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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第62話 幻影、舞う

<<   作成日時 : 2013/08/10 23:58   >>

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「よし。それまで。ブレーメ。終了しろ。」
 シミュレーターで模擬戦を終了して、クリステルが、エクソルツィストを、待機状態に戻す。
「どうだ?織斑。」
「問題ありませんね。設計概念自体がかなり特殊ですから、整備に手間はかかりますけど、運用時の状況は大丈夫です。後は、経験ですね。」
 1組と2組と生徒たちは、呆然としていた。
 従来のビット兵器の常識を覆す、機動性と即応力。火力。
 展開装甲との、連携。
 基本スペックの、高さ。
 その他の、固有兵装の強力さ。
 今のIS学園には、一夏の入学の影響で、各国の最新鋭ISに、束や一夏が開発したハイスペック機が、多数集まっている。
 白式と舞桜には劣るが、紅椿を凌駕する。
 そして、それを手足の様に扱う、クリステルの技量に圧倒されていた。

 性能自体は、設計通り。
 けど、まだ使いきれていないな。
 40%と言った所かな?
 これから、努力してもらわないとな。
 後は、各部の微調整だな。
 ハイスペックだけど、デリケートな部分が多い機体だからな。

『予想を上回る、ハイスペックだな。』
 データは渡されていたので、性能は頭に入っているが、実際に目にして、千冬は、エクソルツィストのハイスペックぶりを、実感していた。
 確かに、これなら、クリステルの技量が伸びれば、戦力の補充には十分だろう。
『後は、事態がどう動くか…。一夏は既に対策を立てているだろうが、こちらはこちらで、備える必要があるな。』
 クリステルの身の上を考慮して、千冬も対策を考え始めた。

「それでは、小テストを返却します。間違えた部分は、必ず復習しておいてください。」
 小テストの成績は、皆、いい。
 けど、どうしても、ある程度のケアレスミスが目立つ。
 それを考慮して、今回のテストで重視したポイントを、説明する。
 この後は、ISの実習だが、皆、予想以上に伸びている。
 頑張ってくれると、やっぱり嬉しいな。

「それでは、次はISの実習ですので、第4アリーナに移動してください。」
 4人が、ISスーツを入ったスポーツバッグを持って、アリーナに移動する。
 さて、俺は一旦職員室に戻って、今日の実習内容のチェックだ。

「やはり。さりげなくですけれど、私たちの見回りの機会を、増やすべきかと。それによって、即応性を高めれば。」
「後は、ルートだな。気づかれず、だが、効果的にガードするのは、中々に、骨だ…。」
 IS学園の3次元画像を見ながら、千冬と真耶が意見交換をする。
 IS学園は、その性質上、極めて堅固なセキュリティや防衛システムが、施されているので、そこらのテロリストでは、死ににいくようなものである。
 しかしながら、亡国企業となると話は違う。
 ゴーレムは、鳳笙で無力化できるが、問題は特殊訓練を受けた兵士達である。
 生徒を人質に取られては、不利になるのは必至である。
 人間の兵士は、IS学園に対して無力と思われがちだが、戦術によっては、十分に脅威になる可能性もある。
 それに、ゴーレム以外の兵器の可能性も、千冬は最近危惧していた。
「生徒会とボーデヴィッヒを含めて、対策を検討した方がいいな。一夏は既に、対策を持っているようだ。」
「そうですね。また、織斑君頼りになるのは、心苦しいですけれど…。」
 真耶としては、対亡国企業対策に、一夏を含む生徒たちをあまり深入りはさせたくない。
 本来は、武装教官の務めである。
 それを考えると、教員としての心が痛む。
「私とて、いい気分ではないよ。だが、ハード面も含めると、一夏の力がどうしても、必要になる。」
『一番辛いのは、織斑先生よね…。』
 千冬の苦悩を思うと、真耶の心はますます重くなった。

 今日の午後は、自主トレの時間だ。
 座学の復習に、ISの訓練。
 それぞれで、やるべきことを考えて訓練をしてもらう。
 ま、言われなくても、やってるんだけどな。

「一夏様。隣、よろしいでしょうか?」
「クリスか。いいぞ。」
 カツカレーと、海藻サラダを食べていると、ビーフシチューとフランスパンをトレーに乗せたクリス(俺がつけた愛称)が、座る。
「学校には、慣れたか?」
「はい。一夏様も、他の方々も、大変良くしてくださいますし。」
「そうか。安心した。何かあったら、俺か、先生たちに言うんだぞ。」
「はい。」
 ミステリアスな雰囲気だけど、やっぱり普通の女の子だな。
 事情が事情だけど、在学中は普通に学生として過ごして欲しい。
 心から、そう思う。
 そう思いたいが、何か、凄え、嫌な予感がする。
 というか、物凄く冷たくて、どす黒くて、禍々しい“気”が…。
 食堂にいる同級生や先輩達も、顔色が凄え悪い…。

『一夏さん…。どうして、あなたはいつもいつも…。』
 ミラノ風カツレツを食べていたセシリアのフォークとナイフが、手の中で圧縮され、やがて原形をとどめなくなる。
『一夏…。あんたって、いつもこんなのよね…。中学の時も、数えきれない程…。』
 海老チャーハンを食べていた、鈴のレンゲが、細かい欠片となって崩れ落ちる。
『一夏…。どうして、貴様は、私の事を気にも留めようとしないのだ!?』
 力うどんを食べていた箒は、丼の底に割り箸を押し付け粉砕し、割り箸も粉砕する。
『いつになったら、少しはマシになるんだろうね…?一夏…。』
 牛フィレ肉のステーキを食べていたシャルロットは、肉と一緒に鉄板をも切り刻んでいた。
『一夏…。やはり、一度、骨身に染みさせないと駄目らしいな。』
 シュニッツェルとザワークラフト、ジャガイモのパンケーキを食べていたラウラのフォークとナイフは、皿とテーブルを貫通し、そのままねじ曲がり始めて、前衛的なオブジェの様になっていた。
『少し、油断していたのかしら…?それとも、そういう子が好みなの?一夏…。』
 日替わり定食を食べていた玲子は、握りしめた拳に、さらに力を入れ、テーブルの一部を粉砕していた。
『一夏って、いつもそういう事ばかり…。ねえ、どうして…?』
 刺身定食を食べていた簪は、いつの間にか、愛用の小太刀に刺身を突き刺して食べていた。
『一夏君は、本当にどうしようもないのね…。困ったものだわ…。』
 ボルシチを食べていた楯無は、スプーンで皿の底を削り取り、それごとボルシチを食べていた。
 無論、本人は気づいていない。

「いい加減にしろ。馬鹿共。ここは、食事の場だ。他人の気分を、悪くする場ではないぞ。」
 どういうわけか、千冬姉が現れて、“気”が鎮まる。
「織斑は、生徒会長であると同時に、クラス代表でもある。ああいった事も仕事だ。いちいち、目くじらを立てるな。」
 千冬姉の、言う通りだ。
 てか、皆も混ざればいいじゃないか。
 って、いつの間にか、蘭達が混ざっている。
 同級生や先輩たちがドン引きして、席が空いたのか。
 納得。
 そう考えていると、俺の頭に、より威力の増した拳骨が、2発叩き込まれる。
「ああいった場合は、お前が責任を持って鎮めろ。原因の一つでも、あるのだからな。それと、生徒会のメンバーとボーデヴィッヒは、食事を終えたら、生徒会室に来るように。」
 何だろうな?
 つか、マジで、頭が痛え…。

「警備体制の強化ですか?」
 現在、IS学園には、合計25人の専用機持ちがいる。
 蘭達を戦力に数える訳には行かないが、最近は、だいぶ技術も向上しているから、うまく支援すれば、緊急時には戦力になるだろう。
 そうならないように、皆で力を合わせるけどな。
 クリスも、ゴーレムに遅れを取る事はない。
 とは言っても、俺がきちんとサポートしないといけないわけだが。
「クラス対抗戦、学年別対抗戦。文化祭に、陽炎が届いた時にと、大規模な襲撃があった事は無視できん。この学園の専用機持ちにとっては、敵ではないが、前倒しの新入生や今後の事を考えると、やはり、強化する必要があると判断した。」
 成程な。
 只でさえ、委員会でも大きな懸案事項になっているのに加えて、学園が襲撃された回数は4回。
 学園側としても、武装教官用の専用IS以外にも、備えが必要か。
 各国の生徒を預かっているというのもあるし、専用機は1機たりとも奪われるわけにはいかない。
 けどなあ…。

「織斑先生。俺としても、その意見には賛成ですが、問題があります。」
「それは?」
「周囲に対する、影響です。いくら、IS学園が特殊な教育機関といっても、軍事基地の様な外観になるのは、各国に疑念を抱かせる種になると、考えます。」
「そうですね…。確かに、織斑君の言う通りですね…。」
 山田先生が、考え込む。
 まさか、ミサイルランチャーやCIWSの類を、あちこちに増設するわけにもいかないし、隠ぺいするのも、楽じゃない。
 そこが、思案のしどころだな。

「織斑。お前なら、解決案を持っているのだろう。それを、聞かせてくれ。」
 前提条件に、なってるのかよ。
 そりゃ、一応、考えているけど。

「まず。絶対条件として、外観は今までと変わりない事があるわけですが、このやり方ならば、クリアできます。」
 俺専用の端末にメモリを挿して、システムの概要を空中投影式の大型スクリーンに表示する。

「IS学園そのものに、拡張領域を設定するんですか?」
「はい。そこなら、攻撃される心配はないですしね。」
 ISの拡張領域は、他のISが干渉することはできない。
 例えば、戦っている相手のISに、自分にとって面倒な兵装があったとする。
 それを、奪ったりすることはできない。
 それを応用することを、俺は考えた。
 幸い、アラスカ条約で規制されているのは、ISの拡張領域であって、防衛施設の拡張領域じゃないしな。
「成程な。だが、こんな真似が出来るのは、お前か束位か。」
 千冬姉が、頷きながら言う。
 ISの拡張領域は、IS関連技術では、難しさはトップクラス。
 軍事施設に、設けようと研究している国は多いが、どこも理論の構築すらできていない。
 束さんは既に実用化しているのは、臨海学校ですぐわかった。
 改修用のパーツを製造するファクトリーや素材は、拡張領域に格納されてないと、あんなに、ぱっぱとパーツを作るなんて、無理な話だからな。

「それで、織斑。どんな兵器を運用する?」
「それに関しては、次の…。」
 ちっ!
 こんな時に…!
 しかも、蘭達が自主練している最中なのに。

「私と一夏君で、迎撃します。虚、本音。ラウラちゃん達と協力して、皆を守って。」
「かしこまりました。」
「は〜い。」
 楯無さんが、更識家当主として、虚さんとのほほんさんに命令する。
「五反田さん達は、ピットに戻っていました。」
「よし。第6アリーナに、おびき寄せて、殲滅しろ。各アリーナ、シールド出力最大。」
 千冬姉が、山田先生に指示を出す。
「さて、いくわよ。第二次改修後の、ミステリアス・レイディの力。思い知らせてあげるわ。」
 千載一遇と書かれた扇子を、広げる。
 性能テストじゃ、ないんですからね。
 ま、俺も試したいものが、あるけどな。

「一夏さんと、楯無さんだけで!?」
「皆さんは、全校生徒を守れるように、いつでも備えて下さい。」
 真耶がセシリア達に、いつでも出撃できるように待機を命じる。
『私だ。五反田たちの安全は、確保した。』
「解りました。織斑君、楯無さん。後はお願いします。」

「だそうよ。一夏君。IS学園のナンバー1とナンバー2の力、見せてあげようじゃないの。」
「ですね。」
 目の前にいるゴーレムは、18体。
 今までとは、随分、外観が違う。
 両腕が大型で、鋭い鉤爪になっている。
 全体的に、かなり鋭角的だが、凄く禍々しい。
 まるで、悪霊だ。
「それじゃあ、行くわよ。」
「了解。」
 俺達が二手に分かれると、それに吊られるように、ゴーレムも二手に分かれる。
 ほんじゃま、行きますか。

「白式に、新しいワン・オフ・アビリティを確認。」
「何!?」
 オペレーティング・ルームに入った千冬は、真耶からの報告を見て、モニターを見る。
 そこには、白式とは全く違うISを展開した、一夏がいた。

「一夏君…。それ…。」
 楯無さんも、驚いているな。
 機体性能の一部を強化する、ワン・オフ・アビリティはこの先発動するかもしれないが、このワン・オフ・アビリティ「幻影輪舞」は、それとは全く違う。
 今は、一番ベーシックな形態の「烈日」。
 近中距離戦闘に特化した、機動性に優れた形態だ。
 ゴーレムに、驚く機能なんてあるはずもないから、向かってくる。
 じゃ、攻撃開始と。
 俺は、銃剣付重粒子アサルトライフル「七曜」で、攻撃を回避しつつ、確実にダメージを与えていく。
 従来の荷電粒子とは違い、収束させる粒子の重量がずっと重いので、威力も高い。
 それに銃剣もついているので、このままでも白兵戦は可能だ。
 ゴーレムもやられてばかりではなく、多連装式のホーミングレーザーで弾幕を張るが、烈日の機動性なら、全く問題はない。
 おまけに、一番燃費がいい。
 お返しに、高圧縮速射衝撃砲「弓箭」を、命中させる。
 形態の特性が特化しているので、兵装の威力も高い。
 特に、損傷が激しい2体に、腕部レーザーガトリングガン「極夜」で、さらにダメージを与え、多機能ブレード「赤烏」で止めを刺す。
 残り、7機。

「幻影輪舞…。機能を特化させたISに形態を移行させることによって、状況に合わせて有利に戦う事が可能な、ワン・オフ・アビリティ。白式はこんなものまで…。」
 真耶は、烈日で戦う一夏を見ながら、呆然とする。
「成程な…。状況に応じて、ISを作りかえる様な物か。プラント装甲を実装した、今の白式ならではの、ワン・オフ・アビリティだな。さて、他には、どういう形態があるのやら。」
 冷静なように見えるが、千冬の目は厳しかった。
 瞬時に、ISを丸ごと作り変えるような、ワン・オフ・アビリティは、まさに、前代未聞。
 近接戦闘型から、汎用型に進化している白式は、同時に局地戦型の特性も得た事になる。
 様々な状況で、一方的に有利な戦いができるのだから、世界に知られれば、上を下への大騒ぎになる。
 それを思うと、千冬は気が重かった。
 無論、それは一夏も承知の上だろう。
 事実、白式の、異常という言葉でも表現が足りない進化は、一夏も問題と捉えている。
 下手をすれば、全世界のISを相手にしても問題ないという、恐ろしい可能性が、最近否定できなくなっていた。

 距離を取ったか。
 アウトレンジ攻撃に、出たか。
 なら…。

 7体のゴーレムの肩部から、長射程の荷電粒子砲が発射される。
 しかし、そこに一夏はいなかった。
 次の瞬間、再び形態が違うISを展開した一夏が、両手のサブマシンガンを撃ちまくって、瞬間移動の様に離脱し、別のポイントから攻撃し、それを繰り返し続ける。

「まさか…、瞬間移動…?いえ…。これは…、カタパルト…?」
「衝撃砲の応用だな。周辺の大気を圧縮して、カタパルトで艦載機を発艦させるようにして、超高速移動をしているのだろう。しかも、高速すぎて、反応すらできん。」

 高機動性能を活かした、急襲形態「残光」。
 衝撃砲の原理を応用した加速システム「風神」で、急加速して、急襲することに特化した形態である。
 装備は、AICを応用した、2丁の特殊サブマシンガン「月虹」、先端に零落白夜の出力を増幅する機構を備えた特殊ナイフと、高電圧縛鎖で構成される、BTペンデュラム「不空羂索」である。

 いい感じに、ダメージを与えたな。
 うん?成程。全方向からの包囲か。
 発想は、悪くないけどな。
 不空羂索をダメージの大きいゴーレムに、放つ。
 だが、それで終わらない。
 不空羂索は、自己複製能力を持っている。
 つまり、増える。
 ついでに、自己再生能力も持っている。
 おまけに、特殊ナイフが展開した零落白夜は、通常より強力だ。
 プラス、鉄蛇より、遥かに電圧は高い。
 ゴーレムは、散開すると、一部が学園に向かう。
 そうはさせるかよ。

 ゴーレムの掌には、高出力レーザーが搭載されているが、展開されたビットの防御シールドに防がれる。

「また、形態が…。」
 ビットの後方には、イグニッションブーストで駆け付けた一夏がいたが、展開している。
 両肩に、フレキシブルシールドが、装備されている。
 今度は、一夏を狙うが、フレキシブルシールドに、一切歯が立たなかった。

 残念だったな。
 その程度じゃ、この「避来矢」には、太刀打ちできないぜ。
 何しろ、防御に特化した形態だ。
 シールドビット「御旗」に、フレキシブルシールド「薄金」。
 こいつの防御は、ゴーレムの兵装じゃ絶対に敗れない。
 もっとも、防御しかできないわけじゃないけどな。
 通常は、太刀の形状をしている、変形型多目的攻撃デバイス「鳴弦」を弓状に変形させて、零落白夜の矢を放つ。
 ダメージの蓄積が大きかったのが、機能を停止する。
 残りは、4機か。
 他のも、試すか。

「また、形態が変わって…。ビット運用に特化したタイプでしょうか?」
「そのようだな…。」

 性能は向上しているが、まだまだだな。
 各部の設計の練りが、足りない。
 その程度の機動性じゃ、この「伊邪那岐」に装備されている、多機能ビット「天津神」と、特殊高感度ハイパーセンサー「天地開闢」からは、逃れられないぜ。
 俺自身の感覚と、天地開闢の未来予測から、攻撃ポイントを決めて、各ゴーレムを完全に孤立無援にする。
 強力だけど、燃費悪いな。これ。
 こっちで、撃破した方がいいか。
 状況に応じて、様々な形態に変形する多目的攻撃デバイス「七星」を、大鎌にして、薙ぎ払う。
 よし、手応えあり。
 止めだな。

「おそらく、次が最後の形態…。」
「どんな、形態でしょうか…?」
 真耶が、恐る恐る尋ねる。
「私にも、解らん。そもそも、こんな常識を逸脱した、ワン・オフ・アビリティなど、過去に例がない。予想する事は、不可能だ。」
 嘗ての愛機暮桜、現在の愛機舞桜双方が持ち合わせている、零落白夜にしても、当時ではありえないワン・オフ・アビリティだったが、幻影輪舞はそれ以上に、常識の範疇を逸脱している。
 過去の経験をフルに活かしても、千冬には予想が不可能だった。

 それじゃ、最後だ。
 大火力による制圧に特化した、「雷公」。
 背部に2門搭載された超高出力重荷電粒子砲「雷霆」、腕部内蔵重実体弾リニアカノン「雷鳴」、2振りの大型多機能ブレード「雷斧」を装備している。
 今さら、白兵戦はする必要ないな雷霆と雷鳴だけで、事足りる。
 そして、俺が相手にしていたゴーレムは、全て機能を停止した。
 さて、楯無さんはどうかな?

『また、とんでもないワン・オフね…。』
 全く、別の性格の機体に変化する、幻影輪舞に、楯無は驚愕しながらも、4体のゴーレムを、片づけていた。
『それにしても、相手が弱くなったように感じるのも、何とも複雑ね…。』
 第二次改修の結果、アクアクリスタルは従来の性能そのままに、さらに小型化され、生成されるのも、通常の水の3割増しの密度の重水となり、水流の速度が、大きく向上した。
 重水が生成されることになったのも大きいが、何より水流の速度が、大きく向上したことが、影響し、ミステリアス・レイディはさらに攻撃力を増した。
 アクアクリスタルは小型になった分、数が増えている。
結果。生成する水の量は増えて、更なる、攻撃力と防御力を与えられている。
加えて、特殊兵装として、アクアクリスタルを防御に特化させた、「アクアテンプル」を装備。
蒼流旋は、水流の速度を4割向上させた、もう一つの特殊兵装、攻撃に特化したアクアクリスタル「アクアドラゴン」を可能な限り装備し、破壊力を増すと共に、極超高初速中口径ガトリングレールガン4門、速射荷電粒子砲4門を装備し、射撃兵装の破壊を防ぐ為のフィールド発生装置を備えた、「水龍槍」に換装。
 機動性、運動性共に、45%向上し、燃費も3割向上している。

『本当に、一夏君は凄いわね。でも、これでも、私、一夏君に勝てないのよね。技術者としても、パイロットとしても、完全に規格外だわ。』
 心の中で溜息をつきつつも、楯無はゴーレムを圧倒していた。
 荷電粒子砲とレーザーの雨が降り注ぐが、水のヴェールを展開し、槍の様に収束させた水が、容赦なくゴーレムの物理装甲を抉る。
 そこに、ガトリングレールガンと速射荷電粒子砲が命中し、ゴーレムは機能停止する。
「じゃあ、終わりよ。レヴァンティン!」
 水のヴェールから、収束した水が広範囲に展開され、ゴーレムを容赦なく貫く。

「楯無さんも、さすがですね。従来より、性能が向上したゴーレムを、9体纏めて、易々と片付けてしまうんですから。」
「一夏と毎日、模擬戦をしているからな。一見するとボロ負けだが、決して、楯無が弱いわけではない。一夏が、遥かに凌駕しているだけだ。一夏を相手にするくらいなら、ゴーレムを相手にする方が、よほど楽だよ。」
「確かに。」
 一夏自身、プラント装甲や神札を使用せずとも、ゴーレムを倒すのは、虫を払うようなものである。
 その一夏と、日々、模擬戦をしている楯無は、惨敗しながらもレベルアップしていた。

 一方、セシリア達は、幻影輪舞に呆然としていた。
 マルチロールなどという、生易しい表現では足りない。
 常に、自分に有利な状況で戦う事が出来るのだから、オートクチュールを搭載しても、何の意味もない。
 それに合わせて、一夏は白式の形態を変えれば、済む。
 そして、バリエーションが増えないという保証も、ない。

 さて、終わったか。
 今晩は、解析作業で徹夜だな。
 許可を貰って、特別区画には簡易ベッドを置いているから、そこで寝よう。
 それにしても、何か、奇妙な感覚を覚える。
 ゴーレムの戦闘パターンに、親近感めいた物を、最近、感じ始めていた。
 一体、どういう事だ?

「あの、一夏さん。あれって、一体…?」
 報告書を千冬姉に提出した帰りに、蘭達が訊ねてくる。
「ああ。誰かは解らないけど、ここに、ちょっかかけてる奴が、いてな。ま、そっちは、各国の諜報機関や委員会が、捜査を担当してるよ。俺は、イタズラをしてきたら、お仕置きをする。そういう事だ。」
 セシリア達同様、蘭達にも、真相を話すわけにはいかない。
 嘘をつくのは、いい気分じゃないけど、現段階では、こうする方がいい。
 不安にさせたくないってのも、ある。
「心配するな。何度来ようが、俺が叩きのめす。じゃ。俺は午後の授業が、あるから。」
 千冬姉と相談して、亡国企業の襲撃があっても、普段と変わりない日常を過ごすことにしている。
 周囲を、不安にさせたくないからな。
 幸い、ゴーレムからの情報は行かないように、白式のハイパーセンサーには、特殊な妨害システムを搭載している。
 幻影輪舞の事は解らないし、光学系でも観測は不可能。
 データの蓄積を妨げる手段は、これで万全だ。
 とはいえ、相手は、ジェームズ・グレイ。
 黙って、引き下がるとは思えない。
 新規兵装や、システム。
 事によっては、新たな改修やISの開発も必要になるな。
 警備システムの方は、後は製造するだけだから、すぐに整う。
 俺達の技術が勝つか、向こうの技術が勝つか。
 ここまで来ると、戦争だな。

「データが来なくなったか。まあいい。」
 亡国企業の研究所で、グレイは、ゴーレムを通じての白式の情報が来なくなったことを確認したが、意に介していなかった。
「7年前もそうだが、今まで、色々とデータを提供してくれた。後は、潰すまで…。篠ノ之束が私に敗れるのも、そう、遠くはない。亡国企業の連中には、私の成果が、対価となる。それで、双方、得をする。理想的な関係というべきだな。」
 グレイは、喉の奥で笑いながら、新しいゴーレムの開発を始めた。

後書き
束に依頼されて、一夏が開発したエクソルツィスト。
僅かですが、スペックの片鱗が見えました。
実際に戦闘になったら、どうなるのかは、お楽しみに。と言ったところですか。
さて、相変わらず続く、亡国企業の襲撃。
もはや、現状では不足と考え、千冬達も対策を講じることを決定。
開発は、一夏が担当。
というより、IS学園の特殊性を考えると、他に当てがないのが現実ですから、千冬にとっては苦肉の決断です。
そして、新たに発動した、白式のワン・オフ・アビリティ「幻影輪舞」。
様々な状況に特化した形態に、白式が変化する、凄まじいワンオフです。
そして、遂に、明らかになった、ミステリアス・レイディの第二次改修形態。
攻防専用に開発された、アクアクリスタルを装備し、兵装も強化され、国家代表の楯無は自分の実力を存分に発揮。
それでも、ハンデをつけてもらった一夏には勝てないのですから、日々の厳しい鍛錬で成長し続ける一夏の実力が、一層解ります。
一方、亡国企業の方は、グレイが更に動く模様。
ですが、どうも、面従腹背というわけでは、無いようですね。












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