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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第40話 ハッピーバースデイ?

<<   作成日時 : 2013/03/03 01:36   >>

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「はあっ!」
 俺は、いつも通りに、朝の訓練をこなしていた。
 但し、学園の医務室の先生と、冬菊の家が経営している病院の医師の診断。プラス、両方の管理栄養士の人に、挙句の果てには、スポーツ内科の権威まで総動員して、千冬姉のメニューを守るように、太い杭をグロス単位で刺された。
 俺は、ドラキュラじゃねえって…。
 まあ、ブッフバルト先生や、楯無さんにも言われたし、じっくり自分を作り上げていくか。
 で、訓練をしているが、ここのところは、剣じゃなく、槍の稽古をしている。
 槍に薙刀と、長物の修練も積んでいるので、それなりに使えるつもりだ。
 今は、昔の感触を確かめるように、基本がおろそかになっていないか確認しているが、大丈夫そうだ。

「あら、一夏君。今日も槍か。それにしても、槍までやっていたとはね。確か、弓の修練もしてたんでしょ?」
「ええ。」
 剣の修練が主で、茶道、華道、書道、舞に能等教養面の他に、武術では、槍に薙刀、長巻、弓、馬術。
 武芸百般、文武両道が、俺の師のモットーだったからな。
 その影響もあって、勉強も頑張っていた。
 高芳さんに、宿題を見てもらったこともあったっけ。
「それにしても、それ重いよな。」
「柄に使われているのは、鉄刀木(タガヤサン)。通称、鉄の木って呼ばれる木材を使用しているんですよ。水に入れても沈みますし、鋸で切るのも無茶苦茶キツイんです。これに、牛の皮を巻きつけて、滑り止めがわりに、鉄の鋲をあちこちに、打ちつけてるんです。」
 俺のは、両側に、湾曲した長い刃が付いた十文字槍。
 通常の槍は、大体、長さは6尺6寸〜9尺9寸(約2〜3m)。
 重量は、4斤2両〜5斤(約2.5kg〜3kg)。
 俺の槍は、長さ8尺8寸(約2.63m)と、ことさら長いわけじゃないが、柄も穂先も重いので、重量は1貫3斤(約5.55kg)と、かなりの物になる。
 が、今までの修練で、俺は片手でも軽く扱える。
 さて、楯無さんたちとの、模擬戦闘か。

「織斑。今日こそは、一泡吹かせてみせるぜ。」
 ケイシー先輩が、俺を指さして断言する。
「いつまでも、負けっぱなしじゃ、恰好つかないからな。」
 フォルテ先輩が続く。
「今日、一夏君が負けたら、お姉さんたちとデートね。」
 勝手に、決めないでくださいよ…。
 これ以上フラグが立ったら、俺、マジで死にますって。
 勝つしかないな。
あれを試す気だったけど、負ける気はない。

「それ、槍じゃねえか。」
 ケイシー先輩が、軽く驚く。
 今日は、末那識を使わない。
 俺が鍛錬で使っている槍とよく似た、多機能ロングスピア「阿頼耶識」。
 これを、右手に持ち、左手には、素槍状の短めのショートスピア「阿摩羅識」を持つ。
 白式用に開発した、新しい白兵戦用兵装だ。
「ええ。刀以外にも作っておくのも、いいと思いまして。」
 と言うより、IS委員会も、白式には通常兵装以外にも可能な限り、兵装を追加してほしいらしい。
 どんな状況にも、対応できるようにだろうな。
 VIPというより、誘拐されたら困る人間リストに入ってるな。
 やれやれ。
「じゃ、行きますよ。」

 俺は、まず、楯無さんを狙いに定める。
 ケイシー先輩と、サファイア先輩の連携は厄介だが、それをサポートする楯無さんは、さらに厄介だ。
 阿頼耶識の一撃を受け止めるが、楯無さんは辛そうな顔をする。
 確かに強いけど、パワーで言えば俺には劣るし、受け流す時のタイミング取りが、イマイチだから、俺は隙をついて、阿摩羅識の一撃を加える。
 末那識のノウハウを活かして開発したので、攻撃力は高い。
 零落白夜程じゃないけど、かなりシールドを削れた。
「勝負はこれからだぜ!織斑!」
 ケイシー先輩が、ドールプレイヤーでケルベルス・ファングとテルシオが1基ずつ、俺の背後から、攻撃を仕掛けてくる。
 ちょうどいいから、これも試そう。
 ウィングスラスターの式神を、4基射出する。
「飛んで火にいる、何とやらだぜ。」
 ケルベロス・ファングから、断続的に散弾が発射される。
 発射タイミングから、散布範囲を割り出した俺は、式神の位置を変更する。
 よし、発射。

「何!?」
 ダリルは、信じられないものを見た。
 式神のレーザーがホーミング状になって、散弾を全て叩き落としたのである。
「よそ見している暇はないですよ。」
 再び発射された式神のレーザーは、出力が向上しており、まともに喰らい続けたケルベロスのシールドエネルギーを、どんどん削っていく。

 う〜ん。
 3人とも放っておけないけど、ドールプレイヤーは、やっぱり面倒な機能だな。
 予定変更。
 阿頼耶識と阿摩羅識の連携で、楯無さんの体勢を崩すと蹴り飛ばして、地面に激突させて、流星の一斉斉射でサファイア先輩を牽制しつつ、ダリル先輩の所に向かう。

『装備を、改良しやがったか。ちょっと、距離を取らせてもらうぜ。後は、ドールプレイヤーで、全射撃兵装の一斉斉射をして、近接戦で仕留める。』
 戦術を決めて、ジャッジメントを実体化した、ダリルの目に映ったのは、阿頼耶識と、阿摩羅識から放たれた空裂であった。
 回避する間もなく直撃を喰らった隙に、一夏の連撃が決まる。
 何とか、反撃に転じようとするが、連続した一夏の攻撃に、忽ち窮地に立たされる。
『あの右手の槍。普通、両手で持つだろうが…。軽々と片手で扱っていやがる。』
 長槍は、歩兵であろう騎兵であろうが、通常は両手で扱う。
 片手で扱えないこともないが、今の一夏の様に、自在に扱うのは不可能である。
『これで、1年なんだから、嫌になるぜ。まったく…。』
 ジャッジメントで、必死に防ごうとするが、一夏は、阿頼耶識の左に出ている鎌状の刃と槍の部分で、左のジャッジメントを絡め捕る。
『まずい!』
 そう考えた時に、防御に隙ができて右のジャッジメントを阿摩羅識で、跳ね上げられる。
 後は、零落白夜を発動させて、連撃で、ケルベロスのシールドエネルギーはゼロになる。

 よし、まず1人。
 おっと、危ねえ。
 ダーラマランで加速させた、エインガナの砲撃を回避する。
 で、これだけじゃないんだよな。
「クリア・パッション!」
 と、来るわけである。
 ちょっと面倒だけど、2人纏めてにするか。
 楯無さんは、それなりにシールド削ったしな。

 そして、阿頼耶識と阿摩羅識の穂先を向けると、零落白夜が雨月の様に2人に襲い掛かる。
「って、ちょっと!」
「なんだ!?それ!!」
 どうにか、2人は回避しようとするが、それは予想済み。
 本命は、上からの空裂。
 2人とも回避に精いっぱいで、避けることはできなかった。
 そして、止めを刺して終わり。

「くそ、また負けかよ。」
「てか、反則だろ。その装備。零落白夜が飛び道具になるなんて…。」
 ダリル先輩と、フォルテ先輩が恨めしそうに俺を見る。
 いや、別に反則じゃないと思いますけど…。
「やっぱり、一夏君強すぎ。少しは、ハンデくれても、いいじゃない。下級生ばかり、いい思いをするなんて、ズルいわ。」
 権利平等と書かれた扇子を開いて、ヨヨヨヨと泣き崩れる真似をする。
 俺の周囲で、いい思いをしている奴いたか?
 心当たりないけどな。
 今日は、この後、ストレッチをして終わり、3日に1日は軽いトレーニングになってるからな。
 後は、風呂に入るだけとは、いかないんだよな。これが。

 新型のゴーレムを撃破した後、ゴーレムシリーズの開発者が、行方不明の天才脳生理学者、ジェームズ・グレイ博士。
 脳波によるインターフェースを提唱・研究していた人物で、この人の研究成果は、少なからず世に影響を与えている。
 けれども、10年ほど前に、姿を消している。
 それ以後、消息不明。
 まさか、ゴーレムシリーズの開発者になっていたとはなあ…。
 事実は小説よりも奇なりか…。

『一夏。例の物に、目は通したか…。』
『通した。』
『すぐ来い。』
 コアネットワークで短く通信を済ませると、一夏はある場所に行った。

 IS学園特別区画。
 ゴーレムシリーズの製作者が、ほぼ間違いないレベルで特定され、一夏がグレイの論文の全てに目を通していた事もあって、ゴーレムシリーズの分析に加えることになった。
 一夏が、コアさえあれば、ISの設計をゼロから可能になった時から考えていたが、深入りさせれば、一夏はさらに危険に晒される。
 警視庁のSPに護衛を依頼しようとも考えたが、亡国企業にはサイレント・ゼフィルスがあることから、ISの搭乗者。
 それも、専用機持ちでなければ、護衛は無理だと考えた。
 警視庁には、ISは導入されていない。
 さらに、銃犯罪等の凶悪犯罪の発生率が他国と比べて少ないこともあり、SPの拳銃の威力も低い。
 自衛隊という線もあったが、こちらも貴重な専用機持ちを割くのは、難しい。
 結論から言えば、今以上に護衛を増やすのは、難しかった。
『だが、もう、そうも言っていられんか…。何か手を考えんとな…。』
 千冬は、学園を通じて、自衛隊と交渉するつもりでいた。

「結論から言って、山田先生の予想で間違っていません。ですが…。」
「保留つきですか?織斑君。」
「そういう事じゃないんです。データの分析をしたんですけど、このインターフェースによるシステムは、これ以上、発展のしようがないですね。これ以上、何かやらせようものなら、システムダウンを起こすだけです。山田先生。ゴーレムシリーズと、IS。どちらが優れていると思いますか?」
 思わぬ質問をされて、真耶は考え込んだ。
「搭乗者のスキルにも、よりますけど…、ISの方に、軍配が上がると思いますね。」
「根拠は?」
「行動の…。あ、そういう事ですか。」
 真耶は自分の答えが、今のゴーレムシリーズの制御システムの、発展性のなさであることに気付く。
「なるほどな。人間ほど、柔軟な思考はできんか。ハイパーセンサーにしても、プログラミングされたことを、従来のコンピューターより、早くしているに過ぎん。しかし、妙だな…。」
「何がですか?織斑先生。」
 考え込む千冬を、真耶は不思議そうに見る。
「何故、別のアプローチでいかないのだ?例えば、このコアもどきにコアの役目のみを任せて、搭乗者を乗せる。つまり、今のISと同じだが。それなら、発展する見込みもあるだろうに。」
「それは、簡単だ…。」
 プライベートな口調になりかけたので、一夏はいったん口を閉ざすが、真耶が「気にしないでいいですよ。」という事を示す笑顔になる。
「簡単だよ。千冬姉。博士の最終到達点は、人間の脳の働きを機械的に、完全に再現することにあるからさ。論文にも、それが将来可能になることをしめす部分が、確かにある。どん詰まりなのは解ってるけど、それでも、自分を捨てきれないとこがあるんだよ。科学者とか技術者ってのはな。俺のISもノーマル状態で、機動性と運動性を良好な物にしてから、どういった兵装を装備させるか。装甲の材質、厚み、搭乗者の体をどれくらい覆うか、動きを妨げないためには、どう配置するか。そういったコンセプトを決めて、開発する。これはこれで、問題点あるのかもしれない。でも、俺はやっぱり、このやり方を捨てられない。そういう事。」
 学者としての、意地と拘り。
 一夏もそれを持ち合わせているので、それをよく理解できたので、肩をすくめる。
「成程。このコアもどきを発展させることを、あきらめ切れんというわけか。ところで一夏。」
「このインターフェースの停止手段だろ?今、理論が8割方組み上がってる。ちょっと、見てくれ。」
 一夏は、メモリーデータを端末に指す。

「残骸だけで、ここまで…。」
「山田先生の資料も、ありましたしね。簡単に言えば、ゴーレム本体に発信されている信号を外部から強制的に変換するんです。信号は、脳波パターンに限りなく近い。こだわりなんでしょうけど、それを逆手に取りました。」
 真耶は、一夏の科学者としての才能に、改めて驚かされる。
 資料を渡して、3日。
 この短期間で、ここまで停止手段の理論を構築させるのは、間違いなく天才といわれる人間しかできないだろう。
『さすがは、篠ノ之博士の唯一人の教え子。織斑先生の話だと、実妹の箒さんと同じ位、大切に思っているんでしょうね。自分が持っている、知識、技術を全て伝えたのでしょうね。』
 ここで、真耶はある可能性に気づく。
『まさか、織斑君。コアを作ることも可能なの?』

「ところで、一夏。どの程度で、武装として完成する?」
「来週半ばかな。どっちにしろ、本社での会議があるから、実家に帰ってるし、それを利用して。」
 芝崎インダストリーの社員というわけではないが、一夏も今や技術顧問。
 重役待遇であり、専用の車と運転手もつく。
 会議にも、出席する。
 今まで、少数だが、IS学園の優秀な生徒の中には、在学中に、外部からの受注という形で、テストパイロットをしていた生徒もいる。
 だが、一夏ほど、重要なポストは異例中の異例だった。

「それでなんですけどね。その間の授業の進行ですけど、ここからここ位と見ているんですけど、あっていますか?」
 本社での会議と、対ゴーレム用の装備の開発。
 どちらも。特に後者は大事だが、学園での勉強を決して疎かにするつもりはない。
 人は、傲慢になったら、お終いだからな。
「ええ。あっていますよ。いつも思うんですけど、本当に、授業も熱心に受けてくれますね。どんどん、実力が高くなっていくから、少し心配していましたけど、杞憂でしたね。」
 山田先生が、嬉しそうに笑う。
 まあ、疎かにしたら、千冬姉の制裁が待っているのも、ありますけどね。

「さて、今日の所は、この辺でいいだろう。グレイ博士の事は報告書を作成し、委員会に送る。それと夕食を済ませたら、宿直室に寄れ。」
 ん、何だ?

 え?ケーキ。
 ハッピーバースデイ?
「今日は12月7日。お前の誕生日だ。」
 あ。いろいろありすぎて、すっかり忘れてた。
「まったく。忘れていたな。呆れた奴だ。自分の誕生日位覚えていろ。馬鹿者。」
 千冬姉は、笑いながら言う。
 いつも、働きづくめの千冬姉だが、俺の誕生日には、こうして必ずケーキを用意して、お祝いをしてくれる。
「それと、プレゼントだ。お前も、もう社会人みたいな物だからな。」
 中に入っていたのは、高級万年筆とネクタイピン。
「サンキュ。千冬姉。」
「場所が少し問題だが、こういう時位は公私混同をさせてもらうさ。来週末位には、どこかのレストランで食事でもしよう。いつも、食事を作らせていては、姉としての鼎が問われるからな。」
 こういう時は、千冬姉が傍にいてくれて、良かったと思う。
 両親に捨てられたり、亡国企業にモルモットにされたりと、辛い思い出もあるけれど、それでも、頑張ってこれたのは周囲の人たちの、何より、大事である千冬姉が傍にいてくれたからだ。
 ありがとう。千冬姉。
 だが、ここで終わらないのが、世の中だったりする。

「面会ですか。はい。応接室ですね。今、行きます。」
 誰だろうな?
 誰かいたっけ?会う人なんて。
 仕事関係は、いないよなあ…。

「一夏さん。」
 応接室のソファからたった冬菊が、いかにもお嬢様らしく、お辞儀をする。
「冬菊?どうしたんだよ。何かあったのか…?」
 また、亡国企業か?
 だったら、ゴーレムは纏めて、燃えないゴミにしてやる!
「あ、いえ。あの。お誕生日、おめでとうございます。これ、受け取ってください。」
 なんだろう?
 中を見ると、羽織に袴。
 しかも、家紋までついてる。
「凄いな。どうしたんだ?」
「来年。父の仕事の関連会社の方々が、家においでになると聞いて。その、一夏さんも、いらっしゃると聞きましたから。もし、よろしければ、着ていただければと縫ったんです。全部、自分で出来れば良かったんですけど、一夏さんのお誕生日にどうしても間に合わせたかったので、出入りの呉服屋さんの職人さんにも色々手伝ってもらった物ですけど…。」
 縫うって。
 大変だぞ。着物縫うって。
 時間だって掛かるし。
 俺も、裁縫とか、手芸関係はそれなりにやれるから、苦労が解る。
 職人さんに手伝ってもらったって、学校もきちんと行って、成績落とさないようにしながら縫うって、相当に大変だったはずだ。
 なのに、冬菊はどこか、申し訳なさそうにしている。
 そんな顔しなくていいんだぞ…。

「ありがとう。気持ちだけでも、俺、凄く嬉しいよ。だから、そんなに申し訳なさそうな顔するなよ。」
「は、はい…。」
 うん。女の子はやっぱり笑っているのが、一番だ。
 冬菊は、あの時、俺をおびき寄せるエサにする目的で、誘拐された。
 一方的な被害者なんだ。
 助けたのは確かに俺だけど、俺は俺の誓いと心に従って助けただけだ。
 気にする必要はないんだからさ。

「ありがとうな。着物、大事にするよ。誕生日って、先か?」
「あ、はい。早生まれなもので。」
「そうか。じゃあ、その時、ドレスの一着でもプレゼントするよ。レストランでの食事つきで。」
 手作りの着物の礼はきちんとしておきたかったので、釣り合わせるには、食事の一つもあった方がいいだろうと、一夏は考えた。
「では、失礼いたします。夜分遅く。それも、本当は立ち入れないところを、無理を聞き入れてくださり、お詫びと、お礼を申し上げます。」
 ボディーガードの人と一緒に、真耶と寮監の千冬に深々とお辞儀をする。
「気を付けて、帰ってくださいね。」
「ありがとうございます。それでは、失礼いたします。それと、姉君様にはくれぐれもよろしく伝えてほしいと、両親が。」
「恐縮です。気を付けて。」
「では、失礼いたします。」
 冬菊は、帰って行った。

 何ていうか律儀というか、古風というか、ちょっと気にしすぎてるような気がするな。
 来年会って、その傾向があったら、一度話をする必要ありだな。
「それにしても、手伝ってもらったとはいえ、手縫いの着物は驚きですね。」
「はい。神無月グループ関係で招かれるのは、予定表に入っていたんですけど、冬菊がそれを聞きつけるとは、思いませんでした。」
「いずれにせよ。先方のご好意の品だ。大切にしろ。」
「ええ。勿論です。」
 心がこもった、手縫いの着物。粗末にしたら、罰が当たるからな。
 何より、真心を踏みにじる奴は、人間の屑だしな。
「その前に、お前は後悔しそうだがな。」
 どういうことだよ?千冬姉。
 あれ?何だ?この、凄まじく冷たくて、振り向くのも恐ろしいけど、振り向かないと、もっと恐ろしい、この気は…?

「一夏さん…。どうして、誕生日だという事を、黙っていらしたのでしょうか?」
 セシリア。
いや、そういうつもりねえって。
 第一、べらべらしゃべるもんじゃないだろう?
「一夏。良かったね。手縫いの着物もらって…。」
 シャルロット。
 滅茶苦茶怒ってるけど、そんなに怒るほどの事じゃないだろ。
 第一、プレゼント強請るみたいで嫌なんだよ。誕生日、喋り捲るのは。
「に、日本では、こういう時は、裸になって自分にリボンを巻いて贈り物にすると、聞いた。私は、それにするが。黙っていたのは、許せんな…。」
 ラウラ、ラノベの読みすぎだ。
 っていうか、エロゲーじゃねーか!
 クラリッサさんか!?情報源は!
「一夏。隠し事はよくないって、子供の頃、教わらなかった?」
 玲子。
 それは、テストで悪い点取った時とか、イタズラとかだろう!?
 俺は、やましい事はしていないぞ!
「一夏。やっぱりこのままじゃ。なら、いっその事…。」
 簪!
 すぐに小太刀を抜くのは、やめろ!!
 そして目が虚ろになるのは、怖すぎる!!

「全員、そこまでにしろ。それと、ボーデヴィッヒ。私が寮監を務める以上、淫行に耽るのは許さんぞ。」
「教官。夫婦の間で隠し事は、もっての他です!」
「隠していたのが、後、2人ばかりいるがな。」
 あ。箒と鈴か。
 あの2人は、俺の誕生日知ってるよな。

「そう言えば、そうでしたわね。」
「どうして、黙ってたの?」
「さて、訳を聞こうか?」
「抜け駆けかしら?酷すぎないかしら?」
「許さない…。」
 げっ!血みどろの争いになるかも…。ヤバイ!!

「すいません。宅配便です。」
 救われたか。
 まさか、宅配便の人の前で、血みどろの争いはできないしな。
「ご苦労様です。あ、織斑君宛ですね。」
 何だ?
 弾と蘭から?
 とりあえず、受取証にサインをと。

 中身は、部屋で開けるか。
「五反田さんの所からか。おおかた、お前の誕生日プレゼントだろう。妹の方はマフラーとセーター。兄の方は、さて何かな?」
 やめろ、千冬姉!
 こんなところで、そんなこと言うなって!

「ところでお前ら、もう就寝時間だ。早く寝ろ。いいな。見回りがあることを、忘れるなよ。」
 助かった。
 というか、問題が先送りになっただけかもな…。
 明日、俺、大丈夫かな…?

「その前に、一夏、誕生日おめでとう。私からだ。」
「ああ。ありがとうな。」
 箒は顔を真っ赤にして、部屋に戻った。
「じゃあ、私も。ハッピーバースデイ、一夏。」
 鈴からのプレゼントを受け取ると、鈴は嬉しそうに部屋に戻る。

「一夏さん。日曜日は必ずご自宅にいてくださいましね。よろしいですか?」
 怖え…。
 セシリアだけじゃねえ、シャルロットに、ラウラ、玲子に、簪。
 全員が、半端なく怖え…。
「時間指定で、お願いします。」
「いいですわ。そのかわり、いらっしゃらなかったら、解っていますわね?」
「はい…。」
 俺には、返事をすることしかできなかった。
 ていうか、それ以外の選択肢なんか、どこにもねえ…。

「何だか、大変ですね。誕生日を教えていないだけで、こうなるなんて。」
 真耶が困ったように、笑う。
「あの程度では、まだまだだな。一夏が欲しければ、もう少し余裕の一つも持っていればいい物を。」
 千冬が、鼻で笑う。
「もし、余裕を持った大人の女性だったら、織斑君を譲るんですか。お義姉さん。」
「山田先生。明日の授業は、教師同士のIS戦の実演にしよう。私達でな。では、私は宿直室に戻る。」
 そう言って、宿直室に戻る千冬の後姿を、真耶はこの世の終わりが来たかのように見ていた。

 やれやれだな…。
 とりあえず、プレゼントは何か見るか。
 蘭は、セーターとマフラーか。
 手編みか。大丈夫か?受験勉強。今度、見に行くかな…。
 弾は…。おっ。俺が、欲しかったCDか。サンキュー。
 で、箒は、脇差?いや、短刀。守り刀か。
 なんか、あいつらしいな。ありがとうな。箒。
 鈴は、ラピスラズリのペンダント。
 俺の誕生石か。
 箒がくれた守り刀も、鈴のペンダントもお守りだな。
 なんだかんだで、心配させてんだな。
 反省点だな…。

 日曜は、俺の家でバースデイパーティーが開かれて、セシリアからはメンズ用のコロン。シャルロットからは、カジュアルスーツ一式。ラウラはさすがにエロゲー的なのはできなくて、多機能軍用腕時計。なんか、ラウラらしいが、デザインはプライベートで使うにも何ら問題ない。玲子からは、タンザナイトのイヤリング。考えてみれば、アクセサリーの類って、俺、持ってないしな。こういうのに興味持って、たまに肩の力を抜くのもいいか。簪は、新型の網膜投影式ディスプレイの、ノートパソコン。
 多分、今年の誕生日は、一番、騒がしかったな。
 でも、それは、俺の周囲に、沢山の人がいてくれるって証拠だ。
 ありがたいって、つくづく思う。
 心から、そう思った。

後書き
とある事情から、連続しての投稿です。
今回は一夏の誕生日がメインですが、その一方でゴーレムの制御系の弱点等も織り交ぜており、後の伏線になっています。
ゴーレムの制御システムを無効化するデバイスとは、どんなものでしょうか?
そして、山田先生の懸案事項。
口にはしませんでしたが、現実ならば世界の軍事バランスの均衡が大きく崩れます。
まだ、現実かどうかはわかりませんけどね。
そして、やっぱり、一夏の周りはいつもドタバタ。
ラウラのプランが実行されていれば、一夏の唐変木も少しは治ったかもしれませんね。
というか、かなり過激に迫った某米国テストパイロットもいますから、すでに何らかの刺激が加わっている可能性も、無きにしも非ず。
辛いことも少なからずあった一夏ですが、それでも多くの人たちが傍にいてくれる。
不幸ではない。そう思いますね。








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