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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第117話 マイハート<前篇>

<<   作成日時 : 2014/08/30 23:45   >>

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 うん。
 昨日の整備・調整の結果は良好だな。
 問題点は、全て改善されている。
 端末に表示された瑞鳳のデータを見ながら、俺は昨日の作業の結果に満足していた。
 由香里の動きも、昨日よりずっと良くなっている。
 付喪神と他の兵装を併用した際の命中率も、昨日とは比べものにならない。
 高機動戦闘をした際の燃費も、OKだ。

「OK。授業前はこの程度にしておこう。何か、気になった事はあるか?」
「ううん。全然。昨日とは段違い。細かな部分でも、私が思った様に動いてくれるし。」
 由香里。ご機嫌だな。
 そう言ってもらえると、整備する方もやりがいがあるよ。
「それより。昨日の夜食と帰ってからのサンドウィッチありがとうな。美味かった。」
「そんなことないよ。瑞鳳を、これだけきちんと整備してくれだもの。あれじゃ、全然足りないくらいよ。一夏は白式だけでも大変なのに。」
「なに。白式はどこをどうやればいいのか、たいして考えなくても大丈夫だしな。それに、鍛錬の後の整備はいつもしてるし。っと。シャワー浴びて授業にいかないとな。遅刻しちまう。」
「あ。本当だ。うちのクラス、織斑先生だった。」

 そんな一夏と由香里の姿を、箒たちは悔しげに見ていた。
「一夏め…!私ではなく、霧島と…。」
「鳶に油揚げ攫われたっていうのは、こう言う事言うのかしらね…。」
「私。日本の諺は存じませんが、それだけは妙に理解できる気がしますわ…。」
「一夏…。どうして、僕を選んでくれなかったの…。」
「私の嫁だというのに…。」
「私を選べば、何の問題も無いのに…。」
「やっぱり、胸がないと駄目なの…?」
「霧島さん…。油断も隙もありませんね…。」
「こういうのを、ダークホースっていうのね…。」
「まさにね…。」
「誤算もいい所ね…。」
 ちなみに、一夏が由香里とペアを組んだことで2年生が極めて短期間でペアを組んだことは皮肉としか言いようがないだろう。
 セシリアは鈴と。
 シャルロットはラウラと。
 玲子は箒と。
 アンナはシルヴィと。
 簪は本音と。
 クリスはラシェルと。それぞれ、ペアを組んでいる。
 どのペアも、優勝と目指してはいるが一夏が自分をパートナーに選んでくれなかった怒りもある。
 本音は、一夏が誰とペアを組もうが全く無関心だったが、2年の専用機持ちの中ではコ○ノ○サマモードになると最も恐ろしい簪とペアを組んでいるので、完全に巻き込まれた形になっている。
 それでも、幼い頃からの仲という事で許容している所から、大物の素質があるのだろう。

 整備と調整もばっちり。
 確か、今日は5組と授業だったな。
 その時のデータも含めて、微調整もしておくか。
 それから、紅椿、巴御前、エクソルツィスト、不知火も見ておかないとな。
 白式は、新型の磁気スラスターと駆動系に関節部の強度を調整しておいたから、そっちも見ておこう。
 にしても、あれだよな。
 紅椿とかの整備も整備科に任せたいのが本音なんだけど、上手くいかないのがきつい所だよな。
 第三世代は大丈夫だけど、俺が開発した分は第三世代でもオーバーテクノロジーの塊だからそうもいかない。
 イリュジオンは、第三世代の実用化というのもコンセプトだったから、整備科でも大丈夫だけど、他はそうもいかない。
 一応、対策考えておいた方がいいかな。

『一夏。リラックスしてる?』
『まあ。色々考える事はあるけど、リラックスしてるよ。』
 整備と調整後のチェックを終えた後シャワーを浴びていると、コアネットワークで由香里が話しかけてくる。
『だったら、いいんだけど。今日、凄く不機嫌そうに見えたから…。』
『ああ。それか。病院でちょっと、頭に来ることがあった。その影響だろう。医者としての守秘義務があるから、詳しくは話せないけどな。心配してくれて、ありがとう。』
 気づかれたのか…。
 まだまだ、未熟だな…。
 気を付けないと。

「あ。髪、乾かして梳かしてあげる。」
 由香里が、ドライヤーとブラシを手に俺の髪を乾かし始める。
「この櫛。凄く素敵。この花は、ウメモドキね。」
 へえ。由香里、花に詳しいな。
「それにしても、本当にこの櫛高そうよね。ひょっとして、オーダーメイド品じゃない?しかも、相当に腕のいい職人さんに頼んだ。」
 そう言って、俺の髪を梳かしはじめる。
「らしいな。貰った時は俺もびっくりしたけど、返すわけにもいかないしな。」
 ウメモドキの花を描かれた、輪島塗の櫛。
 以前に、師匠の知り合いの漆塗り職人の工房に連れて行ってもらった事があって、そこで色んな作品を見せてもらったのでどの程度の出来かは解るようになった。
 使っている材料は、どれも選りすぐられた極上品。
 職人さんの腕も、相当な物だ。
 何か、気を使わせて悪いな。って思った。
 それで、手作りの浴衣にプラチナの台座にアイオライトとエメラルドで作った菫の花をモチーフにしたペンダントをプレゼントした。
 菫。嬉しそうにしていたな。
「誰から貰ったの?」
「飛鳥菫っていう人。俺の友達だよ。」
 菫の名が出ると、由香里の手が一瞬止まる。
「ん?どうした?」
「ううん。なんでも無い。」
「何か、凄く気にしているように見えるぞ。言える範囲で言いたくなったら、来いよ。聞くからさ。」
「うん。ありがとう。一夏。」
 俺が言うかって、ツッコミが入るかもしれないが何か気になるんだよな。

 あとは、冬菊が浴衣と夏用のパジャマを贈ってくれたな。
 手作りで、しかも、生地を自分で織っていたから本当にびっくりした。
 パジャマは、いまじゃどこにも売ってないだろう青楚で生地を作っていた。
 木綿が普及する前は、夏用の着物や肌着の材料として非常に重宝されていたがその内木綿や絹に取って代わられた。
 けど、最近になって青苧を使った製品を普及させようという動きが出ているのは、俺も知っていた。
 大変だったはずだ。俺なんかに、そんなに気を使う必要ないんだぞ。
 お返しに、俺は浴衣を縫って知り合いの塗り物の工房で櫛を作ってプレゼントした。
 嬉しそうにしてたな。
 今度から、気分転換に機織りでもするかな。
 以前に、師匠に連れて行ってもらったけど、凄く面白かった。
 色んな模様の生地は、茶道や華道を修めていた俺の感覚をこれ以上なく刺激したな。

『やっぱり。過ごしてきた時間が違うなあ…。』
 一夏の髪を梳きながら、由香里はその事を痛感していた。
 菫と冬菊の事は、ある程度由香里の耳にも入っている。
 2人とも、超がつくほどの深窓の令嬢。
 広大な屋敷に住み、幾つもの別荘がある。
 それを考えると、一夏に贈った櫛が相当の高級品である事も頷ける。
 無論、一夏は物の金銭的価値で贈り物を差別するような愚かしい考え方とは無縁であることは、由香里も承知している。
 だが、それでも目の前に心がこもっていることは間違いない贈り物である櫛を見ると、気後れに近いものを感じる。
『私も、一夏に何かプレゼントしたいな…。』
 辻島重工が社運をかけて開発した瑞鳳のテストパイロットとして、破格の報酬を得ている。
 その気になれば、男性用のアクセサリーをプレゼントしたり高級レストランでもてなす事も可能だ。
 家にも仕送りをして貯金もしているが、実家からは「お前の好きに使いなさい。」と言われている
『やっぱり。何かプレゼントとかした方がいいよね。』

「にしても、あれだよな。夜食の海苔巻。美味かったよな。」
 どこか、劣等感じみた物を由香里が感じているようなので、俺は話題を考えて話し始める。
「そ。そう…?一夏。お料理上手だし、舌も凄く肥えているから口に合わなかったんじゃないかって、結構心配してたんだけど…。」
「そんな事ないって、巻き方の塩梅はちょうどよかったし。ヅケを使った海苔巻は本当に美味かったし、太巻きは海老のでんぶ、厚焼き玉子、甘辛く煮た椎茸、湯がいた三つ葉。食べてて凄く満足したぞ。かんぴょうの味付けも良くて、飽きがこないし、ほっとする味でもう泣けてきたぜ。梅干しを裏ごししたのにごまを掛けたのは、梅の酸味とゴマの香ばしさが最高だった。かっぱ巻きは、あんなにシンプルなのにどうしてこんなに美味いんだと言いたかったよ。」
 本当。
 あの、海苔巻弁当は美味かったよな。
 どれも、下拵えがきちんとしてたし。
 腹が膨れるだけじゃなく、凄く幸せになれたよ。

「良かった。味付けはね。お父さん直伝なんだ。あ。そうだ。今度家に来ない?一夏とパートナーになったのを話したら、今度連れてこいって。」
 え?いいのか。
「じゃあ。来週にでも、お邪魔するかな。病院は早く上がれる日だから。」
「うん!」
 ここの所、ちょっとストレス溜まりがちだったからな。
 気持ちも、ほぐれるかもしれない。
「さて。朝飯前に、瑞鳳の微調整を済ませるか。」
 整備が上手く行っているのも、確認できたしな。
 あとは、連携訓練だな。
 機体さえ万全なら、練度は高められる。
 サポートしつつ、由香里が自然と努力をする方向に行くようにすればいい。
 まあ。俺が言わなくても努力してくれるだろうけどな。
 その前に、不愉快な用事を済ませておくか…。

 午前の授業を終えた一夏は、
『よし。これなら、普通の人にも解りやすいな。』
 昨日の隠れ喘息の事は、当直医や翌朝通勤してきた医師たちの間でも問題視され、一夏が見分けるポイントを病院のホームページに掲載することになった。
 一夏自身、昨夜の隠れ喘息の事は気にかけていた為に何かできることはないかと模索していたので、ちょうどよかった。

「よし。終わった。」
 ホームページが正常に閲覧できることを確認して、俺はヒレカツ定食の大盛りの昼食を再開する。
 とにかく、少しでも初期の内に対処できるようにしてもらいたい。
 昨日みたいなのは、真っ平御免だ。
「一夏。食事中は、仕事はNGよ。」
 シーフードカレーと海藻サラダのセットをトレイに持ってきた由香里が、話しかけてくる。
「そうなんだけどな。これだけは、やっておきたかったんだよ。放っておくと大変な事になる可能性もあるからな。」
 隠れ喘息による死者というのは、実を言うと正確に把握できているかどうか怪しいと考える専門医も大勢いる。
 というのも、軽度の喘息と診断した際に、咳が酷いことを訴える患者さんに吸入や飲み薬等のβ2刺激剤と呼ばれる気管支拡張剤が処方される場合がある。
 けど、1日に使用できる回数は制限されている上に、多用すると心臓に非常に負担が掛かって最悪の場合、急性心不全が死因と見られることがあるからだ。
 こういったケースも、本来なら喘息が死因になるんだがそうじゃなくなる。
 それ故に、隠れ喘息が原因で亡くなられる患者さんの数が正確に把握できなくなってしまう。
 ただ、そうなる前に診断して適切な治療を始めれば、きちんとコントロールしながら日常生活を送れる。
 他国に比べて、日本で使用できる喘息の薬は少ないけど、それでも以前に比べて選択肢はずっと増えているし、ステロイド治療をして発作を治められる。
 その為に、俺は俺に出来る事を可能な限りやるつもりだ。
 あ。そうだ。
「由香里。病院のホームページ更新したんだけど、ちょっと感想聞かせてくれないか?」
 感想を聞いて、改善点があればそれを反映してもっと内容的に充実した物にできるからな。

「隠れ喘息…。全然、知らなかった…。こんなのもあるんだ…。」
 説明の部分を読みながら、由香里が驚いている。
 当然か。
 喘息のイメージは、喘鳴音に息苦しさと酷い咳だからな。
 隠れ喘息は、症状が違うから喘息とは判断しにくいんだろうな。
 中には、この隠れ喘息の症状の子が発作を起こした時に、「ふざけるな!」と言って小学校の教諭が蹴とばした例も結構ある。
 けど、その後の処分までは報道されないな。
 その前までは、食いつくんだけど。
 俺なりに、公務員の世界っていうのは知っているけど、「身内のかばい合い」で厳重注意。
 もしくは、精々、1割の減俸が3カ月くらいってとこか。
 おっと。目的を忘れそうになる所だった。
「で、どうかな?何か気になる事とかあるか?遠慮なく言って欲しいんだ。」
 とにかく、少しでもクオリティの高いコンテンツを作りたい。
 何より、患者さんの役に立つコンテンツであって欲しい。

「いいと思うよ。すごく解りやすいし、これならきちんと専門医に行く判断が出来そうだし、学校の先生にも前もって話す時にもすごく使えるよ。」
「合格点か。よかったよ。頑張った甲斐があった。」
 とはいっても、全てはこれからだ。
 その時、俺の携帯の着信音が鳴る。
 病院から…。急患か?
「はい。急患?」
 だが、急患の呼び出しじゃなかった。
 ある意味、それより深刻な呼び出しだった。
「解った。すぐに行く。患者さんは落ち着いているんだな?解った。じゃあ。そっちで。」
 やれやれ…。どうしてこういう事が起きるかね…。
 俺は、食事を手早く済ませて職員室で千冬姉と山田先生に事情を話した後、寮に戻ってスーツに着替える。
 その頃には、ヘリポートには嘗て三菱が開発した MH2000を飛鳥商事の依頼で再設計されたMH2000R−VGが待機していた。
 原型となったMH2000は碌に売れなかったので、製造中止となったが、各部を再設計して営業にも力を入れた結果、旅客・輸送用ヘリコプターの傑作として売れている。
 IS学園で採用されているのは、VIP向けに開発され強度を増し軽量化された新開発の炭素繊維複合素材を採用している。
 窓ガラスも当然防弾仕様であり、7.62mm弾程度では傷すらつかない。
 機体は12.7mm弾の連射を喰らっても耐えきるだけの強度を持つ。
「お願いします。」
「了解。」
 ヘリポートから離陸して、病院に向かう。

「よし。喘息の症状は、落ち着いていますね。」
 病院に着いてから、患者さんである7歳の小学2年生の男の子。鹿島祐樹君を診察し、検査データと突き合わせて落ち着いているという結論を出す。
「心理テストも、大丈夫ですね。カウンセリングを受けさせたのもいい判断だ。」
 俺が来るまでに、スタッフは念のためにカウンセリングを受けさせていた。
「にしても、呆れ果てますね。学校側は、何と言っていますか?」
「喘息ではない。ふざけていたの一点張りで…。」
 何だよ。それ…。
 どこの世界に、ふざけて発作を起こせる喘息患者がいるんだよ。
「もう一度、学校側と話をしましょう、私が同行します。こちらで少し準備をしますので、お待ちください。予後も見ておきたいですし。」
 紹介した先生とさっき電話で話したが、最初に診断を下した俺の方が症状の説明がしやすく、向こうの態度も違うだろうと言っていた。
 結構、おっかないとこあるな。

「吸入前後にピークフローを計って、スペーサーを使ってアドエア50を50μg吸入。良好の場合は、吸入はしなくていい。念のためにソルメドロールを200のソリタT3に20mg加えて点滴。」
「はい。」
 何で、こういう事が起きるかね。
 呆れて、何も言いたくなくなるね。
 それでも、言わなきゃならない。
 患者さんの事もある。
 まだ、7歳。
 ほんの子供なのに、あんな仕打ちをするなんて絶対に赦されていい事じゃない。
 さて、準備、準備と。

後書き
今回のタイトルのマイの部分は、ここまで由香里の事です。
つまり、事実上主役は由香里です。
2年になってスカウトされて専用機持ちになって間もないとなれば、一夏を物にするには猛アタックを仕掛けるしかありません。
ですが、世界遺産級の唐変木の一夏には普通のアプローチでは意味がありません。
それと同時に、由香里なりに今の多忙で様々な悩みを抱えている一夏には思う所がいろいろあるようです。
今回は、そんな由香里の気持ちを書いてみたいと思いました。
政治が絡まない時ですと、医師として患者さんに携わっている時が一番一夏が悩むところではと思いまして、喘息の事を題材にしてみました。
私自身も喘息ですし、今の日本の喘息を取り巻く環境には色々と思う所がありましたので書くのは楽でした。
さて、呆れ果てる小学校の対応に対して一夏は何をするつもりでしょうか?
そして、今回の事で精神的に披露する一夏に対して由香里はどう行動し、何を思うのでしょうか?













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