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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第22話 準備の表と裏

<<   作成日時 : 2012/02/25 23:29   >>

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「それでは、1年1組の文化祭の出し物は、ビクトリア風メイド喫茶に決定しました。」
 結構、結構。
 変な方向に行きそうだったけど、俺は、当日は生徒会長としての仕事もあるし、セシリアが仕切ってくれてるから、軌道修正できた。
 これなら、変な事にはならないな。
 ビクトリア王朝風なら、正統派のメイドで、作法も厳しい。
「これから、皆さんにはメイドとしての作法を、きちんと覚えていただきます。覚悟していただきますわよ。教師は、私付きのメイドである、チェルシー・ブランケットに務めていただきます。この件に関しては、学校側からも許可を戴いています。」
 チェルシーさんか。
 夏休みに、イギリスに行った時に、会っている。
 優しいお姉さんて、感じだったな。
 けど、仕事はきっちりこなす人だから、大変かもな。
 がんばれよ。みんな。
 俺も、生徒会長の仕事、頑張るからさ。
「さて、我がクラスの本来の代表である一夏さんには、執事としての作法をきちんと身につけていただきますので、ご了承ください。」

 …………………………………………………………………………………………。

は?

「おい、セシリア。すまん。意味が解らん。俺は、厨房だと思っていたんだが…。」
 そもそも、メイド喫茶なんだから、メイド。つまり、女子生徒が主役で、俺は、裏方の厨房担当だろう?
 何で、執事の作法を身につけるんだ。
「何をおっしゃいますの?これは、公共の奉仕ですわよ。」
「ますます、意味が解んねえって。」
 俺が、その公共の奉仕とやらをする理由を、言ってくれよ。
 でないと、納得できないぞ。セシリア。

「あの〜、それがですね。織斑君。実は、各クラスや部活から苦情が殺到しているんです。」
 山田先生が、何やら言いにくそうに言う。
「俺、何か、やりましたっけ?」
 覗きも下着泥棒も盗撮も、とにかく、犯罪の類は一切やってませんよ。山田先生。

「お願い。織斑君。生徒会の出し物もあって、凄く忙しい事は知ってるけど、執事、引き受けて。」
 だから、何でだよ?
「とにかく、お願い。他のクラスや部活から、織斑君を独占するなって、苦情が殺到してるんだから。」
 は?訳、解んねえよ。
 独占?苦情?
 解るように説明してくれって。
「お願い、織斑君。学園内の平和を守る為に、一肌脱いで。」
 千冬姉の鉄槌があるから、それは問題ないだろう。
「このままだと、不満が爆発して、それを鎮める為に、織斑先生の鉄槌が下るわ。それが、どんな事か、織斑君が、一番良く解るでしょう?」
 そりゃ、まあな。
 なにしろ、強烈な拳骨に、端末の鉄槌、その他etc。
「お願い、救世主になると思って、文化祭の空き時間の中で、執事として接客お願い。」
 うっ…。
 クラスメイト全員でお願いされると、断りにくい…。
「…解った。なんとか、時間を融通する。」
 これ以上、この状態が続くのは、ちょっと、キツイからな…。
「セシリア。生徒会長としての注意な。出し物の詳細と、必要な物を見積もって、早めに生徒会に提出してくれ。調理器具を使うなら、そっちの申請も忘れずにな。」
 IS学園には、生徒の食事を作る調理室の他に、文化祭で食べ物を出すのに備えて、ちょっとした携帯用の調理器具がある。
 無論、数に限りがあるから早い者勝ちだが、数は結構あるからトラブルになった事はないそうだ。
「ええ。解っていますわ。では、次の時間は、メイド担当と、厨房担当を決めます。」
 はあ、なんで、こうなったんだか…。

「じゃあ、会長の所は、英国式の喫茶店ですか。素敵じゃないですか。」
 生徒会室で仕事をしながら、俺は、生徒会のメンバーと文化祭について話していた。
 生徒会も出し物があるので、それも決めなければならない。
 それに、許可と不許可の基準の、最終確認もある。
 こういう、学園内のイベントの前は、生徒会は忙しいのである。
「そう言えば、虚さんのクラスの出し物って何ですか?」
「和風喫茶です。飲みやすくした抹茶と、手作りの和菓子をお出しするんです。よろしければ、会長もいらして下さい。」
「ええ、そうさせてもらいます。」
 さすがは、生徒会の良心。
 奇妙な物は、やらないか。
 結構、結構。
 ん?
「そういえば、楯無先輩の出し物って何ですかねえ?」
 どうも、纏まっていないらしく、副会長の楯無先輩は、まだ来ていない。
 一応、事前に最終確認は済ませているけど、揃ってくれた方が望ましいんだよな。

「ごめん。遅くなったわね。」
 「参上」と書かれた扇子を手に、楯無さんが生徒会室に来た。

「殆ど済んでるわね。後は、生徒会の出し物か。何がいいと思う?ちなみに、生徒会では、演劇が多いわね。」
 演劇?
 生徒会は、生徒会長の俺と副会長の楯無さん。
 それに、会計の虚さんに書記ののほほんさんだけ。
 辛くないか。
「この人数で、出来るんですか?」
「それは考えているから、大丈夫。」
 楯無さんが、ウィンクする。
 綺麗なんだけど、凄え、嫌な予感がするのは、多分、気のせいじゃないだろう。

「本日より、皆さまに、ご指導させていただきます。チェルシー・ブランケットです。どうぞ、よろしくお願いします。」
「「「よろしくお願いします。」」」
 メイド役は、セシリア、箒、シャルロット、鷹月さん、相川さん、田島さん、リアーデさん、アウヴィネンさん、アイードさん。そして、俺の計十人。
 残りが厨房担当である。
 メニューが結構多いので、厨房にもそれなりの人数を割く必要が生じて、厨房担当は、メイドの倍になった。
「それでは、まず、歩き方です。頭の上に本を載せて、ここから向こうまで行って、戻ってきてください。」

「ああ、落ちちゃった〜。」
 相川さんが半分もいかない内に、頭の上の本を落としてしまった。
「落としてしまったら、またやり直しです。これ位は出来ませんと、綺麗に歩く事は出来ませんよ。」
 まあ、そうだが、普通の人は難しいかもな。
 セシリアとシャルロットは、難なくこなしている。
 セシリアはイギリスの名門、オルコット家の出身。
 シャルロットも、事情があるとはいえ、フランスの名門、デュノア家の出身。
 これ位は、軽いだろう。
 箒も難なくこなしている。
 体の中心の事を正中というが、重心を正中に置くと、非常に体が安定するので、歩き方も綺麗になる。
 ちなみに、俺もそれはできる。というか、剣術を続けていれば、自然と出来るようになっていく。
 鷹月さんは、ちょっと難ありだけど、練習を重ねれば大丈夫だな。
「これが出来ないと、次のステップには行けません。必ず、身につけていただきます。」
 笑顔で言うが、内容は厳しい。
 確かに、礼儀作法で歩き方は基本だからな。
 綺麗に歩けるか否かってのは、それだけ、周囲に与える印象を左右させる。
 それ位、重要だ。

「文化祭に来るのは、各国政府のIS関係者に、IS関連メーカーの人間。それに、生徒に1枚ずつ配布されるチケットで招待される、一般人。どこに紛れこんでくるか。そこが問題ですね。」
 虚が空中投影ディスプレイに表示されている、三次元投影されたIS学園を見て、考え込む。
「どれにも、紛れこみようがある。事前にチケットを奪うなり、変装をしてしまえば、どうとでもなるからな。」
 ラウラが、虚の疑問に答えを出す。
 一夏を除いた生徒会のメンバーとラウラは、文化祭当日の警備について話し合っていた。
 外部の人間が来るとなると、亡国企業の人間はいくらでも紛れようがある。
 それだけ、一夏の身に危険が及ぶ確率が高くなる。
 念には念を、入れておく必要が、あると考えていた。
「ところで、会長は、誰を招待するのかな〜。」
 本音が、人差し指を顎に当て首を傾げて、考え込む。
「一夏は、中学の友人とその妹だそうだ。妹の方は、来年、IS学園入学を希望しているそうだ。」
「ふ〜ん。一夏君のお友達とその妹さんなら、大丈夫だとは思うけど、身辺調査はしておくわね。問題が無ければ、更識のSPを密かに護衛につけるわ。」
 楯無が、考えた末に、結論を出した。
「どうする?ドイツからも、IS関係者は来る。その中に、SEKから要人警護専門の隊員を多めに連れてくるよう、本国に掛けあってもいいが?」
 SEK。
 ドイツ地方警察特別出動コマンドは、地方警察に属する特殊部隊で、その中には、要人警護のスペシャリストもいる。
 ドイツ最強のIS特殊部隊の隊長であるラウラなら、掛け合う事も不可能ではない。
「魅力的な判断ですけど、政治的には、少し面倒な事になるかも、しれませんね。それを理由に、会長にIS開発をさせる位はあるかもしれません。」
「そうね。ラウラちゃんの提案は、魅力的だけど、残念ながら却下ね。ところで、ラウラちゃんは、誰に文化祭の招待券を渡すつもりなの?」
 ラウラはIS学園の生徒以外に、友人と呼べる人間はいない。
 誰に渡すのか、楯無は興味があった。
「シュヴァルツェ・ハーゼの副隊長にエアメールで既に送ってある、シュヴァルツェア・レーゲンの姉妹機の、専任操縦者だ。腕は保証する。」
「成程。ラウラちゃんはラウラちゃんで、きちんと保険は掛けておいたわけか。」
 既に、一夏の護衛の手配を済ませていたラウラに、楯無は感心する。
「折角の招待券だ。有効に使いたかっただけだ。話を続けよう。」

 ごくありふれた大衆食堂、五反田食堂。
 そこから少し離れた家が、食堂を経営する五反田一家が住む家である。
 赤毛を長くのばし、バンダナを額に巻きつけている、五反田弾の携帯が鳴った。
「もしもし。一夏か、どうした?」
「おう、弾。元気そうだな。お前、前に、IS学園の招待券ないか?って、俺に聞いたよな。」
「ん?ああ。聞いたなあ。」
「来るか?文化祭があるんだが。」
 聞いた途端に、弾が固まる。
「おーい、弾。どうした?」
「すまん…。もう、一度、頼む…。」
 震えながら、弾は、一夏が言った事を確認する。
「だから、文化祭の招待券があるんだよ。俺、生徒会長だから2枚もらえるんだが、蘭と二人でどうだ?」
「そ、そうか。じゃあ、その日は、開けておく。蘭には、俺から…。」
 途中で、後ろで電話を聞いていた蘭が、携帯を取り上げる。
「あの、一夏さんですか。お久しぶりです。」
「おう、蘭か。元気か。」
「はい。あ、えと。IS学園の文化祭の招待券くださるんですよね?」
 胸の高鳴りを抑えて、蘭は確認する。
「ああ。蘭は、IS学園に入学希望だろう。学園の見学にも、いいと思ってな。予定大丈夫か?」
「はい。全然、大丈夫です。」
 大声を上げたいほど嬉しかったが、そこは抑えて、蘭は答える。
「じゃあ、招待券、送るな。当日は、それが無いと入れないから、無くすなよ。」
「はい。絶対、無くしませんから、大丈夫です。一夏さん、生徒会長だから、忙しいですよね。」
「まあな。蘭も生徒会長だから、文化祭が近づくと、忙しいだろう?」
「はい。でも、まだ、その時期じゃないですから、大丈夫ですよ。今は、受験勉強と、ISの勉強をしてます。」
「そうか。頑張れよ。じゃあ、弾によろしくな。」
「はい。一夏さんも頑張ってください。」
 蘭は携帯を切ると、弾を睨みつける。
「ど、どうしたのかな?妹よ。」
「どうして、私に代わってくれなかったわけ?」
「いや、俺が伝えれば、いいかな〜って、思ってさ。」
 弾の額を、汗が伝う。
「ふうん…。そう…。まあ、いいわ、その件に関しては、後でゆっくりと話し合いましょう。逃げちゃ駄目だよ。お兄。」
 その日の夜は、弾にとって、恐怖の夜になったという…。

「スコーンは、合格ですね。ショートブレッドは、バターと砂糖を、もう少し増やして下さい。メイズ・オブ・オナーは、少し、甘さを控えめにして下さい。」
 文化祭の準備もだいぶ進んで来て、メイド担当の方は、自習だ。
 チェルシーさんは。今は、厨房担当の方の指導をしている。
 イギリス料理といえば、不味くて有名だが、アフタヌーンティーのお菓子は、凄く美味いので、俺もレシピは一通り身につけている。
 お菓子も、立派な料理。
 なかなか、奥が深い。
「織斑君。ちょっと、ちょっと。」
 厨房担当の田中さんが、手招きをしている。
 何だ?

「織斑君て、料理上手って、本当?前に、ボーデヴィッヒさんから聞いたんだけど。」
「まあ、それなりに。」
 下手ではないと思うけど、そんなに上手でもないだろう。
「何か、作ってみてよ。チェルシーさんも見たいっていうから。」
 何でそうなる?
 まあ、いいか。
 さて、何、作ろう。
 いろいろ、材料が余ってるな。
 よし。あれにするか。
 スポンジケーキを作る間に、他の物も用意できるしな。

「織斑君、手慣れてるね。お菓子も作るの?」
「偶に、千冬姉から、リクエストがあるとな。最近は、ラウラからのリクエストもあるから、ドイツの菓子も覚えてるぜ。」
 余っていたマカロンを砕いた物を入れた、スポンジケーキの焼き具合を見ながら、質問に答えた。
 カスタードと生クリームは、準備は終わってるし、フルーツはすぐ使える状態になっている。
 後は、ゼリーの固まり具合だが、OKだな。
 よし、スポンジケーキの出来は上々だ。
 後は、器にそれぞれ入れて、冷蔵庫で冷やして、出来上がりだ。
「さあ、まだ、終っていませんよ。イギリスのティータイムは奥が深いのですから。」

「美味し〜い。」
 俺が作っていたのは、トライフル。
 あり合わせの物で作るデザートだが、これがまた美味かったりする。
「本当。美味しいですわ。」
「ええ。」
 セシリアとチェルシーさんも、下鼓を打ってくれている。
 この二人を、満足させられたなら、合格点かな?
「織斑君。お菓子作りも、得意なら、早く言ってよ。」
 いや。俺、接客担当だし。
「皆さん。これが英国のアフタヌーンティーの、美味しさです。しっかり頑張ってくださいね。」
 チェルシーさんが、皆に発破をかける。
「じゃあ、俺、会議の時間だから。みんな、頑張れよ。」
 俺は、そう言って、生徒会室に向かった。

「あ…。」
 階段を上がって、生徒会室がある4階に来た時に、俺はあるクラスの代表生徒と会う。
「更識さんか。」
 更識簪。
 楯無さんの妹で、1年4組の代表生徒にして、日本の代表候補だ。
 文化祭の準備を始めて、初めて知った。
 普通なら、とっくに知っていてもいいのだが、とある理由で、知り合ったのはごく最近だ。
 セミロングの髪と眼鏡をかけた更識さんは、どこか、人を寄せ付けない感じだが、俺とは多少は話をしてくれる。
「織斑君も、これから?」
「ああ。これからだ。よかったら、一緒に行かないか?」
 そう言うと、こくんと、更識さんは頷く。
「じゃあ、一緒に行こうぜ。」

 簪は歩きながら、気づかれないように、さりげなく一夏を見ていた。
 IS学園の生徒会長といえば、学園最強の称号である。
 つい最近まで、姉の楯無がそうであったが、去年、見つかった、世界で唯一、ISを動かせる男性である、一夏との勝負で敗北。
 副会長として、一夏のサポートについている。
 その一夏は、フランス政府からの要請で、同じクラスのシャルロット・デュノアの専用機、最新鋭第三世代型ISノブレス・イリュジオンの開発指揮を取り、抜きんでたISの操縦技術だけでなく、開発者としての能力もある事を、世界に知らしめ、一夏を除くと、4人の専用機持ちがいる、1組の代表候補だけでなく、上級生のISも改修を行い、ISの生みの親たる篠ノ之束が自ら開発した、白式と並んで、世界でたった2機しかいない、第四世代型IS紅椿のエネルギー消費の最適化も行っている。
 今や、ISに関わる人間で、一夏の事を知らない人間はいない。
 ただ、それ故に、一夏と白式の帰属に関しては、論議になってしまい、白式も一夏の私物扱いになっている。
 無論、一夏もその事を知っており、溜息を突きながら、第二携帯移行をした白式のエネルギー消費の最適化や、機体の改良を行っている。
 ロシアの国家代表である楯無だけでなく、アメリカのテストパイロットであるナターシャや、アメリカの国家代表であるイーリスに勝った事から、実力は国家代表の中でも強豪クラス。
 さらに、開発者としても天才と言ってよいレベル。
 しかし、当の一夏は、それを鼻に掛ける事もなく、自分に厳しい鍛錬を課し、さらに高みを目指している。
 端正な顔立ち、そして優しい性格で、女子生徒達の憧れの的であり、簪もその一人である。
 その一夏に、頼みたい事があるが、難しいと考えて頼んではいない。

「うん?どうした。」
 なんか、チラチラ見られている気がして、横を見たら、案の定、更識さんが俺を見ていた。
「ご、御免なさい。何でもないの。」
 顔、赤いなあ。
 風邪かな。
 入学してから、俺の周りにはこういう娘が、多い。
「ちょっと、御免な。」
 俺は、簪さんの前髪を上に上げて、額を付ける。
「「「あ〜っ!!!」」」
 なんか、周囲が騒いでるけど、とりあえず無視。
「熱はないな。寒気とかないか?」
「大丈夫…。ありがとう。心配してくれて…。」
 でも、さらに顔は真っ赤だな。
「終ったら、念のために、保健室行った方がいいかもな。行く時は、付き添うからさ。」
「う、うん…。」

「それでは、文化祭実行委員会会議を始めます。まずは、1年1組からお願いします。」
 文化祭に関しての様々な事項の議論と決定をする、実行委員会は生徒会と各クラスの代表で構成されている。
 俺は生徒会長とクラス代表のかけ持ちなので、俺の代理としてセシリアが出席している。
 文化祭の準備を開始して、それなりに経つので、今日は進行状況の確認をする事になっている。
 クラスごとに、出し物の準備状況の報告をするが、どのクラスも特に問題はないようだ。
 今の所、特に足りない物もないようだな。
「これで、本日の会議を終了します。尚、足りない物が出た場合は、すぐに生徒会に申請してください。それでは、ご苦労さまでした。」
 さて、それじゃあ。
「楯無さん。具合どうだ?やっぱり、保健室行くか。」
 もし、風邪だったら、早く直した方がいいからな。
「大丈夫。平気…。ありがとう…。」
「別に、礼を言われるほどじゃないって。じゃあ。」
 今日は、時間があるので、白式の新しい装備の、テストをする事にしている。
 展開装甲については、理解できたので肩部にも展開装甲を実装して、防御用の装備を夏休みにみんなのISを改修しながら、こつこつと開発して、家に帰った時に、完成させた。
 そのテストをする。
 ラボでのテストは、問題なかったが、やっぱり実戦を想定したテストをしておかないとな。

「そうですか…。やはり、織斑君の力を借りたいと。」
「はい。委員会からの許可は、得ておりますので。後は、ご本人次第になります。」
 真耶は、複雑な表情になる。
 また、一夏は、道具のように使われると見られても。仕方がないからだ。
 真耶と千冬は応接室で、とあるIS企業の人間と話をしていた。
 千冬は、一言もしゃべらない。
 はっきり言って、不愉快だった。フランス、イギリス、ドイツ、中国、ロシア、オーストラリア、カナダ。
 これだけの国が、一夏を道具のように利用している。
 ドイツからは、一夏も同意しているが、イギリスの汚い手口には、千冬も激怒した。
 フランスに関しては、日本政府とフランス政府の裏取引があった。
 これ以上、一夏を道具のように利用する国が、現れるのなら、教師としても、姉としても見過ごす気はない。
 企業や政府からの介入をさせずに、ISに関して学ぶのがこのIS学園だ。
 これでは、学園の存在意義が問われる。

「織斑先生。いろいろと思う所はおありでしょうが、何とか、ご承諾願えませんでしょうか?無論、報酬は、充分、お支払いする用意があります。」
 その言葉を聞いた途端、千冬の眼が鋭くなり、口を開く。
「貴方方は、勘違いをしていらっしゃいますね。承諾するも何も、決めるのは織斑です。お間違いなく。」
「…それは、こちらの落ち度でしたな。申し訳ありません。とにかく、意思を確かめたい、会わせていただけませんでしょうか。」
 IS学園の生徒と面会するには、理事長と担任の許可が必要になる。
 どちらが欠けても、面会は出来ない。
 理事長の許可は取りつけたので、後は千冬の許可だけである。
「会うだけならいいでしょう。但し、本人の承諾を得る際には、フェアに願いたいものです。いや、なに。ここのところ、下水道に住む溝鼠でも顔を背ける手口を使う国もあったものでしてね。」
「承知しております。」
「では、いきましょうか。今日は第二アリーナで訓練をしていますから。」
 真耶の案内で、一行は第二アリーナに向かった。

 ターゲットが、一夏に向けて攻撃する。
 しかし、一夏は回避しない。
 ただ、飛び回るだけである。
 ミサイルが、一夏に命中するが、ごく狭い範囲で、防御フィールドを展開して、一夏を守る。
 他にも、マシンガンやレーザー砲の砲撃が一夏を襲うが、全て、必要な範囲でフィールドを展開して、一夏を守る。
 従来のフィールドのように、広範囲でなく、必要な範囲にフィールドを展開して、操縦者を守る、一夏が考案した新型防御システム「守扇」。
 その出来に、一夏は満足していた。
「さてと、守扇は問題ないし、いつも通りのメニューで行くか。」
 エネルギーをチャージしながら、一夏はスポーツドリンクを口にする。
「織斑君。今日も、頑張っていますね。」
「山田先生。どうしたんですか?珍しいですね。」
 一夏にそう言われると、真耶はどこか居心地の悪そうな顔になる。
「織斑。お前に、用のある人たちがいる。休憩室で待っているから。行って来い。答えはお前次第だ。」
 千冬の言葉を聞いて、一夏は大体の事を察したが、敢えて口にせずに黙って休憩室に向かう。

「倉持技研第二開発室室長の、佐藤と申します。」
そこには、30代後半の技術者らしい人がいた。
倉持技研ね。
打鉄を開発した、メーカーだったよな。
 防御に重点を置いた、初心者でも使いやすいISだ。
 さすがに、もう、旧式だけどな。
「それで、俺に何のご用でしょうか?」
 用件は大体わかっているけど、とりあえず聞く事にする。
「我が社で開発中の第三世代ISがあるのですが、開発が行き詰ったしまっているのです。織斑さん。貴方の力を、お借りしたい。無論、報酬はお支払いいたします。日本代表候補の専用ISなのですが、完成していないせいで、専用機が必要な時は、いつも欠席なのです。」
 欠席?
 ん、ちょっと、待てよ。
 どっかで、似たような話を、聞いた事があるな。
「その代表候補って、この学園の1年生では、ありませんか。名前は更識簪。」
 まさかとは思うが、俺は更識さんの名前を出してみた。
「正解です。」
 成程な…。
 どうりで、今まで更識さんの事を、知らなかったわけだ。
 専用機持ちの代表候補なのに、専用機が完成していないとなると、1学期のイベントや臨海学校には出られなかったんだろうな。
 これからも、それが続くとなるときついよな…。

「解りました。お引き受けしましょう。但し、一つ、頭に入れて欲しい事があります。」
「何でしょうか?」
「開発の協力をするのは、御社の為ではありません。更識さんの為です。そこの所を誤解なさらないよう、お願いします。」
 そうさ。
 今までだって、仲間の為にISの開発や改修をやってきたんだ。
 断じて、国家の為じゃない。
 俺は道具じゃなく、意思を持った人間だ。
 仲間の為に、何かしたい。
 そういう事だ。
「解りました。頭に入れておきます。更識さんはスタッフと共に、今、第3整備室にいます。」
 整備室の中でも、第4整備室とならんで最も大きい整備室である、第3整備室はISの大がかりなオーバーホールや改修で使用される。
「では、さっそく、行ってきましょう。出来うる限り、早く完成させたいのでね。」
 俺はそう言って、休憩室を出て第3整備室に向かった。
 倉持技研としては、一日も早くISを完成させないと、政府意から技術力を疑われる。
 背に腹は、代えられなかったんだろう。
 そこで、IS開発を通じてできた、政界とのパイプを通して、俺の協力を取りつけた。
 筋書きは、こんなものだろう。
 ま、どうでもいいことだが。

「織斑君…。」
「お疲れさん。助っ人に来たぜ。」
 更識さんは驚いているが、倉持技研のスタッフは驚いていない。
 この展開を、予測していたな。
「じゃあ、始めるか。状況を見せてもらう。」
 機体の外見から、ハード的に完成しているように見えるが、そうでない場合も少なからずある。
 俺の端末のコードを、ISに繋げる。
 打鉄弐式。
 打鉄の後継機か。
 防御重視の打鉄とは違い、スピードと機動性を重視している事が、シャープな外見から良く解る。
 制御システムは、リヴァイブを参考に、高い汎用性を持てるように、組んでいるのか。
 基本的な部分は、問題ないな。
 後は、稼働させて、機体の調整とデータをシステムに反映させて、殆ど終わりだな。
 後は、第三世代兵装だが。
 なるほど、これは、苦戦して当然か。
 これは、最後だな。

「今、必要な事は解りました。とにかく、稼働させてデータを収集しましょう。後は、それからです。第三世代兵装に関しては、一番、最後にしたいと思いますが、よろしいでしょうか?」
「あ…、はい。それで構いません。」
 おいおい、自分の会社で開発したISだろう、担当の技術者なんだからしっかりしてくれよ。
「じゃあ、更識さん。始めようぜ。」
「うん…。」
 俺は、白式を展開させて、打鉄弐式との間に、ラインを繋ぐ。これで、ダイレクトに状況を確認できる。
「じゃ、行くか。いろいろデータを取りたいから、第6アリーナに行こう。ここに来る間に、申請出しておいたから。」
「そ、そう。ありがとう…。」
 礼を言う簪に、一夏は笑顔を向ける。
 歩き始めた一夏の後ろ姿を、簪は見ていた。
 毎日の鍛錬で、鍛え上げられた体。
 だが、いわゆるマッチョではない。
 しなやかで、どこか、暖かさを感じさせる。
『いいなあ…。1組の子たちは。』
 セシリア、シャルロット、ラウラ、箒と、一夏を含めると、5人の専用機持ちがいるのが1組だ。さらに、隣の2組には、鈴がいる。
 想いを寄せている事は、誰が見ても明らかなのだが、当の一夏は、全く気付いていない。
 それ故に、「唐変木ズ・オブ・唐変木」と、一夏は呼ばれている。
 でも、簪は、それでよかったと、思い始めていた。
『私でも、大丈夫かな…。』
 いつも、賑やかな、一夏の周囲に加われるだろうか?
 簪は、今まで考えた事もない事を、考えていた。

後書き
秋葉原に行くと、あちこちにメイド喫茶がありますが、私はどうもああいうのは苦手です。
森薫さん原作の「エマ」みたいな正統なメイドさんの店って、無いもんですかね?
というわけで、1組の出し物は、私の趣味丸出しです。
それにしても、文化祭って、準備も当日も本当に大変ですね。
高校で図書委員の副委員長をやった経験で、文化祭運営に、人より深くかかわった経験から、しみじみそう感じます。
でも、楽しいもんですよね。
さて、一夏はまたIS関係の事に巻き込まれています。
これは、何に関係しますかね?





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簪の所が楯無の名前になっています


戦輝神
2013/01/14 17:48

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