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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第71話 Lacrimosa−涙の日−

<<   作成日時 : 2013/10/12 22:46   >>

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「そうですか。お友達の手助けを。」
「私も、納得いたしました。」
 ふう。やれやれだ。
 俺は今、菫の家にいる。
 冬菊と菫が、真理亜の手助けや、モデルのツーショットの件を知っていたからだ。
 ああいう雑誌って、冬菊や菫みたいなお嬢様が読むのか?
 ある意味、驚いたな。
 まあ。2人は機関銃や対戦車ミサイルを向けてこない分、いいけどな。
 でも、視線がな…。罪悪感を感じさせるんだよなあ…。
 はあ…。
 俺って、ついてねえ…。
 でも、ようやくこれで、事態は収まった。
 頼みますから、今度から仕事ふらないでくださいね。渚子さん。

「ふ〜ん。そう言うアプローチで来たか。やっぱり、あの子をいっくんとちーちゃんの所に預けて正解だったね。くーちゃんは、私の所にいるし。」
 束は、スコール達が開発したディースについての調査をしながら、クリスとクロエの事を、考えていた。
 亡国企業は、産業スパイで技術を得るだけでなく、独自に様々な研究をしている。
 それらを調査している段階で、2人に出会った。
 束に常識という物はないが、非人間的な科学者ではない。
 亡国企業の手が及ばないようにする為に、クロエを助手の名目で自分の傍らに置き、専用機として第五世代ISである黒鍵を開発した。
 クリスはIS学園に入学させ、専用機として一夏に第四世代ISエクソルツィストを開発してもらった。
「本当は、第五世代がベストだったけど、いっくんの立場はかな〜り、微妙だからね。そういうわけにも、いかないんだよね〜。ま、それでも、スペックは高いから、安心だけど。」
 エクソルツィストは、一夏が以前から構想していた新理論を導入した、既存のISとは、根本から概念の違うISで、性能も第四世代ではトップクラスである。
 千冬と一夏がいれば、問題ないという結論に達した。
「後は、これからか…。」
 束にしては、珍しく憂鬱な表情になった。

 これ、グレイが開発した奴じゃないな。
 ゴーレムの技術が使用されているけど、使用しただけで設計概念は全然別物。
 第一に、有人での運用が大前提になっている。
 ゴーレムは、最初から無人運用が前提になっているから、制御系もISとは大分違った。
 アビオニクスも、かなり独特だったしな。
 機体その物の設計思想は、ISとそんなに変わらないけど、全体としてはやっぱり別物だった。
 これは、さらに別物だな。
 有人機だから、ISとかなり似ているかと思ったけど、独自技術が随分あちこちに見られる。
 ゴーレムの技術を流用しつつも、機体の設計思想に合わせて、手を加えてあるな。
 それに、今までの産業スパイの成果も山盛りだ。
 ただ、これ、人命を軽視し過ぎてないか?
 テュランノスをどっか思い出させるぞ。
 シールドに絶対防御は、既存のISと変わらない割には、相当に機動性が高い。
 ただ、完全には性能を引き出していないな。
 だから、俺以外でも先輩達や、ラウラ、箒、シャルロット、クリス、のほほんさんなら対抗できるわけだが。
 これから、改善される可能性も否定できないな。
 高機動時に、パイロットを守るシステムを考案する必要があるかもな。
 けど、安保理の事を考えると、俺が何かやるのは問題になるのは確定事項っぽいしな。
 頭が痛い…。

 けど、それ以上に懸案事項なのが、ゴーレムだ。
 何かが、気になる。
 妙に、俺に近い何かを感じて、しょうがない。
 解析データを徹底的に洗って、それを突き止めようとしているけど、近づけば近づくほど、寒気がするのは何でだ?
 ただ、はっきり言えるのは、俺と深く関わっている事だ。
 だから、絶対に突き止めてみせる。

「スペックを、引き出し切っていないわね。機体その物は、性能的に十分拮抗できるんだけど…。」
「やはり、蓄積された経験の問題か。」
「それに関しては、今回のデータをフィードバックすることで、少しは補えるわ。できうる限り、経験を積ませるしかない。そして、その場所は…。」
「解っている。だが、リスクも大きいな。何とも、綱渡りだ。」
 ディースの実戦データの解析結果について、スコールとエムは意見交換をしていた。
 結論で言えば、実戦データの蓄積が足りず、データ収集を必要としていく必要がある。
 機体その物の性能的に問題はないが、それを引き出せないようでは意味がない。
 データ収集の場として、どこが最適か。
 結局の所、問題はそこに尽きる。
 その件に関して、2人の意見は同じだがリスクがあるのも事実だった。

「つまり、テュランノスと設計思想が酷似しているか…。それなら、お前が少々手こずったのも頷ける。」
 学園全ての専用機持ちを集めた会議の場で、一夏のレポートに目を通した千冬は、苦虫を噛みつぶした表情になる。
 ギリシャ製第二世代ISテュランノス。
 ラムジェットを採用し、性能は非常に高かったがパイロットにかかる負担が凄まじく、薬物使用が前提であったパイロットを無視したIS。
 よもや、それと同じような有人制御の機動兵器が再び登場するとは、千冬も考えていなかった。
 事実、ギリシャの最新鋭ISアルパクティコは、テュランノスとは全く別の設計思想に。
 パイロットの安全確保の点に関しても、十分留意された機体になっている。
 亡国企業の技術陣の水準は、束と一夏には大きく劣る。
 テュランノスとコンセプトが酷似した機動兵器は開発できても、パイロットの安全確保はほぼ無理だろう。
 束と一夏なら十分可能だが、2人とも人命を軽視したISを開発するほどに悪趣味ではない。
『相手の思惑が、読めん。それに、パイロットが発見されなかったのも気になる。』
 一夏達が戦闘を終わらせた後、IS委員会は機体を引き揚げることに成功した物の、パイロットの拘束までには至らなかった。
 潜水艦が配置されたとも考え、徹底的な捜索が行われはしたが結局は無駄骨。
 脱出路も、発見されなかった。
『神隠しでもあるまいに…。何がどうなっている…?』

 プロテインとアミノ酸が、体に染みわたるぜ。
 鍛錬が終わった後、いつもどおりプロテインとサプリメントを飲んでいた俺は、周囲を見渡す。
 例の新型機動兵器に対処できるように、セシリア達のトレーニングメニューは、一層厳しくなり、楯無さん達もブッフバルト先生との模擬戦をしている。
 とにかく、全体のスキルアップが必要不可欠だ。
 一対一なら、問題なく戦えるようになってもらわないと困る。
 蘭達はゴーレムなら、ツーマンセルでどうにか戦えるだろうけど、支援は必要だから、戦力外も同然。
 また、白式の改修かな。
 周囲の支援をさらに大規模にできるようにした方が、いいだろう。
 白式に関しては、委員会から可能な限り改修を継続して欲しいと言われてるから、やっておこう。
 後は、支援の方法をどうするかだな。
 一口に支援と言っても、色々とあるから。
 それに関しては、ゴーレムと新型機動兵器の解析と合わせて、今日から開始だ。
 就寝時間、遅らせられないかな?
 千冬姉に、掛け合ってみよう。
 正直、時間が全く足りない。
 にしても、全員かなりバテてるな。
 でも、これを乗り越えてもらわないと、これからキツいなんてもんじゃないからな。
 頑張ってくれよ。

「成程。話は解った。だが、水田先生とも話し合う必要がある。結論は明日出す。今日は、既定の就寝時間を守るように。」
「解りました。」
 やっぱり、すんなりとはいかないか…。
 当然と言えば、当然だが…。
 けど、あの新型とゴーレムが一斉に来たら、遅かれ早かれ、蘭達も戦ってもらう状況が発生する。
 データを整理して、プランを作っておくか。

「あの新型の登場は、痛いですね。」
 真耶は、一夏が持ち帰ったディースの戦闘データを、表示する。
「武装教官、上級生なら問題はない。だが、1年生で互角以上に戦えるのは、一夏に、ボーデヴィッヒ、布仏本音。それに準ずると一夏が分析しているのが、ブレーメ。苦戦はするが1対1が可能なのが、篠ノ之にデュノア。他はツーマンセルで、互角以上。不利としか言いようがない。」
「幸い、五反田さん達は、一夏君の指導で予想以上に伸びていますけど、ツーマンセルでゴーレムを相手にするのが、やっとですね。」
 千冬も真耶も、現在、自分たち不利な状況にある事を否定することは、できなかった。
『とはいえ、他国に借りは作れん。我々だけで、対処するほかあるまい。』
「医務室に、行ってくる。何かあったら、連絡してくれ。」
「はい。」
『授業中は、織斑君の状態を注視する必要があるわね…。』
 武装教官と養護教諭、医務室を預かる博子だけが閲覧が可能な、一夏の検査データに真耶は目を通す。
『今は安定しているけど、負担しだいによってはどうなるか解らない…。極力、それは避けないと…。』

 ふ〜ん。
 こうして改めて見ると、4人とも特徴があるな。
 シャーリーは、海兵隊のテストパイロットだけに、切り込み隊としての才に秀でている。
 コリーナは、アルパクティコのユニット換装を最大限に利用した、臨機応変な戦い方が得意。
 レイラは、スピードを活かした一撃離脱と、攪乱戦に長けている。
 蘭はリーダーとしての才を持っていて、瑞鶴の兵装を最大限に活用して、前衛も後方支援もきっちりこなせる。
 さすがは、聖マリアンナ女学園元生徒会長ってところか。
 ルームメイト同士でツーマンセルを組ませて、ポジショニングの指示を与えるのが妥当か。
 後は、4人の支援さえしっかりしていれば、ゴーレムとも五分以上の勝負ができるか…。
 機体も大分使いこなしているし、4人での連携戦闘を前倒ししてもいいかもな。
 この辺りは、先輩達や先生達の意見を参考にしながら、考えよう。
 急いて事を仕損じたら、目も当てられない。

 後は、白式か。
 何しろ、セシリア達のスキルが予想以上に上がった事で、俺に対する負担が軽くなっていたので、白式は自身のスペック向上を重視してきたけど、今は、周囲へのサポートも、まんべんなく行えるようになる必要に迫られている。
 さて、どうするかな…?
 とは言っても、俺だけ就寝時間の延長は、そう簡単には許可されないだろう。
 水田先生も、本当は反対したいのは理解している。
 既存の概念を発展させて、広域支援兵装を作るしかないか。
 白式の性能をフルに発揮すれば、考える必要はそんなにないが、それはそれで火種になる。
 この枷が無ければ、問題ないんだけどな…。
 それを差し引いても、委員会は白式の改良を求めてくるから、やっておいた方がいいか。
 燃費の改善も、同時並行させないとな。
 んじゃ、ギリギリまで頑張ってみますか。

「1時間。それが最大限の譲歩よ。」
 千冬から話を聞かされた博子は渋々ながら許可したが、決して長い時間を与えようとはしなかった。
「正直、厳しいが。それで納得させよう。」
「いい。千冬。去年の、楯無さんとの事もあったし、何よりお姉さんだから理解していると思うけど、一夏君は頑張り過ぎると、自分で歯止めをかけるのがとても難しい性格なの。自分の事なんて、二の次三の次にしかねない。本当は、就寝時間はきちんと守らせたい。でも、大変な状況らしいから、譲歩はする。但し、これ以上は絶対にしないわ。私にも、生徒の健康を守るという、大切な義務があるし、医者として、これ以上負荷を掛けさせるわけにはいかないわ。」
 同じ時間、研究や開発に費やしても、その密度には個人差が出る。
 一夏は、非常に密度が濃すぎる。
 1時間で、一流と言われる研究者の10倍以上の成果を上げるが、普通に考えて、心身ともに消耗の激しさから、持つわけがなかった。
 幼い頃から鍛えぬいた、一夏の強靭な精神と肉体だから持っているが、だからといって、過負荷を掛けることを許可することはできない。
「解っている。後は、他の専用機持ち達で頑張ってもらう。その為に、私も本腰を入れて、鍛え始めたのだからな。」
『とは言え、どこまで減らせるかはまだ未知数か…。』

 夜は会社の仕事を手早く片付けて、白式の改修案を練っていた。
 一番の問題は、やはり燃費だ。
 新型のオペレーション・エクステンダーに換装するのは当然として、機体重量もできれば減らしたい。
 やっぱ、装甲材か…。
 白式の装甲材は、多重ナノ結合ハイブリッド・ハニカム装甲。
 簡単に言えば、ハチの巣状に六角形の穴をナノレベルで最適な数を開けた装甲材を間に挟んで、強度を損なわずに軽量化したハイブリッド装甲材を、重ねた物だ。
 原理的には、大和型戦艦の、蜂の巣甲板が有名かな。
 ただ、開け過ぎると意味が無いので、結構難しい。
 紅椿は、流動量子組成装甲。
 これは束さんが開発した新型装甲材で、原料となる素材を量子レベルにまで細かくして、特殊な低反発素材の層の様な物を作り、攻撃を受けた際に衝撃を吸収する装甲だ。
 箒の戦闘スタイルは、スピードが要なので非常に都合がいい。
 ただ、強度の面では、今一つ納得できないんだよな。
 何しろ、紅椿用に開発された装甲材だから、当然と言えば、当然だけど。
 ミステリアス・レイディのレーザー構築型クリステイル結晶装甲は、レーザーで擬似的な結晶構造を構成する一種のバリアーで、エネルギー消費量がどうしても無視できない。
 改修では、エネルギー消費量を可能な限り改善し、構成層が重複して防御力を高める新型の装甲材に換えたけど、白式にはやっぱり向かない。
 ブルーティアーズのBTサードグリッド装甲は、リヴァイブの衝撃吸収性・サードグリッド装甲の発展型。
 サードグリッド装甲は、マイクロレベルで特殊な格子構造にした装甲材を三重にした装甲材で、細部にわたって補強を入れることにより、低コストで高い衝撃吸収性と強度を得ることができ、加工技術も高い物は必要とされない。
 グローバルな経営戦略を練っていたデュノア社の、作戦勝ちだな。
 BTサードグリッド装甲は、この構造に搭乗者の思考を反映させて補強の程度をコントロールする機能を追加して、さらに防御力を高めた装甲材で、こっちは高度な技術が必要になる。
 けど、強度面で白式に劣る上に、燃費面でNG。
 甲龍の、硬度可変型ヘヴィー・イグニス装甲。
 ファング・クェイクと福音の、反衝撃性硬化装甲。
 この2つは、ナノマシンによりダメージに対して最適な強度を装甲材に持たせるという意味で、ほとんど変わらない。
 硬度可変型ヘヴィー・イグニス装甲は、エネルギー兵器を、熱線兵器を応用した機構で相殺する、一種のリアクティブ・アーマー的な面があるが、それを除けば、防御思想は同一だ。
打鉄の耐貫通性スライド・レイヤー装甲と、アラクネの超甲質繊維装甲、シュヴァルツェア・レーゲンのルナーズメタル・ヘキサ合板装甲。
この3つは防御力を重視しているが、重量で難がある。
耐貫通性スライド・レイヤー装甲の自己修復能力は魅力的だが、これより優れた装甲材を作るのは、簡単なので没。
ルナーズメタル・ヘキサ合板装甲にしても、対ビーム処理を施されていると言っても、やっぱり重量面で難がある。
打鉄弐式の強化微細粒子複合装甲は、高硬度材と高衝撃吸収材をナノレベルの微細粒子上に加工して、他の装甲材に練りこんだナノコンポジット素材の一種で、機動力重視の打鉄弐式にはうってつけだ。
けど、言ってしまえばそれまで。
白式に使用するには、役不足。
アサルトキャットは、ファング・クェイク、福音と同じく、反衝撃性硬化装甲。
ルミ・リタリの、衝撃吸収性・フォースナノグリッド装甲も、衝撃吸収性・サードグリッド装甲の発展型で、機動性が売りのルミ・リタリにはいいだろうが、白式に使用するとなると、合格点は無理。
アルパクティコは、テュランノスの多結晶ナノカーボン多層装甲を軽量化した装甲。
ナノカーボンは、言葉通りナノレベルで構成されたカーボン素材で、それを多結晶構造にし硬度と靱性を確保して、複数の層にすることで高い防御力を得ている。
アルパクティコは、この装甲材をできうる限り強度を確保しつつ、軽量化を図っている。
故に、駄目。
つまり、他国のISの装甲材は、全て白式には適さない。
とすると、俺が直接設計した、イリュジオン、巴御前、瑞鶴、エクソルツィストか…。
イリュジオンと巴御前は、特殊複合繊維強化セラミックハイブリッド・ハニカム多層装甲。
これは、ガラス繊維等で強化したFRPと同じカテゴリーと言っていい特殊なセラミックを、ハニカム構造にした多層装甲だ。
白式の多重ナノ結合ハイブリッド・ハニカム装甲は、当時では最先端の装甲材だったので、技術もコストもとにかく高かった。
そこで、同じ概念で特殊なセラミックを使用して開発したのが、この装甲材だ。複数の種類の特殊なセラミックを使用しているので、短所を長所で補完しつつも、軽量で十分な強度を得ることに成功している。
けど、元々が白式の装甲材の簡易版なので、論外。
瑞鶴は、特殊強化ナノチューブスプリング・ハイブリッドハニカム装甲。
これは、イリュジオンと巴御前に使用している、特殊複合繊維強化セラミックハイブリッド・ハニカム多層装甲の発展型で、六角形を形成する線に当たる部分を、ナノチューブ製造技術を応用したナノレベルの特殊なスプリングを並べた物で置き換えて、高い衝撃吸収性を確保しつつ、強度も高められている。
でも、あくまで第三世代ISを想定しているので、第五世代の白式には向かない。
ケルベロス、エインガナ、不知火、雪風、キャメロット、エクソルツィスト。
いずれも、白式に使用する装甲材としては、不合格だ。
とにかく、白式の場合は真っ先に狙われるから、既存の装甲材以上に、より高い強度と軽量さが必要になる。
この面が、厄介なんだよな。
 それに、支援用兵装も考えないといけないし…。

 つい最近完成した、あれしかないか。
 装甲材の研究は、燃費の改善と共に研究していて、新しいアイデアがある。
 あれなら、いけるな。
 俺はすぐにファクトリーに、指示を出す。
 さて。寝るか。

「例の件だが。1時間が限度。これ以上は、譲歩しない。だそうだ。」
 1時間か。
 IS学園の就寝時間は、午後10時。
 できれば、3時間は欲しかったけど、貰えるだけでもありがたい。
 その中で、最大限の成果を上げるか。
「すいません。迷惑をおかけします。」
「いや。今の状況を考慮すると、お前が対抗策を考えるのも理解できる。白式の改修をするのだろう?」
 当然、理解しているか。
「はい。燃費の向上の他に、装甲材の換装と広域支援兵装の搭載を、予定しています。現在は、装甲材の試作をしています。放課後に、各種試験を行う予定です。結果が良好で実用化に耐えうると判断し次第、換装に移ります。現在は、広域支援兵装の各種シミュレーションを、行っている最中です。」
「状況は了解した。くれぐれも無理はするなよ。」
「解っています。それでは、講義がありますので。」
 短時間で最大限に成果は上げるけど、無茶はしないよ。千冬姉。
 じゃ、講義に行ってきますか。

「せめて、織斑君のアシストを出来る人がいると、いいんですが…。」
 真耶は、深い溜息をつく。
「いればいたで、問題が大きくなる。何しろ、あれは束が直接手掛けたワンオフ機。各国から、スパイを兼任した者がわんさか来るぞ。理解できるとも思えんがな。」
 第五世代ISである白式は、各部に最先端技術が満載されており、各国が喉から手が出るほど欲しがっている。
 その高度さから、理解できるとも千冬は思っていなかったが、無視していいとは言えない。
 それほど、ISの開発競争は激烈になっている。
 白式と自分の存在が、大きな要因となっていることは事実なので、一夏としてもアシスタントは、拒否するだろう。
 中学の公民や歴史の授業で、国際政治の厄介な部分はそれなりに理解するが、一夏の場合は、立場や肩書で、そこらの政治家よりずっと深く理解している。
 師である束に助力を仰ぐのは、事実上不可能だ。
 故に、1人でやるしかないのが現状だった。

「予想以上に、上達してるみたいね。五反田さん達。」
 生徒会室で、書類の決裁をしている時に、蘭達の自主訓練を見た楯無さんが、感想を言う。
「そうですね。蘭は、元々生徒会長でしたから、ああ見えて努力家で真面目でしたし。残りも代表候補に、テストパイロット。俺がいちいちどうこう言わなくても、良かったですよ。
 本当。
 予想以上に、伸びてるな。
 日に日に、その事を実感している。
 これなら、支援が無しでゴーレムの相手も、ツーマンセルでできるかな?
 まあ、開発は続けるけどな。
 亡国企業の技術陣が一枚岩でない以上、どんな新型を投入して来るか、慎重に考える必要があるし、相手の牽制を広範囲でできれば効果的に撃破できる。
「よし。終わり。皆さん、終わりました?」
「終わったわ。」
「大丈夫です。本音の事は、きちんと監視していましたから。」
 監視付きは問題あるけど、まあ、終わったのならいいか。
 さて、鍛錬の時間だ。
 あれは気になるけど、鍛錬の時は忘れられるからありがたい…。

「ここの所、妙だな…。」
「妙ですか?」
 鍛錬の相手を終えた後、千冬が呟いた。
 しかし、真耶には解らなかった。
「一夏だ。動きに極僅かだが、キレがない。」
「織斑君が、ですか?」
 日に日に成長しているように見える真耶には、予想外の言葉だった。
「私も、それは感じました。うまく言えないのですが、どこか違和感めいた物を感じるんです。」
 ヘンリエッテが、自分の意見を言う。
「ブッフバルト先生。例の新型の解析が、かなり進んできた時からではないかな?」
「はい。」
「やはりな…。」
 千冬が、深刻な表情になる。
『表情も、心持ち青ざめたような時がある。一夏は、何かに気づき始めている。束から、知らせがあった事か?それも含めて、さらにか?』
 放置しておけなくなり、千冬はシャワーと着替えを終えて、特別区画に向かいながら、考え込む。

 そして、それは起きた…。

 嘘だろう…。
 何だよ…。それ…。
 これが、真相かよ…。
 じゃあ…。俺は…。
 その瞬間、俺の脳裏に幾つもの記憶が蘇った…。
 短い間だったかもしれない、フラッシュバック…。
 だが、それがどの程度の時間だったのかは、俺には解らない…。

 そして、一夏の意識は真っ暗になった…。

 それとほぼ同時に、千冬が特別区画に入ってくる。
「一夏?おい?どうした!?」
「織斑君!織斑君、聞こえますか!?」
「織斑君!?」
 気になって、千冬についてきた真耶とヘンリエッテが、一夏に呼びかける。
「山田先生!AED(自動体外式除細動器)と自動簡易酸素マスクお願いします!」
 一夏の脈を図ったヘンリエッテが、備え付けられているAEDと緊急用の自動簡易酸素マスクを持ってくるように、真耶に言う。
「はい!」
 デパート等と同様に、IS学園にも各階と寮にAEDが複数個常備されていて、さらに、最近、簡易だが人工呼吸と同様の処置ができる自動式の酸素マスクも常備された。
これが使われた場合、すぐに医務室に連絡が行くようになっている。
「下がって!」
 マスクを付けた後、一夏の状況を判断したAEDのメッセージに従って、ヘンリエッテがスイッチを押しショックが加えるが、一夏の意識は回復しない。
「もう一度、行きます!下がって!」
 再びショックが加えられるが、効果はなかった。
「医務室ですか?すぐに、緊急処置の用意を!織斑君が、急遽意識不明に。AEDも効果ありません!これから、大至急、そちらにいきます!」

「一夏!一夏!!目を開けろ!開けるんだ!!」
 千冬が涙を流しながら、必死に一夏に呼びかける。
「織斑先生。落ち着いてください。」
「山田先生。手伝ってください。」
「はい!」
 運んできたストレッチャーに一夏を載せて、ヘンリエッテは心臓マッサージを始める。
「山田先生は、織斑先生と後から来て下さい。呼吸がどんどん弱くなって、一刻を争います。」
 医務室に直結するエレベーターにストレッチャーを運んで、ヘンリエッテは先に向かいながら、心臓マッサージを続ける。

「またか!私たちが、何をした!?普通に暮らしていたかっただけだぞ!!これ以上、私たちを!!私と一夏を苦しめて、何が望みだ!!答えろ!!」
 血を吐くような叫びと共に、千冬は号泣する。
「織斑先生…。今は、一夏君の所に…。」
 必死に落ち着かせつつ、真耶は千冬と共にエレベーターに乗った。

後書き
安保理が終了して、帰国した一夏は相も変わらず忙しい日々が続きます。
特に、亡国企業の新型有人機動兵器ディース対策が、大忙しです。
互角以上に戦える専用機持ちが限られるので、自然と一夏の負担が重くなりますし、戦力外ではある物の事と次第によっては、蘭達も戦う必要が出てきます。
ここで、一夏は白式の改修で皆をサポートすることを決定し、準備に取り掛かります。
最近、文庫で各ISの設定が結構細かく出てきたので、名前だけで詳細不明の装甲材について、白式に使えるかを一夏に考えさせつつ、設定を考えてみました。
しかし、そこに襲い掛かる悲劇…。
遂に、一夏が過去の記憶を取り戻します。
しかし、それが一夏の生死を左右することに…。
響く、千冬の慟哭…。
そして、一夏の容態の原因と、過去にあった事とは…?








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