cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第52話 姉弟のイブ

<<   作成日時 : 2013/05/25 22:31   >>

面白い ブログ気持玉 5 / トラックバック 0 / コメント 2

 よし。
 これで、巴御前は大丈夫だな。
 新型の兵装、改良型極高初速レールカノン「天狼」。
 通常兵装も、これで憂いは無いな。
 固定兵装は大丈夫かと思ったから、戦衣の改良をメインにしたけど、念のためにやっておく事にした。
 事と次第によっては、春雷も考慮する必要があるかもしれないが、そっちは倉持技研に考えてもらいたい。
 いつまでも、俺におんぶにだっこは問題だしな。
 もうすぐ、2学期も終わる。
 1年の寮に戻る準備もしなくちゃならないし、他にもやる事がある。
 本当に、IS学園の生徒会長は忙しいよ。

「来年も、各国から専用機持ちですか…。」
 千冬姉と、武装教官の精鋭。
 生徒会のメンバーが集まっての会議で、来年も少なからず専用機持ちが来る事が、発表された。
 また、来るのかよ。
 瑞鶴の件を、嗅ぎ付けたのか?
 考えすぎかな?
 白式と紅椿か?
それとも、亡国企業に奪われるのを避けるために、現状、IS学園が最も安全と考えたのかな?
 千冬姉たち教官を合わせて、専用機持ちが合計20人。
 しかも、最新鋭機ばかり。
 大国でも歯が立たない程の軍事力を、持っているようなもんだからな。
 それが、理由か。
「それで、極めて異例なんですが。専用機持ちに関しては、3学期からIS学園で、入学まで、訓練を受けてもらう事になりました。」
 何だ。そりゃ?
 山田先生の言葉を聞いて、俺は一瞬理解不能になった。
 が、すぐに理由を理解した。
「つまり。各国ともそれだけ、神経過敏になっているわけですか?」
「そういう事だ。それから織斑。入学前の訓練は、お前が当たれ。」

……………………………………………………………………………………………。

 はー!?
 何で、そうなる!?

「織斑。今までの実績とお前の実力から、専用機持ちの母国が、委員会と学園に泣きついてきた。オルコットたちの実力の著しい向上に、最も貢献したのは、お前であることに変わりはない。それに、訓練プログラムの立案等に関して、二学期の自主訓練に関する資料を、習志野でお前の指導に当たった岩本一尉と成田一佐に見てもらったが、2人とも太鼓判を押していた。ある程度、授業に関しては自習してもらう事になるし、仕事や訓練もあるが、お前なら可能と、我々も判断した。大変ではあるが、やってもらう。」
 マジかよ…。
 自分達の代表候補ぐらい、自分達で守ってくれよ…。
 けど、ここで断ったら、今度は、俺に、泣きついてきそうだからな…。
 はっきり言って、想像したくない…。
 それに、見捨てるようでいい気もしない。
「解りました。全力を尽くします。」
「すまん。頼む。」
 千冬姉は、辛そうな表情だった…。

「各国の危惧は、理解できますが…。」
「また、一夏を道具にしてしまった…。情けないな…。教師としても…、姉としても…。生徒も…、たった1人の、大切な弟も守れない…。」
 本来なら、教師たちが、大人たちがしなければならないことを、一夏が代わりにやっている事が、多い。
 姉として、一夏が一人前になるまで、何があっても守り抜くと誓った千冬は、自分自身の不甲斐なさと、結局は、一夏を道具としている各国から守る事も出来ない事に、これ以上なく怒りを覚えるのと同時に、悔しさを覚えていた。
「カリキュラム作成に関しては、私たちもサポートに当たりませんか?」
 千冬の心を少しでも和らげようと、真耶が提案をする。
「ああ…。そうだな…。それ位なら…、力になれるな…。」
 和らぎはしたものの、千冬の中の怒りと悔しさは治まってはいなかった。

 ふ〜ん。
 各国の専用機持ちは、それなりに訓練はできているか。
 後は、瑞鶴の専任だな。
 体育の成績はいいが、それだけじゃな。
 習志野での訓練で、それなりに戦えるようになる事を、祈るしかないか。
 アメリカは、海兵隊で運用予定の新鋭第3世代。
 フィンランドは、最近完成したばかりの、初の国産第3世代。
 ギリシャは、まだ、第3世代は、開発できていないか。
 でも、コンセプトは面白いな。準第3世代ってとこか。
 この3つの国の専用機持ちは、それなりに訓練できているか。
 瑞鶴の方は、俺がだいぶ見ないと駄目だな。
 それを考慮して、カリキュラムを作るか。
 とにかく、3か月の間に、それなりに戦えるようにしないとな。

「驚いたわよ。一夏君が、来年入学予定の専用機持ちの、事前指導をするなんて。」
 楯無さんが酸辣湯麺とミニ天津丼の定食を食べながら、俺に話しかけてくる。
「俺も驚きましたけど、ここの所の事件を見ていると、不安も覚えるでしょうからね。何か、理解できますよ。」
 牛肉のオイスターソース炒め定食と、ミニ蟹玉を食べながら答える。
「とすると、育成カリキュラムも、手早く仕上げないとな。」
 ハンバーグ定食の大盛りを食べながら、ケイシー先輩が言う。
「もう。取り掛かってますよ。ちょっと、懸案事項はありますけど、セシリア達を指導した経験をフル動員して、きちんとやり遂げます。引き受けた以上はね。」
 政治屋は揃いも揃って気に食わないが、専用機持ちの子達は、家族がいる。例え、事情を知らされていなくても何かあったぐらいは、気づいている可能性は、それなりにあるだろう。
心配させたくはない。
 他の生徒が入学してくるまでに、それなりのレベルにしないとな。
「お前、本当、真面目だよな。何か、困った事があったら、言えよ。」
 ビーフシチューを食べながら、サファイア先輩が言う
「ええ。その時は、先輩たちの経験を、頼りにしてますよ。」
 技術は鍛錬で上回る事が出来ても、経験はやっぱり先輩たちが上だしな。
 その時は、そこから、アイデアを捻りだす。
 俺は、その方針でいた。

「一夏君、随分変わりましたよ。人間的にも丸くなって、どこか、成熟し始めたみたいですし。」
「少しは、子供っぽさが抜け始めたか。世話の焼ける奴だったが、負担も減りそうだな。」
 あらあら、素直じゃありませんね。
 織斑先生。
 嬉しいんでしょうけど、恥ずかしいんでしょうね。
 もう少し、一夏君の事では、素直になっていいと思うけど、教師という立場を、気にしてるんでしょうね。
「もし、よろしければ。世話を焼く必要のない方法を、お教えしますよ。」
「ほう?何だ。楯無。」
 簡単ですよ。織斑先生。
「私と結婚して、更識家の一員になる事です。両親も、一夏君を、すっかり気に入っていますし。一夏君の実力なら、更識の一族として、禍の種を多く摘み取れます。私が傍にいて支えますし。」
 さあ?どう答えるかしら。
「あの、朴念仁の唐変木を、どうやってその気にさせる?それに、私に劣る女に、一夏は渡さん。もう少し、自分を磨け。小娘。それではな。」
 あらら、まだ小娘なのか…。
 でも、一夏君を、その気にさせればいいのよね。
 だったら、アタックするだけよ。
 恋愛は、ルール無用のバトルなんですからね。

 よし、基礎的なカリキュラムは、これでいいな。
 まずは、基礎を固めないと、話にならない。
 その上で、個人戦闘の土台をしっかり固めて、最後に連携の基礎を固める。
 これで、入学後は、自主的に色々訓練ができる筈だ。
 さてと、中間報告に行くか。
 こういう方面は、山田先生や千冬姉たちの方がプロ。
 積極的に、サポートを頼んだ方がいいカリキュラムが作れる。
 千冬姉も、全面的にサポートしてくれると、言ってくれたしな。

「入学予定の専用機持ちが、予定より早く、IS学園に行くことになったわ。」
 スコールの表情は、苦虫をグロス単位で噛み潰したようになっている。
「織斑一夏が開発した、新型の専任もか?」
「ええ。」
 来年、IS学園に入学予定の専用機持ちは、4人。
 その中でも、最も優先度の高い目標は、一夏が開発した瑞鶴だった。
 セキュリティが堅固で、諜報員を送る事も出来ないが、間違いなく、最高の性能を持つのは、疑いなかった。
 故に、亡国企業は、優先度を最も高く設定していた。
 が、計画は立案前から、遂行が極めて困難になっていた。
 キャノンボールファストの事を考慮しても、日本に入国するに際して、万全の警備体制を敷くのは、疑いない。
 16歳とは思えない程、一夏が実務能力に長けていることを再認識し、スコールもエムも深い溜息をついた。
 まして、瑞鶴は、一夏が技術顧問を務める、芝崎インダストリー製である。
 日本国内となれば、最も移動は速い。
「こちらも準備が整うのは、もう少し先になるわね。多分、ドクターは、手出しをするわ。ちょうどいいから、新型の手並みを拝見しましょう。こちらが動くのは、準備をきちんと整えてからの方が、いいわ。でなければ、大火傷を被る。」
「そうだな。もはや、国家クラスの防衛力を備えるのが、IS学園。慎重に、事を運ぶべきか。ブルーティアーズの専任は、私でも、倒すのは相当に骨が折れる。」
 以前ならば、セシリアは歯牙にもかける必要がなかったが、2学期の自主訓練で、格段にレベルアップした今となっては、事態が違った。
 実力では、ほぼ互角。
 そう、見ていたのである

「いいですね。とても、よく、考え抜かれたカリキュラムです。オルコットさん達を指導した時の経験が、しっかり役に立っていますね。基礎は、これでしっかり固まりますね。」
 カリキュラム作成の中間報告で、千冬姉と山田先生に作成途中のカリキュラムの感想を聞いたが、合格点を貰えた。
 これから、核となる部分の作成に入るが、合格点を貰えて少し、ほっとした。
「ありがとうございます。全て作成が終わったら、また見ていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。」
「はい。あまり根を詰め過ぎずに、頑張ってくださいね。」
「いざとなったら、先輩たちの知恵を借りるつもりですから、大丈夫ですよ。失礼します。」
 さて、続きいくとするか。

「ちゃんと、上級生が見てくれてますし。一夏君も、上級生の力を借りるのに抵抗はないようですし、ほっとしました。一時は、どうなるかと思いましたから。」
 第四形態移行後の白式の、潜在的な性能。
 それを扱う自分が、誤った力の使い方をして、破壊の権化になるのではという恐怖感。
 そして、それを周囲に背負わせたくなくて、自分自身で何もかも背負い、押し潰されそうだった一夏を見て、真耶は気が気でなかった。
 何の手も差し伸べてやれない千冬は、その気持ちを表情に出せば、一夏が余計に苦しむことを知っており、それを出すまいとしていた。
 仮面の下で、千冬は自分の不甲斐なさに歯噛みをし。
 一夏は、目の前の試練を乗り越えようと、必死だった。
 それを、周囲の力を借りて乗り越えてから、一夏は、周囲の力を借りる事の大切さを悟り、最初から選択肢に入れている。

 如何に優秀とはいえ、まだ1年生。
 しかも、国際的にも極めて微妙な立場におり、外部顧問とはいえ、世界的企業の技術顧問として、様々なプロジェクトに携わり、既に多大な功績をあげている。
 それに加えて、来年入学予定の各国の専用機持ちの受け入れ態勢を、亡国企業の襲撃を考慮しつつ整え、指導の任につき、カリキュラムを作成する。
 常識的に考えて、無理だが、一夏は全てこなしている。
「背も伸びたようだしな。人間的にも成長したのだろう。とはいえ、一夏にばかり、任せてもいられん。こちらも受け入れ態勢を整えるぞ。いくら生徒会長とはいえ、1年に任せきりでは、物笑いの種だ。」
 千冬は、母国からの空路と、警備体制の中間報告に、目を通し始め、真耶と意見交換をし始めた。

 よし。
 日本に来るまでは、母国の専用機持ちに同行してもらって、しかる後に合流。
 警護側の数を増やして、リスクを無くそう。
 分散させるのも手だが、それぞれがどうしても手薄になる。
 瑞鶴は、国内だから、少し早めに来てもらうか。
 やりようは、いくらでもあるし、他国の専用機持ちの出発も、情報操作で、相手を攪乱させられる。
 セキュリティシステムは、さらに堅固にしているから、そう簡単には経路は解らないぜ。
 関連報告に目を通し終わってから、俺はカリキュラム作成に戻る。
 偶には、上級生の実習見学をしてみるのも、いいかな。
 後で、頼みにいって来よう。
 対抗戦や、キャノンボールファストの映像は、ライブラリにあるから見れるし、これもいい勉強になるはずだ。

「駄目だわ。前以上に、堅固で、巧妙だわ。」
 切り札は出せないが、直属の特殊部隊で、ISを展開する前に奪う計画が立てられないかと思って、情報を入手することを試みてみたが、前以上に堅固な一夏が構築したセキュリティシステムには、まるで歯が立たなかった。
 さらに、真実味を帯びた、多くの欺瞞情報に振り回され、結局、無駄骨に終わった。
「生徒会長になってからの経験で、こういった面が予想以上に成長している。ISでの戦い、個人での戦闘、さらに情報戦。どれをとっても、手の付けようがない。」
 エムもうんざりしたような、表情になる。
「これでは、ドクターが手出しをしても無駄ね。手玉に取られて、ゴーレムも回収されるのは、疑いないわ。改良から、スパイ網を更に洗い出されて、さらに窮地になる。」
 ブランデーをあおりながら、スコールは深い溜息をつく。
「こっちの準備を、続けるしかないわね。万全の態勢を整えて、作戦を開始するわ、ドクターが不要になったら、第二段階よ。」
「了解した。」

 終わった〜。
 授業、仕事、訓練、受け入れ態勢の整え等と並行してだが、カリキュラムの作成が終了した。
 先輩たちの授業の映像に千冬姉たちのアドバイスも、随分参考になったな。
 
 何はともあれ、職員室へと。

「問題ありませんね。本当にお疲れ様でした。受け入れ態勢も、警備体制も万全で、後は、専用機持ち達を無事学園に迎え入れて、終わりですね。」
 山田先生が、すごく嬉しそうに笑ってる。
 そういう顔してもらえると、嬉しいな。
「明後日は終業式だが、明日の朝の訓練が終わってから、念のため、フィジカルチェックを受けておけ。知らないうちに疲労がたまっていると、まずいだろう。」
 そうだな。それがいいな。
「解りました。それから、寮に戻る準備はできています。明後日は、先輩たちにお礼回りをするつもりです。」
「立つ鳥跡を濁さずか。そうだな。そうしておけ。いずれにせよ。ご苦労だった。今日は、ゆっくり休め。」
「はい。失礼します。」
 ちょっと早いけど、風呂入るかな。
 偶には、1人で、広い男用の大浴場を、満喫するか。

「本当に、よくやってくれましたね。来年の1年のカリキュラムとしても、十分に使えますよ。これ。」
 見直して、真耶は、一夏のカリキュラムのクオリティの高さに、改めて感心する。
「経験を、きちんとものにしたという事だろう。どういう進路に進むかは、本人次第だが、選択肢が増えるのはいい事だ。」
「そうですね。」
 真耶自身は、一夏が後進の育成に何らかの形で携わる事を、望んでいた。

「問題ないわね。少し、疲労が抜けきってない部分が見えるから、一応、点滴と並行して、活性化治療をしておくわ。年末まで、あちこちで訓練やら鍛錬をするんでしょう?疲れを残すのは、いい事じゃないから。」
 医務室で検査をした結果、特に問題はなかったが、念の為の処置を、先生は、スタッフの人に指示した。
 ベッドに寝て、点滴を投与されて、活性化治療用の機器が作動する。
 その間、俺は軽く仮眠を取った。
 性分なのか、俺は根を詰めてしまう傾向があるらしい。
 最近、行きつけのハーブティーの専門店があるから、ブレンドしてもらおう。

「今まで、お世話になりました。」
 終業式が終わった後、先輩たちに挨拶をした。
 本当に、いろいろ世話になったからな。
 どうしても、お礼を言いたかった。
「いいって。いいって。まったく、律儀な奴だな。」
 ケイシー先輩が、苦笑しながら俺を見る。
「また何かあったら、いつでもいらっしゃい。できる限りのことをするから。全員、進路は決まってるから、遠慮しなくていいのよ。」
 卯月先輩が、優しい笑顔で言ってくれる。
 いつも、デザートを持ってきてくれたり、本当にありがとうございました。
「ありがとうございます。では、これで。」
 俺は、荷物を持って、3年生の寮を出た。

 フレンチレストラン。
 シャトー・ド・ジェム(宝石の城)。
 以前、冬菊の親父さんとの会食で来たレストランで、イブのディナーはお勧めだと聞いていたので、迷わずここにした。
 ちょうど、近くに、ドレスを買える店もあったしな。
 俺は、タキシード。
 最近、仕事柄、こういう高級店での会食やら接待が増えて、すっかり慣れた。
 こういう時には、ちょうどいいかな。

「似合うぜ。千冬姉。すいません。後は、アクセサリーやバッグ等を、見せていただけませんか。」
「既に、準備は整っております。」
 ドレスを選んでいる間に、既に準備はできたいたらしい。

「とても、お似合いですわ。」
 今、私が着ているのは、黒のドレス。
 以前に、一夏が、亡国企業に誘拐されてからは、二度と同じ事態がないように、私が服を買いに行く時は連れて行ったので、こういった物を見立てるのは、妙にうまい。
 別に教育したつもりは、ない。
 ただ、一夏が白式の専用機持ちになった後に、身だしなみにも注意するように言って、ファッション誌やサイトにも目を通すように言い、服を買う為の金も、一夏の口座に振り込んではいたが、今回のイブのディナーは、純粋に一夏の収入からだ。
 外部顧問とはいえ、世界的大企業である芝崎インダストリーの技術顧問。
 IS関係だけでなく、身に着けた技術を応用して、医療を始めとして、さまざまなプロジェクトに携わっている。
 最近、開発した、ISの技術をフィードバックした、作業機器は、国連のEOSとは次元の違う、基本性能、拡張性、汎用性を生徒たちの前で見せた。
 既に、国内では、普及の為の様々な準備が進められていたが、一気に進んでいる。
 各国も、導入のための交渉を、来年から始めるようだ。
 そういった経緯で、一夏の収入は相当な物になる。
 個人の特許もあるので、それだけでも、今後働く必要がないくらいだ。
 今回のディナーも、1人当たり3万円は下らないが、一夏にとっては問題ない。
 正直、驚いたな。
 いつの間に、高級ドレスに、アクセサリーの類をプレゼントして、高級フレンチレストランでのディナーに女を連れていけるほどの、甲斐性ができたのやら。
 ISを動かせると知った時や、私ですら大きく凌ぐ適性を持っていると知った時にも驚いたがな。
そして、世界でも有数の天才科学者。
 特に、IS関連技術で一夏を凌ぐのは、師である束ぐらいだろう。
 世の中、何が起こるか解らんな。
 あの、わんぱくだった一夏が、いつの間にやら、男の色気を醸し出すようになっている。
 第三者の視点から見ても、つくづくそう思うから、いつも騒いでいる連中から見れば、今の姿を見たらどうなるのやら。
 それに、何やら、プレゼントも用意しているらしいからな。

「織斑千冬さんに、弟君か。」
「初代ブリュンヒルデに、世界でただ1人ISを動かせる男性にして、実力は世界でも5本の指に入り、そして、天才科学者。」
「絵になる姉弟ですな。」
 エスコートしている一夏と、されている私。
 腕を組んでエスコートしている姿は、姉の私から見ても、正直、様になっている
 周囲が騒がしいな。やれやれ。

「メリークリスマス。千冬姉。」
「ああ。メリークリスマス。一夏。」
 高級シャンパンの代表格、ドン・ペリニョンが食前酒として出される。
 ヴィンテージものだな。
 飲む姿も、すっかり様になっている。
 今月で16歳になったから飲酒もできるようになり、仕事を通じての会食や接待も増えたからか、すっかり場馴れしているな。
 おまけに、周囲の女性の視線は、一夏に釘づけか。
 品の良いタキシードを見事に着こなして、整えられた長い黒髪は、とても艶やかだ。
 ここで、女を惚れさせるなよ。一夏。
 一層、周囲が、騒がしくなるからな。

 ふむ。さすがにいい味だ。
 しかし、まさか、一夏にご馳走される日が、来るとはな。
 両親が私たちを捨ててから、私が外に出て働くようになって、もう10年といったところか…。
 背は、私を追い越して、実力も日に日に伸びている。
 私を追い抜く日は、予想以上に早いかもしれんな。
 私の背中を追いかけてきた、子供の一夏がな…。
 その内に、私が一夏の背中を見ることになるか…。
 嬉しいが、複雑な気分だな。

「これ。」
 一夏が、プレゼント用の包装をされた箱を2つばかり取り出す。
 開けてみると、女性用の高級時計と、アレクサンドライトのネックレス。
 アレクサンドライトは、光の当たり具合で色が変わる。
 確か、この変わり方は、かなり高値で取引されるやつだな。
「千冬姉、もうちょっと、アクセサリーとか持っててもいいと思ってさ。似合いそうなのを選んでみた。」
 私は、あまりこういう物を、買おうとしないからな。
 服も、最近は、一夏が見立てる場合がほとんどだ。
 私が持っている服は、全部頭に入っているだろうから、似合うデザインはすぐに思い浮かぶのだろう。
「すまんな。大事に、使わせてもらおう。」
 初めての、弟からの、クリスマスプレゼントか…。
「これは、私からだ。もう少し、自分を引き立たせる服を、持っておけよ。」
 家事全般と家計を預かってきた一夏は、無駄遣いは絶対にしない。
 それは、現在も同じだ。
 資料には、大金を投入するが、服は、少々抑え目にしているように思える。
 なら、服にももっと、良い物を選ばせるきっかけを、作ればいい。
 一夏の誕生石は、トルコ石、ジルコン、タンザナイト、ラピスラズリ。
 トルコ石を使ったネクタイピンに、タンザナイトのカフスボタン。
 どちらも、石は最高級の物を使った、オーダーメイト品だ。
 それに、ジルコンとラピスラズリを使った、ペンダント。
 お前も思春期なんだから、もう少し、恋愛をしろ。
 誰か決めんと、更なる地獄が待ってるからな。

「ありがとう。仕事の時とか、大事に使うよ。」
「お互いにな。」
 大事に使わせてもらうよ。一夏。

「ああ。ワインはどうする?」
「お前に、任せる。」
「了解。」
 もう少し、服に気を使えって事か。
 結構、気を使ってるんだぜ?
 カフスボタン付きの、シャツか。
 今度、見に行くか。
 それに、ネクタイにスーツもな。
 あとは、カジュアル用の服も。
 ようやく、少しは恩返しできた気がする。
 別に、高級レストランに連れて行くのが、そういう事じゃないけど、弟としては、せめてこういう機会は、姉さんにご馳走したいしな。
 今まで、苦労を掛けてばっかだったから。
 ワインは、これにするか。
 俺は、すぐにオーダーする。

 シャトーマルゴーの1981年物。
 前に、年は違うので飲んだら、凄く美味かった。
 他にも、ヴィンテージワインはいろいろ飲んだが、俺はこれが好きだ。
 メインの鹿肉料理がきたので、改めて乾杯だ。

 次々と、料理が運ばれてくる。
 千冬姉も、満足そうだな。
 選んでよかったよ。
 それにしても、周囲のオッサン達が、千冬姉に釘づけだ。
 ドレス姿は似合うし、スタイルもいいしな。
 千冬姉の現役時は、国家代表や代表候補はモデル等の活動は、まだしていなかったが、もししてたら、どうなったのかな?
 興味あるな。
 俺は、もう、やらないけどな。
 一度で、もう十分。
 疲れるから。

「カップルではないが、容姿端麗な姉弟というのも、絵になりますな。」
 うん?五木マテリアルの、会長か。
 仕事の関係で、知り合った人だ。
 苦労を重ねて、一代で町工場から、日本有数の大企業を作り上げた人だ。
 鉄鋼、セラミックス、炭素繊維等、世界各国でも、シェアは少なくない。
 大企業の会長とは思えない程、素朴な人柄の持ち主だ。
「五木会長も、こちらでイブのディナーを?」
「ええ。まあ。家内とね。」
 品のいい感じの老婦人が、会釈をしてくる。
 無論、俺達もする。
「織斑顧問は、姉君とですか。」
「ええ。今まで、苦労をかけっぱなしでしたから。こういう時ぐらいはと、思いまして。」
「そうですか。それは良かったですね。」
「ええ。すいません。ちょっと失礼。」
 要件は口にしない。
 トイレだからな。

「お初にお目にかかります。五木と申します。」
「織斑です。弟が、お世話になっております。」
 五木と千冬が、互いに自己紹介をする。
「いやいや。弟君には、以前に力になっていただきましてな。その縁で、芝崎インダストリーとは、ビジネスをしていますが、実に素晴らしい技術者ですね。そして、ビジネスマンとしての実務能力も高い。ISの世界にどこまで関わるかは解りませんが、できれば、もっと、広い世界で技術を活かしてもらいたいと、思っているのです。それだけの才覚と見識を持っていますから。ご存知ですか?わが社には、何とか、弟君を卒業後に引き抜こうとしている人間が、多いのですよ。能力を、非常に高く評価されている。他社も同様。人間性に惹かれている、業界人も多い。まあ、少々、恋心には疎いようですが…。」
 困った孫を見るような笑みを、五木は浮かべる。
 キャノンボールファストの時、楯無から、一夏が凄まじい唐変木である事を語られ、中継で流れている。
「困ったものです…。何故、ああなのやら。」
 千冬が、溜息をつく。
「ですが、立派に成長しましたな。若くして、一家の大黒柱になりながら、弟君を育てていくのは、楽ではなかったはず。ですが、その苦労は報われた。私は、そう思っていますよ。まだ、16だが、10歳以上歳が離れている人間と比較しても、彼以上はそういますまい。」
「いえ。まだまだ、未熟者です。」
 突然、一夏を高く評価されて、どう反応していいか解らずに、千冬は辛口の評価になる。
「神無月グループのご令嬢も、何とか気を引こうと頑張っておられるとか。ご両親も彼をすっかり気に入って、できれば、婿にして、後を継がせたいと考えています。その内に、挨拶に来るかもしれませんな。おっと、せっかくの姉弟水入らずを、邪魔してしまいましたな。いずれ、ゆっくりお話をしたいものです。では。」
 そう言って、五木は席に戻る。

『あの一夏がな。』
 五木マテリアル程の大企業の会長からも、高く評価されていることを知り、千冬も驚くが、以前に亡国企業の襲撃から助けた冬菊の実家が、一夏を婿にして、後を継がせようとしているという話は、予想を超えていた。
 ただの技術顧問としてではなく、すでに1人のビジネスマンとして、多くの仕事をしている一夏には、経済界に多くの知人がいることを聞いてはいたが、そこまでとは、千冬も思っていなかった。
『婿か…。』
 一夏も、生涯独身ではないだろう。
 いずれ、自分の元を離れるのは理解しているし、そうでなくては困る。
 だが、その反面、千冬は寂しさを感じてもいた。

「一夏さん。」
「冬菊。」
 ディナーを終えて、手配していた迎えの車に向かう途中に、俺たちは冬菊と会った。
 あっ、親父さんとお袋さんもか。
「家族で、イブを楽しんでたのか?」
「はい…。」
 冬菊は、俺と会ってから頬に赤みがさしている。
 風邪か?
 早く治せよ。
「綺麗だな。ドレス。凄く似合う。」
 今日の冬菊は白のドレスだが、清純さを引き立てて、凄く似合っている。
「いえ。そんな。一夏さんこそ、とてもお似合いです。」
 一層、赤くなった。
 本当に大丈夫か?
 帰ったら、暖まって早く寝ろよ。
「じゃあ。これで。メリークリスマス。」
 そう言って、冬菊の親父さんとお袋さんとで話をしていた千冬姉と一緒に、家に帰る。

「一夏。年末は習志野と湯殿山以外には、予定はないのか?」
 家に帰って着替えた後、千冬姉が俺に聞いてきた。
「いや。束さんに、ISを2機。開発を頼まれてる。設計は、以前からしてたのがあるから、今年である程度パーツは作っておきたい。何でも、各国がまた俺にちょっかい掛けないように、使うらしいぜ。委員会直属のパイロットの専用機になるんだと。」
 国家には帰属しないから、それが救いだな。
 もう、会社とは、話がついているらしい。
 その勤勉さを、紅椿の為に発揮してくれよ。
 束さん。
「成程。IS先進国では、開発不可能な技術を使うのか。」
「まあな。どこかの国家で使われるやつだったら、使わなかった技術だな。はっきりいってヤバいし。」
 冗談抜きに、俺の新技術だけで開発したISは他国に帰属させるのは、まずい。
 それこそ、外交関係がおかしくなる。
「あの溝鼠共。それでも、お前をあきらめないかもしれん。注意しろよ。ところで一夏。」
「うん?何だ。」
「お前、卒業したらどうする?進学か、正式に芝崎の人間になるのか?それとも、他社に行くのか?」
 何だよ。いきなり。
 どうするって、言われてもな…。
 う〜ん。
「今は、少しでも千冬姉との差を縮めて、大切な人達を、もっと守れるようになるのが、最優先事項だしな。先の事は、それからだよ。ただ…。」
「うん?」
「色んな人たちの、役に立てる物を作れるようになりたいっていうのも、あるんだよな。今まで勉強してきたことが、色々、役に立ってる。その幅を広げてみたいとも思うんだ。」
 初めは、相談を持ちかけられた医療器具から始まって、いろんな物に携わって、そして、それは増えている。
 これからも、それが続くといいな。
 そんな風に思う、俺もいる。
「いずれにせよ。選択肢は多く持っておけ。それから、唐変木は直せ。これ以上厄介ごとが増えるのは、正直、かなわん。」
 なんだよ?それ。
 俺、普通だっつーの!
「じゃあ、俺、寝る。束さんからの依頼については、後で千冬姉にも、束さんから連絡が行くと思うぜ。」
「解った。」

 初めて、千冬姉に何かできたイブだったな。
 頑張ってきた、甲斐があった。
 けど…。
 新しく組んだ、防諜機能を更に強化した端末を起動させて、束さんからのメールを読む。
 そこには、ある事が書いてあった。

「コアは自分で作ってね。入学前に理論は教えてるし、今のいっくんなら、問題ないでしょ。専任になる人の、パーソナルデータを添付しておくから、その人に最適な調整をするんだよ。」
 ISのコアは、束さんしか作れない。
 それが、常識になっている。
 だが、理論は全て、入学前に叩き込まれた。
 そして、白式の改良や、フラグメントマップの解析。
 ゴーレムの、コアもどきの解析等で積んだ経験で、完全に俺の物になった。
 専任に、最適なコアになる調整もできる。
 束さんは、知ってたんだな。
 いや、俺がコアを作れるようになる時期を、予測してたんだ。
 この事は、誰にも言えない。
 言えても、千冬姉だけだな…。
 束さんが言うかもしれないが、十中八九、千冬姉は知らない振りをしてるだろう。
 とにかく、依頼は依頼だ。
 明日と明後日は、時間があるから、ある程度進めるつもりでいる。
 とにかく寝よう。
 なんせ、3学期迄に作らないと、いけないしな。
 おまけに、3学期からは、入学する専用機持ちの、事前訓練が始まる。
 とにかく、忙しいな。俺は。

後書き
2学期が終了です。
しかしながら、3学期からは思いもよらぬ仕事が始まります。
その準備をして、お世話になった3年生達にお礼をして、一夏の2学期は終了します。
そして、今回のメインイベントである、一夏と千冬の姉弟水入らずのクリスマス。
ドレス、アクセサリー、高級フレンチに、高級ヴィンテージワインetc。
全て、一夏の収入から。
今回は、千冬の視点も入れています。
自分が知らない一夏の周辺の事に、さすがに驚いていますが、寂しさや戸惑いも。
今までの事を考えると、ある意味、当然ですけどね。
でも、嬉しい事も事実です。
ですが、そればかりではありません。
周囲に知れたら、大変な事も判明しました。




IS〈インフィニット・ストラトス〉 8 (オーバーラップ文庫)
オーバーラップ
2013-04-24
弓弦イズル

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by IS〈インフィニット・ストラトス〉 8 (オーバーラップ文庫) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



ワインの基礎知識―知りたいことが初歩から学べるハンドブック
新星出版社
若生 ゆき絵

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ワインの基礎知識―知りたいことが初歩から学べるハンドブック の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

目次へ戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 5
面白い 面白い 面白い 面白い
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ヨルムンガンドのss楽しませて頂きました!
更新頑張ってください!
あっぽー
2013/05/26 02:28
あっぽーさん。
コメントありがとうございます。

>ヨルムンガンドのss楽しませて頂きました!
 時間が無くて、更新もままなりませんが、
 少しずつ、続きを書いています。
 できる限り早く、再開するべく頑張ってい
 ますので、お待ちいただければ幸いです。
CIC担当
2013/06/03 21:43

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第52話 姉弟のイブ cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる