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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第100話 宴の終わり

<<   作成日時 : 2014/05/03 23:59   >>

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 より完成度が、高くなっているってところか…。
 日光浴をしたら、体組織の解析がだいぶ難しくなっていたな。
 指揮官の方は、誰なんだか見当もつかない。
 身分を示す公式記録は、どこにもない。
 指紋にしても、FBIにも国家記録保管所にも登録は無し。
 歯の治療跡から探してみようとしたけど、それも駄目。
 何もかもを、完璧に抹消されている。
 まさに、ジョン・ドゥ。
 身元不明の死体だ。
 これ以上ないくらいのな…。
 分析結果の整理と身元照合の報告書に目を通し終えて、俺は溜息をついてクリームと砂糖をたっぷり入れたコーヒーを飲む。
 早く決着つけないと、冗談抜きでヤバいぜ。
 こんなのが、夜になるたびに襲撃して来るんじゃいずれ一般市民に知られてパニックになる。
 とにかく、製造工場を突き止めないとな。

「電力消費量や運び込まれた施設から、大分絞り込みは進んだよ。そっちはどうだい?」
 CIA本部近くの公園で、一夏はロバートと会っていた。
「指揮官の身元が解らない。これ以上ない程、身元確認の手掛かりがきれいさっぱり消されている。他にも抱えているだろうな。何度も襲撃されたら、こっちは堪らないよ。幸い、今回は先手を取れたけどな。」
「連中も、自分たちの尻尾を掴まれるドジは踏まないさ。とにかく、こっちも急ぐ。一夏は関わっていそうな企業の目星をつけられそうなら、つけてくれ。」
「解った。何とかやってみる。」
 2人は、別れた。

 つってもなあ…。
 こういうのになると、医学研究所なんだろうけどクローン技術は違法だから研究している場所なんてあるとは常識的に考えられない。
 秘密裏にやっている場所はあるかもしれないけど、知られないように最新の注意を払っている筈だ。
 ん?まてよ…。
 クローンはNGでも、再生医療を研究している所なら成果を応用できるかもな。
 その方面から、探すか…。
 範囲は広いけどな。

「襲撃は失敗したな。」
「身元は割れません。我々には、気づきませんよ。」
 複数の男性の中で、1人だけ余裕を見せる者がいる。
「あの孺子を舐めるのも、大概にしておく事だ。それなりの地位があるとはいえ、広大な情報網を形成した手腕とそこから我々をじりじりと追い詰めている才覚は間違いなく脅威だ。」
 男性の1人が、楽観論に釘を刺す。
「公式記録は、全て消去してあります。兵士たちは、どの国の国民でもありません。手詰まりになりますよ。」
 そう言って、葉巻を燻らせる。

「そうですか…。やはり尋問は無理でしたか。」
「こちらの問いかけに、一切反応がありません。検死解剖の結果の通りでしたよ。」
 本部に戻って、尋問担当官から話を聞いた俺は予想していた結果を確認して肩を落としたくなるのを必死に堪えた。
 検死解剖をした結果解ったんだが、視床下部と側頭葉の一部の機能がほとんど無いに等しかった。
 この部分は、感情や会話を司る部分だ。
 つまり、コミュニケーションを取ること自体無理だって事だ。
 MKウルトラを応用して戦闘技術を学習させて、命令を刷り込ませる。
 こんな所だろう。
「ご苦労様。休んでください。」
 俺は、あてがわれた部屋に戻った。
 こうなったら、関連しそうな研究所とそこへの金の流れ。
 関係がありそうな人物から、割り出せるだけ割り出す。
 製造工場は、向こうに任せよう。

「一夏。少し、休め。昨日から、一睡もしていないだろう。しかも、トレーニングはいつも通り。体が持たないぞ。」
 ラウラが、休むように話しかけてくる。
「そうも言ってられないさ。1秒でも早く突き止めないと、また襲撃がある。その前に、突き止めないとな。」
 俺は、再生医療や遺伝子工学等の論文のチェックに、関連企業や研究所の情報に目を通し始める。
「いいから。10分でもいい。仮眠を取れ。さっき、教官から連絡があってな。とにかく、休みはきちんと取らせろと伝言があった。聞かないようなら、連絡しろとも言っていたぞ。」
 千冬姉からかよ…。
「解った。その代り、10分経ったら必ず起こしてくれよ。」
 俺は、休憩用の簡易ベッドに横になる。

『眠れないな…。』
 目を閉じていても、一夏の頭は思考を止めない。
 ビジネスを通じて頭の中に構成された、再生医療や遺伝子工学に関連する企業や研究所や目を通した論文のデータベース。
 そして、情報網からの金銭の流れを基に真相を究明しようとする。
 襲撃を防ぎ、その場の情報戦では優位に立っているが、総合的に見れば亡国企業との差は大きい。
『もっと、範囲を広げろ。可能性を限定したら却って見過ごす。』
 一夏はさらに思考して、気づいたら10分が経過していた。
『こんな状況で、休むなんて無理だよ。千冬姉…。』
 濃いブラックのコーヒーを飲んで、一夏は場所の割り出しに掛かる。

「そうか。解った。定期的に休ませてくれ。横になるだけでも、多少は違うだろう。」
「どうでした?織斑君。」
 ラウラとの通信を終えた千冬に、真耶が心配そうに訊ねる。
「体の事はお構いなし。ひたすら仕事に没頭しているそうだ。あの馬鹿者。真面目な面が最悪な方に出ている。とりあえず、定期的に横にさせるように言った。楯無。そちらの調査はどうだ?」
「関連があるかどうかは解りませんが、定期的に政財界の大物が各地の高級ホテルのロイヤルスウィートや保養地に集まっているらしいとの情報を確認しました。それから…。」
「それから…?」
 気になった千冬が、先を促す。
「別に、様々な面で情報収集をしているグループがあるようです。詳細は不明ですが、亡国企業ともアメリカ政府とも違うようです。」
「ふむ…。一夏に何か関係しているのかもしれんな。あるいは、インターポールやイギリスとは別の情報網か…。更識でも詳細が掴めないとなると、相当な物だな。一夏の周辺警護は?」
「既に、人数を増やしています。抜かりはありません。」
「よし。場合によっては、お前も現地に飛んでもらう。準備はしておいてくれ。」
「解りました。」

「政財界の大物の集まり?」
「ああ。」
 昼食の後、一夏はロバートと会っていた。
「ジェントルメンズ・クラブみたいな?」
「表面上はね。だが、頻繁に場所を変えているのは怪しいとしか言いようがない。違うかい?」
「確かにな。」
 ジェントルメンズ・クラブは、各界の名士を会員とするクラブで会場はクラブごとに決まっている。
 一番多いのはイギリスだけど、アメリカにもないことはない。
「今回の事で、奇妙なことが解った。拠点の絞り込みをしていたらね。」
「俺の方でも、ようやく絞り込めたよ。偶然にも俺が知っている企業さ。以前、会社に業務提携を提案してきた企業。」
 さすがに疲れたぜ。
 大量にスクリプトを組んで、一斉に洗い出しをさせてやっと判明したからな。
「ひょっとして、FFC。フューチャー・ファーマーズ・カンパニーって名の会社じゃないかい?」
「よく解ったな。」
「条件に一番あてはまる会社があったと思ったら、それだったのさ。最近、急速に規模を拡大している、様々な新種の農作物の研究をしている企業。当然、遺伝子組み換え野菜の研究もしている。それを隠れ蓑にしているんだろうね。」
 まさか、どっちも同じ結論に辿り着くとはな。
 こういう偶然て、あるんだな。

「FFCなんだが、以前に大規模な実験施設を作ったのを知っているかい?」
「コロラドにだろ?業界じゃ、多種多様な農作物の新種を開発して、海外に大きく進出するって、もっぱらの噂だよ。日本でも、農協がピリピリしているらしいな。…。成程。そういう事か…。」
 ビジネス関係の噂に、気を取られ過ぎたかな。
 もう少し早く、気付けたはずなのに…。
「詳細はその中だ。」
 ロバートが、USBメモリーをさりげなく差し出す。
「ありがとう。助かったよ。大物連中は、アスペンか。富豪の保養地だしな。」
「そういう事だ。じゃあ。」
 よし、早速最終確認だ。

「中々、豪華な面子だな。」
 腕を組んだラウラが、ディスプレイに映った面子を見て言う。
「まあな。政財界の大物がずらり。しかも、幾つかの迂回ルートを通じて援助をしている。株や社債以外にな。」
 どこをどう考えても、怪しすぎる。
 コロラドの工場そのものは、正規の融資を得て建設されているがその他に使い道の解らない金の流れがあちこちから来ている。
 しかも、工場から辿って行くとお偉方に辿り着く。
 何らかの計画に手を染めていると考えるのが、自然だ。
 それに、密かに購入された大量の自家発電機。
 規模としては、ちょっとした発電所並みだ。
 何らかの設備の動力源として使っているのは、明白だ。
 これなら、通常支払っている電気代からは表ざたになっていない設備の運営も知られにくい。
 決め手は、各種の薬物。
 どう考えても、農作物の新種の研究に使うとは思えない。
 中には、入手には厳しい制限があるのも多い。
 無論、非公式ルートだから完全に違法だ。
 これで、研究所を抑える根拠は十分に揃った。
 問題は、パトロン連中の方だな。
 いざという時の逃げる算段は、さすがにしているだろう。
 さて、どうするか…。
 研究所の方も、無防備とは言えないだろうしな…。

 情報の解析が終了した後、俺達は今後の対応を協議した。
「研究者、パトロン連中。双方とも抑えたい以上、分けて行動するしかないでしょうな。必然的にそうなります。」
「いえ。まずは、パトロン連中に逃げる暇を与えないで、拘束。これだけ証拠が揃えば、拘束の根拠になりえます。何らかの形で、研究所にこちらの手が入ることが知れたら、速やかに逃亡する事は明白です。」
 研究所の方は、気づかれずに包囲しておくだけでもいい。
 こちらには、それが可能なスキルの持ち主が大勢いるしな。
 アンダーテイカーは、秘密部隊。
 NSCの中でも知るのは極僅かだし、動かす権限を持つのはさらに少ない。
 極秘裏に動くのは、問題ないだろう。
「お二方の移動の手配は、こちらがいたします。」
「お手数をお掛けします。トンプソン課長。」
「いや。これくらいは当然です。よろしくお願いします。」
 さて、最後の仕上げと行くか。
 これで、アメリカから亡国企業を叩きだしてやる。

「そうか。解った。気をつけろよ。」
 千冬は通話を切り、外を見る。
『終幕が始まるか…。近いうちに、貴様に辿り着いてやる…。首を洗って待っていろよ。ジェームズ・グレイ…!』
 アメリカに巣食う亡国企業と繋がりのある人物の掃討の最終段階に入った事を知らされて、千冬は亡国企業との戦いが終盤に入った事を悟り、ジェームズ・グレイへの復讐心を燃やしていた。

「どうする?悠長に構えていたら、身の破滅だぞ。」
「しばらく、会合を慎んだ方がよいだろうな。」
「逆に、怪しまれはせんか?」
 アスペンの高級ホテルのロイヤルスウィートで、男性たちは今後の対応を協議していた。
「各機関の少数派を潰せなかったのが原因ではあるが、逆転のチャンスはあります。段取りに時間はかかりますが…。」
「何かね?」
「ホワイトハウスのオーナーの、首のすげ替えです。この国では、さほどめずらしくもありません。しばらくは話題になっても、やがて風化する。」
 最年少の男が、葉巻の紫煙を燻らせながら提案する。
「副大統領は清廉潔白とは言えんし、隠しているが愛人もいる。たしかにつけこめるだろうが、その後の経費がかかり過ぎるぞ。」
 男性の1人が、大統領暗殺後の事を話題にする。
「勢力図を一気に塗り替えるコストだと思えば、さほどでもありますまい。」
 他の男性たちが、考え始める。
「それで行こう。ただちに、準備に…。」
 その時、扉が蹴破られた。
 そして、一夏がHK454CTを片手で構える。

「何を企んでいるか知らないがな。ここで、ゲームオーバーだぜ。」
 おお。おお。揃いも揃って、大物ばかりかよ。
 しかも雰囲気から考えると、相当にろくでもないことを企んでいそうだな。
「貴様…。織斑一夏…。CIAの本部にいるはずだぞ…。」
 CIA内の情報網から、俺はいないと踏んでいたか。
 うまくだませたぜ。
「世の中には、騙される間抜けがいるからな。お前たちみたいな。お蔭で奇襲成功だ。」
「既に、包囲されている。観念しろ。」
 ダットサイト付きのMP7A1を手にしたラウラが、入ってくる。
「ついでに言っておくと、お前らが何かしでかそうとしても無駄だぜ。そういう風に手配しているからな。」
 この連中について調べるとともに、何か事を起こす場合の命令系統の調査も同時に行って、密かにメンバーを拘束する手筈を整えていた。
 頭脳と手足を、同時に制圧。
 これで、アメリカに巣食っている連中は揃って刑務所行きだ。
 後は、研究所を潰すだけだな。
「後は、頼みます。」
 別件で逮捕状を取り、地元のSWATを率いてきたトンプソン課長に引き継ぎを頼むと、待機していたアンダーテイカーと共に郊外のFFCの研究所を目指す。

「出入り口は、全て固めた。いつでも行ける。」
「OK。」
 俺達は、最後の目標であるFCCの研究所を密かに包囲していた。
『ヘッドクォーターより、アルファリーダーヘ。こちらの準備は完了。』
『アルファリーダー了解。こちらも準備よし。』
『ヘッドクォーター了解。こちらが、強制捜査に入り次第、作戦に入られたし。』
『アルファリーダー了解。』
 トンプソン課長と最後の打ち合わせを終了して、通信を終える。

「狭い荷箱の中で我慢して、ここまで来たんだ。終わらせたいものだな。」
「終わらせるさ。俺だって、二度も三度もこんな手段は使いたくないよ。」
 ラウラの言葉に、俺は苦笑する。
 ここに来るのに、俺達は荷物に紛れるという手段を使用した。
 顔が割れてるから、変装してもばれちまうからな。
 向こうは、頭が切れる。
 そういう相手には、こういう下らない手が有効だ。
 頭が切れる相手は、相手の手の内を高度な次元で考えるからな。
 まさか、こんな漫画じみた方法を使うとは思わないもんだ。
 にしても、体が痛かったな。
 なるべく、この手は使いたくないな。
 お世辞にも、道中は快適だとは言えなかったし。

「NSCだ。テロ容疑で、強制捜査に入る。全員。研究所から出るな。」
 始まったか。
 状況は、リアルタイムで送られてくる。
 普通の警備員に、事務員。清掃員。その他諸々。
 研究者にしても、怪しい所は無いな。
 本命は、この異常にセキュリティの高いエリアか。
 入手した研究所のマップを見ながら、俺は作戦を決める。
『アルファリーダーより、オールアルファ。目標は最もセキュリティの高いエリアだ。中に入るのは、手間がかかるだろう。セキュリティの解除に時間がかかると判断した場合、破壊しろ。C4及びバレットの使用も許可する。状況開始。』
『『『了解。』』』
 さて、鬼が出るか蛇が出るか…。

「SWATが制圧した後とはいえ、拍子抜けするほどの無防備さだな。一夏。」
「そうだな。ちょっと、気になるか…。」
 途中、警備兵がいたが大したことは無かった。
 セキュリティはそれなりに高度だったけど、開けられない程じゃなかった。
 これが、連中がひた隠しにしている物を守っていた物なら拍子抜けもいい所だ。
 ゴールに、何かいそうな気がするな…。
 最後に、派手なドンパチがまってるかな…?

「ここが、最後の扉の様です。サー。」
「だな。」
 俺は、セキュリティの解除に掛かる。
 開いた。
 さて、何が待っているやら…。
 って、おい…、待てよ…。

 そこにあったのは、成長中の人間のような物に、薬剤を投与されて学習装置らしきものに収められた成長した人間のような物。
 そして、多くのスーパーコンピューター。
 各種実験設備。
 科学者のモラルを、冒涜しつくした場所。
 表現するとすれば、こんな所か…。
 と、いうよりこれしかない…。
「一夏…。これは…。」
「大当たりを引いたな…。データは片っ端から吸い出すぞ…。」
 その時、待機状態の白式が何かを探知する。
 スキャンした結果を網膜投影する様に設定してから、近くを見る。
「バレットを。」
「は?イエス・サー。」
 渡されると、すぐに狙いを定めて発砲する。
 轟音と共に、バレット M82A1から12.7mmNATO弾が発射される。
 が、何かの金属に衝突したような音がした途端に、弾丸が跳ね返される。
「これは…、一体…。」
 隊員が驚いていると、見えなかったものが見えるようになる。
 6体ほどの、全高3m程の人型に近い機動兵器。
 大きな腕と、人とさほど変わらない程度の腕がそれぞれ2本ずつ。
 大きな腕には、大型の機関砲。
 小型の腕には、重機関銃を装備している。
 対物と対人の二段構えか…。
「総員退避。今の装備では、あれには歯が立たない。こちらで何とかする。」
 あんなのを相手にしていたら、死体の山が出来る。
「急げ!命令だ!!俺達なら、大丈夫だ!!」
 強い口調で言って、退避させる。
「とっとと仕留めるぞ。ラウラ。動力源を潰して戦闘不能にする。」
「押収する筈だったものはどうする。向こうが攻撃してくれば…。」
 ここにある物は、今の亡国企業が進めている計画を知るための貴重な資料だ。
 できれば、全て押収したい。
「ある程度で、我慢するしかない。スーパーコンピューターは死守だけどな。」
 俺は、以前に作った大型アサルトライフルを実体化させる。
 通常のアサルトライフルや拳銃では対処できない場合に備えて、開発したものだ。
 ラウラは、シュヴァルツェア・レーゲンの右腕を実体化させる。
 俺達が戦闘態勢を整えたと見た機動兵器は、大型機関砲と重機関銃を撃ちまくる。
 発射音から、25mm弾と7.62mmNATO弾か。
 退避させて正解だったな。
「効かん!」
 ラウラがAICで、弾幕を停止させる。
 最近使ってなかったから、存在を忘れかけてたぜ。
「一夏!今の内に!」
「任せろ!」
 ハイパーセンサーにサーチさせて、俺は動力源の位置を特定してプラズマ砲で破壊する。
 これで、やっと終わりか。
 あとは、この玩具だな。
 いろいろ調べることが、ある気がする。

「そうか。演習参加は中止か。解った。準備は整えておく。」
「終わりました?」
「あらかたな…。後始末をしてから、日本に帰国だ。」
「コールドレスポンスへの参加は取りやめという事は、こちらでないと調べられない事ができた。そういう事ですね。」
「ああ…。それに…。」
「織斑君が、精神的にかなり参っている…。そういう事ですね…。」
「顔にも口にも出さんがな…。あの馬鹿者…。少しは、他人に相談するようになったが、肝心なところはいつも自分で背負いこもうとする…。」
 千冬の顔を見た真耶は、嘗て、白式が第五世代への改修後に第四形態移行を経た時の事を思い出していた。
 あまりにも、重すぎる事実。
 それに押しつぶされまいと、自分だけの力で何とかしようとした一夏。
 見ている周囲も、手をどう差し伸べていいのか解らなかった。
 またあの時のような事態になるのは、絶対に避けたい。
 真耶は、切にそう思った。

 CIA本部に戻ってから、一夏はアメリカ政財界の大物の中にいた亡国企業の幹部を尋問した。
 最初は貝のように口を閉じていたが、一夏が“気”を僅かににじませると恐れをなして聞いてもいない事まで喋り始めた。
「最後に一つ聞いておくぜ。何で、こんな事しやがった?」
「いずれ解る。簡単に言うとすれば、我々のやっていることは人の業その物。我々がやっていなければ、他の連中がやっていただろう。」
「俺には理解できないし、したくもない。1つ言えることは、お前らは刑務所の中で、ミイラになるまで過ごすって事だけだ。」
 尋問室を出る前に、一夏はそう言った。

 その後、一夏はロバートと会っていた。
「大方、片付いたよ。これで、こっちの選択肢も増える。ありがたいぜ。」
「こちらも助かったよ。君なしじゃ、こんなに早くこの国に巣食う害虫を駆除できなかったからね。」
「ロバート達にも、随分助けてもらったさ。で、これからどうするんだ?偶に虫は出るだろうが、専門の駆除業者で問題ないと思うけどな。」
 これ以上、危険な真似はやめろと一夏は暗に言う。
「ある意味、ここからが正念場だよ。駆除業者がきちんと仕事をやるかどうか。外来種の監視とかね。」
 それを聞いた一夏は、ロバート達の今後の活動内容を悟った。
「それについては、おいおい話し合う時間を作るよ。こっちはまだやり残した仕事があるし、帰国してもしばらくは忙しい。入学式もあるしな。」
「そうか。大変だな。体には、気をつけろよ。来月号は楽しめるぞ。」
「じゃあ、楽しみにしている。」
 2人は別れて、一夏はやり残した仕事を終えて2日後に帰国した。

「ご苦労だったな。一夏。」
「お疲れ様でした。織斑君。」
「これ。目を通しておいてください。楯無さん。俺がいなかった間の、生徒会業務の説明をお願いします。」
 どこか感情を欠いた口調の一夏を見て、全員報告書に何が書いてあるかを凡そ理解した。
 一夏が、関係していることを…。

 生徒会業務の説明を終えた楯無を加えて、一夏が別の調査を行っている間、報告書を読んだ千冬達は愕然とした。
「酷い…。どこまで、一夏君の生体情報を利用すれば…。」
「やってくれるものだな…。あの大真面目のことだ。自分の罪だと思い込んでいるだろう。」
 真耶は、どこまでも一夏の心を傷つける亡国企業のやり口に言葉が出なかった。
 千冬は、怒りを必死に抑え込んでいた…。
「今見ても、反吐が出る…!」
 ラウラは事前に知っていたとはいえ、平常心ではいられなかった。
「そうね…。本当に…。」
『一夏君が心配だわ…。さすがにここまで来ると、人には到底話せない…。心が砕け散りそうになるのを必死に堪えている筈…。たった、1人で…。』
 調査をしている一夏の心中を思うと、楯無は気が気でいられなかった。

 あの玩具。
 EOSの技術をベースにゴーレムの技術を取り入れて高性能化したのは、アメリカで調べて判明した。
 ただ、有人機と無人機の2種類の内の無人機の中枢部分の技術は、アメリカで調べるのはまずいと思ってこっちに持ってきたが、正解だったな。
 ジェームズ・グレイの奴。大分、理想に近づいてきている。
 一つ、理解できないのは、無人機の中枢部の開発データだ。
 ゴーレムシリーズのデータが使われているのは間違いないが、それだけじゃ説明がつかない。
 何しろ、使用されている部品もナノマシンも特殊な物ばかりだ。
 しかも、生体に近い。
 どこから、データを調達したんだ…?

 待てよ…。そういう事か…。
 亡国企業も、かなりごたごたしてるって事だな。
 いずれにせよ。アメリカでの悪趣味なパーティーは終わりだ。
 ここから、さらに追い詰めさせてもらうぜ。

「アメリカが抑えられたわ。つながりのある人間に、幹部も全員逮捕。別件でまもなく裁判が開始される。ラボも徹底的に調査されて、IS委員会にかなりの情報が行っているわね。」
 ケートスの食堂で、高級フランス料理を口にしながらスコールはアメリカでの事を話題にする。
「軽率な行動に出ればどうなるか、上申はしておいたが。聞く耳を持たずに、潰されたか。織斑一夏を、甘く見た報いだな。それにしても、奴が自らの手を汚す事を厭わぬようになったのはかなり厄介だぞ。今以上に、積極的に動くだろうな。」
 エムが、溜息をつく。
「できれば、ISがもう一体欲しいわね。ディースは十分戦力になるけれど、相手の事を考えると、ISが2機しかないのは痛いわ。」
 スノーが、考え込む。
「それなら、心配ないわ。今まで隠していたけど、コアだけならあるのよ。1個だけ。私達の手元にあるのは、委員会も、織斑一夏も、そして織斑千冬でも知らないわ。さすがに、篠ノ之束はもう気づくでしょうけど。間もなく、機体はロールアウトする。スノーの専用機よ。」
「助かるわ。これで、復讐も出来るし。」
 思いもよらぬ事実にスノーは驚くが、同時にこれ以上ない喜びを感じていた。

「成程…。ジェームズ・グレイがそこまで進めていたか。」
 調査を終えて作成した報告書を見た千冬姉は、酢を飲んだような表情になっていた。
「問題はそれだけじゃない。有人機があったって事だ。」
「どういう事ですか?」
「搭乗するのに、性別が関係ないんですよ。こう言えば、解りますよね?」
「ISやゴーレム程じゃなくても、類似の機動兵器の量産が可能になる。しかも男性が登場できる。」
 山田先生が、事の重大さを認識する。
「ISには、量産が出来ないという致命的な弱点がある。数次第では劣勢になりますね。」
 形勢逆転と書かれた扇子を広げて、楯無さんが考え込む。
「委員会には、私が報告しておく。一夏は今日は休め。明日からは、大型護衛艦と空中戦艦の建造の視察だろう。疲れを残すな。」
 重い空気を察した千冬は、一旦切り上げて一夏を休ませることにした。
「解った。」
 俺は、家に戻ることにした。
 護衛として、ラウラと楯無さんがつく。

 夜。明日の視察に備えて、俺は資料に目を通していた。
 うん。
 大分、進んでいるな。
 まだ進水とはいかないけど、船体の進捗率は思ったよりいい。
 HEGが、大分役に立っているか。
 各種レーダーや、指揮戦闘システムの生産も順調だな。

「何時まで、起きているつもりだ?馬鹿者。疲れを残すなと言っただろう。」
 パジャマに着替えた千冬姉が、腰に手を当てて俺を見る。
「仮眠は取ったよ。よし、これで終わり。もう寝るから。大丈夫だって。」
 そう言って俺がベッドに入ろうとすると、千冬姉まで入ってくる。
 どういう事だ?
「監視だ。この分では、普段まともな睡眠を摂るかどうか解らんからな。」
 勘弁してくれよ…。
 とりあえず。寝よう。

 静かに寝息を立てる一夏の寝顔を、千冬は黙って見ていた。
『少しは、疲れがとれるといいが…。』
 この場合の疲れは、精神面だ。
 アメリカ政府の要人を狙った連続暗殺事件の犯人である兵士たちが、一夏の生体データを利用したディースのパイロットの開発を流用した産物であったことが如何に精神的にダメージを与えているかは、千冬は考えなくても理解できる。
 何とか負担を軽くしてやりたいが、高度な専門知識を活用しての分析が不可欠なので結局は一夏の負担は増す一方だ。
 その事に、千冬はこれ以上ない罪悪感を感じていた。
『今は、ゆっくり休め…。せめて、悪夢からは私が守る…。』
 額に優しくキスをして、千冬も眠りにつく。

後書き
アメリカ編の完結にして、二次創作においての私の未知の領域たる100話の終了でもあります。
ここまで話が広がるとは、正直思いませんでした。
原作では、亡国企業の正体が相変わらず解らずじまいですし、他にも一夏がISを動かせる理由も不明のまま。
それで私なりに設定を作って執筆をしたら、ここまで話が大きくなりました。
只々、驚いています。
さて、アメリカの亡国企業が潰れたと言っても、まだまだやる事は山積み。
そして、今回の事でも一夏には衝撃の事実が…。
亡国企業の完全な壊滅まで、まだ時間がかかりそうです、そして一夏が胸に秘める思いが明かされるのも…。






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