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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第34話 冬空の地に舞い降りし桜花その様正に荒ぶるが如し

<<   作成日時 : 2013/01/12 22:48   >>

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 すっかり、寒くなったな。
 もう、11月半ばだし、当たり前か。
 でも、今年の冬は寒いっていうから、気をつけないとな。

「箒が絢爛舞踏を自在に使いこなせるようになって、差が一気に開いたな。」
 紅椿のワンフアビリティー。
 エネルギー増幅能力、絢爛舞踏。
 これが発動すると、紅椿は無限のエネルギーを得たISとなる。
 エネルギーが増幅され続けるので、展開装甲を最大限に活かすことができ、訓練で著しく向上した腕前と相まって、シャルロット、鈴、セシリア、簪、玲子を全く寄せ付けない。
 ただ、興味深いというか奇妙な点として、白式にできたエネルギー供給が、他のISだとできない事だ。
 何か、特殊な認証システムがあるのか?
 それなら、ある程度は解るが。
 
 それにしても、本当に白式と紅椿は兄弟機なのに、性格が違うよな。
 エネルギーを無効化する白式と、エネルギーを増幅する紅椿。
 それだけでなく、互いの破壊キーと言える。
 どちらかが、災厄をもたらしたら、残ったISが破壊する。
 すなわち、抑止の力。
 それだけ、白式も紅椿も潜在能力は群を抜いている証しでもある。

「篠ノ之さん。技量がだいぶ上がりましたね。」
「紅椿の専任。あれくらいでないと困る。褒めてやりたいが、さらに上を目指してもらわねばな。第一、織斑やボーデヴィッヒにはまだ及ばん。それでは駄目だ。織斑はともかくとして、ボーデヴィッヒを超えてもらわんとな。」
 職員室から、真耶と千冬は1年の専用機持ち達の訓練を見ながら、話をしていた。

「よし、今日はこれまでな。おつかれさま。」
「お腹すいた。ご飯食べようよ。ご飯。」
 鈴は動きに無駄が無くなったとはいえ、やっぱり力攻めのタイプだからな。
 一番、体力を消耗する。
 でも、消費カロリーが多いから、肥満の傾向無し。結構、結構。
 口には出さないけどな。女子の前じゃ、体重の話はNGだし。

「ねえ。ちょっといいかな?」
 俺は、子持ガレイの煮つけ定食。
 箒は、親子丼に、わかめと豆腐の味噌汁。
 セシリアは、チキンソテーにサンドウィッチ。
 シャルロットは、海鮮ドリアにオニオングラタンスープ。
 鈴は、エビチリ定食。
 ラウラは、グーラッシュにゼンメル、オランデーズソースをかけたポテト。
 簪は、エビフライ定食。
 玲子が、ヒレカツ定食。
 それぞれ、夕食を食べていると、鍋焼きうどんをトレイに乗せた楯無さんが、座る。

「何ですか?」
「うん。訓練なんだけど、私も参加させてもらっていいかな?皆の上達ぶり見てると、私も加えてもらえたくなって。折角、一夏君にミステリアス・レイディを改修してもらってパワーアップしたのに、全能力を解放しての模擬戦ができなくて、困ってたのよ。」
 なるほど、そういう事か。
 ミステリアス・レイディは、アクア・クリスタルを改良して水の生成量を4割に増やし、また、数を増やすことにより、攻守両面でバリエーションに富んだ運用ができるようになっている。
 それ以外に、皮膜装甲の防御力を強化し、新開発の装甲材を使用した物理装甲に換装すると共に、動きに干渉しないことを念頭に置いて、装甲を増やしている。
 主兵装の蒼流旋にも小型のアクア・クリスタルを装備して、攻撃力を数段高めている。アクア・クリスタルが生成した水を霧状にして、水蒸気爆発を起こす事により相手にダメージを与える、クリア・パッションも蒼流旋から生成される水で、問題なく使える。
 さらに、文化祭で使用していなかったが、蒼流旋に内蔵されていたガトリング砲は、高初速中口径速射レールガン4門と荷電粒子砲に2門に換装して、射撃戦時の攻撃力も大幅に強化している。
 加えて、機動性、運動性も強化したから、相手になる人は上級生にはいないか…。
 フォルテ先輩に、サファイア先輩でも無理だろうなあ…。
 今のミステリアス・レイディの防御力は、半端じゃないし。
「いいのではないか?強い相手と手合わせをすることにより、経験が蓄積され、技量も磨かれる。私は賛成だ。一夏はどうだ?」
「俺も賛成だな。訓練プログラムを相談し合う人も、増えるしな。」
「僕達も賛成だよ。今の僕たちの実力が楯無さんにどこまで通用するか、試したかったし。」
 全員一致か。決まりだな。
「ふっふっふ。お姉さんと、改良されたミステリアス・レイディは強いわよ。たっぷり、鍛えてあげる。」
 あー。程々に、お願いしますね。楯無さん。

「ほう。楯無もか。国家代表との模擬戦のチャンスは、千載一遇の好機だ。存分に鍛えさせろ。」
 千冬姉も、楯無さんが訓練に参加するは、賛成か。
 なにしろ、皆の実力がほぼ拮抗してるからな。
 ここで、さらにレベルが高い人が訓練に加われば、その人に追いつこう、その人を追い越そうと努力した結果、レベルはぐっと上がる。
 とにかく、亡国企業の事があるから、できうる限り技量は上がってもらわないと困る。
 ここの所、静かだけど、それだけに不気味なんだよな。
 いずれにせよ。警戒はしておかないとな。

「甘い、甘いわ。甘納豆よ。」
 甲龍の衝撃砲を、ミステリアス・レイディの水がベール上に展開して防ぐ。
 アクア・クリスタルから生成された大量の水は、搭乗者である楯無さんをドレスのように包み、鎧の枠割を果たしている。
 それとは別に、攻防双方に使用する水も大量に生成されているので、それが衝撃砲を防ぎ、反撃とばかりに、水が渦巻き槍状になり、鈴に向かう。
 双天月牙で防ごうとするが、力負けして、吹き飛ばされる。
「はい。チェックメイト。」
 水のベールの壁が、鈴の左右に展開して、水を細い針のようにして、一斉に発射して、甲龍のシールドエネルギーはゼロになる。

「やっぱり、会長強いね。」
 まあ、俺達が入学する前は、IS学園最強だったわけだから、当然だが、アクア・クリスタルが生成できる水の量が増えたことで、戦術にバリエーションが増えた。
 我ながら、凄い物作ったよな。
 しかも、奥の手をまだ隠している。
 あれは、色々な意味でヤバイので、できれば訓練では使ってほしくないんだけどな。
 いや、マジで。
 いずれにせよ。これで、1年は箒を除き全敗か。
 来週、箒が楯無さんと戦う。
 さて、どうなるかね。
 機体のスペックでは、紅椿が上だが、技量では楯無さんが圧倒している。
 面白そうだな。

「皆、確実に技量が増していますね。正直に言って、予想を大きく上回っています。」
 楯無との対戦データを分析していた真耶は、真剣な表情でデータを分析する。
 既に、2学期の後半。
 さらに、今までの厳しい訓練を考慮すれば、通常より技量の向上は速くて当たり前だが、それを考慮しても、セシリア達、1年の専用機持ちの技量の向上は、真耶の予想を大きく上回っている。
「そうだな。これなら、大抵の事は何とかなるだろう。こちらとしても喜ばしいが、大きな問題がある。織斑だ。」
「織斑君ですか?」
 真耶にとっては、意外な言葉だった。
 既に世界レベルで考えても、一夏は五本の指に入る実力者と言っても過言ではないと、真耶は考えている。
 臨海学校の時点で、現役の国家代表である楯無とイーリに勝利する程の実力を持ち、それからさらに訓練をして、多くの苛烈な実戦を経験した一夏の実力に何の問題があるか、真耶には理解できなかった。
「成長が遅くなっている。見ろ。」
 千冬がキーボードを操作して、一夏の成長データを表示させる。
「過去と今を比較すれば、明らかだ。壁にぶつかっているのではないかと、私は見ている。」
「スランプでしょうか?」
 もし、一夏がスランプに陥っているとすれば、早めに対処しないといざという時に取り返しがつかない事態になる。
「そうではないな。互角以上の勝負ができる相手が、いない。シミュレーターでも不可能だ。すでに、システムの処理能力が限界だからな。」
「困りましたね。このままだと、本当にスランプになりかねませんよ。」
「教員で相手をさせることを、考慮するか。この件に関しては、私から理事長に報告しておく。」
 千冬は、すぐに理事長室に行く。

 何か伸びないな。俺。
 歩みが、遅くなった気がする。
 ロッカールームのベンチに座って、ドリンクを飲みながら、おれはそれを実感していた。
 生徒会長である以上、俺には皆を守る義務がある。
 それに、亡国企業の最優先ターゲットは俺だ。
 なのに、俺が伸びていない。
 くそっ!
 ここまでか…。
 俺はここまでしか、来れないのか!?
 何の為に、血の滲むような鍛錬に耐えてきた?
 こんな思いをする為じゃない!!
 剣術の境地。
 守る強さの境地。
 俺は、そこに辿り着くために、今まで歩き続けてきたのに!
 苛立って、ベンチに拳を叩きつけた途端、頭から冷たい水が掛った。

「少しは、頭が冷えたか?一夏。」
 呆れたような表情をした、千冬姉がいた。
「一夏。新しい教官の手配をしてもらえるよう、理事長に掛け合ってきた。来週には、着任するだろう。先へ進もうとするのはいいが、苛立ったままでは、お前の行きたいところへは、行けんぞ。」
 横に座った千冬姉は、俺を諭すように言った。
「解ってる…。解ってるんだ…。でも…、このままじゃ…。」
 俺は、ここで終わる…。
 これ以上、進めなくなる…。

「偶には、友人の家にでも行って来い。そうだな、五反田さんの所がいいだろう。のんびりしてこい。今のお前は少し休養が必要だ…。」
 休養か…。
 偶には、いいかもな…。
「そうする…。」
 そう言って、俺は風呂に入りに行った。

『真っ直ぐすぎるのも、考え物だな。上に行きすぎている…。』
 千冬から見ても、今の一夏は、相当な実力者である。
 まだ、千冬には及ばないが、いずれ追い抜かれると、確信を持っている。
 だが、真っ直ぐに前を向き、歩くことだけを考えているので、時には休むのも必要だという事を、忘れている。
 とにかく、今は休ませるのが第一と考えて、五反田家にあらかじめ連絡を入れておいた。

「久しぶりだな。こうして、お前とつるむのも。中坊の時以来か。」
「だな。」
 週末、俺は訓練を休んで、弾と一緒にアキバに行っていた。
「どうだ?最近。」
「訓練してるよ。他のみんなの訓練も、見てるけどな。」
「程々にしておけよ。どっちもな。」
「どういう意味だ?」
 弾の言う事が、俺には分からなかった。
「そのまんまだよ。お前、滅茶苦茶真面目だから、偶には肩の力を抜けって事さ。その為に、アキバに来てるわけだ。で、どうするよ?メイド喫茶のハシゴでもするか?」
「前に行った喫茶店が、あるんだ。そこに行こうぜ。」
 その時、弾の袖を誰かが引っ張った。
 て、蘭。お前、いつの間にいたんだよ?
 そして、弾。何、油汗、流してるんだよ?
 どうにも、訳の分からないシチュエーションだな。
「悪い。一夏。俺、急用があったの思い出した。すまんが、蘭と一緒にその喫茶店に行ってくれ。じゃあな。」
 そう言って、弾は、ダッシュで駅に向かった。
 何だ?ありゃ。
 そして、今度は、俺の服の袖が引っ張られた。
 う〜ん。アキバじゃなあ…。女の子はつまらないだろう。
 御茶ノ水に行くのも、いいかな。
「蘭、喫茶店でお茶してから、お茶の水にでも行くか?」
「はい!」
 すごく、嬉しそうな顔になる。
 まあ、なんかよく解らんところもあるが、喜んでるならいいか。

『えへへ。一夏さんとデート。しかも、外。』
 少し、用事があったので出かけて、帰った時に、母の蓮から、今日は一夏が泊りがけで遊びに来ている事。
 今は、秋葉原にいることを聞いて、蘭は素早くおしゃれをして、ピンクのリップクリームを塗ると、後を追いかけた。
 そして、一夏たちを見つけたわけである。
 聖マリアンヌ女学園の文化祭で、たっぷりデートを堪能したが、それは文化祭でのデートであって、外に出かけてのデートは、また別の物である。
 学園祭が終わり、亡国企業の襲撃を一夏が撃退した翌日。
 蘭は、クラスメイトや後輩から、さんざんに羨ましがられた。
 それこそ、雑誌やテレビの世界にいて、手の届かない存在であるスターとデートをしたようなものだから、無理もない。
 それでも、一夏とのデートのチャンスがあれば、見逃す気は無かった。
 おちおちしていられる状況では、ないからである。
 IS学園には、すでにモデルとして活動しているセシリアや鈴、シャルロットら、強力なライバルがいる。
 しかも、全寮制なので、いつも一緒。
 いつカップルになるか解らないので、何としても距離を縮めなければ、ならなかった。

「本当にごめんなさいね。いきなりおしゃれして出かけたから、ひょっとしたらと、思っていたのよ。服とかいろいろ買ってもらってしまって。」
 以前、一夏が文化祭の前に参考にといったビクトリア時代風の喫茶店に行った後、お茶の水で買い物をした際に、蘭は気に入った服や小物を一夏からプレゼントされたが、その事に、蓮は申し訳なく思っていた。
「いいんですよ。男としては、女の子が何か欲しがったら、プレゼントの一つもできるような甲斐性を持ちたくなるもんですから。それに、文化祭の事もありましたけど、蘭も元気そうで、すごく安心してるんです。」
 あまりにショッキングな出来事だったために、後でPTSDの類が出ていないか、一夏は気にかけており、千冬を通して確かめていた。
 だが、一夏が落ち着いて避難誘導し、ゴーレムを撃破したので問題はなかった。
 が、それでも、一抹の不安はあったので、今日、それを確かめることもできて、ようやく安心していた。
『同年代の子と比べると、本当に優しいし、大人の考え方ができるわよね。蘭がぞっこんになるのも、無理ないかしらね。』
 一夏の性格を考えた蓮は、蘭が一夏に想いを寄せる理由を、改めて納得していた。
「おい。一夏。メシだぞ。」
 奥から、弾と蘭の祖父である、厳の声が聞こえてきた。

『暢気な物ね。これから、どうなるか解ってないのかしら…。』
 IS学園から少し離れたところに車を止めて、コンパクト型のディスプレイに映った映像を見て、20代後半から、30代前半の間といった年齢の女は嘲笑する。
「さて、行きましょうか。」
 上空から、聖マリアンヌ女学園を襲ったゴーレムが、12機降下して、女に指揮され。行動に映ろうとする。

「で、そんなところで何をしている…?」
 車から降りた時、声がした方向から、歩いてきたのは千冬だった。
「馬鹿な!何故、お前が…。」
 ゴーレムを指揮していた女が、驚きながら千冬を見る。
「私は、IS学園の教師だ。いても不思議ではあるまい?」
 淡々としているが、千冬からただよう威圧感は、凄まじかった。
「で、何をする気だ。IS学園は許可なく入り込むことは、許されんぞ?」
「手ごろな生徒を人質にして、織斑一夏と交換。あのお人好しは応じるわ。今の自分なら、自力で脱出できると、考えるでしょうね。でも、世の中はそううまくはいかないわよ。あの時のように、また、いろいろとデータを取らせていただくわ。」
 その言葉で、千冬は全てを悟った。

「名は?」
 千冬が、静かに女の名を問う。
「何故、そんなことを聞くのかしら?」
「なに、これから礼をする相手の名も聞かないのは、どうかと思ってな。あの時の一夏の事の礼をな…。」
 千冬の脳裏に、一夏を誘拐され、モルモットにされた挙句、人形の様にされた記憶が蘇る。
 守ると誓った大切な弟を守れなかった、悔やんでも悔やみきれない記憶が。
「バーミリオンと呼ばれているわ。それでいいのではなくて?」
「そうだな…。それでいいか…。」
 千冬が呟くと、ピンクダイヤのブレスレットが輝く。
 次の瞬間、バーミリオンの顔が驚愕のあまりひきつる。
「どうして…?何故、お前が…?」
 女性らしい、しなやかなラインの淡い桜色の物理装甲。
 大型のウィングスラスター。
 両腕の装甲には、外見から見る限り、荷電粒子砲とレールガンが2門ずつ搭載されている。
 手に持つのは、一振りの太刀。
 第4世代IS舞桜。
 束が、臨海学校の際に渡した、暮桜の後継機に当たるISである。
「何を、驚く?私は、ISの操縦を生徒に教えるのだぞ。動かせなくて、どうやって教える?」
 バーミリオンの体が恐怖に震える。
 足がすくんで、動けない。
 逃げ出したくても、千冬から漂う「気」が、それを許さなかった。
「さて。始めようか…。貴様には、聞きたいことが色々ある。さしあたっては、そのガラクタを只の燃えないゴミにせねばな…。」

「あーらら、こらら。いーけないんだ。いけないんだ。まさか、ちーちゃんを怒らせるとは、思わなかったな〜。後でどうなっても知らないよ〜。」
 衛星で、千冬が舞桜を展開したのを見て、束は茶化した口調だが、どこか憐れんだ表情で、バーミリオンを見る。

「何年も、現役から退いていたくせに何を言うのよ?この最新型のゴーレムシリーズ12機に勝てはしないわよ。」
 バーミリオンは、どうにか声を出す。
「さあ、どうかな…。」
 次の瞬間、千冬の姿が消えて、ゴーレムが頭から両断される。
「まず、1機…。あと11機。そこで、ゆっくり見物していろ。言っただろう?聞きたいことがあるとな…。」
 千冬の視線からは、凍てつくような冷たさと、憤怒の業火の様な怒りが感じられた。
 残り11機のゴーレムが、一斉に襲い掛かる。
 舞桜の主兵装である、多機能ブレード「散桜」から、広範囲の雨月が放たれ、ゴーレムの動きを一瞬止める。
 その隙に、イグニッション・ブーストで後方に回り込んだ千冬は、空裂を2回放ち、ゴーレムにダメージを与える。
 紅椿を開発する傍らで開発していた舞桜は、現役時に使用していた暮桜をベースに運用データを解析した結果の改善点と、最新技術を盛り込み、先に開発が終了した紅椿の開発データをも盛り込んで設計している。
 燃費が2割改善されており、基本スペックは変わらないが、千冬の技量が抜きんでて高い為に、箒とは比べ物にならない程に、性能を引き出している。
 散桜は、雪片参型と同系統の兵装だが、機体そのものは、白兵戦を第一に考えられ、加速性能、機動性、運動性を極限まで高められている。
 故に、このISを使いこなすには、極めて高い技量が必要とされるが、千冬は難なく使いこなしている。

「凄い…。これが、織斑先生の力…。」
 いざという時に備えて、ISスーツに着替えてオペレーションルームにいた真耶は、千冬の技量に圧倒されていた。
 ISの性能も高いが、その特性を把握し、最適な運用をする。
 それが可能な千冬の前に、ゴーレムは圧倒されている。

 白兵戦では敵わないと判断したゴーレムは。腕部に装備されている荷電粒子砲を撃ち、背部のミサイルポッドからミサイルを発射するが、掠りもしない。
千冬は舞桜の腕部に装備されている攻撃兵装「吹雪」の荷電粒子砲とレールガンを撃ち返し、懐に飛び込むと、脚部の展開装甲をブレード状に展開し、吹雪に内蔵されているプラズマブレードと共にゴーレムの四肢を切断する。
 それは、まるで破壊の嵐の様であった。
 残ったゴーレムが反撃しようとするが、その時すでに千冬は離脱していた。

「さて、そろそろ幕引きとしようか…。」
 散桜が変形し、光の刃が現れる。
 零落白夜。
 千冬の現役時のIS暮桜、一夏のIS白式双方が持つ、エネルギー無効化ワンオフ・アビリティである。

「馬鹿な…。どうして、その機体にも零落白夜が…。」
 ゴーレムのハイパーセンサーの分析結果から、光の刃が零落白夜だと解ると、バーミリオンは信じられないという表情になる。
 ワンオフ・アビリティは、そもそもIS固有の能力で、複数のISで発現するような物ではない。
 それが、3機のISで発現しているなど、常識ではありえないのである。

「さて、そろそろ幕引きだ。ガラクタと戯れるのも飽きたのでな…。」
 千冬からの威圧感が鋭い刃物のように、バーミリオンには感じ取れた。
「それは、どうかしら?ゴーレムシリーズには、人間の常識は通じないのよ。行きなさい!」
 ややヒステリックに、命令する。
「常識か…。ふむ。」
 ゴーレムが一斉に攻撃を仕掛けるが、千冬の動きに追随出来ずに、逆に背後を取られる。
 そして、凄まじいスピードの斬撃で、全てのゴーレムが破壊される。
 ダメージを負っていたゴーレムでは、シールドを一切無効化する零落白夜の一撃に耐えることはできなかった。
「で、貴様が、私に言おうとした常識とはなんだ?先程から聞いていると、ゴーレムはISより強いと、言っている様に聞こえる。だが、どうかな?」
『化物…。』
 今や亡国企業の中で二人しかいないIS保持者である、エムとスコールを遥かに上回る実力者である千冬に、バーミリオンは、例えようもない恐怖を抱いていた。
「何を驚く?何を怯える?IS学園の専用機持ちなら、ゴーレム程度、軽く潰すぞ。まして、一夏は、私の弟にとっては、訓練相手にもならんな。」
 震える足を叱りつけて逃げようとするが、震えて動かなかった。
「何を怯えている?嘗て、お前たちは、一夏をモルモットにしたのだろう?そこまで怯える理由が理解できんな。それとも、あの時の状態が続くとでも思っていたのか?私達姉弟が、それほど惰弱だとでも思っていたのか?浅はかだな。それから、一夏の方にもちょっかいを掛けようとしていたようだが、既に、只の不燃ゴミになったと、知らせが入った。この学園の生徒を、舐めすぎたな…。」
 千冬が、一歩足を踏み出すと、バーミリオンは気絶した。

「教官。」
「ボーデヴィッヒか。ご苦労だったな。こいつを連れて行くぞ。こんどこそ、何か情報を引き出せそうだ。」
 舞桜を待機状態にすると、バーミリオンを担いで、学園の方向に歩いていく。

「さて、一夏。ぼちぼち寝ようぜ。」
「そうだな。」
 弾の部屋で一緒にゲームをしていた俺達は、ゲーム機の電源を消して、寝る支度をする。
「ホント、こういうの久しぶりだな。IS学園は、基本的に一般人は立ち入り禁止だからな。」
「まあな。ただ、俺の部屋の写真はあるから、明日、見せてやるよ。」
「お。そうか。楽しみにしてるぜ。んじゃ、電気消すぜ。」
 その時、蘭が部屋に入って、黙って俺を自分の部屋に連れて行く。
 あまりにも突然だったので、俺もついてきてしまった。
 気が緩み過ぎてるか?いかんなあ。

『で、何で、蘭と同じベッドで寝てるんだ?俺。』
 どういう訳だかわからんが、俺は、蘭におねだりされて、断りきれずに同じベッドで寝ている。
 むう。こういう流れに弱いのだろうか?
 だったら、直さないとな。
 マジで、ヤバイから。

『一夏さん、暖かい…。』
 ベッドの中で一夏に抱き着いて、蘭は体中で一夏の体温を感じていた。
『いいよね。偶には。お母さんにも許可貰ったし、神様も許してくれるもん。』
 剣と盾を持った天使が彫られた、宝飾品に近いシルバーゴールドのガントレット。
 白式の待機状態は、どこか神聖さを感じさせる。
 キリスト教系の名門校に通っているからだろうか、蘭にはそう感じられる。
『この人が、私を護ってくれた…。』
 ゴーレムシリーズが襲ってきた時、その前に立ちはだかり、退けた一夏。
 鈍感だけれど、優しくて、暖かくて、強い、最愛の少年。
『おやすみなさい。』
 穏やかな寝顔で眠っている一夏の唇に、蘭はそっと自分の唇を重ねた。
『大好きです。一夏さん。世界で一番。』

後書き
今回は、IS学園での一夏たちの訓練風景と、対等以上の練習相手がいないので伸び悩んでいるところに、千冬に勧められて、訓練から離れている一夏と、そこにせまる亡国企業の前に立ちはだかる、千冬がメインです。
千冬が現役時使用していたIS暮桜は、どのようなISが解らないので、後継機種的なISを自分で考えました。
千冬の技量が高いので、武装はシンプルにして、基本スペックを極限まで高めたISにしています。
名前は、桜の一字を入れたかったので、考えていたら、割と簡単に決まりました。
タイトルもそれをイメージした短歌です。
下手くそですけどね。
冬空の下に降りた桜。
嘗て、最愛の弟である一夏を助けることができなかった時の、千冬の怒りを表すかのように、その姿は荒ぶる者の如し。
束の言葉ではありませんが、亡国企業は、最悪の相手を表舞台に出してしまいました。
さあ、これからどうなるでしょうか?











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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
つい最近このssに出会って一気に読み尽くしましたぁ(≧∇≦)
次も楽しみにしてます(・ω・`)
ネクスト
2013/01/24 21:59
ネクストさん。
コメントありがとうございます。

楽しんでいただけて、幸いです。
頑張って執筆しておりますので、これからも、
楽しんでいただければ、幸いです。
CIC担当
2013/01/26 22:56

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