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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第66話 限界機動領域

<<   作成日時 : 2013/09/08 20:41   >>

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「アメリカは、大規模な演習を行う事を既に決定しており、これを持って護衛計画に当てるという通達が、日本政府に届いております。また、周辺諸国もこれに加わる事で、自国の受験生の安全を確保するようです。」
 成程な。
 強大な軍事力を持たない国としては、今回のアメリカの決定は、渡りに船か。
 資料を読むと、ナタルとイーリも参加するようだな。
 あの2人がいれば、安心か。
 欧州は、NATOが軍を出動させる。
 こっちはこっちで、問題無しか。
 国連加盟国の中で、ISを所有しているのは20数か国。
 その多くは、強大な軍事力を持つ国だ。
 亡国企業といえども、おいそれと手は出せない。
 油断は、禁物だけどな。
 後は。

「我が国としては、横須賀の第一護衛隊群を残し、東南アジア諸国の海軍と合同演習を行う事で、安全を確保する予定ですが、織斑理事。いかがでしょうか?」
 本来なら、こういうのは内閣が決める事だが、事が事なので、安全保障理事会の特別理事である、俺も参加している。
「それは、東南アジア諸国の希望でもあるのでしょうか?防衛大臣。」
「はい。遠回しな表現ではありますが。」
 やっぱりな。
 軍艦や戦闘機、ISの開発技術こそないとはいえ、シンガポールやマレーシアは経済力で言えば、国の規模からみると大きい。
 数こそ少ないが、運用している兵器やISも高性能だ。
 だが、力は数の言葉がある通り、今回の様な事態になるとどうしても、心許ないか。
 それで、日本と合同で事に当たる事を、選んだか。
 事前に読んでいた資料から、予想はしていたけど、物の見事に当たったな。
 とするとだ…。

「インドの動向はいかがでしょうか?」
「我が国に同調するようです。既に機動部隊が出撃の用意を、整えつつあります。」
「周辺国との政治的な問題は?」
「事、今回に限り、棚上げですな。」
 どこも、今は、抱えている政治問題に構っていられないか。
 IS学園の受験生となれば、各国のエリートが集まる。
 何としても、守り抜きたいだろう。
 俺が、そう思うくらいだ。
 当事国は、もっと切実だと思うね。
「アジアの方は、それでよいかと。在日米軍は?」
「既に、準備を整えております。」
 さすがに、動きが早いな。アメリカは。

「一夏、大丈夫か?少し、疲れているようだが…。」
 ラウラが、少し心配そうに一夏に声をかけてくる。
「ん?ああ。少しな。事が大きいから、どうしてもな。けど、ここで纏めておかないと、来週のニューヨークはもっと大変だ。」
 一夏は、昼食を済ませた後、念の為に処方されたビタミン剤を飲んだ。
 亡国企業の実態解明は進んでいるものの、まだまだ解らない部分が多い為に、各国とも神経過敏になっている。
 来週のニューヨークでは、さらに詰められた話し合いが行われるが、同時にロビー活動も行われ、他国の力を少しでも利用しようとする国が多く出るだろうし、それ以上に、一夏の助力を取り付けようとする国は、多いだろう。
 もし、日本がどこかの国に貸しを作れば、外交ではメリットになるが、一夏を切り売りするようなことになり、最悪、政治家の首が危うくなる。
 そんな物を、一夏は見たくもないし、何より、一番のストレスになるので避けなければ、ならない。
 詳細まで、可能な限り詰めておくことが必要になる。
 日本政府も、それを察しているのだろう。
 何人かの閣僚や官僚が、一夏に相談を持ちかけてきた。
 政府の事情は分かるが、精神的に一夏は疲労していた。
 それを察した楯無とラウラはある程度したら、相談にきた関係者に丁重にお帰り願った。

「国内の警備態勢ですが、近年、ISを所有できない国家の不満の高まりから、妨害行為も否定できないと、各国からの声があります。」
「同感ですな。抑え込める国家ならよいのですが、そうでない国家は、自国での入試はリスクが高すぎます。下手をすれば、訓練機を使用しての二次試験で、訓練機が強奪される可能性が、あります。」
 公安外事課の代表が、懸念を口にする。
 本来ならば、各国で受験を行う事が最もリスクが少ない。
 だが、ISに関しては、持てる国と持てない国の格差が大きすぎて、外交上の大きな火種にもなるので、強奪しようとする過激派も存在する。
 そちらにも備えなければならないので、日本で受験が行われるのである。

『ISの抑止力が、却って面倒な問題を引き起こすからな。』
 一夏もその点は、懸念していた。
 日本は、IS発祥の国である事から、五大国と同数のコアを所有しているが、元々、治安が良い事と警備体制が厳重であることが理由で、所有国の中で、最もリスクが少ない。
 何より、IS学園には、優秀な教官がおり、現在、世界最強のISである白式を駆る、一夏の存在が大きい。
 ISでの戦闘だけでなく、個人戦闘においても超一流の技量を持つ一夏に喧嘩を売る事は、自ら棺桶に飛び込むのと同義。
 さらに、今の所は、IS非保有国との外交関係も良好なので、警戒は怠らないが、さして心配はいらなかった。
『いっそ。分けてみるか。』
 ありきたりの案を、一夏は提示することにした。

「提案ですが、筆記試験と訓練機を使用した試験を別にしては、如何でしょうか。元々、双方の結果を考慮して合否を判定しておりますが、座学の時点である程度の理解力が無くては、授業についていくのは困難です。さらに、これならば、倍率が増えたとしても、ある程度は警備コストも抑え込めます。」
 一夏の提案に、出席者が相談し合う。
 如何に適性があっても、座学の面での理解度が低くては、訓練機を使用しての試験でろくに動かすこともできない。
 これは、過去の試験結果を見れば、一目瞭然である。
 故に、最初の時点である程度振り分けておけば、警備の負担も減る。
 一夏は、そう考えていた。

「各国の合意が必要になりますが、良い案ですな。」
「同感です。」
「異議なし。」
 どうやら、受け入れてもらえたようだな。
 実をいうと、IS学園を受ける受験生が大挙して来る事は、以前から問題になっていた。
 受験シーズンでも、企業は休むわけにはいかない。
 業務は通常通り行われるので、出張の時には、交通機関や宿泊先で少なからず、大変なことになる。
 これの解決にもなるから、一石二鳥だ。
 基本的には、受験制度の改革は、日本が行う事が認められているが、各国との関係を考慮すると、きちんと話し合いをする必要がある。
 その場で、きちんとメリットを話しさえすれば、問題ないだろう。

「大丈夫?お医者さん呼ぶ?」
 楯無が心配そうに、一夏に話しかける。
 様々な問題の解決案を皆で話し合ったが、一夏以外の出席者は、保身に走りがちな傾向が否定できず、結果、一夏に大きな負担がかかっていた。
「大丈夫ですよ。少し、休んでいれば、平気です。」
 少なからず、疲れは溜まっていたが、生来、生真面目で、周囲に心配させないようにする性格の一夏は、どうしてもそう振る舞ってしまう。
「今日は、栄養のある物を食べて、ぐっすり寝ましょう。明日も会議だし、明後日からは、いつも通りなんだから、疲れを残すべきじゃないわ。」
 宿泊しているホテルでは、バイキング方式のレストランがあるので、できうる限り栄養のある物を食べさせて、疲労した体を回復させようと、楯無は考えていた。

 やっぱり、気づかれんのかね…。
 ぶっちゃけ言って、疲れてんの事実だからな。
 ったく、そりゃ、家族がいれば、今の地位が大事だってのは解る。
 家庭を持つ以上、それを守っていかなきゃならねえわけだし。
 でも、行き過ぎるのは、勘弁してくれ。
 決まる物も決まらないようじゃ、話にならない。
 来週のニューヨークも、これか?
 だったら、泣くぞ。俺。
 とりあえず、今日は、きちんと飯を食って寝よう。

「そうか。大筋は決まったか。」
「はい。けれども、官僚や閣僚は大部分が保身に走っているようで、一夏君も相当に、参っているようです。」
「そうか。とにかく、今日は早めに休ませてくれ。後に疲労が残るのは避けたい。」
「はい。では。」
 楯無からの電話を終えると、千冬は溜息をつく。
 組織に属する人間。
 殊に、上層部が保身に走りがちなのは、日本だけではない。
 設立から年を経れば、どの国も似たり寄ったりになるのは、歴史が証明している。
 その中で、一夏は非常に特異な存在だ。
 そもそも、保身も何も、身分や肩書に対する執着は、皆無である。
 一夏が執着するとすれば、自分に何が出来て、何が守れるかだ。
 思考のベクトル自体が、官僚とは違う。
 その点について、実の姉である千冬は良く理解していたが、それでも溜息をつかずにはいられない。

「一度、気合の一つも入れてやった方が、いいかもしれんな。官僚共に。」
「お気持ちは解りますけど、自重してくださいね。織斑先生。」
「解っている。冗談だ。」
 無論、真耶も理解しているが、掌中の珠の如く大事にしてきた一夏が、貧乏くじを引かされ続けているとなると、千冬としても、一度、官僚全てを足腰が立たなくなるまでしごいて、保身に走る心を、叩きだしてやりたくなるのだろう。
 真耶とて、いい気分はしないが、生来、大人しい性格なので、千冬程過激な事は考えない。
 しかし、不快なのは同じだった。

 さて、終わった。終わった。
 後は、帰るだけか。
 つくばエクスプレスに乗って、俺は寛いでいた。
 さすがに、疲れたしな。
 ひょっとしたら、検査かもな。
 考えてみれば、最近、ストレス溜まり気味だし。
 気を付けるか。
 
『一夏の疲労が、思ったより激しいな。』
『そうね。こういう時に、亡国企業がちょっかいを掛けてこないといいのだけれど…。』
 つくばエクスプレスは、つくば駅から研究学園駅、南流山駅前後、六町駅から青井駅、南千住から終点の秋葉原までトンネルになる。
 もし、この際に襲撃を掛けられると、トンネルという狭い空間の戦闘になるので、ISでは明らかに不利になる。
 亡国企業は、乗客の人命を顧みる必要が無いので、完全にやりたい放題だ。
 如何に一夏や楯無、ラウラでも苦戦は免れない。
 さらに、ゴーレム以外にも特殊訓練を受けた工作員を動員する可能性も、否定できない。
 楯無のSPを各車両に配置しているが、ここでの襲撃は楯無とラウラは御免こうむりたかった。
 何より、心労が溜まっている状態の一夏に、戦わせたくなかったのである。

 マジかよ…。こんなところで。
 避来矢で、車両を防御しつつ、相手を撃破か。
 しかも、あちこちに駒を配置しているだろうから、こっちは消耗戦になる。
 ラウラと楯無さんもいるが、これはきついな。
 只でさえ、トンネルは狭いし、パンタグラフや電線に攻撃がかすりでもしたら、列車は止まる。
 とにかく、何とか乗り切らないとな。
 部分展開しかできないが、それで乗り切るしかない。

「最悪の展開ね。」
「どうこう言っても、仕方ない。防御を固めつつ、敵を各個撃破。これしかない。」
「そうね。各員に通達。各々、車両防衛に専念。以上。」

 あいつら…。
 小型化しやがったな。
 ゲームの敵キャラじゃ、ねえんだぞ。
 しかも、可変型。
 グレイの奴、面倒な物作りやがって。
 御旗を全て展開して、列車の全方位を防御する。
 これで、車両の安全は確保したな。
 後は、潰すだけだが、こちらの方が機動可能な領域が、狭すぎる。
 攻撃するだけでも、一苦労だ。

『ラウラ、楯無さん。とにかく、攻撃には気を付けてください。トンネルを抜けた後は、確実に向こうは、戦力を投入してきます。』
『解っている。一夏こそ大丈夫か?全方位の防御は、決して楽ではない筈だが。』
『この状況じゃ、キツイさ。コントロールをほんの少しでも間違えれば、事故に直結だからな。それでもやるしかない。』
『トンネルの中で、どれだけ潰せるか。そして、抜けた後に迅速に、ゴーレムを殲滅できるかが、勝負ね。』
『そういう事ですね。援護、お願いします。』
 っと。
 いきなり攻撃してきやがった。
 本当に、やり放題だな。
 こっちは、うかつに攻撃もできないってのに。
 鳴弦を弓に変形させて、零落白夜の矢で稼働不能にしていく。
 ったく、俺は鎮西八郎為朝かよ。
 本当は、鳳笙か神札を使えればいいんだが、車両の安全を最大限確保するとなると、避来矢に形態を変更したほうがいい。
 けど、うじゃうじゃ来るな。
 ここからだと、学園はまだ遠い。
 とにかく、一番長いトンネルの入り口の南千住までにはケリをつけないと、ヤバい。
 ここぞとばかりに、バカスカ撃ちまくるのは明々白々だ。

ワン・オフ・アビリティ:自己進化機能、天照発動。
幻影輪舞全般への、神札付与終了。

 よし。
 これで、何とかなる。
 神札を付与された鳴弦の矢を拡散させて、ゴーレムを一気に始末する。

『すまん。助かる。』
『ありがとう。一夏君。』
 迂闊に攻撃できないラウラと楯無は、防御と牽制に専念していた。
 2人の技量なら、近接戦闘で仕留める事は容易だが、トンネルという機動領域が極端に狭い場所では、無理である。
 射撃の際にも、細心の注意が必要になる。
 事実上、手詰まりになっていた。
『ゴーレムは、こちらが引き受けます。2人はとにかく、防御を頼みます。それと、牽制して近づけないでください。』
『了解した。』
『任せておいて。』
 ラウラと楯無に、細かな事を言う必要はない。
 最低限の事を言えば、一夏が望むことをしてくれる。
『後は、俺が仕留めるだけだ。』
 一夏は鳴弦の矢を放って、ゴーレムの第一陣を全滅させた。
『すぐに、第二陣が来る。車両を守りつつ、短時間で殲滅させたいけど。そう簡単には、行かないか。いや、ラウラと楯無さんに踏ん張ってもらえば、何とかなる。』
 一夏は、意を決した。

 ISは、そもそも、宇宙での活動を想定して開発された、マルチフォームスーツ。
 だから、かなりの高高度でも、運用はできる。
 ただ、白式の能力をフルに発揮すると、通信や各種レーダーに影響を与える。
 それを考慮すると…。
 よし。

『ラウラ、楯無さん。車両をお願いします。』
『どうするつもりだ。一夏?』
 ベスティエを巧みに使い、ゴーレムの牽制をしていたラウラが、一夏に訊ねる。
『上空で待機している奴も纏めて、始末してくる。』
『始末してくるって…、どうやって?ここじゃ、いくら一夏君でも無理だわ。』
『もちろん、ここじゃ難題です。上に行きます。』
『超高高度か?しかし、旅客機に影響が無いとは言い切れん。各国の通信やレーダーにも影響する。』
 一夏の言葉に、2人が懸念を示す。
『電離層のずっと上。衛星軌道外で、始末します。軌道にデブリが行かないようにすれば、問題ありません。』
 電離層は、高度50kmから500kmに位置する。
 ISは、その気になれば宇宙空間でも運用が可能だ。
 衛星軌道でも、無論、問題ないが、軍事的価値を見出されてから、ISを宇宙やそれに近い場所で運用した例は、過去にない。
 それだけに、ラウラと楯無には不安があった。

『心配いりませんよ。絶対防御がありますしね。紫外線その他諸々、人に優しくない物は、遮断できます。』
『けれど、その分、エネルギーの消耗が激しいのよ!?ISの宇宙運用にしても、随伴する船で運用するのが、絶対条件。危険すぎるわ。』
 あ。あれの事、話してなかったか。
『束さんからの依頼で、紅椿とエクソルツィスト、それに白式用の追加パッケージを開発しています。白式のには、改良されたオペレーションエクステンダーが、複数搭載されていますので、さっさと片付ければ、大丈夫ですよ。それに、このままの状況が続くと、周辺部に被害が出る公算も小さくありません。』
 2人は黙り込んだ。
 と言うより、そうならざるを得ないか。
 事実、いつまでも今のままは危険すぎる。

『必ず帰ってこい。』
『そうよ。必ず、帰ってきなさい。あなたにもしもの事があったら、織斑先生に、あなたのお姉さんにお詫びのしようがないんだから。いいわね。』
 2人は、一夏に必ず帰ってくるように念を押す。
『解ってますよ。じゃあ。行ってきます。』
 一夏は高速でトンネルを抜けると、幻影輪舞を停止し、追加パッケージを展開する。
 背部、腰部、脚部に改良型の磁気推進スラスター。
 両肩部に、追加兵装を搭載した装甲。
 手には、刃渡り5尺(約152cm)、柄の長さは2尺(約61cm)の大太刀があり、腰部後方には長距離砲が搭載されている。
 白式の追加パッケージ「月数」。
 射撃兵装も装備されているが、基本的には一夏の剣術の技量を最大限に活かすのが設計思想である。
 一気に、上空に加速すると、各地点に待ち受けていたゴーレムも、一斉に一夏を追尾する。
『いい子だ。ちゃんとついて来いよ。』

「衛星軌道外での、迎撃!?」
「はい…。」
 楯無からの連絡を受けた真耶は、驚きのあまり声が出なかった。
 ISは宇宙での活動を念頭に設計されたが、軍事利用に視点が行き、アラスカ条約で規制し、モンド・グロッソで各国代表が、国の威信を背負って戦う。
 それが、ISの使われ方だった。
 軍にも配備されているが、国家代表の育成やいざという時の保険であり、未だに、宇宙で使用された事はない。
 真耶は勿論、千冬ですら、衛星軌道周辺での戦闘は未経験だった。
 さらに、絶対防御があるとはいえ、紫外線やX線、宇宙放射線の被爆も無視できない。
 衛星軌道外となれば、役目を終えた衛星が移動する墓場軌道を考慮すると、高度42500km以上。
 遮る物はなく、直接被爆することになる。
 それから守る為に束が考案したのが、シールドや絶対防御だが、エネルギーの消耗が激しく、この状況では、帰還すらできない可能性もある。
 あまりに、リスクが高すぎた。
 月数の詳細は知らされているが、不安は拭いきれない。

「委員会に緊急連絡。それからブレーメを呼べ。エクソルツィストのシステムを、オペレーションルームと直結させて、状況を常に把握する…。」
 冷静だが、力のない声で、千冬が真耶に指示を出す。
「はい…。」
『織斑君。どうか無事で…。』
 真耶は祈る思いで、クリスを呼んでから、千冬と共にオペレーションルームに向かう。

 地球は青いか…。
 本当だな。
 ってか、こいつら宇宙空間での活動も、考慮してんのかよ。
 無人だから、宇宙放射線や紫外線なんて、お構いなしだからできるのかね?
 高度6万km。
 とにかく、まだ月までは32万km強あるから、心配ないけど、ドジを踏めば、月か地球か、どちらかの重力に捕まる。
 ISが実用化されても、宇宙は人類に優しくないな。
 冗談抜きの、限界機動領域だ。
 シールドエネルギーの減りも、予想以上に早い。
 さっさと片付けるか。

 ゴーレムが、一斉に散開して包囲しようとする。
 パターンが、お決まりだな。
 そのお品書きじゃ、俺相手は無理だね。
 腰部後方にマウントされている、超高収束重粒子荷電粒子砲「天上火」で機動を読み、薙ぎ払う。
 月数は、俺の剣術の技量を最大限に活かすように設計されているが、砲撃戦の事も考慮している。
 警戒したのか、今度は複数のグループになって、向かってくる。
 戦術は悪くないが、相変わらず、機動がワンパターンだ。
 スペックは上がってるが、それじゃあ意味がないっての。
 両肩部に搭載されている、衝撃砲と重荷電粒子砲を一体化させた複合砲「乙矢」の重荷電粒子砲と、2門ずつ搭載されている小型低圧砲「火箭」のミサイルを発射して動きを止めてから、ブーメランにもなる、短刀型の多機能ブレード「干将莫邪」を神札の状態にして、稼働を停止させる。

自己進化型超高機動兵装ウィング・星龍
自己進化機能発動。
宇宙空間における、セッティング獲得。
システムチェック終了。
全システム、オールグリーン。

 マジに進化しやがった。
 この場合は、ありがたいけどな。
 ゴーレムは、次々と攻撃を仕掛けてくるが、宇宙空間での戦闘にも適応した星龍を主推進機関とする白式の敵じゃない。
 最大の兵装、大型多機能ブレード「天之尾羽張」を構えると、イグニッションブーストで、一気に距離を詰めて、神札を発動させて稼働停止にして、1体残してゴーレムを、太陽の方向に蹴り飛ばす。
 何時かは想像もつかないが、これでゴーレムは、太陽に呑み込まれて消滅するだけだ。
 ジ○ジ○のカ○ズは、死ねないので考えるのをやめたが、ゴーレムは稼働停止したまま。
 後は、太陽に呑み込まれるまで、宇宙を彷徨うだけだ。
 エネルギー、大分食ったな。
 帰還は問題ないが、月数がなければ、ヤバかった。
 最適化の研究は、まだまだ続きそうだ。
 とにかく、展開装甲で大気圏突入に備えて、帰るとするか。

「白式、戦闘を終了。大気圏突入成功しました。」
「白式と、一夏の状況は?」
「どちらも、問題ありません。」
「そうか…。」
 張りつめた糸が緩むように、千冬は安堵していた。
「無力だな…。」
 そう呟いて、千冬はオペレーションルームを出た。
 何に対して呟いたか。
 それを真耶は痛いほど理解していたが、何も言葉を掛けられなかった。
『私も…、同じですよ…。織斑先生…。』
 教師なのに、生徒の力になれない自分の非力さを、真耶は感じていた。

「検査結果は、正常。紫外線、X線、宇宙放射線の影響は、一切無いわね。」
 過去に例のない、宇宙空間での戦闘だったので、千冬は一夏にかなり精密な検査を受けさせていた。
 月までは大分距離があったが、太陽活動の影響如何では、致死量を超える被爆の可能性もある。
 最新型の宇宙服は、最大7時間程度の活動が可能だが、ISは、宇宙服とは比べものにならない程、複雑な構造である。
 さらに、宇宙服では活動不能な宙域での活動も考慮されているし、それを差し引いても、ゴーレムを相手にした高機動戦闘では、エネルギーの消耗は激しい。
 宇宙服を遥かに凌ぐ、宇宙空間での活動能力を得た代償として、ISを宇宙で運用する際には、設備の整った運用船が必須と言う結論が出ている。
「それにしても、こうなるとは思わなかったわ。判断自体は、間違っていないと思う。救援を待っていたらどうなるか解らなかったから、状況を打開するには、あれしかなかった。けれど、危険だったことは事実。」
「だが、こういった事は、二度も三度も起きてほしくはない。」
「そうね。」

 天照が、また好き勝手やってるよ…。
 宇宙空間での、セッティングをしてる。
 磁気推進スラスターにまで、手を加えてるし。
 それに、星龍は大気圏突入時のデータから、放熱機能を得ている。
 しかも、推進システムが、荷電粒子の斥力場を利用したシステムになった。
 まあ、前代未聞のISでの宇宙空間での戦闘だったわけだし、宇宙服との違いを考えると、現行のシステムでは不足だと考えるのも、無理はない。
 各国とも、第三世代ISの宇宙空間での運用なんて、範疇外だからな。
 ますます、白式は変わったというか、特殊なISになったな。
 さて、委員会から、宇宙空間での戦闘データの供与を強く要請されたから、データを整理しないとな。
 今までは、白式の情報開示は断っていた。
 そもそも、する道理が無い。
 が、いずれは宇宙空間での運用も、十分あり得る。
 その時には、必要になるだろう。
 それを考えると、供与した方がいい。

 それにしても、散々な一日だったな。
 こういう事は、金輪際御免だぜ。
 蘭の学校の文化祭と、ノーフォークの件でゴーレムシリーズは、世間に知られてしまった。
 今の所は、正体不明の組織が開発した、ISを模倣した機動兵器という事で、片づけられているが、どこまで持つか…。
 正直、不安だな。

後書き
受験対策が、いよいよ本格化します。
希望するのは各国の未来のエリートですから、当然ながら厳重に。
日本は、IS学園の所在地という事もあって、各国の動きを把握したうえで対策を練る必要があります。
最大の懸念事項は亡国企業なので、一夏の存在が嫌でもクローズアップされます。
精神的に疲れたところに、亡国企業の襲来。
今回は、どういった状況が一夏たちにとって戦いにくいかを、考えました。
そこで思いついたのが、鉄道のトンネルです。
狭い空間では、機動力を活かせませんし乗客にも被害を出さないようにするには、攻撃もしにくい。
対して、亡国企業はやりたい放題。
そこで打開策として、宇宙での戦闘に移ります。
元々、宇宙空間での活動を想定して開発されたのがISなので、それを活かしたいと以前から思っていました。
それにしても、改めて調べてみると、宇宙空間は人間には優しくないですね。






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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。
いつも楽しく拝見させて貰ってます。
毎度の事ですが、CIC担当様の兵装に関する
アイディアには関心させられるばかりです。
可能であれば、下名のオリジナルキャラをこちらの
一夏にボコボコにして貰いたいものです。
それでは、これからも楽しみにしています。
風林火山
2013/09/09 22:11
いつも楽しく読ませていただいています!
一夏、とうとう宇宙まで行きましたか
感慨深いものがありますね。
しかし一夏はまだ学生、よくもちますよね。
話は変わりますがヨルムンガンドのソフィもよく働きますよね。そして両者とも無駄がない。
両者とも今後の活躍に期待ですね。
ヨルムンガンド、IS、ガンダムは今とてもいい展開だと思います!
今後も更新頑張ってください!
ヨルムンガンドに関しては質問なんですが原作とは違う完結になるんでしょうか?
というかハッピーエンドを期待しちゃいます(笑)
ザクザク
2013/09/10 22:46
風林火山さん。
大変遅くなりましたが、コメントありがとう
ございます。

>毎度の事ですが、CIC担当様の兵装に関する
>アイディアには関心させられるばかりです。
 楽しんで戴けているようで、恐縮です。
 もうちょっと理数系に強ければ、さらに楽
 しんでいただける兵装を考えられるのです
 が、典型的な文系で、それが出来ないのが、
 残念です。

>可能であれば、下名のオリジナルキャラをこちら
>の一夏にボコボコにして貰いたいものです。
 そっちは、競争が激しいんですよ(笑)。
 特に、千冬もいますしね。
 でも、増やすという手もありますよね。
CIC担当
2013/09/22 19:42
ザクザクさん。
大変遅くなりましたが、コメントありがとう
ございます。

>一夏、とうとう宇宙まで行きましたか感慨
>深いものがありますね。
 元々、ISは宇宙での運用を想定した物で
 すから、こういう舞台は用意したかったん
 です。
 何しろ、宇宙ステーションが地球の周囲に
 あって、様々な研究を行い、遠い小惑星か
 ら惑星のサンプルを持って帰る時代。
 宇宙は、男のロマンですからね。

>話は変わりますがヨルムンガンドのソフィ
>もよく働きますよね。そして両者とも無駄
>がない。
>両者とも今後の活躍に期待ですね。
 なるほど。共通点がありますね。
 ソフィは裏社会とのつながりで、様々な知
 識を得た結果。
 一夏は、外で働く千冬の代わりに、家を切
 り盛りしてきた結果ですね。
 戦闘以外で、どれほどの才覚を示すかは、
 今後の展開次第ですが、書いてる私もどう
 なるか、解りません。
CIC担当
2013/09/22 19:50

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