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zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第03話 ボトムレススワンプ

<<   作成日時 : 2012/11/15 00:18   >>

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「繋がらない…。どうなってんのよここ。電波障害?それとも、運用者の怠惰?」
 短い白のプリーツスカートにセーター。厚手のパーカーを羽織ったココは、携帯電話に怒鳴り散らす。
「うん?どれどれ。」
 煙が見えた方向に、双眼鏡を向ける。
『ははあ。そういう事か。』
 オッドアイが見た物が、携帯が通じない理由を語っていた。
「ワイリさん。軽WAV前方の道を、特に警戒お願いします。」
 商品の納入先から、軽WAVが護衛として、派遣されていた。
「うん?何か見つけたか。」
「そうじゃないんですけど、ちょっとどころか、相当まずい事に首を突っ込んでいる可能性があります。僕の予想が正しければ。」
 オッドアイの深刻そうな口調から、ワイリはかなりの高確率だと判断した。
「解った。そっちは引き受けた。」
「お願いします。」
『杞憂に終わってくれれば、いいけど…。』
 F2000と、M&P40のセーフティーを、解除する。

「うん?」
 しばらく走っていると、ワイリは地面に何かを埋められているような形跡を見つける。
「ココさん。全車停止してください。軽WAVも停止。大至急。」
 ウゴが運転しココとバルメとオッドアイが乗る乗用車や、商品を積んだトラックは停止したが、軽WAVは横転した。
「地雷か。とんだブービートラップだ。」
「それどころじゃ、ありませんよ。あっちを双眼鏡で見て下さい。」
 ココに双眼鏡を渡す。

「な、なんじゃ、こりゃ〜!!」
 ココの絶叫が、全員のインカムに伝わった。

「これ以上ないほど、完全な戦闘状態ですね。電話が通じないわけだ。電話局や関連する施設が、徹底的に破壊されていますね。もっとも、報復行為で、相手の施設も破壊しているんでしょうが。碌に現地の情報も来ないわけですよ。
結果的に、情報が外に行かないように、なっていますから。ココさん。イリジウム電話使えるか試してもらえませんか?」
 大量の通信衛星で、地球のほぼ全土をカバーするイリジウム電話で、ココは先に現地に入っているトージョーとバルメに、連絡を取ろうとする。

「圏外…、なんですけど…。」
 ココの右の頬がぴくぴく動く。
「衛星だって、万能じゃありませんからね。あるとは、聞いていたんですよ。何箇所か、イリジウムにも圏外があるって。さて、どう連絡をとりましょうか…。」
「ま、その前に、商品を届けないとな。探すに探せないぜ。」
 アールの言うとおりだった。

「ようこそ、お出で下さいました。ミスココ・ヘクマティアル。」
「初めまして、ポルック少佐。WAVに乗っていた方々は、命に別条はないと聞いて、ほっとしています。」
「いやいや、貴方方の、適切な応急処置があればこそです。注文したSA−21 グラウラー4セットに、予備弾頭32基。確かに受領いたしました。受取証にサインをさせていただきますので、その間、どうぞお掛けになって下さい。」
 ココがテーブルに座ると、よく冷えた、ペットボトルのコーラが出された。
「いつからですか。戦闘が始まったのは?」
 訊ねながら、周囲を見渡す。
 爆撃とASMで周囲は、廃墟と化していた。

 無論、少佐の部隊も無抵抗ではなく反撃し、対峙しているロシア軍の攻撃機やヘリコプターを撃墜し、残骸が転がっている。
「つい、8時間前です。本来の司令官であるグラント中佐は、私に部隊を任せて、後方から戦局を見渡すとか理由をつけて、何処かへ行かれました。いろいろ荷物を抱え込んでね。それで、私が、ここの指揮をとっています。サインです。ご確認ください。」
 差し出された受領証を、ココはざっと見る。
『司令官が逃げ出して、この男が指揮を執っているか。そして周囲の残骸に、電話局関連施設の潰しあい。石油と天然ガスの利権争いは日に日に激しくなる。泥沼の様に、いや、底無し沼か。少佐の話だと、武器を買う資金はおそらく中佐とやらが持って行った。だが、武器は必要になる。後払いにしてさらに注文を追加する腹か。プラス利権の独占。とんでもない所に来たな。』
「確認させていただきました。それでは…。」
『こういう時は、とっとと去るに限る。』
「おや、奇遇ですな。ココ・ヘクマティアル。」
 振り向いた先には、壮年の男がいた。
「イングランドCCAT社の、カリー社長…。」
 ココと同じウェポンディーラーで、主に銃火器や各種携帯ミサイルといった、個人装備を専門とする。

「ココちゃん。お久しぶり。」
 サングラスを額に上げて、あちこちにファイティングナイフを装備している、傭兵らしい同年代の女が、ココに手を振る。
「ミルド、それにルーも。」
 少々浅黒い肌をして、左の頬に傷跡がある寡黙そうな男が、軽く会釈をする。

「それで、カリー社長。何を売ったんですか?」
「9K338 イグラ−Sに、スパイクを。注文の量が多かったので、発注する際に、単価を抑える事が出来ましてね。割り引いても十分利益を得る事が出来ましたよ。」
 イグラ−Sは、ロシアの最新鋭携帯式SAMイグラの弾頭を大型化し、射程距離を伸ばした携帯式SAM。
 スパイクは、イスラエルの最新鋭携帯式ATMである。
「いいですねえ。戦車やヘリが、次々と撃破される有様は、見ていて痛快ですよ。」
 カリーは、元イギリス空軍のエースパイロットで、戦闘機のみならず、戦車等の地上車両も破壊している。戦闘能力もそこらの傭兵には引けを取らない。
 故に、ミルドとルーを引き連れて、世界中でビジネスを展開している。
「さて、我々はこれで…。」
「申し訳ないが、追加注文をお願いしたい。」
『そら来た。』

『あまり、いい感じじゃないか。』
 ココが明らかにこの場所を去りたいのは、オッドアイも解っていた。
 だが、戦闘は仮に数日で鎮静化しても、しばらくすれば、また始まるだろうと、見ている。
 本当に終わるのは、いつか?
 泥沼どころか、ここは底無し沼と言ってもいい戦場。
 今までの経験で、充分に理解していた。
『あの少佐殿、大人しく帰してくれるかな?』
 表情には出さずに考えていると、ミルドがオッドアイの顔を見る。
「何か、御用ですか?」
「君、新人?」
「ええ。」
 短く答えて、ココ達の方に視線を移す。

「何?こんな坊やが、新人?受ける。超、受ける。」
 ミルドが笑い始めたが、そんな事に構っている場合ではないと、オッドアイは判断した。
「やめとけよ、ミルド。下手にちょっかい出したら、火傷じゃすまねえぞ。」
 レームが、やんわりと注意する。
「そうなの?信じらんない。殺気の欠片も感じないよ。この子。」
 好きに言っていて下さいと言わんばかりに、オッドアイはマルボロに火をつける。
「ちょっと、僕。煙草は大人にならなきゃ、吸っちゃ駄目なんだよ。」
 ナイフで煙草を両断しようとしたミルドだが、オッドアイは最小限の動きでかわし、煙を吐きながら、商談の行方を注視する。

「何を御所望で?」
「レーダーユニットです。空爆でこちらのレーダーサイトは、破壊されています。その代わりとなる、野戦レーダーが必要です。」
 グラウラーにもレーダーは付いているが、あくまでグラウラー専用に使用したいので、ポルックはどうしても野戦レーダーが欲しかった。
「ふうむ。そういった物は私の専門外ですなあ。」
 カリーが、如何にも残念そうにする。
「私の手元にも、今はありません。申し訳ありませんが、その件に関しては、他のウェポンディーラーを、当たってください。それでは、私はこれで…。」
「なければ、用意すればいいだけ。あなたなら造作もない事でしょう?」
 ココがカリーを、睨みつける。
「海運の巨人。フロイド・ヘクマティアルの長女。HCLI社ヨーロッパ・アフリカ兵器販売部門の最高責任者。あなたなら、核ミサイル以外なら、西側、東側問わず、レーダーを入手する位、造作もない事でしょう?」
『こっちに厄介事を押し付けて、自分はさっさとさようならか。向こうも、ここに長居するのは、得策じゃないと解っているか…。』
 オッドアイは周囲の様子をさりげなく伺い、ポルックを真正面に捉える事の出来る位置に、そっと移動する。
「無理!とにかく無理です!!こんな東欧の片田舎じゃ、荷を下ろす港もないから、まともに運んでこれるか、保証できません。それでは。皆、帰るよ。」
 ココがそう言って、歩き出す。
「逃がすな!」
「命令を、撤回していただきます…。」
 ポルックが見たのは、自分に向けられたM&Pの銃口だった。
「周囲の皆さん。ココさんに何か手出しをしようものなら、マガジンに装填されている.40S&W15発が、全て少佐に進呈されます…。そうなるとどうなるか…、個人的には実に興味深いですね…。」
 まるで北極圏の冷たい風の様な、オッドアイの微笑みに、周囲は動けなくなり、ポルックは冷や汗を流す。

「あのさ、レーム。あの子、さっきの子と同じ?滅茶苦茶怖いんだけど…。」
「だから、下手にちょっかい出すなって、言ったろう。おっかねえぞ。銃を手にしている時はな。」
 レームは煙草に火をつけて、どうなるかを見守っていた。

「オッドアイ。銃を下げて。そういう顔は、あまり見たくないから。ね。」
 ココがそういうと、オッドアイは銃を下げるが、いつでもポルックをハチの巣にできる態勢は維持する。
「少佐。私の部下達は変わり者ぞろいですが、実に優秀です。特に、彼は私の護衛を務めていますが、つい最近、追手で派遣された内務省のスペツナズ、ボスフォート6を1人で全滅させた猛者です。その気になれば、この人数なら、間違いなく全滅。しかも、かすり傷一つ、負うことなく。」
 様子を見ていたレームは、煙を吐き、「どうするよ?」と、表情で問いかける。
「少佐も、なかなかここの戦いで、勝利の美酒を味わう事に、情熱を傾けていらっしゃいますね。国境には、すでに部隊を展開済み。是が非でも逃さない。それが本心ですね。失礼ながら、この部隊について、少々調べさせていただきました。仮にグラント中佐がいても、レーダーユニットを購入するだけの資金はお持ちではないでしょう?生憎私は、前払いでしか、取引に応じません。無論、そうするからには、商品は必ずお届けします。そして、ドラッグの類を料金の代わりにする事には、応じません。私達、ウェポンディーラーは、死の商人と呼ばれています。否定はしません。ですが、死の商人なりの哲学を、私は持っているつもりです。ですので、今回の取引には応じかねます。その代わりと言っては何ですが、後払いでも、応じてくれるウェポンディーラーを、紹介する事で、折り合いをつけませんか?さっきも言いましたけど、私の護衛は、極めて優秀です。特殊部隊の中でもかなりの精鋭を引き連れてこないと、全滅は確定事項。どうでしょうか?」
 ポルックの目に映るココは、笑っているようで、全く笑っていなかった。
 もし、ここで妥協しなかったら、本当に自分達は全滅する。
 他のココの部下も、精鋭ぞろいだと判断したからである。

「解りました。それでは、紹介をお願いします。」
「ええ。特に信頼のおけるディーラーを、紹介します。」
 2人は握手をする。
「今晩は、こちらでお休みください。野営施設の一部を、提供させていただきます。シャワーもありますから、汗とほこりも流せますよ。近くに水質のいい小さな池があります。それと、レーションも。」
「感謝いたします。じゃ、行こ。髪、早く洗わないとね。」
 そう言って、ココはオッドアイを引きずっていく。
『ココ・ヘクマティアル。油断のならん女だ。カリーの方がよほど御しやかった。』
 商談を終え、カリーは既に案内役の兵士と共に、イギリスへの帰路についていた。
 商品の質は確かだが、強かな交渉相手であるココに、ポルックは舌を巻いていた。

「で、どう思う?ここの部隊は。」
「成程、内緒話が主目的ですか。」
「どっちも、主目的。本当に綺麗な髪。羨ましいなあ。」
『バルメさんが聞いたら、泣くだろうなあ。』
 心の中で、溜息を突く。
「そうですね。まず装備を見て驚きましたね。資金が苦しいのに、AKではなくて、H&K HK33をブルバップに再設計して、シンガポールで開発された、新型のSAR21の中でも、最も小型のバージョンであるSAR21 LWC。元々、ハンドガード内部に、レーザーサイトが標準装備されているのに加えて、ピカティニーレールに、ホロサイトの中々いいのを装備している。セットで割引を考慮すれば少々単価は安くなったでしょうね。他にも、携帯式ミサイルで、イグラ−Sにスパイク。拳銃はグロック。弾丸は、ストッピングパワーを重視なら23か32。確立として高いのは、弾丸の単価が安い23でしょう。19系のコンパクトモデルで、17系の22より装弾数は少ないですが、装備が統一できて、仕入れ単価を下げる事も出来ます。できるだけ優れた装備を、できるだけ安く、そしてできるだけ大量に揃える。資金はまあそれなりに、あったんでしょうね。もっとあれば、西側の最新鋭で装備を整えていたかったと、思いますよ。けれども、現実は厳しかった。それでも、どうにか資金を工面してグラウラーを仕入れましたが、資金は底が尽きかけている。戦いに勝利しても、茨の道でしょうね。パイプラインの利権で懐は潤っても、ロシアが攻めてこないとは、言えません。ますます、武器が必要になります。最終的には、妥協点を探るか、敗北でしょう。僕は、前者を選ぶと見てますけど。」
 オッドアイの髪を洗い終えたココは、胸元に抱きしめる。
「あの、ココさん。自分が裸だって事、忘れてませんか?」
「忘れてないよ。本当に、君は優秀だね。細部に渡る、観察眼。状況判断の確かさに、見事な戦略眼のおまけつき。こういう世界にいなければ、また、ちがった人生を歩んでいたんだろうね。それを、奪ったのは、私達が扱う商品が引き起こす、戦争や紛争。なのに、君は私を憎んでないのかな?」
 ココの質問を聞いて、オッドアイは小さく笑った。
「僕は、物心ついた時。多分、3歳からでしょうね。ありとあらゆる戦闘訓練、語学、その他諸々、戦いに必要な事を朝早くから、夜遅くまで叩きこまれる毎日でした。8歳で“商品”として西アジアのとある国に出荷されて、戦いに明け暮れてましたよ。アサルトライフル一丁で特攻をやった事もありましたし、旧式攻撃ヘリで、地上部隊を攻撃しろなんて言われた事もあります。ヘリコプター、陸上車輛。そういった物も、扱えるように、技術を叩きこまれましたからね。気が付いた時には、まともな職業が、務められる人間じゃなくなってました。でも、それはココさんのせいじゃないでしょう?気にする必要はないですよ。もう、まともな職業につこうなんて考えてませんから。それじゃ、お先に…。」
 だが、ココは一層強く抱きしめた。
「ごめん。聞いちゃいけなかったね。気をつける…。」
 そう、耳元で囁いて、優しく頭を撫でた。

「ここなら、連絡もできます。」
 ポルック少佐に案内役兼監視役としてつけられた兵が、イリジウムの圏内に案内した。
「あ、通じた。通じた。もしもし、お久しぶりです。ええ、私は元気ですよ。」
 ココが知り合いの、ウェポンディーラーに連絡を取り始める。
『うん。この音は…。』
 オッドアイの耳に、微かに何かの音が聞こえてくる。
『どんどん、大きくなっていく。』
 確かめるべく、双眼鏡を出して倍率を最大にする。
『まずい!!』
「商談。お終い。」
「みんな車から離れて!カモフ52 ホーカムBです!!」
 ロシアの最新鋭攻撃ヘリで、単座型の攻撃ヘリ カモフ50を複座型に設計されたものである。
 ベースとなったカモフ50に比べて、全般的に性能が向上している。
 ココを守る位置にいながら、ホーカムを見ていると、2A42 30mm機関砲で地上を掃射する。
『対地攻撃?山岳兵がいるのか。』
 次の瞬間、イグラ−Sが2発、発射される。
 1機は撃墜されたが、もう1機はオッドアイ達の方に向かってくる。

「くそっ!叩き落としてやる。」
 少し離れた所にいた山岳兵が、発射しようとするが、立ち上がる時にバランスを崩して、イグラ−Sが手元から離れる。
『ここで落とさないと、全滅だね。』
 地面に落ちそうになるイグラ−Sを拾うべく、オッドアイは必死に走って、受け止めて、素早く狙いをつけて、発射する。
 相手の反応が僅かに遅れて、イグラ−Sが命中し墜落する。
「危なかった…。」
 ほっとしていると、オッドアイの唇にココの唇が重なる。
『え…?』
 一瞬パニックになるが、次の瞬間事態を把握する。
 案内役の兵士は、面白そうに笑っていた。
「あのですね!」
「もう、ナイスだよ。見事としか言いようがないね。」
 ココが嬉しそうに、胸元にオッドアイを抱きしめる。
「まあ、先祖の使い方は、体に染みついてますし、新製品も情報はチェックしてますから。とにかく、離れて下さい。人が見てます。」
「はいはい。もう、戦闘が終わると、ホント可愛いんだから。」
 笑顔で頬ずりをして、離れる。
「ナイスショットだな。お見事。」
 山岳兵が右手の親指を立てて、ウィンクをし、腕を上げて、オッドアイとハイタッチをする。
「間一髪でしたけどね。サーマルがサムシート−50BM−1に改良されてますから。今考えると、よくうまくいったと思いますよ。」
 改良されたサーマルセンサーは、探知能力が高められミサイルの運用能力も高められている。
「感謝するぜ。お陰で仲間は死なずに済んだみたいだ。」
「どういたしまして。あ、ココさん。商談が済んだ事、少佐に連絡しないと。」
「あ、そうか。無線機ある?」
「どうぞ。」
 受け取ったココは、ポルックに野戦レーダーの手配が済んだ事を伝えて、連絡先を伝える。
 その間、山岳兵と案内役は、オッドアイから携帯式SAMで撃墜率を高めるコツを、真剣に聞いていた。
「さて、先に行っているトージョーとバルメに連絡入れないとね。」
 ココはトージョーとバルメに連絡を入れる為に、電話をかけ始めた。

「野戦レーダーは、確かに届きました。高性能の商品を、迅速に届く仲立ちをしていただき、感謝いたします。それと、貴方の護衛役に私が礼を言っていたと伝えていただきたい。彼がいなかったら、部下達は全滅していた可能性が高い。それでは。」
 ポルックの目の前には、新品の野戦レーダーがあった。
『強かだが、信頼は出来る。パイプは確保しておくか。それにしてもあの護衛。おそらくは元少年兵。惜しかったな。彼の戦闘力は実に魅力的だったよ。』

「この道をまっすぐ行けば、国境です。既に連絡を入れていますので、通行には問題ありません。」
 その後、ココとオッドアイはレーム達と合流した。
「お世話になりました。」
「それはこちらです。気をつけ!教官殿に敬礼!」
 案内役の兵士は、姿勢を正してオッドアイに敬礼する。
 オッドアイは答礼すると、2人と握手を交わす。
 餞別として、SAR21 LWCとグロック23に、ウォッカを兵士から渡された。
「それでは、お元気で。生きて会えたら、酒でも酌み交わしましょう。」
「いいな、それ。そっちも死ぬなよ。ま、あんたを殺せる奴ってのは、あんまり想像つかねえがな。」
 兵士の言葉を聞いて、オッドアイは小さく笑い、互いに再び敬礼する。

「へえ。携帯式SAMのコツのレクチャーか。」
 レームが感心したように、話を聞いている。
「妨害手段にもよりますけど、絶対に守らなければならない基本を、常にきちんと守れば、それだけで撃墜する確率は上がりますよ。ロックオンの手順を頭に叩き込んで、イメージトレーニングを重ねる。後は、高ぶったり、焦りそうになる自分の心を静める。それに効率よく操作できる持ち方ですね。」
「まあ、ヤバイときこそクールじゃねえと、ドジってあの世だからな。」
 元警察の対テロ特殊部隊の狙撃手だったルツが、納得して頷く。
「そう言えば、山岳兵から何か貰ってたよね。何?」
「そうですね。開けてみますか。あ、レーションですね。で、何でこれが…。」
 最後に出てきたのは、銀色のシートに包装され幾つも連なっており、箱に入っていた物。
 コンドームだった。
 レームを始めとする、男性陣は大爆笑しはじめ、バルメは怒りで顔が真っ赤になり、オッドアイは恥ずかしさで、顔から火が出そうになり、ココは楽しそうにオッドアイを見ていた。
「成程、成程。これはつまり、私とそういう事をする時には、きちんと使う物を使えと。大人のアドバイスだね。」
「オッドアイさん…!」
 振り向くと凄まじい表情をしたバルメがいた。
「まさか、ココとそういう事をしたいんですか?」
「しませんよ。あのですね。僕の雇い主で、護衛の対象となる人ですよ。」
「残念…。私は魅力ないか…。そうだよね。胸もあんまりないし…。」
 無論、からかわれているのは解っているが、オッドアイは大きな溜息をついた。

「古い工場ってとこか。ここで一晩過ごすぞ。明日の昼には国境につくだろうよ。」
 敷地内の一角に、車を止める。
 中に誰かいるのを、気配で感じ取ったオッドアイとレームが入口の左右に、回り込む。
 レームはサイレンサー付きのMk23を。
 オッドアイは、M&Pをそれぞれ構えて、入口から中に入る。
 そこには、1人の男が銃を構えていた。
「なんだ、ルーかよ。おーい、入っていいぜ。」
「そんな事は、言っていないが…。」
 無論、ルーの意見は無視された。

「で、カリー社長も、今夜はここにお泊りですか。」
「そういう事に、なりますな。明日の朝、国境を越えてイギリスに帰る予定です。あなたのご予定は?」
「オフです。久しぶりにドバイでのんびりしようかと。折角、頼もしい新人も入りましたから、歓迎会もしたいですし。」
「その前に、ご退場願いたい方々が来てるようですね。」
 F2000のACOGスコープをATN社製Mars 4xナイトビジョンに換装したオッドアイが入口に、鋭い視線を向ける。
「いつの間にか、前後挟まれてる。普通の兵隊じゃないね。」
 コルト ガバメントとAKS74Uのセーフティーを外しながら、ミルドは後ろを見る。
「いざという時の脱出路は、使えないな。」
 ルーが、黙々と戦闘準備を終える。
「くそっ!どこだ。」
 カリーが、二丁のP90にマガジンを装填する。
「問題が人数だな。それぞれに1個小隊もいられたら、正直きついぜ。」
 コルト M727のコッキングレバーを引きながら、相手の人数を考える。

「ドアの両サイドに、2人。バックアップに、2人控えているみたいです。この建物の大きさから計算して、入口と出口に1個分隊ずつくらいだと思います。」
「同感。出口には、1個分隊が歓迎の用意中。」
 ミルドが、出口の方を見る。

「ミルドが言っているのなら、正解でしょう。あの子、こういう感覚は鋭いですから。それにしても…。」
 バルメが、オッドアイを見る。
「似たような子が、いるとは思いませんでした。相当に修羅場を潜ってきていますね。地獄と変わらないほどの。」
 オッドアイの、気配を読む能力に舌を巻く。
「で、どうします?突入してくる敵を各個撃破するか。呼びこんで包囲するか。それとも、出口を強行突破して、慌てた敵を急襲するか。」
「後者の案がよさそうだな。で、強行突破するメンバーは、どうする?」
「提案したのは僕ですから、当然入ります。カリー社長。出口の構造はどうなっていますか?」
「ドアの向こうは、倉庫で、出口は電動・手動どちらでも開けられるシャッターだ。ミルド、倉庫に気配は?」
「まだ。いない。」
「保険か。入口の部隊で対処できると思っているから、行動に積極性はないという事か?ミルド。」
「そうみたい。」
 ルーは、出口の方の部隊の状況を、ミルドに確認する。
「よし、オッドアイに俺、それにマオとアールで、後ろの部隊に奇襲を掛ける。他は、そろそろ来る連中を歓迎してやれ。行くぞ。」
 4人は、倉庫の人の気配が無い事を確認して、ドアを開けて倉庫に行く。

「シャッターが開いたら、手榴弾をプレゼントします。開かなかったら、向こうが、親切に開けてくれるでしょうから左右から挟撃。これで、どうでしょうか?」
 オッドアイが、迎撃案を提案する。
 その時、入口付近で戦闘が始まり、後ろの分隊がシャッターを開ける。
「向こうが、親切にあけてくれたな。」
 オッドアイとシャッターの右側に身を隠し、ステアー AUGを構えたアールが、オッドアイに話しかけた。
「来ます。向こうは僕達には気づいていないようですね。行動が慎重すぎます。」
「だな。」
 その時、レームが、手で腹部が見えたら攻撃を開始しろと、指示する。
 そして、相手の腹部が見えて、攻撃が開始され、前衛の4人が倒れる。
「よーし、来るぞ。その前に下がれ。」
 少しして、発煙弾が投げ込まれる。
 既に逃れていたオッドアイは、レームに手榴弾を見せる。
 にやりと笑って、レームは敵の方向に指を向ける。
 そして、オッドアイが手榴弾を投げると、爆発音と共に逃れてきた兵が倉庫の中に入ってきて、狙い撃ちにされて、全滅する。

「MSD。御隣の、内務省特殊鎮圧部隊ですね。」
「何で、そんなのが来てたわけ?」
 血に濡れた、ファイティングナイフを拭きながら、ミルドがオッドアイに問う。
「向こうも、ここのパイプラインの利権を欲しかったんでしょう。けれど、軍を動かすのは、反対した。下手をすれば戦争になって、少佐側にまた武器がじゃんじゃん流れますからね。後払いになっても、紛争で少佐が勝利すれば、莫大な利益になる。ま、そうなる前に、ウェポンディーラーに警告を与えるのが、本当の目的だったんでしょう。僕達を血祭りにしてね。」
「ようするに、見せしめか。代償は高くついたな。貴重な特殊部隊が2個分隊全滅。」
 ルツが、肩をすくめる。
「今回は、オッドアイの作戦勝ち。もう、本当に優秀なんだから〜。」
嬉しそうに、ココが頬ずりをして頬にキスをする。
「やれやれ、羨ましいねえ。」
 アールが、羨ましそうに言う。
「ところで、どうします?ここで休むという事は、死体と一緒に一夜を過ごす事になりますけど。」
「仕方がありませんね。車の中で休むしかないでしょう。交替で周辺警戒しながら。」
 バルメも、幾多の戦場を渡り歩いてきたが、さすがに死体と一緒に一夜を過ごす気にはなれなかった。
「僕は、ココさんの護衛ですから傍にいますが、一晩中起きて周囲の気配を感じ取るようにします。幸い、ここは携帯も通じますからその時に連絡します。音が聞こえないようにマナーモードにして下さい。」
「それがいいか。でも、仮眠も取らないで大丈夫か?」
 ワイリが訊ねる。
「これくらい平気ですよ。訓練も受けてますし、戦場で24時間連続の警戒もやってますから。」
 そう言って、ココと一緒に車に行く。

「どうも、NGワード多いな。過去の壮絶さが、想像できないぜ。少年兵てのは、とどのつまりは、人と見られない、只の道具。いつもの性格もなんかプログラムみたいに思えてくるな。そうしやがった屑野郎を、つるしてハチの巣にしたくなるぜ。」
 警察の対テロ特殊部隊に所属していたルツが、怒りをあらわにしながら、吐きすてる。
 その経歴から、ルツは少年兵を平然と使い捨てにするテロ組織や反政府組織を心から憎んでおり、任務で幾人も地獄に叩き落としてきた。
「ま、とりあえず、そういう所に触れないように、気をつけるしかねえな。そんで巡回のローテーションだが…。」

 翌日の昼。
 紛争はポルック少佐側の勝利に終わり、停戦協定が結ばれたというニュースが流れていた。
「ほう。今回の件で利益を上げたのは、我々だけですな。それでは失礼。またお会いする時を楽しみにしてますよ。ココ・ヘクマティアル。」
 カリーは、ミルドとルーを連れて、イギリス行きの搭乗口に向かう。

「そんじゃ、行こうか。」
 ココ達はドバイ行きの搭乗口に向かう。

後書き
間違って、第4話を投稿してしまったので、第3話も投稿します。
アニメ第2話を題材にして、ココが後払いできちんとした商品を届ける武器商人を紹介したらどうなるかなと思って、描いてみました。
プラス、オッドアイが戦場に出るに至るまでの過去も明かされます。
まさに典型的な少年兵です。
だからこそ、戦闘時は冷徹になってしまうわけですね。
この辺に関しては、少し先になってから、彼の口から話されます。
ミサイルを東側にしたのは、やはりロシア国境での戦いに出る武器は、スティンガーは会わない気がして、変えました。
いわゆる個人的な都合ですね(笑)。


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