cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第76話 黒き女神の刃

<<   作成日時 : 2013/11/17 00:00   >>

面白い ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 2

 何だ?こりゃ。
 俺はIS委員会からの通達に、首を傾げていた。
 こういう物まで、作るのかよ。
 まあ、無いに越したことないけど。
 はっきり言って、危ないぞ。
 とはいえ、亡国企業のやり口もエスカレートする一方。
 やるしかないか。

「まさか、こういう物を作れと言ってくるとは想定外でした…。」
「そうだな。だが、ここの所の亡国企業の動きを見ると委員会の危惧も理解できる。」
 職員室で真耶と千冬は、一夏に来た通達についての書類を見ていた。

通常の歩兵携帯兵装では対抗不能な場合及びISに準じた機動兵器との戦闘を想定した個人携帯装備の開発に、取り掛かられたし。

 直訳すると、現用の軍用アサルトライフルや分隊支援火器。歩兵携帯ミサイルを凌駕する、個人携帯兵装の開発をしろと言う事である。
「ISの装備の技術を流用すれば楽だろうが、一夏はあまり気が進まんだろうな…。」
「だと思います。ですが、やらないわけにも行きませんし…。」
 装甲の換装と瑠璃翼への改修を終えた白式は、さらに性能が向上している。
 それに伴い、一夏が狙われる可能性は当然増す。
 委員会としては、白式が奪われる事態は絶対に避けねばならない。
 となれば、一夏も相応の事態に対処できなければ困る。
 その為の、通達だった。

「大変だね。一夏も。」
 今日の昼食は、シャルロットの手作り弁当。
 主食はパンだが、おかずは野菜、肉、魚とバランスを非常に考慮した物になっていて、食べるのが楽しい。
「まあ。今までの蓄積が応用できるから、楽だけどな。もう、ラボに設計図送ったから今夜試射。」
「さすがね。」
 一夏の開発スピードの速さに、鈴が感心する。
「幸い。筆記試験は滞りなく終わったけど、実技試験は一番リスクが高い。それを考えると、無駄な準備にはならないさ。俺だって、街中でISを展開して派手にドンパチは御免だからな。うん。ポトフ美味い。体が暖まる。」
 本当。シャルロットの作るフランスの家庭料理は、美味い。
 絶対、いいお嫁さんになるな。
「良かった。こっちは魚介と野菜のテリーヌ。バランスよく食べるのが、体に一番いいしね。あと、ラタトゥイユもあるよ。」
 シャルロットが嬉しそうに、テリーヌとラタトゥイユを皿に載せて渡してくれる。
 どれも美味そうだ。
 シャルロットのお袋さんは仔羊を使ったレシピだったので、シャルロットも当然同じ。
 まさに、お袋の味ってやつだ。
「だな。うん。これも美味い。」
 あれ?みんなの視線が、なんか鋭い…。
 俺、何か悪い事言ったか?
「一夏。明日は、私が作ってくるわね。イスラエルの料理って、ほとんど食べた事ないでしょ。期待してて。」
 アンナが、ウィンクしながら言う。
 そう言えば、イスラエル料理店てほとんどないんだよな。
 ヘブライ語は話せるし一応作れるけど、興味あるな。
 って、みんなして対抗意識燃やすなよ。
 全員の弁当、美味いんだから。
 何で、こうなるんだか…。

「で、どう思う?織斑。」
 放課後。
 セシリア達の訓練を見ながら、千冬は一夏に質問する。
 無論、ディースにどこまで対抗できるかだ。
「メニューが厳しくなった分心配でしたけど、きちんとこなしてくれてますから実力は上がっています。ですが、五分の状態に持っていくにはもう少しかかりますね。シャルロット、箒、クリスはセシリア達ほどじゃないですけど、まだ努力が必要でしょう。先輩方は、何の問題もないですけど。他は、もっと頑張ってもらわないと。」
 元々高い素質を持つ、シャルロット。
 剣術の天賦の才を持ち、それをIS戦に活かせる箒。
 エクソルツィストに慣れてきたクリスは、どうにか五分の勝負ができると判断した。
 が、セシリア、鈴、玲子、簪、アンナに関しては、連携の必要があると一夏は判断した。
 幸いな点は、シャルロットと箒がシュヴァルツェ・ハーゼ隊長のラウラとほぼ同格の存在になった点である。
 シャルロットは、基本スペックが高く拡張性と汎用性に富んだイリュジオンの性能を十二分に活かして、あらゆる戦況に対応できるだろう。
 紅椿は無限にエネルギーを増幅する絢爛舞踏を使用して、展開装甲を最大限に活用できる。
 2人とも、十分な戦力になる
 蘭達も、頭角を現している。
 一夏は第3アリーナでの蘭達の訓練の状況を見ているが、講義と自主訓練で当初に比べて技量は非常に高くなっている。
 後方支援や牽制に専念すれば、十分な戦力になる。
『戦い方を考えても、いい時期かな。蘭達は個人戦闘がしっかりできるようになったから、ある程度は連携の基礎を教えるか。』
 一夏は蘭達の成長を見て、カリキュラムの繰り上げの検討を始めた。

「一夏君。一息入れない?」
 放課後の鍛錬と兵装の試射。会社の仕事を終えて個人兵装の案を練っていると、陣中見舞と書かれた扇子を広げて茶器と茶菓子を持った楯無さんが入ってくる。
 時計を見ていると、結構時間が経っていた。
「そうですね。そうしますよ。」
 時間の経過に気づくと、急に甘い物が欲しくなったしな。

「大変ね。一夏君も。個人装備も、作らなきゃならないなんて。」
 薯蕷饅頭を食べながら、楯無さんが言う。
「そうでもないですよ。ISの技術が、かなり流用できますから。問題があるとすれば、こういう物が必要な程に亡国企業が何をしでかすか解らない点ですね。」
「確かに。」
 俺の最大の頭痛の種が、それだ。
 冬菊の時みたいなことがあちこちで起こるなんて想像したくないし、テロだって増える可能性がある。
 特にテロは、敵が見えない。
 いきなり、襲い掛かってくる。
 根源にある物の根が深すぎるから、対処を間違えれば取り返しのつかない事になる。
 火を起こされて消火にてんてこ舞いになったら、こっちは動きがほとんど取れない。

「NSAにSISといった機関も、その点には随分神経過敏になっていますね。アメリカは特に狙われやすいですし、イギリスはアメリカと歩調を合わせる可能性が高い。」
「そうね。ただ、日本だって無関係じゃないわ。悪魔の詩の件もある。」
 日本はテロには合わないと考える人が大半だが、実は遭っている。
 それが、悪魔の詩訳者殺人事件だ。
 これは、インド出身の小説家サルマーン・ルシュディー氏の書いた小説悪魔の詩を翻訳した筑波大学准教授五十嵐一氏が、喉を搔き切られて殺された殺人事件だ。
 喉を搔き切るという殺し方は軍用ナイフや包丁でもできるが、そのほとんどが刺殺だ。
 この殺し方は、刃が反った湾刀状のナイフや剣が凶器と見ていいだろう。
 その他の状況証拠から見てもイスラム過激派が、一番説明がつく。
 何しろ、当時作者のルシュディー氏の首に賞金が掛けられていた。
 イスラム世界にとっては、悪魔の詩という小説はそれほど許し難い物だった。

「見方を少し変えると、俺もテロの標的になりますね。ISの技術を向上させた、事実があります。イスラムの戒律上ISを使えないアラブ諸国は、俺にいい印象を抱いていないと考えても考えすぎじゃないですよ。」
 イスラムの戒律では、女性が肌やボディーラインを出す事を戒めている。
 ISスーツは、物の見事にイスラムの戒律に反している。
「それを言ったら、ISに関係する人間は全員テロの対象よ。」
「否定はしません。それでも、可能性は十分あるって事ですよ。」
 以前、コーランがビリビリに破かれて捨てられていたのを発見したイスラム教徒が、厳しく処罰せよと警察に要求したことがある。
 けど、日本の法律では処罰の対象にはならない。
 精々、「ゴミを散らかさないように。」
 と、口頭注意するのが精一杯だ。
 とにかく、俺の場合色々と注意することがありすぎる。
 やれやれ、中学の時は想像もしていなかったな。
 ちなみに今度亡国企業の件で、DIH(防衛省情報本部)、公安調査庁、公安外事課との会議がある。
 当然、俺も出席するがテロに対する懸念は絶対に出るな。
 事実、IS学園と受験会場が襲撃されてる。
 日本としても、亡国企業を差し引いても対応が必要になるわけだ。
 そして、俺達も。
 あの新型と戦うには、時期が早すぎる。
 セシリア達のスキルアップ後で、あって欲しいな。
 今戦うのは、不利だ。

「ドクターは、また動くらしいわね。」
「あの愚か者、まだ懲りんと見えるな。もはや、ゴーレムではどうあがこうと歯が立たん。それが解らんのか。」
 スコールの話を聞いて、エムは呆れる。
 今までの戦闘データから、一夏がゴーレムを無力化する手段を有していることは判明している。
 それを差し引いても、IS学園の専用機持ちにとっては敵にもならない。
「既に卒業生の中から、ダリル・ケイシーが正式にカナダの国家代表となっている。他の代表候補もそれに迫る強さだ。それを考えれば、結果は自ずと見えている。」
 3年生で虚と並んで専用機持ちだったダリルは、今年正式に国家代表となっている。
 一夏が開発したケルベロスを自在に駆るダリルのスキルは、それほど高い。
 常にコンビを組んでいたフォルテも、オーストラリアの国家代表の最筆頭になっている。
 一夏が入学してから度々手合わせをして、2学期になってからは毎日模擬戦を行っている2人はその技量を飛躍的に高めていた。

「おそらく、奴がすることは我々では止められんだろう。ならば、利用するのがいいだろうさ。」
「そうね。それがいいわね。ディースも調整が間もなく終わるわ。消耗させてから、仕掛けましょう。今の段階なら、互角に戦えるのは限られる。チャンスね。」
 スコールとエムは、グレイが自分たちの指揮系統から逸脱したと考えて今後の作戦を立案していた。

「選考終了だな。」
「ええ。これで戦力が、さらに充実します。」
 今までの授業の結果から、千冬達武装教官は準専用機持ち扱いの生徒の選抜を終えた。
 内訳は、1年生と2年生がそれぞれ4人。
 専用機持ちを除いては、各学年ではトップクラスである。
 特に2年生は、経験の差から技量が高い。
 連携すれば、ゴーレムの相手は可能だろう。
「これで、ゴーレム対策はさほど問題ないだろう。」
「後は、新型ですね。白式の瑠璃翼は広範囲の支援が可能とはいえ、攻撃が集中する以上、オルコットさん達は連携が必須になりますし。」
 千冬が、考え込む表情になる。
 アンナが転入する前なら、考える必要はない。
 だが、今のアンナを単独で戦わせる訳には行かない以上、セシリアと鈴のペアか簪と玲子のペアのいずれかに加える必要がある。
「ロッテからケッテか…。時代の逆行だな。」
 第二次大戦中。
 戦闘機の連携の最小単位は、当初3機編成のケッテだったが研究が進み2機で編隊を組むロッテが基本となった。
 IS戦も基本的にはチームを組む時の構成は偶数であり、それはロッテがいくつも集まった結果である。
「一度、試してみた方がいいかもしれませんね。」
「そうだな。」

「一夏。お昼にしましょう。」
 アンナがバスケットから、手作りの弁当を広げる。
 主食は、カアッハと呼ばれるスパイスをつけて食べる長いパン。
 中東でも広く食べられる、デュラム小麦をそぼろ状にしたクスクスのイスラエル風。
 羊肉を長い棒に巻きつけるようにして塊にしたものを炙ったシュワルマを削いで野菜と共にピタパンと呼ばれる薄い円形のパンで包んだ物。
 ひよこ豆にパセリとコリアンダーにスパイスを混ぜて揚げた、ファラフェル。
 摩り下ろして水気を切ったじゃがいもに香草や塩コショウを入れてカリッと焼いて、好みのソースをかけたじゃがいも料理レビボット。
 レモン汁、塩コショウで味を調えて、刻んだにんにくにコリアンダーを入れて、豆や赤ピーマン等の野菜を入れた焼きナスのサラダ。
 他にも、野菜や果物を使った料理が並ぶ。

「はい。どうぞ。」
 どれどれ。
 うん。美味いな。
 スパイスをつけてパンを食べるのは初めてだけど、カアッハって美味いな。
 クスクスも食感が面白いし、トマトペーストに玉ねぎを始めとする野菜が入っていて美味い。
 この薄いパンで包んだのは、ケバブみたいで美味い。野菜もたっぷり入っているからバランスもいいな。
 このファラフェルは、コロッケみたいでごま風味のソースが日本人向けだな。
 レビボットはソース次第で味が様変わりして、飽きがこない。
 焼きナスのサラダも美味いな。
 ヘブライ語はマスターしているけど、イスラエル料理ってほとんど食べた事なかったが美味いな。
 今度、専門店を見つけて行ってみるかな。

「ご馳走様。凄え美味かった。今度、作り方覚えてみるよ。」
 一夏が満足そうな顔で、アンナに礼を言う。
「喜んでもらえて嬉しいわ。作り方で解らない事は教えられる限り教えるから、遠慮しないでね。」
「ああ。よろしく。」
 一夏の笑顔にアンナも笑顔で答えながら、優越感に満ちた視線をセシリアに送ってきた。
 それを見て、セシリア達はアンナが橋頭保を得て攻めに入ろうとしたことを悟った。

 あれ?また、雰囲気が…。
 あ、そうか。
 女子だけに、料理の腕で競い合うのか。
 俺にはそういう考えないから、よく解らんが。
 喧嘩はやめろよ。
 さて、腹も膨れたしお仕事お仕事。

 週末。
 俺は、DIH、公安調査庁、公安部外事課に警察庁警備局国際テロリズム対策課を加えた合同会議に出席していた。
 今の議題は、やはり国内のテロに関してである。
「テロリストが国外から来る場合としては、我々が情報交換を密にした上で入国管理局に危険人物のデータを送り空港警察が確保。という形になるでしょうか?」
 国際テロリズム対策課の室町課長が、基本的な体制の確認をする。
「そうですな。各県警のSATや陸自が対応するとなると効率的にとはいかないでしょう。」
「自衛隊を各部に駐留させ続けるのは、国民への不安にもなりかねませんからな…。」
 公安部外事1課長を務め公安部長の懐刀と言われる高畠参事官と、DIHの明石本部長が同意する。
「織斑さんは、どうでしょうか?」
「私も賛成です。但し、練度をさらに上げるのが大前提です。組織も装備も充実させる必要があるでしょう。」
 室町課長に、条件付きで同意する。
 けど、これは中々難しい問題だ。
 いわゆる、縄張り意識。
 爆弾や不発物の処理は、機動隊や自衛隊の爆発物処理班が担当する。
 危険な作業だけにプロフェッショナル意識が強いし、プライドも高い。
 下手をすれば、連携どころか軋轢を生む。
 そうなっては、亡国企業がつけたテロという火を消すどころじゃない。
 そこは十分理解しているので、俺以外渋い表情になる。
 基本的に、機動隊も空港警察や水上警察も警視庁の組織の一部だけど、縄張り意識ってやつとは無縁じゃない。
 まあ。組織の縄張り争いなんて、どの国でも程度の差こそあれあるのが普通だ。こればっかりは、難しい。

「難しいことは重々承知の上ですが、やはりテロ対策において管轄部署ごとに様々な事態に対応できるようにすべきではないでしょうか?特に、爆発物の様な速やかに処理すべきものが発見された場合は、一刻を争います。」
 出席者が、それぞれ話し合う。
 難しい事は、解っている。
 けど、只でさえ日本はテロ対策が甘い。
 各部署に、対テロ特殊部隊が必要だと俺は考えている。
 テロの厄介な所は、なりふり構わないで何をしでかすか解らないところだ。
 だからこそ、様々なケースに対処できるようにする必要がある。
「どうでしょうか?各地の機動隊の爆発物処理班を、テロ対象になる可能性の高い空港等に出向させて現地部隊に技能を習得させるというのは。幸い、空港警察も水上警察も機動隊と同じ警視庁の組織の一部。これなら、揉め事も怒らないでしょう。」
 高畠参事官が、案を出す。
 成程ね。
 技術習得のための出向は、珍しい事じゃない。
 それに、20式軽量自動小銃が一斉に配備されることが決定し既に大量に発注されている。合同訓練の際に研修をする事も出来るか。
「私は、良い提案と考えます。他の方々は如何でしょうか?」
 全員が賛同した。
 というより、これなら各部署も納得できるからだろうけどな。
「では次に、各国のテロ組織の活動と日本の関係についてですが…。」
 明石本部長が、各国のテロ組織の情報についての説明を始める。
 会議は4時間後に終わって、記者会見を終えて俺は学園に戻った。

「一夏。お帰り。」
「ああ。ただいま。」
 コートを脱ぎながら、出迎えに来たシャルロットと歩く。
「会議はどうだった?」
「ああ。うまくいった。少し、面倒な場面もあるにはあったけどな。」
 実際、組織間の連携と言うのは口で言うほど簡単ではない。
 組織固有の事情もあるので、それを考慮する必要がある。
 技術顧問と社外取締役。
 開発と経営双方に携わる一夏は、それを熟知していた。
 その度に、調整役に回ったり出席者の同意を得ようと知恵も絞った。
「疲れてるなら、甘い物どう?オランジェット作ったんだ。」
「サンキュ。戴くよ。」
 オランジェットは砂糖やシロップに漬け込んだ柑橘類の皮をリキュールに浸した後に、湯煎して溶かしたチョコレートにくぐらせて冷やして固めたフランスの菓子である。
 日本で初めてみかんを食べたシャルロットは、みかんの皮でも作れると考えて用意していた。
 何より、皮やチョコレートに含まれるポリフェノールが健康にもいいので、これを選んだ。
 一夏が倒れた理由を知るのは、武装教官を含めて極僅か。
 それ故に、一夏に何か用意する時は少しでも健康にいい物を作ることを心掛けていた。

 うん。うまい。
 皮の苦みとリキュールの風味にチョコレートの組み合わせが、何とも言えない。
 使っているチョコレートも、甘さと苦みのバランスがちょうどいい。
 ベルギー産の、高級チョコレートだな。
 シャルロットが作るフランスの家庭料理や菓子は、やっぱりうまい。
「はい。蜂蜜入りのホットミルク。暖まるよ。」
「サンキュ。」
 暖かいミルクと蜂蜜の組み合わせは、緊張をほぐしてくれるな。
 IS学園、聖マリアンヌ女学園、横須賀沖、そしてIS学園受験会場の襲撃と立て続けに亡国企業の襲撃があって、国内の治安維持部門はどこも神経がピリピリしてる。
 会議の空気にもそれが伝わっていたから、はっきり言って緊張したな。
 諸悪の根源は、俺だから自業自得だけどな…。
 さて、そろそろ部屋に戻ってやる事やるか。
「ごちそうさま。美味かったぜ。じゃあ、俺は仕事とかあるから。」
「お粗末さまでした。」
 今度、何かお礼しないとな。

『一夏…。また辛い思いしてるんだ…。そして、全部背負い込んでる…。』
 片づけをしながら、シャルロットは一夏の事を考えていた。
 面会謝絶の状態になった時から、シャルロットは一夏に何かあったと考えていた。
 厳しい鍛錬をしてはいるがセルフコントロールを心掛けて、医務室での綿密な定期検査を受けている一夏が急にそうなるとは考えられなかった。
 フィジカル面でなければ、十中八九メンタル面。
 それが、シャルロットが出した結論だった。
 故に、弁当は栄養に気を配りながら食べていて心が和むようなものを作っていた。

 さてと、寝るとするか。
 既存の枯れた技術で様々な状況に対応できる複合兵装の設計を終えてラボにデータを送って製造を開始させた俺は、パジャマに着替える。
 新規技術で開発された兵装は強力だけど、燃費が良くない。
 なら、既存の問題が出尽くした技術を組み合わせた方が信頼性は高い。
 今回は、特に目新しい技術は使っていない。
 だからこそ、整備性も稼働率も高い。
 燃費も問題ない。

 一方、隣の部屋ではシャルロットがそっとベッドから抜け出していた。
 向かう先は、無論一夏の部屋である。
 今日の会議での疲れと、倒れた原因であろうメンタル面がどうしても心配でせめて添い寝をして少しでも癒したかったのである。

「一夏の所か?」
 不意に、ラウラが声を掛ける。
「私に気づかれずに部屋を出るには、まだ技量が不足しているな。」
「そう…。だね…。」
 これで、一夏の部屋には行けない。
 シャルロットは、そう思った。
「一度きりだ。二度はない。」
 そう言って、ラウラは黙った。
 シャルロットが一夏の部屋に行こうとした理由は、ラウラにも理解できていた。
 できれば、自分も行きたい。
 だが、軍隊育ちのラウラでは、シャルロット達の様には行かないだろう。
 故に、自分のやりたいことを代わりにやってもらうと考えて、あえて邪魔はしなかった。

 え?
 俺がベッドに入った時に、シャルロットがいきなり部屋に入ったと思ったらベッドに入って俺を胸元に抱きしめる。
 え?え?
 一体、何がどうなっているんだ?

「Fais dodo,Colas mon p’tit frere.Fais dodo,t’auras du lolo.Ta soeur est en haut.Qui fait des chapeaux.Ton frere est en bas.Qui fait des nougats.Fais dodo,Colas mon p’tit frere.Fais dodo,t’auras du lolo.Ton cousin Gaston.Fait des gros bonbons.Ta cousine Charlotte.Fait de la compoteFais dodo,Colas mon p’tit frere.Fais dodo,t’auras du lolo.Fais dodo,Colas mon p’tit frere.Fais dodo,t’auras du lolo.(おねんねなさい。可愛い弟コランちゃん。おねんねなさい。おっぱいもらえるわよ。ママは上にいてお菓子を作ってるの。パパは下でココアを作ってるの。姉さんは上で、帽子で遊んでるの。兄さんは下で、ヌガーを食べてるの。おねんねなさい。可愛い弟コランちゃん。おねんねなさい。おっぱいもらえるわよ。従兄弟のガストンは、大きな飴を食べてるの。従姉弟のシャルロットは、コンポートを作ってるわ。おねんねなさい。可愛い弟コランちゃん。おねんねなさい。おっぱいもらえるわよ。おねんねなさい。可愛い弟コランちゃん。おねんねなさい。おっぱいもらえるわよ。)」

 フェイドードー。
 フランスの方言による、子守唄である。
 幼子の様に繊細な一面を持つ一夏の心の疲れを癒すには、最適だと考えてシャルロットは優しく肩を叩きながら歌い続ける。
 やがて、一夏は静かな寝息を立て始める。
『ごめんね…。一夏…。助けてもらってばかりなのに、僕にはこれぐらいしかできなくて…。』
 一夏が望めば、自分の体を差し出してもいいとシャルロットは思っている。
 だが、一夏がそのようなことを望む訳もない。
 現状、シャルロットが出来るのはごく限られた事だけだった。
「お寝すみ。一夏。」
 唇にキスをして、シャルロットも寝る。

 翌日の朝。
 いつもの朝の鍛錬に、アンナも加わっていた。
 拳銃は、IMI ジェリコ941の最新バージョンでピカティニーレールが搭載された941Lの45口径版。
 アサルトライフルは、イスラエル国防軍の最新型IMI タボールに全天候光学照準器を搭載し細部を改良したタボール2か。
 腕はいいな。
 個人戦闘の技量は、さすがにいい線行ってる。
 後は、IS戦の技量を上げてもらえばいいか。
 本国の命令かどうかは解らないが、戦力になるのならこっちとしてもありがたい。
 他の事は、千冬姉たちと一緒に対処するさ。
 国際政治に関わるようになってから、そういうことにも結構知恵が回る様になったしな。
 蘭達も、日に日に良くなっている。
 いい事だ。

 しかし、そういう時に限って悪い事が起きたりするもんなんだよなあ…。
 白式のハイパーセンサーが、ゴーレムと例の新型の反応を捉えていた。
 結構な数だな。
 けど、あの新型とゴーレムの連携が取れていない。
 一方、ゴーレムはロッテを組んでいる。
 成程。集団戦法のアルゴリズムを組み込んだか。

「さて。枷を嵌められた状態で、何処まで戦える?孺子。ゆっくり見物させてもらおうか。」
 光学観測だけは可能になったので、映像を見ながらグレイはほくそ笑んでいた。
 スコール達が独自に動いていることは、グレイも知っていたので今回はそれを利用する腹積もりだった。

「グレイが動いた。とりあえずは、予定通りね。」
「で、どうする?邪魔をした口実で、消すか?」
 スコール達もグレイが動く事は、察知していた。
 立場上は、スコールはグレイの上司である。
 今までの事と今回の事を口実に、粛清することは可能だ。
「もう少し、泳がせるわ。確たる証拠も欲しいし。」

「織斑、篠ノ之、デュノア、ボーデヴィッヒ、ブレーメ、楯無、サファイア、ケイシー、布仏姉妹は、私と山田先生と共に新型を仕留める。他の専用機持ちはゴーレムを迎撃。今回は、こちらも連携を組む。オルコットは鳳と。高階は楯無と。エデンはブッフバルト先生と。武装教官は、バスティア先生とブラン先生。ベルマン先生とクリッツェン先生でロッテを組め。今回は五反田たちにも戦ってもらう。五反田はカラマンリスと。ウィンドはマイルズと。ロッテを組め。尚、五反田たちは支援と牽制に徹しろ。可能な限り、直接闘うな。」
 ディースと数を拮抗させるため一夏達を当たらせる必要があり、ゴーレムに回した戦力は同格にもならない。
 故に、どうしても蘭達を戦わせる必要があった。
「織斑。手早く片付けるぞ。その後、ゴーレムを殲滅する。オペレーティングルーム。迎撃とシールド用意。」
「了解!」
 千冬が手早く指示を出し、迎撃態勢が整う。

 くそっ!朝っぱらから来てんじゃねえよ。
 目くらましだって、しなきゃなんねえのに。
 しかも、あの新型をゾロゾロと…。
 あれに関しては、絶対に知られるわけにはいかないのに…。
 とにかく、とっとと片付けないと。
 蘭達が心配だ。

 焦りを抑え込みながら、一夏はディースと言う漆黒の女神の迎撃に向かう。

後書き
亡国企業のやり方がエスカレートしていることで、一夏は強力な個人兵装に日本の警視庁や法務省。DIHとの会議にも出席する等、多忙を極めます。
何しろ、日本ほどテロに無防備な国は他にないでしょうからね。
悪魔の詩の件から考えても、可能性は十分にあるんですが…。
コーランの話は、実際にあった事です。
場所は、池袋か新宿だったと思います。
これだって、テロの火種になった可能性はあります。
最近では、パキスタンで女性の就学の権利を主張した少女が過激派に襲撃されたりもしますし、特に宗教はテロの火種になりやすいので亡国企業も煽りやすいわけです。
ディースの登場によって、IS学園の優位も前ほどではありません。
そこに、また襲撃。
こういう事態に備えて白式の改修をした一夏ですが、戦いは苦しくなるでしょうか?








いちばんやさしい フランス料理
成美堂出版

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by いちばんやさしい フランス料理 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル






ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

目次へ戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
掲示板で話題になってます。
気をつけたほうがいいです。
二次小説の
2013/11/17 08:08
二次小説のさん。
コメントありがとうございます。

できれば、具体的にお教え願えませんでしょ
うか?
非常に、気になりますので。
私の場合、政治ネタが結構絡むのでそれでし
ょうか?
CIC担当
2013/11/17 22:29

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第76話 黒き女神の刃 cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる