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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第117話 マイハート<後篇>

<<   作成日時 : 2014/08/31 00:00   >>

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『一夏。また仕事か…。そうだよね…。病院でも上層部の一員だし、看板医師だもん…。』
 一夏は知らないが、近ごろ自衛隊横須賀病院周辺のアパートやマンションの空き家率が急速に低くなっている。
 原因は、一夏である。
 小児科、夜間救急、総合診療等で適切な治療と処置を施す一夏という名医がいれば、小さな子供がいても安心できるし、自分自身に何かあっても大丈夫という信頼感を患者たちから寄せられている。
 さらに、その周辺の地域でも次々と家が立ち並び人口が増加の一途をたどって商店街も活性化している。
 一夏は、医師として患者の為に尽くすこと以外頭にないので気にもしていないが、その姿勢がこういった事態を起こしていた。
『いい顔していなかったから、不愉快な事が起きたんだろうな…。』
 喘息にまつわる嫌な事件についても、一夏が作ったホームページで知ったのでそれかもしれないと由香里は考えていた。
『一夏、凄く真面目だからそういうのは絶対拒否だよね…。私は、別にいいのに…。一夏が、もっとエッチだったらなあ…。』
 シャルロットもそうだが、由香里も一夏の辛さを自分の「女」で癒す事に何の抵抗感もないどころか、むしろそうしたいと願っている。
 一夏が望めば、喜んでそういった関係になるだろう。
『もっと積極的にならないと、駄目かな…。織斑先生は怒るかもしれないけど…。』
 人前では決して一夏を褒めない千冬だが、傍から見たらどれほど一夏を大事に思っているかは学園の生徒や教師は皆知っている。
 両親に捨てられ14歳の頃から身を粉にして働きつづけながら、姉としてまた親として一夏を育て続けたのだから当然である。
 その一夏は、成長してブリュンヒルデクラスのISパイロットとなり、ISのみならず各方面で多大な業績を残している世界有数の天才科学者であり腕利きの医者でもある。
 容姿端麗、頭脳明晰、優しい性格、家事も万能、抜群の運動神経を持ち、剣術と武術の達人であると同時に戦闘のプロフェッショナル。
 また、優れた政治及び外交センスを持ち合わせ、様々な問題を処理し各国と太いパイプを持ち、国連事務総長からも絶大な信頼を寄せられている。
 どこに出しても恥ずかしくない、自慢の弟である。
 だからこそ、そこらの女に一夏を渡す気は毛頭ない。
 相応しい相手でなければ、一夏を渡さないのは生徒全員が良く知っている。
『私で…、釣り合うかな…?実家が場末のお寿司屋さんじゃ、見劣りしちゃうかな…。』
 世界的な大企業芝崎インダストリーの技術顧問にして、社外取締役。
 日本ナノマシン学会名誉会長。
 IS委員会特別調査局局長にして、世界唯一の空中戦艦アヴァロンの指揮を執るIS委員会直属の中将。
 国連安全保障理事会特別理事。
 一夏は、肩書や身分で人を差別するような下劣な人間ではないが、どうしても一夏の肩書を知ると他人は尻込みしてしまう。
 一夏自身は、入学当時から何も変わってはいない。
 それは理解していても、どうしても一夏の肩書を気にするのはある意味当然である。
 尤も。当の一夏が聞いたら怒りこそしないものの、複雑な表情になっただろう。
 一夏は、自分が殊更変わったとは思っていないのだから。

 その一夏は、今、ある小学校の校長室にいた。
「お話は伺っています。そこで、先生に質問をさせていただきます。」
 紺のスーツを着込んだ一夏は、患者である子供の組の担任を見る。
 どこか、不遜さと粗野な部分を感じさせて、今回の事に関しても深くは考えていないと一夏は見た。
 弱冠16歳ではあるが、一夏は国際政治の場で様々な人間を見ており雰囲気でどのような人間かは解る。
 そうでなければ、様々な交渉は不可能だからだ。
「お母さんは、喘息による症状だと説明した。それに間違いはありませんか?」
「はい。ですが、ゼーゼーという喘息の特徴的な症状が出ていない以上、喘息ではないでしょう?」
「違うタイプの喘息だとも説明は受けた筈ですが、それを信じていないと?」
「失礼ながら、親御さんは子供の事を第一に考え、信じたい情報だけを信じる物です。そう言った経験は、私も幾度かありましてね。」
 あくまで、自分は間違っていないという主張を通そうとする。

「では、医師としての診断を申し上げましょう。祐樹君は、まぎれもない喘息です。しかしながら、通常の喘息とは違います。隠れ喘息です。これについても、お母さんから説明はありましたね?」
 医師としての一夏の名声は、多くの人間が耳にしている。
 この小学校の校長や担任たちも、その中に含まれる。
「は、はあ…。」
 一夏の確信を込めた口調に、担任が初めてたじろぐ。
「こちらが検査結果に、問診票です。個人情報ですので通常はお見せしないのですが、お母さんとご主人の同意を得て持ってまいりました。ご覧になればお解りになりますが、祐樹君の気管支が通常のそれと比較して狭くなっているのと、風邪になった際や夜に咳が出るケースが多いのがお解りになります。前者は気管支の炎症が慢性化して気管支の内腔が狭くなっているのが、一目瞭然です。ご理解いただけますでしょうか?」
「は、はい…。」
「確かに、そのようですな…。」
 担任に如何にも事なかれ主義的な感じの校長が、検査結果と問診票に基づく一夏の説明に納得する。
『校長の方は、逃げ道を探しているか…。やはり持ってきてよかったな。』

「それから、当日のカルテを何人かの専門医の方に見ていただきました。いわゆる、セカンドオピニオンと思っていただいて結構です。それぞれの先生の診断が、こちらになります。」
 一夏が端末の電子カルテに表示した専門医を見て、校長、教頭、担任、保健室教諭の表情が固まる。

 日本大学医学部付属板橋病院呼吸器内科部長 橋本修
 東京大学医学部付属病院呼吸器内科科長 長瀬隆英
 東京慈恵会医科大学付属病院本院呼吸器内科部長 桑野和善
 慶応義塾大学呼吸器内科特任講師 鈴木雄介
 東京女子医科大学病院呼吸器センター主任教授 玉置淳
 獨協医科大学病院呼吸器・アレルギー内科主任教授 石井芳樹
 独立行政法人国立病院機構東京医療センターアレルギー科医長 尾仲章男
                     呼吸器内科医長 小山田吉孝
 独立行政法人国立病院機構神奈川病院呼吸器内科医長 大久保泰之医師

 いずれも、呼吸器及び喘息治療の名医として名を知られている。
 そして、全ての医師が一夏の診断が正しいと判断している。
 教諭の思い込みが、間違いで且つ危険をもたらしかねない事。
 学校側の庇おうという姿勢が如何に間違っているかを、これ以上なく証明していた。

「ご希望ならば、さらに詳細な検査をして結果を拝見していただくことも可能です。いずれにせよ。ここにいるよりかは、病院にいる方が私としてもほっとしますので…。」
『さて。どう出るかな…?』
 一夏は表情を変えずに、担任達を見る。
 時折一夏を見ながら何か話し合いをしているようだが、担任の処分について話し合っていると一夏は見た。

「お母さんは、今後どうなされますか?」
 既に、一夏は信頼できる医師を紹介している。
 基本的に、治療はその医師に任せるがあえて母親に今後の事を訊ねる。
「今回の事を、先生によくお話した上で治療方針を話し合いたいと思っております。それから、夫の兄が新聞記者をしておりますので、そのつてを頼って息子が安心して療養できる場所を紹介してもらって、時折そちらに行こうと思っております。今回の事は、織斑先生にご相談することも含めて事前に話していますので見つけるのは、楽でしょうし…。」
 それを聞いて、校長たちの顔色は血管に漂白剤を流し込んだように真っ白になる。

 お母さんなりの、抗議といったところかな。
 親戚筋に新聞記者がいるのは初めて聞いたけど、これは強烈な一撃だな。
 下手をすれば、教育委員会の耳に入る。
 というより、報道されれば入るか。
 この手の話題には、マスコミの食いつきは凄いからな。
「そうですね。それがよいと、私も判断します。もし何かありましたら、いつでもご連絡ください。微力ながら、力を尽くさせていただきます。」
 今の内に、クローズアップしておくかな。

「お待ちください!これ以上、マスコミにお話しされるのはどうかお留まり下さい!他の児童への影響もありますので、どうか…!」
 校長先生がそう言って深々と頭を下げると、担任の先生達も頭を下げる。
「おや?喘息でないと、自分で正しいと思っていらしたのではありませんか?だからこそ、最初にお母さんがお話をなさった時に、そうおっしゃったのですよね?ならば、逃げも隠れもせずに、そうおっしゃられればよいと考えますが?」
 その時、校長室に電話が鳴る。
「はい。はい。私でございます。えっ。マスコミが…!?」
 校長先生が、教頭先生に目でテレビをつけるように指示を送る。

「横須賀市の小学校で、喘息の持病を持つ2年生の男子児童が発作を起こした際に担任の教諭が背中を蹴り飛ばすという事件が起きました。情報によれば、保護者は学校側に説明した物の学校側がそれを認めず、現在、最初に診断を下した自衛隊横須賀病院高度救命センター長兼総合診療科部長の織斑一夏医師が同行して、学校側に再度説明しているとの事です。未だに、教育委員会側からは発表はありません。」
「はい。ありがとうございました。私も同年代の子供を持つ身ですが、信じられない話ですね。」
「そうですね。親御さんの説明に一切耳を貸さないというのは、傲慢と取られても仕方ないでしょうね。」
 あ。早くも食いついたか。
 夏の、羽田沖の穴子みたいだな。
 釣竿投げれば、すぐに食いつくんだよな。
 今度、釣ってきて千冬姉に何か作るか。
「はい!はい!申し訳ありません…。はい!確かに、織斑先生がこちらにいらっしゃいます。はい。すぐに代わっていただきます…!」
 教育委員長か。
 何を言うのやら…。

「今回の事件を受けて、横須賀市教育委員会は担任を含む関係者に事情聴取を行い、処罰を決める方針です。小学校での児童に対する教諭の不祥事が相次ぐ中で持病を持つ児童に対しての今回の事件は、各方面で波紋が広がりそうです。」

「呆れた。なにこれ。」
「酷すぎるにも、程があるわよ。」
「普通。大丈夫か聞いて、保健室に連れてくじゃない。」
「私だったら、すぐにお医者さんかな?」
 食堂で夕飯を食べながら、例のニュースを見ていた同級生や先輩達が小学校の対応を批判していた。
 俺としては聞いても頭に来るだけなので、耳の穴を速やかに通過するのを辛抱強く待ちながら、ビーフカツレツ定食の大盛りと大盛りのサラダを食べていた。
 帰ってきて、生徒会の仕事とタッグマッチ当日の警備を含む、先生達との打ち合わせに由香里とタッグマッチに向けての訓練があったので腹ペコだった。
 それ以前に、今日の学校側の保身丸出しの態度が頭に来ていたので、半ばやけ食いだった。

「会長、不機嫌そ〜う。」
「あれで、機嫌がいい奴がいたらお目にかかりたいね。」
 食べ終わってナプキンで口の周りを拭きながら、のほほんさんに答えた。
「でも、これで他の学校も少しはましになるかもよ。だから、気分を入れ替えようよ。ね?」
「そうだよ。これだけ騒ぎになってる以上、他の学校も対応せざるをえないと思うよ。」
 由香里が俺の気持ちを和らげようと気を使ってくれていると、シャルロットもそんな感じで話しかけてくる。
 というか、シャルロット。
 由香里に、対抗意識らしいもの持ってないか?
 雰囲気が少し、刺々しいぞ。
「少しは、変わるかもしれない。けど、処分はそんなに重くないぜ。多分な。記者の人から聞いたけど、この手のケースで重い処分が下される事は、ほとんどないんだと。ま。学校の先生も、早い話が公務員。教育委員も普通とは違うけど、なんだかんだ言って公務員。身内の庇いあいってのがあるんだと。ま。そういうことだ。俺自身、担任の先生とか校長先生に会った感想としては、期待を持てるタイプじゃないな。保健室教諭の人も、自分の意見を通せるタイプには見えなかったし。さて、白式の整備をするか。」
 トレイを持って席を立った時、携帯の着信音が鳴る。
 ナタルか。

「はい。ああ。ナタルか。久しぶりだな。え?ああ。テレビ見たのか。まあ、大変て言えば大変だったな。正直、疲れたよ。でも、政治の世界に比べたら微々たるもんだからな。あれに慣れるのもどうかと思うけど、耐性がついたことがせめてもの救いだな。うん。うん。大丈夫。心配するなよ。これから、校長たちは揃いも揃って事情聴取。重い処分とはいかないが、それなりのペナルティは待ってるさ。今回の事で、患者の男の子の家まで行って、謝罪することになるだろうしな。経緯から、親がそう簡単に赦すと思うか?とにかく。心配してくれてありがとう。え?イーリが、国際電話で文句言ってきた。ああ。リボルバー・イグニッションブーストの事な。文句言う暇あるんなら、訓練に励めって言っておいてくれ。また始末書増えるしな。じゃあな。心配してくれて、ありがとう。おやすみ。」
 やれやれ。ナタルも心配性だな。
 イーリは、文句言ってる暇あるんだったら、ファングクェイクの機体特性を活かした新技考えればいいのにな。
 さて、整備、整備と。

「いまの、ナタルって人、ひょっとして、去年の…。」
「ああ。臨海学校の時に来た、アメリカ海軍のテストパイロット。今は、データ収集艦に配属されて、横須賀の在日米軍司令部配属になってるから、テレビ見たらしくてさ。それで、電話かけて来たんだよ。じゃ、俺、整備に行くから。」
 そう言って、一夏は白式の整備をするために食堂を出た。

『学園の関係者以外の専用機持ちの人とも、仲いいんだ…。そう言えば、ナタルって人、一夏に告白したんだっけ…。』
 昨年の臨海学校で、ナタルが一夏を押し倒して告白したことは翌日には噂になって、他の生徒の耳にも入っている。
『凄い美人だったよね…。それに、スタイル抜群だし…。私じゃ勝てないかな…。』
 一夏のパートナーになったとはいえ、周囲の一夏に想いを寄せる人間がいる事を知れば知る程、大きな溝があるような感じがしてならない由香里だった。
『やれる事、やろう…。』

 よし。各部は問題なかったな。
 後は、特にやる事ないか。
 瑞鳳の調整は、ほとんど問題ないしな。
 特に兵装が必要とも、思わないし。
 というか、兵装が増えれば増える程、扱う側にもテクニックがいるからな。
 今くらいで、由香里にはちょうどいい。
 シャルロットや鈴は、本国から追加パックが送られているらしいが、瑞鳳には今の所ないしな。
 まあ、その辺りは連携訓練をしながら、考えるか。
 今後の事を考えながら部屋に戻ってパジャマに着替えると、ドアを叩く音が聞こえる。
「一夏。いる?」
「ああ。いるぞ。ちょっと待ってろ。」
 ドアを開けると、大きめのバスケットを持った由香里がいた。
「ちょっと、夜食食べない?温めるだけだから。」
 どういうことだ?

「へえ。深川鍋か。そういえば、由香里の実家って深川だったよな。」
 由香里の家は、代々深川に住んでいる。
 だから、深川鍋は身近な料理だな。
 昆布で出汁を取った後、味噌を溶いて剥き身のあさりが半煮えになったところに長ネギの薄切りをたっぷり入れる。
 それが深川鍋だ。
 シンプルだけど、あさりと長ネギが良く合うんだよな。
「ご飯も食べる?」
「ああ。」
 行儀は悪いが、ご飯に掛けて食べるとさらに美味かったりする。
 他国だと、こう言う食べ方は言語道断だから、こういうのは日本人の特権だよな。
 うん。美味い。
「安くて、栄養があって、深川に住む人たちにとってはありがたい食べ物なのよね。」
「だろうな。それにほっとする味だし。」
 レストランのご馳走も偶にはいいけど、慣れていないと毎日食べるのはちょっとキツイ。
 けど、お惣菜とかこういうざっかけないのは、毎日でも飽きない。
 
『良かった。気に入ってくれて。』
 美味しそうに深川鍋を掛けたご飯を食べる一夏を見て、由香里は嬉しそうな笑顔になる。
 想いを寄せている男性が自分の手料理を美味しそうに食べている様は、女性にとっては何より嬉しい。
 特に一夏は会社の重役という事もあり接待や会食で、高級レストランや高級料亭に行くことが多く、一夏自身もお菓子作りも含めて料理の腕はかなりの物なので、尚更嬉しい。

「ご馳走様。美味しかったよ。今度お礼に、何か作るよ。」
「じゃあ。期待しちゃおうかな。」
 片づけをしながら、由香里がそう言う。
 期待してていいぞ。
 俺だって、料理の腕には自信があるし家庭料理のレパートリーなら豊富だしな。
 伊達に小学校の頃から、家の事を一切合切仕切っていたわけじゃないぜ。
「ねえ。一夏。」
 来ていたエプロンで手を拭いてから外した由香里が、俺の顔を見る。
「うん?」
「少しは、気分楽になった?」
 ああ。そういう事か。
「お蔭様でな。心のこもった暖かい手料理は、心にとっては最高の妙薬だってことかな。ありがとう。」
 礼を言うと、由香里の唇が俺の唇に重なる。
 そして、由香里の心臓の音が聞こえるように俺を抱きしめる。
「いいのよ。パートナーなんだから、こういう事で支え合うのは当たり前でしょう。だから、私に出来ることはなんでもするわ。タッグマッチが終わってからも、ずっと…。」
 しばらくすると、俺の額にキスをする。
「じゃあ。お休みなさい。研究とかお仕事熱心なのはいいけど、程々にね。」
「あ、ああ…。」
 優しく微笑んだ由香里は、洗った土鍋や茶碗をバスケットに入れると部屋を出る。
 その日は、よく解らないけどちょっと早めに切り上げて寝た。

 一夏の部屋を出て自分の部屋に戻る途中、偶然由香里は箒たちと鉢合わせになった。
「あら。これから戻る所?」
「ああ。お前もか?霧島。」
「そう。じゃあね。」
 由香里は、そのまま部屋に戻ろうとする。
「少し話がある。ここで済む。」
 箒が由香里に、話しかける。
「当ててあげましょうか。パートナーだからって、何度も夜食とかを作るのはやり過ぎ。そんな所かしら…。」
 そう言って、由香里は箒たちの表情を見る。
「図星ね。特にオルコットさんは、相当に不満があるみたいね。でも、私達はずっと我慢してきたのよ。あなたたちが一夏と仲良くしているのを見ながら…。」
「それとこれと、何の関係がございますの?私たちが言いたいのは。」
 セシリアが弁明しようとするのを、由香里は視線で黙らせる。
「あるわよ。今は、あの時の私達の気持ちをあなたたちが感じている。当然よね。1年も時間があったのに、誰も一夏を落としていないのだもの。どこかで及び腰になっている。積極的にいけば、いくら唐変木の一夏でも気づくはずよ。でも、ラッキーだったわね。おかげで、私にもチャンスが巡ってきたから。私は私のやり方で、一夏の心を手に入れる。それだけよ。まずは、一夏に精神的に大変な時は、私が支える事を知ってもらう。それ以前に、一夏が大変そうな時は、何かしてあげたいだけ。女の子なら、好きな男の子が大変そうにしている時に何かしてあげたいと思うのは、当然でしょう?場合によっては、もっと積極的にいく。覚えておいて。」
「それって、まさか。霧島さん。」
「All is fair in love and war.あなたなら知ってるわよね?オルコットさん。じゃあ。お休みなさい。」
 そう言って、由香里は部屋への道を歩く。

「やってくれるじゃない。そう簡単に、一夏は渡さないわよ。それとセシリア。さっきのはどういう意味?」
 由香里の箒たちへの宣戦布告に鈴は対抗心をあらわにするが、最後の言葉が気になってセシリアに訊ねる。
「我が英国の諺ですわ。「恋と戦いはあらゆる事が正当化される。」という意味です。霧島さん…。相当一夏さんに積極的に行かれるかも…。」
 イギリス人だけに、セシリアは最後の言葉に込められた由香里の決意をよく理解していた。
「望むところだ。相手にとって不足はない。私の嫁をそう簡単に渡す気はないからな。お前たちも、何を尻込みしている?この程度でたじろぐなら、先は無いぞ。」
 ラウラはそう言って、自分の部屋に戻る。

後書き
一夏が小学校に赴き、隠れ喘息である事を改めて説明します。
ここで一夏が打った手は、セカンドオピニオン。
最近になって、ようやく普及してきたいわゆる他の医師の意見を聞くというやつです。
一夏も、自衛隊病院の幹部クラス。
となれば、各地の有名大学の名医師とも知己になるわけです。
人間、権威というやつにはとにかく弱い。
これだけ、名医のセカンドオピニオンを並べ立てられ、検査データで説明されれば学校側も認めないわけにもいきません。
そして、お母さんも反撃。
親類にマスコミ関係者がいるのでその力をかります。
結果は、いっきに食いついて校長、教頭、担任共に大慌て、教育委員会からも連絡がいきます。
結果、処罰されることに。
実際に、喘息の発作を起こした小学生の子供を教諭がふざけていると思い蹴とばすという事件は何度か起きています。
私も、発作に苦しみながら会社に行っている時に見て激しい怒りを覚えた事をよく覚えています。
そもそも、蹴とばすという行動が理解できませんね。
何で、保健室につれていくとか掛かりつけの医者を聞いてそこに連れて行くとかできないんですかね?
そして、処分に関しては碌に発表しないんですよ。学校側も教育委員会も。
けっこう、こう言ったケースに限らず公務員は身内の庇いあいがあると小耳に挟みますからそれでしょう。
そして、それにうんざりした一夏に、自分が生まれた土地の郷土料理を由香里が振る舞います。
こういう時は、豪華な料理より、こう言う料理の方が心が和らぎますからね。
今の自分では一夏に相応しくないかもしれないと思いながらも、好きな男の子には何かをしてあげたい。
そう思い、出来る限りのことをする由香里。
それを周囲で見ている箒たち。
その箒たちに、由香里は宣戦布告。
最後のイギリスの諺は、ガールズ&パンツァーに出てきた諺ですが、好きな諺だったので使う機会を待っていました。
さて、一夏を巡る恋する少女たちの争いはどうなるでしょうか?













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内 容 ニックネーム/日時
【恋と戦いはあらゆる事が正当化される】、名言ですな。 【惚れた相手の幸せを願うのは人の理】という格言もあります。 恋の戦争、決着はいかに。
あと、どうしても艦これの霧島さんをイメージして読んでしまう私(^_^;)
ヴァルバジア
2014/08/31 22:35
ヴァルバジアさん。
コメントありがとうございます。

>【惚れた相手の幸せを願うのは人の理】と
>いう格言もあります。
 成程。
 それも名言ですな。
 只、一夏の周りの乙女たちは、幸せにして
 いる一夏の傍に自分がいるという事を前提
 にしてますね。
 実現させるためには、ひたすらアタックで
 すかな。

>あと、どうしても艦これの霧島さんをイメ
>ージして読んでしまう私(^_^;)
 成程(笑)。
 とすると、由香里は眼鏡っこのイメージで
 すかな?
CIC担当
2014/09/03 21:28

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