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zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第12話 アーロゲント・ドラゴン Phase3

<<   作成日時 : 2013/01/09 23:51   >>

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「それにしても、よく解ったね。私の最後の仕上げ。バルドラを、アメリカに逮捕させるって。」
「僕がココさんなら、そうするだろうなって、思ったんですよ。アメリカ、ODH、そして、S共和国に貸しが作れます。加えて、S共和国は、大きな顧客となる。武器だけでなく様々な物資の輸送に関して、かなりのシェアを握る事も不可能ではないですしね。違いますか?」
「正解。本当に頭いいね。いっその事、私の秘書役も兼任して、本格的にビジネスに関わらない?助かるし。」
 ココはソフィの聡明さに、舌を巻いていた。
 驚異的な戦闘能力だけでなく、これだけ状況を読んで、将来のビジネスの展望も見いだせる人材はそういない。
 秘書役として、自分の武器売買の際のサポートをしてくれれば、交渉はかなり楽になる。そう考えていた。

「いるよな。頭がいいだけじゃなくて、つぶしがきく奴。」
 ココとソフィの会話を聞いて、ルツが感心したようにつぶやいていた。
「おまけに、無免許だけど医者だろ。南アの時の応急処置も、見事としかいいようがなかったしな。」
 陳の部下であるカレンの応急処置の手際の良さは、アールが戦場で見たあらゆる衛生兵を大きく上回っていた。
「いいんじゃねえのか?このまま、ビジネスやらせんのも。他に生き方が見つかるかもしれねえぜ。」
 レームの意見に、皆が頷く。

 難民キャンプ向けの物資で、治療スペースを確保し終わったころ、リビエールが走り寄ってくる。
「お話し中、申し訳ありません。ミスヘクマティアル。思ったより、人手が必要で、彼を、お借りしたい。ソフィ。いや、ドクターアルムフェルト。協力してくれ。」
 リビエールが、深々と頭を下げる。
 ソフィがココを見ると、行っておいでと言いたげな表情で、頷く。
「承知しました。ベストを尽くすことをお約束します。」
「ありがとう。では、彼をお借りします。」
 ソフィは、リビエールと共にキャンプに向かう。

「あいつは、十分やってくれたからな。単独で、対空兵装を全部潰すなんて、そう簡単にできる事じゃねえ。今は、人助けに専念させてやるとしようぜ。ココ。」
 ソフィの後ろ姿を、レームが見ていた。
「そのつもりだよ。トージョ。バルドラの位置は?」
「ルシュ・ゼレン空港から南へ、約15km。そこのテントだ。弾を食らった時の応急処置が不十分だったのかもな。かなり辛そうだぜ。注射を6本打って、薬飲んで眠ってる。」
 一旦、整備と補給を済ませ、HCLIの衛星の情報を基に、トージョはプレデターで、ニコラビッチを見つけると、監視を続けていた。
「フフーフ。ソフィみたいな優秀な部下がいないと、苦労するね。レーム、みんなを集めて。」
「はいよ。」

「医師長、赤ちゃんの容体は落ち着きはじめました。抗生剤が効いてきたようです。呼吸も心拍も安定しています。」
 聴診器を首に掛けながら、ソフィはリビエールに容態を報告する。
「解った。」
「ソフィ、オペ頼む。脾臓が破裂している。」
「解りました。オペ室と麻酔医の確保、お願いします。」
 手術着に着替えるべく、ロッカーに向かう。

「いかがですか?彼。」
 作戦が決まり、メンバーが出発すると、ココは難民キャンプに顔を出す。
「これは、ミスヘクマティアル。優秀な医師ですよ。対応できる分野が、とにかく広い。今は、脾臓破裂のオペを執刀しています。ご覧になられますか?ちょうど始まる頃です。」

「ギリギリで、修復可能か。止血鉗子。」
 脾臓への血管を、止血鉗子と呼ばれる器具で止める。
「細かい出血は、レーザーメスで止めてください。4−0バイクリル。」
 すぐさま、血管の処置に取り掛かる。
「速いな。もう、血管の処置が終わる。並みの医者の倍は速い…。それに、技術も高い。」
 リビエールが、ソフィの外科医としての技術に驚嘆する。
「あの、彼、医者としてのスキル、そんなに高いですか?」
 医療の事はまるで分らないので、ココはリビエールにソフィの医師としてのスキルを確認する。
「間違いなく、一流の外科医ですよ。あの若さで、この腕とは…。」
 ココの質問に答えている間に、脾臓の修復が終わる。
「止血解除。」
 脾臓に新鮮な血液が送り込まれ、出血がないことを確認する。
「縫合に入ります。メイヨー。」
すぐさま、縫合の準備を、済ませる。
「3−0ナイロン。」
 縫合に入るが、その間、リビエールはじっと見ていた。
「バイタルは?」
「安定しています。」
「オペ終了です。」

「終わりました。思ったより、破裂の度合いが大きかったですが、しっかり修復できました。」
「ご苦労だったね。モニターで見せてもらったが、見事な手並みだったよ。その若さで、大したものだ。」
 ソフィは、嬉しくもあったが、照れもしたので、頬をバラ色に染めて、はにかんだように笑う。
 その様を、ココは写真にとる。
「これ、待ち受けにしよっと。」
「やめてくださいよ。」
 ソフィは苦笑する。
「ソフィ、こっちの患者さん頼む。」
「すぐに行きます。じゃあ。」

「彼がいてくれて、本当に助かります。医師としても一流ですし、人柄も優しくて誠実で。」
 治療がひと段落ついたマギーが、診察するソフィを見ながら、ココと話す。
「本人が聞けば、喜ぶでしょね。でも…、彼は子供で、大人を救えるのに、大人は彼を救えない…。他言無用でお願いしますが、彼は、自分がどこで生まれたかを、知りません。両親の顔も知りません。物心ついた時には、誘拐されて、戦闘訓練を受けさせられていたようです…。」
「そうですか…。」
 優しい笑顔で診察をするソフィを見ながら、マギーは悲しげな表情をする。
「ミスヘクマティアル。彼のような人間を生み出すことのないよう、私は私にできることをやるつもりです。匿名で彼の事を話したいと思いますが、許可を得たいのです…。」
 事が事だけに、ココも考え込む。
「彼の同意が、絶対条件です。それから、くれぐれも、細心の注意を払っていただきたいのですが…。」
「無論です。」
 これ以上、ソフィに重い物を背負わせる気は、リビエールには無かった。

 診察と治療がひと段落してから、リビエールは、ココと話した件について、ソフィに許可を求めた。
「構いません。医師長にお任せします。これ以上、少年兵は増えてほしくないのは、僕も同じです。僕からも、お願いします。」
「全力を尽くすよ。」
 2人は、固く握手をする。

「ココさん。仕上げの方はどうなっていますか?」
 ニコラビッチの捕縛に関して、ソフィが尋ねる。
「レームにワイリ、マオが行ったよ。大丈夫、吉報が待ってるって。」
「そうですね。」
 微笑みながら頷くと、ソフィは何か思う事があるような表情で、夜空を見る。

「人の心は、とても脆い…。虐殺行為なんてやってると、どんどん、人じゃなくなっていく…。怪物になっていく…。」
 そばにいるココ、リビエール、マギー達は、ソフィを見る。
「完全に怪物になったら、もう、人の言葉は通じないし、人に戻る事も出来ない…。そして、人はその怪物を狩る…。それが名誉と言われるから…。それなのに、歴史のページをめくると、何度も何度も人はそれを繰り返す。バルドラも同じですね…。」
 悲しげな表情になったソフィを、マギーが優しく抱きしめる。
『えっ…?』
 突然の事に、ソフィは驚く。

「ソフィの言うとおりだわ…。でも、それでも、世界には希望がある。少しでもよくなる希望があるって、私は信じたい…。ソフィも、そう信じられるように、祈ってる…。心から…。」
 子供を優しく慰めるように、マギーは頭を撫でる。
 それを見ていたルツが、やりきれないような表情になった。

「お嬢、ソフィを兵士にした組織って、解らないか?」
「今、本社の情報網を駆使して、調べさせてる。頭にきてるのは、私も同じだよ。ルツ。」
 最初は、専属の護衛として見込んだが、今では、ココはソフィを、弟のように慈しみ、愛おしく思っていた。
 故に、ソフィを少年兵に仕立て上げた組織に凄まじい怒りを抱き、本社に調査させていた。
「ココ。その事なんですが、彼の生まれに、私は心当たりがあるんです。」
 バルメの言葉を聞いて、ココとルツがバルメを見る。
「言葉です。フィンランド語と、僅かですが、スウェーデン語の訛りが、感じられます。」
「続けて。」
「私が出した結論としては、ソフィは、フィンランド人と考えています。その後、スウェーデンに家族ごと移住したのではないかと、考えているんです。ソフィアという名前は、フィンランドでも使われますし…。」
 バルメの本名も、ソフィアである事から、可能性は高いと、バルメは考えていた。
 バルメの結論を聞いて、ココはしばらく考える。
「伝えておく。キーになる可能性が、あるしね。」
 ココは、携帯ですぐに本社に知らせる。

「お嬢。もし、そいつらの本拠地が見つかったら、ボスは俺に殺らせてくれ。俺の狙撃で、たっぷり恐怖を味あわせて、地獄に叩き落としてやる…。」
 元警察対テロ特殊部隊の狙撃手だったルツは、子供を誘拐して少年兵にするような組織を、心から憎んでいる。
 ソフィを少年兵にした組織が見つかったら、ボスは自分が殺すと決めていた。
「解った。任せる。だから、今は、その怒りはとっておいて。」
「解ってるさ。」

「くそ、痛え…!あのアマ、たっぷり痛めつけて、地獄に落としてやる…!」
 弾頭を抜かれ、応急処置はされたが、ソフィに比べれば、非常に大雑把だった為に、大量の鎮痛剤が必要で、時折眠らなければ、体力を消耗し続ける一方だった。
 その為に、S共和国内の陣地に戻るのにも時間が掛る有様だった。

「来た、来た。」
 マオが双眼鏡で、ニコラビッチの乗用車が向かってくるのを確認する。
「いつも、思うけどよ。こういう場合の面子は、この3人だな。意図的に選んだ気はねえんだが…。」
 煙草の火を消しながら、レームが呟く。
「そう言えば、確かに。」
 マオが、納得したように頷く。
 ワイリは、笑いながら、手元のスイッチを押す。

 地面に埋められていた、プラスチック爆弾の爆発の衝撃で、乗用車がひっくり返る。
 何とか、ドアを開けて外に出ると、運転をしていた兵士は瞬く間に殺され、レーム達のアサルトライフルの銃口が、突きつけられる。
「ドラゴンを、ゲットだぜ。」
 怯えたような表情のニコラビッチを見て、レームはにやりと笑う。

「ヘクマティアル…!」
 レームからニコラビッチを捕縛した知らせを受けて間もなく、ココの携帯にスケアクロウからが電話を入れる。
「おや?どうしたのかな。私に用とは珍しいね。」
 用件は解っていたが、ココはからかいたくなった。
「バルドラを買う…!そっちの言い値でな…!」
「お買い上げありがとうございます。そちらにバルドラのいる座標を送るよ。これで、アメリカはヒーローだね。SEALSの奇襲でバルドラの兵士たちも投降したそうだし、いやいや、めでたい。これで、明日の新聞のトップは決まりだね。アデュー。」

「悪党が!!いつか、吠え面かかせてやるから、待っていやがれ!!」
 CIAのオペレーションルームで、スケアクロウは怒りに震えた。
 結局、ココの思惑通りに事が運び、掌の上で踊る事になったのだから、無理もない。
「ショコラーデ!ぼさっとしてねえで、画像を出しやがれ!!」
「八つ当たりしないでほしいッス。」
 ぼやきながら、ショコラーデはキーボードを操作して画像を見ると、腹を抱えて大笑いする。
「何、笑ってやがるんだ!?手前!!」
 画像を見たスケアクロウは、顔を引きつらせる。
 そこには、全裸にされた挙句、髪の毛をファイティングナイフで、でたらめに剃られて、これ以上なくおかしなヘアースタイルになり、眉毛も反られ、肛門を晒すような形で縛られた、ニコラビッチが転がされていた。

「現在、NATO諸国から派遣された医療団が、S共和国の難民キャンプで活動を行っていますが、その前段階として、我々、ODHが医療活動を行いました。そこには、元少年兵にして、優れた医者でもある少年がいました。彼によって救われた人々は、多い。しかし、これは悲しむべき事であって、喜ぶことではありません。本来ならば、大人が子供を救うのがまともな社会です。大人の勝手な思惑によって、銃を持たされ少年兵になり、戦う以外の選択肢を選べなくなった子供たちは、大勢います。いかなる理由があっても、このような事は、許されません。いかなる神の教えにも、子供に武器を持たせよとは書かれていない。この演説を聞いている、各国政府の方に申し上げたい。この悲しい連鎖を断ち切る為に、子供達の為に、行動していただきたい。それをしていただけるだけでも、少年兵を減らすことができ、彼らの心の傷を癒すことに、医師たちは全力を振り向けることができるのです。実現しない理想。夢物語という政府関係者の方もおられるでしょう。しかしながら、理想を実現しようとする意志を、我々大人が持たなければ、誰が子供たちに希望を持たせることができるというのでしょうか?どうか、それをお考えいただきたい。」
 ヨーロッパで休暇を取っていた、ココ達は国連総会におけるリビエールの演説を、テレビで見ていた。
「相変わらず、気合入りまくりだよな。で、どうだ?感想は。」
 アールがソフィを見る。
「そうですね。これで、少しでも少年兵が減ってくれれば、そう思います。」
 穏やかな笑みを浮かべて、ソフィはアールに答える。
「それにしても、S共和国も粋な真似するよな。」
 メチアルから、ソフィのことを聞いたS共和国は、ココ宛にある物を送った。
 それは、S共和国が、ソフィに医師免許と医学博士を授与する知らせであった。
「ま、ソフィもやれる事が増えましたね。何かあったら、大手を振って、医師として腕をふるえますよ。」
 バルメが、優しい表情で言う。
「はい…。」
 照れた表情で、ソフィは頷いた。

後書き
バルドラ編完結です。
アーロゲント・ドラゴン。
バルドラという、傲慢な竜は遂にお縄になりました。
予定より長くなり、3話で完結になりましたが、つくづく民族問題の難しさと、ある種の救いの無さを考えさせられましたね。
この手の問題で思い浮かぶのは、エルサレムを巡る、イスラエルとイスラム原理主義組織の闘争です。
昔は、イギリスの植民地支配の下、仲良く暮らしていたのに、すこし歯車がくるってからは、イギリスですらにちもさっちもいかなくなって、今の状態です。
責任位とってほしいですけどね。
帝国主義の時代に、種がまかれ、芽吹いた問題も少なからずあるのが、今の世界。
いつになったら、解決するんですかね…。


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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
とても面白いです。例えるなら、ヨルムンガンドの原作を初めて読んでいる時ぐらい次の展開が気になっています。次はいつかな〜😃
ふぃんち
2013/01/15 00:18

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