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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第82話 ファイナンシャル・ワールド・ウォー

<<   作成日時 : 2013/12/29 00:00   >>

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 げっ…。マジかよ…。
 俺は、金の流れを追いながら顔を顰めた。
 カモッラまで、絡んでいやがる…。
 ナポリを中心とする、イタリア四大マフィアの一つ、カモッラ。
 近年弱体化してきたけど、最近になって息を吹き返し始めた。
 亡国企業が、中継点の提供の代償に援助してたのかよ…。
 連中、亡国企業とは気づいてないようだな。
 ただでさえ、マフィアはイタリアの頭痛の種。
 警察署の署長まで取り込んでいるから、面倒なんだぞ…。
 こいつらを潰すとなると、ナポリを巻き込んだ大捕り物になるな。
 下手すりゃ、銃弾が飛び交って一般市民まで巻き込まれる。
 いくつかのファミリーに別れているから、各個撃破かな。
 奴らが飲む水の蛇口をストップして、壊滅させる。
 このプランで行くか。
 ここまで行くと、イタリア財務警察にカラビニエリの協力が欲しい所だな。
 欲を言えば、GIS(Groupe Interventional Speciale:特殊介入部隊)やNOCSの力も借りたい。
 けど、そううまく事が運ぶかは疑問だな。
 これは課題としておいて、日本の方を早く片付けるか。
 やれやれだな。まったく。

「まさか。そこまで言っているとはね…。」
 楯無さんが、会議で肩をすくめる。
「シチリア島を拠点とするコーサ・ノストラと組んで麻薬にまで手を出しているとは言え、ナポリの市民も団結していますから前の様には行かない。どんな小さな藁にもすがりますよ。」
「織斑。潰すにはどうすればいいと考える?」
「カモッラの中でも規模は最大級で中心とも言えるルッソ一家を潰すのと、同時に資金源を断つ。違法パンの製造の関しては、地元のパン職人がかなり頑張って大分押さえ込んでいますからあとは麻薬とゴミ収集ですね。前者は情報収集をさらに綿密にし、後者は市営のゴミ収集施設が不可欠でしょう。幸い、短期間で建造可能なゴミ処理プラントは、日本企業が発売していますからそれを利用できます。その前に、息がかかった人間を摘発し影響力を及ばないするようにするのが必要不可欠。これに関しては、ナポリ市警はあまりあてにはなりません。他の組織で対応するのが、適切でしょう。いずれにせよ。イタリア政府との交渉が必要になります。」
 既に、一夏はイタリアのマフィア事情はほぼ把握しており、壊滅作戦も立案は終了していた。
 その時、千冬の端末に連絡が入る。
「織斑。駐日イタリア大使が、こちらにいらっしゃったそうだ。」

「アポもなしに来た事、礼を失することは重々承知しております。非礼をお許しください。織斑特別理事。」
 60代前半の在日イタリア大使。
 ドメニコ・ジョルジが、一夏に謝罪する。
「お気になさらないでください。ジョルジ大使。火急の要件であることは、承知しております。どのような、ご用件でしょうか?」
 同伴の駐在員から、ジョルジは手紙を受け取る。
「これを、ご覧ください。」
「拝見させていただきます。」
 差出人は、アンジェリノ・アルファノ。
 現イタリア内務大臣か…。
 まさか、あっちから来るとはな。
 どうやら、嗅ぎ付けたか。
 考えながら、目を通す。

「書簡の内容は、解りました。私個人としては、喜んで協力させていただきます。後は、学園と委員会の承諾だけですが。問題ないでしょう。」
 とにかくさっさと潰しとかないと、面倒だ。
 イタリアのマフィアは、アメリカにも進出している。
 経由点がアメリカになると、調査が面倒どころじゃなくなる。
 アメリカ政府の良識を信じたいが、今の状況からリスクが高い。

「そうか。イタリア政府も嗅ぎ付けていたか…。」
 千冬姉が、腕を組む。
「いずれにせよ。カンチェリエーリ内務大臣と協議する必要が、あると考えます。このまま、放置しては置けません。今日中にイタリアに飛びたいと考えますが、許可を戴けないでしょうか?」
「けれど。何かしらの口実が無いと。相手も警戒しませんか?下手をすれば、街中で襲撃される可能性も…。」
 その可能性は、十分ありだな。
 連中としても、俺が消えてくれた方が嬉しいに決まっている。
「それに関しては、ある程度は解消されます。」
 俺は、ある手紙を渡す。
「確かに。これなら、表面上は理由になりますね。」
「ローマには、シカーリがいますが。この連中は他の組織に比べたら、チンピラも同然。それに、内務大臣との協議は政府中枢でしか知られていません。向こうにしても、知る術はありません。辿って行けば尻尾を掴まれて終わりです。事と次第によってはNOCSが出るでしょうし、カラビニエリも精鋭の第一パラシュート連隊だけでなく、GISを投入するのは確実。いかに、巨大なマフィア組織でも、イタリア軍の特殊部隊を逐次投入されればどうなるかは理解していますしね。」
 現地警察で鼻薬を嗅がされている連中も、下手に連中を庇えば刑務所域になるのは理解している。
 なら、それを逆手に利用して他の未解決事件に専念する様に仕向ければいい。
 向こうがコンタクトを取ろうものなら、もっけの幸い。
 引きずり出してやるだけだ。
「解った。すぐに、飛行機はチャーターする。ボーデヴィッヒを護衛に連れていけ。」

「何か、ドタバタしてるね。今度は、理学博士号の授与式?」
 まあ。たしかにドタバタしてるな。
 来月の、卒業式の準備もあるし。
 そっちは、粗方終わったけど。
「情報理論の論文が、理由だってさ。ISの世界は数学とは無縁じゃないだろう?俺のノウハウを、ある程度論文にして纏めたんだよ。」
 イリュジオンの時みたいなのは、御免だからな。
 それの防止措置だったけど、こういう時には便利だ。
 論文を書くのも好きだし、暇を見つけては書いておこう。
「それに、支社での会議に現地企業の重役との晩餐会。織斑君も本当に忙しいね。」
「高い給料もらってるからな。それに見合った仕事を、しないとな。」
 クラスのみんなと少し話してから、ラウラを連れて実家で仕度をしてからローマ行きの委員会専用機に乗った。

 ローマ大学サピエンツァ校
 14世紀初頭。時のローマ教皇ボニファティウス8世により、聖職者を育成するために創立された大学だ。
 21の学部を持ち、学生数は12万近い西ヨーロッパ最大の大学。
 ここで、俺の理学博士号の授与式が行われた。
 相変わらず、マスコミが多く来て疲れる。
 さて、疲れている場合じゃないな。
 俺が宿泊しているホテルラファエルローマに戻ってから、俺はある人物の来訪を受ける。
 ちなみに、俺は立場とかいろいろあって泊まる時は名門のスウィートルームになる。
 面倒だよなあ。
 このホテルは、5つ星の最高級ホテル。
 普通のホテルでもいいじゃないか。まったく。
「ようこそ。アルファノ内務大臣。ご多忙の所、お越しいただき恐縮です。」
「いえ。お疲れの所、押しかけてしまい申し訳ありません。織斑特別理事。それとも、ドットールオリムラとお呼びした方がよろしいですかな。」
「内務大臣もお人が悪い。正直、疲れているんですよ。」
「これは失礼。」
 40代の男性。
 現イタリア共和国内務大臣アンジェリノ・アルファノ氏が、俺の部屋に来た。
 さて、本題に入るか。

「親書は拝見させていただきました。あまり良い状態とは言えないようですね。私もインターポールを始めとする各機関と連携しつつ調査を進めていますが、正直、気が滅入ります。」
「カモッラが息を吹き返してきたという報告は聞いておりましたが、事がこれほど重大とは思いませんでした…。」
 内務大臣が、カプチーノを一口飲む。
 連中が絡んでいれば、そうも思うだろうな。
「赤い旅団は如何ですか?連携はしなくても、騒がれると面倒なことになります。」
 1970年代に結成された極左テロ組織「赤い旅団」は、いまやほとんど活動してはいないが万が一の事を考えて、一夏は確認する。
「その点に関しては、問題ありません。一応監視はしていますが、目立った活動は無いと考えてよいでしょう。」
「とすれば、蛇口を止める手筈を整えて連中を壊滅させる。密かに各個撃破して止め。これが現状ではベターかと。」
「ですな。」
 一夏の提案に、アルファノが賛成する。
「連中の蛇口に関しては、こちらでも調査してある程度は把握しています。貯水池に関してもです。作戦開始と同時に、貴国の状況は如何ですか?」
「こちらでも、密かに進めて解明した部分が少なからずあります。」
 アルファノが渡したUSBメモリーのデータと、一夏の情報を照らし合わせると金の流れはほとんど把握できた。
「もう少し、詰めておきましょう。情報提供ですが…。」
 その後、いくつか協議を終えてアルファノはホテルを後にした。

『さてと。まずは蛇口を締める手配をと…。』
 一夏は金の流れから、効率的に資金の流れを止める算段をする。
 特に麻薬取引は国際的な問題になっているので、可能な限り潰す必要がある。
『えっと。ロンドンとインターポールからの情報は、これか。』
 独自に築き上げたネットワークから入手した情報を基に、一夏は麻薬取引のルートを潰す手段を考える。
『基本的には、水際作戦か…。衛星で監視すれば問題ないな。後は、電撃戦で拘束と…。それに、貯水池に関しても手を打っておかないとな。』
 いくつか手配を済ませた一夏は、アルファノと協議した連絡先に詳細を送信する。
「さてと、向こうはどれだけ頑張ってくれるかな?」
 一夏は内務省がどれだけ手はずを整えているかを考えながら、支社での会議に出席する仕度を始めた。

『ここまでとはな…。各国とはビジネス・政治を通して太いパイプを持っていることは知っていたが。』
 一夏からの情報を受け取ったアルファノは、その詳細さに舌を巻いた。
 現イタリア首相エンリコ・レッタ首相の指示の下、内務省を中心に経済財政省と国防省が協力する形でカモッラの壊滅作戦立案が進められていた。
 国家組織が合同で行うのだから様々な情報が集まってくるが、一夏から提供された情報はそれに勝るとも劣らなかった。
『政治・経済における太いパイプ。卓越した情報収集力に解析力。そして、センス。加えて、IS戦闘を含む戦闘のスペシャリストか…。』
 NOCS、シュヴァルツェ・ハーゼ、特殊作戦群の合同訓練に関するレポートは無論目を通してあり、そこには一夏の高い戦闘能力についても記されていた。
『いずれにせよ。銃弾が飛び交うのは必定。当然、犠牲は出る。何とか、それは少なくしたい…。』
 アルファノの頭の中にある考えがあったが、それを実行していいのか迷っていた。

「やはり、カモッラを始めとする南部マフィアの影響は無視できないか…。」
「はい。様々な利権に食い込み、南部での事業に少なからず影響が出ています。」
 俺は、支社長の言葉を聞いて資料を見る。
 想像以上に、鼻薬を嗅がされているな。
 取り締まる側が、対象に取り込まれてどうするんだよ…。
 イタリアの事情も、あるだろうけどな。
 元々、イタリアは複数の国家が一つになって19世紀後半に差し掛かる頃成立している。
 歴史上では、王国時代を含めて新しい国家だ。
 成立して、200年も経っていない。
 その影響で、国民の帰属意識は国よりも地方に強い。
 それが、イタリアマフィアの特色にも影響して、中央政府でうまく除去しきれていない現実がある。
 つまり、結束が強く。
 仮に、ローマの政府が部隊を派遣してもそう簡単には壊滅できない。
 はっきり言って、厄介な組織だ。
 そして、元々農業国で北部は工業化に成功したが、南部はマフィアの影響力が強い為順調に進んでいるとは言い難い。
 結果、格差が広がっている。
 そして、政府への反感が生まれ、マフィアに身を投じる貧困層の人間が出る。
 これに対して、政府も手を打つがマフィアに利益を吸い上げられる等うまくいかないで北部の国民からは「何で自分たちの税金で、南部を養う必要がある。」と反感が生まれる。
 この感情を代表するのが、ウンベルト・ボッシを中心とした政党「北部同盟」だ。
 かつては、北部の独立を掲げていたこともある。
 今は、連邦制への移行や外国人労働者の排斥を掲げているが、南部への感情がいいとは決して言えない。
「本社の方でも、イタリアでの事業を軌道に乗せたいが南部がこれではね…。」
 俺は外部取締役だが、今まで様々な事業や他の企業との交渉に携わった関係から経営方針を決定する会議にも出席して様々な決定もする立場にある。
 それだけに、責任も大きいし慎重に事を進める必要がある。
「政府がもう少し頑張ってくれれば、やり易いのですが…。」
「そううまく事は運ばんぞ。事と次第によっては、北部の国民の激しい反発を買い選挙に影響が出る。その際、最も票を集めるのは北部同盟。そうなれば、南部の事態はさらに悪化する。」
「最悪。国の分裂。あるいはそれに近い状態か。」
「南部を牛耳っているマフィア共は、自分たちが利益を享受できればよいのだからむしろ好都合かもしれんな。」
「いずれにしても、慎重に事を進めるべきだろう。」
 支社の幹部達が、意見交換をする。
 さすがに、現地にいるだけあって皮膚感覚でよく解っているな。
 俺も、南部への事業拡大は時期尚早だと感じた。
 仮にカモッラを掃除しても他の組織の影響をある程度は削がないと、元の木阿弥になる。
 とにかく、頭が痛いよ…。

 せっかくの会食も、味があまり解らなかったな。
 とにかく、頭痛の種ばっかだ。
 各企業との感触は、良かった。
 それが、救いか…。
 うん?
 あれは…。
 誘拐か…?
 チンピラが、子供を誘拐して連れ去ろうとしている。
 周囲は銃で威嚇か。
 車に連れ込んで、どっかに連れて行こうって寸法か。
 そうはさせるかよ!!
 
「Mi scusi, signore.Il Sei sicuro di voler prendere in prestito l’auto di pattuglia?(すいません。パトカーをお借りしてよろしいですか?)」
 駆け付けた国家警察の警察官に、パトカーを借りられないか交渉する。
「Non ho nulla in contrario. Ed essere una buona storia di souvenir.(構いませんよ。いい土産話になる。)」
 こういう所は、陽気なイタリア人の気質がありがたくなる。
 知名度の高さを使うのは、後ろめたいけどな。
「Lo apprezzo Poi, mi piacerebbe una richiesta per la preparazione di chirurgia d’urgenza e di assistenza medica di emergenza in ospedale completamente attrezzata con la piu vicina dal nascondiglio di ragazzi ed elicotteri medici.(助かります。それから、ドクターヘリと、連中のアジトから一番近くて設備の整った病院に救命処置と緊急手術の準備の依頼をお願いします。)」
「Bene.(解りました。)」
 俺はラウラと共にパトカーに乗って、後を追う。

「ランボルギーニ・ガヤルド。スポーツカーをパトカーにするのは理解に苦しむけど、こういう時は助かるな。ラウラ、発信機を頼む。」
「解った。」
 イタリア製高級スポーツカーだけに、最高速度は300kmを超える。
 それに、防弾仕様だから丈夫だ。
「発信機は撃ちこんだぞ。」
「サンキューな。トレース頼む。ローマ市警に繋がる様にしてくれ。」
 さてと。
 特殊作戦群仕込みのドライビングテクニックの見せ所だ。

「くそ!あのサツのパトカー。乗ってる奴はかなりの凄腕だぜ。」
 ベレッタ M12サブマシンガンを撃つが、一夏は射線を読み回避する。
「アジトにつけば、こっちの勝ちだ。ボスに知らせろ。蜂の巣にしてやる。」

「アジトに着くな。ラウラ、準備は?」
「いつでもいいぞ。」
 俺はUSPと予備のマガジン、バタフライナイフの確認をする。

 アジトは、大きな邸宅だった。
「一夏。地下がある。それに弱っているが生命反応が1つ。他に複数の反応。」
 ラウラがハイパーセンサーで、邸宅をスキャンする。
噂通りかよ!
 最近、シカーリが南部マフィアですらやっていなかったスナッフムービーの地下売買に手を染めてたってのは!
 大方、あの子供もその出演者だ。
 肉体的・性的暴力を加え、時に治療して再び暴力を加え最終的に殺す。
 この過程を撮影して、その手のマニアに高値で売りさばく。
 信じたくない噂だったが、気には掛けていた。
 警察のパトカーがあんなに早かったのも、おそらく予想していたからだろう。

「行かせるか!」
 トップスピードで走りながら、チンピラの足にUSPの.40S&Wを撃ち込む。
「もうすぐ警察が来る。大人しく捕まれば、少しは罪も軽くなるし痛い目を見ないで済むぜ。」
「たった2人で何ができる。多少怪我させても構わねえ。そいつらにも出演してもらえ。」
 M12を持ったシカーリのメンバーがずらずら出てくる。
「どうやら、痛い目を見たいらしいな。」
 なら、きっちり痛い目を見せてやるぜ。
 習志野仕込みの戦闘スキル、たっぷり味わえよ。

「おい。上が騒がしいぞ。」
「気にするなって。俺達はやる事やってりゃいいんだからよ。続きだ。」
「これ以上、何しろっていうんだよ?蹴って殴って。ああ、皮膚でも焼くか。」
 まだ、10代になったばかりの全裸の少女の前で、チンピラはバーナーを手にする。
 少女は苦しそうに息をして、右腕と右足が切断されて大量に出血している。
 それに包帯を巻いて、輸血パックで輸血をしている。
「そこまでにしろよ…。」
 男たちが振り向いた先には、怒りを瞳に宿した一夏がいた。

 本当に見ることになるとはな…。
 地面の血痕。各所の打撲傷。血に染まった包帯。苦しそうな呼吸。かなり痛めつけやがったな。
 撮影役を含めて、4人て所か。
 他に、誘拐された子供が3人。
 まだ、死んだ子供はいないか…。
 撮影前か。高級スポーツカーの性能に、感謝だな。

「何だ。手前!上の連中がすぐに来るぞ!大人しくしな!」
「来ねえよ。全員、接待してやったからな。」
 マガジンを交換し、ナイフを振って付着した血を男たちに掛ける。
「まさか。ボスも含めて…。」
「ああ。あの屑か…。半殺しにして、顎を砕いてやったよ。手術の後に、インプラントだな。尤も警察病院でだが。お前らはどうして欲しい…?腕と足を切断したなら、仲良くそうして欲しいか?それとも、骨を粉々にしてほしいか?もぎ取るって選択肢もあるぜ…。」
 怒りが瞳に宿った一夏は、危険極まりない存在だった。
 その気になれば、普通に人間を素手で解体できる戦闘スキルを持つ。
 そんな一夏が、激怒すれば後に何が待つかを予想するのは容易極まりない。
「一夏。そんな屑共の血で、お前の手を汚すな。見るに堪えん。既に警察が到着した。上の連中は、連行されている。」
「そいつ。イチカ・オリムラか…?」
「気づくのが遅かったな。上の連中の大部分は、一夏が叩きのめした。地道に働いていればこうならずに済んだだろうな。愚かな連中だ。お前たちは、私が歓迎してやろう。」
「やめてくれ!自首する!だから、やめてくれ!」
 失禁しながら、男たちは必死に自首すると繰り返す。

「10代少女。右上下肢切断。各部に打撲。出血性ショック。チアノーゼ状態。オーマイナスは?」
「念の為、7単位を持ってきました。」
「5単位を緊急輸血。モニターに繋いで。ラウラ。俺は、これから病院でオペに入る。」
「もう、危険はないと思うが行くぞ。護衛だからな。」
 ドクターヘリにラウラも乗る。
「よし。行こう。」

「ヴァイタルは?」
「血圧70の50。脈拍40。サチュレーション40。チアノーゼです」
「ドーパミンを点滴。250mlの5プロに22mg。アトロピンを0.6mg静注。挿管する。7番の気管内チューブを。ブランケットで体温を確保。」
 指示を出しながら、一夏は挿管し人工呼吸器に繋ぐ。
『これなら、まだ間に合う。』
 切断された四肢は、6時間を過ぎると接合が不可能になる。
 手足の状態から、一夏はまだ接合できると判断した。
「点滴用のチューブにクーパー。キシロカイン1%10cc。」
 切断部の動脈を鉗子で止血しながら、右の手足に局所麻酔をして動脈をチューブ繋ぐ。
「よし、末梢循環良好。ヴァイタルは?」
「低レベルで安定。」
「病院に到着します。」
 少しすると、ヘリが着陸する。

「10代の少女。右上下肢を切断。各所に打撲。現在、テンポラリーバイパスチューブで末梢循環を確保。オーマイナス5単位緊急輸血。ヴァイタルは低レベルで安定。」
 すぐに処置室に、運ばれる。
「血液型とクロスマッチ5単位。血算。生化学。血中乳酸濃度。凝固機能。全身X線及びCTで骨折及び臓器損傷を大至急確認。」
 検査の結果、骨折はあったが臓器の損傷は奇跡的になかった。
 暴行によって引き起こされるクラッシュシンドロームも、起きるリスクがないことは血液検査で証明された。
 別名挫滅症候群と呼ばれ急死する事もある症状だが、外見では判断しにくいので静脈をあえて止血しないで乳酸等を含んだ血液を排出させる事で、一夏は未然に防止していた。
「オペ室準備完了。」
「解りました。整形外科チームは?」
「各外科チーム、待機しています。」
「では、直ぐに。」
 一夏は、待機していた医師と共にオペ室へ直行する。

「そうか。解った。聴取できる構成員から尋問をしてくれ。」
 緊急連絡を受けて内務省に入ったアルファノは、シカーリの一つの壊滅情報を聞いていた。
 その頃、一夏は少女の右上下肢の接合手術を執刀していた。

「オペ終了です。」
 所要時間は8時間20分。
 通常の四肢の接合手術は、平均で6時間と言われている。
 つまり、今回のケースでは12時間かかる計算になる。
 それを、一夏は大幅に短縮した。
 自衛隊で医療を学んだ事から、銃創や重砲及び地雷等による四肢の損傷及び切断に関する対処法を詳しく学んでいるので、素早く対処できたのである。

「ドットールオリムラ。内務大臣から、お電話です。」
 少女がICUに運ばれるのに付き添ってから、一夏にアルファノから電話が入る。
「織斑です。」
「お手間をお掛けしましたな。お蔭で、こちらが欲しかった様々な情報が手に入りました。それに被害に遭った少女の手術も、平均より遥かに早く終了したとか。心からお礼を申し上げます。」
「いえ。私こそ、パトカーをお借りしたりと勝手な事をしてしまい申し訳ありません。スナッフムービーの件は、噂で聞いていたのでつい…。いかなる処罰も受けます。」
「ああ。いえ。今回の事に比べれば、些末な事です。気が済まないと仰るなら、今回のオペの報酬をもって公務執行妨害の罰金とさせていただきますが?」
「それで、お願いいたします。」
『自分に厳しいお方だ。』
 アルファノは、今回のシカーリの壊滅の前ではさして問題にもしていなかったが、一夏はそうは思わず自ら罰を求めた。
 その行為は、一夏とはどのような人間かを理解するには十分だった。
 そもそも、一夏は外交官免責特権があるので今回の件で罪に問われることはない。
 無論、一夏も承知しているがそれに甘える気はさらさらなかった。
『今回のオペの報酬は、被害に遭った少女の為に使うとするか。』

 まさか、ローマにまで食い込んでいたとはな…。
 チンピラレベルでも、使い道はあるか…。
 そっちは、ローマ市警が第1カラビニエリ大隊と共同で一斉に摘発したから問題はない。
 やっぱり、カモッラが最優先か。
 コーサ・ノストラ等も気になるけど、とにかく潰せるのはとっとと潰したほうがいい。
 諸々の準備は完了した。
 後は、ステージに上がる役者さんたちの頑張りに、期待しよう。

「作戦目標は、あくまでセレスティーノ・ルッソ。他の構成員も、可能な限り拘束。それが不可能な場合や抵抗する場合は、射殺を許可します。セレスティーノ以外は死体になっても、今回はよしとしましょう。」
 一夏の作戦案も取り込んで、内務省ではレッタ首相が出席してのルッソ一家の壊滅作戦についての、最終的な詰めが行われていた。
「ルッソ一家の本拠地は、ナポリ郊外。周辺はリヴォルノから第1カラビニエリ連隊を動員し、封鎖します。後詰は第1カラビニエリ大隊。これにより民間人への被害及び逃げた構成員の逃亡を防ぎます。この場合も、拘束が不可能な場合及び抵抗する場合は射殺を許可します。襲撃は、GIS7個分隊及びNOCS1個小隊を動員。GIS2個分隊は狙撃要員としてバックアップに当たります。」
「この作戦で、ルッソ一家をイタリアから消し去る様に。」
「承知しております。首相。同時に、他のファミリーにも大規模な検挙を行います。」
「うむ。ところで、例の件は?」
「これからです。」
「そうか。正直、良心が痛むがこちらの犠牲を減らすためにも助力を得る必要がある。」
 気が重そうな表情で、レッタは頭を振る。

後書き
亡国企業の息の根を止めるには、ISを用いての戦闘だけでは無理です。
資金を断たなければ、叩いても復活するだけです。
その点では、テロリストとよく似ています。
そして、今回登場するのはイタリアのマフィアの一つ。
ナポリを根拠地とする、カモッラ。
ガンスリンガーガールを読んだ方ならご存知の方はいるでしょうが、イタリアという国は色々と問題を抱えているのは事実です。
マフィアが警察にも影響力を及ぼしている事実はありますし、ゴミ収集の利権を握っていますのでこれをどうにかしないと、歩くたびにGを潰すという胸の悪くなるような事も実際にあるそうです。
スナッフムービーはさすがにないようですが、人身売買は欧州では憂慮すべき事態です。
様々な問題が周囲にあるイタリアで、遂に一夏の戦闘力が直接人間に及びチンピラのボスは顎を砕かれ歯もなくなりました。


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