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zoom RSS IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第16話 夏祭り

<<   作成日時 : 2011/10/22 23:37   >>

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 蝉の音が響く。
 夏だなあ。
 最近まで、ISと白式の追加高機動ユニットの開発に、束さんの課題、というか、もはや学会クラスの研究を全て片づけて、ようやく、俺は夏休みを満喫できる。
 師の墓参りをした時に、静音さんから譲り受けた大太刀を使いこなせるように鍛錬を積む事も出来る。
 そんな時、箒が家に来た。

「あ、あの、一夏。その、いいか?」
 夏らしいワンピースを着た箒が、家に俺を訪ねてきた。
「おう、いいぞ。暑いから、とにかく入れよ。冷たい麦茶を出すからさ。」
「う、うむ。忝い。」
 そう言いながら、なんだか、箒はそわそわしている。
 どうしたんだ?
 紅椿を狙っている、どこかの国にでも襲われたのか?
 腰のホルスターには、マガジンに全弾装填されたUSPと、バタフライナイフがポケットに入っていて、いつでも戦える。
 今の所、使ってはいないが、そろそろ、使うかもしれないな。

「で、どうかしたのか?まさか、どこかの国の諜報機関が…?」
 俺の白式。
 箒の紅椿。
 世界で、たった2機しかない第四世代ISは、どこの国も喉から手が出るほど欲しがっている。
 しかも、俺達のISはどこの国家にも所属していないから、俺達を国の国家代表なり候補にすれば、ISも一緒についてくる。
 まさに、海老で鯛を釣るだ。
「あ、いや、そうじゃないんだ。実はだな…。その、あの…。」
 歯切れが悪いな。
「家の神社の祭りがそろそろなのは、覚えているか。」
「篠ノ之神社のか?」
 懐かしいな。
 ISが世に発表されるまで、箒や束さん。
 おじさんやおばさんが、住んでたところだ。
 偶に、食事をごちそうになりに行った事もあった。

「それでだ。今は、叔母の家族が住んでいるのだが、男手が1人欲しいと言われてな。」
 箒が上目遣いで、じっと俺を見る。
 うっ…。
 そういう目で見られると、断りにくいんだが…。
 まあ、いいか。
 これといって、もう、やる事もないしな。
 新しいISと、白式用の高機動追加パッケージの開発は終わっているし、束さんからの課題も終って、データも送った。
「いいぜ。夏休みでやる事は、全部、やったしな。」
 篠ノ之神社には、思い出もたくさんあるし、ちょっと手伝うくらいならお安い御用だ。

「本当か?本当に、いいんだな。」
「ああ。」
 箒が、凄くうれしそうな顔をする。
 やっぱり、あれか。
 祭りの準備となると、男手はいるか。
 何かと、重い物も運ぶだろうし。
 ISを部分展開すれば楽勝なんだけど、それはさすがに無理な相談だしな。

『やった。一夏が。一夏が、手伝ってくれる。』
 箒は嬉しさに、胸がはずむ。
 これで、箒のプランの第一段階はクリアされた事になる。
『とにかく、最終プランまで行けば…。』
 箒は、臨海学校の時の千冬の言葉と、山形に行った時の静音の言葉を、思い出す。
『女として、私に勝てん奴に、一夏は渡さん。それを肝に銘じておけよ。』
『一夏さんを自分の物にしたいなら、千冬さんから奪ってしまいなさい。』

 考えて見れば、当たり前なのかもしれない。
 千冬は中学生の頃に、一夏と共に両親に捨てられ、学校以外は働いて一夏を育ててきた。姉でもあるが、親でもあらなければならなかったのだ。
 一夏は弟だが、自分の大事な1人息子同然。
 結婚するにしても、そこらの女性に、一夏を任せる気にはならないのだろう。
 あの時の、千冬を見ていれば解る。
 見ていて、痛々しい、千冬の姿を。
 
 既に過去のこととはいえ、忘れることなど千冬にはできないのだろう。
 だからこそ、人間としても、女としても、自分を上回る女性でなければ、一夏と共に人生を歩んでいく事は容認できないのだろう。
『私は、まだ、千冬さんの足元にも及ばない。それでも、負けはしない…。』
 コップの中の麦茶を見ながら、箒はそう決意を固めていた。

 どうしたんだ?箒の奴。
 嬉しそうな表情になったと思えば、なんか深刻な表情になって。
「箒、どうしたんだ?」
「あ、い、いや、何でもない。気にするな…。」
 そう言って、箒は残りの麦茶を、一気に飲み干す。
 その時、俺の携帯が着信音を鳴らす。
 この音は、ラウラだな。
 俺の身辺の護衛を担当しているラウラは、基本的にはいつも俺の傍にいる。
 俺が、どこかに行きそうなのを感じて、聞こうと思ったんだろう。

「解った。私は、野営をしながら、周囲の警戒に当たる。」
 おい、おい、そこまでする必要ないだろう。
「寝るときは、隣の部屋にいて、それ以外は周囲から一夏の護衛に当たればいいだろう。叔母には、私から話しておく。」
 箒が、ラウラの部屋を確保することを、提案する。
「すまんな。世話を掛ける。」
 やれ、やれ、軍人とはいえ、女の子を野営させるのは、俺としては真っ平御免だからな。
「それと箒、教官から伝言だ。二学期から、射撃訓練をしてもらう。夏休み中に、メイン、サブ、アサルトライフル、スナイパーライフル、サブマシンガンを選んでおくようにとの事だ。」
「銃を?私もか。」
 箒が驚いて、自分の顔を指差す。
 そりゃ、驚くだろうな。
 けど、世界最新鋭にして、束さんが直接開発した第四世代IS紅椿の専任操縦者である箒は、各国から非常に注目されている。
 それに、口にこそしなかったが、亡国企業の事も考慮してだろう。
 ま、それは、祭りの後でもいいか。
 俺も、威力に的を絞った銃を選ぶように、千冬姉に言われているしな。

『よし、ラウラはあくまでボディーガード。つまりは影。邪魔にはなるまい。ならば、問題は無いはずだ。』
 箒は、ラウラについて考える。
『とにかく、この夏で…。私は、一夏となら…。いや、一夏だから…。』
 箒の恋する乙女の部分が、決意を固めていた。

「織斑一夏です。よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。よかったわ。男手がないって、本当に大変だから、困っていたところなの。」
 箒の叔母に当たる、雪子さんが優しそうな笑顔を見せる。
 40代くらいらしい。
 すごく、大人の女性って感じがする。
「じゃあ、とりあえず。着替えてもらいましょうか。手伝ってもらうにも、まがりなりにも、ここは神社だから。」
 おっと、そうだった。
 神社なら、神に仕える者としての装束がある。
 俺は手伝いに来ただけだけど、そこの所は守らないとな。
 
『へ、変ではないな。う、うむ。我ながら、似合っていると思う。』
 神社の手伝いをしている間、箒が使う部屋で巫女服に着替えた箒は、鏡の前で、ずっと自分を見ていた。
 母親譲りの漆黒の美しい髪が、純白の小袖と見事に調和している。
 その後、箒は荷物の中の下着を見た、レースが入った純白の清楚な下着だった。
『ああ、言ったのだ。織斑先生も覚悟はできているはず。ならば、う、奪うまでだ。い、いや、常識的には、私が奪われるのだろうか。いや、一夏なら、遊びでそんな事はしない。もし、私を受け入れるとしたら、本当に私を好きでいてくれている時だけだ。だから、奪うのだ。』
 箒は、桐の箱を、大事そうに開けた。
 それは、誕生日に一夏にプレゼントされた簪が一つと櫛が二つ。
 片方の櫛は、簪と一緒に使う物で、もう片方は、日常に使う物である。
 どれも、7、8万はするという、高級品だった。
 一夏の事だ。箒には、これが似合うと考えて、碌に手をつけていない貯金から金を引き出したのだろう。
 税金を引いても、国家代表候補や国家代表に支給される金額は平均的なサラリーマンの月給を大きく上回る。
 特に、一人で第三世代ISの設計ができると解った時からは、さらに増えている。
 にも拘らず、一夏の預金口座は溜まる一方だ。
 両親に捨てられてから、織斑家の家事を一手に引き受けている一夏は、常に節約を心がけている。
 その一夏が、大枚をはたいてプレゼントしてくれた簪と櫛は、箒にとっては宝だった。

「箒ちゃん。いいかしら。」
「あ、はい。」
 雪子が、部屋に入って来る。
「まあ、素敵。よく似合うわ、しばらく見ない内に、すっかり美人になって。」
 巫女服を着た箒を見て、雪子は美しさを褒める。
「いえ、そんな…。」
「あら?それ、簪と櫛よね?見せてもらっていい?」
「あ、はい。」
 雪子は簪と櫛を手に取って、細部まで見る。
「これ、相当な高級品よ。誰から、戴いたの?もしかして、今日、連れてきた織斑君?」
「はい…。」
『な、何で、解ってしまうのだ。』
 その後、雪子はこういった恋愛やその前段階に関しては、異常なほど勘が鋭い。
「ふうん。そう。まあ、世界で唯一人、男性でISを動かせるだけでも注目を集めるものね。ハンサムだし、でも、とても自然体で、ISを動かせる事も鼻に掛けないで、素敵な男の子よね。その織斑君が。ふうん、なるほど…。」
 雪子が意味ありげな視線を、箒に向ける。
「あ、あの、い、一夏はただの幼なじみで、ただ、それだけで、簪と櫛は誕生日のプレゼントで、一夏は浪費癖が無いので、貯金もたまっていて、そこから出ているわけで、ですから…。」
『ああ!私は何を言っているのだ!!』
 何とか、その場をやり過ごそうとするが、パニックになった箒はうまく弁解できずにいた。
「箒ちゃん。」
「は、はい…。」
 雪子が、真剣な表情になる。
「織斑君に対して、本当に心の準備ができたのなら、言って頂戴。部屋を用意するから。」
『ど、どうして、そこまで…。』
 箒は、心の底まで見通された気分になる。

「あの、すいません。着替えが終わりましたけど。」
 似合うかな?
 胴着袴は、いつも来ているけど、小袖に水色の袴は初めてだからな。
 今ひとつ、違和感がある気がする。
「あら、似合うわね。背筋が綺麗に伸びていて、姿勢もいいわ。剣術をやっているでしょう?体つきを見れば解るわ。じゃあ、手伝ってほしい事を説明するわ。本殿に行きましょう。」
 さすがに、箒の親類だけあって、剣術についても多少は通じているのだろうか。体つきを見れば解るらしい。
 さあ、仕事を頑張ろう。

 本殿で説明を聞いてから、俺と箒は参道の掃除をしていた。
 昔は、よく、ここを突っ走っていたっけ。
 一秒でも早く、稽古を始めたかった。
 もっとも、当時の師である箒の親父さんには、手も足も出なかったけどな。
 でも、周囲で俺の相手が出来たのは、千冬姉か、おじさんしかいなかったから、負けながら、必死に取り込める物は取り込んだ。
 でも…。
 気にしたって、しょうがないか。
「箒。参道の掃除は、これでいいんじゃないのか?」
「そうだな。そろそろ、出店の人達との打ち合わせもある事だし、終りにするか。」
 祭りといえば、焼きそば、たこ焼き、お好み焼きと、いろんな出店が出る。
 事前に場所取りはしているが、きちんと確認して、トラブルが起きないようにするのも、大事な仕事だそうだ。
 俺と箒は、一軒ずつ、事前に場所取りをした所に、店を出しているかをきちんと確認して、チェックリストに印を入れる。
 きちんと、時間どおりに来ているなと思ったら、雪子さん目当てに来ている人も多かった。
 美人だからな。
 お陰で、出店のチェックは早めに済んだ。
 その後は、警備の人との打ち合わせ。
 こういうお祭りでは、ナンパする奴がいるのは、お約束。
 女尊男碑の世の中だが、いわゆるイケメンは、前より、地位が上がっている。
 自分達が声をかけたら、女の子はついてくるのが当たり前と考えている、馬鹿が少なからずいる。それへの対策だ。
 今回は、俺も見回りをする事になっている。
 今まで、みっちり稽古を積んできた古武術や合気道、それに習志野でのCQCの訓練の成果は、それにうってつけだろうからな。
 ちなみに箒は、舞の稽古があるそうだ。
 俺は手伝いに来ているという事もあって、舞台の袖から見せてもらえる。
 頑張れよ。箒。
 さて、仕事、仕事と。

「すっかり美人になったから、舞も様になるわね。やっぱり、女の子は恋をすると綺麗になるわね。」
 舞の練習の後、休憩中に雪子は箒にそう言う。
「え、いや、そうなのでしょうか…。」
 箒は、頬が真っ赤になる。
「あら、箒ちゃん、織斑君が好きなんじゃないの?ただの幼なじみって関係とは、思えない気がするけど。」
 やはり、恋愛経験者にして既婚者となると、こういう事は鋭いのだろうか、既に見抜いているらしい。
「でも、彼は手強そうよ。どこか、掴みどころがないというか、何か、遠い物を見つめて、そこを目指している感じがするもの。まるで、江戸時代にでもいた、剣の道を究めようとする武芸者みたい。」
 一夏とは初対面なので、100%とはいかないが、だいたいの為人は解ったらしい。
「これでも、既婚者だし、私は夫に落とされたのではなく、夫を落として結婚したから、そういう方面の知恵は結構ある方よ。いつでも、力になるわ。」
 箒は何か言おうとするが、言葉が出なかった。
 そんな箒を見て、雪子はくすりと笑ってから、出店や警備の最終確認のために、一夏の所に行く。
『一夏…。お前は、友人や多くの大切な人を守りたいのだったな。私だけを守ってほしいと言ったら、お前はどう答えるのだ…?』
 そう考えながら、箒は溜息をついた。

「うん。お見事。たしか、学園では生徒会長をしているのだったわよね。箒ちゃんから聞いたわ。こういう事は、得意なのね。」
 傍から見ると、生徒会長というのは体育祭や文化祭といった、学校内のイベントの時しか忙しくないと思われがちだが、IS学園ははっきりいって、毎日忙しい。書類の決裁にしても、きちんと全部読んでからじゃないと、とてもできないし、先生達との打ち合わせが入る事もある。専用機持ちの中には、自分とパートナーになる整備科の生徒を探している人もいるので、生徒会が代わりに募集の情報を流したりと、とにかく忙しい。
「そう言えば、その刀、一本は大太刀よね?どうやって、手に入れたの?今の刀匠で大太刀を打つ人はほとんどいないでしょう?」
 やっぱり、気になるか。
「去年亡くなった、俺の師の奥様からです。今は、山形に住んでいらっしゃるんですが、師の遺言で、俺が来たら譲るように言われていたそうです。」
「そう。よほど、手塩にかけて育てた、大事なお弟子さんだったのでしょうね。織斑君は。」
 そうかな?
 もし、そうだとしたら、より一層鍛錬に励まないとな。
 亡くなった師匠に申し訳ない。
「ねえ。織斑君。」
「はい。何でしょうか。」
 仕事に、手違いでもあったかな?
「仕事も早く終わった事だし、少し、お話をしない?ああ、そうだわ。あなた、茶道は嗜むかしら?」
「はい。師に手ほどきを受けました。」
「あら。それはいいわね。茶室でお話をしましょう。」
 ここでも、師に手ほどきを受けた事が、役に立った。
 年長者との付き合いには、茶道は役に立つな。

「お手前、戴きます。」
 俺は一口、口にする。
 うん。この人、かなりの腕前だ。
「結構なお手前で。」
「いえ、お粗末さまでした。」
 次は俺の番だな。
 茶器を清めた後、茶碗にお湯を入れて温め、お湯を捨ててから、茶を立てる。
「どうぞ。」
 点てたお茶を、雪子さんの前に出す。
「お手前、戴きます。」
 雪子さんの作法に則った姿は、凄く綺麗だ。
 ひょっとして、どこかの流派の家元か?
 少なくとも、茶人としての号を持っているのは、確かだろう。
 一応、俺も師の友人で茶道の家元の人の前で、腕を披露して、免許皆伝の時に、その人から号を戴いた。
「結構なお手前で。」
「お粗末さまでした。」

「織斑君、お見事ね。ひょっとして、どこかの流派で免許皆伝をしていただいたの?」
 うわ、そこまで可能性を指摘されたか。箒の叔母さんだと、箒の親父さんの兄妹だよな。
 なら、納得もいくか。
「はい。茶道は師から教わりまして、その後、師の知人の家を訪れた時に、その知人が師にとっては茶道の師で家元だったんです。その方の前で俺は自分の手前をお見せする事になりまして…。」
 あの時は、本当に緊張したなあ。
 心臓を落ち着かせるのに、苦労したっけ。
「それで、その時に免許皆伝をしていただきまして、家元から、直接、茶人としての号を戴いたんです。」
 あの時は、心臓が破裂しそうになった上に、気絶しそうになったな。
 家に帰って、千冬姉に話したら。
「見事だな。まあ、私の弟だ。それ位は、当然だな。」
 褒めてるんだか、褒めてないんだか、微妙な感じに聞こえなくもないが、嬉しそうな顔をしていたっけ。
「で、号は何と?」
「はい。俺の名から夏の一字と、お手前の姿が何とも清々しく見える事から、清夏(きよか)と。」
 俺のお手前って、そんなふうに見えるのか?
 今ひとつ、実感がわかないんだが。
「清夏…。確かに、織斑君には、ぴったりね。本当に清々しいほどのお手前だったもの。背筋はピンと伸びて、凛としているのだけれど、そこから伝わって来るのは厳粛さではなくて、清々しさ。名は体を表す。あなたの号に相応しいお手前でしたわ。清夏殿。」
 雪子さんが、畳に手を合わせて一礼する。
 いや、いきなりそうされると、こっちも困るんですが…。
「さて、お祭りが始まるまで、一時間。そろそろ、行かないと。」
「はい。」

「お守りですね。500円になります。」
 祭りが始まってから、俺と箒はお守りやおみくじを売る担当にまわされた。
 箒は少ししてから、奉納の舞を舞うので、緊張を少しでも解ければという、雪子さんの配慮だった。
 その配慮のおかげか、箒も随分リラックスしている感じだ。ただ、時々俺を見る。俺、何かやったか?

 お守りやおみくじを売っていると、箒は、少し緊張がほぐれて来た。
 少し、舞の事は忘れる事にしている。
 箒と一夏。
 美少女と美少年がいるとあって、お守りやおみくじの売れ行きは好調だ。
 だが、しばらくすると、気になる光景を見る事が増えた。
 女性の学生が、一夏を見ると何やら話しはじめる。

「あの人、織斑一夏だよね。」
「え?世界で、唯一人、ISを動かせるっていう?」
「しかも、ISの開発者の篠ノ之博士が自ら開発したISを専用機にしてるんだって。IS学園じゃ、実力はナンバー1。国家代表にだって勝てるらしいよ。」
 インターネットには、IS関係のスレッドも多くあり、その中で、一夏に関するものも、少なくない。そして、女子たちの情報網から得た情報がUPされ、一夏は、今や、ちょっとした注目の的だった。
 しかし、とうの一夏は、お守りを買いに来た老人と話をしたり、してそういう光景は目に入っていない。
 そして、どういうわけだか、老人たちが、お守りやおみくじを買いに来た時は必ず一夏が相手をして、箒は若い学生の相手をしていた。
『一夏は、自分が話題にされている事に、気づいていないようだな。』
 箒は、もし、一夏が若い女子学生の相手をする事になったらどうしようと、気が気でならなかったので、さりげなく見るたびに、ほっとしていた。
「二人ともお疲れ様。織斑君は少し休憩していて、箒ちゃんはこれから身を清めて、舞の準備をするから。」
「あ。はい。箒、しっかりな。お前なら、絶対大丈夫だよ。」
 一夏はそう言って、休憩所に行った。

 身を清めた後、舞の装束に身を包み、金の飾りを装って、口紅を塗った箒は、いつもより、ずっと大人っぽくなっていた。
「綺麗だな。箒。」
『な、ななななっ!』
 一夏に綺麗だと言われて、箒は頭の中がパニック状態になる。
「どうしたんだ?顔、赤いぞ。」
 心配そうに、箒の額に、自分の額を触れさせる。
 箒の目に飛び込んできたのは、一夏の唇。
 臨海学校の時には、邪魔をされたが今なら、大丈夫のはずだ。
 鈴、セシリア、シャルロットは代表候補としての報告等の仕事で、それぞれの母国に戻っている。
 ラウラは、警備の任務についているので手出しは出来ないだろう。
『い、今なら…。』
 箒はそっと唇を重ねようとする。

「はい。準備は出来たわね。じゃあ、行きましょうか。」
 神というのは意地悪なのだろうか。
 舞の為に、神楽殿に行く時間だった。

『こういう時に限って…。』
 箒が勇気を出した時に限って、いつもこうなる。
 自分の運の無さに、箒は泣きたくなった。

「箒。」
「あ、ああ。何だ?一夏。」
 溜息をつきそうになった時に、一夏が箒に声をかける。
「色々、考えてるみたいだけど、普段通りの箒で行けよ。そうすれば絶対うまくいくって。俺が保証するぜ。こういう時こそ、箒は力を発揮するタイプだしな。臨海学校の時だって、そうだっただろ?」
 一夏が来ている小袖から、白式の待機状態である、ガントレットが覗く。
 次々と襲いかかってくる。ゴーレムとそれを指揮したISパイロットを倒す時に、最後に白式にエネルギーを補給したのは、紅椿のワンオフアビリティー
「絢爛舞踏」を発動させた箒だった。
 待機状態の鈴がついた紅白の紐を見た。
「ああ。そばから、ゆっくり、見物していろ。」
 色々考えていた箒の心が、すっと楽になり、肩の力が抜ける。

 神楽殿の前に続々と人が集まり、席が全部埋まった頃に、箒が神楽殿で舞い始める。
 俺が、小さかったころは、特別に、近くのいい席を確保してもらってみていた。
 無論、束さんが舞うはずもなく、親戚筋の人に頼んでいた。
 長女なんだから、それ位やれよな、束さん。
 まあ、あの人に言っても、暖簾に腕押しだけどな。
 神楽殿で舞う箒の姿は、文句なく綺麗だった。
 毎日、剣の稽古をしているのは剣術の道を究める為だが、巫女だからという理由もある。
 いつ舞うか解らないが、それでも、舞の稽古は続けてきた。
 その成果が、確実に出ている。
 だから、こういう時に、箒は強い。
 自分の欠点を、放っておける性格じゃない。
 それを直そうと、いつも懸命に努力する。
 ISの技術だって、適性はCでも、それに甘んじはしない。
 いつも、厳しい鍛錬をしている事を、俺は知っている。
 決して、努力を忘れず。
 決して、努力を怠らず。
 それが、箒だ。
 舞が終わると、見物人たちから、割れんばかりの拍手が鳴り響く。

「お疲れ様。だから、言ったろ。絶対に、大丈夫だって。すごく、綺麗だったぞ。」
 優しい笑顔で、一夏が労いの言葉を掛けて、スポーツドリンクを差し出す。
『ずるい…。』
 こんな、笑顔で。
 こんな、包み込むような優しい雰囲気で。
 心からの、優しい言葉を掛けられたら、どうすればいい?
 箒はそう思う。
 でも、それは、今、ここにいない、恋敵にして、かけがえのない親友たちも同じなんだろう。

 好きにならずには、いられない…。

「お疲れ様。本当に素敵だったわ。二人とも、本当によくお仕事を頑張ってくれたわね。お祭りでも、覗いていらっしゃい。」
 俺達は、雪子さんの言葉に、甘える事にした。

「なあ。そんな、冷たい事言わないでさ。俺達と屋台を回ろうぜ。」
「嫌です。離して。」
 こういう馬鹿が、いるんだよな。はあ。
「箒、ちょっと待っててくれ。男として、ああいうのは放っておけない。」
 俺は、5歩も歩いた現場に向かって、金髪に髪を染めて、日焼け止めを兼ねた、メンズ用のファンデーションを塗ったチンピラの腕を掴み上げる。
「やめろ。見ていて、みっともないし、腹が立つんだよ。」
 こういう馬鹿がいると、楽しいお祭りも、楽しさ減るよなあ…。
「?一夏さん!」
「蘭じゃないか。」
 浴衣を着て、髪を結っているから、気づかなかったが間違いなく蘭だった。
「大丈夫だったか?怪我してないか?」
「はい。大丈夫です。」
 ふう。一安心、一安心。

『なんか、恋愛ドラマみたい。一夏さんが助けてくれるなんて。』
 ヒロインがチンピラに絡まれている時に、あこがれの人が助けてくれる、恋愛ドラマのワンシーン。
 女の子なら、誰もが憧れるシーンだ。
「てめえ!痛え目に遭いてえのか?」
 殴りかかって来る腕を掴んで、肘と肩の関節を極める。
「どうする。これ以上力を入れると、関節が砕けるけどな。」
 一夏は、声をやや低くする。
 幼いころから、武術の厳しい修行を続け、軍隊で厳しい訓練を受け、IS学園に入ってからは、ISでの戦いとはいえ、プロの軍人との戦いに、亡国企業が放ったゴーレムシリーズとの壮絶な戦いを経験してきた一夏が少し声を低くすると、チンピラにしてみれば、相当な威圧感がある。
「おい、どうだったよ。かわいこちゃん、ゲットしたのか?って、こいつ、逗子市の、沼間中の織斑だぞ!!お前、こいつに喧嘩吹っ掛けたのかよ!?」
 ああ、俺の事、知ってる奴か。
 俺が通っていた、沼間中は進学先もレベルが高い奴が大分いたせいか、他の中学の不良から因縁をつけられる事が多くて、その度に、どういうわけだか、俺が追い払う事になって、おかげで近くの中学の不良の間では、有名人になって、襲われた時もあった。
 ま、別に、敵にもならなかったけどな。
 古武術にもならない、古武術モドキで軽く撃退できたし。

「じゃあ、後はこっちで、じっくり、たっぷり、油を絞ってやるから、任せときな。」
 帰り途中の少年課の刑事さんが、偶然、神社に寄って来てくれて、チンピラ二人を引き受けてくれた。
 と、その前に、俺なりに釘を刺しておくか。
「今度、俺の目の届くところでさっきみたいな事をしたら、解ってるな…。」
 睨みつけながら、チンピラに言う。
「「解った。もう、しねえよ…。だから、勘弁してくれよ。」」
 震えながら、答えてくる。
「じゃあ、そうならないように、俺が改心させてやるよ。さあ、来な。」
 刑事さんに連れられて、チンピラ二人は迎えに来たパトカーに乗せられて、警察署へご案内だ。
 これで、少しは懲りてくれるといいがね。

「待たせたな。箒。どこから、見てくか。って…。」
 何故だか、箒と蘭の間に、火花が飛び散っている気がした。
 疲れてるのか?俺。
 とりあえず、蘭にさよならを行って、箒と祭りを回っていくか。

「箒。待たせたな、行こうぜ。蘭、またな。」
 蘭と、無言で火花を飛び散らしていた箒の表情が、花が咲いたようになる。
「ああ。昔はリンゴ飴から行っていたな。お前の好物だったからな。」
「覚えていたのかよ。じゃあ、そっちから…。」
 行こうとすると、俺の浴衣をくいくいと。誰かが引っ張る。
 後ろを振り向くと、蘭が上目遣いで俺を見ていた。
「ああ、悪い。迎えを呼んだ方がいいか。」
「一夏さん。その人、誰ですか?」
 なぜだか、泣きそうな顔をして俺を見ていた。
「篠ノ之箒、俺のクラスメイト。ほら、前に話しただろ。箒、この娘は俺の友達の妹で、五反田蘭。」
 さて、互いの紹介はしたし、弾の携帯に電話をしてだな。

『この人が、一夏さんと同棲を経験した人…。綺麗。おまけに胸も大きい。たしか、最近のニュースで、篠ノ之博士が自ら開発した、一夏さんのISと並んで、世界にたった2機しかない第四世代ISを専用機持ちにしてるはず。何か、武器が多すぎ。ずるいよ。』
『一夏の友人の妹か。か、可愛いではないか。一夏め。他にもいないだろうな?』
 一夏が弾に連絡をしている間に、二人は冷戦状態に入っていた。

「おー。一夏、久しぶりだな。」
 おっ。来た、来た。
「久しぶりだな。元気か?」
「まあな。蘭を助けてくれて、サンキュな。ほい、かあちゃんが話ししたいって。」
「もしもし。」
「一夏君。ありがとう。蘭を助けてくれて。弾には、もう、蘭を連れて帰って来るように言ってあるから。」
 蓮さんの、今でもまだほっとしきれない声が聞こえてくる。
「いえ、そんな。たいしたことじゃないですから。いちおう、何かあるとまずいんで、俺がタクシー呼びますから。」
「ありがとう。夏休みの間は、家にいるのよね?都合のいい日を、教えて。お礼に伺うから。千冬さんにもよろしく言っておいてね。じゃあ、弾に代わって。」
 弾が、蓮さんから話を聞いている間に、俺はタクシーを呼ぶ。
 呼び終わった頃に、電話を切った弾が話しかけてくる。
「悪いな。タクシーまで、呼んでくれたんだって?」
「ああ、料金はカードで前払いしておいたから、蓮さんを安心させてやれよ。」
「そうする。じゃあ、この分は、埋め合わせを、きっちりするからな。」
「一夏さん。今日は、本当にありがとうございました。」
 そう言うと、俺の傍まで来る。
 あれ?なんだか、頬に柔らかい感触が、そして、周りが固まっている。
「お兄、早く行くよ。じゃあ、一夏さん。おやすみなさい。」
 そう言って、神社の入り口に向かっていく。

 俺は箒の方を向くが、箒はムスッとした表情でいた。
「あ、あの、箒、今のは…。」
「よかったな。ああいう、お礼をして貰って!」
 すっかり、機嫌を損ねた箒がいた。
「あれは、ほら、助けた礼じゃないか。そんなに、機嫌損ねるなよ。」
「私の自由だ。放っておいて貰おう。」
 ああ、もう。
 どうして、こういう事ばっかなんだよ。俺は。
 神様は、俺をもてあそんでいるのか。
 こうなったら、目には目を歯には歯をだ。
 俺は、箒の頬にそっと唇を触れさせた。

『え?』
 自分の頬の柔らかい感触に、箒は一瞬戸惑った。
 そして、それが、一夏がキスをしているからだと、解ったのは、唇を離した一夏が恥ずかしそうに、頬を掻いている時だった。
「悪い。なんか、箒を放ったらかしに、していたみたいで…。」
「い、いや。私も、少し、意地が悪すぎたかもしれん。」
 少しの沈黙の後、一夏が口を開く。
「リンゴ飴、食べに行くか。」
「ああ。」

後書き
夏といえば、お祭り。
綿あめ、金魚すくいに、たこ焼き、焼きそば…。
ちなみに、私が好きなのはリンゴ飴です。
まわりの飴を舐め終わった後に、リンゴを食べるのが好きなんですよ。
原作4巻でも、篠ノ之神社のお祭りの話がありましたので、私なりに書いてみました。
そう言えば、ここ数年、祭り行っていませんねえ。
車いすじゃ迷惑かけるだけですし、杖をつきながらというのもちょっとねえ…。
気にし過ぎかもしれませんけど、ちょっと行きづらかったりするんですよ。

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作者さんの、食べ方が俺とおんなじだw
ギャレン
2013/09/04 22:55

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IS<インフィニット・ストラトス>二次小説 第16話 夏祭り cogito,ergo sum/BIGLOBEウェブリブログ
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