cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第16話 ディーラーズウォー Phase.4

<<   作成日時 : 2013/02/06 19:01   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 指定された場所は、テムズ川近くに建設された、倉庫街だった。
『開けてるな…。』
 バルメの運転でそこに着いたソフィは、胸元のM&P40の感触を確かめつつ、周囲を警戒して、ベンツから降りる。

「申し出をご承諾していただいて、お礼を言うわ。ココちゃん。」
「いえいえ。ところで、一つ聞きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「何かしら?」
「武装はされていませんよね?スナイパーとか。」
 いつもの笑みを浮かべながらも、目は全く笑っていなかった。

「彼は、ベレッタを持っています。私のコンサルタントの他に、護衛を兼ねていますので。」
 黒のセダンの近くにいる、サングラスをかけた男が、ココとソフィに会釈をする。
「別に、あなた方を、痛い目あわせようなんて考えてないわよ。ココちゃん、ソフィアさん。」
 大げさよと言いながら、トロボフスキーは笑う。
「そう願います。もし、そちらに相応の備えがあるようでしたら、当方も対処いたしますので、ご覚悟願います。」
 力での脅しは、効かない。
 ソフィは、暗にメッセージを込める。
「だから、ないわよ。もう。おおげさね。」

「何、言ってんだか。だって、ツーペア揃えてるじゃん。」
 ルツが、呆れたように呟く。
 アメリカ製、ラルー・タクティカル OBR 7.62で狙いをつけている、ペア。
 フランス製、GIAT FR−F2で狙いをつけている、ペア。
 2つのペアを、既に見つけていた。
「トージョの話だと、EAE社の専務の独断だって話だ。邪魔する奴は消しちまえ。まるで、ギャングやマフィアが、外面よくするために作った会社の重役だな。元国営企業だから、民間のルールってやつが理解できてないらしい。それにしても、無防備だな、対赤外線スーツを着てないから、丸見えだぜ。」
 ワイリもEAE社の、強引なやり口に呆れる。
「それにしても、対赤外線スーツ暑くね?」
「お前だけじゃないぞ。俺だって暑い。我慢だ。」
 暗視スコープで、位置を確かめ、ルツはいつでも狙撃できる準備を整えていた。

「正直に言って、すっかりやられたわ。あなたが、この国にとどまり、他のスタッフが、特にソフィアさんが、各国との取引を隠れ蓑に、逆に私たちを包囲。さすが、ココちゃんね。」
 それを聞いたココは、小さく笑う。
「今回の作戦を考えたのは、ソフィです。私達は、アシストですよ。」
 それを聞いて、トロボウスキーは驚く。
「あなたが…。」
「つまり、この件に関して、何らかの交渉を申し込まれるおつもりでしたら、私ではなく、ソフィに申し込んでください。私はこの件に関して、全権を委ねております。」

「では、そうさせていただきます。」
 トロボフスキーは、ソフィを向く。
「トロボフスキーさん。私は初めてお会いした時から、あなたが戦場についても兵器についても、何も知らない人だと、すぐ解りました。」
「そんなことは、ないと思いますけど。私たちが売っている商品は、とても危ない物。それではいけないかしら?」
 トロボフスキーの返答を聞いたソフィは、どこか悲しげにため息をつく。
「その程度の認識ですか…。兵器というのは、人を殺すためだけに作り出された物。そして、人の内にある暴力的な本能をむき出しにし、時に理性を失わせる物です。戦場を知る者は、誰でも知っている事です。危ない物程度で、済むものではありません。ディーラーによって意見が分かれると思いますが、私は戦場を知らないものは、武器を売るべきではないと考えます。武器の本質、それが生み出すものの本質を知らないのと同義ですから。
なにより、武器は往々にして、売る人間の心をも蝕み、人の心を失わせます。だからこそ、武器と戦場の本質を知るべき。私はそう考えます。」
 悲しげな、しかし、真剣な表情でトロボフスキーに言う。

「武器商人の世界とは、理性を持つ者と、そうでない者の境目に位置する世界のこと。それが解らないのなら、今の内に、やめておきなさい。そう言いたいのかしら?」
 しばらく、ソフィの言葉の意味を考えたトロボフスキーは、そう問いかける。
「あくまで、私の私見です…。どう思われ、どう行動なさるかは、あなたのご自由です。そこまで口をさしはさむようなことは、いたしません。そんな権利は、私にはありません…。もっとも、それすら考えていないお歴々もいますが。あなたは、大丈夫かもしれませんね。」
 ソフィの答えを聞いたトロボフスキーは、微笑んだ。
「人間的には、評価されているということかしら。そう思わせていただくわ。女優としていろんな人間を見てきたけれど、自分がしていることを、ここまで哲学的に見ている人には、ほとんど会った記憶がない。難しい事だもの。それだけでなく、まるで鏡に映った像を見るように、相手の人格を見る。あなたのディーラーとしての強みは、そこね。取引が始まった瞬間にその場を、第三者的に見て、早く、そして、確実な一手を打って、ビジネスを成功させる。私は、あなたからみれば、不覚悟な人間かもしれないけれど、選んだ道を全うするわ。あなたの忠告を胸に刻んでおけば、理性を手放すことはないでしょうしね。ココちゃん、ソフィアさん。今回のUAV受注競争、私達の負けです。」
 トロボフスキーはそう言った後、笑顔を浮かべて、ソフィの元へゆっくりと歩く。
「昨日の敵は今日の友。それがヨーロッパ人のやり方です。」
『やる事はきっちりやるあたり、有能だな。自分を見失ったりすることは、無いかな…。』
「昨日の敵は今日の友。それがヨーロッパ人のやり方です。」
「二度も言わなくても、解りますが。それで、何をおっしゃられたいのでしょうか?」
 何を言うかは、ソフィは予想していたが、敢えて尋ねる。
 予想が、必ずしも当たるとは、限らないからである。
「TOBで買った株、何とかして下さらない?皆さん、大変お困りで、事業にも支障をきたしてしまうの。お願い。」
 トロボフスキーは親しげに、ソフィの手を握る。
『こういうことされたら、中年男性は堪らないか。でも、僕はそうじゃない。』

「そう簡単にはいきませんよ。そもそも、今までのやり方を見直す時期と考えています。今回のTOBは、対抗策という一面もありますが、いろいろな問題を片付けてもらうために、行った為でもあります。さし当たっては、ナイフとフォークを、ダース単位で指しておく必要があります。対象は、EAE社をはじめとする、民営化される元国営企業です。国に守られて、文字通り不沈戦艦根性。民間の熾烈な競争を、理解しきっていません。従来のやり方を、通そうとしていますからね。今の段階で、既に足を引っ張り始めています。それは、ご存知かと思いますが。」
「TOB価格プラス2.5%で、何とかしてあげて下さらない?」
「私の話を、棚上げしないでいただきたいですね。それ以前に、プラス10%が最低限のラインです。話を戻します。多少まずいやり方をしても、国が助けてくれる。その考えを心から抜かない限り、生産面での合理化等はできませんし、販売網の拡大にも影響は出るでしょう。商品は、待っていれば売れる物では。ありません。最低限、それも解らないようでは、話になりません。当方といたしましても、商品を仕入れる際に、きちんと生産されるという保証がなければ、発注はできません。やがて、グループから切除しなければ、ならなくなります。でも、彼らには、それが解っていないのです。それを解らせるために、多少荒療治をと、思いましてね。」
 民間企業として、ライバル企業との凌ぎ合いを知っていれば、TOBで乗っ取ろうとする人間ないし企業が現れることを、頭に入れて、対処法を持っていたはずであり、こんな事にはならなかった。
 元国営企業に残っている、甘さ。
 ソフィが指摘したのは、その点だった。
「プラス5%なら、いかがかしら?」
『人の話、聞いてくださいよ…。』
 ソフィは、心の中で溜息をつく。

「ちょっと、何なのよ。あの人たち。ミストロボフスキーだけならともかく、TOBで我が社を乗っ取ろうとしている人間と、立話で我が社の行く末を決める気?」
 EAE社から派遣された、女性社員は、倉庫街の影に隠れて、集音器で会話を聞きながら、戦々恐々としていた。
 事と次第によっては、ココとソフィを射殺もしくは狙撃により恫喝し、株を手放させる。
 その任を、任されていたのである。
「スナイパー1、スナイパー2聞こえますか?準備は?。」
「完了。」
「こちらも完了。」
「そろそろ始めます。」
「「了解。」」

 次の瞬間。集音器につながるコードが、バルメのナイフによって切断され、女性社員の口を塞いで、ナイフを首に突きつける。

「ご苦労様。」
 ココはバルメからの連絡を受けると、携帯を切る。
「ファイア、ファイア。」

 ルツのシグ ブレイザーから、立て続けに発射されたラプアマグナムが、相手のスナイパーライフルのバレルを破裂させる。
「さすがだな。花咲いたバレル見て、呆然としてるぜ。」
 ワイリが、笑いながら、ルツに話す。
「テムズ川挟んで、精々400mだろ。大したことじゃねえぜ。レームのおっさんや、ソフィはもっと速いだろうな。ストレートプルじゃないのによ。」
 シグ ブレイザーは、手前に引くだけのストレートプル方式で、訓練次第ではセミオートスナイパーライフル並みの速さで、狙撃が可能である。
 しかし、レームのレミントン M24SWSは普通のボルトアクション。
 ソフィのサコー TRG−42はボルトアクション時、60度の回転で済むとはいえ、連射性では、ブレイザーに劣る。
 それでも、2人の方が同じ状況でも、事を早く済ませる。
 ルツは、そう確信していた。

「EAE社が、荒事専門を雇っていったんですよ。場合によっては、私とココさんを消すためにね。これが、民間企業のやり方を理解していない、元国営企業です。頭に入れておかれるべきでしょう。」
 立て続けの銃声に驚くトロボフスキーに、そう言うと、ソフィは少し考える。
「彼らには売るつもりはありませんが、トロボフスキーさん。貴方なら彼らの手綱をしっかりと掴んでいられるでしょう。TOBプラス5%で、如何ですか。」
「ええ。是非、買い取らせていただくわ。彼らの手綱は私が握る事を、お約束しますわ。」
「では、明日、大使館でお会いしましょう。」
 ココとソフィは、バルメが運転する車に乗り込む。

「ソフィ。本当に凄かったよ。二重三重のフェイクの裏で、いつでも止めを刺せる寸前まで、仕込みをしてたんだもん。大勝利だよ。株の売却益もかなりの物だし。」
 ココが上機嫌で、ソフィを抱きしめる。
「隙を突いた。そう言う事です。これで、元国営企業も、民間企業としのぎを削る事の熾烈さを知るでしょうね。ついでにルールも理解してほしいものです。」
「それにしても、トロボフスキーさん。手強かったね。」
「ええ。お陰で、手間をかける必要が、あったわけですから。でも、これで、終わらないと、思いますよ。どこかで会う気がしますしね。先方も我々との関係を持つのがメリットと考えて、接近してくると考えます。HCLIのネットワーク、各国で、輸出規制が掛っている物についても、多く集めることが可能なノウハウ。魅力的でしょうね。」
「ソフィの言う通りだね。どこで会うかね?」
 どこか楽しそうに、ココは言った。

後書き
トロボフスキーさんとのUAV受注競争、遂に決着です。
原作を見ていて、トロボフスキーさんの武器に対する認識が、「甘いなあ。」と、思ったので自分なりの意見を書いています。
武器とは、最も簡単に言えば「人殺しの道具」。
「とても危ない物」という、あやふやな表現で済む物ではありませんし、それで儲かり悪魔の誘惑に心を支配されたら、どんな手段を用いても、武器を作る状況を、作るのではないかと考えています。
カリー社長は、元軍人だけに、武器とは何かを知りながら、武器商人をやっていると思いますね。
食えない人ですが、あれでなかなか、鼻が効く人ですから、商売相手も、選んでいるんじゃないかなと考えています。
これから、トロボフスキーさんは、何を考え、ディーラをするんでしょうかね?
原作で、もう少し、見てみたかったです。


アメリカの巨大軍需産業 (集英社新書)
集英社
広瀬 隆

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by アメリカの巨大軍需産業 (集英社新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



ロシアの軍需産業-軍事大国はどこへ行くか- (岩波新書)
岩波書店
塩原 俊彦

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ロシアの軍需産業-軍事大国はどこへ行くか- (岩波新書) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル









ブレイザーR93 LRS1
キングアームズ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ブレイザーR93 LRS1 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

目次に戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
ヨルムンガンド二次創作 第16話 ディーラーズウォー Phase.4 cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる