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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第59話 オペレーション・トラベルトラップ

<<   作成日時 : 2013/07/20 23:50   >>

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 何か、今一つすっきりしない。
 ていうか、何考えてんだよ。あの家は。
 自分の娘が、他の男と同じ布団で寝るのに、何とも思わないのか?
 風呂まで、一緒に入る事になったし。
 もうちょっとこう、モラルというものを、きっちり持ってもらわないと。
 ひょっとして、こういうのをモラルハザードっていうのか?
 せっかく、高級ホテルの温水プールにいるっていうのに、どうしてこう気分が晴れないのかね?
 損な性分だよ。
 まったく。

 あれから、家に帰って、すぐにこっちに来ている。
 実際、新年からいろいろあり過ぎて、のんびりしたかったのもあるが。
 まあ、それだけじゃない。
 あっちの方は、順調か。
 今回は、ことさらトリッキーじゃないけど、引っかかったら相当に頭にくる計画だ。
 無論、警護は万全だけどな。
 少し時間もあるし、のんびりしていよう。冗談抜きで息抜きがしたい。
 そう考えながら、傍らのテーブルにあるトロピカルジュースを飲む。
 さて、ひと泳ぎするかね。

「真耶。また、胸が大きくなったわね。相変わらず、巨乳なんだから。」
「やめてって。別に、そんなに巨乳じゃないのよ。篠ノ之さんや楯無さんは、もっと大きいんだから。」
 女子更衣室で、真耶は3人程の友人と水着に着替えていた。
「ああ。篠ノ之博士の妹さんで、紅椿の専任の子と。ロシアの国家代表で、生徒会副会長ね。最近の子は、発育いいわよね。」
「本当。何食べれば、あんなに大きくなるのかしら?」
 色とりどりの水着に着替えながら、4人はプールに向かう。

 うわ。また、スペック上がってる。
 それに、なんかやらかしそうだな。
 これ以上は、マジで勘弁だぜ。
 少しは、休めってえの。
 ひと泳ぎした後、甘い物が欲しくなったので、頼んだフルーツを食べながら、複雑極まる気分になる。
 とにかく、勝手にやり過ぎなんだよな。白式は。
 何かが、促進させてるのかな?
 まあ、いいや。
 一旦、頭を切り替えよう。
 他にも、研究中なのはあるし、医学関係で目を通していない論文もあるしな。
 そっちを読むか。
 そう決めて、飲み干したトロピカルドリンクのお代わりを、頼んだ。
 へえ、臓器のミニチュア版か。
 噂には聞いてたけど、ちゃんと役割を果たしてるから大したもんだよな。
 これが発展すれば、臓器移植が必要な病気の人達には、朗報だ。
 外科手術だけじゃ、限界があるし、内科的治療もしかりだ。
 後は、コストの問題か。
 うん。待てよ?
 ドナーから提供された臓器を、異物を判断させないようにするって手もあるな。
 ただ、これだと、移植する臓器の遺伝子を全部書き換える必要も出てくる可能性もある。
 物理的に考えて、そんなのは絶対に無理だ。
 とすると、移植前に拒否反応をできうる限り抑制する方法が、望ましいかな…?
 ふうん。
 人工神経の開発で培ったノウハウを、何とか使えないかな?
 それにしても、最近、医療機器開発部門からの相談が多いな。
 IS関係を、ぱっぱと片付けるからかな?
 何か、向こうが狙っている気も、するんだよな。
 まあ、いい。
 菫みたいな人も、世の中にはいる。
 俺が作ったもので、幸せになった人がいるなら、それはすごく嬉しい事だ。
 なら、大変でも頑張る価値はあるな。
 こっちは、シミュレートさせておこう。
 他に、本業でいくつか開発しているのがあるから、会議までに資料をそろえておきたい。

「ねえ。真耶。あれって、織斑君?」
「本当。また、研究…。仕方ないわね…。」
 溜息をついた真耶が、一夏の所に歩いていく。
 研究に没頭していながらも、剣術と武術の達人にして戦闘のプロフェッショナルである一夏は、真耶の気配を捉えていた。

「どうかしましたか?山田先生。」
 ええと。ここは、こうして。
 これで、燃費は12%稼げるな。
 にしても、打鉄の近代化改装か。
 厳しいな。
 まあ、それなりに拡張性はあるから、機動力の向上は可能として、コンセプトをどうするかだよな。
 武器は、芝崎のを使っちゃおう。
 その方が、こっちもやりやすい。
「どうかしましたか?じゃ、ありません。ここに来ているってことは、リフレッシュの目的もあるんですよね?なのに、研究をしていては、意味がないでしょう?それに、確か、今日は完全オフの日の筈。オフの日は、休んでください。」
「はあ。まあ、そうなんですけど。会議で使う資料があるので。」
「織斑先生に、言いつけますよ?」
「はい…。」
 汚いですよ。山田先生。
 千冬姉の名前出されたら、俺、逆らえないじゃないですか。
 端末の電源を落として、トロピカルドリンクを飲む。

「間近で見ると、本当に、ハンサムよね。それに凄く綺麗。」
 あの、誰ですか?
「本当。髪の毛なんて、羨ましいくらいよ。」
 はあ。そりゃ、どうも。
「おまけに、1学期の内に、生徒会長でしょ。レコード物よね。」
 うん?何か、学園の事に詳しい感じだな。
「あ、紹介していませんでしたね。皆、織斑君の先輩。IS学園の卒業生ですよ。」
 成程ね。
 そういえば、山田先生も学園の卒業生なんだよな。
 まさか、先輩たちと会うとはね。

「それにしても、あなたの事を聞くたびに、本当に驚かされるわよ。1学期で生徒会長になって、2学期の内に、世界でも5本の指に入るIS操縦者。そして、第3世代ISを何機も自力で開発して、本人は第5世代ISの専任。そして、あの芝崎インダストリーの、技術顧問にして、社外取締役。」
 自分でも驚いてますよ。
 人生、激変しましたからね。
 平凡さからは、遠のいているしなあ。
 おまけに、命の危機と隣り合わせ。
「私たちの頃で、確か、外注でテストパイロットやってた子は1人いたけど、それとは、比較にならないわよね。開発にも経営にも、携わっているなんて。」
 だよなあ。
 普通の高校生なら、今頃バイトしたり、部活に専念してたりしてるもんな。
 俺は、鍛錬はいいとして、夜になれば、研究と仕事だし。
 本当に、高校生なんだろうか?
 時々、凄え疑問に思う。
「まさか、こんな逸材が、私たちの後輩だなんてねえ。」
 半端じゃない努力の、結果ですよ。
 訓練と講義。
 どっちも、キツイの何のって。
「とにかく。織斑君。こういう所に来て、研究は禁止です。学会の論文なら、寮でも、さんざん読んでいるでしょう?」
「最近。凄く忙しくて、こういう暇も惜しいので…。」
 とにかく、無茶苦茶忙しいのは確かだ。
 技術関係に加えて、経営関係の資料にも目を通さないとならない。
 負けず嫌いなのかどうかは解らないが、気づいたら、経営関係も必死に勉強してたからかな?
 経営にも携われると思われて、どういうわけだか適性もあったらしい。
 幸運なんだか、不運なんだか…。

「さて。じゃあ、そろそろ行きますね。」
「えっ?ここに、遊びに来たんじゃないですか?」
「ええ。でも、ここだけじゃないんです。服も、見に行こうと思って。」
「ああ。織斑君の服は、デザイン的にフォーマル寄りですからね。カジュアル的な服を、買いに行くんですか?」
 やっぱ、今のままの傾向は、外出時はちょっとな。
 ジャケットは仕方ないにしても、もうちょっとラフなのがいい。
 ネクタイを無しにして、コーディネイトしたいしな。
「あ。じゃあ、一緒に行くわ。選んであげる。」
 え?
 来たばかりですよ。
「ちょ、ちょっと。みんなせっかくの休みでしょう?ゆっくり満喫していきなさいよ。」
 そうそう。
 山田先生の、言う通りですよ。
 社会人は大変なんですから、休めるうちに休んでおかないと。
 って、俺も社会人か。
「あら。なんか、真耶。私たちを邪魔者的に、見てるわよ。成程、そういう事か…。」
 先輩たちの1人が、何か解った様な顔をする。
 ていうか、誤解した顔だな。絶対。
「「「真耶。生徒を監督してなさい。」」」
 へ?監督。
 俺、そんなことされるほど、素行悪くないですよ。
 授業に出れない日も、きちんと予習して、ついて行けるようにしてますし。
 就寝時刻も守ってますし、遅刻もしてませんし。
 って、強引に、更衣室に行かせないでください!!

「本当にごめんなさい。織斑君。後で、かならずびしっと言っておきますから。」
 はあ。
 まあ、こういうのにも、いつの間にか慣れましたから、いいですけどね。
 それはそれで、問題か。
「でも、確かに、16歳の男の子が着る服じゃ、ないですよね。」
 そこまで、はっきり言わないでくださいよ…。
 密かに、気にしてるんですから。
 ちなみに、今日はセピアのスーツにシャツと、ネクタイ。
 それから、カシミヤのマフラーに、カジュアル用のアルスターコート。
 山田先生は、ブラウスの上にクリーム色の冬用のセーターとクリーム色のスカート。
 上に冬用のコート。
 何気に、センスいいんだよな。

「あの、とりあえずお昼にしませんか。イタリアンの、美味しいお店を知っているんですよ。御馳走しますから。」
「じゃ、じゃあ。遠慮なく…。」
 うん?
 先生、体冷やしたかな?
 ちょっと、風邪っぽいかな。
 で、こっちは、あとちょいか。

「プロテクトは、破れないのか?」
「何重にも、掛けられているわ。しかも、それぞれが恐ろしく堅固。ハッキングに対応して、防壁プログラムの処理スピードも、かなりランダムに変わるから、時間がかかるなんてものじゃないわ。」
 エムの問いに、苦虫を口いっぱいに詰め込んで一気に噛み潰したような表情のスコールが、答える。
「ようやく、欺瞞情報から絞り込めたというのに…。」
 いくつもの欺瞞情報を、人海戦術で整理し、割り出した空路の中継地のサーバーは、一夏特性の防壁プログラムが展開されていて、亡国企業の技術陣は、大苦戦していた。
「くそっ!奴が街中にいる今が、絶好のチャンスだというのに…。」
 偵察衛星で、一夏が、街に出ていることを確認して、エムとスコールは千載一遇の好機ととらえ、工作員による奪還作戦を決定して、支部の戦力を動員する準備も、整えていた。
 が、使用する空港、時間、搭乗する旅客機の情報が掴めずに、苛立っていた。
「こちらのやる事は、予測済みか。どういったハッキングをするかも、予想を立てているな。食えない男だ!」
 エムが、吐き捨てるように言った。

「そうですか。そんな事があったんですか。」
 以前に仕事で利用したイタリアンの店で、ランチを食べながら、一夏は菫の事を話していた。
「正直、驚きましたよ。自分が作ったものが、誰かに幸せをもたらしているのを、初めて直に見たんですから。」
 照れているのか、一夏は頬を染めていた。
 そんな一夏を、微笑みながら、だが、誇らしげに真耶は見ていた。
 技術顧問にして、社外取締役なので、一夏はかなりの高給取りである。
 元々、代表候補待遇としての収入に加えて、IS委員会直属のパイロットとしての収入、安全保障理事会直属の特別理事としての収入も、加わる。
 どんなに多忙でも、一夏は高い給料など、別に欲してはいない。
 ただ、自分が学んだ技術で、誰かが幸せになってほしい。
 そう願っているだけで、ある。
 口さがない人間もいるにはいるが、一夏は気にも留めていない。
 称賛されるために、やっているわけではないからである。
 圧倒的な戦闘技術とセンスを持つ、戦闘のプロフェッショナルと同時に、世界屈指の天才科学者。
 だが、根底にあるのは、分け隔てのない優しさと暖かさ。
 それが、菫たち飛鳥一家に希望を与えたことを、真耶はよく理解していた。
 まったくの偶然で、ISの世界に入った一夏だが、それが世界に及ぼした影響は、大きい。
 そして、その中には良い影響が多くあった。
『やっぱり、あなたは私の自慢の教え子ね。そして、誇りだわ。』
 来年も、一夏のクラスの副担任になる事が、既に決定している。
 それは、真耶にとって何よりの喜びだった。
 できれば、3年間そうあり続けてほしいと、真耶は思っていた。
 卒業まで、出来るだけ近くで、一夏の成長を見守り続けたい。
 真耶の望みでも、あるからだ。

 だが、時々、考えることがある。
 卒業した後の一夏は、どんな男性になっているのだろうかと。
 事故とはいえ、一夏は真耶のファーストキスの相手でもあり、学園の生徒の憧れの的という事もあって、真耶も一人の男性として、一夏を意識することもある。
 在学中は問題だが、卒業すれば、男女交際も可能である。
『いやだ。私、生徒の前で何、考えているのかしら…。』
 仕事の接待でこういう事に慣れた一夏の食事風景は、とても上品で様になっている。
 それが、真耶の女性の部分を、どうしようもなく意識する。
『駄目よ。今日は、大事な日なのだから。しゃんとなさい!』
 どうにか自分を落ち着けて食事をする真耶を、一夏は不思議そうに見ていた。

「すいません。5000円のランチなんて、ご馳走して貰って。」
「いつも、お世話になってるんですから、これ位いいですよ。」
 考えてみれば、山田先生、苦労してるよな。
 うちのクラス以外の副担任だったら、違ってたはずだぜ。絶対。
 何かあったら、アサルトライフルやらマシンガン。
 挙句の果てには、ISまで展開するからな。
 しかも、教室で。
 下手すりゃ、死ぬっつーの。
 これ位は、当然の権利だと、俺は思う。
「その代り、先生がしっかり服を選んであげますね。」
 山田先生なら、大丈夫だろう。
 服のセンスいいしな。
 こっちも、ちょうどいい塩梅だ。

「ふむ。解った。伝える。」
 羽田空港の近くに足を運んでいた千冬は、物陰で連絡を済ませると携帯を仕舞う。
「面白い手だな。もっとも、引っかかった方は、さぞ頭に来るだろうが。」
 にやりと笑うと、千冬は空港には向かわず、他の店に足を運んだ。
 学園にいても、空港にいても、亡国企業は千冬の周辺に目が行く。
 故に、それを避ける為に千冬はあちこちの店のウィンドウショッピングをしている。
 多忙で、久方ぶりにふらりと街を歩きたかったのもあるが、初代ブリュンヒルデである自分の立場が、自然と目を引くのでやむを得なかった。
 無論、何もしていないわけではない。
 千冬には、千冬の役割があった。
『そろそろか…。』
 時計を見て、また他の店に足を運ぶ。

「じゃあ。俺はここで。ちょっと、用事があるので。服選び手伝ってくれて、ありがとうございました。」
「どういたしまして。男の子の服選びも、楽しかったですよ。」
 一夏は電車の乗り換えがあるので、真耶と別れるので、服選びの礼を言って、乗り換える。
 真耶はそのままだが、千冬同様、やる事があった。

 さて。いよいよ、ラストスパート。
 亡国企業を出し抜いて、今年入学する専用機持ち達を、無事に学園に送り届ける作戦。
 オペレーション・トラベルトラップの、最終段階だ。
 亡国企業は、俺のダミーに掛かりきりなのは、確認済み。
 ま、他にも、仕掛けはあるんだけどな。
 俺が着くころには、成田に着いてるか。
 例の物は、手配済み。
 解り易そうで、実は滅茶苦茶解りにくいんだよな。これが。
 ゴールした時には、今回の仕掛けは解るかもしれないが、解った時には、腹が立つだろうし、何より、頭痛の種が増える仕掛けに、なっている。
 3学期の準備も済ませているし、第2外国語も無事選択したし、やる事、ちゃちゃっと、やっちゃいますか。

「ええと。ああ。そこに行けばいいんですね。」
 今回は、亡国企業を欺くために、真耶も警備に参加する。
 が、全容は知らされていない。
 場合によっては、全容を知っている人間の行動から、作戦の全体像を割り出される事もある。
 それ故に、誰が全容を知っているかは、真耶すらも知らなかった。
『多分、知っているのは織斑先生ですね。あの人に任せておけば、問題ないですから、私は私の役割を、ちゃんとこなすことにしましょう。』
 真耶は、指定された場所に向かった。

 よし。全員来てるな。
 亡国企業も来ているみたいだけど、そっちは予測済み。
 空港の利用状況を分析したうえで、エスコートプランは作成済みで、迎えも用意済み。
 見た目には、解らないけどな。
 全員、乗り込んで出発進行だ。
 と言っても、IS学園が目的地じゃない。

「大変でしたね。お手数をおかけします。IS学園生徒会長で、IS委員会直属、国連安全保障理事会特別理事の織斑一夏です。」
 アメリカ、フィンランド、ギリシャの警備担当者に、俺は礼を言う。
「いえ。彼女たちの為に、労力を割いてくださった事に、心から感謝いたします。ミスターオリムラ」
 SEALSのISパイロット、アディ・マシュー中尉が、俺に挨拶をする。
 ISが関係する件では、安全保障理事会に出席することと、俺自身の存在が外交に及ぼすことを考慮した上で、IS委員会直属となって、特別理事になっている。
 そして、一応階級をどの程度にするかも協議されて、俺は中佐扱いだ。
 フィンランドとギリシャの警備担当の専用機持ちも中尉なので、俺が最も階級が上になる。
 と言っても、威張り散らすのは真っ平だけどな。
「生徒会長として、後輩たちの為に何かするのは当然です。まだ、学園には到着していませんので、気を緩めないでください。」
 様々な情報操作やダミーを用意しているとはいえ、完璧な計画はこの世に存在しない。
 だから、俺は最後まで気を緩める事のないように、念を押す。
 尤も、現役特殊部隊員には、釈迦に説法だけどな。
 それでも、念には念を入れておきたい。

「確認されていない?」
「ええ。成田でも羽田でも、姿は確認されていないわ。」
「どういう事だ。地方空港か?いや、それでは学園までの移動が長いし時間がかかる。この2つで間違いない筈だ。」
 エムは、必死に頭を働かせる。
 監視カメラの映像をハッキングしたかったが、キャノンボールファストの際に、一夏が作成したセキュリティプログラムが導入されているので、無理な相談だった。
 それ故に、選抜したメンバーで、空港内を監視させていた。
 だが、入国するはずの専用機持ち達の姿を確認することは、出来なかった。
「今日、入国するのは明らかなのだけれど、どこかで見落としがあるのかもしれないわね。」
 スコールは今まで行ってきた事を思い出しながら、何かを見落としていないかを考え始めた。

「ご苦労様。冬なのに、虫が多いですね。」
「ええ。本当に。おまけに風情の欠片もないのですから、苛立つだけですわ。それでは。」
 ヘンリエッテは、アイリとの通信を終える。
 陽炎を専用機とする武装教官たちも、それぞれ、学園周辺の、亡国企業の工作員達を、片付ける役割を担っている。
 そう簡単には解らないように、一夏は工夫を凝らしているが、念の為に、掃除に当たっていた。
『それにしても、織斑君も大したものね。作戦の全体像を描いたのは、織斑先生だろうけど、彼も相当に関わっている筈。特殊作戦群の司令官が、手塩に掛けて育てたとは聞いているけれど、相当な物よ。どこの国の特殊部隊でも、十分に通用するわ。』
 一夏を高く評価しながら、ヘンリエッテは虫がいないか、見回りを再開した。

 よし。
 これで、半分だな。
「少し揺れますが、大丈夫です。落ち着いてください。」
 何かに接続したような音が聞こえて、やがて、扉が開けられる。
「織斑君。ご苦労様です。」
「ご苦労だな。織斑。」
 山田先生に、千冬姉が合流したか。
 これで、警備はかなり堅固になったな。
 生身でも千冬姉と遣り合えば、デルタの隊員でも病院で2、3か月は入院決定だし。
 山田先生も、隙が多くて、そんなに強くなさそうだが、個人戦闘の面でもセシリア達の指導を務めるだけあって、技量は高い。
 そうは見えないけどな。本当に。
 とりあえず、臨海学校の時みたいに下着が見えるようなことは、ないようにしてくださいね。
 そして、車は発進する。
 普通とは、違うけどな。
 何しろ、家具屋の名前が書いているから。
「ふむ。虫がやはりいたか。退治、ご苦労。続けてくれ。」
「ブッフバルト先生達も、きちんと警備してくれているから安心ですね。」
 やっぱ、いたか。
 あきらめが悪いというか、何と言うか。
 でも、さすがに先生たちは頼りになるよな。
 ISの操縦技術を教える教師陣は、全員が個人戦闘の技術も高い。
 特に、陽炎の専任にすべく千冬姉が選んだ先生たちは、指折りの実力者。
 骨折り損のくたびれ儲けだな。
 本当に、骨が折れてるだろうな。
 真っ当に働かないと、そうなるんだぜ。
 ご愁傷様。

「工作員達は、連絡途絶か…。」
「総指揮をとっているのは、織斑千冬ね。これだけ隙がないと、そう考えるしかないわ…。」
 結論を出したスコールは、そこでふと考え込む。
『隙がない…。確かに、セキュリティが堅固な部分は、手の付けようがなかった…。でも、全てではなかった…。その気になれば、主要航路全てのセキュリティを、そうする事も出来た筈。でも、実際はされていない…。結果、私たちは目がそちらに行って、後手後手。工作員も通信途絶の有り様…。結果から見れば、織斑千冬が総指揮をとっているように、思える。でも、主要航路でもセキュリティは差があった…。情報収集の成果だと思っていたけど、本当にそうなの…?どこかで、勘違いをしている…?』

 ゴールイン。
 さすがに、レーサーなんかが生活空間としても使うトレーラーでも、皆、それなりに疲れたみたいだな。
 念を入れて、迂回もしてるし。
「それにしても、さすがは織斑先生ですね。色々な仕掛けをして、最後は単純な手で、逆に相手を逆手に取って。」
「手配はしていないぞ。山田先生。私はてっきり、山田先生がしたのだと思っていたが…。」
 千冬姉が、不思議そうな顔をして山田先生に言う。
「えっ。私、してませんよ。じゃあ、ブッフバルト先生ですか?」
「いえ。私も織斑先生だとばかり。でも、総指揮を執られたのは、織斑先生ですよね?」
 ブッフバルト先生が否定して、千冬姉に、総指揮を執ったのかを確認する。
「いや。私じゃないぞ。理事長あたりじゃないか?ああ見えて、食えない人だからな。」
 まあ。この学園の理事長やるんだから、人がいいだけじゃ無理だけどな。
 いろいろ、大変だし。

「それに、私たちの今回の役割分担にしても、今になって、やっと見えた感じですよね。ひょっとして、織斑先生ご存じなかったんですか?」
「ああ。私の所にも、成田近くでウィンドウショッピングをして、帰るふりをして、中間地点に行くようにと、連絡が来ただけだったからな。」
「じゃあ、ひょっとして…。」
 千冬姉たちが、一斉に俺を見る。
「ええ。全てのシナリオを書いたのは、俺ですよ。」
 オペレーション・トラベルトラップの核にある戦略構想は、単純明快。
 敵を欺くには、まず味方から。
 これだったりする。
 航路の選定と、先生たちによる警備を頼んだ後、俺は最も使用頻度が高い航路を割り出して、そこに、厳重なセキュリティを施した。
 他は、あえて厳重にはしなかった。
 無論、亡国企業がそっちに食いついているかは、常に確認は怠らなかったし、今日もそれは同じだ。
 その上で、千冬姉以外は、全ての指揮を千冬姉が執っているように。
 千冬姉は、山田先生達が、いろいろ俺と打ち合わせをした結果、仕掛けをしているように考えるように、今日の行動を連絡した。
 結果、誰が総指揮を執っているかは、全員そろって勘違いしたわけである。
 去年、俺達が散々叩きのめしたし、産業スパイ網もだいぶ切り裂かれたから、亡国企業もかなり必死になるのは十二分に想定していたから、相手にこちらの手を読まれないようにするには、苦労したよ。
 敵を欺くには、まず味方からとは、本当に良く言ったもんだ。
 昔の人は、俺達より賢かったんじゃねえの?
 って、千冬姉たち、その目は何かな?
 怖いような気がするんだが?

「織斑一夏が、総指揮を?」
「ええ。そう考えれば、全ての疑問が解けるわ。セキュリティのさじ加減も、入国した姿を確認できなかったのも。情報を入手できたのも、意図的な流出。しかも、間違いなく欺瞞情報ね。織斑一夏が総指揮を執っていれば、細々とした手をあちこちに打てる。もう、専用機持ち達は学園に到着したと見るのが、妥当ね。」
「してやられたな…。どこまでも、可愛げがなくて、食えん男だ…。」
 エムは、苦々しい表情になった。

 疲れた…。
 何で、当社比2倍の千冬姉の地獄の懲罰トレーニングを受けさせられて、先生たちと混浴しなきゃならなかったんだ…?
 全然、くつろげなかったじゃないか…。
 大体、成功したのに、「教師たちを欺いた罪は重い。」は、ないだろう…。
 何か、凄え理不尽だ…。
 とにかく、寝よう。明日には皆も寮に戻ってくる。
 自己紹介、その他諸々は、明日にしよう。
 とにかく寝る。
 夢の中では、1人でお風呂に浸かりたい。
 いや。マジで。

「ちーちゃん、いっくんを苛めちゃ駄目だよ。今回にしても、情報の流出を徹底するために、皆を欺いたわけなんだから。」
 束は、千冬を窘める。
「そんな事は、理解している。結果、専用機持ち達には、何ら危険は及ばなかった。それは称賛に値する。まあ、本音を言えば、ガス抜きでもあった。」
 2学期末、3年生の寮で生活していた一夏は、3年生達と入浴していたわけだが、一夏の髪の美しさを満喫していた3年生達を見て、教師たちは密かに羨んでおり、千冬自身もどんなものかと試してみたかった。
 それで、口実を設けて、混浴をセッティングしたのである。
 教師たちは、一夏の髪の美しさを堪能し、すっかり満たされていたので、目的は達成された。
「それって、やっぱり問題だよ。今までだって、ちーちゃんが止めなければ、いっくん、何回死んでいたか解らないんだから。」
「解っている。もう、やらんさ。ではな。」

「だいぶ、解明できたな。」
 今回、亡国企業は、あちこちに網を張っていた。
 そこから、辿って、組織の全容を大分把握することが、可能になっていたのである。
『後は、ジェームズ・グレイの目的と、亡国企業の関係か…。技術面は、一夏を主導にするしかあるまい。あれ以上に、解析できる人間は、この学園には存在しない。関係を解明したら、私自らの手で潰してやる。あの時の借りを、返させてもらうぞ…。』
 資料に目を通しながら、千冬は静かに決意を固めていた。

後書き
セキュリティを厳重にする際の、プライオリティとはなんでしょうか?
当然、セキュリティ対象の重要さです。
今回の元ネタは、それです。
亡国企業側も、「重要な情報には、強固なプロテクトを掛けている。」と、常識的に考えていましたが、それこそが、一夏が仕掛けた罠。
さらに、教師陣にも、全体像が見えないようにしつつも、それぞれが必要な役割を果たすように、お膳立て。
結果、各国の専用機持ち達は、無事到着。
尤も、一夏はその後、地獄を見ましたが。
今回は、一夏と真耶のデートっぽいシーンを入れてみました。
原作でも、一夏の事を、異性として意識している様子の真耶。
これから、どうなりますかね?






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