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zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第39話 Requiem to the past Phase6

<<   作成日時 : 2014/09/09 23:24   >>

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 オペレーション・レクイエムが完了し、モナコでソフィの精神的休養を兼ねて1週間滞在してから、ココ達はスウェーデン行きの飛行機に乗っていた。
 行先は、ソフィが誘拐されるまで家族と共に過ごしていた地である。

「ソフィが暮らしていた場所だが、スウェーデンにあるターナビって名前の小さな村だ。人口は500人ちょっと。ソフィが誘拐された少し前に、フィンランド人の一家が来たって話の裏付けが出来ているから間違いない。」
 モナコに到着して、3日ほど経ってソフィの様子を見てから、ココはトージョにソフィが暮らしていた土地に関して皆に説明させていた。
「スウェーデンに移り住んだ、フィンランド人の一家か。バルメの予想が当たっていたわけだね。」
「ま。そういうことになる。そして、その村でフィンランド人の一家が一晩で皆殺しにされた。小さな男の子を残してな。」
「それが、誘拐されたソフィか。」
「ああ。そういう事だ。」
 アールの言葉に、トージョが答える。

『僕の住んでいた土地か…。覚えてもいないし…。行きたいとも思わない…。』
 家族を殺し、自分の人生を狂わせたマフィアを壊滅させたのに、ソフィの心は空虚なままで、宿泊しているホテルから風景を眺める日々を過ごしてばかりいた。
 以前は、毎晩カジノに繰り出して荒稼ぎしていたが、さすがに今回ばかりはココも無理に連れ出さない方がいいと考えて、ずっと傍にいて優しく抱きしめて髪を撫でていた。
 今も、気遣わしげにソフィを見ている。

「で、スウェーデンの何処にあるんだ?」
「ヴェステルボッテン県の西の端。はっきり言って、ド田舎だな。」
 ルツの質問に、トージョが地図を示す。
「ホント、ド田舎だな。ま、住民が少ない分、探しやすいかもしれないからいいかもしれないけどな。」
「そうだな。結構早く見つかるかもしれないな。」
 ウゴとワイリが会話に加わるが、ソフィは全く興味を示さなかった。

「ソフィ。食事だよ。」
 黙って外の景色を見ているソフィに、ココが声を掛ける。
 ターナビ村があるヴェステルボッテン県への海外からの直通便は、存在しない。
 フランスのコート・ダジュール空港からストックホルムを経由して、ヴェステルボッテン県の北部にあるノールボッテン県のルレオ空港からヘーマーバン空港に到着して、目的地を目指す事になる。
 出来る限り静かなたびにしたいと考えて、HCLIのコネを使用して空路のファーストクラスを丸ごと貸切っていた。
 故に、今搭乗している旅客機のファーストクラスにはココとソフィ達一行以外誰もいない。
 だが、その配慮も何の意味も無かったという結果の象徴のように、ソフィは黙って外の風景を見ていた。
「あ。はい…。」
 言われて、やっと食事を始める。
 だが、食事の最中でも、心ここに非ずといった感じでココはソフィを見ていた。

「堪んねえな…。」
 サンクレアを地獄に叩き落としたルツは、どうにか今の重い気分を紛らわそうとワインを一息で飲み干す。
 マフィアを壊滅させたからと言って、ソフィの心が必ずしも晴れないという事はここ数日で嫌と言うほど理解していたが、それでも今のソフィを見るのはルツには辛すぎた。
「嫌な予感がするぜ。現実になりそうだから口にはしないけどな…。」
 天井を見上げて、アールが呟く。
「俺も、お前と似た様な事考えていると思うぜ。そん時の事。考えておかないとな…。」
 村について、ソフィの両親のことが解っても必ずしもいい結果が待っているとは言えない。
 悪い結果になった時に何が起こるかを、アールとレームは考えていた。

 2日後。
 近くのココ達は、ターナビ村に到着した。
「まさに村って、感じだよな。のどかっつーか。なんつーか。」
 家の総数は、多く見積もっても40といったところだろう。
 だが、この村は20世紀最高のスキー選手インゲマル・ステンマルクの出身地として有名でもあり、訪れる人間もいるので宿もある。
「とりあえず。宿を取って、情報収集だな。」
「そうだね。」
 トージョの意見に、ココは賛成する。
「じゃあ、行こう。ソフィ。」
 弟を引っ張る姉のように、手を握る。

「へえ。こらまた、大所帯ですね。ええと、部屋割りは…。うん?」
 宿の主人が、ソフィの顔を見る。
「あの…。何か…?」
 やや困惑しながら、ソフィは主人に訊ねる。
「ひょっとして、ソフィアちゃんかい?アルムフェルト先生の所の?」
「あ。そう言えば、無事だったらこれ位だわね。」
 奥から出てきた、主人の妻が顔を見ながら言う。
「本当ですか。ソフィが、ここに住んでたって?」
 驚いたココが、主人夫婦に訊ねる。
「ええ。この村に移住したフィンランド人一家の1人息子さん。それにフルネームがソフィア・スティーナ・アルムフェルトだったら。私達が知っているソフィアちゃんで間違いないですよ。歳もちょうどこれ位で酒も飲める歳だったと思いますし。」
「どんピシャか。」
 トージョは、日野木の情報が正しかったことに確信を持った。

「もう。10年以上前になりますね…。朝になって、アルムフェルト先生夫婦の死体が見つかって、1人息子のソフィアちゃんがいなくなったのは…。警察があちこち探しましたけど、死体が見つかりませんでしたからひょっとしたらどこかで生きいるんじゃないかって思っていたんです。本当に生きていたとは思いませんでした。これも、神様のご加護かもしれませんね…。」
 ソフィを除いて別室に移り、ココ達はソフィが誘拐された時の話を聞いていた。
「ソフィのご両親は、どういう方々だったんですか?」
「北欧の民俗学の研究者の夫婦で、調査の一環でこの村に引っ越してこられたんですよ。本当に仲睦まじい親子でした。村の皆は、いつかは偉い学者さんかお医者さんにでもなるんじゃないかって話していたものです。あ。そうだ。すいませんが、皆さんは。」
 ココ達の事が気になった宿の夫婦は、ココ達に何をしているのか問う。
「海運を主な事業とする、HCLI社のヨーロッパ・アフリカ部門を任されていますココ・ヘクマティアルと申します。彼らは私のボディーガードです。最近は、海も物騒ですので。ソフィも、ヨーロッパ・アフリカ部門を任されていまして、今は専務の職に就いています。それと、医学博士でもありますね。」
「そうですか…。本当に、お医者さんになっていたんですか…。」
 夫婦は、どこか感慨深く言った。
「医者としてもビジネスマンとしても、本当に優秀ですよ。人格的にも問題ありませんし。ですが、誘拐されてからは…、辛い思いを随分していました。」
 ココの表情が悲しげになる。
「決して、誰にも言いません。誓います。あの子は、私たち夫婦にとっても子供のような物ですから。」
 夫婦の表情を見て、ココは話す事を決めた。

「そうですか。少年兵に…。」
「あの優しいソフィアちゃんが、少年兵…。辛かったでしょうね…。」
 夫婦は、自分たちの苦しみのような表情になる。
「それでも、当初に比べれば随分明るい性格になりましたよ。最近になって、アメリカがソフィを誘拐し少年兵にしたアルバニアンマフィアと、誘拐ルートを潰しましたが、心の傷は癒えてはいません…。」
「そう…、ですか…。」
 主人は、深い溜息をついた。

「あの。お話は変わりますが、彼のご両親のお墓はあるのでしょうか?」
 マオが訊ねる。
「ええ。村の共同墓地に…。ここからちょっと離れた場所です。」
 主人が、墓地の場所を説明する。

「墓参りか?マオ。」
「ええ。可能性のあることは全てしておくべきだと思いまして…。」
「まあ。もう死んでるとはいえ、墓越しでも話せる事は、あるかもな。方法論の一つじゃないのか。」
 バリーの言う事に、皆が頷くがココは何か嫌な予感がしていた。
 既に、ソフィは共同墓地に向かって走っていた。

 しばらく走って、ソフィは共同墓地に着く。
『父さん…。母さん…。』
 ソフィは、いつもは見せない表情で必死に両親の墓を探す。
「これじゃない。これでもない。どこ…?父さん…。母さん…。」
 墓碑銘を確かめながら、ソフィは両親の墓を探す。
 そして、それはあった。

 アンデルス・スヴァンテ・アルムフェルト。
 フレデリカ・エリッサ・アルムフェルト。
 小さいが、丁寧に掃除された墓が並んでそこにあった。
『やっと、会えたね…。ううん。やっと帰ってこれたよ…。父さん…。母さん…。』
 心の中で両親の墓に語りかけているソフィに、ココが花束を差し出す。
「ココさん…?」
「ここに来る途中、村の人が分けてくれたんだ。供えてあげよう。きっと喜ぶよ。ソフィのご両親。」
「そう…、だと…、いいですね…。」
 受け取った花束を供えて、祈りを捧げる。

「何年。経ったんでしょうね…?あの時から…。父さんと母さんが殺されて、僕が誘拐されてから…。思い出すと思っていたんですよ…。でも、駄目です…。全然、思い出せません…。」
 そう言うと、ソフィは力が抜けたように墓前に座り込む…。
「ソフィ…。大丈夫…?」
 ココが心配そうに声を掛けて顔を覗き込むと、ソフィの瞳から大粒の涙が絶え間なく零れていた…。

「進めるって…、思ってた…。ココさんたちと会って、血生臭い事は変わりなくてもどこか違って、楽しくて…。決着がつけば、ちゃんと前に進める…。そう思っていました…。でも…、進む気になれません…。何ででしょうね…?」
 ソフィは、掌を握りしめた。
「何で…。どうして…。父さんと母さんが、殺されなくちゃならなかったんですか…?僕の誘拐が目的なら、催眠ガスでも放り込んでその隙に連れて行けばいいじゃないですか…。何で、殺されなくちゃならなかったんですか…。何の理由があったんですか…?父さんと母さんが、何か殺されることをしたんですか…?」
 ココが知っているソフィは、優れた戦闘スキルと明晰な頭脳を持ち、難局を切り抜ける胆力を持った人間だった。
 だが、今、目の前にいるソフィは年相応どころか、ほんの子供だった…。
 まだまだ、親が必要で、只々泣きじゃくっているほんの子供だった…。

「どうして、こうなっちゃったんですか…!どうして、僕は普通に暮らす事が出来なかったんですか…!?言っても仕方ない事は解っています…。もう、僕は何人も人を殺したんですから、今更この汚れを拭う事なんてできっこない…。今更、他の道を行こうとしても殺した人たちが、許してくれる筈も無い…。でも、でも…。」
 握りしめた掌からは、血が滲んでいた…。

「父さんと母さんには、生きていて欲しかった…!僕がどんな目に遭っても、それでも父さんと母さんには、普通に生きていて欲しかった…!なのに…。なのに…。どうして…、こんな事に…。」
 泣き続けるソフィを見ていることに耐えられなくなって、ココはソフィを精一杯の愛情をこめて抱きしめ、しばらくしてキスをした。
 ソフィは何があったか解らなかったが、しばらくして目を閉じココのキスを受け入れた。

「あ。南、私。うん。まあ、元気にやってる。ちょっと、そっちに行くよ。まあ、気分転換みたいな物かな…。うん。うん。じゃあ…。」
 夜、宿に戻ったココは、南アフリカの南と話をしていた。
 しばらくして話を終え、ベッドで眠っているソフィを見る。
「安定剤と、軽い睡眠導入剤を点滴しています。明日には目が覚めますので、また伺います。場合によっては、安定剤を処方いたしますのでそのつもりでいて下さい。」
「ありがとうございました。」
「いえ。それでは、また明日に。」
 医師が部屋を出る。

 宿を出る医師の後姿を見たルツは、拳を壁に叩き付ける。
「落ち着け。ブチ切れてるのは、お前だけじゃねえぞ。」
「解ってる!俺が考えているのはな。ボスはもっと念入りに痛めつけて、幹部は一人残らず地獄行きにしておけば、よかったって事だ!」
 落ち着かせようとするアールに、ルツは吐き捨てるように言う。
「んな事はな。皆、思っているんだよ。俺なんか、火炎放射器持って行って、こんがり焼いてバーベキューにしてやればよかったって思ってるんだからな。」
 ソフィの部隊のリーダーであるバリーが、煙草に火を付けながら言った。

 ソフィを少年兵にしたマフィアはこの世から完全に消え去り、ソフィが暮らしていた土地と両親の墓も見つかった。
 だが、それですべてが終わったのだろうか?
 誰も、答えを持ち合わせていなかった。

 その間、ココはソフィの傍にいて手を優しく包んでいた。
「大丈夫。私が、何とかするから。もう、ソフィみたいな人間が増えないようにするから。本当は、目的は違ったんだけどね。その為にも十分使える事があるんだよ。だから、安心して…。その時が来るまで。ううん。その時が来てからも、私がそばにいるから…。ずっと傍にいるから…。ソフィ…。」
 ソフィの耳元でそっと何かを囁きキスをして、ココはソフィを見守っていた。

後書き
大変遅くなりましたが、更新です。
Requiem to the past。
過去への鎮魂曲は、これで完結です。
ソフィは、嘗て自分が住んでいた土地を見つけ、家族の墓に花を添える事が出来ました。
しかしながら、その結果はソフィの慟哭でした…。
何故、父と母が巻き込まれたのか?
何故、自分を攫うだけに留めなかったのか?
何故、父と母は普通に暮らし続ける事が出来なかったのか?
何故、自分は少年兵にならなければならなかったのか?
例えるならば、自分と家族に起きた悲劇に対しての世界への問いかけです。
ですが、答えはありません。
偶々、マフィアに選ばれて、両親を殺され、攫われて、少年兵になった。
これしか、答えが無いのですから…。
人間として、当然のように悲しみを吐き出しても、過去は変わりません。
ある意味、非常に悲劇的で残酷な結末しか待っていませんでした。
そんなソフィを、ココは心から気遣います。
これからソフィはどんな風に考え、どう生きていくか。
その答えを、見つけ出せるのでしょうか?
そして、それはすぐでしょうか。時間がかかるのでしょうか?
それもまた、誰にも解らないことでしょう。















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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
続きが読みたいです
かに
2014/10/15 10:59
かにさん。
コメントありがとうございます。

続編は執筆中です。
お待ちいただければ幸いです。
CIC担当
2014/10/22 22:49

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