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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第55話 清浄にして聖なる地で

<<   作成日時 : 2013/06/15 23:57   >>

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 静かだな。
 もう、年末に差し掛かっているから、当たり前だけど。
 だが、ちょうどいい。
 この静寂の中が、最もこの土地の“気”を感じ取れる。
 多くの修験者が訪れ、厳しい修行を積んだ、聖なる地。
 そして、俺の愛刀、湯殿国親が打たれた地。
 出羽三山の一つ、湯殿山。
 俺は、ここで今年の修業を締めくくっていた。

 この地で有名な、御滝神社の滝の行。
 だが、この近くに、ほとんど知られていない滝がある。
 そして、そこに今もきちんと手入れをされた、小さな和風の家がある。
 湯殿国親の家。
 神社の宮司の一族は、代々手入れをしていたそうだ。
 国親は、日記の類を書かない人で、人付き合いもほぼ皆無だったらしい。
 ひたすらに、刀を打ち続けていた刀鍛冶。
 その国親が、唯一、付き合いらしい付き合いをしていたのが、御滝神社の宮司の一族だったと聞いた。
 俺が、この地に入る前に、師匠の墓参りにいった時、静音さんに会った。
 事の次第を知った静音さんが、神巫子神社の宮司さんを経由して、ここを使わせてもらえるように、頼んでくれた。
 ツェルトバーンもレーションも持ってきているし、一応、飯盒も持ってきているから食事は問題なかったが、戦前の軍用テントでは居住性も良くないだろうし、体を壊したら大変だと言われて、俺は好意に甘えることにした。
 そう言えば、家事と家計を一切請け負っていた、小学生の時の俺を、静音さんは何かと心配してくれて、時々、おかずを差し入れに来てくれたっけ。
 嬉しかったな…。あの時は。
 
 昨日の夜、習志野から直接こっちに来て、夜は剣術と槍術の鍛錬に明け暮れていた。
 滝の行で、体の汗を流して、暖かい物を食べて体を暖めて、床に着き、いつもの時間に起きて、滝の近くで座禅を組む。
 自分の意識を限界まで広げることをイメージして、湯殿山の“気”を感じる。
 IS学園とも、麓の町とも、まるで違う。
 本当に、別の世界だ。
 国親が、この地で刀を打ち続けた理由がよく解る。
 雑念が入る余地が、ない。
 余計な物は、一切遮断できる。
 己が為すべき事。
 それを考え、やり遂げる場所として、本当にぴったりだ。
 しばらくすると、朝日が昇る。

「そうですか。山にこもったままですか。」
「ええ。さすがにテントはまずいと思って、神社の宮司さんを通じて、小さな家を使わせてもらっていますよ。」
「ご迷惑を、お掛けします。」
 静音の元に電話を掛けた千冬は、湯殿山で鍛錬をしている一夏について聞こうとしたが、何も聞けなかった。
「心配いりませんよ。千冬さん。一夏さんは、とてもしっかりした人ですし、暖かい物が作れるように、食事の材料を渡しておきましたから。囲炉裏もありますから暖まる事も出来ます。それと、そんなに気にしないでください。私にとっても、亡くなった主人にとっても、一夏さんは息子も同然。面倒くらいはみたいですし、成人するまで見守りたいもの。」
 一夏の直向きさと真面目さを静音は良く知っているが、反面、そこに危うさも見えていた静音は、近くに来た時は、見守りたいと思っていた。
「何かあったら、お知らせします。だから、一夏さんを信じながら、見守ってみましょう。千冬さん。」
「…そうですね。よろしくおねがいします。では…。」
 千冬は、電話を切った。
 IS委員会直属のパイロット専用のIS開発と並行し、習志野と湯殿山での鍛錬。
 自ら、どうするかを決めて行動している一夏は、成長していると言っていい。
 だが、口には出さないものの、常に、一夏が心配だった。
 亡国企業の魔の手を、振り払うだけの力を持っていても、それで安心はできない。
 姉として、大切な弟を思う心が理由なのだから、これは理の問題ではない。
 できれば、同行したかったがあまり過保護すぎるのも、一夏には良くない事は、千冬は十分に理解している。
 だからこそ、静音の言葉通り、すこし後ろに下がって見守る事にした。
 遅めの時間だが、碌に料理ができない千冬は、コンビニの弁当かカップ麺、レトルト食品になる。
「不味い…。」
 両親に捨てられてから、大黒柱として働いていた千冬の為に、一生懸命に料理を覚えていった一夏が作ったものに比べれば、正直食べられたものではなかった。
 年末の年越し蕎麦に、新年のおせち。
 どちらも、一夏の手作りである。
 ありふれているが、年末年始での、千冬の何よりの楽しみである。
 無性に、一夏の手料理が恋しくなっていた。
『真耶はいるだろうか…。』
 携帯で、真耶に連絡を入れた。

 ふう。飯にするか。
 入学してから、8カ月。
 家事をしていた時間は、ほぼ全て鍛錬に回していたから、剣術も槍術も比べものにならない程、伸びている。
 IS戦闘に、反映もできている。
 いい傾向だな。
 習志野で様々な訓練を受けることができたけど、実りのある2日間だったな。
 NOCSも、ラウラ率いるシュヴァルツェ・ハーゼもさすがに練度は高かった。
 成田一佐に岩本一尉も、腕は相変わらず。
 個人戦闘、IS戦闘。
 双方でレベルの高い演習に参加できて、本当に幸運だな。
 後は、この湯殿山で、できる限り、剣術と槍術を磨く。
 この山はいいな。
 清浄な“気”が全身に循環して、新たな力を授かったように感じる。
 多くの修験者がここを訪ねるのも、納得が行くよ。
 ここでの厳しい鍛錬は、確実に自分を更なる高みに上らせる。
 俺は、そう感じる。
 肉や魚の類を、静音さんが持たせてくれて、色々料理ができる。
 昔のように料理を作るのも、いいもんだ。
 イノシシの肉のいいのを貰ったから、野菜と一緒に味噌で煮て、飯盒で炊いた飯と一緒に食うとするか。
 動いた分、きっちり栄養付けないとな。
 そう言えば、千冬姉はちゃんと飯食ってるのかな?
 出前でもいいから、人が作ったものを食べろよ。
 体に良くないぜ。

「そうですか…。一夏さんが湯殿山で鍛錬を…。」
「すまない。せっかく連絡をしてくれたが、あれは自分を鍛えること以外に、眼中になくてな。30日には帰ってくる。」
「いえ。こちらこそ、いきなり連絡して、申し訳ございませんでした。失礼します。」
 受話器を置いた冬菊は、外の景色を見て溜息をついた。
 古くから山岳信仰の聖地として知られ、多くの修験者が訪れ修業を積むのが、湯殿山である。
 一夏の性格からして、山に籠って厳しい修行を積んでいることは、容易に想像できる。
『この寒さ…。お体を、壊していなければいいのだけれど。それに、お食事も、きちんと摂っているかしら。山の中では、いつもとは食事を作るにも勝手が違うでしょうし。』
 命を懸けて助けられてから、一夏に想いを寄せている冬菊は、厳しい鍛錬を積んでいるであろう一夏を、案じていた。
 最低気温は、マイナスにまでなる。
 その中で、滝の行も含めた鍛錬を積んでいて、病気になっていないか心配だった。
『私では、何のお役にも立てない。でも、せめて身の回りのお世話位は…。』
 手早く荷物を纏めて、プライベートジェットで、冬菊は湯殿山に向かった。

『一夏の後を、追ったかもしれんな…。』
 十中八九、一夏を誘ってどこかに行こうと思い、冬菊が連絡を入れてきたことは、すぐに解った。
『あの馬鹿者め。一体、何人増やせば気が済む。』
 並外れた、唐変木で、自らを高めることが最優先の一夏の事を考えると、千冬は深い溜息をつく。
『それにしても、お嬢様育ちなのに、随分と思い切った事だ。』
 真耶と待ち合わせの連絡をしてから、千冬は来ていく服を選んでいた。

 朝飯を済ませてから、俺は滝の行を積んでいた。
 気温はマイナス5度。
 当然、水も相当に冷たいし、滝の衝撃も結構ある。
 けど、礼をして祝詞を唱えて、行に入るとすぐに慣れてくる。
 やがて、水に打たれる感覚だけが残る。
 都会の水とは、全然違うな。
 IS学園の水は、高性能の浄水器を通しているが、やはり自然の水には勝てない。
 ほのかに香る水の匂いは、どこか落ち着く。
 人間の大部分は、水。
 太古の生みの微生物から進化して、様々な生命が地上に出た。
 人間も、その内の一つ。
 淡水であろうとも、どこかに懐かしさや郷愁に似た思いを抱くのは、気のせいかな?
 なにより、色々な物が洗い流され、浄められていく気がする。
 様々な雑念、悩み…。
 108もの煩悩を人は持っていると言われているが、自然はそれを解決してくれそうな、そんな気がする。
 さて、着替えて、稽古を続けるか。
 風邪をひかないように、くれぐれも気を付けないとな。

「ほう。月山さんのお弟子さんの、お知り合いですか。それにしても、大変だったでしょう。疲れてはいませんか?」
「いえ。平気です。」
 御滝神社の宮司に案内されて、冬菊は、一夏が修業している場所に、向かっていた。
 自宅では、着物。
 プライベートな外出は洋服だが、今回は湯殿山に入るという事もあって、冬菊は、和服に冬用の被布を着ていた。
『一夏さんのお人柄が、少し理解できた気がする…。』
 現代では、剣術はスポーツの一環であり。
 昔の様な、己が精神を鍛える為の術として、剣の道を選ぶ人間は少ない。
 一夏は、その中の1人。
 故に、道場ではなく、多くの修験者が厳しい修行を積むこの湯殿山を訪れた。
 技だけでなく、己が精神を鍛える目的で。
 誘拐された時、命の変えても冬菊を救うと誓っていた一夏の眼差し。
 スポーツの一環である剣道をしている人間では、持ちえない物を、冬菊は感じ取っていた。
『だから、ここにいらっしゃったのですね…。一夏さん。』

「織斑さん。お知り合いの方がお見えですよ。」
 胴着に着替えて稽古をしていたら、御滝神社の宮司さんの声が聞こえた。
 ん?気配が2人分?
 静音さんか?
 違うっぽいな。
「冬菊…。」
 俺が振り向くと、そこには冬菊がいた。

 なんで、こうなってるんだ?
 家に入るなり、冬菊は、被布を脱いで襷をして、家の中の掃除や昼飯の仕込みを始めた。
 しかも、備え付けられていた羽釜でだ。
そりゃ確かに、囲炉裏や飯盒用に薪や枯れ枝を用意していたけどな。
 解らん。
 マジで解らん。
 何の理由だ?
 それ以前に、寝る時どうするんだ?
 宮司さんに、頼んでおくか。
 2人くらいなら寝れるけど、さすがに、それはまずい。
 何かあったら、ご両親にお詫びのしようがないからな。
 そういう風になる気は、ないけど。
 ただ、蘭にねだられて一緒に寝た時みたいに、流されやすい所があるみたいだからな。
 マジで、気を付けないと。

「一夏さん。お昼御飯が出来ましたよ。」
「ああ。今、行く。」
 昼時になると、冬菊が呼んだので俺は昼飯を食いに行った。

「うん。美味い。やっぱり冬菊って、料理上手だよな。」
 羽釜で炊かれた飯に、味噌汁、煮物、大根おろしを添えた焼き魚。
 純和風の食事が俺の前に並んでいるが、相変わらず美味い。
 お嬢様っていうと、料理とはかけ離れたイメージがあるけど、冬菊は例外か。
 多分、和洋中、一通りやるんだろうな。
 将来は、いいお嫁さんになるな。
 嬉しそうに頬を染めている冬菊を見ながら、俺はそう思った。
 誰が結婚するか知らないが、不幸にするんじゃねえぞ。
 それこそ、罰が当たるからな。

「ご馳走様。」
「はい。」
 2回おかわりをし、味噌汁、その他のおかずを美味しそうに食べた一夏を見て、冬菊は嬉しそうに微笑む。
 神無月家では、花嫁修業の一環として、家事一般をこなせるようにするのが伝統となっている。
 当然、冬菊も例外ではない。
 本人も料理好きであった事もあって、料理の腕はかなりの物だった。
「悪いな。わざわざ来てもらった上に、食事の仕度やら掃除までしてもらって。」
「気になさらないでください。好きでやっている事ですから。」
 後片付けをしながら、冬菊は言う。
「夜は、御滝神社で、お世話になるんだろ?俺からお願いに行ってくるよ。」

「いえ。私もここにいます。」

……………………………………………………………………………………。

………………………………………………………………………………………。

…………………………………………………………………………………………。

何じゃ、そりゃ〜!!

 まずいだろ。いくらなんでも。
 そりゃ、俺からそういう事をする気は、ないけど、やっぱり駄目だって!
「解った。じゃあ、俺は外にテントを作って寝るよ。ちょうどあるし。」
 持ってきたツェルトバーンが、役に立つな。
 うん。備えあれば憂いなし。
「駄目です!それでは、一夏さんが風邪をひいてしまいます!!」
 うわっ、びっくりした。
「大丈夫だって、そんなやわな体じゃないし、冬用の寝袋も持ってきてるしな。」
「この家は、私と一夏さんが生活する分には、十分な広さがあります。ですから。」
 うっ…。
 また、子犬か子猫みたいな目を…。
「それに、お風呂でも、きちんとお背中を流して差し上げたいですし、私、一夏さんになら、下着姿も裸も見られても構いません。」
 だから、駄目だろ。それは。
 第一、親父さんとお袋さんに、滅茶苦茶怒られるぞ。
 そういうのはだな。やっぱり、きちんとした相手を見つけないと。
「私と一緒では、お嫌ですか…?」
 冬菊が、不安げに尋ねてくる。
 てこでも、自分の意志を曲げそうにないな…。
 3年の先輩たちと言い、フォルテ先輩や楯無さん、ブッフバルト先生に束さん。
 シャルロットもそうだったな。
 なんで、こうなる?
 ま、俺が、何もしなけりゃいいわけだから。
「解った。その、身の回りの事、頼む。」
「はい。」
 俺が、改めて頼むと、冬菊は心から嬉しそうな笑顔を見せる。
 明日には帰るけど、こりゃ大変だ…。
 ラウラは、ドイツに帰っているから大丈夫。
 楯無さんも、更識家の当主として、そしてロシアの国家代表としての仕事がある。
 簪も、日本の代表候補。
 日本政府から護衛が来てるけど、情報漏えいはないだろう。
 うん。大丈夫だ。
 さ、鍛錬、鍛錬。

 剣術と槍術の鍛錬を終えた後、滝に打たれながら、俺は亡国企業の事を考えていた。
 あいつらは、何の為に襲撃を繰り返す?
 ゴーレムシリーズ強化のためのデータ収集が目的にある事は、すぐに解るが、それ以外は、相変わらず解らない。
 ジェームズ・グレイに関しては、奴自身の目的を。
 人間の脳を機械的に完全に再現することである事は、すぐに察しがつく。
 その研究成果を、ゴーレムシリーズにフィードバックしたことが亡国企業のメリットになったから、奴がいるのか?
 それとも、亡国企業が、当初からゴーレムシリーズの開発に必要な人材と結論付けて、接触したのか?
 それ以外の別の理由か…。
 俺が誘拐された時の記憶はすっぽり抜けているが、そこに何かがある気がする。
 根拠はないけど、そんな気がしてならない。
 でも、どうしても思い出せない。
 そもそも、なんで俺を誘拐する必要があった?
 俺が誘拐されたのが、7年前。
 ジェームズ・グレイが失踪したのが、10年前。
 空白の、3年間か。
 ゴーレムシリーズに、亡国企業の目的。
 関わっている可能性が、否定できないな。
 何とかして、思い出さないとな。
 今でも、疼く、俺が忘れ去った過去。
 向き合った時、俺自身どうなるか解らない。
 けど、それに負ける訳にはいかない。
 今までの時を、歩みを、無駄にするなんてことはできないし、何より大切な人達を守りたい。
 どんなに、辛くても、おぞましくても、俺は負けない。
 亡国企業との戦い。
 そして、俺自身との戦い。
 俺は、どっちにも勝つ。
 必ず、勝つ…!
 そう誓って、俺は胴着に着替えるために滝を出た。

「うん。これでよし。」
 夕食の仕度をしていた冬菊は、味見をして終える。
 マイナスにまで気温が下がる中、一夏は滝の行をするので、暖かい物を食卓に並べるように、意識している。
 幸い、根菜類が多い。
 内臓を温める効果のある根菜類は、一夏の体を暖めるのにも最適だと思い、意識的に使っている。
 すでに、風呂の仕度も整っている。
 風呂は、ガスで沸かすことはできるし、炊飯器もあるが、冬菊はあえて羽釜で炊いている。
 少しでも美味しい食事を、一夏に食べてもらいたい。
 その為なら、冬菊は労を惜しむ気はなかった。

 やっぱり、寝にくい…。
箒とルームメイトだった時とか、シャルロットの事とか、3年生の寮での生活とかとは、違いすぎるからな。
 互いに、ほとんど会わない。
 暇を見て、メールや電話のやり取りはしているけどな。
 風呂の時も、寝間着に着替える時も、下着姿も裸も俺に見られても、構わないってのは本当だった。
 何、考えてんだよ。まったく…。
 
 やめだ。やめ。
 来年からは、入学する専用機持ちの指導が待っているし、他にも、考えることが山ほどある。
 IS委員会直属のパイロットの専用機の組み上げもあるし、白式に関しても、改修と新装備の開発及び研究は、欠かさずやってほしいって、委員会からの要請も来て、その為の莫大な研究費が来ている。
 ひょっとしたら、色恋沙汰の類かもしれないけど、そっちに思考を傾けるほど余裕はない。
 ゴーレムシリーズにしても、神札や鳳笙の全容は知らないまでも、対抗策を開発したことは、亡国企業も解っている筈だ。
 向こうがそれに対して、どんな対策をするかを先読みしたうえで、さらに手を考える必要がある。
 その時、隣の布団で寝ていた冬菊が、俺の布団に入ってきて、抱きしめてきた。

「冬菊…。」
 一夏は、何が何だかわからず、ただ、されるがままだった。
「私には、ほとんど何もできません…。命を懸けて助けていただいたのに、出来る事は、精々、身の回りのお世話位。ですから、せめて…。これ位は、させて下さい。」
 一夏が恋愛に関して、並外れた鈍感だという事は、冬菊も知っている。
 それでも、自分に恋愛感情が無くても、自分の体を求めてくれれば、温もりを分け与えることはできる。
 だが、気真面目な性格の一夏が、そのような事をするはずもない。
 それでも、何かしたい…。
 IS委員会から、パーソナルデータは最重要機密に指定されていて、ほとんど何もわからなくても、様々な義務を負い、全て果たしている一夏を包み込み、疲れを癒したい。
 嘘偽りのない、冬菊の気持ちでもあり、精一杯の愛情表現だった。
『愛しています。一夏さん。だから、今は、私の腕の中にいて下さい。そして、少しでも疲れを癒してください。』
 毎日、過酷極まる鍛錬を積んでいることだけは、知っている。
 心の中にある優しさが根源になっているであろう誓いを守る為に、過酷な鍛錬を、自らに課す日々。
 本来なら、大人がやるべき事も多く肩代わりしている、愛する少年。
 その一夏の疲れが、少しでも和らぐことを祈りながら、冬菊は優しく一夏を抱きしめる。

「送ってくれて、ありがとな。それと、食事の仕度とかも、本当にありがとう。凄く美味かった。」
「喜んでいただけて、嬉しいです。また、どこかで修業をなさるときは、身の回りのお世話をさせてください。」
 それから、俺は家に戻った。
 次の日は、帰りだから少し早めに鍛錬を切り上げたが、相変わらず、冬菊は献身的に、俺の身の回りの世話をしてくれた。
 何か、お礼しないとな。
 それにしても、本当に何考えてんだか…。
 下着姿とか裸は、好きな男に見せるもんだろうに…。
 第一、今は、恋愛とか興味ないし、やる事が山積みだ。
 千冬姉にも、早く追いつきたいし、できうる限り亡国企業を早く潰したい。
 学園の皆に危害が及ぶ要因は、生徒会長として放置できない。
 それぬきにしても、だけどな。
 さて、夕食の支度と、おせちの下拵えを始めるか。
 大変な1年だったな。
 来年は、穏やかであって欲しいもんだ…。
 そうできるように、なりないな…。

後書き
これで、一夏の今年の修業はお終いです。
よく、日本人は宗教に関していい加減だと言われるようですが、私は日本人は、他国の人に負けないぐらい、信心深いと思っています。
毎年、亡くなられた方を弔い、剣道や柔道の道場には、必ずと行っていい程、神棚があり神様が祭られています。
日本各地で行われる祭りも、無病息災や豊作等を神に祈る事がルーツ。
とても身近に、神様に関係する物が存在する。
それが、日本という国だと私は思います。
そして、一夏も剣の道を修める者として、己が精神を鍛える場として、愛刀湯殿国親が打たれ、日本の山岳信仰の聖地でもある出羽三山の一つ、湯殿山を訪れます。
毎年、修験道の人達がこの場所を訪れ、滝の行を収めたりして修業をします。
私は、そういう事はしませんけど、自分にとって神聖な場所で修業を修めるという事はどういう事なのかは興味があるので、この話を書きました。
しかし、一夏の鈍さは凄すぎる…。
普通、気づきますよ…。
一夏の性格を考えながら書いていますが、あの鈍さには頭痛がします。
この鈍感男に対する処方箋は、ないんですかね?
いや、マジで。






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