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zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第13話 ディーラーズウォー Phase1

<<   作成日時 : 2013/01/16 20:13   >>

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「それでは、商談成立という事で。」
 契約書にサインをして、商談が成立する。
 しかし、進めていたのはココではなかった。
「噂には聞いていましたが、お若いのに似ず、有能でいらっしゃいますな。ミスターアルムフェルト。」
「恐縮です。ディエゴ大佐。」
 今回の取引は、フランス製地対空ミサイルクロタルの最新バージョン、クロタルNGと、それを搭載するフィンランド製装輪装甲車XA−180を売り込む交渉であった。
 他にも競争相手はいたが、ソフィは、巧みに相手を取り込んで装甲車48両とミサイル144基を売り込むことに成功した。
「では、いずれまた、お会いしましょう。」
「ありがとうございます。では。」
 握手をして、ソフィは部屋を出ると、隣室で交渉をしていたココと会う。

「契約締結ですよ。ココさん。」
「こっちも、無事に契約締結。お疲れ様。途中で食事でもしていこう。」
 ココが売り込んだのは、ロシア製地対空ミサイル9M82Mの搭載車両6両と、ミサイル24基だった。

「お互いに、無事にビジネス成功。知ってる?ソフィって、もう、この世界じゃ、すっかり凄腕のディーラーとして、知られてるんだよ。」
「ディエゴ大佐から、そういうお話は聞かせていただきましたが、そうだったんですか?初めて、2か月程度しか経っていないんですけどね。」
 ソフィに、ウェポンディーラーとしての才能を見出したココは、何回か、取引に同行させたうえで、ノウハウを体で覚えさせ、小規模な商談から任せ始めたが、あっという間に才能が開花し、かなりの取引を成功させるまでに、至っている。
 今は、専属ボディーガードであると同時に、片腕とも言えるウェポンディーラーになっている。
 事実、この先もいくつかの取引が待っており、周囲の気配を探りながらも、売り込む商品と相手のデータに目を通している。
「中々、手強そうですね。タイフーンは、レーダーの点で劣りますから…。」
 今度の商談は、戦闘機の売り込みに関してだが最新式のレーダーが完成しておらず、相手は最新鋭のレーダーを搭載する、F/A−18E/F スーパーホーネットである。不利は免れなかった。
「レーダー以外なら、こっちに分があるから、それをアピールしつつ、ミサイルに関しては値下げをするしかないかな。問題は値引き率か…。」
 今度の取引は、難題なので、ソフィとしてもかなり作戦を練らないと、成功の見込みは薄かった。
「相手が、最新タイプじゃなければ戦いようがあるんですけどね。向こうがカードを見せるはずも無し。最新タイプをぶつけるのを前提に、策を練るか。」
 考えている内に、ふと、妙案が思いついた。
「こうなったら、目には目をでいくか…。」
「ん?何か、思いついたの?ソフィ。」
「ええ。少し。」

 途中で寄ったフレンチレストランの特別室で、ココはソフィのアイデアを聞いた。
「成程。その手があったか。ライセンス生産じゃないから、調達は可能だしね。」
「幸い、サイズ的に合うと思うんですよ。それに、タイフーンは開発国の軍縮の流れの中で売り上げ不振。仕入れも多少は安くなって、利益もそれなりに大きくなると考えます。」
 牛のフィレ肉に、トリュフベースのソースをかけた物を切りながら、ソフィは、今度の商談で勝利する策を話す。
「OK。全面的に任せるよ。実を言うと、こっちが思ったより苦戦しててね。」
「例のB国のUAV導入計画ですか?」
 
 B国と隣にあるM国は、現在、緊張状態にあり、B国はM国の軍の展開状況を把握する為に、UAVの導入計画を進めていた。
 HCLI社を代表して、ココはプレデターを原型に、性能を大幅に向上させ、兵器搭載能力も増した、アメリカ ジェネラル・アトミックス社製 MQ−9 リーパーを提案。
 一方、フランス ダッソー社を中心とするグループは、現在開発中のnEUROnを提案。
 どちらが提案されるか、まだ見通しが立っていなかった。

「3日後でしたっけ。B国大使館での会合は。」
「そっ。悪いけど2日後、すぐに今の案件に決着をつけてほしいんだ。今回、手伝ってほしいから。」
「解りました。今日中に、こっちの手配を済ませます。」
『ココさんがこう言うって事は、相当手強い相手みたいだね。こっちでも調べておくか。』
 ホテルに戻ってから、情報屋にメールを送る。
「ソフィ。ちょっと、お散歩行かない?」
「いいですよ。今。着替えますから。」
 カジュアルな服を出して、ソフィは着替えはじめる。

「それにしても、世の中変わったよねえ。UAVなんて言っても、早い話がラジコン。それで戦闘までやろうっていうんだから、アシモフが聞いたら、どう思うのかな?」
「ロボット三原則ですか。確かに、何を思われるのやら。」
 人間に危害を加えてはならない。
 人間に危害を加えない限り、人間の命令に従わなければならない。
 人間に危害を加えない限り、自分を守らなければならない。
 SF作家アイザック・アシモフの小説の中にある、ロボット三原則である。
 UAVは、そのすべてに違反している。
 それを思い出すと、ソフィはココのいう事に苦笑せざるを得ない。
「天田博士の研究が、兵器に転用されるのがよく解りますね。市販のラジコン飛行機だって、少し手を加えれば、兵器になりますからね。世も末とはこの事でしょうかね。やれやれです。」
「ほんと。やれやれだね。」
 互いに顔を見合わせて、苦笑する。

「それにしても、グローバルホークなら解りますけど、リーパーとはね。B国は、純粋に偵察だけに、UAVを使うつもりではないのでしょう。偵察能力では、グローバルホークの方が上なのに、兵器運用能力をも高めたリーパーの導入を視野に入れるとすると…。」
「明らかに、UAVによる攻撃も考慮してるね。ホント、SF小説の世界。無人兵器が、攻撃しかけてくるなんてね。」
 ココもソフィも、リーパーの導入を視野に入れたB国の意図を正確に見抜いていた。
「それにしても、ダッソーも強気ですね。初飛行に成功したばかりの、nEUROnを売り込みに来るんですから。まあ、これからUAV市場はどんどん大きくなるから、アメリカやイスラエルにシェアを取られ過ぎないように、食い込んでおきたいんでしょうけど。ちょっと、ギャンブルの要素が強すぎますよ。よほど自信があるんですかね。」
 鴨の餌を買い、川に投げ込みながら話を続ける
「まあ、それもあるけど、もう一つ、厄介な点があってね。それが、今回の取引が大変なわけでもある。何しろ、理論でどうこうできる問題じゃないんだ。」
 意味が理解できずに、ソフィは首を傾げる。
 それを見たココは、ソフィに軽くキスをする。
「理由は、今みたいのだよ。ソフィ。」

 2日後、ソフィはタイフーンの売り込みの交渉に入っていた。
「お話しした通り、スーパーホーネットの最新バージョンに搭載されている、AN/APG−79 AESAレーダーもセットにして、提案させていただきます。この組み合わせでしたら、タイフーンは従来型よりさらに高性能な機体になると考えますが、如何でしょうか?無論、技術的なサポートもさせていただきます。さらに、ミサイルに関しても、各ミッションで2回分の出撃分を、2割引きのお値段で、提供させていただこうと、考えております。」
 G国空軍のカラマンリス大佐は、1時間ほど考えて結論を出した。
「3個飛行隊、36機を納めていただきたい。」
「承知いたしました。すぐに手配を進めます。」

 帰ってきて、レーム達のたまり場に顔を出すと、商談の報告をする。
「厳しい戦いでしたけど、こちらの勝利に終わりましたよ。」
「お前に、こっち関係の才能があるとはね。驚いたよ。」
 アールが、感心したように言う。
「僕も驚きました。」
 そう言って、着替えに行く。

「いいよな。多才な奴って。」
 ルツが、羨ましそうに言う。
「ま、あれなら、今の商売廃業になっても、やってけるな。いいんじゃねえか。」
 煙草を吸いながら、レームが言う。
「私としては、あれで、少しは変わってくれればと、思っているよ。」
 自分の事をこれ以上なく嫌悪しているソフィを按じているマオとしては、このままディーラーとして生きていく方が、本人の為になるのではないかと、考えていた。

 普段の動きやすい服装に着替えて、髪を結っていたシルクのスカーフを解いて、髪をブラシで梳かしてから、ソフィは喉の渇きを潤すためにスポーツドリンクを飲み、ノートパソコンを立ち上げて、情報屋からのメールに目を通す。
「成程。そういう意味か。確かに、一筋縄ではいかないね。」
 内容に目を通しながら、ココが苦戦している最大の理由を納得した。
「当てになるのは、このマルケス中佐だけか。他は、無理という前提で物事を考えると…。」
 机を指で叩きながら、ヨーロッパのUAV配備の情報に目を通す。
「これかな。幸い、視線はそっちに行っていない。タイミングが重要だから、ココさんとよく相談しないと。」
 打開策を思いついた後、ルームサービスで紅茶と、スコーンとクロテッドクリームを頼んで、休憩しながら、ソフィは国際情勢に目を通し始める。
『あちこちに、ビジネスチャンスが転がってるか。しばらく、忙しいかな。』

「ソフィ。入っていい?」
「どうぞ。」
 手を拭いて、ココを迎え入れる。

「タイフーンの件、ご苦労様。3個飛行隊の売り込み成功は、ミサイルの割引を差し引いても、十分利益が出るよ。大変だったでしょう?近くに、アフタヌーンティーの凄く美味しいお店があるから、ちょっと休憩しに行こう。」
「喜んで。その前に、ちょっといいですか?」

「さすがに、対応が早いね。まあ、そういう事だから、今回は大変なの。」
「困ったものですね。人間というのは。さしあたっては、ティータイムの前に、推進派の中佐の所に、行かれてはどうでしょうか。この様子だと、先に手を打つべきだと思います。」
「そうしようか。悪いけど、直ぐに着替えて。ティータームはその後にしよう。」
「はい。」
「あ、髪は、私が結んであげる。タイフーンの件のご褒美。」
 ご褒美という口実だが、ソフィが髪を結う時は自分以外の人間がするのは、ココは許さない。
 ソフィの、美しい髪は、ココの大のお気に入りだった。

「私は、今でもリーパー派だ。初飛行に成功したばかりで、海とも山ともつかないnEUROnに変えるのは、ギャンブルだからね。ただ、向こうも君たちを恐れて、出来るだけ早く勝負をつけるつもりだ。その事は、頭に入れておいた方がいいだろう。」
 マルケスは、ココと幾度か取引したこともあって、HCLIをひいきにしているという事もあるが、高性能が予想されていても、完成していない装備より、既に実績を上げている装備を好む実直な人物でもある。
 その性格が、リーパー派にしていた。

「これで、それなりに障害になるでしょう。後は、明日ですか。」
「そうだね。久しぶりに、今回は苦戦だよ。ま、こういう事もあるのが人生だけど。」
「確かに。」
 ソフィが小さく笑う。
「で、ソフィの考えている対抗策は何かな?」
 車の中で、ソフィは自分が立案した策を話し始める。
 終わると、行く予定の店に着く。

「美味しい。疲れた時は、甘い物に限るね〜。」
 たっぷりとクロテッドクリームをつけて、苺のジャムもつけたスコーンを口に運んだココは満足そうな表情になる。
「ここで、リフレッシュして、糖分も補給しましょう。」
 ソフィは紅茶を一口飲むが、その動作は非常に優雅だった。
 スーツを見事に着こなして、美しく長い金髪を結い、整った顔立ちをしているソフィは、紅茶を飲む姿やスコーン等の菓子を口に運ぶ際の優雅さも相まって、周囲の注目を集めていた。
「ここって、セレブ御用達の店なんだよね。みんな、ソフィにメロメロ。なんか、自慢したくなる。」
「それはどうも。」
 どう答えたらいいか解らず、ソフィは苦笑する。
「とにかく、ココさんは、今日は楽しんでください。これから大変ですから。」
「そうだね。後は、素敵なディナーがあると、すごく嬉しいんだけどな〜。」
 ココがねだるような目で、ソフィを見る。
「駄目ですよ。他の皆さんもいい思いをしないと、不公平ですから。」
「無論、他の面々にも、豪華ディナーをプレゼントするよ。だから、ね?いいでしょ?」
「解りました。」
『明日から、決戦だからね。』
 明日からの事を考えると、今日は、ココにはくつろいでもらうほうがいいと考え、ソフィは、ココの希望を受け入れる。




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後書き
ボディーガードだけでなく、ココの右腕としてディーラーとなったソフィと、ココが軸になる話です。
進化する武器。
それを売り込もうとする、武器商人。
つい最近も、日本のFX選定に当たって、ボーイング社とユーロファイター社との熾烈な戦いがありました。
特に、ユーロファイター社に関しては、副社長が数回来日して、三菱の重役と会ってから、さらに売り込むほどの熱の入れよう。
軍需産業も、熱い戦いがある事が、ニュースを通じて世間に伝わったのではと、感じています。
今回はUAV。
調べてみると、アメリカとイスラエルのUAVがかなりシェアを持っています。
民生用ですと、日本のヤマハも売り出してるんですけどね。
nEUROnは、去年に末頃初飛行に成功し、ステルス性が高いので偵察には持って来い。
一方、リーパーはプレデターを発展させ、武器の搭載量が多く、実績も十分に積んでいる。
どちらに軍配が上がるでしょうか。
蛇足ですが、私はFXはタイフーン派でした。
レーダーは最新式ではありませんでしたが、他の面では、日本にメリットが多く、ブラックボックス無しでしたからね。
F−35は、開発がまた遅れそうです。
大丈夫ですかね?

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