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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第97話 もう1人のブリュンヒルデ

<<   作成日時 : 2014/04/12 23:58   >>

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「さすがですわね。ラウラさん。でも、機動力が第三世代の標準では今の私を捉えるのは難しいのではなくて?」
 セシリアが自分を狙ってのラウラの長距離射撃を、軽々と回避する。
「ふん。解っている。シャルロット!」
「OK!」
 フロワ・アンジュ・デシュで弾幕を張り牽制しつつ、サント・シュバリーズでシャルロットがセシリアに攻撃を仕掛ける。
 射撃のセンスなら、シャルロットは俺を除いた1年の中では間違いなくトップ。
 単機でも広範囲に的確に弾幕を張られて、箒たちも一旦引かざるをえない。
「簪。シャルロットを援護。クリスと玲子は、側面から。蘭は玲子を。シャーリーはクリスを援護だ。」
 ナースホルンとホルニッセを発射しながら、ラウラは指示を出して包囲網を形成しようとする。
「そうはいきませんわよ。鈴さん、箒さん。側面からの楔を防いでください。レイラさんは箒さんと。コリーナさんは高機動ユニットで鈴さんとそれぞれ連携してください。アンナさんは弾幕を。シルヴィさんは簪さんを牽制してください。私は引き続き狙撃に専念します。」
 セシリアは指示を出しながら、狙撃の基本であるショットアンドムーブでラウラにダメージを与えようとする。
 のほほんさんは、アンナとシルヴィの支援か。
 双方打ち負かされるわけにはいかないから、こういう時にのほほんさんに動かれるのは嫌だよな。

「指揮のスピードはボーデヴィッヒさんが上ですけど、オルコットさんはそれを踏まえて布仏さんに自由に判断して動いて貰って埋め合わせをしていますね。前衛はほぼ互角ですか。」
「側面もな。高機動ユニットに換装したアルパクティコは、機動力では第三世代にもそう見劣りはしない。やや火力不足だが、それは鳳が補っている。ルミ・リタリは元々高機動戦闘に主眼を置いたISだ。防御力が弱点ではあるが、篠ノ之がよく見ている。腕を上げたな。次の一手をいかに打つかで戦局が変わる。」
 指揮官としての能力ではラウラが勝っているが、機動性を活かしながら狙撃ポイントを変えて攻撃するセシリアは目障りである。
 しかも、指揮官としての経験では劣っているのを自覚してから、セシリアはその差を埋めようと努力を惜しまなかった。
 まだ劣るとはいえ、ラウラはセシリアに自由に動かれないようにするにはどうすればいいかを考えざるをえない。
 それが、ラウラの指揮能力を若干ではあるが落としている。
『焦るな…。焦ればつけこまれる…。』
 指揮しつつ、ラウラはセシリア対策を考えていた。

 ラウラ、手こずってるな。
 パンツァー・カノーニアよりは機動性が向上しているけど、第三世代の標準水準だと今のブルーティアーズの相手はキツイからな。
 AICはセシリア、シルヴィ、アンナがハイパーセンサーを駆使して対応しているのでタイミングがうまくつかめていないみたいだな。
 ブルーティアーズのハイパーセンサーの形状が変化していことから、AIC感知に特化したシステムを搭載している可能性は相当に高いだろうな。
 これだと、シュヴァルツェア・レーゲンの本来の戦い方がほとんどできない。
 これは、キツいな。
 にしても、ちょっと正攻法すぎないか?
 少し冒険した方が、逆に状況を打開できるぜ。
 まあ。ぼちぼち気づくだろうけど。

『全員、相手との距離を詰めろ。』
『でも、混戦状態になったらラウラが自由に動けなくなって、セシリアに振り回された挙句の狙い撃ちにされるよ?』
 ラウラの指示に、シャルロットが疑問を投げかける。
『このままでは、埒が明かん。リスクはあるが、近中距離戦に持ち込む。』
 ラウラのチームが一気に前線を押し上げて、攻撃を強化する。

「箒さん達は、前衛に合流。守りを固めて下さい。牽制は、私が引き受けます。」
「OK。」
「解った。」
 あ。ミスった。
 そうするとな。

「ちょっと〜。そう来るの〜?」
 防御兵装であるスヴァリンを、白兵戦の打撃兵装代わりにしてのほほんさんに隙を作るとシュペヒトで攻撃を加える。
「貴様は引っ込んでいろ!」
 シュベルト・プファイル・ツヴァイのプラズマブレードで、ダメージを与える。
 その後は、スヴァリンとベスティエで牽制することに専念する。
「ミスを犯したな。セシリア。他のメンバーと離れたのが、命取りだ!」
 ホルニッセとシュベルト・プファイル・ツヴァイで、セシリアを狙う。
 セシリアも、そう簡単にはやられない。
 ブルーティアーズとテンペストでホルニッセを撃ち落としながら、サンクチュアリでガードする。
「今のお前が私より優位な点を、忘れたな。」
 シャープファングで隙を作り、ナースホルンでセシリアにダメージを与えつつ、ラウラが迫る。
 セシリアが犯した、ミス。
 それは、他のメンバーと離れすぎた事だ。
 後方からの支援・牽制に徹するなら、箒たちとの距離を常に一定に保ちつつ相互支援が可能にしておくことを忘れるべきじゃなかったな。
 前衛に戦力を集中し過ぎて、1人ぼっちになったらラウラがそれを見逃すはずがない。
 機動力では劣るが、射撃精度ではむしろ今のラウラの方が上だ。
 砲撃戦を重視したパンツァー・カノーニアを発展させた追加兵装パックである以上、FCSやハイパーセンサーの性能が上がっているのは、自明の理だ。
 加えて、距離を詰められた結果、中距離兵装を使いやすくなった。
 おまけに、トランスパレンスパンツァーがあるから強引な戦い方もできる。
 ヤークトフントでセシリアの攻撃を巧みに封じて、全兵装を最大限に活かしてラウラがセシリアを下す。

「セシリアが負けたからって、簡単にはひかないわよ。玲子。」
「でしょうね。」
 側面から攻め込んだ玲子を、鈴が迎撃する。
「援護します。」
 竜神と輪舞で蘭が、鈴を狙う。
「その程度で、この私をどうにかできると思っているの?甘いわね。蘭。」
 光雷の偏向射撃が加わるが、鈴は軽々と回避する。
「本番は、ここからです。」
 片方の光雷を拡張領域に格納すると、何かを手にするような動作で鈴に振り下ろす。
「玲子さん。回避してください。」
「解った。」
 回避した瞬間、蘭の強烈な一撃が甲龍のシールドエネルギーを大きく削る。
「何よ!それ!?」
「瑞鶴の奥の手ですよ。そう簡単には回避できませんよ。」

 やっぱり使ったか。
 空間を圧縮して、任意の白兵戦兵装を形成するワンオフアビリティ「夢鏡」。
 震壊と並ぶ、瑞鶴のワンオフアビリティだ。
 原理は、衝撃砲と変わらない。
 ただ、夢鏡は任意の兵装を形成するので、間合いが掴みにくい。
 上手く使えば、相手を精神的に著しく疲労させる事が出来る。
「ほう。中々、面白い物を作ったな。鳳が少々消極的になり始めたぞ。」
「間合いを計れませんから。当然でしょうね。あの分ですと、瞬時に別の兵装も作れそうですし。」
「ええ。でも、相手の動きから攻め方を予想することは出来ますよ。それができれば、状況は違うでしょうね。」
「それができるのは、相当な実力者ですよ。鳳さんも出来なくはないでしょうけど、2対1だと大変でしょうね。」
「他の1年も善戦しているな。だが、そろそろ決着が着く。」
 千冬姉の言葉の意味を、俺に山田先生、ブッフバルト先生は正確に理解していた。
 セシリアを下したラウラが、目標を箒たちに変更する。
 そして、箒たちを後方から確実に追い詰めていく。
 やがて、挟み撃ちにあった箒たちは敗北した。
 尤も、シャルロット達のダメージも凄いけどな。
 はっきり言って、乱打戦。
 セシリアのミスがあったとは言え、個々のスキルで箒たちは見事に補っていた。
 全員、成長したな。本当に。

「ボーデヴィッヒのチームの勝ちだ。オルコットは、少々冷静さが欠けていたな。織斑。お前なら、ボーデヴィッヒにどう対応した?」
「基本的に支援・牽制に徹していましたが、前衛に戦力を集め過ぎずに引きつけながら両側面を脅かし、徐々に力を削ぎ落しつつ焦りを招かせて、最後に全面攻勢に出ていました。」
 あの場合、のほほんさんをもっと活かすべきだったな。
 せっかくの遊撃戦力が、物の見事に遊び駒になったしな。
 もう少し、胆力をつけないとな。セシリア。
「そうするべきだったな。オルコット。成長は認める。だが、心理面での強さという一面において、まだ足りない。胸に刻み込め。」
「はい。」
 セシリアの返事を聞いて、千冬姉は蘭達の方を向く。
「無駄な動きが、少なからず見受けられた。個人戦闘では大分仕上がったが、連携戦闘ではまだまだだ。とは言え、連携の基本は出来ていた。よく頑張ったな。」
「「「「ありがとうございます。」」」」
 いつも思うけど、どうしてこう俺に比べて褒められる回数が多いんだよ?
 ま、事実、蘭達は随分頑張っていたな。
「よし。次は、楯無にサファイア。ISを展開しろ。」
「「はい!」」
 ミステリアス・レイディとエインガナが、展開される。
 陽炎は束さんの手でスペックアップされているから、楯無さん達でもキツいだろうな。

「うわ!あっちこっちかよ!!味方だと頼もしいけど、敵にすると無茶苦茶厄介じゃねえか!!」
 天部の連続射撃を必死に回避しながら、サファイア先輩はエインガナの兵装を駆使して反撃する。
「さすがに、サファイアさんですね〜。でも、織斑君に比べると動きが無駄だらけですし、射撃精度が今一つなんですよね〜。」
 山田先生は、涼しい顔して帝釈と輪宝での射撃を加える。
 さすがに千冬姉が選んだ、武装教官の精鋭の1人だな。
 強い。
「涼しい顔して、攻撃が極悪なんスよ!このロリ巨乳悪魔教師!」
 あ。そういう事言うと…。
「あら、いけませんね。教師に向かってそういう口のきき方をすると…。」
 軍荼利を連射しながら急接近して、愛宕で強力な一撃を加える。
 勿論、サファイア先輩もビラングヌルで反撃する。
 CQCの技術が応用できるからいい線行ってるけど、山田先生容赦ないな。
 少しは、手加減してあげてくださいよ。
「こなくそ!」
 一か八かでサファイア先輩は、バニップ、ウィラジュリ、ランギをダーラマランで最大に加速させて、至近距離で発射する。
「慌ててやると、隙だらけになりますよ。」
 天部の雨が降り注ぐ。
 マジに容赦ないな。

「どうした?楯無。その程度では、私からあれは奪えんぞ。」
「愛の力を、舐めないでくださいね!織斑先生。」
 水龍槍のガトリングレールガンと速射荷電粒子砲の濃密な弾幕を張って、千冬姉の動きを少しでも鈍らせようとする楯無さんだが、その程度で千冬姉の動きが鈍るはずがない。
 しかし、それも想定内だったらしく、アクア・ドラゴンが生み出した攻撃に特化した重水の水流を槍状にして四方八方から攻撃を仕掛ける。
「ふむ。少しは、骨があるな。だが…。」
 攻撃を散桜で次々と蹴散らし、春陽で攻撃を仕掛ける。
「その程度!」
 アクア・テンプルで生成した水のヴェールで防ぎ続け、攻撃を続けていたアクア・ドラゴンでクリアパッションを発動させる。
 えげつないというか、何と言うか。
 いつもと、気迫が違うな。
 てか、愛の力って何だ?
「少しは、できるようになったな。楯無。だが、判断はもう少し迅速にしろ。」
「えっ!?」
 零落白夜を発動させた散桜で、千冬姉はシールドエネルギーをごっそりと奪う。
 千冬姉じゃあ、あのタイミングでも発動前に離脱できるからな。
 ちなみに、俺も出来る。
 結局、2人とも粘りはしたけど完敗。
 でも、だいぶスキルアップしてたな。
 相手が、悪かったけど。

「さて、織斑。10分後はお前の出番だ。バススロットに可能な限り兵装をつぎ込め。そして、全て使え。」
 は?なんのこっちゃ。
 まあ、いいや。
 新開発された、あれを入れよう。
「何なのだ?」
「さあ。」
 箒は訳が解らないみたいで、鈴も首を傾げている。
 俺も訳が解らない。

 うん?相手はブッフバルト先生か。
 千冬姉よりかは、マシだな。
 少なくとも、死にはしない。
「織斑。バススロットには、兵装を限界まで詰め込んだな?」
「はい。」
 元々、白式はデフォルトでもバススロットが大きいISだったが、形態移行を経てさらに大きくなっている。
 文字通り、針鼠のごとく兵装を搭載できる。
 それはそれとして、何をやるんだ?
「よし。トータルフローで、ダンス・マカーブルをやれ。搭載した兵装は最低でも1回は必ず使用しろ。」
 あ。そういう事か。

「ダンス・マカーブル!?」
「バトルスタンスの中でも、最難関。しかも、バススロットにあれだけ兵装を搭載して最低1回は使用しろという事は…。」
「全距離での戦闘を、全てマニュアルでする。ビットの制御も含めて…。」
 鈴、セシリア、シャルロットは千冬の言った事をすぐに理解した。

 バトルスタンスは、武術でいえば演武にあたり様々なスキルを身につける為にも行われる。
 近接戦闘のコンバットフロー。
 射撃戦のシューターフロー。
 そして、双方を行うトータルフロー。
 この3つに、分かれる。
 最難関はトータルフローで、射撃戦と近接戦闘の切り替え時を瞬時に判断する必要がある。
 その中でも、ダンス・マカーブルは射撃、近接戦闘、機動、回避全てをマニュアル制御で行う。
 少しでも集中力が鈍れば、ISはバランスを失って墜落する。

「凄く厳しい…。白式は操作性が凄くピーキーで、兵装も多いし…。」
「少しでも気を抜いたら、墜落決定だよね…。」
 玲子と簪が、心配そうに一夏を見る。
「しかも相手は、前ブリュンヒルデ。同級生を相手にするのとは、勝手が違う。」
「そうね。」
 アンナとシルヴィが、只でさえ最高の難易度のダンス・マカーブルをヘンリエッテ相手に行う事がどういう事かを再認識する。
「ラウラ、どう思う?」
「常識的に考えれば無謀の一言だが、教官はやれると判断したのだろう。」
「だと、いいのですが…。」
 箒に問われてラウラは答え、クリスは心配そうな表情になる。

「どう見る?フォルテ、本音。」
「さすがに、ブッフバルト先生相手はキツイだろう。只でさえ白式は多様な兵装を積んでいる分、オールマニュアルじゃあやる事が多すぎる。」
「でも、会長はやっちゃう気がする〜。」
 楯無の質問に、フォルテと本音がそれぞれ自分の意見を言う。
「では。始め!」

 千冬姉の声で俺とブッフバルト先生は、ISを動かし始める。
 互いに様子見を試みたのか、自然と円運動を描くサークルロンドになる。
 いきなり、白兵戦は無いようだな。
 なら、こっちからだ。
 矢竹を両手にコールして、ブッフバルト先生を包み込むように弾幕を張る。
「さすがにやるわね。狙いも絶妙だわ。」
 最近、本国から新しいシールドが届いたらしくそれで防ぐ。
「じゃあ、反撃開始。」
 シールドから、荷電粒子砲と大量のミサイルが発射される。
 シャイネンランツェ以外に、シールドでも射撃戦が出来るようにしたか。
 連弩でミサイルを撃ち落としつつ、荷電粒子砲を回避。
 俺は矢竹を撃ちつつ、距離を詰める。
「それは、ちょっと自殺行為じゃないかしら?」
 そろそろ、リーゼンシュラークが来るな。
 よし、このタイミングだ。
 俺は、イグニッションブーストで急上昇して、別の兵装を呼び出す。
 片方は天穹だが、もう片方は最近届いた新型のスナイパーライフルだ。
 蒼穹に比べて、大型でゴツイ。
 35mm高初速重スナイパーライフル「弓張月」。
 ISが使用するスナイパーライフルの中では、最も口径が大きい。
 威力もある。
 けど、撮り回しが悪いし制動制御も結構難しい。
 玄人向きの兵装だ。
 すぐに狙いをつけて、ブッフバルト先生を狙撃する。
「くっ!!」
 新型シールドで防ぎつつ、ブッフバルト先生もイグニッションブーストで急上昇する。
 その間も狙撃は続けるが、緩急をつけつつ回避するファーストアンドスローで巧みに躱す。
 そろそろか。
 そら来た。
 ブッフバルト先生と俺が同じ高度に達した時に、両腕の兵装を天穹にしつつ至近距離から瑠璃翼の重荷電粒子砲と共に撃ちまくり、式神を展開してすぐに上昇する。
 上を取ったら、今度は弓張月のみで35mm弾を叩き込む。
 次は、後ろを取って八竜と流星を発射する。
 トライアングル。
 三角形を描きながら動いて、射撃を叩き込む射撃型のバトルスタンスだ。
 立て続けの攻撃で、さすがのブッフバルト先生もダメージを喰らった。
「さすがね。こうも、機敏に動きながら兵装を使い分けるのだもの。でも、今度はこちらから行くわ。」
 言い終わった途端に、ブッフバルト先生がシャイネンランツェのレーザーを撃ちまくりながら一撃を加えて離脱し、他の方向から迫ってくる。
 そして、それを繰り返す。
 ライトニングのアレンジ版か。
 本来は、ヒットエンドランを目的としたコンバットフローの一種だけど、こういうやり方もありだよな。
 さすがにこれは、ちょっときついな。
 あの二つ、やっぱ使うか。
 さて、どういう状況にするかな。

「さすがに、織斑君とブッフバルト先生となると普通のバトルスタンスでは終わりませんね。」
「模擬戦とさして変わらん。互いに相手の技量の高さを知っているので、手が抜けないからな。織斑は、状況に応じて兵装を変えながら戦えているな。だが、まだ本気とは言っていないようだ。」
「元々、あらゆる面で最高ランクの技量の持ち主ですけれど、真に実力を発揮するのは近接戦闘。どこでそちらに移るかですね。」
 千冬と真耶は、一夏が最も力を発揮する近接戦闘に移るのは何時かを見極めようとしていた。

 っと。
 大小さまざまなバレルロールを描きながら射撃をするファイヤーリングの攻撃を回避しながら連弓をコールして、ミサイルを一斉に発射する。
「くっ!」
 シグルーンも展開して、ブッフバルト先生は回避と迎撃を行いつつイグニッションブーストで急接近してくる。
 末那識、阿頼耶識、阿摩羅識を一斉にコールして、唯識、縁覚に合体させる。
 すれ違いざまに攻撃して、互いに体勢を立て直し再び斬り結ぶ。
 コンバットフローの基本中の基本。クロスチャージ。
 でも、練度を高めれば十分に相手を翻弄できる。
 それは、ブッフバルト先生も承知しているだろう。
 こっから、仕切り直すのもかなりきつい。
 初めて学園に来てから、先生自身独自に訓練をしていて明らかに実力を増している。
 次のバトルスタンスに移る間に、僅かでも隙を見せれば終わる。
 それこそが、ダンス・マカーブルが最難関と言われる理由でもある。
 ISの操作全てをマニュアル操作で行いながら、スタンスの変化を判断する。
 どれも、きちんと行わないといけない。
 キツいがあれしかねえか。

『これは…。くっ!』
 非常に複雑に且つ急激な機動を描いた一夏は四方八方から、唯識と縁覚の攻撃を繰り出す。
「あれは、ラザフォード…!」
 セシリアが呟く。
 イギリスの物理学者で、長岡半太郎と共に原子モデルを提唱したラザフォードの名を持つコンバットスタンスは複雑な機動で相手を檻の中に閉じ込めた様な状況にして、四方八方から攻撃を繰り出す。
 しかし、機動制御が非常に困難で僅かでも集中が途切れれば制御不能になる。
 さらに、攻撃に特化しているのでもし相手が攻撃に転じた場合、守備が非常に疎かになる。
 非常に危険を伴った、コンバットスタンスである。

『反撃に移れない…。攻撃が苛烈過ぎて、突破口が見えない…。』
 一夏の攻撃を防ぎ続けるが、ヘンリエッテも限界が近づき始めていた。
 元々、男性と女性では筋肉の量に差がある。
 そもそも、一夏は年齢不相応な過酷な鍛錬を自らに課してきた。
 それ故に、16歳といえどもそこらの大人では話にならない。
 その差が、明らかに出ている。
 ヘンリエッテは前ブリュンヒルデとしての、優れた技量で受け流し続けているがそれでも衝撃が体の芯に伝わる。
『でも、そう簡単に事は運ばない。織斑君。あなたは、ヴァルキリーとブリュンヒルデの決定的な差を認識しているかしら?決して技量だけではないわ。』

「やるじゃない。4月から2年生。そう。まだ2年生になるかならないかなのに、前ブリュンヒルデをあそこまで苦しめるなんて…。さて、どう出るかしら。差を認識しているかが、楽しみね。」
「来たか。アンジェリカ。」
「ちょっと。遅れたけど。ほら、早速始まるわ。」
 アンジェリカが、一夏とヘンリエッテの攻防を楽しそうに見ていた。

 強引な中央突破…。
 だが、やけになったわけじゃない。
 本気で、突破口を開こうとしている。
 死中に、活を求めるか…。
 なら、やっぱり使うしかないな。
 もう少し、引きつける…。
 この瞬間だ!
 シャイネンランツェの穂先が届くか届かないかのタイミングで、俺はオリジナルの機動に移る。

『消えた?いえ、後!いつの間に…。』
 常識ではありえないスピードで後ろを取った一夏は、至近距離で須佐之男と雷神、鳳仙花を発射する。
 大口径HEIAP弾と大出力荷電粒子砲。さらに高エネルギーを内包した特殊な散弾を背中からまともに喰らったヘンリエッテが、吹き飛ぶ。
「ラスト!」
 阿修羅をコールした一夏が、何とか体勢を立て直したヘンリエッテに体当たりして重レーザーと大口径レールキャノンを叩き込みブレードとチェーンソー状になった銃剣でさらにダメージを加える。

「そこまで。織斑は、1時間の休憩に入れ。」
 うわ。まだあるのかよ。
 今度こそ千冬姉だったら、帰りは棺桶に入ってるな。俺。
 それだけは、マジで勘弁だなあ…。

「さて。小娘共。お前たちも当初に比べれば格段に伸びている。来年の2、3年生は高度なバトルスタンスもそれなりにこなせるだろうし、来年の1年生の専用機持ちも基礎的な物なら、問題ないだろう。だが、それだけで満足するな。今回、織斑にダンス・マカーブルをやらせたのは操作に習熟するという事はどういう事かを少しでも理解させるためだ。五反田たちは、自分達を指導した織斑の力量を理解しているだろうが、これが織斑の本当の実力だ。どこまで近づけるか。超えるか。それは、私にも解らんが今日見た事は必ず糧になる。忘れるなよ。」
 千冬姉の言う事を、みんな真剣に聞いている。
 言わなくても、皆、頑張るだろうと思うけどな。
 にしても、白式をフルマニュアルで動かすのはやっぱりキツい。
 光皇を発動してたら、どうなっていたのかね?
 多分、振り回されるのがオチだな。
 もっと、腕を磨かないと。

「ところで、織斑。終盤に見せた機動について、説明しろ。」
 いつの間にか、大型ディスプレイが用意されている。
「ディスプレイいりませんよ。単に直線的に動いて最小の動作で回り込んだだけですから。シャープラインって名前を付けていますけどね。」
 うん?皆、目が点になってるけどどうしたんだ。
「あのねえ!あんなスピードで直線機動をしたら、どれだけ体に負担がかかると思ってんのよ!?」
 おお。火を噴いたド○ゴンフ○イみたいだな。鈴。
 ド○クエUの大灯台、散々な目に遭ったな。
「体は、出来上がってるよ。問題ない。」
「それでも、コンディションは常に考えて下さいね。」
「そうだよ。只でさえ、一夏は無理しがちなんだから注意しないと。」
 鈴を安心させるために言うと、山田先生とシャルロットに注意される。
「帰ったら、念の為精密検査を受けろ。大丈夫であっても、体はさらに作り上げろ。いいな。」
「はい。解っています。」
 千冬姉に返事をして、プロテインドリンクとサプリメントを飲む。
 く〜っ!体に染みわたるぜ。

「さすがに、千冬自慢の弟君ね。大した物だわ。」
 声の方向を見ると、見事なブロンドでプロポーション抜群の女性がいた。
「既に、ヴァルキリーとブリュンヒルデの決定的な差を直感的だけど、理解しているわね。よければ、言葉にしてくれないかしら。」
 言葉ねえ。
 そうだな…。
「綺麗ではなく、時に泥臭い戦い方をする事。リスクがあっても状況を打開する道があるならそれを恐れない事。こんな所ですか。」
 ただ技量に頼っているだけじゃ、いつかは限界が来る。
 プラスアルファが、必要だ。
 それこそが、洗練された技量の対極に位置する泥臭い戦い方。
 そして、リスクを恐れずに可能性を手繰り寄せる精神力。
 これが、ヴァルキリーとブリュンヒルデの決定的な差じゃないか。
 過去のモンドグロッソの映像を見て、感じた事だ。
 ブッフバルト先生も、普段では結構泥臭いとこあるし危険を承知で戦う事も多いしな。
 特に俺の場合は、闘志むき出しになることすらある。
「合格ね。もう、ヴァルキリークラスは卒業か。今日の手合わせ。楽しみにしているわ。」
「紹介がまだだったな。アンジェリカ・マルヴェッツィ。私が現役時に決勝での公式戦の最後の相手で、第二代ブリュンヒルデ。現在はIS委員会直属で、織斑が開発した第三世代IS桃始華を専用機としている。休憩が終わり次第、織斑は彼女を相手に模擬戦をしてもらう。」
 …おい。
 千冬姉がモンドグロッソでブリュンヒルデを争った相手と、やり合うのかよ。
 てか。相手がやる気満々じゃないか…。
 でも、手合わせはしたくなるな。
 何と言っても、あの千冬姉と初代ブリュンヒルデの座を争ったほどの人だ。
 千冬姉、ブッフバルト先生とブリュンヒルデの称号を持つ人たちの強さは骨身に染みている。
 それでも、やってみたい。
 よし。やるか!

後書き
セシリア達は、蘭達を含めてチームを組んでの連携戦闘。
普段の自主訓練と、授業での訓練の成果の確認といったところです。
セシリアをリーダーにしたのは、遠距離射撃型の機体をリーダーにした場合どうなるかなというのを書きたかったからです。
結果は、ラウラの経験勝ち。
やはり、積み重ねられた経験の差を覆るのは楽ではありませんね。
一方、一夏は全てをマニュアルで行うバトルスタンスでヘンリエッテと手合わせ。
しかも、バススロットに詰め込めるだけ兵装を詰め込んでです。
状況判断を的確にしつつ、集中力を途切れさせない。
非常に難易度は高いですが、今後の事を考えると必要だと考えました。
さて、一夏には第二ラウンドが待っています。
なんと、千冬とブリュンヒルデの座を争い、一夏が開発したISを専用機にするアンジェリカ相手の模擬戦です。
さて、どうなりますか。






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