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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第68話 迫りくる物

<<   作成日時 : 2013/09/22 00:14   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 0

「着いたわよ。一夏。」
「はい。」
 ジョン・F・ケネディ国際空港に到着して、専用車で俺は宿泊するホテルに着いた。
 ウォルドルフ=アストリア。
 1893年に開業した、アメリカを代表する高級ホテル。
 国王や各国首脳といった賓客や、マリリン・モンローといった有名人も宿泊した、超名門ホテルだ。
 まさか、こんなホテルに泊まるとはな。
 日本との時差が、13時間あるので、早朝に日本を出発しても、まだ午前中か。
 資料に目を通す時間が沢山あるのは、ありがたいな。
 円満に進んでもらわないと、はっきり言って堪らない。

「それにしても、どこか空気が、ピリついてるな。無理もないか…。」
 あちこちに警官の姿が見られるし、SWATも動員されている。
 それに、気配から明らかにグリーンベレーや、デルタフォースも動員されている。
 SEALSも動員されている可能性、大か。
 ISが絡むと、警備が本当に厳重になる。
 キャノンボールファストの時も、そうだったけどな。

「日常茶飯事だ。この空気に慣れておけよ。まあ、その内慣れるだろうがな。」
 シュヴァルツェハーゼの隊長であるラウラは、こういった事は慣れているのか平然としている。
 岩本一尉も、普通にしている。
 けど、周囲への警戒は怠ってないな。
 他の警備の人達は、それぞれの持ち場で警備についているそうだ。

「会議は午後2時から。しばらく休憩できるわ。何か頼む?」
「そうですね。コーヒーと何か軽い物を。」
 一夏の希望を聞いて、春香がルームサービスを頼む。
 そして、一夏は資料に目を通し始める。

 各国とも、凡そ事前の情報通りか。
 けど、いざ方針を決めると揉めるだろうし、出来る限り自国の負担を減らそうと、いろいろ考えているのは目に見えている。
 その辺りの調整が、最重要課題か。
 今頃は、NATO諸国が、膝を突き合わせて、いろいろ相談しているところか。
 日本に、更なる負担を求める可能性も、無きにしも非ずか。
 けど、日本も海自はほとんど出払う。
 そんな余裕は、ないんだけどな。
 経費の負担要求位は、あるかな?
 経済が、最近好調だからな。
 ちなみに、原因の一つは俺だ。
 どうなるのかね?
 考えながら、ハムサンドを一口食べた。
 今の所、俺の所には来ないようだから、俺に助力は求めては来ないようだな。
 大いに結構。
 俺は、アイデアは出すけど、政治的なサポートは、よほどの事が無い限りはしない。
 パイプが出来たと、誤解されたくないし、今後を考えると好ましくない。
 俺の立場は、それだけ様々な事に配慮しなければならない、微妙な物だからだ。

「一夏。もう、正午だ。きちんと食べて、力をつけておけ。各国が力を合わせねばならんが、胸の悪くなるようなやり取りがあるのは、間違いないからな。」
 時間を忘れて資料に目を通し、会議がどうなるかを考えて対策を立てていた一夏を見て、ラウラが昼食に誘う。
「ああ。もう、そんな時間か。」
 一夏は、最近仕事の時は、伊達眼鏡を掛けている。
 デザインは、知的でどこか鋭さを感じさせる金縁で、純金の鎖付きである。
 一夏の視力は両目とも、1.5。
 眼鏡をかける必要は、ない。
 主に、周囲への牽制である。
 所詮は孺子と侮り、一夏を利用する輩を追い払うための小道具である。
 それを外して、一夏はスイートルームを出る。

『一夏は、今頃昼食か。』
 宿直室で仕事を片付けながら、千冬はニューヨークの現地時間に合わせた時計を見る。
 IS学園の専用機持ちの生徒たちの要である一夏が不在の間に、亡国企業の襲撃がある事を考慮して、武装教官と一夏が構築した防御システムを操作するオペレーター役の教官が、学園に待機している。
 非常に守りは堅固だが、一夏がいるいないでは、やはり影響がある。
 しかも、今、一夏は太平洋の向こうのアメリカ。
 すぐに戻ってくるのは、不可能だ。
 気を、抜くことはできなかった。
『向こうで、何もなければいいが…。』
 千冬は、溜息をつく。

 ホテル内にある高級ステーキ店、ブル&ベアーで昼食を済ませた一夏は、国連本部ビルに、30分前に着いた。
 既に、数か国の大使が到着しており、立ち話をしている。
 無論、只の立ち話ではない。
 駆け引きである。
 自国の受験生の安全をより確実にするために、他国の協力をより少ない投資で引き出す。
 それが、主目的である。
 ラウラと春香に護衛された一夏がビルに入ると、大使達が一斉に一夏を見る。
『早速、来るかな。』
 各国が、IS委員会の力を借りようとしている事は、とうの昔に知っていたので、一夏は驚きもしなかった。
「失礼。織斑理事は、本日、到着したばかりなので少々お疲れです。会議までお休みになられたいとの事です。では。」
 春香がすかさず、一夏に話しかけようとする大使たちを牽制する。

「お手数をおかけします。」
「気にしないで。これが私の仕事だし、何より、教え子が利用されるのを見るのは、いい気分はしないわ。」
 春香は一夏の気疲れを心配して、甘めのウィンナーコーヒーを注文する。
 それから、20分ほど寛いでから、一夏は会議場に入って伊達眼鏡を掛ける。

「これより、安全保障理事会を開催します。本日の議題は、今年のIS学園の受験の際しての、受験生の安全確保です。」
 前難民高等弁務官で、元ノルウェー外務大臣である、現国連事務総長ロアール・ニルセンが、開催を宣言し、各国が警備プランを発表する。

「既に、空母ロナルド・レーガンを旗艦とする、第3艦隊が展開の準備を行っております。尚、今回は、カナダ、南米諸国との合同作戦となります。また、第7艦隊は、北朝鮮への警戒の為、旗艦ブルーリッジ、空母ジョージワシントンを始めとする半数の艦艇が、空母ジョン・C・ステニスを旗艦とする第3空母打撃群と合流している関係で、最新鋭空母ジェラルド・R・フォードが、ミサイル巡洋艦ヴェラ・ガルフ、チャンセラーズビル、ミサイル駆逐艦スプルーアンス、スタレット、サンプソン、グリッドレイ、対潜フリゲートカウフマン、エルロッドを護衛とし、高速戦闘支援艦アークティックを支援艦として、現在、横須賀に向かっております。第3、第7両艦隊と共に、潜水艦部隊も展開。さらに、パールハーバーと在日米軍基地からも飛行隊を発進させ、周辺の警戒に当たります。」
 ジェラルド・R・フォードは、慣熟訓練を終えたばかりの、アメリカ海軍の虎の子といえる最新鋭空母。
 おまけに、不測の事態に備えてエスコート役も豪勢だな。
 加えて、海中と空も抜かりなし。
 第3艦隊と合わせて、太平洋は問題なしか。
 ただ、これだけ部隊を展開させると、莫大なコストが掛かる。
 カナダに南米諸国が加わるのも、頷ける。
 アメリカとしても、費用の一部を肩代わりしてくれるから、双方にメリットがある。

「日本の海上自衛隊は、第1護衛隊群を除く護衛隊群を全て動員し、東南アジア諸国の海軍及びオーストラリア海軍と合同で、作戦を実行いたします。」
 海自は、予定通り総動員か。
 シンガポールは、規模は小さいが艦艇の性能は高いので、他の国と合同となれば戦力になる。
 オーストラリア海軍は、最新鋭のホバート級が来るか。
 これだけの戦力を動員するって事は、どの国も相当に神経過敏になってるな。
 まして、オーストラリアは、サファイア先輩の母国。
 エインガナの運用データを、どれだけ物にしたかは解らないが、絶対に新型ISの開発を、極秘裏に進めてるはずだ。
 とすると、編入を考慮する必要ありか。
 入試を無事に終えても、いろいろ大変だろうな。

「NATOは、各国との協議の結果。フランス海軍空母シャルル・ドゴールを旗艦とし、イギリス海軍空母クィーン・エリザベスを加えて、中核戦力にした上で、護衛艦艇を各国海軍が派遣することで、合意を得ました。司令部はシャルル・ドゴールに置きます。」
 欧州唯一の原子力空母が、やっぱり出てくるか。
 それに、クィーン・エリザベスも。
 そして、インヴィンシブル級軽空母で国内に残っている、イラストリアス、アーク・ロイヤル。
護衛艦艇の主力は、スペイン海軍のイージス艦ブラス・デ・レソにメンデス・ヌーニェス。
 最大の虎の子である、軽空母プリンシペ・デ・アストゥリアスは、さすがに出さなかったか。
 ドイツからは、最新鋭のザクセン級フリゲートから、ハンブルク、ヘッセン。
 共同開発したオランダからは、トロンプ、デ・ロイテル。
 イタリアは、デ・ラ・ペンネ級を2艦全部か。
 対潜警戒は、イラストリアス、アーク・ロイヤルと共にイタリアが受け持つってところか。
 ポルトガル海軍は、ヴァスコ・ダ・ガマ級フリゲートからヴァスコ・ダ・ガマ、コルテ・レアル。
 トルコ海軍は、G級フリゲートからギムスン、ゲムリク。
 汎用性があるから、様々な局面に対応できる。
 そして、トルコ海軍からは他に、嘗て、TF2000型と呼ばれたムアーヴェネティ・ミッリイェ級防空フリゲートから、ムアーヴェネティ・ミッリイェ、バスラが派遣される。
 ムアーヴェネティ・ミッリイェは、トルコ海軍最新鋭の防空フリゲート。
 オート・メラーラ 軽量化64口径127mm砲、対艦ミサイル ハープーンSSM4連装2基、垂直射出型ミサイル発射システムMk.41 VLS48セルの内、40セルを艦隊防空ミサイル スタンダードSAM SM−2MR BLOCK3に。8セルを個艦防空ミサイル ESSM 短SAMに割り当てている。
 対潜固有兵装は、Mk.32 3連装短魚雷発射管2基だけだが、SH−60B LAMPSヘリコプターを2機、対潜ヘリコプターとして配備。
 さらに、個艦防御システムとして、ゴールキーパー 30mmCIWS、RAM 近接防空ミサイルを1基ずつ装備。
 これらの兵装を、APAR多機能レーダーとSMART−L 三次元レーダー、スフェリオン Mk.V及びCAPTAS NANO対潜ソナーで運用する。他にも電子戦システムを含む、最新鋭の機器が装備された、トルコ海軍の虎の子だ。
 艦隊防空能力の不足が指摘された結果、艦を一回り大型に再設計して、基準排水量は5000tを超える。
 補給艦として、ギリシア海軍からプロメテウス。イギリス海軍からフォート・ヴィクトリア。フランス海軍からデュランスが派遣される。
 補給は、随分余裕を見てるな。
 大飯喰らいの、クィーン・エリザベスがいるからな。
 他にも、インヴィンシブル級が2艦いる。
 艦載機数も、正規空母2艦に、ヘリコプター空母2艦合計で、かなりの物になる。
 余裕を、見たくなるか。
 他の国は、GDPに応じて費用を負担か。
 北欧も、加わるから、海軍艦艇を派遣する国の負担も、思ったほどじゃないな。
 けど、費用負担で揉めそうな気がするんだよなあ…。
 予想以上に、規模が大きいから。

「事務総長。アメリカから、ある懸念がありますのでそれを議題にしてほしいのですが。」
「何でしょうか?」
 アメリカ大使のアーサー・スティーブンソンが、発言の許可を求め、ニルセンが発言を促す。
「既に、各国でもあるかと思いますが、程度の差こそあれ、IS保有国に対する非IS保有国への不満が、高まりつつあります。非保有国では、デモが頻発しており、保有国では無視できない事件も、起きつつあります。」
 言いながら、一夏をちらりと見る。
「また、保有国間でも、開発技術を保有する国と保有しない国。さらに保有する国の間の格差が、外交問題になっているのは、ご承知の通りです。これを踏まえた対応策が、必要と考えます。」
 スティーブンソンが発言を終えると、各国の大使も話しながら、一夏の方を見る。

 おいおい。俺のせいかよ?
 散々、人に、ISの改修をやらせておいて、それはないんじゃないのか?
 こっちは、それが原因で、いろいろ配慮しなきゃいけない立場になって、挙句の果てに、帰属すら決まってないんだけどな。
 それぞれの国の事情があるのは理解しているし、アメリカ大使の言った外交問題は、ISだけじゃなく、民族や宗教、領土問題も関係する根が深い物だから、解決は容易じゃないし、それ故に、注意する必要があるのも解る。
 けど、あたかも、俺のせいみたいに、俺に視線を向けられるのは、いい気分はしないな。

「各国大使にお尋ねしたいが、どうも、一定の人物に原因があるような視線が見受けられるのは、私の気のせいですかな?」
 イギリス大使サー・コリン・クリストファー・オールドフィールドが、静かに口を開き、大使達を見渡す。
 代々、外交畑を歩んできた家の出身で、国際経験も豊富な大使である。
「どうやら、私の勘違いの様ですな。いや、失礼をいたしました。」

 意外な展開に、なったな。
 ただ、いいタイミングになったのは事実だ。
ここらで、仲裁案を出すか。
「事務総長。私に考えが、あるのですが。」
「織斑特別理事。どうぞ。」
 初日から、陰険漫才は御免だからな。
「既にご承知かと思いますが、合否の判定は、筆記と実技。しかしながら、最終的な合否の判定で、まずは筆記で振り分けたうえで、実技試験の結果で判定するのはご承知の通りです。そこで、筆記試験は各国で行った上で、合格者のみ、日本で実技試験を行うというのは、如何でしょうか?この方が合理的ですし、且つ、護衛コストも圧縮できると思うのですが。実は、既に、日本でこの件に関しては、合意を得ています。後は、各国大使の方々のご意向次第になります。」
 さて、どうでるかな?
 再び、各国大使が話し合う。
「決を採る事を、提案します。」
 アメリカのスティーブンソン大使が、採用するか否かの決を採る事を提案する。
 軍事予算を削減中だしな、他国の費用負担があるとはいえ、できればコストは抑えたいところだろう。
 結果、全会一致で俺の案は採用され、IS学園の受験制度の改革が決まった。
 助けられる結果になったので、俺はオールドフィールド大使に小さく一礼する。
 すると、「お気になさらず。」と言いたげに、大使は微笑む。
 その他いくつかの事が話し合われ、その度に、不愉快な思いをしたが、成果は上がって、1日目は終わった。

 国内の方が、まだマシかね?
 針のむしろと言うか、何と言うか…。
 そんなに、俺が他国のISの開発や改修をするのが問題なら、自分たちでやってくれよ。
 俺は、好き勝手にやった記憶は、ないぞ。
 シャルロットの時は、俺が政府を動かしたようなものだし、ラウラの方は、前から必要性を感じていたけど、きちんと正規の手続きを踏んだうえでだ。
 各国の要請に基づいた事だった事を棚に上げられるのは、はっきり言って不愉快だ。
 少なくとも、他人に後ろ指を指されることは、一切していない。
 他国も第三世代の実用化が難航しているから、焦っているのは理解している。
 けど、俺にどうこう言わないでほしい。
 にしても、これからは考えながらやる必要さらに大か…。

「一夏。疲れているのか?」
 ルームサービスに、コーヒーとパンビスケットを頼んだラウラが、一夏の所に持ってきて、心配そうに訊ねる。
「いろいろとな…。これからは、束さんからの依頼でも、開発や改修はよほどの事が無い限りは、やらないほうがいいらしい…。改めて、自分の立場を思い知らされたよ。委員会の方は、問題ないし。事、開発や改修は、お役御免を申し出たほうが、国際社会の為だな。白式、紅椿、舞桜、エクソルツィストは、俺か束さんじゃないとどうにもならないから、仕方ないが、他は原則として、断るつもりだ。芝崎の仕事は別だけどな。」
 疲れた笑みを浮かべながら、メープルシロップをたっぷりかけたパンビスケットを口に運び、砂糖とクリームをたっぷり入れたコーヒーを一口飲む。
 見ているだけで、一夏が精神的に疲労しているのが解る。
 弱冠16歳。
 そして、つい最近までは、ごく普通の学生だったのだ。
 にも拘らず、各国の思惑が複雑に絡み合う腐臭の吹き溜まりである、国際政治の舞台に立つことになったのだから無理もない。
 シュヴァルツェア・レーゲンの改修結果を見れば、一夏の技術が如何に突出しているかが解る。
 故に、どの国も一夏の技術が欲しい。
 が、IS委員会直属となった今では、それは難しい。
 それだけに、一夏に八つ当たりじみた視線を浴びせられるのは、当然と言えば当然である。
 しかし、一夏は無理を通して、改修や開発を行ってきたわけではない。
 各国の、正式な要請に受けての事である。
 ことさら、どうこう言われる筋合いはない。
 だが、正論が必ずしも通らないのが、国際社会である。
 その事を、一夏は今更ながらに感じて、疲労を覚えていた。

「さて。晩飯にしようぜ。明日も大変だしな。」
 今日の事をいつまでも引きずっても、何にもならない。
 俺は俺で、やる事がある。
 それを全うしないとな。
 学園の方は、千冬姉たちがいるから大丈夫だろう。

「呆れて物が言えないというのは、こういう事かしらね。一夏君にとっては、いい迷惑だわ。」
 生徒会室で、ラウラと部下たちの報告書を見ながら、楯無は呆れかえっていた。
 世の暗部を処理してきた更識家の長である楯無にとって、安保理の会議の内容を手に入れることは、さほど難しくなかった。
「各国の考えも解らないわけではありませんが、これはあまりにも…。」
 あまり人の悪口を言わない虚も、眉をしかめる。
「要するにさ〜。会長にISを作って欲しいわけでしょ〜。いっそ、言えばいいじゃん。そう簡単に、認可は下りないけどさ〜。だから、こうなるけど。このままだと、会長、凄く怒るよ〜。セシリアの時みたいに。」
 入学当初、クラス代表を決める時に、一夏がクラス代表になる事を断固認めなかったセシリアと一夏は、対立。
 結局は、決闘になったが、あまりの技量の差にセシリアは完敗。
 それから、一夏はセシリアを徹底的に拒絶した。
 誰にでも優しい性格の一夏だが、譲れない一線を踏み越えると、その怒りは激しく、態度も厳しくなる。
 それをよく知っている本音は、今後を予測した。
「最悪、篠ノ之博士の依頼も、全面拒否する可能性すらあり得るわ。護衛も一切つけないように、委員会に言ってくる可能性もある。そうなったら、まずいわね。」
 最悪の状況を想定して、楯無は表情を曇らせる。
「織斑先生の所に、言ってくるわ。」
 楯無は報告書を手に、職員室に向かう。

「成程。そういう事か…。予想以上だな。」
 ある程度は予想していたが、物の見事に上回ったので千冬は怒りの表情を浮かべる。
「最悪、一夏君は護衛を拒絶する事も、十分考えられます。それに、IS関連も仕事以外は…。」
「あり得るな。あれは、かなり頑固な部分がある。そうなった場合、私でも、説得は一筋縄ではいかん。」
 姉である千冬は、誰よりも一夏の性格を知り尽くしている。
 護衛する側である楯無たちより、遥かに上回る力量を持つ一夏は、それを冷静に分析した上で、護衛を拒否する可能性は十分にある。
 また、科学者としての自分の存在が、国際社会に与える影響を鑑みて、IS開発から距離を遠ざける可能性も、容易に予想できた。
 だが、それは、多くの専用機持ちが集まっているIS学園にとってだけでなく、専用機持ちの母国にとっても、大きなデメリットになる。
 各国大使の想像力の貧困さに、千冬は呆れるのも馬鹿馬鹿しくなっていた。
「事と次第によっては、私が直接話す。ご苦労だった。」
「はい。失礼します。」
 楯無は、職員室を出た。
『豚共が…!!』
 千冬は、心の中で荒れ狂う激しい怒りを、必死に抑えていた。
 その時、舞桜のハイパーセンサーが、ゴーレムの反応を捕捉した。
「ちょうどいい、憂さ晴らしだ。」
 千冬は真耶達に指示を出して、舞桜を展開する。

 俺達がフレンチレストラン、オスカーズで晩飯を済ませ、コーヒーを飲んでいると、30代位の男性が歩いてくる。
 誰だ?
「織斑特別理事、おくつろぎの所、失礼いたします。私は、スティーブンソン大使の随員を務めておりますアメリカ国務省の、クリストファー・マッキンレーと申します。」
 今度は、嫌味でも言いに来たのか?
「ご挨拶。恐縮です。ミスターマッキンレー。ここに来られたという事は、今日の理事会の事か、明日の理事会の事か。どちらかで、大使が私に話があると察しましたが。どうでしょうか?」
「お察しの通りです。大使は、問題は粗方片付いた物の、明日も楽にはいかないであろうことを、危惧しておられます。そこで、事前に相談がしたいとの意向で、私がこちらに来た次第です。」
 何の冗談だ?
 今のIS関係の外交問題の元凶は、俺みたいに言っていたのに、今度は相談?
 一体、どういう風の吹き回しだ?
 いずれにしても、俺が関わると何かと面倒なことになりそうなのは、今日の理事会でよく解った。
 他国の俺に対する、見方もな。

「お話は解りました。ですが、私が関わり過ぎると、決まる物も決まらなくなる可能性があります。場合によってアイデアを出すには、吝かではありませんが、相談には応じかねます。疲れもありますので、部屋に戻らせていただきます。失礼。」
 一夏が席を立つと、ラウラと春香が、即座にガードするポジションに移る。
「織斑特別理事。御再考をいただけないでしょうか。」
 マッキンレーが、何とか思いとどまらせようとすると、ラウラの鋭い視線が突き刺さる。
「理事はお疲れと仰ったのが、聞こえませんでしたか?無理強いは感心しませんし、護衛としても見過ごすわけにはいきません。思いとどまられないのなら、実力行使も辞しません。それが、我々に課せられた、護衛役としての任務です。内容は「事と次第によっては、相手を殺害してでも任務を全うせよ。」です。御記憶いただきたい。」
 ラウラはさりげなく、ジャケットの下にあるホルスターに収まっている、45口径のUSPが見えるようにする。
 春香も、シグザウアー P220から更新された、FN ファイブセブンをさりげなく見えるようにする。
「行きましょう。理事。明日の事もありますから。」
 マッキンレーを無視して、ラウラは部屋に戻る様、一夏に促す。

『またかよ…。おまけに、この反応…。』
 たく、つくづく運が無いというか、何と言うか…。
「ミスターマッキンレー、招かれざる客人が、迫ってきています。今なら、海上で迎撃できますので、私は行きます。では。」
 米軍のIS部隊もいるから、不測の事態にも備えられるだろう。
 後は、面倒なのを俺達が追っ払えばいい。
 というより、俺達が追っ払うしかない。
 こうなると、岩本一尉がいてくれて助かるかな。
 そろそろ、あれに慣れているだろうしな。

後書き
いよいよ国連安保理に、舞台が移ります。
日本での会議で精神的疲労を覚えた一夏ですが、国際社会はその比ではありません。
あるアメリカ人ジャーナリストが「国際政治の場とは、非常に原始的で混沌とした場所。」と、表現したことがあります。
私も、同意見です。
国益を得るためになりふり構わず、エゴをむき出しにした結果。
第二次世界大戦後、冷戦が起き、代理戦争がおき、崩壊しても問題が起きました。
それはいまだに、後を引きます。
歴史を紐解くと、溜息ばかりつきたくなりますね
今回は、核をも凌ぐ抑止力であるISが絡むだけに、問題は一層複雑になります。
そこに一夏の存在が、クローズアップされてしまいます。
世界でただ1人、ISを動かせる男性にして、束に次ぐ開発者。
この事実が、一夏の立場を非常に微妙にしてしまいます。
どうにか、一夏の堪忍袋の尾は切れないで済みましたが、千冬達は呆れ、怒りを覚えます。
こういう時に限って、学園と一夏がいるマンハッタンに亡国企業の襲撃が。
一夏を欠くIS学園。
各国大使が集う、マンハッタン。
どちらも、守らねばなりません。






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