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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第53話 習志野の一夏

<<   作成日時 : 2013/06/01 23:49   >>

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 薄暗い建物の中で、銃声が響く。
 それと同時に、可能な限り気配を殺した兵士たちが周辺を警戒しながら、目標を追う。

「くそっ!見失った。」
「おい!何人やられた?」
「既に半数…。」
 目出し帽を被った彼らの顔色は、良いとはいえなかった。
 兵士といっても、彼らはただの兵士ではない。
 全国から選りすぐられた、猛者の中の猛者たちである。
 その兵士たちの様子を、気配を完全に消して窺っている兵士がいた。

 同じ迷彩服とヘルメットを着用しているが、携行しているアサルトライフルは、違う。
 まるで、SF映画に出てくるような、デザインである。
 H&K XM8。
 アメリカ軍次期制式ライフルとして開発されたが、様々な事情で、その座を逃したライフルである。
 だが、手堅い設計で、使いやすいように工夫もされており、その兵士は気に入っている。
 警戒しながら建物の中を進む、一団を捉え、銃口で彼らをなぞる様にして的確に射撃をし、相当する。

「まただ。くそっ!もう、俺達だけだ。」
「一体、誰だ…?」
 日々の猛訓練で、精神的にも鍛え抜かれているが、目出し帽の内側は汗でぐっしょりと濡れていた。
 極限まで、精神力を研ぎ澄ませながら、進む。
 しかし、それでも相手を見つける事は、できない。
 逆に、次々と彼らを狩っていく兵士は、行動を予測し気配を読みながら、既に背後にまで迫っていた。
 そして、彼らも狩られた。

「訓練終了。全員集合だ!」
 建物の中に声が響き、全員が外に出る。

 外には、ペイント弾で迷彩服が塗装された、20人の兵士がいた。
「何だ。その様は!貴様達、訓練で何を学んでいる!」
 部隊の隊長らしい男が、整列した20人の兵士達を怒鳴りつけている。
 そこに、彼らの相手をしていた兵士が、ヘルメットを取り、目出し帽を脱ぎながら、歩いてくる。
「織斑。貴様だったのか。」
 兵士の1人が、驚いたような懐かしいような視線で、その兵士。
 16歳の少年を見る。
「お久しぶりです。高木陸曹長。」
 懐かしそうに、一夏が敬礼する。

 千葉県習志野市。
 陸上自衛隊唯一の特殊部隊である特殊作戦群。
 ISを男性であるのにも関わらず、稼働させることができると判明してから、半年の間、一夏はこの基地で訓練を受けた。
 ISを運用するのに必要な、各種知識、技術、戦略や戦術。
 そして、束直々に、ISの設計・開発、整備の講義。
 さらに、個人戦闘の技術や、各種火器の使用訓練、サバイバル訓練、パラシュートを用いての降下訓練等様々な戦闘技術に、応急処置の訓練も受けている。
 そして、IS学園に入学する頃には、国家代表候補の中でも、最高クラスの実力者となり。IS関連の技術者としても、一流となる。兵士としては、特殊部隊で十分に通用する戦闘力の持ち主になった。

「また、腕を上げたな。聞いたぞ。IS学園では、前回モンド・グロッソのブリュンヒルデと、毎日、手合わせをしているそうじゃないか。訓練も、しっかりやっているな。特殊作戦群の班を2つ全滅させるとはな。大したものだ。」
「ありがとうございます。一佐。」
 偶に、千冬姉自らの、地獄のシゴキもあったからなあ…。
 実力も上がる。
 でないと、体が持たないし…。
 俺も、先生から許可が下りて、訓練をハイレベルにしているからな。
 とにかく、俺の個人戦闘の師匠である、一佐に褒めてもらえるのは、嬉しい。
「貴様たちも知っているだろうが、織斑はISの世界では、5本の指に入る実力者だ。そしてこの通り、兵士としての技量も、以前とは比べものにならんほど、高まっている。日々の訓練は、気合を入れろ。いいな!」
「「「「はっ!」」」」
「よし。昼食だ。」

「どうだ?周りが全員、女子のパラダイスでの日々は。」
「いや。パラダイスじゃないですって。毎日、大変なんですから。」
 日々、死亡フラグが立ち、それを回避しようと必死になるのが、パラダイスなんだろうか?
 俺には、さっぱり理解できない。
 回避しても、大抵は千冬姉の地獄の懲罰トレーニングだ。
 あれに耐えるのは、本当にキツい。
 一遍、やってみてください。
 紺野二尉。
「で、午後からは、どうするんだ?」
「せっかく、こちらで訓練をする許可を戴いたんですから、思う存分訓練していきますよ。」
 今日は、個人戦闘の。
 明日は、ISでのトレーニングを予定している。
 こっちには、芝崎が納めた訓練機器も多くあるから、それを使ったあらゆるフィールドでの戦闘訓練ができるしな。

「しかし。貴様も、風変わりな銃を使っているな。外見が酷く頼りない。俺なんか玩具を使っているようで、使う気になれんぞ。」
 紺野二尉が、XM8を不思議そうに見る。
 最近、PMCでも、採用が始まってるんだけどな。
「外見は変わってますけど、PDWから、狙撃仕様、分隊支援火器まで簡単に変更できますから、重宝してますよ。専用のレールシステムをつければ、拡張性も高いですしね。」
 本来なら、XM8はPCAP(ピカティニーコンバットアタッチメントポイント)という拡張機能がついているが、対応するオプションがないので、俺は専用のレールシステムをつけて、既存のオプションを、装着できるようにしてある。
 多分、普及が進めば、PCAPに対応したオプションも出るだろう。
 いざとなれば、俺が作ればいいだけだが。
 作るか。簡単だし。
 ISの整備室を移動式にしたのを、束さんが送ってきて、それを持ってきてるしな。
 よし、そうしよう。
 俺は、食事を早めに食べ終えて、プロテインとサプリメントを飲む。
 そんじゃ、実弾射撃訓練をして、午後の訓練スタートだ。

 ほう。午前の訓練でも理解したが、一段と動きにキレが増しているな。
 常に、全方位の気配を感じ、即座に対応する。
 以前では、そこが課題だったが、クリアしたか。
 しかし、なんともゴツイ拳銃を使っている。
 資料を見ると、織斑が使っている銃火器がH&K社製からか、向こうがそれを大々的に宣伝し、技術力のアピールの為に開発したと、あったな。
 デザートイーグルの50AEには劣るが、それでも威力は44マグナムの倍。
 扱うのは相当に骨の筈だが、軽々と扱っている。
 体全体を、まんべんなく。且つ、相当に鍛えぬいているな。
 プロテインに、アミノ酸のサプリメントも使っているが、ランクは最上級。
 ヒヨッコの時から、愚直なまでに真面目な奴だったが、変わっておらんな。
 それに、さっき、短時間で自分用のアクセサリーを開発して使っているが、性能は高そうだ。
 うちにも、納入して欲しいもんだな。
 最近になって、予算も潤沢になってきたしな。
 XM8は様々なタイプに、簡単に換装できるが、最大限に活用している。
 以前から、定期的に習志野で、今年入学した、IS学園の専用機持ち達が訓練に訪れ、指導しながらも織斑も訓練をしていたが、どんどん伸びて来て、ここまで来たか。
 そう言えば、例の部隊が来るのは、午後からだったな。
 さて、どうなるかな?

 よし、準備運動の実弾訓練は、上出来だな。
 継続は力なり。
 続けてて、よかったよ。

「おう。準備運動は終わったな。実は、午後から、合同演習をする部隊が、来るんだ。先方が、貴様がここにいる事を聞いたら、加わって欲しいと言ってきた。腕は中々のものだぞ。貴様や俺には、まだまだ及ばんがな。どうだ?他国の特殊部隊の練度を見ておくのも、偶にはいい物だぞ。」
 へえ。
 そりゃ、興味津々だな。
 考えてみたら、俺が知ってる他国の特殊部隊は、ラウラが隊長を務める、シュヴァルツェ・ハーゼくらいか。
 隊員の訓練風景は、見たことないな。
 まあ。夏休みに行った時は、千冬姉が俺の体がなまっていないかの確認と、地獄の猛訓練だったから、当然と言えば、当然なんだが。
「了解しました。俺も、他国の特殊部隊の練度は、見ておきたいと思いますし、学べる事は、学んでおきたいと思います。」
「そうか。すまんな。尤も、貴様が学べる事は、あるかどうか。確か、本格的な訓練場も、作っているんだったな。その真面目さが、貴様を兵士として、より優秀にしている。合同演習は、メニューは一通りある。その後、俺との訓練と手合わせで締め。それでいいか?」
「はい。」
 一佐との手合わせか。
 俺が、一番いろんな事を勉強できたのは、一佐との手合わせだった。
 技術は、色々、戴くのであしからず。
「それと、今晩は酒に付き合え。貴様も飲める歳だし、聞くところによると、いける口だそうじゃないか。」
「お供いたします。」
 そう言うと、一佐は嬉しそうだった。

 シュヴァルツェ・ハーゼに、あれはNOCS、イタリア内務省直属の、国家警察治安作戦中央部隊。通称レザーヘッドだ。
 GSIに並ぶ、イタリアの精鋭部隊じゃないか。
 俺はまた、デルタやグリーンベレーだと思っていたが。
 けど、これはこれで、面白いな。
 腕前を見る。いいチャンスだ。

「ドイツ陸軍特殊部隊「シュヴァルツェ・ハーゼ」隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐であります。本日の合同演習。よろしくお願いいたします。」
「イタリア国家警察治安作戦中央部隊NOCS隊長、アーシア・ルッフォ・ディ・カラブリア少佐であります。本日は、よろしくお願いいたします。」
 ラウラに、あれ?あの人、見おぼえが…。
 思い出した。
 クラス対抗戦で学園を襲った、亡国企業に攫われた、テンペスタUの専任だ。
 イタリアの、国家代表でもあるんだよな。
 NOCSの隊長だったのか。
 強いわけだ。

「お久しぶりです。シニョールオリムラ。その節は、お助けいただきありがとうございます。聞くところによれば、私を傷つけないように、大変にお気遣いくださったとか。どれほど、お詫びと感謝をすればよいか、解らない程です。お贈りした家具は、ほんの心づくしの品でございますが、何かご入用な物があれば、すぐに贈らせていただきますので。ご遠慮なさらず。」
 成程、気にしてたのか。
 俺の方は、ルッフォ少佐が無事なら、それでいいんだがな。
 ちゃんと言うべきだな。うん。

「少佐。いえ、シニョリーナ・ルッフォ。貴方が無事なら、私はそれで十分です。あの時、私の頭にあったのは、如何に貴方を傷つけないようにするか、でした。それが果たせたのなら、私はそれでよいのです。お気になさらず。原因は、制御システムの暴走。貴方に罪はありません。」
 何か、こういう口調に妙に慣れたな。
 仕事柄、こういう口調多いからなあ。
「貴方は、本当にお優しい方なのですね。それに、お強い。それから、とても紳士的で、素敵ですわ…。」
 少佐の目が潤んで、頬が染まっている。
 何か、ラウラが、凄え不機嫌になっている。
「オーバーストナリタ。演習を始めましょう。」
「そうだな。では、予定通りに演習を開始する。」
 よし、シュヴァルツェ・ハーゼにNOCS。
 どちらも、ヨーロッパに名を轟かせる、精鋭部隊。
 楽しみだぜ。
「それでは、後で…。」
 何だ?
 一瞬だが、唇に柔らかい感触が…。
 少佐?
 いわゆる、バードキス?
 何で?
 まあ、いいや。
 演習が始まるし。
 それにしても、最近のレザーヘッドは空挺任務もこなすのか?
 まあ、カラビニエリ(軍警察)にも空挺部隊はあるけど。

 自衛隊の前主力戦術輸送機C−1を、空挺部隊向けに再設計したC−1Aの中で、パラシュートを付けて、俺は降下命令を待っていた。
 今回は、降下してから野外訓練場とサバイバル用訓練場を抜けて、目標を制圧というミッションで、演習を行う事になっている。
 まだ、次期アサルトライフルの結論は、出ていないらしい。
 何でも、今まで拳銃を主に開発してきたミネベアが、各国のアサルトライフルを参考に開発した、アサルトライフルを売り込んで、急遽候補に加わったそうだ。
 ちなみに、今回使っているのがそれ。
 ミネベア 17式自動小銃。
 様々な口径の弾丸を、ユニット分割された機関部等を交換することにより、使用可能で、様々なアクセサリーを使用可能。
 重量も軽く、折り畳み可能なテレスコピックストックを、装備している。
 至れり尽くせりだな。
 今は、技研が開発した、多機能スコープを装備している。
 スイッチで、ダットサイトにも最大6倍率までのスコープにもなり、オプションを使用すれば、夜間でも使用可能と使い勝手はいい。
 国内の部隊に一斉に装備すれば、単価は下がるだろう。
 それにこれなら、武器市場でも売れるかもな。

「全部隊、降下開始。速やかに目標を鎮圧せよ。繰り返す…。」
 陸自のC−1A。
 シュヴァルツェ・ハーゼのC−160 トランザール。
 それぞれの輸送機から、一斉にパラシュートを付けた兵士たちが降下を開始する。
 陸路からも、部隊が展開する。
 一夏を含む、空挺部隊の任務は敵防衛線の後方に奇襲をかけ、これを無力化。
 陸上部隊の支援をしつつ、合流を図る事である。
 レザーヘッドのC−27J スパルタンは、別行動をとる事になっているので、違うコースを通る。

 特殊作戦群空挺部隊の隊長が、サインで前進を命じる。
 基本的に特殊作戦群は、口で命令はしない。
 サインのみである。
 音を立てずに、目標を鎮圧する。
 行軍を始めてからしばらくして、隊長が停止させ、偵察要員を選抜。
 偵察に向かう。
 その中には、一夏も含まれていた。

 演習システムとはいえ、リアルだよな。
 っと、偵察、偵察。
 81mm迫撃砲に、軽機関銃。
 榴弾砲もあるな。それに、対戦車ミサイル。
 陣地も、しっかり固めているな。
 タブレットに、陣地のデーターを入力して、送信する。
 俺は、偵察隊の隊長に、その事を伝える。
 そして、気づかれぬように警戒しつつ、その場を離れて、本隊と合流する。

 俺達から送られた情報を基に、既に作戦は立案されていた。
 選抜されたメンバーが、後方から接近。
 対人兵器として、一番危険な軽機関銃と迫撃砲を排除。
 後に榴弾砲を破壊して、本隊と地上部隊で制圧。
 当然、俺も含まれる。
 既に、位置は頭に叩き込んでいる。
 制式狙撃銃は、レミントン M24だが、こういった状況ではボルトアクション式は不向き。
 故に、ナイツ SR−25が用いられる。
 無論、サプレッサー付きだ。
 目標を指示されて、俺を含んだ数人が狙撃ポイントに向かい、軽機関銃と迫撃砲を無力化し、本隊が後方から襲撃し、榴弾砲を無力化し、対戦車ミサイルを持つ歩兵を叩く。
 後は、地上部隊に任せて、第2幕だ。

 やっぱり、アンブッシュか。
 その手には、乗らないぜ。
 何しろ、このサバイバル訓練場で、これでもかというほど、底意地の悪い待ち伏せを味わって、一佐に怒鳴られて、対処法をマスターしてきたんだ。
 そう簡単に、引っかからないさ。
 逆に、たっぷりパニックを味あわせてやる。
 新型のグレネードランチャーとして、配備が始まった、H&KのM320を取り付け、グレネードを装填する。
 そうすると、隊長に意見はないかを求められて、俺は作戦を提案する。
 ちょうどいい具合に、手榴弾がある。
 俺は技術者。
 戦闘工兵みたいな、側面も持っている。

 俺は細工をした手榴弾を設置し、合図を送って、予定のポイントに移動する。
 訓練で得た教訓は、骨まで染み込んでいる。
 相手の考えは、手に取る様に解る。
 そんじゃ、第一弾。

 待ち伏せしていた部隊が、案の定引っかかる。
 何しろ、精神は極限まで緊張して、ストレスが加速度的に溜まり続けるのが、今いるサバイバル訓練場のジャングルエリアみたいな場所での、待ち伏せだからな。
 環境は過酷。
 さっさと敵を片付けたいのが、人間の心だ。
 罠の可能性を考える指揮官もいるが、こんなバレバレの兆発をしてくる相手なら、自分たちを却って受け身にさせる事を考えていると、知恵を働かせることが、意外と多い。
 下らない手でも、時には有効だからな。
 だから、引っかかった。
 おいおい、そんな派手に撃ってたら、逆に自分たちがヤバいぜ。
 これで、向こうの位置はしっかり特定。
 そっと、スコープで位置を確かめる。
 ベストポジションだな。
 じゃ、本命。
 ぽちっとな。

 仕掛けていた、IED(即席爆発装置:Improvised Explosive Device)で、全員お終い。
 じゃ、そろそろ、NOCSと合流するか。
 こういう、単純な手って、仕込み次第で本当に使えるな。

 レザーヘッドは、降下を終えて、待機していた。
 時間より、少し早いか。
 サバイバル演習場を、さっさと抜けたからな。
 目標は、ちょっと広めの工場か。
「どうだ?罠はありそうか。」
 空挺部隊を率いる青田三佐が、小声で訊ねてくる。
 敵に、悟られない事。
 奇襲の、基本中の基本だしな。
「ここと、ここ。あと、ここに、罠があるかと。最短ルートはここと考えます。」
「よし。行け。後から行く。」
 それで、何をすればいいか十分だった。
 周辺を警戒しながら、相手に気取られないように匍匐前進して、罠を見つける。
 なるほど。凝った罠だけど、今の俺は、昔の俺じゃない。
 この程度、見ただけで構造を理解できる。
 サングラスとしての機能も持つゴーグルを着けて、スタングレネードを放り込む。
 爆発と共に音と強烈な光で、パニックになるのが気配と足音でわかる。
 パニックを装うという選択肢を持っていたとしても、今まで積み上げてきたもので、俺はそれを見抜ける。
 今のは、完璧にパニックだ。
 じゃあ、行くぜ。
 俺が、飛び込むと同時に、展開していた他の部隊も突入を開始。
 たいして時間もかからずに、制圧は終わった。
 これで、演習は終了。

「指導をしながら、お前は予想以上に伸びていたな。俺が負けるとは思わなかった。」
 演習が終わった後、一佐と勝負として、結果は俺の勝ち。
 一佐の腕は、もちろん鈍っていなかったが、ゴーレムとの命を懸けた戦いを潜り抜けた俺は、自分の予想以上に個人戦闘の技量が上がっていた。
 そりゃ、まあ、あの時と同じ状況でも、勝つ自信はあったけど。まさかなあ…。
「確か。今は、指導は向こうの教師が引き継いで、お前はブリュンヒルデ相手に、厳しい訓練を積んでいるんだったな。」
「はい。さすがに、強いですね。もう少しで勝てると、思うんですが…。」
 ブッフバルト先生、最近、目の色が違う。
 完全に、本気になってるしな。
 まるで、モンド・グロッソで試合しているような感覚にすら、する。
 その分、俺も鍛えられて助かってるけど。

「まさか、ジャングルフィールドを、あんな手で突破するとはな。考えてみれば、貴様は世界有数の科学者。ISに装備も自分で開発するから、それ位、出来て、当然か。」
 ジャングルフィールドで、待ち伏せをしていた室賀一尉が、ほろ苦い笑みを浮かべる。
 誘いかもしれないというのは、理解していたけど、俺がいる事を考慮すると、正面から攻めて、それを囮にした奇襲だと考えたそうだ。
 こっちの作戦を逆手にとって、待ち伏せの体勢を崩さずにこっちを崩そうとしたが、第二弾が待っているとは、考えていなかったか。
 待てよ…。
 これって、俺の方が、底意地が悪くなったって事か?
 それは…、ちょっと…、嫌だな…。
 スキルアップしているのは嬉しいが、何か複雑な気分だ。

「ほう、強いな。戦闘だけでなく、酒も強かったか。」
 俺は一佐と飲んでいたが、すでにビール瓶はだいぶ空になっていた。
「仕事柄、アルコールはつきものですから。それに、体質的にも強いようです。」
「そうか。それなら、安心だ。」
 その内、居酒屋の梯子ですか?
 ま、一佐のお供なら、喜んでしますけどね。
「それと、例の件だがな。中々、素質があるぞ。思ったより、呑み込みが早い。
そっちに行く頃には、基礎は身につくだろう。」
 ほっとしたぜ。
 何しろ、ISに触った事もなかったからな。瑞鶴の適合者は。
「にしても、相当にハイスペックだな。貴様が新開発したIS。他にも、開発中だと聞いたが?」
 ん〜。
 やっぱり、耳に入っていたか。
 それなりの理由があるとはいえ、やっぱりか。
「色々、大変なんですよ。こっちはこっちで。」
「いっその事、もっと給料、ふんだくったらどうだ?貴様には、その程度の権利は十二分にある。労働の成果に、給料が釣り合っているとは、俺には思えん。各国政府の豚共は、貴様をいいように使って、この国の政治屋は、それからお前を守ろうともせん。虫唾が走る!」
 国民の権利を守るのが、政治家の仕事。
 自衛隊も、その為にあるというのが一佐の持論だからな。
 腹も立つか。
 俺も、うんざりしてるし。
「ま。今夜は飲め。少しは、憂さを晴らさんと、体にも悪い。」
 そう言って、俺のコップにビールが注がれる。

 翌日。
 俺はISスーツを着て、演習場にいた。
 昨日は、個人戦闘のスキルの確認と、さらなる訓練をたっぷりやれた密度の濃い、充実した1日だった。
 今日も、そうあって欲しいね。

「久しぶりね。一夏。」
 肩のあたりで切りそろえた、やや褐色を帯びた黒髪。
 無駄な脂肪がない、すらりとした体。
「お久しぶりです。一尉。」
 岩本春香一等陸尉。
 俺の、IS戦の師匠だ。
「あなたの話は、随分、耳にしてるわ。今や、世界でも5本の指に入る実力者。指導した私としても、鼻が高いわね。」
「恐縮です。」
 ちなみに、俺が今開発している2機のISに関して、実は関わりがあったりする。

 ん?この反応に、識別コード。
「奇妙な客人ですね。」
 本当に、何しに来たんだ?
「やっほー、いっくん♡」
 上空に現れた南瓜型の飛行艇から、声がする。
 はあ…。
 まったく。
 何しに来たんですか?束さん。

後書き
年末の、一夏の個人鍛錬の開始です。
最初は、嘗て、訓練をしていた習志野の特殊作戦群の基地。
様々な事を学んだ始まりの地での訓練です。
そして、他国の特殊部隊での合同訓練。
ラウラが率いるシュヴァルツェ・ハーゼは最初から決めていましたが、もう一つくらい出したいなあと思い、どこにしようか結構悩みました。
世界的に有名な部隊としては、デルタフォース、グリーンベレー、SEALS、SAS、スペツナズ。
この辺りですから、却ってつまらないと思いやめました。
結果、結構マイナーな、イタリアの特殊部隊NOCS。
通称レザーヘッドに決定です。
学年別対抗戦で、テンペスタUを出しましたから、その専任操縦者を隊長にして、ISも運用する部隊として登場させています。
そして、オリジナルのC−1A輸送機。
C−1は現在の自衛隊の輸送機として運用されていますが、間もなく納入される、開発中のC−X次期輸送機と後退します。
国産輸送機ですし、空挺部隊の輸送機なら改修すれば使えるのではないかと考え、登場させました。
そして、訓練2日目に来たのは、何と、束。
何か、騒動がありそうですな。






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