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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第111話 終わりの始まり

<<   作成日時 : 2014/07/19 23:39   >>

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 1時間目の授業が始まる前、俺はパラダイス・エグザイルの進行状況に目を通していた。
 端末は、対防諜機能をさらに強化してあるので、盗み見される心配はない。

 進行状況は、順調だな。
 南米は、一般市民とマフィアやゲリラの下っ端との分断が上手く行って、売人に連絡員が事を起こす前に摘発されている。
 生活状況も改善されている。
 国連援助による各種公共事業の労働の給料は、その日の作業が終わってから支払われる日払いだから、すぐに生活必需品が買える。
 不足しがちで値段が高騰していた様々な商品の物価も、安定に向かっている。
 何より、最初に食料を配給したのが良かったな。
 人間、食わなきゃ生きていけない。
 水も、高性能浄水器できちんと飲めるようになった。
 貧すれば鈍す。
 貧困は人間が善悪を判断する力を鈍らせてしまって、犯罪の温床となる。
 それゆえのミレニアム開発目標だったが、各国の政治的思惑等で進捗に格差が出ていて問題になっていた。
 今回は、各国が遅れを取り戻そうと足並みを揃えているので、順調にスケジュールは消化されている。

 この動きをよく思わないマフィアやゲリラ組織は、襲撃計画を立案しようとしたが、それに先んじて各国の部隊が各地に展開している。
 その頃には、市民感情も各国の部隊が展開されても問題なかったので、反発もほとんどなかった。
 いかに重武装のマフィアやゲリラでも、完全武装の各国精鋭部隊相手に襲撃を掛けたらどうなるかぐらいは解る。
 手をこまねいている間に、第二陣を送り根拠地を包囲して向こうに籠城戦を強いる体制を整えた。
 さらに、UAVに偵察衛星の二段構えで監視して、無線や携帯電話等の連絡も傍受して、外部から物資を調達しようとした時には身柄を拘束している。
 食料だけでなく、武器の追加もままならなくなっている。
 加えて、各国の部隊は重武装の装甲車や攻撃ヘリを配備。
 さらに、備えを強化している。
 下っ端の摘発も、そろそろ終わる頃だな。
 南米は、このまま進行すればよし。

 欧州が、ちょっと遅めかな?
 上層部で、マフィアや犯罪組織に鼻薬を嗅がされた連中の首のすげ替えが、意外に苦戦している。
 欧州のマフィアや犯罪組織は、長い歴史の中で根を下ろして活動してきたからこうなるのもやむなしか…。
 それでも、致命的な遅れとは言えないしな。
 それに、ここで首のすげ替えとマフィアや犯罪組織の摘発で遅れを取ったら、欧州各国の立場がない。
 何しろ、南米の違法薬物の供給源が大きく力を削がれたら、マーケットのシェアの大半を占めるのは欧州のマフィアに犯罪組織だ。
 そんな事になれば、面目は丸つぶれ。
 そして、批判の雨が降り注ぐ。
 それが解っているから、死に物狂いで組織の浄化と取引の摘発に当たっている。
 この分なら、十分いけるだろう。
 ロシアは、強烈だな。
 僅かでも証拠を掴んだら、特殊部隊を投入して徹底的に潰している。
 世界で最も凶悪なロシアンマフィアをいつまでも抱えたままじゃ、五大国としての示しがつかない。
 旧KGB系の組織の人材を復職させる等、ある意味なりふり構わずだ。

 その他、アメリカやカナダ等も国内の組織の摘発に余念がない。
 日本も指定暴力団の資金源の調査に特捜部が全力であたり、あちこちの暴力団の幹部が逮捕されている。
 中国は、軍隊まで動員して組織潰しに当たっているな。
 こういう連中をのさばらせたままだと、党の威信にも関わるから他国より必死だろうな。
 一番、ドンパチが凄いのって中国じゃないか?
 何しろ、戦車まで投入しているからな
 アメリカも、結構すごいけど。

 当然、テロ組織やゲリラも動く機会を伺っている筈だから、情報収集を入念にして先手を打って殲滅。
 外に出れないようにすれば、籠城戦になった方は物資を食いつぶして、いずれやせ細って戦う力を失う。
 一方、各国の部隊は豊富な補給物資でたらふく食っているから士気旺盛。
 このまま、順調にいけば大丈夫だろう。
 最後まで、手は抜かないけどな。

「織斑。あまり学校に仕事を持ち込むな。授業が始まるぞ。」
 おっといけない。
 授業だ。
「それでは、本日は連携に関しての戦術論の講義を行う。」
 授業を受けながらも、俺はこの先の状況の推移に関して考えていた。

「織斑君。ちょっといいかな?」
 俺を訊ねて来たのは、5組のクラス代表の霧島さんだった。
 以前は、サイレントベルを駆る準専用機持ちだったけど、クラス代表対抗戦での戦いが評価されて、辻島重工が開発した第三世代IS瑞鳳の専任パイロットになり、専用機持ちの1人となっている。
 それからは、朝練と放課後の鍛錬で俺が指導をしている。
 元々、準専用機持ちだっただけに素質はあるから、日に日に伸びている。
 コツを掴んで、短期間で瑞鳳を使いこなしている。
「ん?どうした。」
「えっと。昨日の訓練の映像を見直していたんだけど、ここ改善点ないかな?」
「ああ。成程。ここは…。」
 作戦の進行状況をチェックしながら霧島さんの指導をしているけど、今までの経験で俺も鍛えられてこれぐらいなら、何てことない。
 さて、亡国企業はどうしてるかな?
 このまま、指をくわえて見ているとは思えないんだよな。

 その頃、スコール達が乗っているケートスは、フォークランド諸島沖で密かに情報収集とスコールの専用機トパージオンの修理を行っていた。
「手酷くやられたな。」
 メインフレームをむき出しにされたトパージオンを見て、エムが苦虫を噛み潰したような表情になる。
「生きているだけ、恩の字よ。」
 千冬との戦闘で大きなダメージを負ったトパージオンは、メインフレームにまで大きく損傷が及んでいた。
 搭載されている兵装は、目くらましをして離脱している途中に大破し、機体にさらにダメージを与えている。
 自己修復機能で、メインフレームは自然回復してはいるがそれを待っていられるような状態ではなく、整備員総出で修理を行っていた。

「で、どうかしら?まだ、かかりそう?」
「外装は壊滅的です。装甲も全損。相当に時間がかかります。」
「そう…。やはりね…。」
 スコールにとっては、予想の範囲内だったとはいえ表情が曇る。
 千冬との戦闘で、あちこち骨折し今までベッドの中にいたので、ISの損傷も相当な物だと予想していた。
 ISには絶対防御があるので、重傷を負うとなればIS自体のダメージも大きくなる。
 スコールは、骨折の治療と並行して内臓の検査も行われ各部に内出血が見られたほどだった。
 ナノマシンの大量投与。万能細胞の移植。細胞活性化治療をフォークランド諸島沖に到着するまで行い、ようやくベッドから起き上がれるようになったのである。

「しばらくは、手を出さない方がいいわね。南米を始めとする、各地のマフィアや犯罪組織の壊滅作戦を立案したのは、間違いなく織斑一夏。手を出せば大火傷を負うのはこちらだわ。まして、スコールはISごと身柄を拘束。サイレントゼフィルスは、奪還された。あなたが戻ってきたのが、せめてもの救いよ。エム。」
 しばらく、作戦行動を起こすのは中止することをスコールは決めた。
 戦力評価の作戦だったはずだが、予想を遥かに超えるIS学園の戦力の前に大敗。
 データも僅かしか収拾できなかったのだから、無理もない。
「その事で、私は相談したいことがあるのだが…。」
「ISの強奪も駄目よ。各国の警備が厳重すぎる。例え貴方でも戻ってくる保証はない。」
「そうではない。ディースの機体を、私に使わせてくれないか?」
 エムの言葉にスコールは驚き、険しい表情になる。
「言っている事の意味が、解っているの?あなた自身の調整で使用は可能だけど、負担はかなり大きいのよ。」
「承知の上だ。だが、他に方法は無い。ISのコアがない以上、他に使える物は無いからな。」
 スコールは少しの間、考えた。
「技術陣に、検討させてからね。」
「それでいい。」

 放課後の鍛錬を終えた後、一夏は特別調査部のオフィスで会議を開いていた。
「以上の報告の通り。進捗状況は良好です。マフィアや犯罪組織も、下っ端以外は動く気配を見せません。UAVと監視衛星で、相手の動向はリアルタイムでチェックしております。」
 ヴェッセルの報告を聞いて、一夏はうなずく。
「武器密輸の動きは?」
「アメリカ、グアテマラ、中国。ロシアを始めとする旧共産圏の国家の武器密売組織の資金の流れを調査した結果、以前に比べて激減しております。武器密輸はだいぶ遮断されていると見てよいでしょう。事実、多くの密売人が大量の武器と共に摘発されています。」
「引き続き、監視を続けてくれ。連中にとっては、上客にいつまでも商品が売れない状況は好ましくない。新しいルートを開拓する可能性は、充分にある。グリントは武器密売組織が連絡をどこと取っているかを逐次把握しておく事。」
「はっ。」
「了解しました。」
 報告を聞いてから、一夏は引き続き監視を続けるようにライリーとグリントに命令する。

 やれやれ。
 作戦の進行状況は順調とはいえ、やっぱり油断はできないか。
 様々なルートから、武器は流れ込む。
 例えば、憲法上銃の形態が認められているコロンビアは、軍のコントロール下で、簡単に銃を買う事は出来ない。
 そこで、犯罪歴の無い女性を使いアメリカで購入させ密売人に渡して少しずつ持ち込むという方法を取る。
 ちりも積もれば何とやら。
 回数が増えれば大量に武器が集まるし、アサルトライフルはセミオート仕様で販売されていても改造してフルオート仕様にされる。
 RPG等の東側の武器は、大量に出回っているので闇市場では豊富に在庫がある。
 故に、軍といえどもマフィアを侮る事は出来ないわけだ。
 今は、検問を厳しくする等入手も難しくしているけど、作戦が終わった後どうなるかが気になるな。
 アメリカでは、銃を売る業者の団体があって銃規制には猛反対するから、外国人に対して武器を売る事を禁止する法律を作るのは難しいかもしれない。
 第一、全部が全部、密売人に渡す目的で買う訳じゃないからな。
 こういう所に亡国企業が目を付けると面倒だから、手を伸ばす余地を潰したいというのも今回の作戦を立案した理由の一つでもある。
 こればっかりはアメリカに任せるしかないとはいえ、困ったもんだよなあ…。

「失礼します。閣下。協議局のトンプソン局長とクライトン副局長が、お越しです。」
 会議が終わった後、報告書を読み直しながら今後の事を考えていると、虚さんが来客を知らせに来る。
「応接室にお通ししてくれ。それから、コーヒーを3人分。」
「畏まりました。」
 さて、何の用かな?

 協議局。
 正式名称は、日米情報網構築協議局。
 諜報関係の部署の連携を密にする為に、日本に設置された部署だ。
 設置そのものは日米合同で行われ、トンプソン局長と日本側とアメリカ側から派遣された人材がそれぞれ1人ずつ副局長を務めている。
 ちなみに、オフィスは特別調査部のお隣だったりする。

「アポイントも無く、申し訳ありません。」
「いえ。今は、会議も終わった所ですのでお気遣いなく。では、ご用件を伺いましょうか。」
 虚さんがコーヒーを置いて、応接室を去る。
「オペレーションの進行状況は順調なのですが、一つ問題が生じ初めまして。」
「ほう?それは聞き捨てなりませんな。で、問題とは。」
 トンプソン局長が、深刻な表情で用件を話し始める。
 ま。だいたい予想はつくけどな。
「こちらを、ご覧ください。」
 クライトン副局長が取り出した資料を受け取って、目を通し始める。
 やっぱりか…。
「やはり、生じ始めましたか…。予想はしていましたが…。それにしても、暴力団と水面下で交渉を始めようとしているとは…。」
「さすがは、織斑閣下ですな。我々としても、こう来るとは思いもよりませんでした。」
 だよな。
 そもそも、日本の暴力団の資金源は、麻薬を始めとする違法薬物、恐喝、各種詐欺、強引な用心棒。こんなところがメインで、武器はほとんど扱わない。
 入手するとしても、ほとんど自分たちが使う分だけだ。
 それが、日本の暴力団を経由しての武器の三角貿易かよ…。
「解りました。警察には、私から連絡を入れておきます。協議局は、政府関係機関と連携して事に当たる。これで、如何でしょうか?」
「よろしく、お願いいたします。」
「いえ。政府関係機関との連携、くれぐれもよろしくお願いいたします。正直、私共は現在の作戦で、手一杯でして。」
「存じております。関係機関との連携、しかと引き受けさせていただきます。」
 こういう形の連携は、理想的だよな。
 アメリカも、いい人選をしてくれたよ。
 日本の方は、警察庁警備局国際テロリズム課課長の井沢警視長が派遣されている。
 海外経験も豊富で、国際レベルの犯罪捜査のエキスパートでもある。
 警察庁も大分渋ったそうだけど、五嶋さんが手を回したらしい。
 警備局長に就任したのと、あちこちにあるパイプを利用すれば警察庁でできない事は無いとすら言われている人だ。
 警察庁の影の支配者とすら、言われている。
 けど、非番の時は競馬に熱中している姿からは、到底信じられないんだよな。
 俺なんて、1回五嶋さんが馬券を買ったレースの中継を聞いておくよう頼まれた時がある。
 見事に当たったので、情報交換を兼ねて奢ってもらった。
 さて、連絡連絡。

「そりゃまた。大変なことになりましたな。」
「ええ。暴力団に目を付けるとはね。あまり、南米の組織とは付き合いがないんですけど。背に腹は、代えられないという所ですか。」
 一夏は、トンプソンとクライトンが帰った後に、すぐ五嶋に連絡を入れていた。
「そんな所でしょうな。解りました。そっちの方は、私の方で手配しておきますんで。」
「申し訳ありません。では、失礼します。」
 一夏は、電話を切る。

「こりゃまた、えらい事になったね。これをきっかけにあちこちの組織と関係が深まると、面倒だから早めに手を打っておかないと。」
 靴と靴下を脱いで皮膚科で処方された水虫の薬を丹念に塗りながら、五嶋はこれからの段取りを決める。
「ああ。俺。悪いけど、執務室に来て。ちょっと大変なことになるから、その前に会議で方針を決めて先手を打つ。うん。は〜い。よろしく。」
 その後、警察庁長官に連絡を入れて今後の事に対して許可を取ると、公安部長小沢と警視庁刑事部長の井上にも連絡を入れて警視庁との連携の準備を整えた。

「こちらの方は、警察庁の五嶋警備局長を通じて手を打っておきました。今頃は、公安部と刑事部も動き始めている筈です。」
 一夏はオフィスの近くにある、特別調査部の保養施設のビリヤードをする部屋にいた。
「さすがに、動くのがお早いですな。警察関係にも大変に太いパイプをお持ちとは聞いていましたが…。」
 トンプソンが、3番をポケットし損なう。
「五嶋警備局長とのパイプが、あればこそですよ。上層部が自分の地位を脅かされるのではと恐れるほどの切れ者。今は警備局長ですが、既に警察庁の影の支配者と言われていますからね。元々は、公安の人間だったそうですが、その時の仕事を通じて各方面に太いパイプを作られています。それを使えば、警察庁を裏から支配する位は何ともないのかもしれませんね。」
 一夏は、3番と4番を立て続けにポケットする。
『ま。そんな気は、ないだろうけどな。周囲がビビってるだけで。』
 キューの先にチョークを付けながら、一夏の頭には競馬中継を聞いたり水虫の薬を塗っている五嶋の姿が浮かんだ。
「どこにでも、切れ者というのはいるものですね。」
「まあ。そういう事です、そういう人を見つけて繋がりを作っておくのも私達の仕事でしょうね。」
 5番はポケットしたが、6番はポケットし損ねた一夏が肩をすくめる。

「だが、切れ者というのは少ない。お蔭で、パイプ作りも思うようにいかないものでしてな。我が合衆国としても、閣下との繋がりは出来る限り太くして保っておきたいのですよ。欲を言えば、アメリカ国籍になっていただけると、尚、ありがたい。各軍共、中将の階級と相応しい地位で迎えるだろうと、オフレコで言っていましたよ。」
 一夏とトンプソンのナインボール勝負を見物していたクライトンが、一夏に話しかける。

「どこの国の帰属になるか。私にとっては、非常に難しい所でしてね。様々な事を考慮しないと、後が面倒になります。」
 ジョークなのか本当なのか、表情を読み取らせないようにしていったクライトン副局長に、俺は言う。
 ま。ちょっとした注意かな。
 現実問題、俺が帰属する際は慎重にならざるをえない。
 俺の存在自体が、色々なバランスを変えかねないからだ。
 以前は帰属が決まらなくて溜息をついていたけど、今となっては状況が違う。
 五大国のどれか。
 特に、アメリカに帰属すると、通常戦力だけでなくIS戦力も世界一になる可能性が非常に高くなる。
 確実に実用化に近づいている第三世代だが、俺は第四世代ISを既に実用化させているし、それをも上回る量産型第五世代ISも開発が可能だ。
 そして、研究者の性か第六世代ISの構想を暖め始めている。
 アメリカは、国防予算が豊富なので研究開発環境も整っているし、開発は順調に進むだろう。
 他の国でも、無理をしてでも予算をひねり出す可能性がある。
 だからこそ、もし五大国のどこかに帰属する際は慎重の上にも慎重を期す必要がある。

 日本は、潜在的にアメリカに次ぐナンバー2の軍事大国になる国力がある。
 IS発祥国としての強みで、量産型ISを最初に完成させたのも日本だ。
 そして、既に自衛隊で運用されているISは、全て第三世代IS。
 第二世代は、既に日本では新型兵装のテストベッドにもならないので、1機も配備されない。
 第三世代ISを使用したパイロット養成カリキュラムが確立されているので、新人の教育も第三世代ISが使用される。
 最近は、倉持技研も展開装甲の研究をスタートさせいる。
 芝崎では第四世代ISは開発していないけど、作ろうと思えば量産型第四世代ISはいつでも作れる。
 憲法九条等、他国の軍事的脅威になる可能性は少ないのが日本ではあるけど、帰属になったらかなり面倒になる。
 ただ、俺の立場上、帰属先になる確率が高いのは日本かもな。
 芝崎という世界に名を轟かせる巨大企業において、開発面でも経営面でも深く関わり過ぎた。
 辞任する時は、面倒になるのは簡単に予想できる。
 やれやれ…。
 保養施設で仕事の話をする時は、できるかぎりリラックスしながらというのが特別調査部と協議局での暗黙の了解だけど、帰属先を考えるとそうもいかないな…。
 話題を変えるか。

「そういえば。そろそろですね。」
 8番をポケットし損ねたトンプソン局長と代わりながら、俺は話題を変える。
「そうですな。」
「確かに。」
 トンプソン局長と、クライトン副局長が頷く。
 ミレニアム開発目標のスケジュールを消化しつつ警備目的で部隊を展開させ、さらに各国の違法薬物密売組織や犯罪組織の本拠地を包囲し、籠城戦に持ち込ませて日干しにさせる。
 そうなれば、奴らの体力も気力も衰える。
 そこを狙う。
 オペレーション・エグザイルの最終段階だ。
「潰した後は、連中が息を吹き返すのを未然に防止するために全力を尽くす。これで、やつらはますます追い込まれる。」
 9番をポケットして、俺の勝ちが決まる。

「尤も、それも楽ではないでしょう。とことん腐り果てた悪党は、再び売買を始めようとする。」
「それについては、既に手を打っています。国連で各国の違法薬物関係の刑罰をより厳しくする声明を採択する様に、根回しは済ませていますよ。」
 アイスティを飲みながら、俺はクライトン副局長に答える。
 今回の作戦の終了後のアフターケアをきちんとしておかないと、作戦自体が無駄になる。
 そうさせない為に、俺は時間を見つけては事務総長の協力を取り付けて、各国に根回しをしておいた。
 どの国も、重大な社会問題として薬物問題を抱えるのは真っ平御免だから、楽にいったな。
「相変わらず、見事なお手並みだ。私達も動きますか。そうですな…。本国に刑罰の厳格化の他に、専門機関の拡充を提言しておくとしましょう。他の国へも議会筋を通して、促せるでしょう。」
「助かります。」
 俺は、トンプソン局長に礼を言う。

 その時、虚さんがビリヤードルームに入ってきた。

「おくつろぎの所失礼いたします。閣下。とうとう、向こうが限界に達し攻撃の気配を見せたとの連絡が入りました。それから、これを。」
 虚の知らせを聞いた一夏の表情は指揮官のそれになり、手渡された手紙を読む。
 そして、小さく溜息をつき、やれやれと言いたげに小さく首を横に振る。
「お二方も、お読みになりますか?」
「よろしければ。」
 一夏に聞かれて、了承を取ってからトンプソンとクライトンが顔を見合す。

「パラダイス・エグザイルの指揮権を全面的に委ねる。」

 この瞬間、一夏が各地のマフィア及び犯罪組織の掃討作戦。
 パラダイス・エグザイルの最高司令官となった。

「主なスタッフを、第6オペレーションルームへ集合させろ。最終段階に入る。」
「はっ!」
 虚がスタッフの召集の為に、部屋を出る。
「従兵。軍服に着替える。用意を。」
 一夏は、従兵に着替えの準備を命じる。
 作戦は、最終段階に入った。

後書き
いよいよ、パラダイス・エグザイルも本格化。
この話を書きながら思ったのですが、やはり人間は生きていく条件が整わないとどんなことでもしてしまうんですよね。
ごく当たり前の事ですが、妙に実感したような気分になりました。
まず、食べる物がなければどうしようもありません。
飢え死にする位なら…。と、誰しも考えてしまうでしょうから。
だからこそ、いわゆる発展途上国の人達もきちんと食事が摂れるようになるよう、各国は力を合わせる必要があると思うのですが、難しいですね…。国際政治は…。
いろいろな問題に、国の思惑も絡みそうですし。
現地の他にも、それぞれの国でも組織の摘発に全力を注いでいます。
ちなみに中国は戦車まで出していますが、天安門事件を見ていますと、何としても国内の治安を安定させなければと政府が考えればこれ位はやるでしょうね。
泣く子も黙る大陸マフィアも、戦車砲を喰らって挽肉になるのではないでしょうか?
そして、最終段階は一夏が指揮を執る事に。
最終局面です。
















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