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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第45話 一夏の苦悩。周囲の想い。

<<   作成日時 : 2013/04/06 22:41   >>

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 う〜ん。
 なんで、こうなったんだろう。
 食堂で食事をする俺の周囲は、女子生徒ばかり。
 それは変わらない。
 だが、リボンの色は赤。
 つまり、3年生の寮である。
 
「一夏君。登校しましょう。」
「行くぞ。織斑。」
「3年の寮は、一番学校に近いからな。ラッキーだぞ。」
 俺の世話役という名目で、楯無さんとサファイア先輩がいる。
 どうなっているんだか、さっぱり解らない。

「織斑。冬期休暇まで、3年生の寮で生活してもらう。」
 いきなりそう言われたのが、昨日。
 生徒指導室でだ。
 何かしたかと思って、戦々恐々としながら行ったが、理解が出来なくて呆けてしまった。
「あの…、どういう意味か、解らないんですが…。」
「言葉通りだ。お前は、周囲が年長者だけの環境で過ごさせる経験が、必要だと、思ったのでな。サポートで楯無と、サファイアも行かせる。ちょうど空いている部屋があるので、楯無はお前と同じ部屋。サファイアは隣の部屋だ。夕食後、部屋に戻ったらすぐに荷物をまとめろ。いいな。」
 いや。一方的に言われても、さっぱり理解できない。
 そもそも、何で、周囲が先輩だらけの環境で過ごさせる必要があるのかが、理解できない。
「理解できないという顔を、しているな。理由は行けばわかる。いいな。確かに言ったぞ。」
 千冬姉の言う事には、逆らえないしな…。
 そういうわけで、夕食後、俺は3年生の寮に移った。

「えと。冬休みまで、よろしくお願いします。」
 俺は、楯無さんとサファイア先輩に、挨拶をした。
 お世話になるんだから、こういうところはきちんとしたい。
「そう、固くならないでいいわよ。要するに、短期間のルームメイトでしょ。こちらこそよろしくね。何かあったら、遠慮なく言ってね。」
「あたしもだ。先輩として、それなりに相談に乗れるしな。」
「ありがとうございます。それじゃあ、俺、鍛錬に行きますから。」
 ISスーツ、国親、槍、トレーニング器具を持って、俺は部屋を出る。
 すると、先輩達が、部屋に中に倒れこんでくる。
 ギャグ漫画みたいだな。
 まあ。いい。
 鍛錬に行こう。

「このっ!!少しは、当たりやがれ!!」
 ダリルがケルベロスファングで、一夏を狙うが、かすりもしない。
 散弾とスラッグ弾をかなりランダムで発射しているが、それでも、一夏はタイミングを読んでいるのか悉くかわして、白銀の荷電粒子砲で反撃して、確実にシールドを削っていく。
「これならどうだ!?」
 フォルテが、ダーラマランで一夏の背後を取るが、それも回避され、阿頼耶識と阿摩羅識の空裂をまともに喰らい、さらに接近されて、連撃を喰らって、シールドエネルギーをゼロにされる。

 一夏は八竜をダリルに向かって、全弾発射すると、式神を12基射出して、楯無に向かう。
 大型ランスを近接兵装にするミステリアス・レイディだが、第3世代と第5世代とでは、根本的なパワーが違う。
 無論、一夏もその点をわきまえて、性能を抑えて戦っているが、普段からの鍛え方が違うので、筋力に大きな差がある。
 さらに、槍術の技量でも差がある。
 この2つが原因で、一方的な展開になる。
 式神からの攻撃は、水のヴェールで何とか防いでいるが、近接戦闘になれば、まるで話にならない。
 やがて、エネルギーブレードを展開した一夏は、ミステリアス・レイディのシールドエネルギーを0にする。
 残ったダリルは、八竜で少なからずダメージを負ったが、ドールプレイヤーと、自らのCQCの技量を頼りに、一夏に勝負を挑む。無論話にならずに、敗北した。

「3年生最強と2年生の専用機持ち2人を相手に、僅か5分32秒。」
 オペレーティングルームで、真耶は呆然としていた。
「その気になれば、半分以下の時間でも、終わらせた。今の一夏は、性能を相当に抑えたうえで、戦っている。基本スペックが、違いすぎるからな。さらに、それを差し引いても、技量もパワーも差が歴然としている。正直に言って、今の一夏を苦戦させられるのは、武装教官の精鋭全てと、私、ブッフバルト先生だけだ。ISを起動させることができると解り、IS戦闘に関してあらゆる知識と技術を、叩き込まれ、入学後も、厳しい鍛錬を続けてきた結果が、これだ。尤も鍛錬の方は、今は、抑えさせているが、それでも、無意識にどうすれば自分の技量を上げられるかを模索し、悟り、実行している。今は、特にそうだ。どんなことにも揺るがず、屈しない自分を作り上げるためにな…。」
 そういった千冬の表情は、人形の様だった。
 今、一夏は、今までにない困難の前で、苦悩している。
 そして、それに何の手を差し伸べてやれない千冬は、さらに苦悩していた。
 だが、千冬は、学園の不測の事態では、最高指揮官となる。
 それ故に、苦悩している姿を他人には見せるわけにはいかなかったし、何より一夏に見せて、罪悪感まで背負わせるわけにはいかないと、考えていた。

「織斑君。その槍、持たせてもらっていいかな。」
 先輩の1人が、俺の槍に興味を持って聞いてくる。
「いいですけど、気を付けてくださいね。重いですから。」
「大丈夫。私だって鍛えてるし…。きゃっ!」
 だから、重いって言いましたよ。
「織斑君。これ、重さどれくらい?」
 一緒にいた先輩が、驚いて聞いてくる。
「1貫3斤。だいたい、5.55kgですね。」
「そんなの、片手で振り回せるの!?」
「鍛えれば、やれますよ。ちなみに今は両手両足に、軍用の特殊な訓練器具をつけてますけど。両手両足に、50kgの重りをぶら下げてるようなものですね。」
 要は、どれだけ努力するかだ。
 俺だって、初めから、これを片手で、自由自在に振り回せるようになった訳じゃない。
 基礎トレーニングを欠かさずやって、筋肉を鍛えてきたからできる。
「じゃあ、そっちの短いのは。」
「5斤10両ですから、だいたい、3.38kgですね。じゃあ、俺、シャワー浴びてから、夕食食べますんで、失礼します。」
 俺は、先輩たちに一礼して、ロッカーに行く。

「おい。織斑。お前に勝つ方法はないのかよ?」
 ご飯に、わかめとじゃがいもの味噌汁、アジの開きに沢庵の夕食を食べていると、ケイシー先輩が、俺に聞いてくる。
「毎日、トレーニングを欠かさないことですかね。習志野にいた頃から、そうやって実力を培ってきましたから。」
 簡単に、強くなれる方法はない。
 強さを手に入れるには、相応の対価がいる。
 努力という名の、対価が。
 求める強さに比例して、たくさん努力しないと強くなれない。
 人間は、そういう生き物だ。
 俺は、今までの武術や剣術の修業に日々の鍛錬から、答えを得た。
 
「織斑君。ちょっと量が足りないよ。唯でさえ、他の人より訓練が厳しいんだから、もっと食べないと。」
 先輩の1人が、心配そうに俺に話しかけてくる。
「ありがとうございます。でも、多すぎる夕食は、体によくありませんから。」
 夜は、体の代謝の関係で、エネルギー消費量が少ないから、俺は量を抑えている。
「それは解る。でも、織斑君の場合は、訓練を考慮すると明らかに少ないわ。これ。私なりに必要なカロリーに関して、資料を作ってみたから、参考にして。健康に気を使うのはいいことだけど、自分の状態を、きちんと把握してからよ。たしか、研究とイメージトレーニングもするのよね?」
 確認するように、俺に聞いてくる。
「はい。今、仕事の関係で、やってることがありますから。」
「じゃあ、後で、カロリーを控えめにした甘いものを差し入れに行くわね。目にいいものを使って。」
 そう言って、その先輩は何にするかを考えながら、自分の部屋に戻った。

「良かったな。遠藤は、料理上手だから。美味いデザートに、ありつけるぞ。」
「はあ…。でも、何で、ですか?よく解らないんですけど。」
 歓迎のつもりかな?
 でも、入学してもう、8か月。
 必要があるとも、思えない。
 ケイシー先輩を通じて、それなりに知り合った先輩もいる。
 あれ?先輩の1人が、大きなため息をつく。
「まったく、しょうがない子ね。君は。ルックスも頭も性格もいいけど、こういう所は、からきしなんだから。それとも、目の前にある事を片付けることで、気持ちに余裕がないの?言わなくても、あなたがすごく悩んで、苦しんでいることぐらい、この学園の人間は、皆、知っているの。解る?みんな、君の事が心配なんだよ。」
 怒ったような表情で、俺に言う。
「それについては、お風呂の時にゆっくり話すわ。肩までつかってね。」
 へ?
「俺、部屋の風呂を使いますけど。」
「私たちと入るのは、嫌?」
「じゃなくて、まずいですよ。それ。色々。」
「温泉には、混浴もあるんだから、それだと思いなさい。それに、今の君は、子供と変わらない。下着姿も裸も、どっちも見られたって、恥ずかしいとも思わないわよ。そうでない時以上にね。とにかく。ここにいる間は、お風呂は一緒に入るの。いいわね?3年生全員と、サファイアさんと楯無さんで決めたことだから。遠慮しなくてもいいのよ。先生と理事長の許可も、貰ってるわ。」
 そういう問題じゃないと言いたかったが、先輩の表情はそれを許さない気がしたので、なんでか言えなかった。
 まあいい。早く上がれば、済むだけだし。

「織斑君。ドイツから荷物が届いていますよ。」
 山田先生から、知らせが来る。
 お。来たか。
「すぐに取りに行きます。それと、射撃訓練場の使用許可をいただきたいのですが?」
「解りました。但し、就寝時間は守ってくださいね。」
「はい。ありがとうございます。と、いう訳で、俺は、今日は先輩方とは、入浴時間がずれます。では、これで。」
 早速、荷物を取りに行く。

 うわあ。ゴツイなあ。
 さすがに、弾が弾だからな。
 H&K社製のオートマチック拳銃、HK45をベースに開発されたHK454CT。
 俺が、H&K社の銃を愛用していることで相当な宣伝効果があり、さらに技術力の高さをアピールして、弾みをつけたいらしい。
 その為に開発されたのが、通常は、リボルバー式の拳銃で使う、強力なマグナム弾454カスールを使用する、この拳銃だ。
 購入してから、異例のスピードと言ってもいい。
 それこそ、寝る間も惜しんで、開発に没頭したんだろうな。
 とりあえず、試してみるか。
 シューティンググラスを掛けて、ヘッドフォンを嵌める。
 手元の端末を操作すると、ターゲットが出てくる。
 まずは、基本に忠実な姿勢で試す。
 454カスールはリボルバーで使用する弾丸の中でも、威力はトップクラス。はっきり言って、オートマチック拳銃で使うような弾丸じゃない。
 40S&Wとは、格が違う。
 それでも、M500に比べれば、ましだけどな。
 装弾数は12発と、このクラスとしては、装弾数は多い。
 デザートイーグルでも、50AEだと、8発。
 それに比べれば、破格と言ってもいいだろう。
 全部、ど真ん中。
 後、2マグ今の体勢で試して、最後は片手撃ちで、2マグを撃ち尽くしてみよう。
 それにしても、発射音が凄いな。
 ちょっとした大砲でも、ぶっ放しているみたいだ。
 メインウェポンとはいえ、これを使わないですむ事を祈るよ。
 何しろ、これは対人用というより、明らかに狩猟用。
 巨大な熊等の獰猛な動物から、自分を守るための拳銃。
 人に向けて撃ったら、どうなるか見当もつかない。
 後は、亡国企業次第か…。
 情報が入ってこないのは、もどかしいよな。

「ケイシー先輩。」
 射撃訓練場の外では、ケイシー先輩が風呂に行く支度をして待っていた。
「行くぞ。皆、待ってる。」
 そう言って、俺を引っ張って、大浴場に行く。
 というより、女子風呂だ。
 周囲は、俺の事をずっと待っていたらしく、すぐに服を脱ぎ始める。
 本当に、恥ずかしがらないな…。
 こうなったら、やけだ。
 さっさと上がろう。

「たまにはいいもんだろ?こうして、大人数と風呂入るのも。」
 サファイア先輩が、話しかけてくる。
 良くないですよ。
 俺以外は、全員裸。
 しかも、隠そうともしないし、恥ずかしがろうともしない。
 とにかく、早く上がろう。
 俺は、すぐに体を洗い始める。
「背中流してあげる。あ、私。千春。葉山千春。少しの間だけど、よろしくね。それにしても、やっぱり、筋肉がしっかりついてるわね。普段の鍛錬のたまものかな。」
 それはどうも。
「でも、何ていうか。しなやかよね。筋骨隆々じゃなくて、こう、適度に脂肪がついて、すごく艶めかしいというか、色気があるもの。」
 他の先輩が、俺の体を見てうっとりする。
 男の裸見て、うっとりしないでください…。
 この学園に入ってから、こういう時は、大抵、死亡フラグが点灯するので。
「けど。今の織斑君は、中身は苦しみと悩みだらけね。しかも、それを一人だけで、何とかしようとしている…。」
 そんなことないです…。
 考えすぎですよ…。

「隠そうとしても、駄目。私たちは、ISに関する事では、あなたの足元にも及ばないけど、人生経験はあるんだから。後輩が悩んでいれば、すぐに解る。先輩っていうのは、そういうものよ。あなたの場合、IS委員会の規制もあって、人に言えるのは限られていることは、皆、よく知っている。それでも、言える範囲で、悩みを相談するくらいは、しなさい。何でだか、解る?」
「いえ…。」
 ある程度は、解ります。
 でも、今回の事は、駄目なんです。
 俺自身が、1人で解決しないと、駄目なんです。
 だから、聞かないでください。
「これ以上、お姉さんを。織斑先生を、悲しませたいの?」
 先輩のその言葉が、俺の心臓に、ぐさりと突き刺さる気がした。

 一夏は、うなだれたまま、何も言えなくなった。
 それは、一夏が、決してしたくない事…。
 それは、一夏が、決してしてはならないと、自分に言い聞かせてきた事…。
 故に、その事実を突きつけられると、一夏は動くことすらできなくなった…。

「織斑…。」
 ダリルが覗き込んだ一夏の表情は、今まで一度も見たことがないような、苦しそうな表情だった。
 一夏と千冬が、両親に捨てられたことはIS学園の生徒は知っている。
 だからこそ、一夏が、千冬を悲しませたり、苦しませたりしたくないことは、解っていたつもりだった。
 それでも、尚、一夏の表情は、見るに堪えない物だった。

「悪い…。そんな顔させるつもりは、なかった。私たちも、軽率だったな。ただ、これだけは、頭に入れておいてくれ。お前が、悩んだり、苦しんだり、悲しんでいる時は、その事で、似た様に、悩んだり、苦しんだり、悲しんだりしている人がいる。確かに、最後には、お前が乗り越えなきゃならない。でもな、誰かの助けを借りちゃいけないなんて、ルールは、世の中にはないぞ。お前はさ。学年別対抗戦の時から、この学園の皆を守るために、いつも必死だったろ?本当は、先輩である私たちが、お前達後輩を、守ってやらないといけないのに、お前にいろいろ背負わせちまってさ。結構、辛かったりするんだぜ。だから、悩んでる時には、ぐちこぼす程度でもいいから、言いにこい。できることがあれば、力になる。お前、1人じゃないだろ?先生たちもいるし。その事を、もう少し、意識していろよ。何でもかんでも、お前に背負わせていると、罪悪感が、のしかかってくるしさ。」
「ダリルの言う通りよ。少しは、私たちを頼って欲しい。このまま、後輩の悩み一つ、どうにかできないまま、卒業しました。なんていうのは、私たちも嫌なの。強くなろうとするのは、いい。私たちも、入学してから、一生懸命頑張ってきたから。でも、その結果、1人ぼっちにならないで。それは、織斑君にとって、大切な人たちをとても悲しませるわ。いきなりは難しいだろうから、少しずつでいい。人に悩みを、打ち明けられるように、なってくれると、嬉しい。」

 そっか…。
 俺、気づかないうちに、いろんな人に迷惑かけてたんだな…。
 これじゃあ、本末転倒だ。
 俺が鍛錬を積んできたのは、そういう事を無くすためでもあったのにな…。
 でも、どうしたらいいのか、解らない…。

「すいません…。迷惑をかけて…。」
 この程度しか、言えない…。
 情けないな…。俺…。
「うん…。」
 サファイア先輩が、後ろから優しく抱きしめてくる。
 それから、楯無さんに髪を洗ってもらって、風呂から上がった。

 風呂から上がった俺は、楯無さんに髪を梳いて貰ってから、ISの設計をしていた。
 やっているのは2つ。
 芝崎インダストリー製としてやっているのと、俺が独自にやっているのだ。
 後者は、世に出すと相当にまずいので、作る気はない。
 それから、白式の各部の改修もやる気でいる。
 奇妙なようだが、それが白式の抑止力になる。
 基本性能で相手を圧倒できれば、それ以外の機能を、使う必要がないからな。
 すでに、改修案は練っているので最終確認が終われば、明日からでも作業を始めるつもりだ。
 ちょうど、明日は軽いトレーニングの日だから、内容を変更して時間を取ればいい。
 よし。仕事の方は終わった。
 後は、専任操縦者が、見つかるかどうかだな。

「織斑君。一休みしましょう。」
 遠藤先輩が、バスケットを持って、部屋に来た。
 この匂い、ブルーベリーか。
「夜もお仕事とか研究してると、目が疲れるから、ブルーベリーとヨーグルトのチーズケーキに、ブルーベリーのお茶ね。」
 美味しそうだな。
「はい。どうぞ。」
「ありがとうございます。いただきます。」
 うん。美味い。
 甘さは控えめだけど、ブルーベリーの香りが口の中いっぱいに広がって、美味い。
 お茶も美味いな。
 今度、自分用にこういったお茶も買うかな。
 後で、ネットで検索してみよう。
 仕事中は、コーヒーばっかだし。
「その…、どう…?美味しい…?」
 先輩が、恐る恐る聞いてくる
「美味しいですよ。ブルーベリーの香りがすごく爽やかで、甘さは控えめだけど、ブルーベリーが前に出過ぎてないし。遠藤先輩、お料理上手なんですね。」
 何でそんなに、緊張してるんだろうか?
「良かった。文化祭で、織斑君のレシピで作ったお菓子、物凄く美味しかったから、不安だったんだ。料理も、すごく上手だって聞いてたから…。」
「俺の家は、家事全般、俺が担当してて小学校の頃から、お菓子も、いろいろ作っていましたからね。」
 偶に、甘いものが食べたそうにしていた千冬姉の為に、お菓子の作り方も覚えて、千冬姉が喜んでくれたのが嬉しかったから、色々な国のお菓子も覚えた。
 IS学園に入ってからは、さらに広がったな。

「織斑君。一つだけ、お願いしていいかな?」
 ケーキを食べ終わった後、遠藤先輩が話しかけてくる。
「何でしょうか?」
 何か、思い詰めてるな。
 何か、あったのか?
「辛い時は、辛いって言って。苦しい時は、苦しいって言って。悲しい時は、悲しいって言ってね。織斑君は、すごくいい子だけど、いい子過ぎる。それは、必ずしも、いい事じゃないから。どんなに強くても、織斑君も人間なんだから、誰かに、そういう事を言っていいの。当たり前の事なのよ。」
 解ってはいるんですけどね…。
 今の問題の事で、人にそう言っていいのか、自分でも結論が出ないんですよ。
「じゃあ。こういうのはどう?辛くて泣きたくなった時は、私の所に来てくれていいから。楯無さんみたいに、グラマーじゃないけど、私だって女の子だから。あなたを受け止めてあげるくらいは、できるから…。それと、何で3年生の、最上級生の寮に、来ることになったか解る?」
「いえ…。いきなりの事で、さっぱり…。」
 そう言うと、遠藤先輩は大きな溜息をつく。
「まず一つ。織斑君は、いろいろ、叱られる必要があるの。もう一つ、その上で、素直になる為。これが理由よ。今のままだと、織斑君は、自分で自分を潰してしまう、可能性があるわ。その事を、よく解ってもらう為。その上で、自分の感情に素直になって、時には人に頼ることを覚える為よ。そうしないと、織斑君が守りたい人達を、大切な人達を、悲しませたり、苦しませたりしてしまうの。少しずつ、そうならなくなるために、ここに来たの。」

 俺は、イメージトレーニングを終えると、寝る支度をする。
 その時、また遠藤先輩が、部屋に来る。
「楯無さん。今晩、泊めてもらいたいんだけど、いいかな?」
「ええ。いいですよ。」
 何か、楯無さんは理由が解ってるっぽいな。
 俺には、まだ解らないけど。
 って、何で、俺のベッド?
 まあ、いいか。
 椅子に座って、寝ればいい。
 IS学園は、24時間空調が稼働しているから、風邪をひくことはないだろう。
「はい。一夏君は、遠藤先輩と寝るのよ。」
 有無を言わさず、寝させられた。
 ここが、1年の寮でなくてよかったぜ。
 確実に、死んでたからな。
 今は、眠ろう。
 遠藤先輩と話していたのは短い時間だったけど、それでもいろいろ考えさせられたし、疲れた…。
 それと、政治云々はやめよう…。
 しばらく、先輩たちと生活をして、俺に何が足りないかを見つけてみるのも、そんなに悪くないかもしれない…。

『これが、織斑君の寝顔か。可愛い。』
 すやすやと寝入る一夏の寝顔を見て、優しく微笑んだ遠藤だったが、少しして悲しげな表情になった。
『悩みを言わない…。苦しみも、悲しみも、辛さも、全部、自分で解決してしまおうとする。考えてみれば、一夏君が入学して、この学園でいろいろアクシデントがあると、いつも一夏君が、必ず関わって何とかしてきてる。仲間がいても、陣頭に立つのは織斑君。織斑君には、それだけの力はあるけど、いつも織斑君が、何とかしなきゃいけない理由なんてない筈。優しすぎる…。だからこそ、誰かを守る力を、持てるのかもしれない。常に、そうあるように厳しい訓練をしているのだろうけど、やっぱりいい訳ない。』
 後輩を守るのは、先輩がするべき。
 そう考えている遠藤は、一夏に対する申し訳なさで一杯だった。
『私は、専用機持ちでもないし、ことさら、ISの操縦が上手いわけじゃない。けど、少しくらいなら、あなたの辛さを和らげることは、できる…。』
 遠藤は、パジャマの上着のボタンを外して、フロントホックのブラジャーのホックを外して、自分の心臓の鼓動が聞こえるように。赤ん坊を抱くように、一夏を抱き寄せる。
『お寝すみ。織斑君。せめて、夢の中では、安らいでいて…。』
 額に優しくキスをして、自分も眠りに入る。

後書き
と、いう訳で、3年生の寮での、一夏の生活が始まります。
楯無が考えていたことは、一夏の周囲を最上級生ばかりにする事です。
皆が一夏を心配していますが、1年生では、一夏にそういう事を、きちんと納得させられる生徒はいないのではないかと、考えました。
企業の重役として、世界でただ1人のISを動かせる男性として、多く経験を積んでいるので、腰が引けてしまうでしょうね。
そこで、私が考えたのが、最上級生の中に、一夏を行かせる事です。
茶道や華道、舞に、能楽等の教養を身に着けている一夏は、礼節を大切にする性格。
故に、3年生なら、逆にいろいろ言えると考えました。
年上で、人生経験も色々あるでしょうし、一番、冷静に第三者の視点から、今の一夏を見ることができ、意見を言う事ができると考えたのが理由です。
千冬も、今は、一夏に何かをして上げることができません。
真耶も同様。
そういった状況での、最後のカードです。
そして、3年生が出した結論は、一夏はいい子過ぎる。
要するに、嘗てのシャルロットと似たようなものです。
自分を育てて、守ってくれた千冬を、悲しませたり、苦しませないようにしない為にも、自分で解決しようと考え、その事で、余裕がない一夏に、自分たちの胸の内を伝え、願いを伝える。
真正面から向き合う事で、今の一夏を、苦しみから解き放ってあげたい。
学生であるが故に、世界で5本の指に入るIS操縦者、世界有数の若き天才科学者、剣術や武術を含む、戦闘の天才という部分を取り去った、年相応の高校1年生の一夏を、先輩として支えてあげたい。
それを知ってもらい、自分たちを頼り、胸の内を語れる素直な人間になって欲しい。
それは、誰にでも与えられた権利なのだから。
そのメッセージを伝える事が、楯無の狙いです。
うまくいくでしょうか?











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