットは、互いに卒業後の一夏の結婚生活を仮定として思い描くほど憂いています。
ですが、当の一夏は任務があります。
世界初の空中戦艦アヴァロンの訓練航海に、余念がありません。
そして、もう少しで母港に着くという所でエヌマ・エリシュと遭遇。
序盤は優勢。
さて、この後は?










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