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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第72話 冷酷な真実

<<   作成日時 : 2013/10/19 23:58   >>

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「容態は!?」
「心室細動です。心拍数20!AEDと心臓マッサージで若干持ち直しましたが、再び低下し続けています!」
「1、2の3で行くわよ!1、2、3!」
 ストレッチャーから、処置台に一夏の体が運ばれる。
「血圧、上が35。下が取れません!サチュレーション22!!」
「GCS111。意識ありません。昏睡状態です!!」
「血液検査、結果出ました。回します!」
 医務室に運ばれた一夏の容態を、スタッフが博子に知らせるが、極めて危険な状態だった。
「ラクテック500ml、ボスミン1mg、硫酸アトロピン2mg静注!ドーパミン10γ!気管挿管をするわ。喉頭鏡と気管内チューブ!除細動器と人工呼吸器大至急!200でチャージ!」
 素早く気管挿管を終了すると人工呼吸器に接続して、除細動器の準備が整うまで、心臓マッサージを始める。
『危険すぎるわ…。呼吸を、ほとんどしていない。血圧も低すぎる…。心拍数も、このままじゃ…。それに、昏睡…。』
 処置を施している時、一夏のヴァイタルをモニタリングしていた計器が、警告音を発する。

「心臓停止!」
「バソプレッシン40単位、全開!脳波は!?」
 心肺蘇生処置を施しながら指示を出して、脳波を確認する。
「どんどん、弱くなっています!」
「データ回して!!」
 脳波データを見た博子は、言葉を失った。
『これって…、織斑君が誘拐された後の脳波データと、ほぼ同じ…。でも、今はあの時とは、医療水準が違うわ。織斑君の頑張りもあった物ね。』
「脳波活性措置開始!先生方は、外に!」
 一夏が開発を指揮した医療器具は、IS学園の医務室にも導入されており、以前以上に、医務室の設備は充実している。
「一夏!一夏!!」
 いつもからは予想もつかない程、泣き叫ぶ千冬を真耶達が連れ出す。

「チャージしました!」
「下がって!」
 除細動器でショックを与えるが、心臓は動きださない。
「250でチャージ!!」
「チャージしました!」
「下がって!」
 心臓が動き出す気配は、なかった。
「リドカイン50mg静注!300でチャージ!」
『お願い!織斑君。頑張って!』
「チャージしました!」
「下がって!」
『これでも駄目なの!?』
 博子もさすがに、焦りの色が見える。
「360でチャージ!アミサリン500mg!ボスミン1mg再度静注!」
『お願い!織斑君。戻ってきて…。お姉さんは、千冬はあなたが死ぬなんて望んでいないわ…。』
「チャージしました!」
「下がって!」
 ショックを加えると、一夏の心臓は再び動き出した。
「ヴァイタル。低レベルで安定。サチュレーション95。」
「脳波は!?」
「低レベルですが、どうにか正常に。」
「とりあえず。危機回避ね…。」
 博子を含む医務室のスタッフは、全員胸を撫で下ろした。

「何とか、踏みとどまってくれましたが、未だに意識は戻りません。とにかく、我々も最善を尽くします。織斑君を、信じてあげてください。」
「お願いします…。山田先生。織斑は、急病で入院。容体が安定するまでは、生徒会メンバーと武装教官、ボーデヴィッヒ以外の面会は、これを厳禁。五反田たちの講義は、ブッフバルト先生が代行。いいな…。」
「解りました…。全校に、直ちに通達します。」
 千冬の事が心配だったが、やるべき事を為すために真耶とヘンリエッテは職員室に戻った。
「千冬。話があるわ。」

「先生!一夏の…。一夏の容態は!?」
 翌日、箒は嘗て誘拐されたことが頭をよぎり、真耶に訊ねる。
「昨日の通達以外の事は、言えません。授業を始めます。」
 1組の生徒達は、全員が大きく動揺するがそれを振り切らせるかのように、真耶は授業を始める。
 本心では、真耶も心配でしょうがない。
 だが、自分達まで動揺するわけには、いかなかった。

「大丈夫?千冬。」
「ああ…。心配いらん…。」
 だが、今の千冬は普段からは想像もできない程、脆く見えた。
『無理もないわ…。今の容態では…。』
 博子は、昨日の事を思い出していた。

「単刀直入に言うわね。今の一夏君は、許容範囲を超えたショックから、脳が自己防衛反応というよりは、自己拒絶。あるいは自己破壊に至る寸前の状態。つまり、一夏君の無意識が自殺を図った結果と言った方が、正しいわ。正確な所は、以前、一夏君が入院していた大学病院から来た、当時の検査や治療に関する記録を詳細に分析しないと、解らないけれど。」
 博子の説明に、千冬は呆然とした。
 一夏は、自殺をするような人間ではない。
 だが、無意識が自殺を図ったとしたら、そうでもしないと、対処のしようがない事態が起きているという事になる。
「誘拐されたことが、原因か…?」
「解らない…。仮説を述べるとしたら、8年前の一夏君は、許容現界を越えていなかったという事だと。思う…。その寸前で、どうにか踏みとどまっていたのよ。ただ、当時の記憶は封印されていたのね。ところが、何かが原因で封印という鍵が、再び襲い掛かったショックに破壊された。結果が、今の容態。脳波とヴァイタルは、今は低レベルで安定している。後は、自然覚醒するかにかかっているわ。一夏君の隣のベッド、使って。お姉さんのあなたがいた方が、一夏君も安心するだろうから。…根拠はないけど、そう思いたい…。」
「すまん…。」
 さすがに疲労していた千冬は、一夏の顔を見れるようにカーテンを開けて、ベッドに横になった。
『結局…、私は、一度も一夏を守れていない…。何が、ブリュンヒルデだ…!何が、世界最強だ…!一夏を…、只一人の弟を守れないのに、そんな物に何の意味がある…!!』
 誘拐され、2年にも20年にも感じられるほどの間の2カ月を過ごした後、千冬は同様の事態を起こさないように、可能な限り手を尽くし、今も、極めて微妙な立場にある一夏を守る為に、手を尽くしている。
『なのに…、どうして私は、これほど無力なんだ…!それとも、私には一夏を守る事は始めから、無理だったのか…!?』
 声を殺して泣きながら、千冬は己の無力さを心から呪い、憎悪していた。

「デパスを1.5mg。トレドミン12.5mgを処方してあげて。明日からは、デパス1.5mgを毎食後。ワイパックス0.5mgにトレドミン12.5mgを朝夕食後に1週間処方して。織斑先生の事も、気がかりだわ。あのままにはしておけない。」
「はい。」
 精神安定剤や抗鬱剤の類を、千冬は飲んだことはない。
 だが、今は、千冬の精神が非常に不安定と考えた為に、博子は処方することを決めた。
『とにかく、今の容態を正確に把握しないと。下手をしたら…。』
 その先の考えを頭から追い出して、博子は当時の一夏の解析に掛かった。

 通達は、IS学園に凄まじい衝撃を与えた。
 どんな事態が起ころうとも、一夏がいれば、何の問題もない。
 それだけの安心感を、生徒たちにもたらしていた一夏が面会謝絶の容態になっていることは、生徒たちを非常に不安にさせていたのである。

「どうでしたか?ブッフバルト先生。」
 一夏の代役として、蘭達の講義を担当したヘンリエッテに、真耶は訊ねる。
「やはり、ショックが大きいですね。皆、織斑君の指導で、めきめき伸びていましたし。それだけ、指導者の資質があったのでしょうけど…。私で、どこまで、代役が務まるか…。」
「そうですか…。」
 大学でスポーツ医学を専攻していたヘンリエッテは、それとは別に教員資格を取るためのカリキュラムを専攻しており、研修も受けている。
 IS学園に赴任したのは、前ブリュンヒルデとしての技量もあるが、研修経験も買われたからである。
 だが、そのヘンリエッテが、自分と一夏の差を痛感していた。
 スポーツの世界でもある事だが、プレーヤーと指導者では求められる才能がまるで違う。
 無論、ヘンリエッテも指導者としての才能は水準を超えるが、一夏にはプラスアルファとして、人を惹きつけるいわゆるカリスマ性があると、ヘンリエッテは感じた。
 夜も明けぬうちから厳しい鍛錬を積み己を磨き上げ、学園や周囲の窮地にあたっては持てる力を尽くして災厄を打ち払う。
 かと言って、それを自慢げに言う事はない。
 誰かを守る事。
 誰かを助ける事。
 それは、一夏にとって、別に不思議な事でも特別な事でもない。
 当たり前の事だ。
 故に、自慢にすること自体、頭にない。
 その考えが、一夏にカリスマ性を持たせ、皆に慕われていた。
 ヘンリエッテは、それを痛感していた。

「織斑先生は…?」
 千冬は公私混同をしない主義だが、今回は博子の判断で、授業には出ないでいる。
 一夏の事で精神的に不安定な千冬を、授業に出すべきではないと考えたからである。
「ずっと。織斑君の傍にいます…。私も、時々見に行っているんですが、見ているこっちが辛いですね…。」
 たった一人の家族である一夏が、再び誘拐された時の様な状況になっている。
 いかに千冬といえども、耐えきれる物ではない。
「生徒達も、相当に不安がっています。こんな時に亡国企業の襲来があったら…。」
 専用機持ちの生徒達の中心であり、精神的な支柱である一夏が今の状況が変わらない中で、亡国企業と戦うのは真耶も不安があった。

「結果としては、昨日話したことがほぼあっていたわ。当時は、この分野は今ほど研究が進んでいなかったから、微妙な差異が解らなかったのね。」
「そうか…。」
 博子の告げた真実は、酷く冷酷な物だった。
 簡潔に言えば、今の一夏は誘拐された時より酷いという事になる。
 以前は目覚めたが、今度もそうなのかと考えた時、千冬は言いようのない不安と恐怖を感じる。
「以前に比べれば、こういった分野の研究は進んでいるし、医療機器も発展しているわ。後者は織斑君の成果ね。切れるカードはある。だから、信じてあげて。織斑君は私達が思っているより、ずっと強い子よ。私も、別の方向から治療法を探している。信じてあげて…。」
「ああ…、解っている…。」
 呟くように答える千冬を、博子は辛そうに見ていた。
『今は、この学園の生徒たちの健康を預かる身として、最善を尽くすしかない…。』
 
 それぞれが、心に不安を抱えながら3日が過ぎた。

「ヴァイタルと脳波は、至って正常だわ。後は、目覚めるか否か。それが、分水嶺になる。今日が峠だわ。」
「そうか…。」
 3日間、シャワーとトイレ以外は常に一夏の傍らに寄り添い続けている千冬の目と声には力が無く、憔悴しきっていることが嫌になる程解る。
『織斑君…。お願いだから、目を覚まして…。もし、このまま目覚める事が無ければ、千冬は、あなたのお姉さんはどうすればいいの…。』
 博子が一夏と面識を得たのは一夏が学園に入学した後だったが、千冬は現役時に、常に一夏の写真を持ち歩いていた。
 故に、一夏がどれだけ千冬にとって特別で大切な存在かは、良く知っている。
 だからこそ、今日を乗り越えられなかった時の事は、想像できなかった。

「失礼します。」
「楯無さん。どうしたの?それ。」
 楯無が持ってきたのは、3つの千羽鶴であった。
「学年ごとに、作ったそうです。一夏君が、一日も早く良くなるようにって…。」
「そう…。折角だから、飾りましょう。きっと皆の願いが届くわ。」
 博子は、殊更縁起を担ぐような人間ではないが、今は生徒たちの願いが届くことを、心の底から願っていた。

「一夏…。一夏…。」
 千羽鶴を飾った後、一夏の名を呼びながら、千冬は膝から崩れ落ち大粒の涙を流し始めた。
「頼む…。目を覚ましてくれ…。他には、何もいらない…。何も望まない…。お前さえいてくれれば、私はそれでいいんだ…。お前と普通に暮らせて、成長を見続けて、そして、幸せになってくれさえすれば、私は…。」
 一夏の手を握って、千冬は必死に呼びかける。
『千冬…。』
 これほど脆い千冬は、博子ですら見るのは初めてだった。
 初代ブリュンヒルデにして、世界最強のISパイロット。
 だが、千冬とて人間。
 感情を持ち、嘆き、悲しむ。
 無力感や罪悪感に、苛まれる事もある。
 理解していたつもりだったが、認識が不足していたことを博子は理解した。
『目を覚まして…。お願い…。千冬の、世界で誰よりもあなたを愛おしく思っているお姉さんの声を、聞いてあげて…。』
 医者として、幾つもの生死の瀬戸際、死に立ち会ってきた博子は、これ以上なく、切実に思った。
 目を覚ましてほしいと…。
 
 一夏…。一夏…。
 何だ?この声…。
 千冬姉?
 何で、泣いてるんだ…。
 俺は、少しずつ、何かを感じ始めていく。

 戻ってあげて…。
 あなたを待っている人たちの元へ…。
 あれ、この声…。
 君なのか…。
 感覚が、はっきりしてくる…。
 色んな物を感じる…。

 それは、想い…。
 あなたを待っている沢山の人たちの、想い…。
 あなたは、そこに帰るべきです…。

 微かに、一夏の手が動いたような気がして、千冬は顔を上げる。
「一夏…?」
「う、うん…?」
 一夏が、少しずつ目を開ける。
「気管内チューブを、抜くわ。マスク用意。ヴァイタルに注意。」
 博子が、慎重にチューブを抜く。
 サチュレーションに、問題はない。
 呼吸は、いたって正常。
 心臓も、問題はなかった。
「検査の準備。最終確認よ。」
 スタッフが慌ただしく、準備を始める。

「一夏…。この、馬鹿者…、が…。」
 顔の涙を拭おうとせずに、千冬は一夏を抱きしめる。
「御免…、心配かけて…。」
「そんな事は、考えるな…。今は、休んでいろ…。」
 少しずり下がった布団を、千冬は掛けなおす。
「うん。」

「もう。心配ないわ。今週は、医務室にいてもらうけど、行動療法も兼ねてある程度なら、ISに関することをしてもいいわよ。ただし、時間厳守。」
「はい。」
 千冬姉の手前もあるし、今日は大人しくしていよう。
 心の準備も、必要だしな。
「私は、外の空気を吸ってくるわ。何かあったら、連絡して。」
 そう言って、博子は医務室を出る。

「千冬姉。この、千羽鶴…。」
「各学年が作ったものを、楯無が預かってきたそうだ。お前が回復するのを待ってな。」
「そっか…。また、迷惑かけちゃったな…。」
 一夏の表情が、暗くなる。
 が、すぐに一夏は精神のスイッチを、切り替えた。
「明日。すごく大事な話がある…。誰を連れてくるかは、千冬姉に任せるよ。束さんが知らない事も含んでいると…、思う…。」
 それを聞いて、千冬は一夏が何を話すかを、ほぼ正確に理解した。
「解った…。」

「聞いた?織斑君。目を覚ましたって。」
「良かったよね。」
「うん。一時は、どうなるかと思ったもん。」
 校内の雰囲気は、今までとは一変していた。
「あのバカ。心配させるんじゃないわよ…。」
「まったくだ…。」
 鈴と箒が、涙ぐむ。
「本当に、ほっとしましたわ…。」
「そうだね。今日なら、ある程度は教えてもらえそう。」
「うん。」
「良かった…。本当に…。」
「しばらくは静養が必要だから、何かあったら私たちが踏ん張らないとね。」
 セシリア、シャルロット、玲子、簪、楯無が胸を撫で下ろしていた。

「織斑君ですが、容態が安定し。来週には授業に復帰します。今週は、時間制限が付きますが、お見舞いも許可されます。但し、くれぐれも織斑君に配慮してください。」
「行こうよ。お見舞い。」
「うん。絶対行く。」
「何、持っていこうかな。」
『今までの雰囲気が、嘘みたいね…。』
 今まで暗かったクラスの雰囲気が明るくなり、真耶は安心していた。

「さて、聞かせてもらおうか。」
 千冬が選んだのは、教官から真耶、ヘンリエッテ。
 生徒からは、一夏のボディーガードの要である、ラウラと楯無だった。
「俺が、何故誘拐されたか…。千冬姉は、束さんからそれなりには、聞いてるんだろ?」
「お前の生体データ。それの取得が目的。ゴーレムのコアもどきは、それを利用して開発されている。それは聞いた。」
 全員が、愕然とした。
 同時に、何故、一夏が倒れたかを悟った。
 今まで、学園や各地を襲っていたゴーレムに、自分の生体データが使われていた事を知ったら、普通の人間は頭がどうにかなるだろう。
「さすがに束さんでも、解ったのはそこまでか…。真相は、もっと深いんだ。あの有人機動兵器のパイロット。どう思う…?」
「相当に、特殊な訓練を受けているな。でなければ、あの機動に体がついていけるとは思えない。」
 一夏の問いに、ラウラが軍人らしい答えを出す。
「違うぜ…。ラウラ…、あれも俺が大きく関係してる。いや、俺が全ての原因だ。あのパイロットな。俺のイントロンから引き出した情報をベースに、遺伝子工学技術で、生み出されたんだよ…。」
 イントロンとは、遺伝子が機能する過程で除去される塩基配列で、これ自体は、生物のたんぱく質の生成に何も関わらない。
 にも拘らず、何故存在するかは現在研究中である。中には生物の活動に必要な何らかの機能があると、仮説を立てる専門家もいる。
「常識的に考えれば、このイントロンは生物の活動には、何も関わらない。生物の活動には…。」
 一夏がそう言うと、全員、一夏が言おうとしていることを理解した。
「ISの適合率。もしくは、それに類似する機動兵器の制御。それにお前のイントロンとやらが、大きく関係していた…。」
「正解だよ。千冬姉…。機動兵器にこびりついていた極微小な細胞を解析したんだけど、人間のそれとは違う物だった。さらに突っ込んで調べて、俺の事が何らかの関係があると、思ったんだ。そして解ったのが、ある特定のイントロンが、ISの適合率に大きく関係している事。そして、それが、あの機動兵器のパイロットを生み出すのに、うってつけだったことさ…。それが判明した時に、戻ったんだよ。昔の記憶が…。そして、気が付いたら今の状態だったのさ…。」
 一夏の口から語られた真実に、全員、何も喋る事が出来なかった。

「笑っちゃうよな…。俺が攫われたことが、諸悪の根源だったんだぜ…。十中八九、ジェームズ・グレイは亡国企業を利用して、必要なデータを集めるために、全世界のあらゆる医療機関のデータを採取して、俺を見つけたんだろうな。僅かな体液からも、そういう事を調べるのは可能なんだろうさ。そっち方面でも、研究陣を抱え込んでる事は明白だよ…。そして、俺は周囲を悲しませて、あんな物を生み出しちまって…。しかも、パイロットな…。帰還して特殊な処理を施されないと、体組織が分解されるんだよ…。パイロットが消えたのは、それが原因さ…。今回は、物凄い偶然で細胞のサンプルが採取できたから、判明したけどな…。」
 一夏の目から、大粒の涙が零れ落ちる。
 布団を握りしめながら、一夏は必死に声を押し殺して嗚咽していた。

 誰もが、慰めようとした…。
 誰もが、否定しようとした…。
 それは、一夏の責任ではないと…。
 だが、一夏が攫われた事がジェームズ・グレイの計画を加速させた事実は、否定できない。
 そして、対抗する一派が新型機動兵器を作り上げた事も…。
 突きつけられた、これ以上なく冷酷な真実…。
 それは、一夏にとってあまりにも残酷すぎ、重すぎた…。
 心が砕け散っても、おかしくない程に…。

「お前が、全ての決着を着けたいと思うのなら。私達が力を貸す。必ず、奴らの本拠地を見つけ出し。叩き潰す。だから、今は、力を蓄えろ。白式の改修も、行わなければならんのだろう?ならば罪悪感は、今は横に置け。いいな。」
「はい…。」
 千冬の言葉に、一夏は黙って頷いた。

「解っていると思うが、この事は口外無用。墓まで持って行け。いいな。」
 医務室を出た後、千冬は全員に強く念を押す。
 事が露見したら、どうなるか予想は容易。
 それだけは、何としても防がなければならなかった。
「それから、1年と2年から準専用機持ち扱いの精鋭を、選び出す。決定し次第、さらに改修を行う。これには、整備科を希望する1年、整備科の中でも特に優秀な生徒も加える。」
 訓練機は、去年の段階で改修が加えられているが、千冬はさらなる改修をする必要性を感じた。
 さらに、損傷時の補修・整備に備えて、整備科からも精鋭を選抜し、技術を習得することを決めた。
「私はこれから、理事長に許可を求めていく。お前たちは、そのまま戻れ。」

「解りました。織斑君の事がありますから、それは問題ないでしょう。貸借関係で言えば、こちらの方が貸出超過。ISもカリキュラムの充実目的で、できうる限り集めましょう。」
 千冬の申し出を認めたばかりでなく、轡木は独自のルートでISを増やそうとしていた。
 以前から、カリキュラムの充実の為に集めようと考えていた矢先に、世界で2機しかない第五世代ISである、白式。第四世代ISの紅椿、エクソルツィスト。
実用化の域に達した陽炎、イリュジオン等を含む第三世代ISを含めて、20機を超える高性能ISが揃っているIS学園の状況を見て、少しでもデータを欲していた、各企業・研究機関から提供の申し出があったので、渡りに船だった。
「とにかく。これ以上、織斑君に重い荷を背負わせたくありません。理事長として、生徒たちが悲しむ顔を見るのは、御免こうむりたい…。」
 一夏が昏睡状態の間、轡木はさりげなく校内を回っていたが、目に映ったのは、一夏を心配し、暗く沈んだ生徒たちの顔だった。
 大人の理不尽で、これ以上一夏が何かを背負う事を、理事長として、1人の人間として見過ごすわけにはいかないと、轡木は思っていた。

『ジェームズ・グレイ…。亡国企業…。』
 既に就寝時間を過ぎており、一夏を含め全ての生徒たちは既に眠っている。
 見回りを終えた後、医務室に顔をだし一夏の容態を確認してきた千冬は、特別区画にある、千冬専用のフロアにいた。
『誰が定めた権利かは知らんが、これ以上一夏を利用はさせん…。そのような事、断じてさせる物か…!』
 千冬の目の前には、数十のケーブルに繋がれた美しい少女の像と一振りの切っ先諸刃作りの日本刀があった。
『動かして見せる…。下らぬ運命や宿命など…。天が定めたとしても、星が定めたとしても…。例え、この身がどうなろうと…。一夏は、必ず守り抜いて見せる…!』
 千冬の表情には、悲愴な物すら見えていた…。

後書き
遂に、一夏が誘拐された真の理由が、明らかにされました。
原作を読んだ時から、どうしてもこれが解らなかったんですよね。
モンド・グロッソの2連覇を阻みたいだけなら、やり用はいくらでもあったですし…。
国家の思惑があったと仮定するならば、大きな外交問題は確実。
そこらのチンピラ、賭けの胴元をしているヤクザ。
しかし、後者にしてみれば、自滅するために愚行を犯す様な物。
そして、独自の設定がゴーレムシリーズとディースです。
救命処置の場面は、出来る限りリアリティーを出したいと頑張りましたが全然ですね。
精神安定剤の類は、私自身、薬を飲んでいますので過去の経験からどうにかなりました。
蘇った過去と、冷酷極まる真実。
一夏はどう向き合い、答えを出すのでしょうか?






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