cogito,ergo sum

アクセスカウンタ

zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第10話 アーロゲント・ドラゴン Phase1

<<   作成日時 : 2012/12/27 21:51   >>

面白い ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

「毎日、トレーニング欠かさないね。」
「サボると、鈍りますから。できる時に、やるのが僕のルールですよ。」
 ソフィの一日は、ココが目を覚ました後の早朝トレーニングから、本格的に始まる。
 全身の筋肉をバランスよく鍛え、その他、自分で決めたトレーニングメニューをこなし、シャワーで汗を流して、朝食を摂る。
 そこから、ココの専属ボディーガードとしての、仕事に移る。
 だが、時には休みもある。
 ここの所は、海でバカンスを楽しんでいる。
 そんな中でも、ソフィはいつでもココを守れるように、傍らに拳銃を置いて、周囲の警戒を怠らない。
 ただ、傍から見ると、ここ最近の武器の情報に、目を通しているようにしか見えない。

「おいおい。こういう時ぐらい、リラックスしろよ。ここなら、殺し屋が来る確率も少ないし、いつもそうだと、へばるぞ。」
「大丈夫ですよ。警戒しつつ、リフレッシュする術を身につけていますし、ドタバタしてましたから、軍需メーカーのパンフレットに目を通していないんです。」
 南アフリカでの、兵器見本会場でパンフレットをもらったはいいが、ドクターマイアミこと、天田南博士の捜索をすることになり、その他の事も重なり、パンフレットにはまるで目を通していなかったことも事実なので、ソフィはレームにそう答える。
「研究熱心だな。おっ、これよさそうだな。」
 狙撃銃のページで、興味を持ったのがあり、ルツが覗き込む。

「こらこら。こういう時は、そういうの忘れなさい。休みなのか、仕事なのか解らないでしょ?ソフィも、こういうのは後にする。一緒に泳ご。」
 黒のビキニに着替えたココが、ソフィの腕に自分の腕をからめて、連れて行く。
「結局、あいつを休ませられるのは、お嬢だけか。」
 アールが苦笑いしながら、2人を見る。
「ああ見えて、意外にフェミニストなのかもな。ソフィ。」
「言えてる。」
 トージョとウゴが、小さく笑いながら言う。

「綺麗…。広がった髪が、太陽の光を反射して、海に宝石を散りばめたみたい。肌も真っ白ですごく滑らか。人魚が、一目惚れしちゃいそうだね。」
「どうでしょうか?僕は、顔つき自体が女性みたいですから、お眼鏡にかなわないと思いますよ。」
 ソフィは、朝起きて鏡で自分の顔を見るたびに、自分が女のように思えてくる。
 別に、それにコンプレックスを持っているわけではないが、もうちょっと男らしさがあればと、思わないことも、ないわけではない。
「そんなことないよ。すぐにぞっこんになる。でも、人魚にはあげない。ソフィは私のだし。」
 小悪魔のような微笑みを浮かべるココを見て、ソフィも微笑む。

「いいねえ。美しい夕日に、上物のブランデー。人生の楽しみを感じるぜ。」
 レームが上機嫌で、グラスを傾ける。
「隠居したおじいさんみたいですよ。まだまだこれからなのに。」
 ソフィが苦笑しながら、よく冷えた白ワインを口にする。
「でも、もう、おっさんもそれなりの歳だからな。そういう事も口にするんじゃないのかね。」
 ソフィのグラスに、白ワインを注ぎながらアールが言う。
「俺はまだ、そんな歳じゃねえよ。」
「ま、明日から仕事。今日は楽しもうぜ。ちょっと遠出になるって話だしな。」
 ビールを飲みながら、ルツがサラミを口に運ぶ。

「はい。今日からは、お仕事です。皆さん。頑張ってください。では、手元の資料を見ていただきたいのですが、今回の仕事は空輸で、アサルトライフル、軽機関銃、弾薬等の軍需物資の他に、災害用食糧や医薬品、毛布、テント等を運びます。」
 それを聞いた一同が、沈黙したので、ソフィが首を傾げると、隣のワイリが耳を貸すようジェスチャーをする。
「ああ、そういうことですか。」
 ワイリに理由を聞かされて、ソフィはすぐに納得した。

「ココが、仕事で空を飛ぶもんじゃねえ。いつも、ろくなことがねえからな。」
 レームの言葉に、ソフィを除く一同が、頷く。
「こらこら、レーム君。それは思い込みが過ぎるという物だよ。覚えておきたまえ。」
 そんな事はないという確信を持った態度で、ココは言い切る。
「でも、事実そうだよなあ…。少なくとも、俺がここに来て、空輸の仕事ではろくなことなかったしなあ。」
 ルツが呟くと、一同が深く頷く。
「でも、いつまでもそうだとは限りませんから、そう思いましょうよ。ポジティブじゃないと、仕事は成功しませんよ。」
 バルメが、深く頷く。
「ソフィ〜。バルメ〜。2人だけだよ〜。私の味方は〜。」
 ココが嬉しそうに、バルメに抱き着いてから、ソフィの頭を胸元に寄せる。
「おお、おお。いい思いしてるなあ。」
「知らないってのは、幸せだな。」
 レームが新しい煙草に火を点けながら言うと、ワイリがどこか、憐みをこめた言い方をする。

「今回の仕事ですが、ココさんには、積み荷の他に、人員と彼らの機材も運んでもらいます。彼らは、Out spoken Doctors Humanlife.人権の為、発言する医師団。通称ODH。国連等の公の場においても影響力を持つことで、有名です。場所は、S共和国ルシュ・ゼレン空港。軍需物資はそこで、人員と食料等はそこから離れた、難民キャンプへです。」
 ココが視線を移すと、身長190cmは下らない、筋骨隆々で頬に銃弾が掠った後らしい傷がある医者が、9人の医者に、何やら説明していたが、ココを見ると、軽く会釈をする。
「S共和国からの入国許可は、得てるんでしょうね?」
 ココがどうにか笑顔を作って、会釈を返して、イリジウム電話越しに、HCLI本社の担当に確認する。
「勿論です。」
 事務的な口調で、返答が返ってくる。
「となりの厄介者たちは?」
 ココにとっての重大な懸念事項を、尋ねる。
「S国にいます。」
 それを聞いて、ココは今の状況を理解した。
『ふざけるな!私たちが、地雷原を歩いている間。あんた達は、机の前でのんびりしてるのか!!』
「料金の6割は既に、頂いております。残りは、彼らを難民キャンプへ連れて行った後に、振り込まれます。では。」
 電話を握りしめながら、ココは必死に自分を鎮めようとするが、体の震えは止めようがなかった。

「当たりそうだな。今回も。」
 レームが、ニヤニヤしながら言う。
 それを無視して、ココは下を向いて大きな溜息をつく。
「機長、副機長のウゴ!」
「「はい?」」
「荷物が増える。医者10人分750〜800kg。」
「「ギリギリセーフです。」」
 できれば、聞きたくなかった答えを聞いて、リーダーらしい医者の元に行く。
「ドクターリビエール。私は武器商人だ。基本的に人は運ばない。」
「存じております。今回の事、よろしくお願いします。」
「行先は知っているはずだから、長々とは言わないが、厄介どころの土地じゃない。ばれない為に、あなたたちは貨物として運ぶ。その点は了承してもらう。」
 ある理由で、ODHが乗っているとバレないようにする必要がある。人員ではなく、貨物として運ぶ必要があった。
「慣れてますから。お気づかい無く。」
 ショートカットの若い女医が笑顔で言う。
『なれてるのも、如何かと思うけど。まあ、ODHだしね。』
 リビエール達ではないが、ソフィは、ODHのメンバーがいる難民キャンプの護衛の仕事を、したことがある。
 それぞれが、悲惨な戦場を幾つもその目で見て、その現実と戦いながら、傷ついた難民を治療してきたことをよく知っていた。

「よし、諸君!速やかに、準備に掛れ!」
 すぐに全員が席を立って、部屋を出ていく。

「何か、かっけえよな。」
「俺達とは、正反対の世界の人間だよな。はっきり言って。」
 アールとルツが、チリソースをかけたチキンとレタスを挟んだパンを食べながら、ODHの面々を見ていた。
「ソフィは、ああいう人見たことあります?」
「ドクターリビエール達ではありませんが、ODHが活動していた難民キャンプの護衛をしたことありますよ。揃いも揃って、修羅場をくぐってきてますから、そこらの医師とは違いますね。」
 準備と食事を終えたソフィが、バルメに答える。
「だよな。どうみても、普通のお医者さんじゃねえし。」
 レームが、納得したように言う。
「つうか。あのリーダーらしいドクターなんかさ。医者やってるより、傭兵の方が似合わねえか?凄えマッチョじゃん。特殊部隊の隊長って言われても、俺、疑わねえよ。」
 トージョが、笑いながら言う。
「いやはや、全く。」
 マオがトージョの意見に頷くと、皆、笑い始める。
「ところで、ソフィとバルメを除く皆さん方。」
 ソフィの後ろから、笑顔で覗き込んだココだが、表情がすぐに変わる。
「出発するから、さっさと、準備を終わらせなさい!!」
 急いで準備を終わらせる様は、猟犬に追い立てられる兎のようだった。

 ロッキード・マーティン C−17 グローブマスターV。
 前線の未整備の飛行場でも着陸が可能で、搭載量が多い輸送機を欲したアメリカ軍の要求に応えて開発された。
 全長53.04m、全幅51.76mと大きいが離陸距離は最少で500〜700m程度で足りる。
 AN/AAR−47(V)2 ミサイル・レーザー警報システム、AN/ALE−47 対抗策散布システムを搭載し、赤外線誘導及びレーザー誘導双方のミサイルに対して対
抗手段を持つ。
さらに、HCLI社でAN/ALQ−144 赤外線パルスジャマー、AAQ−24 ネメシスDIRCM(指向性赤外線妨害装置)、AN/ALQ−161A ECMシステムを搭載され、対空攻撃に対し、万全の備えを施されている。
 P&W F117−PW−100ターボファンエンジン4基を搭載し、巡航速度、最大速度も従来の輸送機より速い。
 最大搭載重量は、77.5tだが、今回は往復距離の都合上、荷は難民キャンプへ届ける薬剤や食料等の救援物資や野外手術セットに、移動式のCTやMRI等の高度な検査機器等を含めて、60tが搭載している物資の総重量である。
 近代的なグラスコックピットでチェックを済ませて、C−17は離陸する。

「こんにちは。」
 ショートカットの若い女医が、ソフィに声をかけてくる。
「どうも。失礼、お名前を伺っていませんでしたね。」
「マルグリット・メスナー。マギーって呼ばれてるわ。」
「よろしく。それにしても、S共和国か…。厄介ですね。」
 自分も自己紹介をしようとしたソフィだが、行先の事を考えると、その事ばかり考えてしまう。
「何だ。今回の目的地って、そんなに厄介なのか?」
 気難しげな顔でつぶやいたソフィに、ルツが尋ねる。
「S共和国自体は、普通の小国です。問題は隣接しているのがT共和国のX自治区だという事なんです。」
 ルツに答えて、ソフィは少し考える。
「きちんと、話しておくべきか。トージョさん。ココさんを呼んでもらえますか?多分、知っているでしょうけど、説明しておくことがありますから。ドクターリビエール。構いませんか?」
「ああ。頼むよ。」

「バルカン半島は、ヨーロッパの火薬庫と言われていることは、ご存知かと思います。特にアールさんはイタリア生まれですしね。」
「まあな。」
 イタリアの精鋭歩兵部隊ベルサリエリの一員として、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に行った経験があるアールは、身に染みて知っていた。
「その中の国の一つ、T共和国。中でもX自治区は非常に厄介な土地なんです。複数の民族、国家にとって、取り戻すことを悲願とされている土地ですから。支配権をめぐる争いが激化したのは、13世紀頃と言われています。当時の記録から、戦いは民衆を巻き込んだ悲惨極まる物だったそうです。自分たち以外の民族は、皆殺しにする。当時から、これが当たり前でした。」
「民族浄化か。つうと、あれだな。浄化の対象とされた民族の生き残りは、当然、復讐をした。」
 うんざりしたような口調で、レームが話す。
「レームさんの言うとおりです。やって、やり返してが、21世紀になっても続いた。最近、国連の調停で、ある程度鎮静化しましたが、復讐心はくすぶって、最近になって再び争いが起きました。そして、発生した難民が逃げ場所に選んだのが、S共和国です。この国は、X自治区とはなんら関係ありませんからね。ですが、他の民族は、難民をかくまったS共和国を自分たちの敵とみなしたんです。無論、S共和国は防衛の為に軍を出動させました。それ自体は、国際法になんら違反していません。主権国家は、自国を守る権利がありますから。その際、難民の扱いで揉めたのですが、人道に基づき、守るという結論を出したのです。無論、S共和国にも思惑はありました。国際世論を味方につけられますし、場合によっては、NATO軍に救援を求めることが、不可能ではありませんからね。」
「事実、すでに軍の編成が、大詰めという情報が入っている。そう遠くない内に、NATO軍が到着するだろう。ODHは、その先遣隊的な意味で、難民たちへの医療活動と現地の状況を世界に訴え、他の国連加盟国の支持を取り付ける為に、依頼された。ソフィ、話しを続けて。」
 ココが国際情勢について話してから、ソフィが話しを再開する。
「この動きに対し、S共和国の周辺国では温度差がありますが、T共和国は今迄より、遥かに強硬な態度に出てきたんです。そして、S共和国の一部を占領し、そこを足掛かりにして難民キャンプを襲い、難民を皆殺しにしようとしています。これを実行しようとしているのが、正規軍ではなく、民兵だという事が、今回の我々の仕事の危険度を上げているんです。名はバルカン・ドラゴン。通称バルドラ。」
「ちょっと、待ってくれ。バルドラ、バルドラ…。ドラガン・ニコラビッチ!あの野郎か!!」
 ドイツで警察の対テロ特殊部隊にいたルツが、記憶から名を引っ張り出すが、口調は嫌悪感に満ちていた。
 どのような男か、知っているからである。
「父親はT共和国の将軍で、正規の軍人ではないものの、影響力は大きい男です。10歳で非行に走り。20代から欧州各国で、強盗、殺人、婦女暴行、様々な凶悪犯罪を犯し、その度に投獄されますが、父親が裏で手を回し、釈放され、他の国でまた犯罪を犯し、今は、バルドラを率いています。そして、奴自身もバルドラと呼ばれています。国際法に明らかに違反する、虐殺行為を組織的に行わせているんです。クソ野郎ワールドカップがあれば、優勝間違いなしの最低最悪のクソ野郎です。だから、今回の仕事は危険で厄介です。ODHの方々にも、我々にとっても。これが、僕からの説明です。」
 バルドラの存在。
 それこそが、ODHを貨物に紛れ込ませ、バレないようにする理由であった。
 説明を終えたソフィは席に座って、ミネラルウォーターを飲む。
『情報収集は、常にしておくものだね。』
 X自治区の歴史とニコラビッチについては、以前に聞いたことがあったが、現在の状況は、海賊に襲撃された際にソフィが情報収集を頼んだ情報屋から、サービスで受け取った幾つかの紛争激化地域の情報の中に、バルドラの動きが含まれていたので、説明ができた。
「ありがとう。すまない。名前を聞いていなかったね。」
「ソフィア・スティーナ・アルムフェルト。ソフィと呼ばれていますので、そうお呼びください。それから、無免許ですが、内科や小児科、外科手術の経験も多くあります。違法ですが、依頼が完了するまで、その面で手が必要であれば、遠慮なくお申し付けください。」
 自己紹介をして、ソフィはリビエールと握手をする。
「ありがとう。ミスヘクマティアルの許可を頂いてからになるが、その時は頼む。」
「はい。」
 嬉しそうな顔で頷くリビエールは、ODHの全員の前に立つ。
「臆するな!傷ついた人々を助け、見たままを世界に伝える。それが我々の役目だ。いいな!」
「「「「アイ・アイ・サー!」」」」

「気合入ってるなあ。なるほど、そこらの医者とは違うぜ。」
 普段見慣れている医師とは違うので、ルツが驚く。
「本当。さて、みなさん。バルドラが来る可能性もあります。しばらくこちらの中で、難民キャンプ向けの荷物に紛れて、荷物のふりをしてください。こちらの荷を下ろし次第、難民キャンプに向かいます。作業は、出来る限り迅速に行いますので、それまでご辛抱を。」
ココが、シートで区切られた場所に、ODHのメンバーを隠す。
「さて、作業は迅速にいくよ。1秒も無駄にしない。」
「はいよ。」

「助かりました。ミスヘクマティアル。これで、存分に戦えます。」
 空港の司令である、メチアル中佐がココに挨拶をする。
 主力アサルトライフルである、コルト M4 MWSカービン。
 分隊支援火器である、H&K MG4、ジャベリン、スティンガーといった各種ミサイル。5.56mmNATO弾に、既に引退した国も出ているが、まだ多くの国で使用されている、FH70 155mm牽引・自走榴弾砲とその弾丸。山岳地帯での運用を想定して開発された、オート・メラーラMod56 105mm榴弾砲。各種医療セットに医薬品、大量のレーション等の物資が、次々と貨物室から運び出される。
 特に、M4カービンは、紛争が起きたことで輸入ができなくなっている為、他の部隊に供給する分も積み込まれていた。
 それらは、輸送用トラックに積み込まれ、他の部隊に届けるべく出発する。
「いやあ、さすがはC−17だ。これだけの物資を軽々と運べるとは。わが国でもそれなりの輸送機はあるのですが、更新の為の予算が、なかなか下りませんでな。」
 メチアルが羨ましそうな顔をする。

『作業は、至って順調。あと2時間くらいか。』
 C−17と、難民キャンプがある方向を交互に見る。
「触れさせない…!奴らには指一本触れさせてたまるか…!」
 民族浄化。
 傭兵として、民族問題を目にしたことも少なくないソフィは、その悲惨さをよく知っていた。
 自分の事をクズだと思う考えは、今も変わっていないが、それでも民族問題だからという理由で、難民キャンプにいる避難民を傷つけさせる気は無かった。

「ソフィ。とても、綺麗な少年兵でしたね…。」
 マギーが、ソフィの事を思い出す。
 外見からは、18程度に見えるが、今まで多くの戦場で少年兵を目にするうちに、大人びていても、ほぼ正確な年齢が解るようになっていた。
 マギーの予想は、14〜16の間だった。
「誠実そうでしたね。さっきは、無免許でも命を救おうとする、本物の医者の目をしていましたよ。」
「そうだな。」
『あんな子供が、多くの手術を経験するほど、世界には少年兵が多くいる。全て、我々、大人の責任だ。それを、もっと多くの人々に知ってもらわねば…。』
 リビエールは握手をした時、手伝いを申し出た時のソフィの誠実さを含んだ瞳を忘れられなかった。

 荷の引き渡し作業がもう少しで終わるという時に、1台の乗用車と1個小隊ほどの兵士を乗せたトラックが基地の前に止まった。
『バルドラ…!』

「初めまして。ミスヘクマティアル。間に合ってよかったぜ。そう怖い顔するなよ。別にこの基地に軍需物資運び込もうと、そんなの今は、どうでもいい。後で基地を占拠した時に頂けばいいだけだ。だが、輸送機にいる、クソ医者共は別だ。大人しく、引き渡しな。」
 迷彩服を着た壮年の男が、ココにODHの医師たちを引き渡すことを要求する。
「さあ?何のことやら。往復距離の関係上。ここに降ろす荷物以外には、何も積んでいない。船と違って、輸送機に搭載する荷は、飛ぶ距離によって極めて限定される。まして、ここはS共和国であって、T共和国ではない。あなたには、何の権限もない。まして、私の輸送機は私の所有物。この国以上に、あなたに権限などない。中を見せるには、入国料が必要だし、入国審査は極めて厳しい。あなたはパスできるかな?」
「さっさと引きずり出しやがれ。ぶち殺すぞ。このアマ。」
 額に血管が浮だたせて、ニコラビッチがそう言った時、全員が各々の武器のセーフティーを解除する。
「もう一度言う。入国料が必要で、審査は極めて厳しい。」
「話にならねえな。構わねえ!引きずり出せ!!」
 バルドラの兵士が、C−17の格納庫に入ろうとすると、アールとルツが、アサルトライフルを向け、その他全員も、手近の兵をけん制する。
 ココの部隊は、デルタフォース出身のレーム。FRDF出身のバルメ。ベルサリエリ出身のアール。警察の対テロ特殊部隊出身のルツ、自衛隊出身のトージョ。そして、少年兵として8歳から幾度もこの世の生き地獄を乗り越えてきたソフィら、ほぼ全員が、プロの軍人や対テロ特殊部隊の出身で、幾度も厳しい実戦を経験してきたのが、百戦錬磨のココの部隊である。
 対して、スタート地点から、ココの部隊とは天と地ほどの差がある、民兵部隊のバルドラ。
 結果は推して知るべしである。
 精神を戦闘に切り替えた際の凄味は、バルドラに威圧感を与え、格納庫に入るのをためらう。
「手前ら、何してやがる。さっさとクソ医者共を引きずり出せ!!」
 ヒステリックなニコラビッチの怒鳴り声が、響く。

「いい加減黙れよ。いい歳こいてギャアギャア喚きやがって、動物園のゴリラかチンパンジーか?こいつは。」
 ニコラビッチが手に持つ、CZ CZ100をM727のストックで叩き落として、レームが呆れたように言う。
「てめえら、生きて帰れると思っていやがんのか!?ああ!?」
「お前ら程度にやられるようじゃ、俺達も店じまいだな。」
 まるで問題にならないと、レームは露骨に言う。
「ココ、どうする?連中、俺たちをこの国から帰す気ないみたいだぜ。」
 レームが、ココに方針を決めるよう促す。
 大きなため息をついて、ココがインカム越しに命令を出す。
「バルカン・ドラゴンを撃滅しろ。以上。」
 こうして、戦闘が始まった。

後書き
欧州の火薬庫、バルカン半島。
旧ユーゴ紛争、ボスニアヘルツェゴビナ紛争。
第一次世界大戦の、原因もバルカン半島にありました。
とにかく、火種だらけ。
民族、宗教等、今回のココのビジネスの地はそのバルカン半島。
どこに争いの種があるか解らない、極めて危険な地域です。
地雷原ですね。本当に。
これに拍車をかけているのが、本当に民兵ですから、溜息をつきます。
ハーグ陸戦協定なんて、完全に無視。
このバルドラもそうで、しかも物凄く性質が悪いと来ています。
ココ達は、無事にビジネスを完遂できるでしょうか?


図説 バルカンの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史)
河出書房新社
柴 宜弘

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 図説 バルカンの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル









ブログ村のランキングに参加しております。
来てくださった方は、よろしければクリックをお願いいたします。
励みになりますので。

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

相互リンクはいつでも大歓迎です。
リンクをしてくださる方は、コメント欄にお書き下さい。
リンクの設定をした後に、お知らせします。

目次へ戻る。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
ブログランキング・にほんブログ村へ
ヨルムンガンド二次創作 第10話 アーロゲント・ドラゴン Phase1 cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる