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zoom RSS 機動戦士Zガンダム〜ネオ・ジオン戦役〜 第21話 間奏

<<   作成日時 : 2012/06/08 21:54   >>

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「3日か…。威力偵察から、敵は動きを見せんな。まあ、その間、こちらも休養を取れるから、ありがたいと言えば、ありがたいがな。」
 行動を起こさないグレミーに対して、ブライトが訝しむ。
 何か、策を考えているのではないかとも取れるが、偵察部隊の報告では、今の所、それらしき動きもない。
 常識的に考えれば、本隊の一部を再編成して威力偵察を行っているのだから、次の日からでも、本格的な攻略作戦を開始するのが常道というものだろう。
「こっちは、毎回、全機出撃ですからね。連日攻めてきて、こっちの疲労を蓄積させるのは、有効だと思うんですけれど、向こうの指揮官はそうは考えないのでしょうか?」
「こういう事じゃない?カミーユ。連日攻め立てていれば、自軍にもその度にダメージが蓄積する。それを無視できないから、一度の戦闘で勝利の美酒のコルクを開ける。」
 カミーユの疑問に、フォウが自分の意見を言う。
「ふむ。少尉の考え、当たっているかもしれんな。とすれば、それを可能とするだけの決戦兵器を、向こうは持ち合わせているのかもしれん。」
 クワトロの言葉を聞くと、カミーユの表情が僅かに暗くなる。
「どうしたの?カミーユ。」
「うん…。ちょっと、前にね…。」
 カミーユの表情から、クワトロはある事を思い出す。
「ロザミア・バダムか…。」
 オーガスタ研究所に所属する強化人間で、一時期は捕虜としてアーガマにいた事もあるが、周囲のクルーたちとも交流を持つという奇妙な関係だった。
後に、フォウが搭乗していたサイコ・ガンダムの後継機であるサイコ・ガンダムMk.Uに搭乗し、敵として立ちはだかり、カミーユが撃破している。
 その事は、カミーユの心に暗い影を落としていた。

「私は、アイアースに行ってくる。ハヤトやアムロ達とも意見交換をしておきたい。それまで、各自、休んでいてくれ。」
 ブライトがブリッジを去った後、カミーユ達も自室に戻った。

『ロザミア…。』
 薬物と催眠を使用しての強化人間に対する洗脳は、体に大きな負担を与えるが、強力である。
 少し前までカミーユと親しくしていたのに、今度は敵として、サイコ・ガンダムMk.Uを駆り戦いを挑んできて、自らの手で戦いに終止符を打った時の事は、今でも忘れられない。
 既にパイロットとして、カミーユは熟練の域に達しているが、人を殺す事に慣れているわけではない。
 戦いが終われば、人殺しを拒む自分と、敵のMSを撃破し人を殺している自分とのギャップに、苦しむ。

「カミーユ。」
 部屋のドアが開いて、フォウが入って来る。」
「ああ。フォウ。どうしたんだい?」
「ちょっと、心配になって。ごめんなさい、勝手に入ってしまって。」
「フォウの前に、鍵がかかっているドアを作った覚えはないよ。気にする必要はないさ。」
 ほっとしたような笑顔を見せて、フォウはベッドに座っているカミーユの隣に座り、胸にカミーユの頭を乗せて、優しく抱きしめる。
「フォウ…。」
「無理に話さないでいいわ。ただ、私は、沈んだり暗くなったカミーユを見ているのが、嫌なだけ。だからこうするの。」
 フォウの温もりが、カミーユにはこれ以上なく心地よかった。
「さっき、クワトロ大尉が言った事、覚えてる?」
「ロザミア・バダムね。その人が関係しているの?」
「うん…。」
 カミーユは、ロザミアの事を話し始めた。

「やはり、そちらでも変に思っていたか。こっちもアムロと話し合っていたんだが、どうも向こうの出方が読めない。」
 艦長室の応接セットで、ブライトはハヤトとアムロの3人で、グレミーの真意について話し合っていた。
「俺個人としては、MAの調整を考えているんだ。一年戦争では、とにかくいろんなMAとやりあったからな。」
「確かに…。局地戦でのMAは厄介な相手だったな…。」
 ガンダムに苦戦を強いられたジオンは、特定の環境で能力をフルに発揮するMAを実戦投入し、ガンダムを撃破しようとしたが、ことごとく返り討ちにあっている。
「だが、砂漠であればMSで事足りる。わざわざ実戦投入する必要を感じないが。」
「確かにな。ブライトの意見ももっともだ。だとすると何だ?手持ちの戦力を全て投入しての総力戦で、勝負に出る気か?」
 アムロがそう考えるのも、無理はない。
 自軍の戦力を集中して、敵を撃破するのは最もポピュラーな戦術である。
「分断を図る可能性もある。アーガマとダカールの守備隊。これを引き離したうえで、各個撃破する。もし、それを狙っているとしたら、まずいな。ダカールの守備隊から割ける戦力は限りがある。さらに言えば、戦力を割けば守備隊の戦力低下に繋がり、ダカールが制圧される可能性が生じる。」
 それからも、しばらく議論は続いたが、アーガマとダカール守備隊を引き離すのが、グレミーの狙いだと結論が出た。

「まあ、多分、それで正解だと思いますがね。もし、こっちが乗らなかった場合、ヤバイですよ。向こうも、手段を選ばなくなる可能性が、高い気がしますから。」
 アーガマで、パイロットを集めてのブリーフィングで、ヤザンが敵の策に載らなかった場合のリスクを口にする。
「中尉の意見には、私も賛成だな。ダカールを守りきるのは大事だが、その際に敵の攻撃手段を過激にさせない事も重要だ。焦土になったら、目も当てられないからな。」
 クワトロがヤザンの意見に賛同しながら、自分の懸念する点を話す。
「後は、敵の戦力ですね。あのキュベレイはカミーユ中尉やクワトロ大尉で充分無力化できるでしょうが、あれ以上が出てくると、難題です。Iフィールドと強力な火器を装備しているMAが出てきた場合の対策も、必要だと考えます。」
 エレオノーラが、強力なMAが投入された場合の対抗策の検討を、提案する。
「そんときゃ、ラオプフォーゲルにミサイルを搭載して、打ち込んでやるさ。他の機体だって、実弾兵装はある。本格的に対策を練る時間があるとは言えないから、それで何とかして、隙を作って懐に飛び込んで堕とす。接近戦ならビームサーベルが、充分有効だからな。」
「それしかないでしょうね。とにかく、一秒でも早く敵を撃破して、ダカールに戻る。その間、出来るだけ補給と整備をして、背後から挟撃。これが現段階においては、ベターな戦術だと思います。」
「よし。それで行こう。偵察を密にして、敵が動く気配を見せた時が勝負だ。それまで、英気を養っていてくれ。以上だ。」

「サイコ・ガンダムMk.Uの調整は、今日中には終了します。」
「ご苦労。よくやってくれた。これで、明日の作戦には間に合う。」
「では、失礼します。」
 整備班の班長が去ると、グレミーは安堵の表情になるが、すぐに引き締める。
『後は、戦力の差をどれだけ埋められるかだな…。サイコ・ガンダムがどこまで通用するかも気になる。』
 威力偵察で収集したデータから、アーガマのMS隊の屈強さは嫌というほど、思い知っている。
 キュベレイでは、歯が立たない事を前提に作戦を立案する必要がある。
『持ってきたのは正解だったか。あれは、開発中だからな…。』
 グレミーはデスクの端末から。データを呼び出す。
『やはり、これで正解だったか。置いてきたのは、まだ気づかれてはいないが、出来る限り早く、戻る必要がある。その為にも、短期決戦になるが、やむをえまい。』
 実の所は、間断なく襲撃を仕掛け、アーガマや守備隊を疲労させてから、決戦を挑みたかったが、戦力を考慮するとリスクが高い。
『とは言え、これもリスクが高い賭けである事に、変わりはないがな…。』
 そう考え、グレミーは小さな溜息をついた。
 アムロやカミーユを中心としたパイロットたちは練度が高く、MSの性能も高い。
 プルとキュベレイを中心にした戦術では対抗できないと解った以上、いやでも短期決戦を挑まなければならない事に、グレミーは憂鬱な気分になる。
『とにかく切り離せば、勝機も幾分見えてくるだろう。それまでに、こちらの準備を万端にしておかねばな。』
 グレミーは、参謀達を招集して作戦会議を開く事にした。

「ほう?グレミーは動かんか。」
 報告書を読んだハマーンは、意外そうな表情を浮かべる。
 威力偵察をするのは、当然としても、その後、戦力を把握すればすぐにでも戦端を開くと、ハマーンは考えていた。
「慎重すぎるとまでは言わんが、随分と慎重だな。アムロ・レイ達に手ひどくやられたか。ラカンも散々な目にあったからな。犠牲は小さくないが、戦力を把握できたのなら、よしとするか。」
 短期決戦を挑んで即座に壊滅するよりかは、慎重になり戦力を温存する方がまだましなので、それを理由に、グレミーを罷免するには及ばないと、ハマーンは感じた。
『こちらはこちらで、そろそろどこかのコロニーを落とさんと、兵達の士気にかかわる。さて、どうするか…。』
 今、ハマーンの元にいる指揮官の中で、信頼できるのはマシュマーとラカンだけなので、これからの戦略が立てづらかった。
『いっそ、戦力を宇宙に集中すべきか…。連邦は動く気配を見せん。厄介なのは、アーガマくらいだ。カラバは宇宙には来ておらんからな。』
 だが、ハマーンには、グレミーという懸案事項がある。
 詳細は解らないが、ハマーンはそう感じている。
 少なくとも、従順に命令を聞くような男の目をしてはいない。
 故に、ハマーンはグレミーに対しては、気づかれぬように警戒せねばならないが、全戦力を集中させる事態になれば、そうも言っていられない。
『今しばらく、様子を見るか…。その上で、戦略の修正も考えるとしよう。』
 無難な結論しか出ない事に、ハマーンはやや苛立っていた。

「2日後、決戦を挑む。作戦の骨子は、各個撃破。アーガマとダカールの守備隊を分断し、各個撃破する。最優先目標は、アーガマはカミーユ・ビダンにクワトロ・バジーナ。ダカールの守備隊は、アムロ・レイだ。」
 グレミーから、作戦が伝えられると、参謀や部隊指揮官に動揺が走る。
 アーガマには、ハマーンすら手こずるカミーユに、嘗ての「ジオンの赤い彗星」がおり、ダカールには、「白い悪魔」ことガンダムを駆り、ジオンのエースパイロットを幾人も撃破し、多くの死地を切り抜けてきたアムロがいる。
 この3人の為に、ラカンの部隊がどれだけの損害を被ったかは、皆、よく知っている。
「案ずるな。今回は、こちらも切札を出す。向こうのエースはこちらの切札で抑え込む。その間に、残存兵力を叩きつぶせばいいだけだ。手強いがアムロ達に比べれば、楽な相手だ。物量戦で仕留められるだろう。順調にいけば、アーガマを沈め、ダカール攻略部隊への加勢もできる。簡単な作戦というつもりはない。だが、長期戦になれば、こちらに蓄積されるダメージも無視できなくなる。いわば、乾坤一擲の策。すぐに、準備にかかれ。」
 参謀や各部隊の指揮官が、グレゴリオの会議室を去ってから、グレミーはMSデッキに向う。
『サイコ・ガンダムMk.U。カタログスペック通りの働きをしてくれれば、アーガマを沈めるのは容易い。後は、パイロットの腕次第か…。』
 そう考えながら、デッキで整備を受けているMSの1機を見る。
『どうにか、これが間に合った。これもニュータイプ専用機。この分野では、エゥーゴや連邦より、我らの方が進んでいる。まずは、プルのキュベレイとこれで、アムロ・レイを抑える。その間に、どれだけ敵をつぶせるかが勝負だな。もっとも、さすがに、10数基のファンネルをかわすのは、奴とて楽ではあるまい。』
「グレミー様。この2機も、間もなく整備は完了し、万全の態勢で出撃可能になります。」
 整備班の班長が、グレミーに報告する。
「ご苦労。整備は入念に頼むぞ。整備班がしっかり整備してくれるからこそ、我々は、存分に戦えるのだからな。」
「はっ!お任せ下さい。」
 グレミーは満足そうに頷いて、MSデッキを出て艦内のある部屋に行き、キーを解除する。

 そこには、2と12とナンバーが刻まれている、宇宙葬の時に使うカプセルに似たようなものがある。
 大きさは、ローティーンの子供くらいの大きさだった。
「さあ、目覚めてもらおうか。」
 懐から出した端末を操作すると、カプセルが開いた。

後書き
敵より多数の兵を揃えるのは、勝利を得るための基本です。
しかしながら、兵や武器の質によってはそうならない場合も多いのは、歴史が証明しています。
今のネオジオンがそうですね。
威力偵察で痛い目を見たグレミーは、思い通りには戦えませんし、指揮官クラスの人材不足に悩むハマーンにしても、戦略構想の点でままなりません。
つくづく、優秀な人材とは宝だなあと、思いますね。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
戦いの膠着状態は、常に指揮官を消耗させますね。
ファーストガンダムでも、連邦が膠着状態を打破する為にジオンよりも、高性能なガンダム等のモビルスーツの開発をした訳ですから。
そして、いよいよグレミーが、虎の子を使う気配。
更には、宇宙の動きが気になる所ですか。
他の連邦は、コウ達以外頼りにはなりそうも無いですから。
ニュータイプ専用の新型モビルスーツが、どこまで宇宙世紀最強トリオに通じるか、楽しみです!では(o^-')b

タケゾウ
2012/06/11 08:54
タケゾウさん。
いつもコメントありがとうございます。

>戦いの膠着状態は、常に指揮官を消耗させ
>ますね。
 プラス兵士たちの士気も、衰えますしね。
 それへの対策を考える必要もありますし、
 いきなり、予期せぬ敵の攻勢が来る事もあ
 りますから、それに対する備えも必要。
 本当に、指揮官は大変ですね。

>いよいよグレミーが、虎の子を使う気配。
 カードの出し惜しみをしていれば、いざ出
 しても、時を逸している場合もありますか
 らね。
 理想の時期に使うというのも、ままなりま
 せんね。

>他の連邦は、コウ達以外頼りにはなりそう
>も無いですから。
 ティターンズの専横を許したのも痛いです
 けど、軍を含めた連邦その物の腐敗がとに
 かく酷すぎましたね。
 コウ達が奮戦しているのが、せめてもの救
 いというのは、決していい状況ではありま
 せん。
 ですが、上層部は役立たずばかり。
 馬鹿につける薬はありませんね。

>ニュータイプ専用の新型モビルスーツが、
>どこまで宇宙世紀最強トリオに通じるか、
>楽しみです!
 最強トリオは、それらを相手に戦い抜いて
 きた、百戦錬磨の猛者揃い。
 グレミーの思惑通りに、いくでしょうか?
CIC担当
2012/06/14 23:25

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