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zoom RSS ヨルムンガンド二次創作 第04話 バレット・オーケストラ Phase1

<<   作成日時 : 2012/11/14 23:56   >>

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 中東。
 まだ、春だというのに、欧州では真夏日の温度になる地の片隅で、銃声が鳴り響き幾人かの命が地上から、消えて行った。

「けっ!ボスの金をかっぱらって逃げたマフィアの幹部って聞いてたから、名演奏になるのかと思ったら、期待はずれもいいところだぜ!そんな根性無しの癖に、なんでこんなことしやがったんだ!?俺たち殺し屋が来るのは、解ってたはずだぜ。ああ!?」
 アロハシャツを着てサングラスを掛け、手にはAK−47 アサルトライフルのバージョンの一つで、銃床を畳む事が出来るAKS−47を持った男が苛立ちながら、目の前の男に問う。
「さあな、忘れちまったぜ。」
 縛り付けられて、身動きが取れない状態で、男はふてぶてしく言う。
 マフィアの幹部だけあって、肝が据わっていた。
「師匠。できたよ。どっこいしょと。」
 17、8歳ほどの少女が、タイマーのような物がついた、AK−47を両手両足に銃口を向けて設置する。
「ボスからの依頼でな。たっぷりと苦痛を与えてから殺してくれって、言われてんだよ。で、こいつはその為の道具だ。チナツはこの手の道具を作るのが、得意でな。タイマーをセットして時間が来れば、AKの弾丸を1発ずつ撃ち込む。」
 少女の顔を見ながら、楽しくてたまらないと言う顔で、殺し屋の男は説明する。
「バン!バン!バン!お肉が無くなって骨もくだけて、どうなるかなあ?」
 設置を終えて、少女は興味津々と言った顔で、説明する。
 その間、師匠と呼ばれた殺し屋は、さらに厳重に男を縛りつける。
「てめえら、いい加減にしやがれ!とっととやめねえと、ぶっ殺してから、豚の餌にしてやるぞ!離しやがれ!!」
 何とか、この場を逃げ出そうともがくが、無論、無理だった。
 師匠は、まぶたを粘着テープで閉じられぬようにし、嫌でも自分の手足に弾丸が撃ち込まれる様子を見る状態にする。
「じゃあな。楽しんでくれ。」
 そう言って、二人は玄関に向かう。
 タイマーが作動し、AK−47の7.62×39mm弾が両手両足にセミオートで撃ち込まれ、その度に男は苦痛に満ちた声をあげる。

「結構、いい声で鳴くじゃねえか。」
 苦痛の叫び声を聞きながら、師匠は楽しげに残酷な笑みを浮かべる。
「で、これからどうする。連絡すれば、料金は振り込まれるから、どっかにいってのんびりする?」
「せっかく、中東くんだりまで来たんだ。もう、一仕事していこうぜ。」
「そんなに都合よく、仕事あるかな?」
 チナツが考え込む。
「誰だって、頭痛の種を抱えんでるもんさ。んなもん、今以上にクソ暑い夏に抱え込むのは御免だろうよ。春の内に、何とかしたくなる。こういう時期は、書き入れ時よ。でかい仕事が、転がってるもんさ。」
「ほうほう、成る程。」
 テンガロンハットで仰ぎながら、チナツは頷く。
「ところで、チナツ。前から聞こうと思ってたんだが、何で、仕事の時はパンツ履かねえんだ?」
「悩殺して欲しい?」
 短いスカートの端を、僅かに持ち上げながら、チナツは色目を向ける。
「馬鹿。てめえが素っ裸になったって、ピクリともこねえよ。熟女なら別だがな。」
 2人組の殺し屋は、移動手段の4WDに向かって歩いていく。

 アラブ首長国連邦の、首長国の一つ、ドバイ。
 中東でも屈指の金融センターでもあるこの国で、ココ達はバカンスを過ごしていた。

「ふうむ。」
 ホテルで、ノートパソコンの画面を見ながらオッドアイは、考えていた。
 よほどの未開の地でない限り、インターネットに接続が可能のが、今の世の中である。
 他の傭兵や殺し屋の例に漏れず、オッドアイも、仕事によっては必要な武器を、ネット経由で調達していた。
 そうしていれば、付き合いの長いディーラーもできる。
「で、どうだ?これ。」
「WA2000の後期型。よくありましたね。」
「ああ。しかも最後期に生産された奴の、数少ない残りの中の一挺だぜ。」
 WA2000。
 ワルサー社製の、セミオートマチック狙撃銃である。
 ミュンヘンオリンピックの際、イスラム系テロリストによって引き起こされた「黒い9月」事件。
鎮圧することは出来たが、人質に取られたイスラエル選手と、鎮圧部隊に多数の死者を出す結果となり、当時の西ドイツ政府は、対テロ特殊部隊の創設と共に、ボトルアクション方式のスナイパーライフルでは、目標を外した場合に次弾発射までの時間が長いという苦い教訓から、国内の銃器メーカーに厳命に近い、高性能のセミオートマチック狙撃銃の開発を依頼した。
 ワルサーP38で有名なワルサー社は、機関部をトリガーの後ろに持っていくことで、銃全体をコンパクトに出来るブルバップ方式を採用したWA2000の開発に成功した。
 テストの結果、ボルトアクション式狙撃銃に負けない高性能を証明したが、重量が重く、価格が高いことから採用されず、生産数は僅かである。

「でも、僕はサコーがありますからね。あれは、ブレーザーとまではいきませんけど、ボルトアクション時の回転は、60度で済みますから、訓練して、かなり速くできるようになりましたので、必要ないですね。別に狙撃銃のコレクションしてるわけじゃないですし。」
 セミオートマチック狙撃銃は、構造上、ボルトアクション方式より、どうしても重量はかなりかさむ。
 WA2000も銃弾を装填すると、約8kgになる。

「そんな冷たい事言うなよ〜。ここんところ、売上不振でさ。お前さんが最後の頼みの綱なんだよ。SG550とか、上物も特別価格でおまけにつけるから、頼むよ。な。」
「SGは、専用弾があって、その性能を最大限に活かしますからねえ。5.56mmNATOじゃ、ちょっと。G3/SG−1なら考えますけど。」
 H&K G3/SG−1。
 7.62mmNATO弾を使用するアサルトライフルとしては、傑作と言われ、アフリカ等の地域では今でも現役であるG3の中でも、特に品質の高いものを狙撃用にカスタマイズしたものである。
 ただし、フルオート機能はそのままなので、通常時はアサルトライフルとして使用が可能で、必要な時に、狙撃に使用される。
 さすがに狙撃専用ライフルよりは、精度は劣るが、想定外の状況で狙撃が必要になった際は頼りになる。
 精度においては、5.56mmNATO弾を使用するSG550も、勝るとも劣らないが、性能を最大限に引き出すには、オッドアイが言ったように、専用弾である、GP90 5.6mm弾を使用する必要がある。
 この弾丸は、5.56mmNATO弾に比べて、市場に出回る数が少ない為に、オッドアイは緊急時に使用する際はSG−1の方がよいと考えている。

「とは言え、あなたとは、僕が戦場に出た頃からの付き合いですからね。WA2000購入させていただきますよ。それと、SG550もお願いします。GP90は、多めに。スコープはいつも通り、シュミット&ベンダー社製でお願いしますね。ああ、そうだ。念の為、グロック29をお願いします。」
 8歳で商品として出荷された頃に、このディーラーはオッドアイの納入先に武器を修めに来た時に知りあい、それから腐れ縁のようになっている。
「マジかよ!?恩に着るぜ。今、ドバイだったな。大急ぎで、そっちに送るからな。2日後には届くように手配する。」
「代金は、いつもの口座に振り込んでおきますから。」

「念のために、もう少し色々買っておいても、いいんじゃない?小型のサブマシンガンとか牽制用に結構使えるよ。」
 ココが、液晶ディスプレイを眺めながら言う。
「スターリングMk.2とか。スコーピオンですか?牽制は、拳銃で充分ですし、P90もありますからね。それに、サブマシンガンは、威力の面でちょっとね。それなりの火力が無いと困りますけど、そうなると弾丸は特殊な物になって、調達も結構大変ですから。だから、使うのは結構難しいですけど、MC51を持ってるんですよ。P90自体、キャスパーさんからの餞別ですしね。」
 MC51は、イギリスの銃器メーカー、FRオーディナンス社によって開発されたサブマシンガンだが、H&K G3を限界まで小型化したものであり、実質的にはアサルトライフルである。
 威力は申し分ないが、発射煙が通常のサブマシンガンとは比較にならず、それが原因で、使わない傭兵や殺し屋は多い。

 ココが、溜息をついて、オッドアイと自分の顔の距離を近づける。
「必要な装備があったら、きちんと申告する事。お給料とは別に、経費で落とすから。こういう仕事なんだから、目立たない武器は必要でしょ?」
「そういう装備を買う為に、高いお給料を戴いていますし、今までの貯金もあります。キャスパーさんに、スキルを見せた際に、60万ドル戴いてますから、大丈夫ですよ。」
 料金を口座に振り込んで、ノートパソコンの電源を落とす。
「ですから、大丈夫です。自分の商売道具は、自分で調達するのが僕のやり方ですから。それは、御理解下さい。」
 そう言って、M&PとF2000の分解整備を始める。
傍らには、東欧で選別に貰ったSAR21LWCとグロック23を、何が起きても対処できるようにしていた。

「よし、終り。」
 整備が終わった頃に、ココが後ろから抱きついてくる。
「あの、何か?」
「よそよそしい。他人行儀。」
 ココが不満そうに、口をとがらせる。
「は?」
 意味が理解できずに、オッドアイは瞬きする。
「何一つ、これが欲しいって言わないし…。どこか、壁作ってるし…。私は寂しいの!」
『何をしろって、言うんですか?』
 銃を手にし、世界中の戦場を巡ってきたオッドアイは、こういう事に慣れておらず、どうしていいか解らなかった。

「要するにだ。子供なんだから、少しは大人に我儘の一つも言えってことだよ。これが欲しい。あれを買ってとか。ま、そういう事だ。解るかね?オッドアイ君。」
 レームがウィスキーを飲みながら、オッドアイに話す。
「別に、我儘を言う気はありませんよ。お給料はいいし、仲間は頼りになるし。ボスは有能だし、これ以上ない好条件の仕事場じゃないですか。それに、こんな贅沢なホテルに泊まった事なんて、無いですよ。いつも、最底辺の安宿でしたからね。」
 最低限の設備と、まずい食事。
 質の悪いサービスの、3拍子が揃った宿に泊まるのは、9割が脛に傷を持つ人間で、武器を持っていこうが誰も気にしない。
 故に、都合が良かった。

「もう少し、人生楽しめよ。お迎え待ってる爺じゃねえんだからさ。」
 アールが、上物の赤ワインを入れたグラスを、渡す。
「お前ってさ。酒もあんまりこだわらないだろ?」
「こだわりますよ。気候に合わせて、アルコール度数を調整して、体を冷やさないようにしますし。」
 それを聞いたアールは、盛大に溜息をついた。
「飯はどうだよ?」
 ルツが、訊ねる。
「カロリーと栄養をきちんと取れれば、問題ないです。イギリスの、味の欠片もないオートミールを食べられるようになると、味なんていちいち気にしませんよ。」
 イギリスのレーションは、各国のレーションに比べて、味はあまり良くなく、特にオートミールは味が無い事で有名だった。
 会話を聞いていたココは、顔を覆って盛大な溜息をついた。

「オッドアイ。特別任務。今日一日、私とデートしなさい。夜は、ディナーの後、ベッドの上でシャンパンを開ける。いいわね。」
「最後の部分は、まずいと思いますが。」
「何?まだしたことない?」
「あります。初めては8歳の時でした。最初の戦場で、一緒に出荷された女の子とね…。直ぐに戦死してしまいましたけど。」
 まずい事を聞いたと皆は悟り、沈黙が下りる。
「とりあえず、今日はそのスケジュールで行くから、そのつもりで。レーム。他のメンバーで巡回等のローテーションを決めて。」
「はいよ。んじゃ、楽しんでこいよ。少年。」
 全員を集めて、レームがそれぞれの分担を決める。

「ココが…。ココが…。男と…。ベッド…。」
 バルメは、ココとオッドアイが出かけた後、うつろな表情で、ブツブツとつぶやく。
「うわ。姉御、超やべえ…。」
「やっぱ、ショックか…。ココさんが、男とベッドインは…。」
 トージョーとワイリが、バルメを見ながらそう話す。
「ココさんだって、女性だから。そういう時は、あるだろう。特に、オッドアイは、過去が相当壮絶だそうだしな。随分、気にかけてるんだよ。伝えたい事が、あるんだろうな。言葉では伝わらない事がさ。」
「さすがに、女房と子供がいるだけあるねえ。」
 ココの部隊で、妻子持ちはマオだけである。
 元は東南アジアのある国の砲兵部隊に所属していたが、事故で部隊は解散し、マオは除隊する事となった。
 その時、東南アジアに来ていたココが、スカウトして今に至る。

「で、父親の目線で言えばどうかね?俺的には、いろいろヤバイ気がするんだよ。今のままは。」
 レームがマオに問う。
「知識、教養共に富んでいるのは、ココさんから聞いている。けれど、ごく普通の人間が知っている、ありふれていて、けれども、大事な事を知らない。以前、ココさんに言ったそうだよ。心が欠けているって。多分、それだろうな。そこに、どうにも危うさを感じるよ…。」
「それは?」
「家族の暖かさ。もしくは、それに近い物。これを知る必要がある。それと、奪われた人間らしさを取り戻す。普段のオッドアイは、人らしさを演じる為のシステムみたいなもの。そう感じる。それでは、駄目なんだ。システムじゃなくて、彼の個性としなければならない。それが私の結論だよ。」
「賛成。」
 ルツが、そう言って手を上げる。
「でも、どうするんだよ。あからさまにすると、逆効果になりかねないんじゃないのか?」
「いつものノリで、いくのがいいんじゃねえのか?というより、それ以外に方法はないと思うがね。朱に交われば、何とやらってやつさ。」
 ウゴの疑問に、レームが答え、皆が頷く。
「決まりだな。まずはだ。」
 レームは、ブツブツとつぶやく、バルメを見る。
「あいつを、こっちに戻そうや。」

「う〜ん。こっちもいいし、あっちも捨てがたいし、かといって、さっきのも似合ってたし。」
 ショッピングモールで、ココは、オッドアイと自分の服を選んでいた。
「そちらのお客様ですと、クリームイエローとアイボリーの中間にあたる色のスーツがお似合いかと思いますが、如何でしょうか?こちらにお薦めの品がございます。」
「あ、それ見せて。」
『フォーマルな場は、黒か濃紺系で問題ないと思うけどね…。』
 戦場の他にも、護衛役として、パーティーやレセプションにも行った事があるので、そう行った場で着るスーツも、オッドアイは持っている。
 そして、そう言ったスーツは、高級レストランに行くのも全く問題ないので、これ以上、服を買う必要を感じなかった。
 とは言え、ココ達が自分の事を気づかってくれているのは、解っており、それを無視するのもどうかと思い、合わせながらも周囲の気配に気を配っている。
 無論、その事に誰も気づいてはいない。

「ねえ。ソフィアは、どう思う?」
 デートなので、オッドアイの了承を得て、ココは本名で呼ぶ。
「そうですね。僕の髪の色を考えると、あまり派手な色だと違和感が出るかもしれませんから、店員さんのお勧めのがいいかと。」
 いくつかのスーツと自分の髪の色を比較して、オッドアイは結論を出す
「でも、ちょっと、地味すぎない?まあ、あんた、おとなしい性格だからそれでもいいかもしれないけど。よし、そっちとあっちも、お願い。で、私は…。」
 結局、スーツやドレスの他に、アクセサリーの類に、宝石をちりばめた高級時計等を買った。

「時計とかは、別に買わなくてもいいと思いますけど…。」
 戦場では、時間厳守であるために、傭兵は精度の高い時計を使用する。
 オッドアイの使用する時計のメーカーは、レームと同じ、スイスのオメガ社製である。
「私の護衛をしていると、時には、パーティーやレセプションにも、同席する事がある。そういう時、あれはちょっとごつすぎるからね。ああいうものも必要になる。無論、精度は折り紙つきだし、凄く似合うしね。ふふ。」
 ココが嬉しそうに、オッドアイに腕を絡める。

「うお。WA2000の後期型じゃねえか!まだあったんだな。」
 注文から2日後、届けられた武器を見て、その中にあるWA2000を見て、ルツが驚く。
 ドイツ軍や警察でも採用されなかった為に、ルツもこれを撃った事はなかった。
「SG550にシュミット&ベンダーのスコープ。いざという時は、狙撃にも使えるようにか。GP90は多めだな。後は、保険のグロック29か。出来うる限り想定できる状況に対応できるようにか。まじめなお前さんらしいな。」
「何があるか、解りませんからね。あれ?おかしいな。あと、3挺入ってますね。注文した記憶はないんですが…。」
 不思議に思いながらも、箱から銃を取り出す。
「なんだこりゃ?」
 アールが奇妙なものを見る目で見る。
「L85A1?あの、どうしようもない駄作銃をか?でも、かなりいじってあるな。」
 L85A1。
 イギリス製のブルバップライフルである。
 しかし、あまりにも欠点が多くほとんど使い物にならないのに加えてスチールフレームを採用しているために重量が嵩み、現場の兵士たちから欠陥銃の烙印を押され、特殊部隊であるSASはすぐに愛想をつかした。
 その後、H&K社が改修して、欠点はかなり解消されたがそれでも問題は多い。
 一緒についていたマニュアルにしたがって、分解をしてみると、完全に別物だった。
 問題が多かったマガジンは、NATO圏のアサルトライフルなら、ほぼ全て使用できる、STANAG マガジンに変更され、全弾装填すると、かなり高い確率でマガジンが自重で落下するマガジンキャッチャーが改良されている。
 機関方式も、G36のロータリーロックボルト方式の機関部が、そのまま移植されている。
 位置に問題があり、ジャムの元凶となっていたコッキングハンドルは上部に移され、左右どちらの利き腕にも対応できるようになっている。
 エジェクションポートも、切り替えが可能なように改造されている。
 さらに、ピカティーニレールが追加され、様々なオプションが追加可能となり、重量が嵩む原因になっているスチールフレームは、アルミ合金製になり、その他の部分もプラスチックが可能な限り使用され、重量が大幅に軽減されていた。

「すげえ、いじり方だな。」
 ワイリがしげしげと見つめる。
「でも、性能はだいぶ向上してそうじゃん。上のレンジで試し打ちしようぜ。」
「そうですね。あと2つはと。また改造型がでてきましたよ。今度はG36か。」
 ドイツ軍の制式アサルトライフルであり、目新しさこそないものの非常に堅実な構造のアサルトライフルである。
 これを、全長36cmと、可能な限り小型化し、ストックをテレスコピックとフォールディングを組み合わせたストックに変更している。
 さらに、ピカティーニレールを、各部に装備している。
「要するに、極限まで小型化して、拡張性も高めたわけか。まあ、割とまともじゃん。」
 L85に比べれば、それほど大胆な改造ではなかったので、トージョーはさほど驚かなかった。
「今度は、普通ですね。イジェマッシ PP−19 ビゾンの初期型か。」
 1993年に、イジェマッシ社で開発されたサブマシンガンで、ヘリカルマガジンという特殊なマガジンを採用し、装弾数最大64発という大量の弾丸を装填する事が出来る。マカロフとトカレフの他に、9mmパラベラムも使用可能なので、近年では海外への売り込みも盛んである。
 ちなみに、初期型と後期型があり、後期型ではトカレフの装弾数が少なくなっている。
「僕はトカレフですね。ちょっとしたボディーアーマーなら貫通できますから、そこらのサブマシンガンより、頼りになります。」
 ココの護衛をしている以上、何があるか解らない。
 小型のサブマシンガンは、携帯性に優れるが威力に劣る。
 一般人でも、通信販売でボディーアーマーが買う事が出来るのが、今の世の中である。
 状況によっては、それなりの威力がある銃が必要になると、オッドアイは考えた。

「うん?手紙が入ってますよ。」
 バルメが、箱の底に手紙を見つける。
「手紙ですか。どれどれ。やっぱり、クランクさんだ。」
「あのオッサンか。なるほど、こんなもん作るとしたら、世界中探しても、あの変人くらいだな。」
 ワイリが納得したように頷く。
「まだ、現役だったのかよ。とっとと引退すりゃいいのによ。奇妙な物ばっか作るから、自分の所に回って来ると考えると、胃に悪いぜ。」
 レームが、溜息をつく。
 英語で変人という意味のクランクという異名を持つガンスミスは、その方面ではよく知られていた。非常に優れたガンスミスでありながら、まともな物より、奇妙な物を作る事が圧倒的に多く、それが自分の所に回ってきたらと考える傭兵は多い。だが、全て性能は良い。けれども、それだけでは、信頼できないのが銃である。
 故に、まともな物はよく売れるが、奇妙な物はさっぱり売れないという有様だった。
 クランクとオッドアイの付き合いも長く、時折、銃のカスタム化を頼んだりする事もある。
 その際は、くれぐれもまともな物にするように、常に念を押していた。

「遂に、僕の所に回ってきましたか…。まあ、性能は問題ないと思いますけど、念の為、テストをしておきましょう。仕事で使う時に変な事になると、怖いですから。」
「そうだな。それがいい。」
 トージョーが、肩を叩く。

「とりあえず、L85か。いや〜、楽しみだね。」
 シューティングレンジに皆が集まる中、クランクが改造したL85とG36の試し打ちが行われようとしていた。
『人事だと思って…。』
 にやにや笑うレームを、オッドアイは恨めしく思う。
「とりあえず、30発マガジン3個からな。大抵のL85はここいらへんでアウトだから。」
 もっとも、その前にアウトになる事の方が多いがな。と、言いながら、アールはマガジンを渡す。
「じゃ、いきます。」
 まず、セミオートで数発撃って、次にフルオートに変更する。
「お、快調じゃん。」
 珍しい物を見たという感じで、アールは言った。
 全弾打ちつくした後、マガジンを交換し、再び撃ち始める。

「とりあえず、マガジン3個空にしても、問題無しか。たいしたもんだな。」
 ルツが感心したように、言う。
「じゃあ、あとマガジン7個分撃って、計300発でテスト終了。次はG36を試します。」
 再び、シューティングレンジに射撃音が響き、各々も訓練を始める。

「問題なかったね。あれなら、充分、使える。」
「ま、奇妙な物作っても、出来はいいですから。クランクさんの作る物は。」
 昼食を食べながら、オッドアイに送られてきた、改造銃の話題になる。
「WA2000も、いいな。精度は、ボルトアクションに、全然引けを取らねえ。」
 ルツは、頼み込んでWA2000を試し打ちしていた。
「SG550も、精度はさすがだな。通常戦闘も、緊急時の狙撃も充分いけるぜ。」
 レームはSG550を試し打ちしてみたが、通常射撃、狙撃、双方の精度の高さを、高く評価していた。
「ビゾンもトカレフを64発装填できますから、ちょっとした徹甲弾の代わりになりますね。」
 バルメは、珍しいヘリカルマガジンのビゾンを試し打ちしていた。

「で、午後はどうするね?」
「と言うより、どうしてバカンスなのに、揃いも揃って、ホテルな訳?」
「いやあ、居心地いいしさ。」
 ルツの答えに、ココは溜息をついた。
「昨日は、充実していたな…。オッドアイの見かけからは想像できない、アサルトライフルは、素晴らしかったよ。ベッドの上で乾杯したシャンパン、一層美味しく感じたしね。ね?今夜も…」
 言い終わらない内に、オッドアイがバルメの方を指さす。
 虚ろな目で、ブツブツ呟いている。
 どうやら、再び、あっちの世界に行ったようだ。

 暫くして、バルメを現実世界に戻してから、ココはノートパソコンを起動させて、本社から送られてきたデータに目を通す。
「殺し屋のリストですね。」
 ココのノートパソコンの液晶画面を見たオッドアイは、それが何なのか、すぐに気づいた。
 護衛の経験も多いオッドアイの頭の中には、殺し屋のデータベースがある。
「そっ。でも、ここ、治安いいから、気にする必要ないと思うけどね。」
 リストを眺めているうちに、オッドアイは、ある殺し屋グループに目が留まる。
「オーケストラ。メンバー増えて2人になったんですね。」
 イタリア系の、殺し屋集団で当初のメンバーは8人だったが、7人は死亡。
 1人が、生き残った。
 ここまでが、オッドアイが知っている、オーケストラについての情報である。
「何だ?そのオーケストラって殺し屋。」
 ルツが話しに入ってくる。
「殺し屋なんて、星の数ほどいますけど、その中でも危険さでは、一、二を争いますね。全盛期は、フランスで警察相手に、一晩2万発ぶっ放しましたから。」
 それを聴いたルツは、唖然とする。
「想像するだけで、おっかねえな。でも、今は2人だろう?考えすぎじゃねえのか?」
 今なら、そんなに問題ない。
 そう、ルツは判断した。
「ところが、そうじゃないんですよ。2年前、カモッラの抗争で、一方がオーケストラを雇ったんです。この時は、まだ、1人。ですが、残ったのが、1番危険だったんですよ。何しろ、銃を楽器に例えて、ぶっ放すことを演奏という奴でしてね。相手のボスの殺害をした時、オペラハウスで観客、出演者、楽団と一緒にボスを殺したんですよ。」
「完璧に、イカれてるぜ…。そいつ。」
 ルツの顔が引きつる。
「だから、危険なんですよ。頼むから、ドバイにいて欲しくないんですよねえ。正当防衛が成立しても、周囲が死体の山なんて、ぞっとしませんよ。」
 オッドアイが、考えこむ。

「ま、考えてもしょうがないよ。どんなに用心しても、駄目なときはある。それに、武器商人が武器相手に怖がってたら、商売上がったりだしね。」
 ココはなんでもないように、言う。

「とまあ、殺し屋に関してのお話は、お終い。バルメ。ショッピングどう?ここ、品ぞろえ、いいよ。」
「行きましょう!是非、行きましょう!!」
 バルメがこれ以上ないほど嬉しそうに、ココの手を握る。
『まったく、この人は…。』
 心の中で溜息をつきながら、如何にも、観光客が使用するリュックに銃と予備のマガジンを、不審に思われない程度に入れる。
 そこで、あるアクシデントが待っているとは、誰も知らなかった。

 ココ達が話していた、オーケストラが、ドバイの街を歩いていた。
「Hey,Chinatsu. (おい、チナツ。)」
「La canna killer,a piedi verso la cosa cielo.(殺し屋たる者、空を向いて歩くものだ。)」
「Oh,davvero.(あ、成程。)
「Si sono interrotti nel loro punto di vista dei diritti umani formato 16:9, la meta di esso a 180 gradi.(180度で縦横比16:9の人間の視界、その半分を、お前は自分で遮っている。)」
「Quindi, smettere di vedere solo il terreno. Io non sto cercando la mia.(だから、地面ばかり見るのはやめろ。地雷探しじゃないんだぞ。)」

「うん?」
 少し離れた所を歩いているオッドアイを見て、チナツの頬が赤くなる。
「師匠!あの男の子見て!綺麗な金髪で、すっごい肌も綺麗だし、目はオッドアイだよ。凄い美少年。」
「目標が近づくぞ。」
 師匠の言葉を聞いて、チナツは殺し屋の表情になる。
『オーケストラ確認。』
 ディーラーから、ドバイでの裏のガンショップを聞いていたので、すぐに向いながら、レームにメールを送る。

「ほいよ。M11だ。」
 60代で、両の頬に銃弾が掠った痕のある老人が、小型のサブマシンガン2丁を出す。
 MAC M11。
 サブマシンガンでも、最も小型の部類で、全長はストックを畳んでいる時は、約25cmである。
「どうも。」
「毎度。9mmじゃなくて、いいのかい?値段はそんなに変わらないがね。」
「出来る限り、使いやすい方がいいんですよ。牽制用でして。」
 オッドアイは、以前、ココが言っていた事を思い出して、9mmパラベラムより小型の.380ACPを使用する方を選んだ。
「そうかい。生き延びて、また何か買いに来てくれ。それに、死ぬには早すぎる。堅気の稼業じゃないが、それなりに人生を楽しむ権利はあるよ。」
「どうも。じゃあ。」
 ジャケットの下に、予備マガジンと一緒に隠す。

「いい!これ、いい!!」
 ココが一目で気に入ったのは、カルティエの高級時計だった。
 明らかに男性用で、女性が使うものではない。
 だが、それでも、ココはそれが気に入った。
「決めた!買う!」
 ココは、店内に入ろうとする。
「私に、プレゼントさせてください。ショッピングに誘ってくれた御礼です。ここで待っててください。」
 バルメは急いで店内に入り、買い求めプレゼント用の包装も頼む。

 ショーウィンドウを見ているココに気が付いたチナツが歩み寄るのを見て、
 オッドアイは、隠しているM11のセーフティを、何気なく外す。
「Ma*l bekra”ftelse.Fo”rberedelser info”r Battle.(目標確認。戦闘準備。)」
 オッドアイは、スウェーデン語で、自分に戦闘準備を命じ、精神のチャンネルを入れ替える。

後書き
原作の、ムジカ・エクスマキーナに当たる話です。
この話で、オッドアイの過去がちょこっと、出てきます。
自分の事をどう思っているのか、齢15にして、この稼業をしていることに関してどう思っているのか。
そういった事から、オッドアイのパーソナリティが少し、解ります。
もっともその前に、ココに忍び寄るオーケストラの手からココを守らないとなりませんが。


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