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zoom RSS 機動戦士ガンダム 〜Test Force Story〜 第4話 キャリフォルニアベース攻防戦

<<   作成日時 : 2012/06/22 22:33   >>

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「なんだ?」
 長距離砲と対空砲を設置し、土嚢が積み上げられた、キャリフォルニアベースの砲兵陣地で、ジオン兵は、何か聞こえた気がして、ふと、空を見上げる。
 それが、その兵士のこの世での最後の人間としての行為だった。付近に着弾した徹甲榴弾の破片が体をズタズタにし、地面は、ペンキをぶちまけたようになる。
 設置されている砲も、少なからず破壊された。

「連邦の攻撃か!?」
「んな訳あるか!!我が軍以上に射程が長い砲と言えば、陸上戦艦の主砲ぐらいだ。そんなもん使ったら、基地はおしゃかだから、使うはずねえ!!」
「けど、現実に撃ってきやがったぞ!この威力からして、陸上戦艦の主砲じゃねえ!伍長!本部に緊急連絡!」
「はっ!」

「第1小隊仰角8度下げ。第2小隊仰角10度上げ。第3小隊は現状維持。第2射終了後、各機の位置を変えるぞ。」
 ヒルト率いるMS中隊と戦車中隊は、昨夜の内に移動しており、強化されたリバースのセンサーを使用して、着弾修正の指示を出す。
「射撃準備よろし。」
「撃て!」
 榴弾砲の仰角調整が終了した、ガンタンク中隊は砲撃を始める。

「長距離砲陣地。既に壊滅状態です。戦死傷者多数。」
「MS隊を出撃させろ。発進可能な艦は、緊急発進。一隻でも多く、宇宙に上げろ。それまで、何としても、時を稼げ!!」
「はっ!」

『どういう事だ…。タンクもどきの主砲も61式の主砲も、射程では砲兵陣地の長距離砲に劣るはず。陸上戦艦の主砲では基地を奪還するどころか、破壊する可能性も生じる。一体、どうやって…。』
「偵察機を出せるか?」
「はっ。可能です。」
「連邦の本隊を偵察させろ。状況を把握せねばならん。」
 バイルシュミットの命令に、司令部のオペレーターは一瞬言葉を失う。
「君の言いたい事は解る。だが、敵戦力は我々が想定していた編成とは、少なからず異なる点があると見るべきだ。それを、何としても知らねばならん。これは命令である!」
「は、はっ!」
 バイルシュミットもオペレーターも、今回の偵察が、片道切符。帰ってこれない事をよく理解していた。

「第1小隊はポイントB。第2小隊はポイントD。第3小隊はポイントFに。MLRSスタンバイ。補給部隊は次弾装填の準備を整えろ。俺が命令したら、すぐに撃て。」
「隊長。敵MS部隊、動き始めました。」
 戦車中隊に随伴してきたホバーの、ソナー員がMSの駆動音を複数拾った。
「数は?」
「どうにか2個大隊かきあつめて、あとは小隊規模という所です。さらに、マゼラアタック2個中隊も確認。」
『総力戦を仕掛けてくると思ったが、違うのか?いや、兵やMSを宇宙に還す為の時間稼ぎの部隊か。守りきれないって、敵の司令官も解っているか…。』
 ソナー員の情報から、ヒルトは状況を察した。
「MSの機種は解るか?」
「大半はザク。総数の3分の1程度、ドムとグフがいます。」
「ご苦労。何か、解ったら、連絡を頼む。それと、危険だと判断したら、全速で逃げろよ。いいな。」
 ソナー員から情報を聞き終わった頃に、ジオンのMS隊が有効範囲に入る。
「撃て!」
 9機合計で、36発の大型ロケット弾が発射される。

「隊長、奴ら、何かをぶっ放しました。」
「ビビるんじゃねえ!!あんだけ、でかい音と発射煙を上げたんだ。自分から、地獄行き片道切符を買ったも同然よ。叩くぞ!」
 ドムを駆る隊長は、MS中隊を率いてガンタンクがいると思われる場所に一直線に向かう。
 しかし、地獄行き片道切符を買ったのは、自分達だった事を知らなかった。

「ぐあああっ!」
「た、隊長!!」
「畜生!!」
 ロケット弾の弾頭が四散し、大量の対MS用HEATクラスターのスコールが降り注ぐ。
 強力な磁石で装甲に張り付いて、ゼロ距離で爆発すればMSといえどもただでは済まない。
 まして、複数となれば、結果は推しているべしである。
 他の戦線でも、大きな被害を出していた。
「戦車中隊は、俺達が出て20秒後に、マゼラアタックに側面から奇襲をかけろ。61式の主砲なら、一撃で仕留められるはずだ。」
「MS隊が囮に?」
 戦車中隊の隊長が、驚きのあまり目を丸くする。
「そろそろ、俺らの仕事に取りかかるんだが、その時、ちょうどマゼラアタックをこっちに反らす事が出来る。そこを狙え。」
「はっ!了解しました。」

「進軍!基地を奪還するぞ!」
 ラミリーズの艦橋から、マクギャバンが命令を出し、攻略作戦の為に編成された、3個MS大隊が、基地に突撃する。

「予備兵力投入!マスドライバーは?」
「エムデン。発進できます!」
「よし、すぐに発進させろ。他の艦も発進可能にするんだ。急がんと、連邦のMS隊に抑えられる!」
「了解!」
「偵察機、撃墜されました。データ収集も失敗に終わりました。」
 結局、無駄骨に終わった偵察機の派遣に、バイルシュミットの口の中に苦い味が広がった。

「1隻目が、宇宙に向ったか。マゼラアタックの掃除は終わったな。戦車中隊は、苦戦している部隊の支援に回れ。但し、無理はするな。それは、俺達の役目だからな。ガンタンク中隊は、次の支援射撃終了後、全速で後退。旗艦の直営に回れ。」
「「了解!」」
 マスドライバーを抑えようとするヒルト達に、基地のMS隊が襲い掛かる。

「遅いぜ。」
 ビームライフルの一撃で、ザクを戦闘不能にする。
「成程。こりゃ、すごい。各小隊、フォーメーションを崩すなよ。」
 楔型のフォーメーションを組んで、ヒルト達はひたすらにマスドライバーを目指す。
「おっと。」
 少し、後ろに下がって、上からヒートホークで襲いかかろうとしたザクの攻撃をかわして、右腕のツインビームサーベルで両断する。
 他の機体も、押し気味に戦いを進めていた。
「いいな。このコクピット。」
 今回の改修にあたり、開発中の360度全天モニターの技術を流用した前方180度の半全天モニターを採用している。
 通常より、モニターの視野が広いので、通常は死角になる場所からの攻撃も死角にはならない。
 両断したザクの後ろから、グフがヒートサーベルを抜き放ち、斬りかかる。
 ヒルトは、ツインビームサーベルで、攻撃を受け止める。
「こいつ使うか。」
 左腕のシールドには兵装も搭載しており、その一つがヒートソードである。
 材質もジオンのヒートソードやヒートホークより優れた物を使用しているので、切れ味は当然上回る。
 ヒートソードでグフを両断して、もう一つの兵装である100mmマシンガンと、背部の127mm速射砲で、2機のザクを撃破する。

「あのジム。連邦の新型か。性能が、普通のジムとは段違いだ。パイロットの腕も、MS隊の指揮能力も。ザクでは相手にならんか。手の空いているドムをぶつけろ。あのジムを何としても撃破するのだ。」
 バイルシュミットが、ヒルトが駆るリバースの撃破を厳命する。
『他の戦線も状況は厳しいな。』
 砲兵陣地を突破されてからは、予備部隊も投入したが戦線をどうにか支え切るのが精いっぱいだった。

『多くないな。戦車部隊もベストを尽くして、うまいとこトンズラしてくれたか。』
 マスドライバーを守るMS隊を撃破しながら、ヒルトは作戦がうまくいっている事に満足していた。
 その時、モニターに新手が映る。
 コンソールを操作して拡大すると、ドムが4機にザクが6機接近して来る。
「新手か…。まだ時間あるな。各機、追加のお客だ。目の前のお客の接待をとっとと済ませるぞ。」
 通信を済ませると、2機で迫って来るザクの懐に飛び込み、ツインビームサーベルとヒートサーベルで仕留める。
 各機も、順調に敵を仕留めていた。
『この数なら、合流されても、問題ないな。ドムの狙いは十中八九俺だろうからな。』
「ドムは俺が引き受ける。ザクを頼むぜ。」
「ちょっと待って下さい。ドム4機を1人で相手にするんですか!?」
 アランが、通信を入れてくる。
「奴さんの狙いは、俺だしな。ここに至って出張ってきたとすれば、奴さんにとっては虎の子だろ?だったら、応えるのが男ってもんだぜ。んじゃ、残りは頼む。俺の代わりに指揮を取れ。いいな。」
 通信を切ったヒルトは、ドム相手にリバースを全速で走らせる。

 ドムは2機ずつ、左右に展開しながら、ジャイアント・バズーカを撃つ。
「おっと、危ねえ。」
 脚部の姿勢制御スラスターを、ブレーキ代わりに使用して回避し、ビームライフルを発射する。
 出力が強化されたビームは、重厚なドムの装甲を易々と貫き、戦闘不能にする。
『地球じゃ、核融合炉を爆発させる訳にはいかないからな。気を使うぜ。』
 MSは動力源として、核融合炉を搭載している。
 いわば、動く核兵器といってもいい。
 もし、これが地上で爆発したら、それはいわば戦術核兵器を使用するに等しく、周囲は放射性物質で汚染される。
 故に、融合炉を爆破させずに、戦闘不能にする必要がある。
「とりあえず、1機!」
 右から回り込もうとするドムを、バルカン砲で牽制しつつ、ドムのヒートサーベルを、ヒートサーベルで受け止める。
 そして、押し込まれたふりをして、100mmマシンガンを発射し、戦闘不能にする。

「手強い!」
 4機という、圧倒的に有利な状況だったはずなのだが、既に半数を失った事に、ドムのパイロットの1人は動揺する。
 目の前の、初見のジムは、明らかにドムを凌ぐ性能を持ち、パイロットも歴戦のエースだと、理解した。

「サンルイス、発進しました。ブラジリアも発進準備完了。」
「すぐに、発進させろ。他の艦の発進準備は、後、どの程度かかる?」
「どんなに急いでも、15分は。燃料注入は完了しており、兵員も収容を完了しておりますが、物資の一部やMS隊が…。それに、試作機も…。」
 キャリフォルニアベースでは、新型MSやMAの開発も行われており、何機かは、運用試験を行っていた。
「輸送艇の準備状況は?」
「只今、終了いたしました。」
 輸送艇は、内部に鉱物等の物資を搭載し、宇宙に射出して味方が回収する、使い捨ての軍用艦艇である。
 各種物資は、全て、こちらに詰めこまれ、後は、射出されるだけだった。
「余剰の輸送艇に、MSを詰め込めるだけ詰め込め!準備が整った輸送艇は、直ちに発進。本国艦隊司令部に暗号通信。『我ら、遺憾ながら、基地を放棄す。各種艦艇の回収を願う。』輸送艇発進!同時に、輸送艇へのMSの収容作業、急がせろ!」

 1人でも多くの兵を。
 1グラムでも、多くの物資を。
 1機でも、多くのMSを宇宙に送る。
 その気持ちで自らを奮い立たせ、キャリフォルニアベースのジオン軍は戦っていた。

 基地の戦力は、戦線を支えきれない状態にあり、個々のパイロットの奮闘で、どうにか持ち堪えているという状況だった。
「マスドライバーの味方部隊、全滅!しかし、第89歩兵連隊所属の第3歩兵小隊及び第2工兵小隊が、対MSミサイルで最後の抵抗を試みるべく、陣地を構築しました!」
 オペレーターからの報告に、バイルシュミットは言葉を失った。
 嘗て、連邦がMSを所有していなかった頃、対MS特技部隊と呼ばれる部隊が存在し、指揮官の才覚次第では、MSにとっては頭痛の種となっていた。
 ジオンはそこに着目し、連邦が量産型MSの生産を開始したとの情報を得た時から、歩兵でも携帯可能な、生産性の高い対MSミサイルの設計、量産を開始した。
 しかし、特技部隊の犠牲により、対MSミサイルによる戦術のノウハウを大量に構築していた連邦は、対処法も大量に構築していた為に、予想を大きく下回る戦果しか上がらなかった。
 それでも、ないよりマシとばかり、大量に生産され、各部隊に配備されていた。

「すぐに、撤退させろ!あのジムには、そんな物は歯が立たん!!撤退させろ!!これは、命令だ!!」
 しかし、オペレーターが伝えようとした時には、通信が途絶えていた。

「隊長。準備できましたぜ。」
「おう。すぐ、持ち場に戻れ。客が来るぞ。」
 吸っていた煙草を地面に捨てて、第3歩兵小隊隊長のボリス・アモンは、
 積み上げた土嚢の周囲を、特殊な速乾コンクリートで作った急造陣地から、双眼鏡でヒルトと合流したMS中隊を見る。
 後方のマスドライバーと輸送艇の発着区域から、艦艇が次々と発進する。
『ザンジバルは、どうにか半数か…。とにかく、時間を稼がないとな。』
 対MSミサイル「シャルフシュッツェ」。
4個分隊で合計20基が、既に配置を整えている。
さらに、重機関銃の配置を終える。

「来ましたぜ!隊長。お客さんこちらから3000にいらっしゃいますぜ!!」
「各分隊、ミサイル及び発射機の最終確認。パーティーが始まるのは、2000からだ。それまでに済ませろよ。」
 アモンは、手早く最終確認を終えて、双眼鏡でヒルト率いる中隊の様子をうかがう。

「やっぱり、いたな。」
モニターには対MSミサイルと重機関銃を設置した、急造陣地が、しっかりと映っていた。
「まさか。あれで、やりあおうってんじゃないですよね?」
 ジムの装甲は、ガンダムと同じルナ・チタニウム製ではない物の、歩兵が携帯する、対MSミサイルでは、ほとんどダメージを受けない。
 チタン合金を装甲材に用いているが、コストパフォーマンスの許容範囲で、可能な限り各種兵器に対する対策を、施してある。
 さらに、リバースは重要な部分には、ルナ・チタニウムを使用し、さらに装甲材を新開発のチタン系合金セラミック複合材に換装し、胸部には特殊なリアクティブ・アーマーを増設してある。
 常識的に見れば、喧嘩にもならない。
「奴らなりに、ここを死守する気なんだろう。今頃、疲れた体に鞭打って、艦艇が宇宙に脱出する準備を、急ピッチで進めているだろうからな。」
 アレクの質問に、ヒルトは答える。
 すでに、ザンジバル級は5隻が、宇宙に向けて発信していた。
 無論、連邦に見逃す義務はない。
 要撃機が、爪と牙を研ぎながら待っている。
 仮に、発進できたとしても、どれだけ宇宙に辿り着けるかは、ヒルトは疑問だった。
「いずれにしても、あっちはあっちで、最後まで戦い抜く覚悟だ。どんなに無謀な作戦でも、出来る限りの手段でな。なら、応じる。あそこの連中、多分指令を無視しての独断専行だろう。陣地がいかにも急造だ。ミサイルを除けば、武装もたいしたものはない。俺達にも意地があるように、命令無視をしてでも、貫き通す意地が、奴さん達にはあるんだよ。俺はそれに応えて、全力で奴らを叩く。安っぽい感情論だけどな。来る気が無い奴は、後方で待機してくれ、予備兵力にもなるしな。ついてきたいやつだけ、ついて来い。」
 ヒルトがそう言うと、ジムCを駆るアレンとアレクが左右を固める。
「なら、俺達もついて行きますよ。長い付き合いじゃないですか。」
「だな。」
 少しすると、他の小隊もヒルト達の左右を固める。
「同じ釜の飯を食いながら、指導を受けた身としては、高みの見物なんてしませんよ。地獄の果てまでお供します。」
 第2小隊を率いる、グランフェルト少尉が、ヒルトに通信を入れる。
『やれやれ…。』
 グランフェルトの気持ちは嬉しかったが、その反面、わんぱく小僧を持つ、父親の様な気分になる。

「よし、第2、第3小隊は側面を固めろ。罠の可能性がある。迅速に行動しつつも慎重さを失うな。行くぞ!!」

「お客さんが、突っ込んできますぜ!」
「有効射程に入り次第、攻撃開始だ。クラッカーも忘れるなよ。」
 アモンが、双眼鏡から目を話さずに、指示を出す。
「クラッカーなら、いつでも、いけるぜ!!」
 第2工兵小隊隊長のダン少尉が、アモンに通信を入れる。
「射程まで30秒。安全装置を外せ。全員、関節や首の付け根を狙え。そこなら、一泡吹かせられる。」
 防御力の弱い部分を狙って、僅かな間、MSを行動不能にして、パイロットを捕虜にする。
 成功の可能性は極めて低いが、アモンが最も確率の高いと考える作戦だった。

「よし、クラッカーを鳴らせ!!」
 車載式のベルト給弾式グレネードランチャーが、MS隊とすれ違いざまに、連射される。
「くそ!鬱陶しい奴らだぜ!!」
 パイロットの1人が、バルカン砲で蹴散らそうとするが、今度は、地面のハッチが開いて、30mm対空機関砲が発射される。
『そういや、こいつが使われてなかったな。マスドライバーを壊すわけにはいかなかったから、空爆出来なかったら破壊できないままだったしな。』
「落ち着け!この程度じゃ、ジムの装甲には、傷一つつかない。落ち着いて、撃破するんだ。アレン、アレク。このまま突っ込むぞ。」
「「了解!」」

「度胸がありやがるな。予定が狂っちまった。まあいい。各分隊、指揮官のジムにミサイルを集中させろ。あいつをとっ捕まえれば、状況も変わる。」
 そして、リバースが有効射程に入った。
「撃て!」
 20基のシャルフシュッツェが、MSの弱点とも言える、各関節部に向けて発射される。
「おっと!」
 肩と膝の姿勢制御スラスターで、制動を掛けて、リバースが僅かに後ろに下がる。
「そら!」
 メインスラスターと脚部スラスターで、一気に舞い上がる。
 姿勢制御スラスターを噴射した際の熱がフレアの代わりになり、半分はそれに喰らいついて、地面に突っ込むが、残り半分は上昇して、リバースを狙う。
「これで、終りだ!」
 頭部バルカン砲と胸部ガトリング砲でミサイルを落として、ハイパーバズーカを陣地に向けて発射する。

「何とかいけそうな気が、したんだがな…。」
 陣地は破壊され、部下も殆どが戦死し、残った部下も傷は深い。
 アモンはシャルフシュッツェの発射機の破片が、右胸を貫通し、左の脇腹を切り裂き、その他にも傷を負っていた。
「こりゃ、助からねえな…。」
 咳をすると、大量の血が吐き出させる。
 無性に煙草を吸いたくなって、胸のポケットに手を伸ばすが、しまっているのは右胸のポケットで、傷から噴き出た血で吸えなくなっていた。
「今度からは、左のポケットにするか…。」
 そう言って、苦笑し、アモンは静かに目を閉じた。

「閣下。マスドライバー、制圧完了。」
「うむ。マスドライバーの被害状況は?」
 オペレーターの報告を聞いて、マクギャバンはマスドライバーの状態を訊ねる。
「損害なしとの事であります。」
「見事だ。よし、チェックメイトを掛けるぞ。予備部隊を投入。司令部を完全に制圧せよ。」

「マスドライバーが、奪還されたか…。脱出できた艦艇数は?」
「ザンジバル級が7隻。輸送艇は20隻。全体のおよそ3分の2です。」
 艦艇の発進準備は、バイルシュミットの指示で終えていたので、予想より多くの艦艇が発進するできたが、それでも3分の1は敵に拿捕され、各種物資、試作MS及びMAも抑えられてしまった事も、また事実である。
 バイルシュミットは、しばし、一言も言わずに、連邦軍の予備兵力投入の報告を聞くと、降伏の意思を伝えるよう、オペレーターに命じた。

「大変な戦いでしたね。隊長。」
「そうだな。」
 アレクにそう答えると、ビールを喉に流し込んだ。
「これで、キャリフォルニアベースを奪還。地球には、ジオンの纏まった戦力もないし、ようやく連邦は、地球を取り戻した事になるんですかね?」
「これからが、大変さ。残党狩りが何年続くか。しかも、戦争が終われば、ゲリラやテロリストと同じ扱いを受ける。捕虜の権利は正規軍に属していなければ、認められないからな。」
 コロニー落としの影響もあって、地球に住む市民のジオンに対する憎しみは深い、過激な思想団体には、サイド3の住民は親族を含めて、徹底的に抹殺するべしと声高に主張する団体もある。

「俺は、地球まれだが、正直、宇宙に行きたいよ。残党狩りなんぞに駆り出された日には、ポルノ小説家でも目を背ける事間違いなしの惨劇を、何度見ることになるやら…。」
 勝利したのだが、これからの事を思うと、ヒルトは気が重くなる。
 その時、軍用ジープを運転してきた伝令兵が、ヒルトの前で敬礼する。

「ハルトマン少佐殿。マクギャバン閣下が、お呼びであります。至急、ラミリーズに出頭するようにとの事であります。」
「了解した。」
「どうぞ、お乗りください。」
 後部座席のドアが開かれ、ヒルトはジープに乗る。
「ちょっと、行ってくる。ああ、これで、連中に一杯奢ってやってくれ。」
 財布の中から、中隊のパイロットに奢るというには、破格の紙幣が渡される。
「偶には、上物のウィスキーやブランデー飲んでも、罰は当たらねえさ。出してくれ。」
 ジープは、ラミリーズに向けて走り出した。

「少佐、座りたまえ。」
 マクギャバンに促されて、ヒルトは指揮官室のソファに座る。
『さて、何なのやら…。』
 労いの言葉だけで呼ぶとは、ヒルトは考えていない。
 マスドライバーの奪還という任務を、パーフェクトに遂行したとはいえ、所詮は、一少佐であることを、ヒルトは良く理解していた。
「今回の作戦、本当によく働いてくれた。君の策を採用して、序盤から有利に戦えたからな。」
「光栄であります。閣下。」
 ヒルトの言葉は、あくまで形式的でしかなかった。
「これで、地球での大きな戦いは終わった。後は、局地戦や残党狩りになるが、これは、現地部隊に任せることになっている。私は、北米大陸を担当する事になった。」
『おいおい。残党狩りに精を出せってか?それだけは勘弁だぜ。』
 まだ見ぬ悪夢が待っているかと思うと、げんなりするが、もちろん顔には出さない。

「さて、本題に入ろう。総司令部は、今回の作戦での君の功績を高く評価していてね。第3艦隊のワッケイン司令が、是非とも君の中隊を欲しいと言ってきた。戦場は、宇宙へと移る。有能な指揮官とMS部隊は、喉から手が出るほど欲しいと言ってきてね。正直、悩んだが、要請を受け入れることにしたよ。」
『願ってもない事で。』
 地球で繰り広げられる悪夢を見ないで済むと考え、ヒルトはほっとした。
「ブリュンヒルト・ハルトマン少佐。貴官を中佐に任命し、第3艦隊第4戦隊MS隊隊長に就任するものとする。」
「拝命します。」
『戦時昇進にしては、早すぎるな。なんかありそうだな。』
 昇進する度に、厳しい任務を任されているので、昇進の裏に何かあるのではと、ヒルトは疑り深くなりつつあった。
「宇宙での任務については、軍の中でも機密事項でな。ここで話す事は出来ん。ジャブローに向かい、貴官が率いる部隊と合流。話はそれからだ。」
「はっ!」
『さて、何がある事やら…』
 肩をすくめるのを我慢しながら、ヒルトはラミリーズを去った。

「宇宙ですか?」
「ああ、第3艦隊の第4戦隊MS部隊隊長をやれだと。」
「だから、中佐ですか。とすると、結構な数を率いる事になりますね。」
 アレンは、ヒルトの昇進を喜びながらも、これから率いる戦力がどれくらいか考え始める。
「戦隊は通常4隻だろ。ただ、連邦にMSの運用能力があるのは、ペガサス級だけだぜ。後はどうするんだ?」
 アレクが腕を組む。
「最悪、コロンブス級を改装すれば、何とかなるだろ。サラミス級は護衛に専念すればいいさ。直衛のMSが必要になるがな。いずれにしても、行ってみなくちゃ解らんさ。とりあえず、MSの補修・整備作業がある。それが終わってから、出発だ。それまで、美味い食い物を食って、美味い酒を飲んで、それに、いい女で命の洗濯でもして来い。俺はデスクワークが終わったら、部屋でのんびりさせて貰うよ。」
 ヒルトは少佐という事もあり、オフィスと私室が与えられている。まずは、オフィスでデスクワークを終わらせ、その後は私室でのんびりする気でいた。

「じゃあ、少佐も夜の街へ繰り出しましょうよ。いい女がいる店の事、聞きましたから。書類整理もそれ位には、片付くでしょうし。」
「そうだな…。宇宙についた途端、戦いになるってこともあるしな。精神をリフレッシュさせるかね。」
 アレクの誘いに乗りながらも、半ば愚痴りながら、ヒルトはオフィスに向かった。

「それにしてもあれだな。」
「うん?どうした?アレク。」
「隊長とは、長い付き合いになるけどよ。どうも、苦労とは無縁じゃないな。」
「まあな…。絶対、給料釣り合ってないよな。」
 アレンとアレクは、憐れむように、遠ざかるヒルトの背中を見ていた。

後書き
MSは、非常に汎用性が高い兵器ですが、それは、一つの分野に特化した兵器には、劣る部分もあるという事でもあります。
ザクキャノンやジムキャノンのキャノン砲は、射程距離では通常の榴弾砲には劣ります。
まして、基地の破壊ではなく占拠となれば、陸上戦艦の主砲は使えません。
その状況を覆したのは、「タンクもどき」とかあまりいい渾名ばかりの、ガンタンクの改装型。
さらに、マスドライバーを守ろうとした歩兵たちが持ちだしたのは、ベルト給弾式のグレネードランチャーに対空機銃。連邦のMS特技兵が使用していた、対MSミサイルです。
戦車も、運用次第によっては、MS部隊に少なからぬ損害を与える事は、できるはずです。
MSが戦場の覇者となっても、MSだけで戦争をしているわけではありません。
MSはあくまで、軍隊が戦場で勝利を得る為のシステムの重要なパーツです。
事実、宇宙では、大量に生産されたボールが物量戦術や、MSの支援で少なからず戦果をあげています。
今回は、そういった事も書いてみたくなりまして、書きました。


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