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zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第33話 What birds do you think? Phase6

<<   作成日時 : 2013/11/17 22:55   >>

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 やっぱ、あれが原因だろうな。
 俺がSR班に入り、それからしばらくして感じ始めた違和感。
 諜報組織とは、別の空気。
 そんな中でも俺は、日野さんに技術を叩き込まれながら、任務を遂行していった。
 だが、違和感が消え去った訳じゃなかった。
 諜報活動の合間に入り、やがてメインじゃないかと思い始めた任務。
 冷戦が終わってからも続いていた、旧共産圏の要人暗殺。
 何時から俺達は、KGB(Комитет государственной безопасности:ソ連国家保安委員会)やシュタージ(Ministerium fur Staatssicherheit:ドイツ民主共和国国家保安省)になったのかと思ったね。
 どこかに行くたびに、殺し。殺し。殺し。
 それにうんざりした俺を周囲は嘲笑していたが、それ以上にSR班を俺は嘲笑していたのかもしれない。
 いや、間違いなくそうだろう。
 物の見事に白けた俺は、キューバでの任務を終えてジャカルタに帰るとすぐにSR班を辞めた。
 周囲の視線なんざ気にもしてなかったから、記憶にない。
 一番印象的だったのは、とりあえず飯を食いに入った食堂で狙い澄ましたかのようなタイミングじゃなかったのかと思いたくなったキャスパーとの出会いだ。
 辞めて1時間もしないで、再就職先が決定。
 これが、裏切り者だと思われる理由か…。
 いずれにせよ。はっきりした事がある。

 日本唯一のスパイマスターと言われ、組織を育て上げ守ってきた日野木一佐は、自らの手で組織に幕を下ろしたことだ。
 そして、俺は昔のつてを頼って日野さんの居場所を見つけた。

「青い海!白い砂浜!タックスヘイブン!地上の楽園バハマ!こことはね。スパイ小説みたいだよ。」
「日野さんだって、無職ではいられないだろう。太いパイプがあって、就職先に困らない。加えて、昔の事を考えれば自ずと場所は限られるさ。未だに、アメリカからテロ支援国家に指定されているキューバ。そして、そっちの情報に詳しいとなればそっちの仕事が回ってくる。アメリカにいるより、中間点のここの方が周辺諸国の情報も集まるしな。」
「確かに。そうですね。」
 ソフィも、トージョと同意見だった。
 日野木の居場所は、バハマだった。
 昔のつてを頼った結果、日野木がNSA(National Security Agency:アメリカ国家安全保障局)と浅からぬ関係を持っていることも解った。
『尤も、それは以前から、感じてはいたけどな。』
 日野木のキャリアを考えれば、アメリカの国家機関と浅からぬ関係にある事を想像するのは、難しい事ではない。
 故に、突き止めるのは、決して難しくなかった。
「ココさん。これって、日野さんからの「ちょっと話でもしないか?」って誘いかもしれないぜ。拍子抜けする位、簡単に解った事が証拠になる。」
「かもね。で、トージョは何を話すわけ?」
「さあ。俺個人はとりあえず聞きたい事を聞いたら、とっとと帰るつもりだよ。」
「ま。トージョが何を話そうと、結果がどうなろうと、私はトージョの判断を尊重するよ。好きなだけ話してきなよ。」
「つうか。向こうが、勝手に喋り捲ってくる気がする。」

「ほう。思ったより早かったな。ま、お前なら当然か。」
 ラフな格好をした日野木が、トージョの前にいた。

「こうして、直に顔を合わせるのは、お前が辞めた時以来だな。あれから何年になる?」
「はあ?何、言ってんだか。あんたが、作戦の年、月、日、時間。忘れるわけねえだろうが。」
 日野木は小さく笑って、ココとソフィに挨拶をする。
「初めまして、ミスヘクマティアル。ミスターアルムフェルト。元SR班班長の日野木と申します。今回は、私の部下の暴走で飛んだ目に遭われましたな。被害はどうでしたか?」
『何とも、人を喰った性格だ。曲者だとは思っていたけど、予想以上か。』
 神経が太いのか肝が据わっているのか、ソフィは判断が付きかねて心の中で苦笑する。
「初めまして、日野木元一佐。車が2台廃車になりましたが、それ以外の損害はゼロです。」
 ココは、殊更気にしていない様子で答えた。
「さすがですな。私の部下程度では、相手にもなりませんでしたか。」
「いえいえ。結構、冷や汗をかきましたよ。何はともあれ、昔話に花を咲かせては如何ですか?その為に、来たわけですし。」
「では、お言葉に甘えて。」
 日野木はトージョを連れて5分ほど歩く。

「で、どうだった?」
「そう来るのか?てか、何で、こんなにあっさりなんだよ。追い回されて、しこたま弾を撃ち込まれたのに。」
「利益が出れば、多少の損失には目を瞑る。あの兄妹はそういう人種だ。」
「ま、そうだけどな。キャスパーはえらくご機嫌だったよ。」
「それはそうだろう。東南アジアの武器市場を、その手に握った。その気になれば、戦争をも支配できる。やるかどうかは別にしてな。」
 言い方が気に入らなかったのか、トージョの目が鋭さを増す。
「何で、こんな事をした?SR班と地方の軍閥を一緒に壊滅させて、あんたに何のメリットがある?後生大事に育てた組織は、どうでもよくなったのか?」
「答えは、日本での報道。俺の予想が当たっているか、確認したい。事後報告をしてくれ。」
 自分のペースを崩さない日野木を見て、何を言っても無駄だと悟ったトージョは、日本での報道を話し始める。
「襲撃事件なんて、報道されてないよ。ロシアンマフィアから仕入れたAKを使用した、ジャンキーの集団乱射事件。民間人への被害者はゼロ。末路は、ラリった挙句の交通事故で全員死亡。以上ですよ。」
 トージョの事後報告を聞いた日野木は、自嘲する様に笑った。
「だろうな。お前も含めて、SR班のメンバーは既に殉職した自衛官。死体が大暴れなんて事実が露見したらどうなるか、猿でも解る。それでも、奴らは志願した。HCLIとの戦いをな。お前は理解していないみたいだが、お前ンとこの若様は、とっくに理解しているぞ。志願した理由をな。」
「話してくれるんですよね?だから、来たんですから。」

「お前がSR班を辞めた理由。それを考えてみろ。SR班が、変わっていったのさ。武器取引で資金を確保していたSR班を、武器その物が変えていった。人間も組織も、すっかり変わった。手遅れになる程にな。気をつけろよ。火の粉を振り払うつもりが、お前たち自身が火元になってるかもしれんぞ。」
 部下を注意するような目つきで、日野木はトージョを見る。
「武器を手にして、戦いたくなった。日野さんでもそれを止められなかったって事ですか。」
「ああ。その時から、結果は見えていた。俺にできる事は、あいつらの望みを叶えてやる事。戦いの場を、用意してやる事だけだったよ。結果、SR班はその歴史に幕を下ろした…。」
『そんなに戦いたくなるようなもんか?俺なんて、暗殺任務にうんざりしていたクチだけどな。それとも、俺自身が異端だったのか…?』
 死んだ嘗ての同僚たちの事を考えると、トージョは複雑な気分になった。
「別に、お前が気に病むことじゃない。奴らには奴らの、お前にはお前の望みがあった。そしてそれが違った。世間じゃよくある事だ…。」
 どこか苦さを含んだ日野木の言葉を、トージョは黙って聞いていた。

「さて、答えの核心と行くか。「立つ鳥跡を濁さず。」と言う言葉があるな。」
「辞める奴が、綺麗に去るってことですか?」
 いきなり何を言い出すのかと言う口調になって、トージョは日野木を見る。
「実の所。そんなのはほとんどない。俺の目の前に実例がいる。」
 それを聞いて、トージョは今回の真相を知った。
「そうでしたか…。初めはさっぱり解りませんでしたが、解ると何てことないですね。」
「そう。何てことないな。お前という飛んで行った鳥を見て、残された部下たちの一部はお前を裏切り者とみなし、残りはお前を羨んだ。」
『お前は、俺を裏切り者として見ていたんだな。鏑木。俺が辞めた理由を理解できなくて。考えてみればお前は日野さんに心酔して、どんな命令にも一切疑問を持たなかった。死ねと言われれば、死んだだろうな。そんなお前が俺が辞めた理由を理解できなかったのは、自明の理か。他の連中も似たようなもんか…。羨んだ連中は、班の中でも最初から変わり始めて戦いを求めていた。でも、俺みたいに思い切りよく辞められなかった。それが羨ましかったのか。それとも悔しかったのか…。』
 日野木に負けず劣らず、トージョは複雑な気分になった。
 結果的には、SR班に幕を下ろしたのは日野木と自分という見方もできるからだ。

「結局の所、全員お前に嫉妬して羨んだわけだが、最後は満足しただろう。気にすることはない。報告ご苦労だったな。よければ、また来い。俺の技術を一から仕込み直して、一流のスパイにしてやる。」
「いいですよ。俺は、ココさんの下で働いていて満足していますからね。今更、昔に戻る気はないんです。才能ないですし。」
 そう言って、トージョは歩き始めた。
「才能はある。SR班の中でお前は唯一生き残った。そして、ここまで来た。持っていた情報を最大限に利用し、思考して生き残る術を掴みとった。情報を入手して最後まで生き残る者こそ、一流のスパイだ。」
「俺が荒事に慣れてるからですよ。ずっとその世界を、歩いてきたんですから。んじゃ、もう会わないでしょうけど元気で。」
「ああ。そうだ。お前に渡す物がある。そっちの若様に関係のある情報だ。風の噂で調べていると聞いて、集めて置いた。使え。」
 日野木がUSBメモリーを渡す。
「餞別として、もらっておきますよ。」

「お父さん。お昼ですよ。」
「お昼。」
 声の方向を向くと、タイ人らしい若い女性と幼い少女がいた。
 トージョは、少女にどこか日野木の面影を見た気がして日野木の顔を見る。
 してやったりと言わんばかりの日野木の表情を見た時、トージョは理解した。
 偽装結婚したと思っていたが、それすら嘘。
 文字通り嘘だらけ、筋金入りのスパイだという事を。
 だが、それが無性に愉快だった。
「親子三人、仲良く。」
「お前も、仲間とはうまくやれ。そろそろケツを落ち着けろ。」
「そうしますよ。なるべく。」
 日野木は家族の元へ。
 トージョはココとソフィの元へ。
 それぞれ歩いて行った。
 鳥が自分の巣に、戻るかのように。

後書き
SR班、日野木、トージョの話は遂に完結です。
SR班の目的は、あくまで諜報任務。
資金を調達するために、武器売買をしていたのにそれが組織と人間を変えてしまったというのは確かに皮肉としか言いようがありませんし、日野木にしてもとんだ誤算だったと思います。
日野木自身は、根っからのスパイ。
トージョは、暗殺までやるようになったSR班にすっかり白けた訳ですが、朱に染まらなかった白。
まさに異端者だったと、思います。
だからこそ、周囲はトージョがSR班を辞めた理由を理解できなかったんでしょうね。
SR班のメンバーは戦いたいという望みを叶えた訳ですが、何とも後味が悪い気がします。
それでも、飛んでいる鳥はそれぞれの空を飛んでいくのでしょう。
日野木は諜報の世界の空を。
トージョは、荒事の世界の空を。
それぞれ思うが儘に…。






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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ヨルムンガンドの最新話読みました。私もここは読んでいていろいろ考えさせられました。
さてソフィに関する情報。一体どんなものなのか。日野木さんですからね、価値は高いのかな?
次回からは結構話が深くなりそうな予感ですね。バルメさんやエリさん、南さんともココさんみたいに絡んでくれないかな?お風呂とかいろいろとね(笑)
更新待ってますので頑張ってください。
ザクザク
2014/03/11 00:55
ザクザクさん。
コメントありがとうございます。

>さてソフィに関する情報。一体どんなもの
>なのか。
 調べた相手が日野木だけに、ココ達が欲し
 がっている情報の可能性も高そうですね。
 今後の展開に、影響を与えるかも。

>バルメさんやエリさん、南さんともココさ
>んみたいに絡んでくれないかな?お風呂と
>かいろいろとね(笑)
 道徳的に、ヤバくないですか?それ(笑)。
 なったら、さぞ皆が腹を抱えて笑いそうで
 すね。
 ギャグも多く混ぜた話は、書いてみると面
 白いかも。
CIC担当
2014/03/11 21:37
 ヨルムンガンドのSSを探していたら見つけました。
 感想として面白かったです。
 ココのソフィに対する感情の変化に期待しています。(恋愛もしくは結婚まで希望)(他の女性キャラとの絡みも)
 次話はどれくらい出来ているでしょうか?
 4、5月中に更新が有りますか?
 もちろんリアルが忙しかったりしているのだと思います。無理せず頑張ってください。
 更新楽しみにしています。
KG
2014/04/28 01:46
KGさん。
コメントありがとうございます。

>ココのソフィに対する感情の変化に期待し
>ています。(恋愛もしくは結婚まで希望)
>(他の女性キャラとの絡みも)
 私自身の構想の中でも、ココのソフィに対
 する心情変化って変数でどうなるか解らな
 いんですよね。
 ここの所は、話の進み方次第でしょう。
 恋のライバルが現れると、面白いかも。

>次話はどれくらい出来ているでしょうか?
 それなりの準備は出来ているのですが、今
 後の構想が今一つ固まっていないのが状況
 です。
 ヨルムンガンド計画との絡みとか、あまり
 に原作沿いだと逆につまらないですからね。
 原作を下敷きにしつつも、自分なりにオリ
 ジナルを書きたいと思っています。
CIC担当
2014/04/28 18:29

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