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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第80話 加速

<<   作成日時 : 2013/12/15 02:15   >>

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「只今、戻りました。」
 さすがに堪えたぜ。
 リヨンとロンドンの、強行日程。
 疲れたぜ。
 ニルセン事務総長と五嶋国際部長の口添えで、協議はスムーズに進んだ。
 インターポールは逮捕権こそない物の、世界各国で捜査をする。
 イギリスは欧州の金融の中枢というだけでなく、世界各国の金融情報が入ってくる。
 SOCAの調査網はかなりの物だし、NCISにしても「イギリスのFBI」と呼ばれるだけに能力は高い。
 ブルームフィールドNCIS部長。ゴドウィンSOCA局長、グレッグソン=ウィリアムズ内務大臣。
 3人とも、人柄は確かだったから安心だ。
 内務大臣経由で、キャメロン首相とも急遽協議することになったがそちらも円滑にいった。
 サイレント・ゼフィルスの件もあるしな。
 取り戻したいというのもあるんだろう。
 いずれにしても、国際レベルの調査ネットワークはこれで完成だ。
 無論、俺も調査は継続するけどな。
 そろそろ、チェックといきたいからな。

「大変でしたね。でも、これで調査はずっと進みます。本当にご苦労様でした。」
 山田先生が、労わる様に話しかけてくれる。
「いえ。知れば知る程、放置するには危険すぎる組織。潰す為なら、労を惜しみませんよ。」
 倫理を冒涜するような事を平気でやるような奴を、いつまでもこのままにはしておけない。
 必ず裁きを受けさせる。
 俺は、そう決めている。

「それから。コロンビア大学附属病院から、お礼の電話を戴いたぞ。向こうで、大活躍だったそうだな。」
 ジョーイの件か。
 わざわざ、そんな事しなくていいのに。
「今やマンハッタンで、織斑君はヒーローですからね。向こうのお医者様も、織斑君の医療に関する技量と知識には、心から感銘を受けたと仰っていましたから。」
 医療面なら、俺以上なんて世界中にゴロゴロいるだろうに。
 オーバーだって。
 というか、あの時は大変だった…。
 ホテルに戻る時には、マスコミが凄かったし。
 ホテルで夕食を食べた後も、凄かった。
 とにかく、疲れた…。
「ニューヨーク市から、感謝状が届くそうだ。それと、お前が助けた少年の両親が、上物のコニャックをお礼に送ってくると言っていたな。」
 別にいいんだけどな…。
 礼を、求めてるわけじゃないし…。
「俺は…、頑張ってくれて、助かってくれただけで嬉しいんです…。ご家族が悲しむのを見ないで済みましたから…。本当にそれだけでいいんです。」
 そんなのは、両親に捨てられた時の千冬姉だけでも沢山だ。
 俺の救命士や看護師としての技術や知識、経験でそれを減らせるなら、俺はそれだけで十分だ。
 それだけで、十分報われているんだから…。

「織斑君は、本当に優しいんですね。でも、ちょっと位自慢に思っていいんですよ。」
「柄じゃありませんよ。では、講義に行ってきます。」
 似合わない事は、しないに限る。
 俺が得た、最大の教訓だ。
 そもそも、自慢するような類の物じゃないと思うしな。
「それから。転入生が来る。すぐに目を通せ。」
 どれどれ…。
 成程。そういう事か。
 例の話な。
「解りました。では、行ってきます。まさか、日本でもヒーロー扱いされてませんよね?」
 だったら、勘弁願いたいんだが…。
「ほう。よく解ったな。学園中、その話でもちきりだぞ。また、株が上がったな。」
 千冬姉が、ニヤニヤしながら言う。
「そういうの、柄じゃないんですけどね…。マスコミのインタビューがもし来たら、断っておいてください。苦手ですから。」
 たく、何でこうなるんだよ?
 俺は、救命士。
 命を救うのが、役目。
 それを、全うしただけだ
 当たり前の事じゃないか。
 いちいち騒ぐなよ。

「相変わらずと言うか、何と言うか…。どうしたんですか?織斑先生。」
 一夏のお人好しに苦笑した真耶だったが、何かを考え込んでいる千冬を見て話しかける。
「いや。なんでもない。私達も授業だ。行くぞ。」
「はい。」
 不思議に思いながらも、真耶は職員室を出る。
『私の思い過ごしであってくれれば、いいのだが…。』

「今日からだったな。学園での生活は。」
 ロンドンのSISの本部で、窓の外を見ながら50代半ばのやや気難しげな紳士が呟く。
「はい。」
「外務大臣に、知られてはいないだろうな?」
 デスクの前にいる部下に、何かの確認をする。
「問題ありません。この件を知っているのは、首相と長官と私だけです。」
「よろしい。」
 紳士は、小さく頷く。
「では、私はこれで。」
「うむ。」
 椅子の背もたれに背中を預けながら、その部屋の主である紳士は溜息をつく。
『心象のベクトルが逆なら、この様な事はしなくてもよいのだが…。去年の件で、すっかり悪い方向に向いてしまったからな。』
 部屋の主たる紳士。
 サー・アーサー・モルダー=ブラウンSIS長官は、憂鬱な気分になっていた。
 去年のセシリアとブルー・ティアーズの事で、外務大臣であるヘミングスへの一夏の心象は最悪となった。
 SISは首相直轄の機関とはいえ、外務大臣の指揮下にある。
 それ故に、SISにも一夏はいい印象を持っていない。
 無論、一夏も綺麗事だけで国益を得る事が出来ない事ぐらいは十分に理解している。
 だが、仲間であるセシリアを操り人形にしたやり口に、激怒している。
「常に、正道を行くか…。羨ましい事だ…。」
 一夏は国際政治の世界で様々な問題を解決しているが様々な案を立案し、骨付き肉をちらつかせたりするような事は一切しない。
 卓越した政治的センスと、明晰な頭脳で解決策を見出す。
 それが、モルダー=ブラウンには羨ましかった。
『私は個人としては善人のつもりだが、組織の長としては悪人。諜報や政治の世界は皆そうだと思っていたが、彼だけは違うな…。故にこうなったか。首相がうまく話をつけてくれたので、大丈夫だと思いたいものだ。』

 皆、しっかり頑張ってくれたな。
 小テストの結果も、問題ない。
 そろそろ、タッグを組ませてみるか。
 組み方は、皆に任せよう。
 孫子曰く。敵を知り己を知れば、百戦危うからず。
 勝つためには、相手の得意な戦術や弱点を知る必要があるが、自分に関しては結構解っていない事が多い。
 それでは、明らかに拙い。
 足元をすくわれるからな。
 その為にも、自分の不得意な点や弱点をどうサポートしてもらうかを考える事は大事だ。
 今日の訓練を見て、最終的に決定するか。
 さて、授業だ。
 にしても、な〜んかトラブルが起きそうな気がする。

「今日から、転入生が加わる事になった。入れ。」
 入ってきたのは、ストレートのブロンドを腰まで伸ばした女子生徒。
 まず。クラスに馴染めるかか。
「シルヴィア・マールバラです。イギリスから来ました。」
 自己紹介は普通だな。
 まあ。奇抜な自己紹介なんてないけどな。
「マールバラは、イギリス海軍のテストパイロットだ。学べるところは学べ。マールバラ。お前はデュノアの右隣の席に座れ。」
「はい。」
 第一関門クリアってとこか?
 次はどうだろう?
「それでは、次は実技訓練になる。全員第6アリーナに集合。」
 頼むから。問題を起こすなよ。
 というか、起こして困るのは向こうだけどな。

 ちなみに今日は、4組との合同訓練だ。
 簪のチームが、加わる事になるわけだな。
 さて、どうなるか?
「よし。専用機持ちは、ISを展開しろ。」
「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」
 1年の専用機持ちは、1組に9人。2組と4組に1人ずつ。
 だから、今日授業にいる専用機持ちは10人。
 けど、今日から1組に1人加わる。
 1クラスに10人の専用機持ちって、はっきり言って異常だぞ。
「マールバラさん。専用機持ちだったんだ。」
「そう言えば、テストパイロットって言ってたよね。」
 マールバラさんは、エメラルドを思わせる鮮やかな緑のカラーリングのISを展開している。
 BT兵器搭載機3号機。エメラルド・エターナル(悠久のエメラルド)。
 ブルー・ティアーズとサイレント・ゼフィルスの開発データに、俺の改修データを解析して開発されたイギリスの最新鋭第三世代IS。
 兵装は、衝撃砲と高出力レーザーを発射可能でプラズマブレードの銃剣を搭載したBTアサルトライフル「スターランス」。腰部低圧砲「フォックス」2基。両肩部大型シールド内臓4連装レーザー「キラービー」。近接戦闘を重視して、プラズマブレードを両腕に装備。
 そして、エネルギーシールド、高出力レーザー、小口径衝撃砲、プラズマカッターを搭載した今までのBT兵器の集大成と言えるビット「エメラルド」6基を特殊兵装として装備する。
 さらに、設計も根本的に見直されて稼働時間も向上しているし、背部の大型スラスターはサイレント・ゼフィルスの物を再設計し、俺が改修した推力偏向方式のスラスターの技術も取り入れられている。
 稼働時間も向上し、基本スペックも大幅に向上。
 サイレント・ゼフィルスの現在のスペックがどの程度かは不明だが、初期のサイレント・ゼフィルスよりずっと高い。
 今のブルー・ティアーズには、劣るけどな。
 後は、相見えた時にどうなるかか…。
 資料によると、腕前はかなりの物らしいが。
 さて、どうかな?

「よし。それでは…。」
 授業を始めようとした千冬姉が、舞桜のハイパーセンサーの情報を見て頭を抱える。
 何か。あったのか…。
 今度は、白菜か…。
 もう勘弁して下さいよ。束さん。

「やっほー!ちーちゃん!」
 白菜型の飛行艇から、束さんが千冬姉に抱きつこうと飛び出してくる。
「来る時は、事前に知らせんか!!それから、まともに来い!!大馬鹿者が!!」
 千冬姉のハイキックをまともに喰らって、束さんは吹っ飛ぶ。
 おお。おお。よく飛んだな。
「いいじゃん。いいじゃん。固い事言いっこ無し。」
 あ。復活した。
「時と場所を弁えんか!!」
 束さんの頭を鷲掴みにすると、地面に叩き付ける。
 凄え…。
 体の半分が、地面に埋まってる…。

「ああ。びっくりした。箒ちゃ〜ん!」
「ひゃあっ!!」
 箒の胸を、揉みまくる。
 何、やってるんですか…。あなたは。
「うんうん。またまた、大きくなったね〜。柔らかいけど張りのあるおっぱいだね〜。形もばっちり。これなら、いっくんも満足…。」
 言い終えることはなかった。
 緋宵の峰打ちで、束さんは顔面からスライディングタックル…。
 うわ。痛そう…。
「何をするんですか!しかも、一夏の前で!!」
 箒が顔を真っ赤にして、胸を隠しながら声を張り上げる。
「そうですよ。男の俺の前で、こういう事はNG。それがモラルです。」
 弟子だからこそ、師匠には常識を弁えさせないとな。
 色々、困る。
 って、何で千冬姉は山田先生から頭痛薬を貰ってるんだ?
 そして、箒は何故拗ねたような態度になる?
 他の皆は、深い溜息をついている。
 何でだよ?

「で、要件は。」
 もう、馬鹿馬鹿しくなったのか千冬姉は用件を聞く。
「前に言っていた、陽炎の追加兵装パックを届けに来たんだ〜。それに機体の改修もするからね〜。それから、白式の事もお調べ。舞桜の状況も見ておく必要があるし。」
 最初にきちんと用件を言えば、こうはならないんですよ。
 って、言っても無駄か。束さんだし。

「じゃんじゃじゃ〜ん!これが陽炎の追加兵装パック「黄龍」だよ〜。機動力と制圧力を格段に高めま〜す。」
 大型のスラスターに、多連装マイクロミサイルポッド。
 それにクロスボウ型のライフルか。
 どれどれ。
 うわ。これは凄いな…。
 地味に見えるけど、スラスターの推力はかなりの物だ。
 多連装マイクロミサイルポッド「金剛杵」は弾頭にAICの発生装置を搭載している。しかも、強い指向性を持っているから発射されたら広範囲でかなりの速度でフィールドを叩きつけられる。
 例えるなら、猛スピードで飛ばしている車が壁に激突するようなもんだ。
 しかも、多連装マイクロミサイルだから弾数が多い。
 比例して、攻撃範囲も広くなる。
 何つう物を、作るんですか…。
 このライフルは、高出力の衝撃砲と荷電粒子砲を使用可能な、ブラスターライフル「勾陳」。
 これの威力も相当な物だ。
 攻撃力を高めつつ、実弾装備とエネルギー兵器を兼ね備えたバランスのいい追加兵装だな。
 機動力も大幅に向上する。
 相変わらず、強烈な物作るな…。
 一旦、自分の好みに走ると歯止めが効かないぞ。この人。
 まあ…、追加兵装パックの件では俺も人の事は言えないんだが…。

「それじゃあ。陽炎の改修。いっきま〜す。」
 作業機器や新規パーツが実体化して、改修が始まる。
「あ。いっくん。データに目を通しておいて。」
「はい。」
 どれどれ。
 成程。基本性能の底上げと、燃費の向上がメインか。
 基本性能3割増しは、強烈だな。
 これ、第三世代といっていいのか?
 元々良かった燃費も、向上している。
 相手にする方は、堪らないな。
 兵装も、改良されている。

「じゃじゃ〜ん。陽炎改修終了。陽炎改め陽炎弐型で〜す。」
 機動力を高めるために装甲の形状が変更され、兵装も換装されている。
 愛染は、高出力中口径衝撃砲「軍荼利」に。
 紅炎は出力と燃費を向上させた上に、連装式の「輪宝」に。
 明王は拡散収束が任意に可能で、衝撃砲の機構を応用した特殊多用途プラズマ砲「天部」に換装されている。
 天部は、何とも極悪だな。
 衝撃砲は、全方向に発射が可能なオールレンジ兵器。
 その原理を取り入れて、発射点を任意に設定できる。
 何処から発射されるか解らない上に、収束・拡散と状況に応じた戦い方が可能だ。
 これは、BT兵器より性質が悪いぞ。
 最悪、至近距離から叩き込まれる。
 ハイパーセンサーの性能が相当に良ければ大丈夫だが、今の第三世代のハイパーセンサーじゃ一方的に叩きのめされるな。
 我が師ながら、おっかないな…。

「各武装教官は、ISに搭乗。織斑、調整とオペレーターを。」
「はい。」
 俺は端末を展開し、調整を開始する。
 さすがに束さん。
 今までの戦闘経験の蓄積も考慮して、改修計画を練っていたか。
 では、弟子としてはさっさと調整をして、成長の証を見せる。

「調整終了。テストいつでも行けます。」
「いっくん。腕を上げたね〜。うんうん。やっぱりいっくんだね〜。束さんが手塩に掛けて、IS関連の技術を伝授しただけあるね〜。いつも一生懸命研究してるのが、よく解るよ〜。」
 あの…。皆が見てる前なんですけど…。
 でも、大きい胸は柔らかくて暖かくて、気持ちいいわけで…。
 じゃねえ…。
 このどす黒い気…。
 今までとは、違う…。
 ひょっとして、魔○気!?
 まさか、セシリア達北斗○拳を伝承したのか…?
 よせ!魔界には入るな!戻れなくなるぞ!!
 て言うか、何でアンナやマールバラさんからも感じるんだ!?
「いい加減にせんか!小娘共!束もいい加減に、織斑を離せ。後で、抱きしめるなり添い寝をするなり好きにすればいいだけだ。」
 よくねえよ!!
 俺が、殺されるだろうが!!
 とにかく。テストだ。テスト。

 さすがに、先生達だな。
 基本スペック3割増しの陽炎に、すっかり慣れている。
 後は、換装した兵装をいろいろ試している。
 機体に、全く問題は無し。
 後は、テストデータを使って、システムのアップデートをしておくか。

「は〜い。次は白式の出番です。うりゃ!」
 束さんが自分の端末のコードを、白式につなぐ。
 白式の各種データを見ながら考え込み、フラグメントマップを見てさらに考え込んだ。
「ねえ。いっくん。」
「何か?」
 どうしたんだ?
「これ、何?」
 白式の、フラグメントマップでしょうが…。
「フラグメントマップ以外の、何物でもないと思いますが…。」
「う〜ん。これはもう、フラグメントマップですらないね。何て言えばいいのか解らないよ。強いて言うなら、これから起こりうる事象と、その経過の予測を示したものとでも言えばいいのかな?推測の域を出ないけど、フラグメントマップじゃ、白式の進化をカバーできないとコアが結論を出して、全く別の概念で白式を進化させようとしている。そんな所かな。」
 もう、ISですらなくなっている気がしますけど…。
「やっぱり。イレギュラー過ぎたんだろうね。今まで、男の子でISは動かせなかった。でも、いっくんは動かせた。そして、類まれなる才能があった。操縦、設計・開発共にね。それが、白式に大きく影響を与えた。簡単に言うと、進化のステップが速くなりすぎてフラグメントマップじゃ対応不能になって、今の状態になった。ただ、これが完成形かどうかは私にも解らないな…。」
 勘弁してくれよ…。
 只でさえ、白式の進化については頭痛の種なのに…。
 おまけに、改修まで影響を与えてたのかよ…。
「不幸中の幸いとしては、いっくんの改修が進化の促進と同時にある程度は抑制になってたみたいだね。理由は不明だけど。」
 あんまり、救いになってませんよ…。
 束さん…。

「それじゃあ。舞桜。いってみようか〜。うりゃ。」
 今度は、舞桜にコードを繋げる。
「いっくんの改修で、性能がだいぶ向上してるね。それに、相当いっくんをビシバシしごいてるでしょ?経験値の貯まり具合が尋常じゃないもん。フラグメントマップは、シンプルその物。高機動近接格闘戦を、最も重視したタイプ。このパターンだと、高機動近接格闘戦能力では白式と同クラスにまで進化する可能性大だね。」
 設計思想が、シンプルだからな。
 千冬姉は射撃をメインにした戦いでも並ぶ者のない技量を持つけど、本領を発揮するのはやっぱり高機動近接格闘戦。
 予想はしてたけど、やっぱりそういくか。
 形態移行をした場合でも、その傾向が強くなりそうだな。
「いい事だ。織斑。白式も汎用型になったとは言え、元々は攻撃に特化し高い機動性を活かして近接格闘戦で相手を打ち破るIS。その方面はみっちり鍛えてやるぞ…。楽しみにしていろ。案ずるな。医務室には点滴を各種揃えるように言っておく。」
 何だよ…。その邪悪極まる笑いは…。
 俺、生きてここを卒業できるんだろうか…?
 凄え、不安だ…。
「あ。そだ。紅椿とエクソルツィストの追加パッケージも披露しようよ。」
「あ。はい。」
 俺は端末を操作して、パッケージを呼び出す。

「紅椿とエクソルツィストにも、パッケージを作っておいたとはね。」
 生徒会室で書類仕事をしていたら、楯無さんが話しかけてきた。
「束さんから、頼まれていたんですよ。箒も大分腕を上げましたけど、紅椿は絶対に狙われ続けますからね。用心に越したことはないですって。」
「でも。あの発想は意外でしたね。シンプルですけど、相当にスペックを底上げしますし。」
「ゴテゴテさせるだけが、追加兵装じゃないって事ですよ。それに、紅椿はそれほど追加兵装を必要としないISですから。」
 そもそも、追加兵装が無くともあらゆる状況に対応できるのが第四世代IS。
 それに天火明命があるから、必要に応じて兵装は追加される。
 バイパス関係を少しいじったけど、それ以上はいらない。
 エクソルツィストにしても、同様。
 これは俺の予想だけど、世代が進むごとに追加兵装パックは結構シンプルになっていくだろう。
 各国は理論構築すらできていないが、展開装甲が実用化されれば兵装を追加する必要はほとんどない。
 というより、邪魔になるケースの方が増えるだろうからな。
 紅椿にしても、兵装は至ってシンプルだった。
 展開装甲があるから、必要なかったって事だ。
 第三世代にしても特殊兵装がメインになって、通常兵装はサポートのポジションになりつつある。
 虚さんに答えながら、これからの追加兵装パックの傾向を考えていたら山田先生から呼び出しがかかった。
 何かあったのか?

「医師資格の取得試験ですか?」
 亡国企業の事かと思ったが、何と医師資格に関してだった。
 何でだよ?
「そうだ。アメリカの医師会と保健福祉省から提案があって、日本医師会と厚労省と協議した結果。受けてもらう事になった。」
 それ、強制じゃないか?
 しかも、2国間で法律無視は駄目だろう。
「それだけ。織斑君の医療技術が高いと、評価されたんです。アメリカ側で医師資格を持たないのは社会の損失だと、会議で全会一致の結果が出たそうです。」
 だったら、国内で育ててくれよ。
 只でさえ、医師、看護師、救命士は激務で人が足りないんだから。
「いずれにせよ。学園としても、今後の事を考えるとお前が医師資格を持っていてくれるとありがたい。訓練機器を用いたとはいえ、お前の手術の技術や診断力の高さは保証すると、指導を担当した医務官からのお墨付きだ。試験は今週土曜だ。筆記と実技。特に実技試験は、限りなくリアルなシミュレーションになるのでそのつもりでいろ。」
 拒否権なしかよ…。
 滅茶苦茶横暴じゃねえか…。

「医師の資格試験ですか?」
 遊びに来た蘭達が、目を丸くする。
 そりゃそうだろう。
 俺も未だに、意味不明だ。
「私は、何となく解ります。極めて優秀な救命士・看護師のみならず、医師クラスの様々な知識や技術を教えられたとすれば、指導した担当医は、一夏さんに将来医師になって欲しいとも思っていたような気がするんです。災害の時には、優秀な医師はいくらでもいりますし。」
「シャーリーの言う事は、解るけどな。自衛隊だって人材育成はきっちりやってるぜ。」
 自衛隊関連の病院に勤める看護師を育てる学校で、人材は育成される。
 尤も、倍率は30倍。
 そして、猛勉強に軍事訓練が待っているので楽じゃないが。
「病院への勤務医に救命医の不足は、無視できない問題ですからそれもあると思いますよ。」
 なるほどな。そう言う考え方もあるか。
 医療訴訟を敬遠して、個人開業をしている医師も少なくない。
 他にも、利益が少ない小児科医はそれなりの規模の病院でも人手不足だったり、小児科その物が無かったりもする。
 診療の実習もやらされたけど、小児科の時はとにかく大変だった。
 そのお蔭か、病院の激務にはすっかり慣れたけどな。
 レイラの言葉に気づかされ、習志野で訓練を受けていた時を思い出していた。
 にしても、あれか?
 定期的に、いろんなオペDVDが送られてきたけど、まさかこの日に備えてじゃないだろうな?
 全部、きっちり練習したし、縫合・結紮等の基礎のトレーニングも続けて来てるけど。
 それも、お見通しだったのかな?
「大丈夫。一夏さんなら、絶対パスしますよ。」
 いや。別に、医師の資格が欲しいわけじゃないんだぞ。コリーナ。
「それに、街中で急病に倒れた人が出た時も助かる人が増えるわけですし。」
 まあ。そうだけど。
 今のままでも、それなりに対処できるぞ。蘭。
 
 つ、疲れた…。
 2日後。試験を終えた俺は、ベッドに倒れ込んだ。
 国家試験より、遥かに難しいぞ。あの筆記。
 あれって、ベテラン医師クラスの知識が求められるじゃねえか…。
 おまけに、腫瘍内科医等の特殊な分野まで含められていた。
 実技にしても、胸部・腹部。おまけに脳外科に整形外科。その他諸々。無茶苦茶多いし、ハイレベルな手術ばっかだった。技術だけじゃなくタイムまで基準に入ってたっぽいし、日本じゃまずお目にかからないレアな症例もあった。心臓外科の難しさは、突出してたし…。
 おまけに、各種カテーテル治療の技術。
 眼科や耳鼻咽喉科、産婦人科のおまけつき。
 加えて、ハイレベル。
 何で、こうなったんだ?
 とにかく。終わった。
 早く寝よう…。
 筆記は時間内に終わって見直しもできたし、実技も成功したけど合格は多分ないだろう。
 そりゃ、たっぷり経験を積まされたけど、世の中はそんなに出鱈目に出来ていないし。

 が、世の中は酷く出鱈目だった。
 というか、イカれてる…。

「一夏さん。試験に合格なさったんですか。」
 合格していたのである。
 しかも、日本とアメリカ双方から医師資格が与えられた。
 セシリアが驚くのも、無理はないか。
「まさか。お医者さんになるとはね。世の中解らないわね。」
 そうだな。鈴。
 一番、理解していないのは俺だけどな…。
「いずれにせよ。おめでとう。一夏。」
 シャルロットが、嬉しそうにお祝いの言葉を掛けてくれる。
 その気持ちは、ありがたく受け取らせてもらうよ。
「ふむ。これで、またやれる事が増えたな。類まれなるISパイロット兼軍医なら大佐は固いな。」
 何でそうなるんだ?ラウラ。
「とにかく。見事だ。医師としての腕、必ず活かす機会が来るぞ。」
 そうないと思うがな、箒。
「ISも人間も直せるか。まさに万能ね。」
 玲子の言う通りか…。
 日常も、変わるのかね?
「一夏様。おめでとうございます。」
 クリスは無邪気だな。
 純粋に祝福してくれるのは嬉しいが、どうしてこうなるかね…。
「かいちょ〜う。これからは、ドクターって呼んだ方がいい?」
 会長でいいよ。のほほんさん。
 少なくとも、ここでは学生だから。
「いずれにしても、若き医師の誕生か。頑張ってね。」
 アンナ。
 それって、異常な状態だって疑問に思わないのか?
「欧米では飛び級制度があるから、一夏の歳でも医師はいるにはいるから不自然じゃないわよ。」
 マールバラさん。
 ここは日本だ。
「でも。一夏なら大丈夫。絶対にいいお医者さんになる。クリニックを開業する時には、不動産屋さんとかにも心当たりがあるから問題ないし。」
 どうして、そういう話が出てくるんだ?簪。
 俺は、開業する気はないぞ。
「一夏君。おめでとう。これで活躍の場がさらに広がるわね。医療分野はほとんど網羅か。」
 錦上添花と書かれた扇子を広げながら、楯無さんがお祝いしてくれる。
 めでたいこととかお祝い事が重なるという意味だが、そんなにめでたいですか?

 とにかく、何だよこの異常な状態は…。
 やっと頭痛の種が片付いたのに、何でこうなるんだ…?
 さて、講義の準備に行くか。
 やれやれ…。

 講義を終えて、俺が食堂に来るとある事が話題になる。
「バイクも来たの?」
「ああ。でも、事前に買っといたんだよ。」
 昼休みの食堂で、海老フライ定食を食べながら俺は鈴の質問にそう答える。
「あれ?一夏って、バイク乗るの?」
「言ってなかったか。バイクを使った偵察や、乗ったままの射撃訓練も受けてたからな。最近更新されたやつを買って、訓練は続けてるんだよ。ブランクあるとなまるしな。」
 ちなみに、陸自で更新が進んでいる偵察用バイクはカワサキ KLX250。
 ま。それでも高級バイクを売り込みに来ると踏んで、念の為2台買った。
 ちなみに買ったのは、カワサキ ZZR1400に、ドゥカティ スーパーバイク 1199 パニガーレ R。
 おかげで来なくなった。
 にしても、予防措置取らないと周囲が騒がしいのは勘弁してほしいぜ。
 無駄遣いしているみたいで、凄え嫌なんだが…。
 シャルロットに答えながら、俺は密かに溜息をつく。
 ちなみに、パジェロと軽装甲機動車もある。
 パジェロの自衛隊仕様は、軽装甲機動車の先代である73式小型トラックとして採用されている。
 様々な訓練で使っているので、これで運転テクニックを錆びつかせないようにしている。
 そう言えば、ハンヴィーも買っておいた方がいいって言われたっけ?
 俺、PMCの経営者じゃないんだけどな…。

 それにしても、医師になるとはな…。
 これで、自衛隊病院で治療をする事にもなった。
 亡国企業対策、生徒会長、技術顧問、社外取締役、安保理特別理事。
 それに、医師の肩書が加わる。
 その内、過労死するんじゃねえか?俺。
 事態が色々加速しているのに、勘弁してくれよ。
 それとも、俺が医師であった方がいざという時にいいという政治的判断が働いているのか?
 その線は、捨てきれないな。
 だとすると、俺が医師になった事は事態の加速を表す指標の一つと言えるんだろうな。

後書き
国際レベルでの調査の連携強化を終えて、帰国した一夏。
帰国しても、再び事態は加速します。
転入生は、外務大臣すら知らないSISと首相との協議の結果の様です。
ISも今までの、BT兵器搭載機の集大成ともいえる新鋭機。
加えて、束が陽炎の改修を行い追加兵装パックを届けます。
白式は、さらに通常のISとはカテゴリーが違うISになっています。
コアは、何を考えているのでしょうか?
そして、寝耳に水の医師資格取得。
今後の戦いの激化に、備えての事でしょうか?
絶対防御があっても、亡国企業相手では負傷しないとも限りませんから可能性は否定できないでしょう。
加速する事態の中心にいる、一夏。
これから、さらなる試練の時と言えるかもしれませんね。






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