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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第70話 似合わない事は、やはり大変。

<<   作成日時 : 2013/10/05 19:08   >>

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 ん〜。何か、奇妙なことになってるな。
 ていうか、俺は安保理に出席して、亡国企業の新型機動兵器と戦って、翌日の会議も終わったから、とっくに帰路についてるはずなんだが…。

「一夏。リハーサルの時間だよ。」
 何で、ライブでキーボードを担当することになったんだろうか?
 原因があるとすれば、思わぬ縁かな?

「え?帰国は2日後に伸ばす?何でだよ?俺、講義だってあるんだぜ。」
 安保理が終了してから、千冬姉から帰国が2日後になる事を、国際電話で伝えられた。
「ボーデヴィッヒと、岩本一尉からの報告。それに、お前の精密検査の結果を精査した上での結論だ。2日間気晴らしをしてこい。講義はブッフバルト先生が代理を務める。」
 いや。そりゃ、カリキュラムの作成では、ブッフバルト先生の力も借りたけどさ。
 別に、体調が極端に悪いわけでもないのに、他の人にやってもらうのは気が咎めるんだよなあ…。
「とにかく、そういう事だ。観光をするもよし。買い物をするもよし。命の洗濯をしてこい。生徒会は、楯無がいるから問題ない。」
 まあ、前生徒会長だから、大丈夫に決まってるよな。当然。
 にしてもなあ…。
「一夏。お前も医者ではないにせよ、医学をかなり勉強しているのだから、検査結果から今の状況は、理解できるはずだ。毒草は芽の内に摘んでおけ。それに、こういった事になれる為にも、今は休養を取れ。それもまた修業だぞ。ではな。」
 確かに、安保理のやり取りには気が滅入ったけど、検査データはそんなに悪くなかったぞ。
 心配し過ぎじゃないのか?千冬姉。

「織斑君。聞きいれた?」
「聞き入れさせた。あの大真面目を黙らせるには、強引な方がいい。」
「確かにね…。」
 医務室で博子は、更識家と繋がりが深い病院で精密検査を受けた一夏のデータを、空中投影型ディスプレイに表示する。
「今の所、内臓に問題はないわ。けれど、免疫機能やストレス関係に問題がある。そんなに深刻ではないけれど、今後の事を考えると、気になるのよね。」
 実の所、一夏の検査結果はさほど悪いわけではなかったが、現在の一夏の立場は非常に微妙な上に、これからもいろいろと政治的な事に携わる事を考慮して、ストレスを解消し疲れを癒す方が良いと判断し、千冬と相談の結果、一夏の帰国を伸ばしたのである。

「駁竜の事は、相当に話題になっていますね。」
 未完成のままだった白式の緊急防衛システム駁竜は、亡国企業の新型機動兵器ディースとの戦いで、遂に完成した。
 そもそも、ISの緊急防衛システム自体、今まで確認されておらず、完成した駁竜の性能も高い。
 そのままでも、ISやゴーレムと十分に渡り合える。
 各国では、詳細は全く解明できていないが、それだけに話題にもなる。
 今後の事を考えると、今は休養を取らせるべきだと、真耶も結論を出した。
「気晴らしが出来ると、いいですね。」
「そうだな…。」
 こればかりは、千冬も自信が無かった。

「私に来客ですか?」
 ホテルで夕食を済ませた俺は、部屋で来客を知らされた。
「はい。ミスナギサコ・マユズミ様、ミスマリア・ベーメル様のお2人です。」
 渚子さんが?
 仕事で、来てるのかな?
 もう一人は、何ともはや…。
「部屋に、お通ししてください。」
 まさかねえ。
 世間は、広いんだか狭いんだか。

「今晩は、織斑君。安保理、大変だったみたいね。お疲れ様。」
「お久しぶりです。渚子さん。こちらには、お仕事ですか。」
「まあね。部数が持ち直したから、ここらでもう一押ししようと、遥々マンハッタンまで来たの。で、その縁で、ちょっとね。」
 やっぱり仕事か。
 まあ、それは解るが、縁の方が解らないな。
 まあ、いいか。

「久しぶりだな。真理亜。元気だったか?」
 やや赤みのかかった黒髪にサファイアの様な瞳の、大人しそうな女の子。
 本当に、久しぶりだな。
「うん。一夏も元気そうね。」
 真理亜・ベーメル。
 オーストリア人の親父さんと日本人のお袋さんの間に生まれた、ハーフの女の子。
 小学校1年から3年の初めまで、クラスメイトだった。
 勿論、箒とも面識がある。
「ああ。紹介するな。俺のクラスメイトで、ドイツの国家代表候補のラウラ・ボーデヴィッヒ。それに、俺のIS戦の師匠の岩本一等陸尉だ。ラウラ、一尉。俺が小学校の頃の友達だった、真理亜・ベーメルさんです。」
 真理亜にラウラと一尉を紹介して、ラウラと一尉に真理亜を紹介する。

「で、どうしたんですか?何か、御用があると見ましたけど。」
 人数分のカフェオレを頼んで、話を切り出す。
「うん。あのね。明日、私の初ライブなんだけど…。」
 あ。そっか。
 真理亜は、アメリカで、シンガーソングライターとしてデビューしたんだっけ。
 日本でも、人気あるんだよな。
「凄いじゃないか。頑張れよ。」
「ありがとう。でも、キーボード担当の人が怪我をしちゃって、代わりの人を探してるんだけど…。」
 真理亜の表情が、曇る。
 何か、問題でもあるのか?
「とりあえず、これ見て。」
 持ってきたバックから、真理亜は楽譜を出す。
 どれどれ。
 成程…。
 これは、きっついな。
 相当の技巧派じゃないと、きちんと弾けないな。
「一夏なら弾けるんじゃないかと思うんだけど、どう?」
 成程。
 俺は鍵盤系、ピアノなんかも弾けるからな。
 シンセサイザーも、アレンジャーも持っているし。
 5個セットを弾きこなす必要があるが、許容範囲だな。
 何の問題もない。
「ああ。大丈夫だな。」
「じゃあ、代役頼んでいいかな?」
「ああ。いいぞ。」
 俺の返事を聞くと、真理亜が嬉しそうな顔になる。
「それと、もう一つお願いがあるんだ。」
 ん?

「ああ。そっちもいいぞ。ただ、俺のを使いたいから、運んでもらう手配をするから、ちょっと待っててな。」
 俺は隣の部屋で防諜モードを起動して、手配をする。
 何しろ、相手が相手だからな。

「本当に助かる。ありがとう。」
「水臭い事言うなよ。真理亜の初めてのライブなんだから、成功して欲しいしな。帰りは明後日だから、リハーサルも含めて問題ないぞ。」
 クラスで一番歌が上手だったけど、性格が大人しくて、男子に結構からかわれては泣いていた真理亜が、大勢の人の前で歌えるまでになったんだ。
 友人としては、力になりたいしな。
 ところで、渚子さんは何だろう?

「じゃあ、私の用件ね。モデルお願い。真理亜さんと一緒に。」
 へ?
 何で、そうなりますか?
 真理亜だけでも、十分部数稼げるでしょう?
「あの…、何でそうなるんですか?」
 まずは理由を聞かないとな。
「だって、前に織斑君に頼んで以来、編集部に「またやってください。」って、リクエストが、殺到してるんだもの。どうにかしないと、さすがに大変なのよね。それに、真理亜さんとは元同級生。それに織斑君、また髪伸びたみたいだけど、前にもまして綺麗だし大人っぽくなったし、これを逃す手はないわ。真理亜さんは、見ての通りの美少女だし、揃ったら絵になるでしょ?というわけで、世のうら若き乙女達の願いを、叶えてあげて頂戴。」
 道理が通ってるんだか通ってないんだか、よく解らないな。
 てか、俺の髪がそんなに綺麗か?
 大人っぽくなったか?
 変わってないと思うぞ。

「う〜ん。俺は、モデルは似合わないと思いますから、ちょっと…。」
 初めてやった時、凄え疲れたもんな。
 似合わない事は、しない方がいい。
「そこを何とか、お願いできないかな?織斑君凄い美少年だし、写真写りもいいし、服の着こなしも上手だし、カメラマンも気合が入るのよね〜。」
「そういう事、言われましても…。」
「ね。公共の奉仕のつもりで。」
 何で、そうなるんですか?
 文化祭の時もそうだけど、何で、公共の奉仕なんて言葉が出てくるんですかね?
 全く、理解できないんですが?

「いい。織斑君。織斑君程の逸材が、モデルはやらない。テレビは出ない。取材にも応じない。トレーニングに、勉強、研究、仕事ばっかりの日々を送るのは、社会にとって損失なのよ。技術者として社会に貢献するだけじゃなく、男の子として、あなたに憧れる乙女たちの為に、何かしてあげようと思わないの?人の道に反するわよ。」
 うっ!凄え、迫力。
 この人、性格もそうなんだけど、仕事に関しても強気で行く人だからな…。
 というか、IS学園の生徒以外で、俺に憧れる女の子っているのか?
 凄え、理解できねえ…。
 というより、俺、断る自信が無い…。
 何しろ、2日間は心身のリフレッシュ期間だから、鍛錬もあまりしないほうがいいだろうしな。
「解りました。お引き受けします。」
「そう来なくっちゃ。じゃ、明後日の朝に迎えに来るわね。」
「私も、明日迎えに来るから。じゃあ、お寝すみ。」
 2人は帰って行った。

「あの同級生の子はともかくとして、モデルの方は大変そうね。一夏がモデルをやった時の事はそれなりに聞いてるけど、今じゃプレミアがついてるって話よ。」
 マジですか?
 何か、嫌な予感がするな。
 いや、既に…。

「ふん!!」
 ラウラが、拗ねていた…。
 宥める事、1時間。
 疲れた…。
 このまま寝たいところだが、服を買いに行かないとな。
 まだ、開店している店もある。
 さすがに、フォーマルでは行きにくいしな。

「おはよう。一夏。」
「ああ。おはよう。ん?どうした。」
 翌日の朝、俺を見るなり、真理亜は呆けたような表情になる。
「ううん、何でもないの。」
 ん?何だそりゃ。
 ま、いっか。

『一夏、凄く大人っぽい…。昨日のスーツ姿も、凄く素敵だったし…。』
 今日の一夏の服装は、昨日の夜に買った、白のストライプのボタンダウンシャツの上にワインレッドのカーディガン。黒のテーラードジャケット。濃い目の紺のスラックス。その上に、スポルベリーノを羽織っている
 さらに艶やかな黒髪が、えも言われぬ色気を、漂わせる。
「と、とにかく行こう。」
「ああ。」
 護衛としてラウラが同行して、ライブ会場に移動する。

『10年経つと、男の子ってこんなに魅力的になるのかな…?』
 外の景色を見ている一夏を、真理亜は見ていた。
 世界でも、5本の指に入る、屈強のISパイロットとしての貫録と、ISの開発者である束に次ぐ、天才科学者としての知的な雰囲気。
 加えて、優しさと暖かさを感じる。
 そこに、大人の魅力を感じさせるのだから、真理亜の心臓は高鳴るばかりだった。
『頑張ろう…。折角一夏と一緒に、同じステージに上がれるんだから。』

「話は聞きました。急なお願いを聞いてくださり、ありがとうございます。」
「どういたしまして。真理亜は、大切な友人ですからね。力になれるなら、なりますよ。」
「よろしくおねがいしますね。じゃあ、リハーサルの時間まで、ちょっと休んでいて下さい。」
 真理亜のマネージャーの人と挨拶をした後、リハーサル前に、俺は譜面を再度確認する。
 昨日の夜で、全部頭に叩き込んできたけど、確認は大事だしな。

「織斑君。今頃、何してるんですかね?」
「ボーデヴィッヒに、岩本一尉がついているから大丈夫だろう。マンハッタンは観光名所でもあるし、一夏の美的センスをくすぐる物も、多いだろうからな。」
 一夏が華道の師範である事は当然千冬は知っているし、前衛芸術の類にも一夏のセンスは反応する。
 そういった物を目にすることも、一夏の心身をリラックスさせるだろうと千冬は考えていた。

が、そうは行かないのが、世の中である。

「織斑先生。織斑君が、真理亜・ベーメルのコンサートの、キーボードをやってます。」
「え?織斑君、知り合いなんですか!?」
 新進気鋭のシンガーソングライターとして知られる真理亜の名は、真耶も知っていた。
「小学校低学年の頃は、同じクラスでな。しかし、何をやっているんだ?あいつは…?」
 寝耳に水の知らせに千冬は仕事を一時中断して、テレビの衛星放送にチャンネルを変える。

「しかし。見事としか言いようがないな。音楽の才能もあったとは、思わなかったよ。」
 最後の打ち合わせをしながら、もう一人のキーボードの人と、俺は話をしていた。
「それに、ルックスも完璧。絵になるわ。凄く綺麗で、セクシーで。」
 固さのとれたマネージャーさんが、俺を見てうっとりした表情になる。
 俺のステージでの衣装は、白のイタリアンカラーシャツの上に、ネイビーのカットデニムジャケット。それに黒のストレッチパンツ。シャツはあえて裾を出して、胸元が結構開いてる。
 というか、何か表情怖いんですけど…。
 少しして、いよいよ本番になった。

 全部の曲に共通するんだが、俺の演奏からスタートする。
 はっきり言って、責任重大だ。
 それに、ここまで明るく、積極的になった真理亜の初ライブをぶち壊しにするのは、真っ平御免だ。
 別にプロって訳じゃないけど、俺の最高の演奏を披露してやる。

「あれって、イチカ・オリムラだよな!」
「キーボード弾けるのかよ!」
「凄えテク。プロ級じゃんかよ。」
「今日は、ラッキーデーだな!」
 真理亜の歌に一夏の演奏は最高の華を添える形になり、ライブ会場は熱狂の渦になった。
 キーボードとアレンジャーの5つのセットを、一夏は巧みに使い分ける。
 殊更、恰好をつけているわけではなかったが、その様は、ステージ衣装、長く艶やかな髪、端正なルックスと相まって、テクニックと共に観客を魅了する。

「な、これは、一体どういう事ですの!?」
 セシリアが、テレビにかじりつく様になる。
「ちょっと、何よこれ!?」
 鈴の目が、吊り上がる。
「真理亜の事は聞いていたが、何で一夏が、ライブに出演しているのだ!?しかも、あんなに…。」
 箒は、最後の言葉を必死に飲み込む。
「一夏、まだ隠し事してたんだ…。」
 シャルロットが、静かに激怒する。
「ヴァイオリンだけじゃなかったんだね…。どうして、そうなのかな?一夏は…?」
 玲子はグロックを抜いて、物騒な笑みを浮かべる。
「一度、きっちり、お仕置きしないと駄目かしらね?」
 地の底から聞こえてくるように、楯無は笑う。
「一夏…。」
 簪はうつろな表情で、小太刀の柄を握っていた。

 さて、いよいよ最後の曲だ。
 ここで、俺のポジションが変わる。
 キーボードからベースに。
 使うベースは、エルリック ゴールドシリーズ e−volution 7 ボルトオン。
 40万はするベースだ。
 千冬姉に「家の事はいいから、おまえの好きな物を買ったらどうだ。」と言われて、代表候補待遇の給料で、初めて買った物でもある。
 俺がベースを始めた切欠は、近所の高校生の人が、使い古しのベースをくれて俺に教えてくれたことだった。
 他の楽器も、近所の人が教えてくれたんだけどな。
 何でも、「剣術も大事だが、音楽による情操教育も大事だ。」と、言って、家事や稽古の合間を縫って、俺に教えてくれた。
 やってて楽しかったから、俺自身どんどんのめりこんで、気が付いたら色んな楽器を弾けるようになった。
 それにしても、縁て不思議だよな。
 楽器の演奏教わってなければ、こうしてライブで代役をやる事もなかったんだから。

「て、ベースも!」
 軽音部の部員が、驚く。
「それも弦が、7本。弾くのかなりテクニックいるわよ!ネックだって太いし。」
「ひょっとして、ギターも弾けるの?」
「絶対に、弾けるわね。私はそう見たわ。」
「ていうか、凄い上手。それに、かっこいい…。」
 見惚れる軽音部の部員たちとは対照的に、セシリア達からはどす黒い“気”が漂って来ており、周囲は怯えていた。

「そうか。事情は了解した。」
「で、どうでした?」
 ライブが終わった後、千冬は一夏に連絡を入れていた。
「ピンチヒッターを、頼まれたそうだ。」
「あ。そういう事だったんですか。でも、いきなりプロのライブのステージで、あれだけの演奏をするなんて凄いですね。」
「近所の人達から、楽器はいろいろ教わっていてな。お古の楽器もいろいろ貰っていた。今は、稼ぎの中から買っている。生徒たちは、ほとんど知らんがな。」
 そう言って、千冬は仕事を再開した。
『ああいう一面も、織斑君持ってたのね。ハンサムで。でも、凄くセクシーで、色っぽくて…。』
 ライブで演奏していた一夏を思い出すと、真耶の頬は赤く染まる。
「人の弟で、妄想するな。馬鹿者。それでも教師か?」
「そ、そんな、妄想なんて…。ただ、素敵だったなって…。」
 当たらずとも遠からずだったので、真耶は必死に弁明する。
「で、よからぬことを考えていたと…。そんな女に、一夏はやらんぞ。」
「あう…。」
 千冬にぴしゃりと言われて、真耶は涙目になる。

「今日は、ありがとうね。本当に助かった。」
「礼を言われるほどじゃないよ。それに、俺も明るくなった真理亜を見て、安心したし、嬉しかったよ。転校する時、ちょっと心配だったからさ。」
 最後まで、泣いてたからな。
 俺としては、心配だった。
 人見知りでも、あったからな。
 でも、もう大丈夫だな。
 自分で道を見つけて、歩いてる。
 泣き虫だった、真理亜じゃない。
「変わらないね。一夏は。優しくて、暖かくて…。」
 そうか?
 普通だろ。
「じゃあ。明日の撮影もお願いね。」
「ああ。明日な。」
 ライブ会場の裏側に車を回してもらってホテルに戻るが、ラウラはずっと拗ねていた。
 何でだよ…?

「は〜い。今日は、よろしくね。」
「「よろしくお願いします。」」
 真理亜と一緒に、撮影スタジオ入りして、さりげなく周囲を見渡す。
 どうやら、少女マンガはないようだな。
 安心。安心。
 あのナルシストっぽいポーズは、勘弁してほしいからな。

 俺も真理亜も、カジュアルとフォーマルが半々。
 だけど、どうにも俺の撮影は露出が多いというか、やっぱりどこかナルシストっぽい…。
 あからさまに、胸元開けたり、肩を出したりしてるし…。
「本当に織斑君て、素敵よね。毎日凄く鍛えているのに、凄くしなやかで色っぽくて…。」
 いや、男の体見て頬を染めないでください。
 何故か、寒気がしますから。
 ちなみにカメラマンの人が、両手を合わせて謝っている。
 あなたのせいじゃないですから、気にしないでください。
 というか、渚子さん。
 自重してください。

「あ。織斑君。チェロ弾けるかしら?」
「ええ。弾けますけど。何か?」
 何だろう?いきなり。
「次なんだけど、ヴァイオリンとチェロの演奏をしているところを、撮りたいの。曲は任せるわ。」
 ああ。それでフォーマル寄りのスーツか。
 ヴァイオリンは、バルトークの無伴奏ヴァイオリンソナタ。
 チェロは、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番で、いくか。

『変わってない。一夏の音色。優しくて、とっても暖かい。』
 演奏している一夏を見ながら、真理亜は昔を思い出していた。
 男子にからかわれて泣いている所を助けた一夏が、元気づけようと自分が弾ける楽器で、知る限りの曲を弾いた。
 決して、優れた演奏ではなかったが、一夏の心遣いが伝わってきた事を、真理亜は昨日の様に思い出していた。
 そして、気が付くと涙が零れ落ちてきた。

「どうした。真理亜、大丈夫か?」
 演奏の撮影が終わってから、俺は真理亜が泣いていることに気づく。
 ハンカチは持ってきていたので、それでそっと涙を拭う。
「大丈夫。久しぶりに聞いて、凄く嬉しかったの。私を元気づけようとしてくれた時の、一夏の演奏だったから。凄く上手くなったけど、優しくて、暖かいところは、少しも変わっていなかったから。」
 何とか元気づけようと、たいして上手くもない演奏をよく真理亜に聞かせてたな。
 覚えててくれてたのか…。
 涙を拭った後、笑顔になった真理亜を見て、俺も笑顔になった時、シャッターを押す音が聞こえる。

「今の、凄くよかったわ。それにしても、素敵な演奏ね。仕事柄、クラシックのコンサートにも行くけど、プロの演奏家に全然負けてないわ。ねえ。今度、コンクールに出てみない?」
 忙しいから、無理です。

 真理亜の撮影も、フォーマルとカジュアルが半々。
 箒と鈴もそうだけど、少し離れてると女の子って凄く可愛くなるんだな。
 本当に、びっくりする位変わる。
 何より、笑顔が綺麗だな。
 本当に、安心する。
 これからいろいろ大変だろうけど、頑張れよ。

「じゃあ。ツーショットね。衣装は複数あるから、着替え急いでね。」
 何か企んでるよ。この人。
 頼みますから、妙な事考えないでくださいね。マジで。

「まず、最初はミケランジェロのピエタを、モチーフにね。」
 え?
 あれ、上半身を抱きかかえるんですよ!?
 それ知ってて、言ってるんですか!?
「は〜い。じゃあ、真理亜さんを織斑君が抱きかかえて、2人で見つめ合ってね。」
 マジ?
「じゃあ、失礼します…。」
 純白のブラウスに、フレアスカートの真理亜がじっと俺を見る。
 こりゃ、やるしかないか。
 えっと。座り方はこれでいいな。
 よし、真理亜も俺の膝の上に載った。
 後は、俺が真理亜の上半身を抱きかかえて、見つめ合う…。
 うっ…。やべえ…。
 凄え、意識する。
 こうやって間近で見ると、可愛いを通り越して綺麗だ。
 髪はさらりとして、肌も綺麗で、潤む瞳が凄く雰囲気を出す。
「あ。織斑君。そこで優しく微笑んで。真理亜さんを心から慈しむようにね。」
 この人、俺の撮影になると、やたら無理難題言うな。
 引き受けた以上は、やるけど。
 すると、真理亜の顔が真っ赤になる。
 マンハッタンは寒いからな。
 風邪か?早く治せよ。

「いいわ。すごくいい。撮影早く!何枚か撮って!」
 また、奇妙に熱が入るな。
 本当に、この世界は理解不能だ。
 それからも、赤面物の撮影が続いた。
 三度目は、さすがにないよな…?

「ラストね。そこのセットにうつ伏せになって、互いの顔を見つめながら、手を握り合わせて。」
 って、ちょっと。
 今までで、一番恥ずかしいシチュエーションじゃないですか。
 本当にやるんですか?
 って、衣装も用意されているし…。
 やるしかねえのか…。
 もう、これきりにしよう。
 精神力が、削り取られるような気分になるから。

「ん〜。いいわね。絵になるわ。あ、2人とも微笑んでくれないかな?その方が、ぐっと良くなるから。」
 相変わらず、厳しい注文ばかりしてくるなあ…。
 俺、テンパる寸前なんですよ。
 けど、真理亜は何か待ってるみたいだし…。
 やっぱりやるしかないんだなあ…。

『一夏の手、やっぱり暖かい。それに笑顔も優しい。大人っぽくなっても、一夏は一夏のままなんだ…。』
 日本にいた頃は、大人しい性格ゆえに男子からしょっちゅうからかわれては泣いていた真理亜を、一夏はいつも庇って、元気にしようとしていた。
 もちろん、一夏にとっては特別な事ではない。
 基本的に誰にでも優しい一夏は、こういった事があれば止めようとする。
 それでも、真理亜は嬉しかった。
 アメリカに引っ越す前日、家に泊まってもらい一緒に入浴して、抱きしめてもらって眠った夜の事を、真理亜は昨日の様に思い出していた。

「はーい。ご苦労様。いい写真が沢山撮れたわ。織斑君はやっぱりモデルが良く似合うわ。ねえ?いっその事、うちの専属にならない?うちの社の他の雑誌の編集部からも、オファーが来てるのよね。」
「あ、いえ。今は、色々と忙しいので…。」
 これ以上は、心身ともにマジに無理ですから。
「ま、急には判断できないわよね。じゃあ、また今度、食事でもしましょう。」
 まあ、あれから偶に食事してるから、いいですけど。
「じゃ、真理亜。これからも頑張れよ。」
「一夏も頑張ってね。それと、体には気を付けてね。」
「解ってる。じゃあ、フライトの時間だから。」
 俺は迎えに来た車で、そのまま空港に向かい日本への帰途についた。
 これで、受験対策は固まった。
 後は、各国での最終的な微調整のみ。
 日本での実技試験まで、あと1か月と少し。
 絶対に、手出しはさせない。
 あれ?何か忘れてる気がするけど、まあいいか。
 それより、ずっと拗ね続けているラウラを宥める方が、先だし。

「ただいま戻りました。」
「ご苦労様でした。きちんと纏まって、先生もほっとしています。」
 山田先生が、嬉しそうに言う。
 纏まるまでが、とにかく大変でしたけどね。
 さすがに、胃が溶けるかと思いましたから。
「それにしても、織斑君が他にも色々楽器を弾けるとは、先生知りませんでしたよ。今度、音楽の時間で何か聞かせて下さいね。」
 え?楽器。
 ああ。真理亜のライブの事か。
 って、ひょっとして…。
「山田先生、衛星放送見てたんですか…?」
 何だろう?
 妙な寒気が…。
「ええ。とても格好良くて、綺麗で、セクシーで…。」
 何故、そこで真っ赤になって、もじもじするんですか?山田先生。
「織斑。寮に帰ったら、話したい連中がいるそうだ。さっさと済ませろ。あまり私の手を煩わせるなよ。」
 え?
 それって…?

「お帰りなさいませ。一夏さん…。」
「「「「「お帰り、一夏…。」」」」」
「お帰り、一夏君…。」
 何だ、この“気”は…?
 冷たさも、どす黒さも、禍々しさも、去年の大晦日とは比較にならない…。
 どういう事だ…?
「一夏さん…。どうして、隠し事をなさっていたんですの?紳士にあるまじき行為ですわよ…。」
 ちょっと、待て!!
 何、持ってるんだ?
 それ、FGM−148 ジャベリン対戦車ミサイルだぞ!
 イギリス陸軍が更新中なのは知ってたけど、何で持ってるんだ。
 頼むから、使うな!
 洒落にならん!!
「ねえ。一夏…。どうして、あちこちに幼馴染の類がいるのかしらね?おまけに、あんな風に手助けするなんて…。今まで、あったかしら…?」
 HJ−73D 紅箭対戦車ミサイル!
 鈴、お前もか!?
 パイルバンカーといい、どうしてそんな物騒な物持ってるんだ!?
「ねえ、一夏。ヴァイオリンもそうだったけど、どうして楽器が弾けること話してくれなかったのかな?僕、凄く聞きたいんだよね…?」
 エリクス 対戦車ミサイル!
 シャルロット!いつも思うが、やる事が色んな意味で大胆すぎるぞ!!
 とにかく落ち着け、怖い!!
「一夏…。真理亜の助太刀をしたという事は、理解できる…。だが、やはり我慢ならん…。斬る!」
 緋宵は、罪人を処刑する刀じゃねえぞ!!
 というより、俺は無実だ!
「ねえ。一夏。どうして、一夏は女の子の頼みを、ほいほい聞き入れちゃうのかな?その内、いきなり婚約とかしちゃうのかな?ふーん、そうなんだ。」
 しねえよ!!
 何で、玲子がジャベリン!?
 陸自じゃ、採用されてない。
 どこから、手に入れたんだ!?
 つうか、何かあるたびに、どんどん性格がおかしくなっていくぞ!!
 正気に戻ってくれ、玲子!
「一夏く〜ん。お姉さんはね〜。そろそろ、お仕置きが必要かなって思うのよね〜。このままはちょっとね〜。」
 9M115−2 メチス−M対戦車ミサイル!
 そこまで行くと、お仕置きじゃなくて処刑じゃないですか!!
 金○恩より、狂気の沙汰ですよ!!
 俺を殺す気ですか!?
「一夏…。やっぱり私以外の女の子が、いいんだ…。2人で、あの世で結ばれましょう…。お墓も用意しているから…。」
 コ○ノ○サマモードを、超越している…。
 いつもは、目に光が無いけど、表現のしようがないほど禍々しい光が、目に宿ってる…。
 いつも思うけど、この状態だと皆の中で簪が一番怖い!
 とにかく、逃げよう!!

 で、結局、第六アリーナまで対戦車ミサイルを回避しながら、どうにか逃げ切った。
 途中で、クリスも助けてくれた。
 死ぬかと思った…。
 けど、それだけでは終わらず、蘭達の襲撃もあった。
 何でだよ!?
 理不尽だ!!
 神様は、この世にいないのか!?

「で、一夏さん。これは何でしょうか…?」
「一夏。剣術家ならば、隠し事はよもやすまいな…?」
「そうよねえ…。一夏が隠し事なんてありえないし…。」
「一夏…。僕はきちんと答えてくれるって、信じてるよ…。」
「じゃあ、答えてもらいましょうか…。」
「一夏君。お姉さんに隠し事は、駄目よ…。」
「話を初めてね。一夏…。」
 セシリア、箒、鈴、シャルロット、玲子、楯無さん、簪が、俺の席の前に陣取っている。
 しかも、何故か俺は鎖で縛られている…。
 これ、拷問じゃね?
 原因は、昨日発売になった、渚子さんが副編集長を務める雑誌「インフィニット・ストライプス」だ。
 俺と真理亜のツーショット写真が、かなりというか相当に刺激的だったらしく、専用機持ちだけでなく、クラスメイトまで怒髪天。
 そりゃ、撮影は恥ずかしかったけど。怒る様な事か?
 とにかく今は、すぐにでも逃げたい…。
 つうか、誰か助けてくれ!!

「あ、織斑君。お姉ちゃんからの伝言よ。」
 黛先輩!
 良かった、今の状況を見れば助けてくれますよね?
 俺は、信じてますよ!
「前の倍、初版で発売したけど、もう売り切れちゃったって。また、緊急増刷決定だって。それと、織斑君とツーショットしたいっていう同年代のアイドルもいっぱいいるから、オファーするつもりだからって。じゃあね。」
 え?それだけ…?
「ていうか、助けて下さいよ!!今の状況、把握してますよね!?このままじゃ、俺、死にますよ!」
「う〜ん、そうも思うんだけど。ほら、私、整備科だし。さわらぬ神に祟りなしってね。じゃあね〜。」
 ちょっと、そんなのないでしょう!?
 あんまりだ!!

 結局、千冬姉が来て拘束から救われたわけだが、セシリア達と共にみっちりとお説教されて、俺には当社比4倍増しの、千冬姉の懲罰メニューが待ち構えていた…。

 似合わない事は、しない方がいい…。
 それが、俺が得た教訓だ…。

後書き
異国の地での、幼馴染の手助けのお話です。
一夏にとって、精神的にヘビーな事が続いていたので、今回は以前にやった写真撮影も入れてみました。
慣れていない事で、一夏をいぢめるのって、結構楽しいんですよ。これが(笑)。
ライブでの手助けは、涼宮ハルヒの憂鬱とか、けいおん!の影響でしょうね。
しかし、めでたしめでたしとはいかないのが一夏です。
もう少しで、死ぬところでしたな(恐)。






IS〈インフィニット・ストラトス〉 8 (オーバーラップ文庫)
オーバーラップ
2013-04-24
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タイトル (本文) ブログ名/日時
(アニメ感想) IS<インフィニット・ストラトス>2 第1話 「一夏の想いで」
投稿者・ピッコロ ...続きを見る
ゲームやアニメについてぼそぼそと語る人
2013/10/06 02:04

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IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第70話 似合わない事は、やはり大変。 cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
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