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zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第28話 What birds do you think? Phase1

<<   作成日時 : 2013/10/03 00:04   >>

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 ファーストクラスで、ランチを食べながらソフィは、今回の目的地について考えていた。
『何で、日本?まさか、自衛隊とも武器取引をしようとしているのかな?』
 日本の自衛隊の武器は、国産以外は少なからずアメリカ製が占めており、それらは対外有償軍事援助で、アメリカ政府が窓口になって輸出している。
 無論、アメリカ製の武器ばかり採用しているわけではないが、今更、HCLIが食い込む余地があるとは、思えなかった。
『けど、ココさんが物見遊山でどこかに行くとは、考えにくい。それに、アジアはキャスパーさんの管轄。そっちが理由かな。』

「こら。空の旅は楽しまなくちゃいかん。」
 隣の席に座っているココが、抱きついてくる。
「いきなりアジア。しかも日本。我々とは、最も縁のない土地ですからね。考え込みもしますよ。」
「それは解るけどよ。折角のファーストクラスだ。楽しめよ。」
 バリーがワインを飲みながら、話しかけてくる。
「そうそう。食い物も美味いし。」
 ヴィリーが、ラムのステーキを一口食べる。
「2人とも。日本の治安の良さは、世界でもトップクラスですが、油断は禁物。浮かれていないでしゃんとしてください。」
「「へいへい。」」
 エリが釘を刺すと、バリーとヴィリーは素直に返事をする。

「やあ。わざわざ来てもらって悪いね。」
 空港のカフェの一角に、キャスパーと私兵達がいた。
 チェキータを筆頭に、エドガー、アラン、ポー。
 多くの視線を越えてきた、百戦錬磨の傭兵たち。
 4人で、1個小隊を軽く上回る戦力。
 この4人がいるので、キャスパーは、荒事ばかりの武器商人の世界を何の心配もなく、渡っていける。
 そこに、ココとソフィの私兵が加わり、19人の傭兵に3人の武器商人という、一般市民が知ったら、卒倒しかねない構図が出来上がる。

「で、何なわけ?私たちを、こんな所に呼び出した理由は?」
 ココも暇ではない。
 ヨーロッパとアフリカを担当部門とし、あちこちでビジネスを展開している。
 最近はソフィも加わったので楽になるかと思ったら、ソフィの群を抜く才覚が呼び水になり、仕事は増える一方だった。
「ちょっと、最近、不景気でね。それに関して、調べていたんだ。」
「それは、そっちの問題でしょう。自分でマーケットを、開拓しなさいよ。」
「話は、最後まで聞いてくれよ。ココ。」
 カフェオレを一口飲んで、ジャケットの内ポケットから、一枚の写真を取り出す。

「こっちが纏めかけたビジネスに、やたらと妨害が入っているみたいなんだよ。で、本社に情報収集を頼んだけど、まるで埒が明かない。けど、ソフィとトージョの顔を思い浮かべたら、すぐにピンと来たんだ。」
 ソフィの名前を出されて、ココの目が鋭さを増す。
 ソフィの情報収集力は、HCLIをも上回るだろうが、それを好き勝手に利用されるのは堪らない。
「大丈夫ですよ。ココさん。キャスパーさん。ひょっとして、邪魔者は東南アジアにいませんか?僕の記憶が正しければ、インドネシアのジャカルタに、そんな方々がいるはずなんですよ。さすがに、詳細は知りませんけど。」
「完全に判明したわけじゃなかったんだけど、さすがだ。そこまで知っていたのか。」
「あそこも、いろいろある土地ですから。」
 東南アジアも民族や宗教で、紛争を抱えている土地である。
 アジアは、比較的そういった物とは無縁と思われているが、現実は決してそうではない。
 むしろ、日本がかなり特殊なケースになる。

「DIH、日本防衛省情報本部。秘密部隊旧統幕二部特別研究班。通称SR班。班長日野木陽介一佐。」
 写真を皆に見せながら、キャスパーは写っている壮年の男の名を口にして、トージョを見る。
「トージョ。君の古巣だよ。」
 その瞬間。
 眼鏡のブリッジを右手中指で軽く押して、フレームの位置を調節したトージョの目が鋭くなった。
『日本の諜報組織…?それらしいのがあるとは、噂で聞いていたけど。ジャカルタの面々が、それだとはね。そして、トージョさんがそこの出身。世間は広いのか狭いのか。どちらやら…。』
 自衛隊という、世界的に見て非常に特異な軍事組織を持つ日本に、秘密諜報組織があるとはソフィは思いもよらなかった。

「で、どうだい?元SR班東條秋彦君。君の予想は?確信がないなら、調べて欲しいんだよ。」
 キャスパーが言った途端、トージョは可笑しそうに笑う。
「らしくないぜ。調べて欲しいじゃなくて、調べろだろ。キャスパー。ついでにソフィには、東南アジアを中心とした各種取引の情報収集をしろ。そんな所か。」
『成程。呼ばれた理由がよく解ったよ。』
 東南アジアはキャスパーの管轄だが、武器以外にも、悪名を轟かせたタイ、ミャンマー、ラオスにまたがる山岳地帯「黄金の三角地帯」から、ミャンマー東部のシャン州が主な生産地となった麻薬や覚醒剤が流れている。
 生産規模は、アフガニスタン・パキスタン・イランの国境付近に存在する「黄金の三日月地帯」に並ぶ。
 それを、各軍閥が売りさばき、合法企業の資金とする。
 栽培を撲滅するために、ミャンマー政府も力を尽くしてはいるが思うようにいかないのが現状である。
 大きな理由は、軍閥の軍事力が国軍に匹敵するからである。
 合法ビジネスを展開すると同時に、武器も流れている。
 その流れたるや、まさにカオスと言っていいだろう。
 武器、麻薬、覚醒剤、これらの流れを全て把握するのは、CIAですら生半可な事ではない。
 ソフィは、その事についても熟知していた。
 そしてキャスパーは、武器商人の勘でそれを感じ取っていた。

「始めに言っておくけど、君に嫌がらせをするつもりはないよ。トージョ。「あんたのやり方が合わねえ。気に食わねえ。」それで、職を転々とする。大いに結構。僕だって、自分に合わないやり方でビジネスをするのは、嫌だからね。でも、縁やしがらみというのは、嫌でも付きまとってくる。ま、そういうことで、頼むよ。ソフィにしても、適任だからだ。HCLIのみならず、国家レベルの諜報組織すら凌ぐ情報網を持ち、極めて優れた収集能力と分析力、それに基づいた行動をとれるのが、君だからね。絡まった毛糸の様な現在の状況を明確にするには、君に任せるのがベストだ。よろしく頼むよ。」
 キャスパーの話を聞きながら、ココは加速度的に不機嫌な表情になる。

「ちょっと。私抜きで、決定事項にしないでよ。トージョは元兄さんの部下だけど、今は私の部下。ソフィは私のサポート役だったけど、今は立場的に、私や兄さんと対等。その2人を、自分の道具にしないでくれる?まして、ソフィは私にとって弟も同然なの。それを頭に入れておいて。そもそも、兄さんの管轄で起きてる事だし、当然、やり合う気なんでしょ。だったら、自分でさっさとケリつけてよね。」
 日野木の写真を苛立たしげに指先で叩きながら、ココはキャスパーを睨む。
「喧嘩売ってきたのは、向こうだよ。こっちは、ちょっかい掛けられて迷惑してる方だという事を、忘れないでほしいな。それに、今回の敵は絡まった毛糸をほぐさない事には、戦いようがない。それくらい、全貌が見えない組織だ。だからこそ、事は慎重に運ばないとね。その為には、組織の全貌を知る必要がある。嘗て所属していたトージョなら、日野木一佐の事もよく知っている。SR班に関してもまた然り。そして、今の状況をソフィが明らかにすれば、的確で無駄のない行動を起こせる。」
「で、SR班が黒で、組織がはっきりと解ったらどうするんだよ。キャスパー?って、言うまでもないか。変わらねえな。気に入らないと、直ぐに叩き潰す。優男のくせに、やる事は荒っぽい事この上ないぜ。チェキータの影響か?」
 面白そうに笑いながら、トージョはチェキータを見る。
「失礼しちゃうわね。私が、そんな女に見える?」
「それ以外に、見えるかっつーの。まあ、いい。もし日野さんが動いてるとしたら、今後も徹底してやるだろうな。火の粉がこっちに飛び散ると断言はしないが、何らかの影響位はあるかもしれない。石みたいな人だから、多分俺が辞めた時から変わってないだろう。」
「だが、SR班はどうかな?組織は変わりやすい。人というピースで作られた、ジグソーパズル。トージョ。君が抜けたSR班は、どんなパズルになっているかな?パズルは1ピース欠けただけで、パズルとは言えない。日野木一佐が抱えているのは、それじゃないかな?そう思えるね。」

「インドネシア軍のヌアンケー大佐の方に、大分何処かから手が伸びていますね。」
 キャスパーの話を聞きつつも、ソフィはノートパソコンを起動して調査を開始し、インドネシアの軍官僚の中でも、武器調達に関して屈指の発言力を持つヌアンケー大佐への干渉を、確認していた。
「仕事が早いね。あそこは、いいお得意さんだったけど、最近つれないから妙だとは思っていたが。成程…。今の今まで気づかなかったとは、まるで幽霊だな。今までは見逃してくれたけど、祟り出したか。今回は、大変そうだな。」
「この業界は、何時も大変ですよ。キャスパーさん。」
「違いない。僕は向こうを担当する。引き続き現状の把握と情報収集・解析を頼むよ。」
 そう言って、キャスパーはチェキータ達と共に、席を立った。

「呼んだ上に厄介事押し付けて帰るなんて、いい根性してるわよ。まったく。」
 ジャカルタ行きの旅客機を見上げながら、ココは苛立ちを隠せないでいた。
「SR班のダミーカンパニーは、ソフィの言う通りジャカルタにある。実際に動くのは、向こうって事だろ。日野さんが、日本でドンパチをやる可能性は低いさ。荒事をやらないわけじゃないが、やる時はとことん慎重だからな。言ったろ。石みたいな人だって。」
「それにしても、日本の極秘諜報部隊とはね…。そういうのは、日本の得意分野じゃない気が、するんですけどね…。」
 海外の傭兵や各国の諜報員の間では、日本は「スパイ天国」と呼ばれている。
 国外だけでなく国内に関しても、諜報という物に関して、関心が低いと見られているからである。
 事実、空港で各国の諜報員の姿を、ソフィは少なからず目にした。
 各国の諜報員に対しての監視の目は、まさにザル。
 そんな国が、ソフィですら全貌を知らないような極秘諜報部隊を持っているとは、想像の範囲を超えていた。

「さて、仕事を始めるか。まずは、日野さんの連絡先を突き止めないとな。」
「もう、調べましたよ。苦労しましたけどね。日野木一佐は、自衛隊のどの部隊にも名前がありません。殉職扱い。そんな所でしょう。自衛隊関連では調べようがなかったので、東南アジアを仲介する物資流通を調べていたら、ある貿易会社に日野木という人間がいる事を、確認しました。顔も確認済みです。毛糸のほどけ具合は、まだまだですけどね。」
 ノートパソコンのディスプレイに映っている日野木に関する情報を、ソフィはトージョに見せる。
「さすがは、俺達のボスだな。」
 ミロが、嬉しそうに頷く。
「やれやれ。情報収集は俺が担当なんだけど、若には勝てないか。」
 アーサーが、肩をすくめる。

「サンキューな。じゃあ、俺は裏付けを取る。居場所をばらしたくないから、場所を移す。ちょっと待っててくれ。」
 トージョは、空港のロビーを出た。

「抵抗感ゼロですね。元上司と、戦う事になるかもしれないのに。」
「それぐらい、手強いって事だろ。抵抗感感じる暇ないって、ぐらいにな。しかも、ボロを出さないために、細心の注意を払って裏付けに掛かった。」
 バルメの言葉に、レームが自分の見解を話す。
「毛糸をほぐすのも、相当に大変ですよ。とにかく、カオスすぎる。その中に巧妙に隠れ、全貌を気づかせない。日野木陽介。相当の指揮官ですね。情報をくまなく整理し、キャスパーさんの最近の取引を、悉く潰しています。不景気どころか恐慌ですね。東南アジアでは。カオスに飲み込まれずに、深く、広く、根を張り存在し続ける。ある意味、ヘックスより手強い。あっちは血気盛んで、純粋に戦術を考えるだけで済みましたが、今回は戦略面で五分以上の展開にしないと、相手が見えない。」
 ソフィが、苦い顔をする。
「私達兄妹は、ずっと仕事の面では助け合ってきた。フロイドさんに言われたわけじゃないけど、絶対のルール。SR班を潰せれば、兄さんは東南アジアの市場を取り戻せる。我々に対する報酬も、莫大。けど、今回は報酬が釣り合うか、疑問だね。ソフィが、相当に手こずるようじゃ。」
「いずれにしても、やるしかないですよ。僕も、HCLIの人間。社の利益を奪う相手を、無視することはできませんし。」
『それにしても、何故、妨害を始めた…?キャスパーさんの妨害を続ければどうなるか、日野木一佐が解らない筈がない。諜報機関と百戦錬磨の傭兵。結果は、明らか…。日野木一佐の本意は、一体…?』
 トージョから直接説明を聞く前に、ソフィはSR班の行動の理由を、考え始めていた。

後書き
トージョの古巣。
日本の極秘諜報組織、SR班が今回の敵です。
私の二次小説の方では、原作より展開は早いですね。
書きながら調べてみると、東南アジアのカオスっぷりはかなりの物です。
最近まで民族紛争が起きていた、セイロン。
国と軍閥の争いが継続中の、ミャンマー。
そして、麻薬に覚醒剤の大量供給地帯でも、あります。
他にも、民族問題があちこち。
その東南アジアに拠点を置いている、SR班。
今までの敵とは、戦い方が違ってくるでしょう。
武力で撃滅しようにも、相手はそう簡単に尻尾を出しませんからね。


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