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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第105話 クラス対抗戦開幕

<<   作成日時 : 2014/06/07 23:59   >>

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 いよいよ。この日が来た。
 学年ごとに、クラス代表が競い合うクラス対抗戦。
 1年生にとっては、初めて他のクラスの生徒とISの技術を競い合う場となる。
 去年は、俺と鈴の1回戦が終わった途端ゴーレムが襲ってきたので、1年生の1回戦第1試合のみに終わったが、今年はそうはいかないぜ。
 システムへのハッキング対策に警備体制の構築と、俺に出来る限りの万全の体制を敷いている。
 去年の様に行くと思ったら、大間違いだ。
「織斑君。開催の挨拶をお願いします。」
「はい。」
 さて、出番だ。

「これより。IS学園クラス対抗戦を開催します。1年生は初めて他のクラスの人と自分の技術を競い合うことになります。入学して1カ月程度しかたっていませんが、それでも得た物は必ずある筈です。それを出し切り、ベストを尽くしていただければと思います。最上級生の3年生の方々は、最後の対抗戦になります。良き思い出になるよう、生徒会一丸となって準備を進めてきました。良き思い出ができればと、心から願っています。同時に、1年生、2年生に今まで培われてきた技術をお伝えできればとも思っています。皆さん。ベストを尽くした素晴らしい大会にしましょう。」
 俺が一礼すると、沢山の拍手が聞こえてくる。
 皆、乗り気だな。
 拍手を聞きつつ、俺は貴賓席を見る。
 各国の軍高官に、国防関係の要人。
 IS企業の重役と、錚々たる顔ぶれだ。
 気に入らないお歴々もちらほら目に映るが、それはそれ。
 仕事に私情は挟まないよ。
 きっちり、守り通して見せるぜ。
 あれ?楯無さん。何してるんですか?
 うん?みょーな寒気が…。

「さて。これから対抗戦が始まるわけですが、ここでお知らせがあります。既にご存知のように、各学年の優勝者が所属するクラスの生徒全員に、学食のデザート半年間無料パスの進呈。さらにクラス代表には、織斑生徒会長とのデートの権利が与えられます。尚、2年生に関しては準優勝者となり、優勝者には会長との旅行の権利が与えられます。」
 今更、確認する様に言う必要がどこにあるんですか?
 何か、続きでもあるんですか?

「さらに、これに追加します。デートと旅行の権利に加えて、希望者には会長からの頬かおでこへのキスの権利を進呈します。」
「「「「「きゃー!」」」」」
「素敵よ!何て、素敵な権利なの!」
「勝つわよ!絶対に勝って見せるわ!!」
「半年間、デザート無料。織斑先輩とデート。そして、キスまでしてもらえるなんて…。」
「臨死体験するまで、勉強して良かった…。」
 口じゃないから、まあ…、譲歩しますよ…。
 希望者ですし…。
 そんな物好きは、いないでしょうしね。
 ん?何か、3年生の先輩たちの様子が…。

「キス程度で済ませるもんですか!」
「そうよ。まだスタートにすぎないのよ!」
「所詮は、ABCのA。まだ、BとCが残ってるわ。」
「え?でも、大丈夫なの?。」
「私、しばらくは大丈夫な日だから。」
「ピルもあるし。」
「最後の思い出づくりよ。ぜーったいに優勝して見せるわ。」
 あーあー。
 何も、聞こえません。
 何も、聞こえません。
 俺は、何も聞いていません。
 よし。
 なのに、何だ…、この冷たくて、どす黒くて、禍々しい気は…。
 また、魔○気か…?
 やっぱり、箒たちは既に魔界に…。
 考えないように、しておこう…。
 で、貴賓席の人達は呆然としていると。
 やれやれ…。

「あの、これってまずくありませんか…。」
「心配ない。あの唐変木が気付くはずもあるまい…。」
 真耶に指摘されて、千冬は自分に言い聞かせるように答えた。
「でも、織斑君て結構雰囲気に流されやすい所がありますし、3年生は今年で卒業。正直、不安なんですよ。それに織斑君も来年は18歳。法律上、結婚ができますし、学園の校則にも在校時に結婚をしてはいけないとはありませんし…。」
「それも問題ない。そこらの小娘に、一夏はやらん。」
 千冬はきっぱりと言い放った。

 ったく、碌な事しないな。あの人は…。
 まあ、俺にキスして欲しいなんて物好きいないだろうし、関係ないけどな。
 えーと対戦表を見るか。

 一番の注目は、実質的にシード枠になる第1試合。
 各学年6組なので、どうしても1試合勝てば決勝進出のシード枠のような対戦カードが出来てしまう。
 1年は、1組と3組。
 蘭と、シャーリーか。
 俺が開発した第三世代と、アメリカの第三世代の勝負か。
 性能では瑞鶴が上だが、シャーリーも侮れない相手だ。
 蘭も想像以上のスピードで成長しているけど、油断したらどうなるか解らない。
 3年は、サファイア先輩の3組と1組か。
 1組のクラス代表の人は準専用機持ちとして、アメリカ海軍の主力ISとして運用されている第二世代IS ワイルドキャットUに搭乗している。
 総合バランスを最重要視した設計で、取り立てて優れた点はないが様々な状況に対応できる点と、燃費と稼働性が高く評価されて、現在、世界シェアNo.1のISだ。
 また、拡張性も高いので、各国の運用思想に合わせた派生型も存在する。
 エインガナは、火力、機動力、近接戦闘全てに優れた性能を与えているけど、相手次第では厄介かもな。
 2年のシード枠は、ラシェルと簪。
 IS委員会直属のラボで開発されたISと、俺が改修した打鉄弐式。
 そして、フランス陸軍特殊部隊元大尉と、世の暗部を処理してきた更識家の次女として産まれた簪の戦いか。
 こっちも、目が離せないな
 後のカードも、見所満点だ。
 ちなみに俺は、第3試合でのほほんさんとぶつかる。
 いつもは異常なスローペースだわ、生徒会の仕事は溜めまくるわと目を覆うくらいだらしないが、事、ISに関しては間違いなく凄腕。
 更識家に代々仕える一族だけの事は、ある。
 不知火は、俺が設計したISだしこれはこれで厄介だな。
 でも、面白そうだ。
 楯無さんは、第2試合で5組のクラス代表の人と戦う。
 相手のISは、セシリアのブルーティアーズのプロトタイプとも言える、機動性と火力にウェイトを置いた第二世代IS サイレントベル。
 機動性では、初期第三世代にも引けを取らないし火力も侮れない。
 とはいえ、楯無さんは更識家当主にしてロシアの国家代表。
 勝敗の結果は見えているけどな。
 その点では、サファイア先輩の試合も同じかな。

「さあ。いよいよ始まりました。学年別クラス対抗戦。実況は、私、新聞部部長黛薫子が務めさせていただきます。そして、解説は前ブリュンヒルデにして、我がIS学園の教官でもありますヘンリエッテ・ブッフバルト先生です。ブッフバルト先生。まずは、1年生の第1試合。しかも、勝者はそのまま決勝に駒を進めます。そして、互いに専用機持ち。見ごたえがありますね。」
 共に、3学期から一夏に指導を受けて実力を伸ばしてきた専用機持ち同士の戦いに、ヘンリエッテも注目していた。
「ありがとうございました。いよいよ第1試合スタートです!」

「行くわよ!」
 シャーリーが、スカイウルフを一斉に発射する。
 最初から、飛ばしてるな。
 この試合に勝てば、一気に決勝進出だから解らないでもないが、ちょっと力み過ぎだな。
「予測済みよ。」
 蘭が落ち着いて、竜神で迎撃する。
「こっちもね!」
 イグニッションブーストで、距離を詰めながらジャイアント・アックスとシャイニング・ランスで攻撃してくる。
 この2つの兵装は、あまり距離を詰め過ぎると扱いづらくなるんだけど、距離を詰める間に相手にダメージを与える手段として割り切った使い方をしているな。
 現に、近接戦闘にいつでも移れるように、密かに体が準備している。
 それなりの実力者なら、解るけどな。
「いいのかしら?そんなに突っ走って。」
 蘭が地面を踏みしめると、シャーリーが横から何かに殴られたように体勢を崩し、少なからずシールドを削られる。
 成程。夢鏡でオール状の武装をあらかじめ作って、待ち受けていたのか。
 シャーリーも、勿論夢鏡の事は知っている。
 けど、アサルトキャットは切り込み隊として戦う事を前提に設計されているので。突破力をいかした強引な戦い方が、抜けきれないんだろう。
 一方、瑞鶴は、新旧の技術を投入しつつ柔軟な戦い方が出来るように、武装が搭載されている。
 学園の受験勉強を見てやりながら、柔軟に戦う事の大切さを教えておいた。
 しっかり活かせているな。
 1月から皆を指導した際にも、この点はきちんと教えたけど生来の気質もあるのかもしれない。
 だが、シャーリーも只の猪武者じゃない。今度は間合いを取りつつ様々な方向からヒットエンドランで攻撃をしかけ、時に距離を詰めて格闘戦に持ち込もうとする。
 格闘戦には持ちこめなかったが、瑞鶴のダメージも少しずつ蓄積していく。
 ただ、竜神も光雷も偏向射撃が可能なので、蘭はシャーリーの動きをよく見て死角から攻撃を仕掛ける。
 常に命中はしないが、牽制にもなるのでその時に輪舞と鶴翼で確実にダメージを与えていく。

「五反田さんが、明らかに優勢ですね。」
「最初で懲りてから、マイルズも無闇に突っ込みはしなくなったが、五反田が瑞鶴の性能を完全ではないにしろうまく活かして、戦っている。このままでは、勝敗は目に見えている。それをどう崩すかだな。」
「五反田さんは受験勉強の頃から織斑君に操縦や戦術を教わっていた分、戦い方のうまさでは頭一つ抜けています。崩すのは厳しそうですね。」
 オペレーションルームで、真耶と千冬は蘭とシャーリーの試合について意見交換をしていた。

『さすがに、一夏さんとの付き合いが私達の中で一番長いだけに、教えてもらったことはどうしても差が出るな。同じことを教えてもらっても、習熟度が違う。』
 シャーリーはアリゲーターカスタムを。
 蘭は白兵戦モードの光雷を使用しての近接戦闘に移行しているが、ここでも差が出ていた。
 筆記試験ではまず問題ないという結果が出ていた蘭だが、実技試験ではどうなるか解らないので一夏から可能な限り、IS運用のコツや戦術を教わり、何度も復習していた。
 シャーリーも海兵隊のテストパイロットとして、訓練は続けてきたが学園で一夏の講義を受けてから再確認したところも少なからずあり、専用機持ちとしては「まだまだこれから。」という実力だった。
 そして、一夏の講義を蘭達と受け格段にレベルアップしたが、それは蘭とて同様。
 加えて、学園に来る前に一夏から教わった事を整理して何度も見直しながらライブラリの映像を見て戦術の研究を独自に行っていた。
 無論、シャーリー達も研究は怠らなかったが、この点でも一夏から教わった様々なコツを纏めた物を持つか持たないかで差が出た。
 学園に来る前の習志野の訓練でも、一日の訓練を終えると訓練で注意された事の反省と一夏に教わった事のコツを突き合わせてどうするべきかを考え、糧としてきた。
 そして、現段階での力量を試すクラス対抗戦で、それが差となって出ていた。

「これなら、どう!?」
 特殊兵装ジャイアント・クラッシュで竜神を破壊し瑞鶴にもダメージを与え隙を作り状況を有利にしようとしたが、ハイパーセンサーで既に察していた蘭はタイミングを見計らって、竜神を散開しつつ、緊急離脱で後方に下がるとイグニッションブーストで上を取り、夢鏡で不可視の薙刀の一撃を加えると、竜神の一斉射撃でアサルトキャットのシールドエネルギーがゼロになる。

「勝者。五反田蘭。」

 蘭の勝ちか。
 シャーリーもよく頑張ったけど、ちょっと勝ちを焦り過ぎたというか冷静さに掛けていた部分があったな。
 瑞鶴とアサルトキャットの性能の差もあったけど、自分をどれだけクールに保てたかという点で蘭に軍配が上がったか。
 これで、蘭が決勝進出か。
 でも、2人とも初めの頃に比べて随分成長していたな。
 同時期のセシリアや鈴に比べて互角どころか、上じゃないか?

「これより、2年生第1試合を始めます。」
 2年の第1試合は、ラシェルと簪。
 打鉄弐式は倉持技研製だが、その後俺が大幅な改修を行っている。
 対して、ラシェルの専用機はIS委員会直属の研究所が開発した第三世代IS エムブラ。
 中々に興味深い機体だな。
 何しろ、白式の第二形態雪羅を解析して得たデータを盛り込んで設計されているからな。
 背部には、ウィングスラスター4基。
 腰部サブアームには、ランス型の白兵戦兵装で、拡散・収束双方が可能な高出力レーザー砲と速射衝撃砲を搭載したランス型複合兵装「フェンリル」が2基マウントされている。
 背部のハードポイントには、長距離重レーザー砲と多目的ライフル砲の複合長距離兵装「イチイバル」がマウントされている。
 防御兵装として、肩部慣性防御シールド「エイワズ」。
 さらにエイワズには、斬撃に特化したBTプラズマナイフ「ラタトスク」が4基ずつ計8基マウントされている。
 腕部装甲内には、腕部ガトリング砲「ハーゲル」を装備。
 特殊兵装は、相手の稼働エネルギーを減少させる特殊な波長を発生させる大剣「ダインスレイヴ」
 兵装はオリジナルだが、全てに共通して雪羅の兵装のデータを何かしら感じさせる。
 雪羅は臨海学校後に例外的にデータを収集して委員会に行っていたから解析に人も金も相当に回せたはずだけど、第三世代が精一杯だったか。
 でも、ハイスペックなISである事は事実だからな。
 加えて、白式ほど大飯喰らいじゃないから、白式よりかは扱いやすくなっている。
 白式の劣化コピーと言っていいISだが、そもそも雪羅の性能が反則だったから再現率がそれなりなら性能は自然と高くなる。
 特殊兵装はなかなか厄介だしな。
 打鉄弐式は、倉持技研がスラスターを自社開発した物に換装している。
 データは見たが、高性能だったな。
 後は、ラシェルと簪のどちらの腕が勝っているかに掛かっている。
 さて、どうなるやら。
「2年生第1試合。始め。」

 簪が春雷で先制攻撃を仕掛けるが、ラシェルは落ち着いて回避してハーゲルで攻撃する。
 回避しつつ、簪は確実に距離を詰めていく。
「はあっ!」
 幻月で斬りかかるが、マウントされていたフェンリルで受け止められる。
『さすがに、この学園でみっちり鍛えているだけの事はある。長期戦になるとこっちが不利になりそうだわ。』
 短時間で、ラシェルは簪の技量の高さを見抜いた。
『最初から、思い切り飛ばさせてもらうわ。一夏とデートもしたいし。』
 いったん距離を取ると、もう片方のフェンリルを拡散モードにして周囲を薙ぎ払うように攻撃を仕掛ける。
『ライブラリの映像で見ていたから知っていたけど、白兵戦にも、射撃戦にも対応できる。しかも広範囲の掃射もできるのは厄介だわ。』
 正確な広範囲の掃射が可能となると、自分の機動領域が狭められることを理解して簪は楽には勝てない事を自覚する。
『一夏がさっさと勝ったから、向こうの手の内を完全に知ることが出来なかったのは痛かったわね。』
 3組と4組の授業でも、ラシェルは手の内を完全には明かさなかった。
 ラシェル自身が、一夏に少しでも近づくために基礎的な部分から自分を鍛えることを最重要視していた為に、他の兵装について詳しく知ることが出来なかったのである。
『でも、そういう戦いは何度も経験してきている。あなたはどうかしら?』
 イグニッションブーストでラシェルを間合いに入れた途端に、幻月で攻撃を仕掛ける。
『どうやら、機動性と加速性能では打鉄弐式の方が上手の様ね。』
 次々と繰り出される簪の連続攻撃で、僅かながらラシェルに隙が出来る。
「まずは一撃!」
「甘いわよ。」
 幻月の一撃は、ラシェルの前面に展開された力場に阻まれていた。
「肩部に、防御機構が。AICを応用して防御兵装として開発したのね。」
「ご名答。そして、こんなのもあるわよ。」
 肩部からビットが射出されるが、それぞれに鋭い刃がついていた。
「BTナイフ ラタトスク。どこまで防げるかしら?」
 ブルーティアーズを始めとする、各種ビット兵器を解析して開発したラタトスクが鋭い軌道を描いて、簪に迫る。
「防御用の兵装なら、こちらにもある。」
 簪は左手に雷切を持ち、巧みに防ぐ。
 通常の雷切は、小太刀の形状。
 そして、小太刀は攻撃よりも防御において、真価を発揮する。
 楯無の一族として、簪は小太刀を使った防御の鍛錬をみっちりと積んでいた。
 後は軌道を読んでしまえば、防ぐのは容易い。
「お見事ね。でも、防ぐだけでは状況を打開することはできないわよ。」
 ラタトスクで牽制しつつ、ラシェルはイチイバルでの射撃を追加する。
 曲輪である程度は防ぐが、ラタトスクを防ぎながらイチイバルをも防ぐとなると、さすがに簪もノーダメージとはいかなかった。

「性能的には、白式のデッドコピーなんですけど、他国のISのデータを可能な限り分析して開発した兵装を搭載している分、更識さんも苦戦しているようですね。」
「今はな。あのラタトスクとかいうのはそれなりに更識を苦しめるだろうが、それだけだな。」
 真耶の分析に、千冬がそう答える。

『そろそろいいわね。』
 雷切を拳銃モードにして、次々と撃墜していく。
「モードチェンジに備えて、データ収集をしていたと言う訳だ。さすがに無傷とはいかなかったがな。ルグローンもそれなりの手錬だからな。」
 モニターには、ライフルにモードチェンジした幻月と雷切の双方で間断なくダメージを与えられている、ラシェルの姿があった。

『この時をねらっていたのね。』
 エイワズで防いでいるが、AICをベースにしているだけに弱点である対象に意識を集中する必要があるために、そこを突かれてダメージが蓄積していく。

「AICを参考にした防御兵装は開発できても、弱点を克服することはできなかったというわけですね。」
「乗り手の習熟度にもよるがな。現に、今のボーデヴィッヒなら初期型のAICでもああはならん。エムブラは、ロールアウトしてからまだ日も浅い。訓練も足りなかったな。」
 特殊部隊出身でIS委員会直属のパイロットであるラシェルの実力は、当然水準よりずっと高い。
 だが、簪とて世の暗部を密かに処理してきた更識家に名を連ねる者。
 幼少の頃から、厳しい稽古を積んでいる。
 加えて、IS学園に所属する専用機持ちとして、セシリア達他国の専用機持ち達との訓練で腕を磨き合い、実力は格段に伸びている。
 その差も出ていた。
「もっとも、ルグローンとてこのままでは終わらんだろうよ。まだ切り札を隠している。」
「確かに。あれが出てくると、更識さんでも楽ではありませんね。」
 真耶と千冬は、現時点では簪が優勢と見ているがこのまま試合が終わるとは考えていなかった。

『予想以上に、手強い…。当主である更識楯無は頷けるけど、妹の方までここまでとは予想外だわ…。』
 エイワズで、簪の攻撃を防御しようとしても時間が立つ程、難しくなって不利になっていることに、ラシェルは最初の見積もりが甘かったことを悟っていた。
 フェンリルでの広域射撃も思った以上にダメージを与えることが出来ずに、逆に銀竹でダメージを受ける。
『あれを使うしかないわね。』
 ラシェルは、背部の大剣。ダインスレイヴを手にする。

『何?今になって出してきた以上は、只の大剣じゃないわね。』
 幻月を薙刀に戻して、呼吸を整える。
「はあっ!」
 振り下ろされたダインスレイヴを、簪は受け止める。
『さすがに、重い…。えっ…!?』
 あることに驚いた簪は、いったん距離を取る。
『稼働エネルギーが、減少している…。』
 ISは稼働エネルギーを基に各種兵装やスラスターを使用するが、ダインスレイヴを受け止める前と後で、稼働エネルギーに差が予想以上にあった。
 つまり、攻撃を受け止めた事で稼働エネルギーが、減少したということになる。
『零落白夜にヒントを得ているわね。まともに攻撃を受けたら、あっという間に形勢逆転になる…。』
「北欧神話に登場する魔剣から名づけられた、このダインスレイヴ。解っているでしょうけど、稼働エネルギーを奪うのよ。どこまで踏ん張れるかしらね!」
 フェンリルを収束モードと拡散モードで使い分け、機動領域を狭めて、イチイバルで足を止める。
 そこに、ダインスレイヴの攻撃が襲い掛かる。
 まともに攻撃を喰らえば、どれだけ稼働エネルギーが減少するか解らない。
 例え、受け止めてもエネルギーは減少する。
『このままだと、こっちが不利になる…。』
 可能な限り回避して、回避できない場合は幻月と曲輪で受け止めながら、簪は活路を見い出そうとする。
『いつまでも、回避と受けではいずれ限界が来る。なら…。』

「厄介だな。近接兵装で受け止めても、エネルギーは減少する。かと言って、回避がいつまでも続くとは思えん。ラシェルがそれを許す様な相手ではない。委員会の最新鋭ISの専任だけあって、腕はかなりの物だ。」
「そうだな。」
 ラウラと箒が簪とラシェルの戦いを見ながら、互いの意見を言う。
「一夏と手合わせした時は、相手にもならなかったから手の内が見えなかったけど、それが却ってこういう状況になるのは予想外だよ。」
「そうでもないさ。そろそろ終わる。」
 シャルロットに、一夏はそう言う。

 決定的な一撃を加えられないが、ラシェルは攻撃の手を緩めない。
 今のままでは、いずれ疲労が蓄積する。
 ラシェルは、それを狙っていた。
 簪は、それを悟っていた。
『なら、それを逆手に取る。』
 簪は、幻月を構えながら銀竹にデータを入力する。
「そろそろ、息切れし始めて来たかしら?なら、流れをこちらに引き寄せさせてもらうわ!」
 イグニッションブーストで、間合いを詰めて回避する暇もなく一気にエネルギーとシールドを削ろうとラシェルはダインスレイヴを振り下ろす。
 それを、簪が幻月で受け止める。
『今!!』
 銀竹が、上下左右後方からラシェルに迫る。
 だが、このコースは簪をも巻き込みかねないコースだった。
「な!?」
 レーザーと衝撃砲の一斉射を、ボクシングのラッシュのように受けたラシェルに、自らも攻撃を受けてダメージを受けた簪がいったん距離を取ってイグニッションブーストで幻月の一撃を加える。

「勝者。更識簪。」
「ふう。」
 軽く息を吐いて、ほっとしたような表情になる。
『初めての、2人っきりの、デート…。』
 シードの対戦は、次の試合が決勝戦となるので自動的に準優勝となる。
 そして、2年生は準優勝の生徒に一夏とのデートの権利が与えられる。
 さすがに、一夏に勝てるとは簪は思っていなかったが、それだけでも満足だった。
『でも…、できれば…、優勝したいな…。』
 優勝すれば、旅行の権利を手にすることが出来る。
 そうすれば、思いのたけを伝えて恋人同士になるのも夢ではない。
『がんばろう…!』
 簪の体に、力が湧き上がってくる。

 肉を切らせて、骨を断つ。か。
 リスクのある方法だったが、銀竹の高い誘導性能と去年改修した際に換装した改良型強化微細粒子複合装甲の防御力を活かして、勝ちを掴んだな。
 ラシェルは、もうちょっと強引に攻めた方が良かったな。
 例え受け止められても、稼働エネルギーは減少するんだからそれを積み重ねれば勝てた可能性はあったんだから。
 まあ、今回は実戦経験の差が出たな。
 簪も亡国企業との戦いで、実戦経験はたっぷり積んでいるからな。
 それで培われた、地力の差が出たな。
 さて。今度は、サファイア先輩とイスラエル製第二世代ISガラクスィヤを専用機持ちとする1組の準専用機持ちの人だ。
 ガラクスィヤは機動性と火力にも優れているが、防御力にも定評があるISだ。
 やり方しだいによっては、火力自慢のIS相手でも互角以上に渡り合えるポテンシャルを持つ。
 ただ、エインガナにサファイア先輩の組み合わせだからなあ…。

「勝者。フォルテ・サファイア。」
 う〜ん。やっぱりこうなったか…。
 エインガナは、同時期に開発したケイシー先輩のケルベロスと同様、第四世代ともやり合えるだけのスペックを持つからなあ…。
 おまけに、オーストラリア代表候補の中ではその実力は間違いなくトップ。
 ガラクスィヤもいい機体だけど、こうなっちゃったか…。
 さて、これで全学年とも第1試合は終了。
 少し休憩を挟んで、第2試合だ。
 今の所、亡国企業の襲撃も無し。
 このままで、いて欲しいもんだ。

後書き
いよいよクラス対抗戦の開幕です。
去年は、ゴーレムの襲来で一夏と鈴の試合のみでろくに試合が行われませんでしたが、今回は一夏が入念に警備態勢を敷いてのクラス対抗戦です。
まずは、勝てば決勝戦直行のシード戦。
1年生は蘭とシャーリーの試合。
アサルトキャットの突破力を活かして蹴散らそうとするシャーリーに対して、蘭は沈着冷静に戦いを進めて決勝へ駒を進めます。
一方、簪はIS委員会直属の研究所で開発されたISを専用機とするラシェルとの戦い。
白式の第二形態と各国のISの研究結果を盛り込んだエムブラの各種兵装と、特殊兵装のダインスレイブに苦しめられながらも、肉を切らせて骨を断つで勝利。
3年生は、順当勝ちです。
ちなみにダインスレイブの元ネタは、乾電池の自然放電です。
よくあることですが、使わないままの乾電池は自然と電気を放出してしまいます。
これをヒントにしました。
そして、北欧神話に登場する、一度鞘から抜かれたら相手の生き血を浴びて完全に吸うまで鞘には収まらない伝説の魔剣ダインスレイブから名づけました。
次からは、準決勝に駒を進めるための戦いが始まります。
一夏との甘いデートの権利を得るのは、誰でしょうか?
そして、一夏は生き残ることが出来るのでしょうか(笑)。










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